JP4284032B2 - 袖付き衣類 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、袖付き衣類に関し、特に、上腕(二の腕)の後腕(手のひらを前にむけて腕を下げた状態での上腕後部)の弛みや、揺れを押さえてすっきりとした外観を付与できるもので、特に、肌着として好適に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、肘上から肩にかけた上腕(二の腕)では、腋下位置から肘にかけた後側に弛みが発生しやすく、この弛み部分は挙動時には揺れやすい。特に、肉の弛みが大きい場合には、ブルブル揺れる現象が発生し、腕に密着するアウターを着用すると、外観からも肉の揺れが目視でき、非常に気になる部分である。
この上腕の弛みは、筋肉トレーニング等で引き締めて解消することも可能であるが、実際には筋肉トレーニングにかける時間や費用がない場合が多く、かつトレーニングにも限界がある。
よって、着用する衣類により、簡単に上腕の弛みを解消して、すっきりとした外観とし、かつ、挙動時に揺れが発生しないようにすることが要望されている。
【0003】
しかしながら、従来、上腕後部の肉の弛み、この弛み部分が挙動時に揺れることを防止する機能を備えた衣類は提供されていない。
なお、スポーツウエアにおいて、スポーツ時にテーピングする部分と対応する部位に強締結部や伸縮止め部を設け、テーピングをしている場合と同様の作用効果をウエアに付与しているものが、特許第3115816号、特開平8−81907号、特開平9−241906号で提案されている。
【0004】
上記特許第3115816号は本出願人の先願に関し、野球のピッチャー、テニス、砲丸投げ等の各種スポーツにおいて、肩関節近傍の障害などの予防や治療に役立てるため、図15(A)(B)に示すように、強緊締部100A、100Bを設けている。
【0005】
上記特開平8−81907号および特開平9−241906号は、スキーウエア等のスポーツウエアに関し、伸縮しない或いは殆ど伸縮しない伸縮阻止ラインを設けている。
【0006】
さらに、本出願人の先願に係わる特許第3192325号では、図16(A)(B)に示すように、肘を越える袖を有する衣類において、袖のずり上がりによる皺の発生がしやすいため、伸縮性生地からなる袖の接ぎライン102を、袖の周囲に沿ってスパイラル状に設け、伸縮性生地の最大伸び方向を袖の長さ方向としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来提供されているスポーツウエアでは、上腕後部に発生する弛みを解消して外観をすっきりさせることを意図していないため、袖に付されている強締結部および伸縮止め部は、上腕後部の肉の弛みを効果的に解消できる位置に設けられていない。
また、特許第3192325号の長袖のずり上がりを防止する衣類も、上腕下側の肉の弛みを解消することはできない。
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、腕の動きを阻害せずに、上腕後側の肉の弛みを押さえ、該弛み部分が挙動時に揺れないサポート機能を備え、外観をすっきり出来る肌着等の衣類を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも肩から肘の間の上腕に密着する袖部を有する衣類であって、 腋下近傍から腕後側を通り肘上で袖の正中線を越えて腕前側に達するように斜行する帯状部を設け、該帯状部は上記袖の正中線に対して30゜〜60゜の範囲の角度で腕前側へと傾斜させており、
上記帯状部は他の部位よりも緊締力を強くして、上腕に生じる着用者の肉の弛みを押さえる構成としていることを特徴とする袖付き衣類を提供している。
【0010】
腋下位置から肘までの上腕に発生する肉の弛みは、上腕後側で発生するため、緊締力の強い帯状部を上腕後側を通すことで肉の弛みを押さえることができる。さらに、腕後側を経て肘上で腕前側まで斜行させて延在させることで、肉の弛みを抑えた状態で前側へと引っ張り負荷をかけるため、効率良く肉の弛みを抑えることができる。
