JP4281391B2 - 回転角検出装置及び回転角検出方法 - Google Patents

回転角検出装置及び回転角検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転角検出装置及び回転角検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両、例えば、電動車両としての電気自動車に搭載され、電動機械としての駆動モータのトルク、すなわち、駆動モータトルクを発生させ、該駆動モータトルクを駆動輪に伝達するようにした電動駆動装置において、駆動モータは、力行(駆動)時に、バッテリから直流の電流を受けて駆動され、前記駆動モータトルクを発生させ、回生(発電)時に、電気自動車のイナーシャによってトルクを受け、直流の電流を発生させ、該電流をバッテリに供給するようになっている。
【0003】
そして、駆動モータには、回転自在に配設され、N極及びS極の永久磁石から成る磁極対を備えた回転体としてのロータ、該ロータより径方向外方に配設され、U相、V相及びW相のステータコイルを備えたステータ等の電動機械部品が配設される。
【0004】
また、電動車両としてのハイブリッド型車両に搭載され、エンジンのトルク、すなわち、エンジントルクの一部を第1の電動機械としての発電機(発電機モータ)に、残りを駆動輪に伝達するようにした電動駆動装置においては、サンギヤ、リングギヤ及びキャリヤを備えたプラネタリギヤユニットを有し、前記キャリヤとエンジンとを連結し、リングギヤと駆動輪とを連結し、サンギヤと発電機とを連結し、前記リングギヤ及び第2の電動機械としての駆動モータから出力された回転を駆動輪に伝達して駆動力を発生させるようにしている。
【0005】
そして、発電機及び駆動モータには、それぞれ回転自在に配設され、N極及びS極の永久磁石から成る磁極対を備えたロータ、該ロータより径方向外方に配設され、U相、V相及びW相のステータコイルを備えたステータ等の電動機械部品が配設される。
【0006】
また、前記電気自動車には駆動モータ制御装置が電動機械制御装置として、前記ハイブリッド型車両には発電機制御装置及び駆動モータ制御装置がそれぞれ電動機械制御装置として配設され、該電動機械制御装置において発生させられたU相、V相及びW相のパルス幅変調信号をインバータに送り、該インバータにおいて発生させられた相電流、すなわち、U相、V相及びW相の電流を前記各ステータコイルに供給することによって、前記駆動モータを駆動して駆動モータトルクを発生させたり、発電機を駆動して、発電機のトルク、すなわち、発電機トルクを発生させたりするようになっている。
【0007】
そのために、前記電動駆動装置において、発電機、駆動モータ等のロータの位置を表す磁極位置を検出するために、回転角検出回路が配設され、該回転角検出回路によって検出された磁極位置に基づいて発電機、駆動モータ等の制御を行うようにしている。そして、前記回転角検出回路は、回転角検出部としてレゾルバを備え、該レゾルバに参照信号を送ることによってレゾルバ信号を発生させ、該レゾルバ信号をR/Dコンバータに送り、該R/Dコンバータにおいてフィードバック制御部によってフィードバック制御を行い、レゾルバの回転角を算出する。したがって、該回転角によって表される磁極位置を検出することができる。
【0008】
また、前記R/Dコンバータにおいては、制御タイミングごとに回転角を出力させると、電動機械制御装置のCPUにおいて発電機、駆動モータ等の制御を行う際に、CPUに加わる負担が大きくなる。そこで、所定のタイミングでR/Dコンバータから出力された回転角を基準位置とし、その後は、該基準位置からの回転角の変化量をR/Dコンバータから入力し、前記CPUにおいて、前記基準位置に変化量を累積させて制御タイミングごとの回転角を推定し、それにより、磁極位置を検出するようにしている。
【0009】
ところで、前記回転角検出回路には、参照信号を発生させるために励磁回路が配設され、該励磁回路は、励磁用の電源に接続され、励磁用の電源の電圧、すなわち、電源電圧に基づいて前記参照信号を発生させる。ところが、信号系又は電源系の瞬断時、例えば、レゾルバ信号をR/Dコンバータに送るためのレゾルバ信号線が瞬間的に断線するか、又は前記電源が瞬間的に切断することによって電源電圧が低下し、レゾルバ信号がR/Dコンバータに入力されない状態になる。
【0010】
その後、電源電圧が復帰すると、レゾルバ信号がR/Dコンバータに入力されるようになるが、その間、R/Dコンバータは、内部において制御を行うことができない。
【0011】
そこで、電源電圧が復帰した後、所定の時間が経過したときに、再び前記基準位置を取得し、該基準位置に変化量を累積させて制御タイミングごとの回転角を推定し、検出するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−337371号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の回転角検出回路においては、R/Dコンバータから出力された回転角が整定され、基準位置とすることができるようになるまでの時間、すなわち、整定時間が長くなってしまう。したがって、回転角を検出することができるようになるまでの時間がその分長くなってしまう。
【0014】