このように、帯状部の配置位置および形状を適切にすることで、帯状部の緊締力を従来のスポーツウエアのテーピングと同等な程度まで強くする必要はなく、他の部位よりも若干強くする程度で十分に肉の弛みが抑えられ、挙動時に揺れることが防止でき、圧迫感や窮屈感なく、外観をすっきりとさせることができる。
【0011】
上記帯状部は、腋下点からアームホールに沿った背面側へ10cmの一端から、腋下点から腕下側へ10cmの他端の範囲内の位置から腕前側へ傾斜させている。
【0012】
腋下側において、帯状部を腋下点からアームホールに沿って背面側へ移行させると、腋下点から腕後側への巻き付け量が多くなり、腋下近傍の肉の弛みを押さえる効果が強まる。
一方、帯状部を腋下点から腕下側へと移行させても、腕後側に発生する肉の弛みを押さえることができ、かつ、アームホールの部分をゆったりした感じとすることができる。
【0013】
上記のように、帯状部の斜行角度は、腋下側の基点位置との関係で上記のように袖部の長さ方向に対して30゜〜60゜の範囲に設定しているため、腋下近傍から腕後側を通り、袖の正中線を越えて肘上で腕前側に達するように配置することができる。
【0014】
上記帯状部の幅は、1〜10cmの範囲としても良いが、2〜7cmの範囲が好ましい。これは、2cmより細いと肉の弛みを部分的にしか押さえられない一方、7cmを越えると緊締力の強い部位が広くなるため窮屈感が生じる。なお、3〜5cmの範囲が最も好ましい。
【0015】
上記帯状部の主たる伸縮方向の地の目方向は、肩から手先に向かう袖の正中線に対して30゜〜60゜の範囲としており、特に、45゜前後とすることが好ましい。
このように、帯状部の地の目方向を設定すると、腕を曲げたり、振った時の腕の筋肉の動きに沿いながら、上腕後側の肉の弛みを押さえることができる。
【0016】
また、帯状部のみでなく、少なくとも肩から肘上までの袖布(袖布と帯状部を別体とすると袖本体布)は、その主たる伸縮方向の地の目方向を腋下近傍から腕後側を通り前腕へと斜行する方向としていることが好ましい。
このように、袖布全体の地の目方向を帯状部の伸縮方向と同一方向とすると、帯状部のサポート効果が有効に発揮され、より効果的に肉の弛みを押さえることができ、腕挙動時の揺れを防止できる。
【0017】
また、上記帯状部は、直線状に傾斜させた状態としても良いし、円弧を描きながら斜向させてもよい。
なお、直線状よりも多少腕と肩とのつけ根方向にふくらむように湾曲させた方が、帯状部が腕の弛みやすい箇所に当接され、サポート力が向上する。
【0018】
上記帯状部は、比較的幅広の1つの帯状部から構成しても良いし、複数本を間隔をあけて平行に設けてもよい。かつ、複数本設ける場合は同じ幅でも良いし、幅を変えてもよい。例えば、3本の場合は、中央を幅広とし、両側を幅狭としてもよい。
帯状部を複数本で構成すると、比較的広い範囲にわたって帯状部を配置しても圧迫感や窮屈感を発生させずに、特に、肉の弛みが広い範囲に亙って大きく発生している場合に好適となる。
【0019】
上記帯状部は、袖本体布よりも緊締力の強い別の帯状布より形成し、該帯状布を上記袖本体布に重ねて縫着している。あるいは、袖本体布の間に接ぎ合わせで介在させるように縫着して取り付けてもよい。
この帯状布は袖本体布よりパワーのある布であれば良いが、弾性糸が含まれた素材、例えば、パワーネット等が好適に用いられる。また、細幅の伸縮性テープを袖本体布に縫着して用いてもよい。
肌着の場合は帯状布は袖本体布の裏面側に重ねて縫着し、見えないようにすると外観上すっきりとさせることができる。アウターウエアの場合も裏面側に重ねて縫着して外観できないようにしても良いが、帯状布を袖本体布と異なる色や柄として、デザイン上の変化を持たせて、袖本体布の表面側に縫着し、あるいは継ぎ合わせで介在させ、外部に見えるようにしても良い。
また、帯状布を袖本体布と接ぎ合わせる場合、帯状布を当接する本体布の長さよりも少し短く裁断し、それを引き伸ばして本体布に縫着して緊締力を強めてもよい。
【0020】
上記帯状部を別布を縫着して設ける代わりに、袖布を形成する編地の編組織を変化させ、他の部位よりも緊締力を強めた編組織からなる編地で形成してもよい。 具体的には、帯状部を緊締力の強いサテン編組織、厚地編組織とする一方、他の部位を帯状部より緊締力の弱い薄地編組織やメッシュ編み組織とし、1枚の編地の中に緊締力の強弱部分を設けている。