本発明は、前記従来の回転角検出回路の問題点を解決して、励磁用の電源電圧が一時的に低下した場合に、回転角を検出することができるようになるまでの時間を短くすることができる回転角検出装置及び回転角検出方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明の回転角検出装置においては、レゾルバを励磁するための参照信号を発生させる励磁回路と、前記参照信号を受け、該参照信号を電動機械の回転角によって変調することにより出力信号を発生させるレゾルバと、前記出力信号及び前記参照信号に基づいて電動機械の回転角速度を特定して速度レジスタに記録するとともに、特定された回転角速度を積分して算出されたディジタル角度を前記出力信号に対してフィードバックして、前記ディジタル角度と電動機械の回転角との偏差が零になるようにフィードバック制御を行い、前記電動機械の回転角を算出するフィードバック制御部と、前記電動機械の回転角の整定が開始されるときの、前記速度レジスタに記録される回転角速度の最高速度によって決まる範囲を表す自走範囲を小さくする自走範囲変更処理手段とを有する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この場合、電動車両としての電気自動車に搭載され、電動機械としての駆動モータを駆動するようにした電動駆動装置について説明するが、本発明をハイブリッド型車両に搭載され、電動機械としての発電機を駆動するようにした電動駆動装置に適用することもできる。
【0027】
図1は本発明の実施の形態における回転角検出装置の機能ブロック図である。
【0028】
図において、20は参照信号を発生させる参照信号発生処理手段としての励磁回路、43は前記参照信号を受けて出力信号を発生させる回転角検出部としてのレゾルバ、91は前記出力信号に基づいてフィードバック制御を行い、回転角を算出するフィードバック制御部、53は前記回転角の整定が開始されるときの電動機械回転速度としての駆動モータ回転速度の自走範囲を小さくする自走範囲変更処理手段としてのモード設定処理部である。
【0029】
図2は本発明の実施の形態における電動駆動装置の概略図、図3は本発明の実施の形態における回転角検出装置のブロック図、図4は本発明の実施の形態における回転角検出装置の動作を示すフローチャート、図5は本発明の実施の形態における励磁用の電源が投入されたときの回転角検出装置の動作を示すタイムチャート、図6は本発明の実施の形態における信号系又は電源系の瞬断時の回転角検出装置の動作を示すタイムチャート、図7は本発明の実施の形態における駆動モータ回転速度と整定時間最大値との関係を示す図、図8は本発明の実施の形態におけるR/Dコンバータを整定する際の回転速度領域を説明する図である。なお、図7において、横軸に回転角速度NDを、縦軸に整定時間の最大値Tsmを採ってある。
【0030】
図において、10は電動駆動装置、31は電動機械としての駆動モータであり、該駆動モータ31としてDCブラシレス駆動モータが使用される。前記駆動モータ31は、複数の相、すなわち、U相、V相及びW相のステータコイル11〜13を図示されないステータコアに巻装することによって形成されたステータ、及び該ステータの内側において回転自在に配設され、磁極対を備えた回転体としての図示されないロータを有する。そして、前記駆動モータ31を駆動して電気自動車を走行させるために、バッテリ14からの直流の電流がインバータ40によって相電流、すなわち、U相、V相及びW相の電流Iu 、Iv 、IW に変換され、各相の電流Iu 、Iv 、IW はそれぞれ各ステータコイル11〜13に供給される。
【0031】
そのために、前記インバータブリッジ40は、6個のスイッチング素子としてのトランジスタTr1〜Tr6を備え、各トランジスタTr1〜Tr6を選択的にオン・オフさせることによって、前記各相の電流Iu 、Iv 、IW を発生させることができるようになっている。
【0032】
また、回転角検出部としてレゾルバ43が連結され、該レゾルバ43に回転角検出回路44が接続され、該回転角検出回路44は、前記レゾルバ43を励磁するための参照信号発生処理手段としての励磁回路20、回転角出力装置としてのR/Dコンバータ21等を備える。該R/Dコンバータ21は、レゾルバ43からレゾルバ信号を受け、前記ロータにおける原点からの回転角θを算出し、出力する。なお、本実施の形態において、R/Dコンバータ21は、ハード構成にするようになっているが、図示されないCPU、MPU等の制御部、及びRAM、ROM等の記録部によって構成することもできる。
【0033】
そして、該回転角θは、電動機械制御装置としての駆動モータ制御装置45に送られ、該駆動モータ制御装置45の図示されない磁極位置検出処理手段は、磁極位置検出処理を行い、前記回転角θを磁極位置として検出する。前記駆動モータ制御装置45は、前記磁極位置に基づいて駆動モータ31の制御を行う。また、前記駆動モータ制御装置45は、図示されないCPU、MPU等の制御部、及びRAM、ROM等の記録部を備える。なお、前記回転角検出回路44及び駆動モータ制御装置45の制御部によって、所定の処理を行うためのコンピュータが構成される。また、レゾルバ43、回転角検出回路44、駆動モータ制御装置45等によって回転角検出装置が構成される。
【0034】
したがって、電気自動車の全体の制御を行う図示されない車両制御装置が、トルク指令値として駆動モータトルクの目標値を表す駆動モータ目標トルクTM* を駆動モータ制御装置45に送ると、駆動モータ制御装置45は、駆動モータ目標トルクTM* に対応するパルス幅を計算し、該パルス幅を有する3相のパルス幅変調信号Su、Sv、Swを発生させ、該パルス幅変調信号Su、Sv、Swをドライブ回路51に送る。該ドライブ回路51は、前記パルス幅変調信号Su、Sv、Swを受けて、6個のトランジスタTr1〜Tr6を駆動するためのスイッチング信号をそれぞれ発生させ、該スイッチング信号をインバータ40に送る。なお、本実施の形態においては、インバータ40とは別にドライブ回路51を配設するようにしているが、ドライブ回路等を内蔵したIPM等をインバータとして使用することもできる。