さらに、帯状部に弾性糸を挿入して編成し、緊締力を強めてもよい。
また、袖布本体にも弾性糸が挿入されている場合は、帯状部の弾性糸を太くしたり、弾性糸の本数を増加させることによって、帯状部の緊締力を強くしている
。
【0021】
上記編組織を変化させる場合、編地は丸編でも良いし、経編でもよい。
ジャガード編みの場合、緊締力の強いジャガード柄で帯状部を編成し、他の部位と緊締力に強弱差を設けている。
【0022】
上記のように、編み組織を変えて帯状部の緊締力を他の部位よりも強くしている一枚の編地から袖布を形成すると、段差なく肌ざわりが快適で、かつ、別布を縫着する工程がなくなる利点がある。
【0023】
さらに、上記袖本体布は経編地から形成し、抜き糸により袖口を端始末不要と、袖口を平坦とすることができるため、袖口に段差がつかず肌当たりが良くなる。
【0024】
本発明の袖付き衣類は、日常的に着用する半袖あるいは長袖の肌着に好適に用いられるが、腕に密着するアウター衣類にも適用できる。
さらに、レオタード等のスポーツ衣類に適用した場合においても、腕を締め付けることなく、腕の弛んだ肉が運動時に揺れることを防止できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の袖付き衣類の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図2は第1実施形態を示し、袖1が肘上までの半袖の肌着(袖付きキャミソール)からなる。
【0026】
図1に示すように、半袖の袖1は前後身頃布2、3に対してアームホールで縫着しており、該袖1は袖本体布5と該袖本体布5の裏面側に重ねて縫着した帯状布6とからなる。
【0027】
袖本体布5は前身頃布2と同一の編地からなり、風合いが柔らかく身体に適度に密着する様縦横斜め方向に伸びを有する編地より形成し、本実施形態では綿ベア天竺(綿48%、モダール糸48%、22dtexのポリウレタン糸4%)を用いている。帯状布6は適度の緊締力を有する編地から形成し、本実施形態ではチュールパワーネット(44dtexナイロン糸80%、156dtexポリウレタン糸20%)を用いている。
このように、柔らかく緊締力が強すぎない袖本体布5に適度の緊締力を有する帯状布6を組み合わせ、重ねて縫合しても、どちらかの素材がつっぱたりすることはなく、素材同士をなじみやすいものとすることができる。
袖本体布5として、ウールや丸編み等の柔らかい素材を用いる場合には、帯状布6も極端に緊締力の強すぎないものと組み合わせることが好ましい。
一方、袖本体布5として、ラッセルやトリコット等の経編地など、目の詰まった張りのある素地を使用する場合、帯状布6もワンウエイパワーネット、ツーウエイトリコット等の緊締力の強い素材と組み合わせることが好ましい。
【0028】
左袖を示す図2において、袖本体布5は主たる伸縮方向の地の目Xを、肩から手先に向かう袖の正中線Lに対して40゜に配向している。
該袖本体布5は肩から上腕に密着するサイズに裁断し、その左右両側端縁5a、5bを互いに縫着して筒状とし、アームホール端縁5cを前後身頃2、3と縫着している。アームホール端縁5cの中央膨出点P1が肩峰に位置し、左右端点P2とP3が前後身頃2、3の腋下点と縫着されて腋下点となる。
袖本体布5は、図2(A)において、図中左半側部が腕前側部5dとなり、右半側部が腕後側部5eとなる。
【0029】
帯状布6は、袖本体布5の腕後側部5eの後腋下点P3の近傍から袖の正中線Lを通って腕前側部5dに至り、肘上に位置する袖口5fでは腕前側部5dの略先端(腕後側部5eとの縫着位置)まで達している。
即ち、帯状布5は後腋下点P3より腕後側部5eより腕前側部5dへと直線状に斜行して、肘の上方の袖口5fで袖外周を略半周させている。
【0030】
上記帯状布6は、本実施形態では幅Wを3.5mmとし、正中線Lに対して40゜の角度で傾斜させている。また、腋下側の基端点は腋下点P3より袖下側へ2cmの寸法S1あけた位置とし、袖の正中線Lと帯状布6との交差点は肩峰から20cmの寸法S2をあけた位置としている。
【0031】
帯状布6の主たる伸縮方向の地の目X’は、袖本体布5の斜向方向と同一方向とし、正中線Lに対して40゜としている。