【0035】
その結果、前記ステータコイル11〜13に各相の電流Iu、Iv、IW がそれぞれ供給され、ロータにトルクが発生させられる。このようにして、前記電動駆動装置10を作動させることによって駆動モータ31を駆動し、電気自動車を走行させることができる。
【0036】
ところで、各相のうちの二つの相の電流の値が決まると、残りの一つの相の電流の値も決まる。したがって、各相の電流Iu、Iv、IW を制御するために、各相のうちの一つを除く所定の相、例えば、U相及びV相の電流Iu、Ivが電流検出部としての電流センサ33、34によって検出され、検出された前記電流iu、ivが駆動モータ制御装置45に送られるようになっている。また、各相の電流Iu、Iv、IW を各電流センサによって検出し、検出された電流iu、iv、iwを駆動モータ制御装置45に送ることもできる。
【0037】
なお、16は前記バッテリ14の電圧Vbを検出する直流電圧検出回路、17は平滑用のコンデンサ、46は記録装置としてのメモリ、Vcc1は制御用の電源であり、該電源Vcc1は、駆動モータ制御装置45に+5〔V〕の電源電圧Vcを印加してCPU電源として機能するとともに、回転角検出回路44におけるR/Dコンバータ21に+5〔V〕の電源電圧Vrdを印加してR/D電源として機能する。また、Vcc2は励磁用の電源であり、該電源Vcc2は、励磁回路20に電源電圧Vexを印加し、レゾルバ励磁用電源として機能する。
【0038】
ところで、前記駆動モータ制御装置45においては、ロータの磁極対の方向にd軸を、該d軸と直角の方向にq軸をそれぞれ採ったd−q軸モデル上でフィードバック制御が行われるようになっている。
【0039】
そのために、前記駆動モータ制御装置45においては、例えば、前記電流センサ33、34から送られた検出電流iu、ivが図示されないUV−dq変換器に送られ、該UV−dq変換器において前記検出電流iu、ivは磁極位置に基づいて検出電流iu、ivがd軸電流id及びq軸電流iqに変換される。そして、d軸電流id及びq軸電流iqはフィードバック制御用の図示されない減算器に送られ、該減算器において、d軸電流id及びq軸電流iqと、駆動モータ目標トルクTM* から変換されたd軸電流指令値id* 及びq軸電流指令値iq* との偏差Δid、Δiqが算出され、該偏差Δid、Δiqが図示されない電圧指令値発生部に送られる。該電圧指令値発生部においては、前記偏差Δid、Δiqに基づいてd軸電圧指令値Vd* 及びq軸電圧指令値Vq* が発生させられ、該d軸電圧指令値Vd* 及びq軸電圧指令値Vq* は図示されないdq−UV変換器に送られる。
【0040】
続いて、該dq−UV変換器においては、前記d軸電圧指令値Vd* 、q軸電圧指令値Vq* は、磁極位置に基づいて各相の電圧指令値Vu *、Vv *、VW * に変換され、該電圧指令値Vu *、Vv *、VW * は図示されないPWM発生器に送られる。そして、該PWM発生器は、前記各相の電圧指令値Vu *、Vv *、VW * 及び前記直流電圧検出回路16によって検出された電圧Vbに基づいて各相のパルス幅変調信号Su、Sv、SW を発生させる。
【0041】
次に、前記R/Dコンバータ21について説明する。
【0042】
まず、励磁回路20は、参照信号発生処理を行い、所定の角速度ωで変化し、時間tを変数とする参照信号f(t)
f(t)=sinωt
を発生させ、該参照信号f(t)をレゾルバ43の図示されない一次コイルに供給する。前記レゾルバ43は、90〔°〕の位相差で配設された二つの二次コイルを備え、参照信号f(t)を受けると、ロータにおける原点からの回転角θによって参照信号f(t)が変調され、電圧で表される第1、第2の出力信号sa、sb
sa=f(t)・sinθ
sb=f(t)・cosθ
を発生させ、レゾルバ信号としてR/Dコンバータ21に対して出力する。なお、レゾルバ信号の処理においては、位相だけが問題となるので、本実施の形態において、前記参照信号f(t)及び第1、第2の出力信号sa、sbの各振幅を1とする。
【0043】
前記第1、第2の出力信号sa、sbが出力されると、R/Dコンバータ21において、乗算器22は、各加算回路(×cos、×sin)23、24によって、三角関数で表される乗算変数cosφ、sinφを前記出力信号sa、sbにそれぞれ乗算し、乗算値SA、SB
SA=f(t)・sinθ・cosφ
SB=f(t)・cosθ・sinφ
を算出し、乗算値SA、SBを減算器25に送る。なお、φは前記第1、第2の出力信号sa、sbに基づいてR/Dコンバータ21内で特定された角度、すなわち、ディジタル角度である。
【0044】
続いて、減算器25は、乗算値SA、SBを減算し、偏差SC
Figure 0004281391
を算出し、偏差SCを増幅器27を介して制御偏差算出処理手段としての検波器26に送る。該検波器26は、制御偏差算出処理を行い、偏差SC及び励磁回路20から送られた参照信号f(t)に基づいて、参照信号成分を除去し、変調成分を、回転角θの変化量を表す制御偏差ε
ε=sin(θ−φ)
として発生させ、制御偏差εを偏差調整処理手段としての偏差重み付け部28に送る。該偏差重み付け部28は、乗算回路(×4)35及び偏差切換え部としての切換器36を備え、偏差調整処理を行い、前記駆動モータ制御装置45から送られたモード切換信号MDに従って制御偏差εに対して、選択的に所定の重み係数で重み付けを行う。
【0045】
ところで、本実施の形態においては、R/Dコンバータ21においては、後述されるフィードバック制御部91(図1)によるフィードバック制御が行われ、回転角θを算出するようになっているが、そのために、各種の処理における分解能を切り換えることができるようになっている。そして、前記駆動モータ制御装置45は自走範囲変更処理手段としてのモード設定処理部53を備え、該モード設定処理部53は自走範囲変更処理としてのモード設定処理を行い、前記分解能を表す分解能指数を12〔ビット〕と10〔ビット〕とで切り換え、設定する。本実施の形態においては、モード切換信号MDが第1の状態を表すハイレベルであるとき、第1のモードとしての低分解能モードが設定され、分解能指数が10〔ビット〕にされ、モード切換信号MDが第2の状態を表すローレベルであるとき、第2のモードとしての高分解能モードが設定され、分解能指数が12〔ビット〕にされる。
【0046】
この場合、高分解能モードが設定されると、前記各種の処理における処理速度は、低分解能モードが設定されたときの4分の1になり、分解能は、低分解能モードが設定されたときの前記フィードバック制御部91の所定の分解能、すなわち、通常の制御時の回転角速度NDを整定する場合の分解能より高くされ、4倍になる。
【0047】
ところで、前記低分解能モードと高分解能モードとでは、1〔ビット〕当たりの制御偏差εの重みが異なり、低分解能モードが設定されている場合、1〔ビット〕当たりの制御偏差εは、高分解能モードが設定されている場合の4倍になる。そこで、高分解能モードが設定されているときを基準にして、低分解能モードが設定されたときに、重み係数が4にされ、制御偏差εに4倍の重み付けを行う。すなわち、モード切換信号MDがローレベルである場合、高分解能モードが設定されるので、重み付けは行われず、増幅器27から出力された制御偏差εは、そのまま第1の積分処理手段としてのPI補償器37に送られ、モード切換信号MDがハイレベルである場合、低分解能モードが設定されるので、増幅器27から出力された制御偏差εは、乗算回路35による重み付けが行われた後、PI補償器37に送られる。
【0048】
続いて、該PI補償器37は、第1の積分処理を行い、制御偏差εを積分してディジタル値で表される回転角速度NDを算出し、該回転角速度NDを速度記録部としての速度レジスタ39に記録し、特定する。この場合、速度レジスタ39は16〔ビット〕の構成を有し、1〔ビット〕当たりの回転角速度NDの重みは、低分解能モードと高分解能モードとで同じである。そして、低分解能モードが設定されている場合、16〔ビット〕のすべてが回転角速度NDを表すのに使用され、高分解能モードが設定されている場合、処理速度が4分の1になるので、14〔ビット〕だけが回転角速度NDを表すのに使用される。そのために、前記モード切換信号MDがローレベルになると、R/Dコンバータ21のCPUのビット切換処理手段は、ビット切換処理を行い、速度レジスタ39の上位2〔ビット〕を「0」にマスクする。
【0049】
ところで、前記速度レジスタ39に回転角速度NDを記録するに当たり、リミット処理が行われるようになっていて、速度レジスタ39のフルビット、すなわち、16〔ビット〕で表される回転角速度NDの理論上の最高速度を表す最大値「1111111111111111」より回転角速度NDが高くなると、オーバフロー分がカットされ、前記最大値にロックされる。したがって、低分解能モードが設定されていて、15〔ビット〕以上に数値「1」が立っている場合に、モードの切換えが行われて高分解能モードが設定されると、回転角速度NDは、強制的に14〔ビット〕で表される最大値「0011111111111111」に変更される。一方、高分解能モードから低分解能モードにモードが切り換えられる場合、回転角速度NDの値は変更されない。
【0050】
続いて、前記速度レジスタ39に記録された回転角速度NDは、第2の積分処理手段としての積分器(1/s)50に送られる。該積分器50は、第2の積分処理を行い、回転角速度NDを積分し、ディジタル値で表されるディジタル角度φを算出し、該ディジタル角度φを角度レジスタ49に記録する。この場合、角度レジスタ49は12〔ビット〕の構成を有し、1〔ビット〕当たりのディジタル角度φの重みは、低分解能モードと高分解能モードとで同じである。そして、低分解能モードが設定されている場合、10〔ビット〕だけがディジタル角度φを表すのに使用され、高分解能モードが設定されている場合、12〔ビット〕のすべてがディジタル角度φを表すのに使用される。
【0051】
このようにして、ディジタル角度φが角度レジスタ49に記録されると、変数設定処理手段としての変数設定器47は、変数設定処理を行い、R/Dコンバータ21のROMに設定された乗算変数マップを参照し、角度レジスタ49に記録されたディジタル角度φに対応させて乗算変数cosφ、sinφを読み出し、乗算器22に送る。
【0052】
この場合、乗算器22、検波器26、増幅器27、偏差重み付け部28、PI補償器37、速度レジスタ39、積分器50、角度レジスタ49及び変数設定器47によってフィードバック制御部91(図1)が構成され、前記制御偏差εに基づいて位相(θ−φ)が零(0)になり、回転角θとディジタル角度φとが一致するようにフィードバック制御が行われる。
【0053】
また、パルス変換処理手段としてのパルス変換器48が配設され、該パルス変換器48は、パルス変換処理を行い、前記角度レジスタ49の全〔ビット〕の出力、及び前記モード切換信号MDを読み込み、角度レジスタ49に記録されたディジタル角度φの値が変化するたびに前記角度レジスタ49の下位の2〔ビット〕の出力に基づいて、駆動モータ31の回転方向及び回転角θの変化量を表すA相信号及びB相信号を出力する。該A相信号及びB相信号は、互いに位相が90〔°〕ずれた方形波信号であり、A相信号の位相が進んでいる場合は駆動モータ31が正方向に回転していることを、B相信号の位相が進んでいる場合は駆動モータ31が逆方向に回転していることを表す。
【0054】