【0032】
上記した帯状布6を裏面側に重ねて縫着した袖1を有する半袖肌着を着用すると、帯状布6が肉の弛んだ腕後側部5eを通るために、その緊締力で弛んだ肉を押さえる。かつ、帯状布6を腕後側部5eより袖口5fにかけて腕前側部5dへと延在するため、効率良く弛んだ肉を押さえると共に腕挙動時に弛んだ肉の揺れを抑制、防止することができる。
【0033】
このように、帯状布6の取付位置を工夫しているため、帯状布6の緊締力をテーピング程に強くしなくとも、肉の弛み及び揺れを防止でき、圧迫感や窮屈感なく、すっきりと引き締まった外観とすることが出来る。かつ、帯状布6の取付位置は腕の筋肉に沿った位置であり、かつ、挙動時における筋肉の動きにも沿った位置であるため、腕の挙動を妨げることもなく、着用感も良好に保持することができる。
【0034】
図3(A)〜(H)は袖に対する帯状布6の取付位置を変えた半袖シャツを作成し、テスターが着用し、「腕の動きを妨げずに上腕の弛んだ肉がブルブルゆれない、かつ着用時の違和感のなさ」度合いを評価した。
(A)は本発明の上記第1実施形態であり、(B)〜(G)は本発明と相違する位置に帯状布6を取り付けた。
【0035】
テスターによる評価が下記の通りであった。
(A)は本発明の第1実施形態であり、袖本体布の地の目方向と帯状布の方向とを第1実施形態に記載の方向に斜行させた。最も評価が良く、窮屈感がなく、腕の動きを妨げず、かつ、弛んだ肉の揺れる感じがしない評価を得た。
(B)は帯状布6を上腕を挙げた状態で下側の位置に正中線と平行に張り付けたものである。この場合、帯状布6がない場合と変化がなく、弛んだ肉の揺れが感じられるとの評価であった。
(C)は帯状布6を腕の外側に袖の正中線と平行に張り付けたものである。この場合、弛んだ肉の揺れは解消されないとの評価であった。
(D)は帯状布6を腕の内側に正中線と平行に張り付けたものである。この場合、フィット感はあるが、弛んだ肉が揺れを若干感じるとの評価を得た。
(E)は袖本体布5の地の目方向と直交方向に帯状体を張り付けたものである。この場合、捩れる感じがして、着用感が悪いとの評価を得た。
(F)は腕の付け根位置に、正中線と直交方向に帯状体6を張り付けた場合である。この場合は窮屈感がして、着用感が悪く、且つ、弛んだ肉の揺れが感じられるとの評価であった。
(G)は腕の内側と外側の両側に帯状布6を袖の正中線と平行に張り付けたものである。この場合、腕が押さえ付けられている感じがして、着用感が悪いとの評価であった。
【0036】
図4(A)〜(E)は第1実施形態の変形例を示し、帯状布6の幅と本数、腋側基端点の位置を変えて袖本体布5の裏面側に重ねて縫着している。いずれも袖本体布5の地の目方向Xおよび帯状布6の地の目方向X’は袖正中線Lに対して45°としている。
【0037】
図4(A)では帯状布6の幅Wは8cmの広幅とし、脇側基端位置を後腋側点P3を挟んで若干アームホール5c側へ移行させている。
図4(B)も帯状布6の幅Wは13cmとし、脇側基端位置を後腋側点P3を挟んで若干腕下方向へ移行させている。
図4(C)では帯状布6の幅W2cmの細幅とし、脇側基端位置を後腋側点P3よりアームホール5c側へ移行させている。
図4(D)では帯状布6を同幅の3本として平行配置し、3本の帯状体6は10cmの幅W’に収めている。
図4(E)では、帯状布6を5本として平行配置し、両側の帯状体6aと6eは小幅、帯状体6bと6dは中幅、中央の帯状6cは最も広幅とし、これら5本の帯状体は10cmの幅W’の範囲に収めている。
【0038】
図5(A)(B)は第2実施形態を示し、ニット製の半袖Tシャツに適用しており、袖1は腕に密着させるもので、該袖1は袖本体布と帯状布とを接ぎ合わせしている。
即ち、袖本体布5’は帯状布6’と接ぎ合わせする部分を除去した寸法で裁断し、裁断した袖本体布5A’と5B’との間に帯状布6’を介在させて、対向する端縁同士を縫着している。
其の際、帯状布6’の両側端6a’、6b’の長さを袖本体布5A’、5B’の端縁5Aa’、5Ba’の寸法よりも若干短くし、帯状布6’を引っ張った状態で縫着し、帯状布6’により強い緊締力を与えている。
【0039】