また、前記パルス変換器48の図示されないゼロ判定処理手段は、ゼロ判定処理を行い、前記全〔ビット〕の出力に基づいて、ディジタル角度φが零になったかどうかを判断し、零になると、ゼロ判定をしてZ相信号を出力する。なお、該Z相信号は、レゾルバ43が1回転するごとに1回出力される。ここで、レゾルバ43が1回転することと、駆動モータ31が1回転することは同値である。
【0055】
ところで、前記回転角θが収束すると、前記駆動モータ制御装置45の第1の通信処理手段としてのシリアル通信I/F54は、第1の通信処理を行い、所定のタイミングでラッチ信号CSをR/Dコンバータ21に送る。そして、前記R/Dコンバータ21において、前記ラッチ信号CSを受けると、データ保持部としてのラッチ回路55は、このときの角度レジスタ49内のディジタル角度φをラッチし、第2の通信処理手段としてのシリアル通信I/F56に記録する。該シリアル通信I/F56は、第2の通信処理を行い、前記シリアル通信I/F54からのクロック信号CLKに従ってディジタル角度φをシリアルに出力し、駆動モータ制御装置45に回転角θとして送る。
【0056】
前記駆動モータ制御装置45は、R/Dコンバータ21から送られた回転角θを読み込み、図示されない絶対値データ記録部に記録する。なお、絶対値データ記録部に記録された回転角θは、ラッチ信号CSをR/Dコンバータ21に送った時点で角度レジスタ49に記録されていたディジタル角度φであり、該ディジタル角度φが基準位置となる。なお、駆動モータ31の始動時においては、駆動モータ制御装置45は、前記絶対値データ記録部に記録された回転角θを、図示されない制御用データ記録部に送り、初期値とする。
【0057】
また、前記駆動モータ制御装置45の回転角設定処理手段としてのエンコーダI/F57は、回転角設定処理を行い、前記A相信号、B相信号及びZ相信号を受けると、A相信号及びB相信号の位相に基づいて、制御用データ記録部に記録された回転角θを設定する。すなわち、A相信号の位相がB相信号の位相より進んでいる場合は、回転角θを大きくし、B相信号の位相がA相信号の位相より進んでいる場合は、回転角θを小さくする。このようにして、前記基準位置に回転角θの変化量が累積させられ、制御タイミングごとの回転角θが推定される。なお、Z相信号を受けると、前記エンコーダI/F57は、制御用データ記録部に記録された回転角θを零にする。
【0058】
ところで、電気自動車の始動キーをオンにすると、電源電圧Vcが駆動モータ制御装置45に印加され、同時に電源電圧VrdがR/Dコンバータ21に印加され、駆動モータ制御装置45及びR/Dコンバータ21が作動を開始する。また、前記励磁回路20には、前記駆動モータ制御装置45及びR/Dコンバータ21が作動を開始した後、所定の時間が経過すると、前記電源Vcc2が投入され、電源電圧Vexが印加されるようになっている。
【0059】
ところが、励磁回路20に電源電圧Vexが印加されるまでの間、参照信号f(t)がレゾルバ43に入力されないので、第1、第2の出力信号sa、sbがR/Dコンバータ21に入力されない状態になる。その結果、R/Dコンバータ21は内部において制御が成立しなくなり、自走してしまう。
【0060】
また、信号系又は電源系の瞬断時、例えば、第1、第2の出力信号sa、sbをR/Dコンバータ21に送るためのレゾルバ信号線が瞬間的に断線するか、又は前記電源Vcc2が瞬間的に切断されると、電源電圧Vexが一時的に低下し、第1、第2の出力信号sa、sbがR/Dコンバータ21に入力されない状態になる。この場合も同様に、R/Dコンバータ21は内部において制御が成立しなくなり、自走してしまう。
【0061】
その結果、その間、磁極位置を検出することができず、電気自動車の制御を行うことができなくなってしまう。
【0062】
なお、電気自動車の場合、電源電圧Vexは、低下した後、例えば、補機用のバッテリ等によって復帰する。また、ハイブリッド型車両の場合、電源電圧Vexは、低下した後、例えば、エンジンによって発電が行われ、それに伴って補機用のバッテリが充電され、電源電圧Vexが復帰する。
【0063】
そこで、本実施の形態においては、電源Vcc2が投入されたとき、及び信号系又は電源系の瞬断時に電源電圧Vexが復帰したときに、R/Dコンバータ21から出力された回転角θが整定され、基準位置とすることができるようになるまでの整定時間を短くし、回転角θを検出することができるようになるまでの時間をその分短くするようにしている。
【0064】
そのために、駆動モータ制御装置45の異常判定処理手段としての電源異常判定部58は、異常判定処理を行い、電源Vcc2の電源電圧Vexを読み込み、該電源電圧Vexが励磁回路20を正常に作動させる範囲にあるかどうか、本実施の形態においては、あらかじめ設定された閾値より低いかどうかによって、電源Vcc2が正常かどうかを判断する。
【0065】
そして、電源Vcc2が正常である場合、モード設定処理部53はモード切換信号MDをローレベルにして分解能指数を12〔ビット〕に設定し、高分解能モードを設定する。したがって、速度レジスタ39に記録される回転角速度NDの理論上の最高速度が強制的に抑制されて低くされ、その状態で回転角速度NDの整定が開始される。
【0066】
一方、電源Vcc2が異常である場合、駆動モータ制御装置45の図示されない駆動モータ停止処理手段は、駆動モータ停止処理を行い、駆動モータ31を停止させるとともに、駆動モータ制御装置45の図示されないタイムディレイ処理手段は、タイムディレイ処理を行い、所定の第1の遅延時間τ1が経過するのを待機する。なお、電動車両がハイブリッド型車両である場合、前記駆動モータ停止処理において、エンジンだけが駆動され、エンジンによってハイブリッド型車両が走行させられる。
【0067】
また、電源電圧VrdのR/Dコンバータ21への印加が開始されてから所定の時間τaが経過すると、R/Dコンバータ21から駆動モータ制御装置45に対してエラー信号ERRが出力される。
【0068】
そして、高分解能モードが設定された後、前記タイムディレイ処理手段は、所定の第2の遅延時間τ2が経過するのを待機し、該遅延時間τ2が経過すると、モード設定処理部53はモード切換信号MDをハイレベルにして分解能指数を10〔ビット〕に設定し、低分解能モードを設定する。したがって、その後は、R/Dコンバータ21における処理速度を高くすることができる。
【0069】
また、R/Dコンバータ21の図示されない比較処理手段としての比較処理部は、比較処理を行い、整定の開始に伴って算出される制御偏差εがあらかじめ設定された閾値εth以下であるかどうかを判断し、制御偏差εが閾値εth以下である場合、エラー信号ERRを出力状態を表すローレベルにし、エラー信号ERRを出力するのを停止する。
【0070】
続いて、前記駆動モータ制御装置45の図示されない整定終了判定処理手段は、整定終了判定処理を行い、前記エラー信号ERRが出力されているかどうかを判断し、前記エラー信号ERRが出力されている場合、整定が終了していないと判定し、前記タイムディレイ処理手段は、所定の第3の遅延時間τ3が経過するのを待機する。
【0071】
そして、エラー信号ERRが出力されない場合、前記モード設定処理部53は分解能指数をその後の用途、すなわち、駆動モータ制御装置45における各種の制御の内容にあわせて設定する。続いて、前記タイムディレイ処理手段は、所定の第4の遅延時間τ4が経過するのを待機し、第4の遅延時間τ4が経過すると、用途に対応するモード、すなわち、低分解能モード又は高分解能モードで回転角θを読み込む。
【0072】
このように、回転角θの整定が開始されるときに高分解能モードが設定され、固有角速度NDの自走範囲がフィードバック制御部91の所定の自走範囲、すなわち、通常の制御時の回転角速度NDを整定する場合の自走範囲より小さくされるので、整定時間を短くすることができる。また、回転角θの整定が開始された後、低分解能モードが設定され、処理速度が高くされるので、整定時間を一層短くすることができる。
【0073】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 励磁用の電源Vcc2が正常かどうかを判断する。励磁用の電源Vcc2が正常である場合はステップS3に、正常でない(異常である)場合はステップS2に進む。
ステップS2 タイマディレイ処理を行い、ステップS1に戻る。
ステップS3 分解能指数を12〔ビット〕に設定する。
ステップS4 タイマディレイ処理を行う。
ステップS5 分解能指数を10〔ビット〕に設定する。
ステップS6 エラー信号ERRが出力されているかどうかを判断する。エラー信号ERRが出力されている場合はステップS7に、出力されていない場合はステップS8に進む。
ステップS7 タイマディレイ処理を行い、ステップS6に戻る。
ステップS8 分解能指数を各種の制御の内容に合わせて設定する。
ステップS9 タイマディレイ処理を行う。
ステップS10 R/Dコンバータ21から回転角θを読み込み、処理を終了する。
【0074】
次に、前記電源Vcc2が投入されたときの回転角検出回路44の動作をタイムチャートに基づいて説明する。
【0075】
まず、図5に示されるように、電気自動車の始動キーをオンにすると、タイミングt1で電源電圧Vcが駆動モータ制御装置45に印加され、同時に電源電圧VrdがR/Dコンバータ21に印加され、駆動モータ制御装置45及びR/Dコンバータ21が作動を開始する。この時点でモード切換信号MDはローレベルにされていて、高分解能モードが設定されているので、速度レジスタ39に記録される回転角速度NDの理論上の最高速度が強制的に抑制されて低くされ、図8に示されるように、回転角速度NDの自走範囲は、
−Ny≦ND≦Ny
になり、小さくされる。
【0076】
また、電源電圧VrdのR/Dコンバータ21への印加が開始されてから所定の時間τaが経過すると、R/Dコンバータ21から駆動モータ制御装置45に対してエラー信号ERRが出力される。なお、R/Dコンバータ21の特性上、電源電圧VrdがR/Dコンバータ21に印加された後、前記時間τaが経過するまでの間は、エラー信号ERRにマスクがされていて、前記エラー信号ERRはハイレベルにはならない。
【0077】
続いて、タイミングt2で電源電圧Vexが励磁回路20に印加されると、参照信号f(t)がレゾルバ43の一次コイルに供給され、前記自走範囲から整定が開始される。これに伴って、前記自走範囲は徐々に小さくされる。
【0078】
次に、タイミングt3で、モード設定処理部53はモード切換信号MDをハイレベルにして低分解能モードを設定する。したがって、その後は、処理速度が高くなるので、自走範囲は急激に小さくされる。
【0079】
そして、タイミングt4で制御偏差εが閾値εth以下になり、値(θ−φ)が収束すると、エラー信号ERRがローレベルになり、駆動モータ制御装置45に対して出力されなくなる。また、これに伴って、シリアル通信I/F54は、ラッチ信号CSをR/Dコンバータ21に送る。そして、前記R/Dコンバータ21において、前記ラッチ信号CSを受けると、ラッチ回路55は、このときの角度レジスタ49内のディジタル角度φをラッチし、シリアル通信I/F56に記録する。該シリアル通信I/F56は、ディジタル角度φをシリアルに出力し、駆動モータ制御装置45に回転角θとして送る。
【0080】