上記帯状布6’は袖本体布5A’、5B’とは色を異ならせて、デザイン化している。他の構成は第1実施形態と同一であり、かつ、第1実施形態と同様に、帯状布6’により腕後側の肉の弛み及び揺れを防止することができる。
【0040】
図6(A)(B)は第3実施形態を示し、クロス斜線で示す帯状布6”は直線状ではなく、袖上方に向かってふくらんだ円弧状カーブとし、袖本体布5の裏面側に縫着している。
上記帯状布6”の腋下側の基点は、後身頃側の腋下点P3から腕下となる右側端縁5b側へ5cmの幅W’の範囲内に、3本の帯状布6a”、6b”、6c”を間隔をあけて並設している。3本の帯状布は中央の帯状布6b”を太くし、両側の帯状布6a”と6c”とは細くしている。
最も腋下点P3側に近接した位置の図中外周側の帯状布6a”は袖正中線Lを越えて肘の上方の袖口で腕前側部5dへと延在するカーブとしている。中央の帯状布6b”、内周側の帯状布6c”は外周の帯状布6a”と同心状のカーブとし、中央の帯状布6b”は袖口では正中線上に位置し、外周の帯状布6a”は袖口5fでは腕前側部に位置している。
【0041】
上記カーブする帯状布6”(6a”〜6c”)の地の目方向X’及び袖本体布5の字の目方向Xは袖正中線Lに対して45°としている。
【0042】
上記のように、帯状布6”を円弧状にカーブさせると、腕の筋肉に沿うと共に、筋肉の動きに適合して、挙動時における肉の揺れを無理なく押さえることができる。
【0043】
図7(A)(B)は第3実施形態の第1変形例を示し、帯状布6”を3本に付けているが、3本の帯状部を同一幅としている。外周の帯状布6a”の基端位置は腋下点P3の位置とし、中央および内周の帯状布6b”、6c”は腋下点P3より右側端縁の腕下側へと移行させ、これら3本の帯状布の幅W’を6cmの範囲内に収め、帯状布を取り付けた範囲を幅広としている。
【0044】
図8(A)(B)(C)は第3実施形態の参考変形例を示す。
帯状布6”は4cm幅のカーブ形状の1本とし、後腋下点P3より前側に若干回り込ませた位置を基端位置とし、腕後側から腕前側へとカーブさせ、肘上の袖口5fでは袖正中線Lに丁度達した位置としている。
【0045】
図9および図10は第4実施形態を示す。
第1実施形態と同様な肘上までの半袖肌着に関し、上腕後側の肉の弛みを押さえるため、別材の帯状布を用いず、挿入する弾性糸を他の部位と相違させることによって帯状部11を設けている。
即ち、袖本体部12と帯状部11とを1枚の編地から形成しており、かつ、帯状部11は第1実施形態と同様な直線状で腋下点P3の基端から肘上の袖口10fにかけて直線状に斜行させている。
【0046】
袖10はシングルラッセル編地からなり、第1実施形態の袖1と略同一外形に形成している。
帯状部11に該当する部位では弾性糸を切り替え、帯状部11は弾性糸を2本挿入する一方、他の袖本体部12は挿入する弾性糸を1本とし、帯状部11を袖本体部12の緊締力よりも強めて、挿入する弾性糸により緊締力に強弱差を設けている。
なお、弾性糸の太さを変えることによって、緊締力に差を設けても良い。
【0047】
上記帯状部11は腋下点P3を挟んで3cm幅とし、袖の正中線Lを越えて肘の上方の袖口では腕前側部に達するように斜行させ、袖正中線Lに対する傾斜角度を45°としている。
【0048】
図10に示すように、袖本体部12の主たる伸縮方向の地の目を袖正中線Lに対して45°となるように、袖10をシングルラッセル編地Aより裁断し、よって、帯状部11の地の目X’も袖正中線Lに対して45°となっている。
帯状部11は4cm幅とし、他の部位よりも弾性糸を多くするか、弾性糸を太くして緊締力を強めている。
【0049】
このように、帯状部11を編み方をかえて袖本体部12と一体的に編成すると、別布を取り付ける場合と比較して段差が無く、肌当たりが良くなる。
さらに、別布からなる帯状部11を縫着する手間も不要となる利点がある。
【0050】
図11は第5実施形態を示し、経編みのシングルラッセル・ジャガード編地Aから形成する袖10’を編み立て方向である地の目Xと直交する方向に袖正中線Lが位置するように裁断して、袖10’の袖口10f’がシングルラッセル・ジャガード編地Aの先端部A−1となるようにしている。