前記駆動モータ制御装置45は、R/Dコンバータ21から送られた回転角θを読み込み、前記絶対値データ記録部に記録する。なお、絶対値データ記録部に記録された回転角θによって基準位置が設定される。続いて、エンコーダI/F57は、回転角設定処理を開始し、A相信号、B相信号及びZ相信号を受け、A相信号及びB相信号の位相に基づいて、制御用データ記録部に記録された回転角θを設定する。
【0081】
なお、タイミングt3でモード切換信号MDがハイレベルにされず、高分解能モードのままで整定が継続された場合、処理速度を高くすることができないので、領域AR1で示されるように、自走範囲は徐々に小さくされる。したがって、整定時間は長くなり、タイミングt5で整定が終了する。
【0082】
なお、仮に、電気自動車の始動キーをオンにしたときから、低分解能モードが設定されている場合、速度レジスタ39に記録される回転角速度NDの理論上の最高速度が抑制されず、R/Dコンバータ21の自走範囲は、
−Nx≦ND≦Nx
になる。しかも、値Nxは値Nyより極めて大きい。
【0083】
したがって、この状態で整定が開始されると、領域AR2で示されるように、整定時間は極めて長くなり、タイミングt6で整定が終了する。なお、図7に示されるように、回転角速度NDに対応させて整定時間の最大値Tsmが設定されていて、駆動モータ制御装置45の電源異常判定部58は、異常判定処理を行い、整定を開始するのに伴って計時を開始し、整定を開始してから経過した時間が前記最大値Tsmを超えたときに、レゾルバ信号線が物理的に断線した場合等のように異常が発生したと判断する。
【0084】
次に、信号系又は電源系の瞬断時の回転角検出回路44の動作をタイムチャートに基づいて説明する。
【0085】
図6に示されるように、駆動モータ31が駆動されていて、回転角速度NDの値がNnであり、しかも、電源電圧Vcが駆動モータ制御装置45に印加され、電源電圧VrdがR/Dコンバータ21に印加され、駆動モータ制御装置45及びR/Dコンバータ21が作動している状態において、タイミングt11で、レゾルバ信号線が瞬間的に断線するか、又は前記電源Vcc2が瞬間的に切断されると、電源電圧Vexが一時的に低下し、第1、第2の出力信号sa、sbがR/Dコンバータ21に入力されない状態になる。そして、所定の時間τaが経過すると、R/Dコンバータ21から駆動モータ制御装置45に対してエラー信号ERRが出力される。
【0086】
この時点で、モード切換信号MDはハイレベルにされていて、低分解能モードが設定されているので、速度レジスタ39に記録される回転角速度NDの理論上の最高速度が低くされず、R/Dコンバータ21の自走範囲は抑制されず、
−Nx≦ND≦Nx
になる。続いて、タイミングt12で、モード設定処理部53はモード切換信号MDをローレベルにして高分解能モードを設定する。これに伴って、速度レジスタ39に記録される回転角速度NDの理論上の最高速度が強制的に抑制されて低くされ、R/Dコンバータ21の自走範囲は、
−Ny≦ND≦Ny
になる。
【0087】
続いて、タイミングt13で電源電圧Vexが回復すると、参照信号f(t)がレゾルバ43の一次コイルに供給され、前記R/Dコンバータ21の自走範囲から整定が開始される。これに伴って、前記自走範囲は徐々に小さくされる。
【0088】
次に、タイミングt14で、モード設定処理部53はモード切換信号MDをハイレベルにして低分解能モードを設定する。したがって、その後は、処理速度が高くなるので、自走範囲は急激に小さくされる。
【0089】
そして、正しい回転方向とR/Dコンバータ21の自走方向とが同じ場合、タイミングt15で制御偏差εが閾値εth以下になり、値(θ−φ)が収束すると、エラー信号ERRがローレベルになり、駆動モータ制御装置45に対して出力されなくなる。また、これに伴って、シリアル通信I/F54は、ラッチ信号CSをR/Dコンバータ21に送る。そして、該R/Dコンバータ21において、前記ラッチ信号CSを受けると、ラッチ回路55は、このときの角度レジスタ49内のディジタル角度φをラッチし、シリアル通信I/F56に記録する。該シリアル通信I/F56は、ディジタル角度φをシリアルに出力し、駆動モータ制御装置45に回転角θとして送る。
【0090】
前記駆動モータ制御装置45は、R/Dコンバータ21から送られた回転角θを読み込み、前記絶対値データ記録部に記録する。なお、絶対値データ記録部に記録された回転角θによって基準位置が設定される。続いて、エンコーダI/F57は、回転角更新処理を開始し、A相信号、B相信号及びZ相信号を受け、A相信号及びB相信号の位相に基づいて、制御用データ記録部に記録された回転角θを更新する。
【0091】
そして、正しい回転方向とR/Dコンバータ21の自走方向とが逆である場合、タイミングt15より遅いタイミングt16で制御偏差εが閾値εth以下になり、回転角θが収束すると、エラー信号ERRがローレベルになり、駆動モータ制御装置45に対して出力されなくなる。また、これに伴って、エンコーダI/F57は、回転角更新処理を開始し、A相信号、B相信号及びZ相信号を受け、A相信号及びB相信号の位相に基づいて、制御用データ記録部に記録された回転角θを更新する。図8において、αは正しい回転方向とR/Dコンバータ21の自走方向とが逆であり、低分解能モードが設定されているときの自走範囲を、βは正しい回転方向とR/Dコンバータ21の自走方向とが逆であり、高分解能モードが設定されているときの自走範囲を示す。