上記ジャガード編地Aの先端部A−1では糸抜きにより端始末不要としており、よって、袖10’の袖口10’は端始末不要となって、袖口を段差のない平旦な状態とすることができる。
【0051】
また、帯状部11に該当する部位ではジャガード柄を切り替え、帯状部11は厚地編み或いはサテン編み組織とする一方、他の部位はメッシュ編み組織として緊締力に差を設けている。
このように、帯状部11’の緊締力を強くしていると共に、帯状部11を腋下近傍から腕後側を経て袖口側に向かって腕前側へとカーブさせているため、腕後側の肉を押さえると共に、該肉の揺れを防止することができる。
【0052】
図12(A)は第5実施形態の第1変形例を示し、図4と同様に、帯状部11’を3本の緊締力の強い編み組織のジャガード柄による帯状部11a’、11b’、11c’より構成し、中央の帯状部11b’を太くし、両側の帯状部11a’と11c’を細くし、これら3本の帯状部を5cm幅W”に収めている。
【0053】
図12(B)は第5実施形態の第2変形例を示し、図6と同様に、緊締力の強い編み組織のジャガード柄による帯状部11’を3本の帯状部11a’、11b’、11c’より構成し、これら3本の帯状部の幅は同一とし、これら3本の帯状部を腋下点P3を挟んでアームホール側から腕下側の6cmの幅W”に収めている。
【0054】
図13(A)(B)は第6実施形態を示し、(A)では半袖付きスリップに適用し、半袖1に第1実施形態と同様な帯状体6を袖本体布5の裏面に取り付けている。
(B)は袖付きボデイテディで、半袖1に第1実施形態と同様な帯状体6を袖本体布5の裏面に取り付けている。
【0055】
図14(A)(B)はアウター・トップに適用した第7実施形態を示し、半袖1は腕に密着させており、半袖1に第1実施形態と同様な帯状体6を袖本体布5の裏面に取り付けている。(A)では帯状体6を1本とし、(B)では帯状体6を2本として平行配置している。この(B)の実施形態ではラグラン袖であるが、帯状体6を腋下近傍から腕後側を通り肘上で腕前側へと斜行させている。
【0056】
なお、肌着は長袖とし、上腕に当たる位置に帯状体1を腋下近傍から肘上まで設けてもよい。長袖とした場合においても、上腕後側の肉の弛みおよび揺れを帯状部で押さえることができる。
さらに、袖付きスリップ、袖付きカップ付きスリップ等の肌着にも適用できる。 かつ、袖付きレオタードやスポーツ用アウターにおいて、腕に密着する袖部を有する衣類にも適用することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の袖付き衣類によれば、腋下近傍から腕後側を通り、肘上に向かって腕前側へと斜行する緊締力の強い帯状部を設けているため、該帯状部が上腕後側に発生する肉の弛みおよび挙動時における弛んだ肉の揺れを押さえることが出来、引き締まったすっきりとした外観を与えることができる。
しかも、上記帯状部は弛んだ肉を圧迫して押さえ込んでいるのではなく、適度の緊締力で押さえ、圧迫感や窮屈感を生じさせず、着用感をソフトにできる。かつ、帯状部で強く引き締めているのではないため、腕の挙動を妨げず、動きをスムーズにできる。
【0058】
また、帯状部を別布で裏打ちする場合には、従来生産されている衣類に適用できる。一方、帯状部を編み方を変えて袖用編地を一体的に編成する場合には段差が無く肌当たりが良くなると共に、別布を裏打ちする縫製工程を省くことができる等の種々の利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の半袖肌着を示し、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図2】 (A)は袖(右袖)のパターン図、(B)は帯状布の位置を示す背面図である。
【図3】 (A)〜(G)は帯状布の取付位置を変えた図面である。
【図4】 (A)〜(E)は第1実施形態の変形例を示す右袖のパターン図である。
【図5】 第2実施形態を示し、(A)は袖布のパターン図、(B)は袖本体布と帯状布を縫着した状態を示す図面である。
【図6】 第3実施形態を示し、(A)は袖布のパターン図、(B)は正面半側部と背面半側部を示す図面である。
【図7】 第3実施形態の第1変形例を示し、(A)は袖のパターン図、(B)は正面半側部と背面半側部を示す図面である。
【図8】 第3実施形態の参考変形例を示し、(A)は袖のパターン図、(B)は別の角度からみた袖のパターン図、(C)は正面半側部と背面半側部を示す図面である。
【図9】 第4実施形態の袖のパターン図である。
【図10】 上記袖を編地から裁断する状態を示す図面である。
【図11】 第5実施形態を示し、(A)は袖のパターン図、(B)は袖を編地から裁断ずる状態を示す図面である。
【図12】 (A)(B)は第5実施形態の第1、第2変形例の袖のパターン図である。
【図13】 (A)(B)は第6実施形態の衣類の正面図である。
【図14】 (A)(B)はアウターに適用した第7実施形態の衣類の正面図である。
【図15】 (A)(B)は従来例を示す図面である。
【図16】 (A)(B)は他の従来例の図面である。
【符号の説明】
1、10 袖
5 袖本体布
5d 袖前側部
5e 袖後側部
5f 袖口
6 帯状布
11 帯状部
12 袖本体部
L 袖の正中線
P2、P3 腋下点
X 袖本体部の地の目方向
X’ 帯状部の地の目方向
Claims (13)
- 少なくとも肩から肘の間の上腕に密着する袖部を有する衣類であって、
腋下近傍から腕後側を通り肘上で袖の正中線を越えて腕前側に達するように斜行する帯状部を設け、該帯状部は上記袖の正中線に対して30゜〜60゜の範囲の角度で腕前側へと傾斜させており、
上記帯状部は他の部位よりも緊締力を強くして、上腕に生じる着用者の肉の弛みを押さえる構成としていることを特徴とする袖付き衣類。 - 少なくとも肩から肘上までの袖本体布は、その主たる伸縮方向の地の目方向を腋下近傍から腕後側を通り腕前側へ斜行する方向としている請求項1に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、腋下点からアームホールに沿った背面側へ10cmの一端から、腋下点から腕下側へ10cmの他端の範囲内の位置から腕前側へと傾斜させている請求項1または請求項2に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部の主たる伸び方向となる地の目方向が、袖の正中線に対して30゜〜60゜の範囲となるように袖を形成している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部の幅は2〜7cmとしている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、直線状に傾斜させた状態あるいは円弧を描きながら傾斜させた状態としている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、複数本を間隔をあけて平行に設けている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、袖本体布よりも締結力の強い別の帯状布より形成し、該帯状布を上記袖本体布に縫着し、あるいは、袖本体布の間に接ぎ合わせで縫着して取り付けている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、袖布を形成する編地の編組織を変化させ、他の部位よりも緊締力を強めて形成している請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記帯状部は、弾性糸を他の部位より太くし或いは/および本数を多くして編成することにより形成している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 上記袖布はジャガード編地からなり、緊締力の強いジャガード柄を上記帯状部として編成し、他の部位と緊締力に強弱差を設けている請求項9または請求項10に記載の袖付き衣類。
- 経編地から形成し、抜き糸により袖口を端始末不要としている請求項9乃至請求項11いずれか1項に記載の袖付き衣類。
- 半袖あるいは長袖で、肌着、アウター衣類、レオタードを含むスポーツ衣類からなる請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の袖付き衣類。
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