【0092】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0093】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、回転角検出装置においては、レゾルバを励磁するための参照信号を発生させる励磁回路と、前記参照信号を受け、該参照信号を電動機械の回転角によって変調することにより出力信号を発生させるレゾルバと、前記出力信号及び前記参照信号に基づいて電動機械の回転角速度を特定して速度レジスタに記録するとともに、特定された回転角速度を積分して算出されたディジタル角度を前記出力信号に対してフィードバックして、前記ディジタル角度と電動機械の回転角との偏差が零になるようにフィードバック制御を行い、前記電動機械の回転角を算出するフィードバック制御部と、前記電動機械の回転角の整定が開始されるときの、前記速度レジスタに記録される回転角速度の最高速度によって決まる範囲を表す自走範囲を小さくする自走範囲変更処理手段とを有する。
【0094】
この場合、回転角の整定が開始されるときの回転角速度の自走範囲が小さくされるので、整定時間を短くすることができる。したがって、回転角を検出することができるようになるまでの時間をその分短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における回転角検出装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における電動駆動装置の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態における回転角検出装置のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における回転角検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態における励磁用の電源が投入されたときの回転角検出装置の動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における信号系又は電源系の瞬断時の回転角検出装置の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施の形態における駆動モータ回転速度と整定時間最大値との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるR/Dコンバータを整定する際の回転速度領域を説明する図である。
【符号の説明】
20 励磁回路
43 レゾルバ
44 回転角検出回路
45 駆動モータ制御装置
53 モード設定処理部
57 エンコーダI/F
58 電源異常判定部
91 フィードバック制御部
Vcc2 電源

Claims (9)

  1. レゾルバを励磁するための参照信号を発生させる励磁回路と、前記参照信号を受け、該参照信号を電動機械の回転角によって変調することにより出力信号を発生させるレゾルバと、前記出力信号及び前記参照信号に基づいて電動機械の回転角速度を特定して速度レジスタに記録するとともに、特定された回転角速度を積分して算出されたディジタル角度を前記出力信号に対してフィードバックして、前記ディジタル角度と電動機械の回転角との偏差が零になるようにフィードバック制御を行い、前記電動機械の回転角を算出するフィードバック制御部と、前記電動機械の回転角の整定が開始されるときの、前記速度レジスタに記録される回転角速度の最高速度によって決まる範囲を表す自走範囲を小さくする自走範囲変更処理手段とを有することを特徴とする回転角検出装置。
  2. 前記自走範囲はフィードバック制御部の通常の制御時の自走範囲より小さくされる請求項1に記載の回転角検出装置。
  3. 前記フィードバック制御部は、あらかじめ設定された分解能でフィードバック制御を行い、前記自走範囲変更処理手段は、電動機械の回転角の整定が開始されるときの分解能を前記フィードバック制御部の所定の分解能より高くする請求項1に記載の回転角検出装置。
  4. 前記自走範囲変更処理手段は、電動機械の回転角の整定が開始された後、分解能を低くする請求項3に記載の回転角検出装置。
  5. 前記自走範囲変更処理手段は、励磁回路の電源が投入されたときに、回転角速度の自走範囲を前記フィードバック制御部の所定の自走範囲より小さくする請求項1に記載の回転角検出装置。
  6. 前記自走範囲変更処理手段は、励磁回路の電源に異常が発生したかどうかを判断する電源異常判定部を有するとともに、前記自走範囲変更処理手段は、前記電源に異常が発生した場合に、回転角速度の自走範囲を前記フィードバック制御部の所定の自走範囲より小さくする請求項1に記載の回転角検出装置。
  7. 前記フィードバック制御部は、前記出力信号に基づいて制御偏差を算出する制御偏差算出処理手段、及び前記制御偏差が閾値以下である場合に、電動機械の回転角の整定が終了したと判定する整定終了判定処理手段を有する請求項1に記載の回転角検出装置。
  8. 前記電動機械の回転角の整定が終了したと判定されたときの回転角を基準位置として、回転角を設定する回転角設定処理手段を有する請求項1に記載の回転角検出装置。
  9. レゾルバを励磁するための参照信号を発生させる励磁回路、及び前記参照信号を受け、該参照信号を電動機械の回転角によって変調することにより出力信号を発生させるレゾルバを有する回転角検出装置の回転角検出方法において、前記出力信号及び前記参照信号に基づいて電動機械の回転角速度を特定して速度レジスタに記録するとともに、特定された回転角速度を積分して算出されたディジタル角度を前記出力信号に対してフィードバックして、前記ディジタル角度と電動機械の回転角との偏差が零になるようにフィードバック制御を行い、前記電動機械の回転角を算出し、該回転角の整定が開始されるときの、前記速度レジスタに記録される回転角速度の最高速度によって決まる範囲を表す自走範囲を小さくすることを特徴とする回転角検出方法。
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