JP4281148B2 - 穴部の肉盛り方法および肉盛り装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩耗やクラック修理のため等に母材の穴部に肉盛りを行う穴部の肉盛り方法および肉盛り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械部品等の穴部の摩耗やクラック修理のために、穴部の内側に肉盛りを行う場合があるが、母材がアルミ合金等においても他の金属と同様に、従来は、TIG溶接法(タングステン電極を用いる不活性ガスアーク溶接法)等の溶融溶接により当該穴部の肉盛りを行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の肉盛り手段では、以下のような課題が残されている。すなわち、アルミ合金等の軽金属の穴部の修理の際、TIG溶接等の溶融溶接による肉盛りを実施すると、かなりの高温になるため、熱によって部品の変形や材料の機械強度低下が発生してしまい、肉盛り不良が生じる場合があった。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、熱による変形や強度低下を抑えて穴部に肉盛りを行うことができる穴部の肉盛り方法および肉盛り装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る穴部の肉盛り方法では、穴部の底に溶接材を設置する工程と、穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒を回転させながら穴部に圧入する工程と、を備えた技術が採用される。
【0006】
この穴部の肉盛り方法では、穴部の底に溶接材を設置して穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒を回転させながら穴部に圧入するので、摩擦棒の先端面が溶接材に押し付けられて高速回転することにより、摩擦棒と溶接材と、もしくは溶接材と穴部の底との接触面が摩擦により瞬時に大きく発熱する。そして、溶接材の塑性化成分が摩擦棒の運動(圧入、回転)によって塑性流動し、摩擦棒と母材との隙間に押し出され、母材と混合されて接合する。
【0007】
第2の発明に係る穴部の肉盛り方法では、第1の発明に係る穴部の肉盛り方法において、貫通した穴部の一方を塞いで底を形成する工程を備えた技術が採用される。
【0008】
また、第3の発明に係る穴部の肉盛り装置では、貫通した穴部の一方を塞ぐ当て部材と、穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒と、摩擦棒を回転させるとともに穴部に圧入する駆動手段と、を備えた技術が採用される。
【0009】
上記の穴部の肉盛り方法では、貫通した穴部の一方を塞いで底を形成する工程を備え、また上記の穴部の肉盛り装置では、貫通した穴部の一方を塞ぐ当て部材と、穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒と、摩擦棒を回転させるとともに穴部に圧入する駆動手段と、を備えているので、穴部の底に溶接材を載置することにより、圧入・回転する摩擦棒と穴部の底(当て部材)とで溶接材を挟んで塑性流動させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る穴部の肉盛り方法および肉盛り装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
これらの図において、符号1は摩擦棒、2は駆動手段、3は母材、4は溶接材である。
【0011】
本実施形態の肉盛り方法に用いる肉盛り装置は、図1に示すように、例えば、アルミ合金で形成された母材3(本実施形態では、厚さが均一な板状のもの)に空けられた比較的小さな穴部3a(例えば、ピン用の穴部)の内側を肉盛りして修理する装置であって、工具鋼で形成され回転可能なプラグである摩擦棒1と、該摩擦棒1を所定の回転数で回転駆動するとともに軸方向に進退させる駆動手段2とを備えている。
【0012】
この肉盛り装置を用いた穴部3aの肉盛り方法を、以下に説明する。
まず、母材3の下面側において穴部3aの開口端を閉塞するように当て板(当て部材)5を当てがう。
さらに、穴部3a内にその内径より小さい外径の円柱状に成形された溶接材4を入れ、穴部3aの底(当て板5の上面)に載置する。
なお、前記溶接材4は、母材3と同じ材料であるアルミ合金で形成されている。
また、摩擦棒1は、その外径が肉盛りに必要な厚さだけ穴部3aの穴径より小さく設定され、かつ穴部3aと軸線を一致させて配されている。
【0013】
次に、この状態で、摩擦棒1を駆動手段2によって、所定の回転数で回転させるとともに、図2に示すように、穴部3a内に圧入させる。
このとき、主に高速回転する摩擦棒1の先端面1aが全体的に溶接材4に接触して、摩擦棒1と溶接材4との間、もしくは溶接材4と当て板5との間で瞬間的に大きな摩擦熱を発生させる。
なお、溶接材4および母材3は、この摩擦熱によって溶接材4および母材3を形成するアルミ合金の融点より低い温度で、かつ塑性流動させるのに十分な温度まで加熱される。
【0014】
そして、塑性化された溶接材4は、摩擦棒1によって塑性流動し、摩擦棒1と母材3との隙間に押し出されて該隙間を埋める。この際、溶接材4と母材3とが混合、接合し、穴部3aの内側が肉盛りされる。なお、溶接材4は、摩擦棒1と母材3との隙間を十分に埋めることができるだけの量のものが採用される。
このように、本実施形態の穴部の肉盛り方法では、母材3の融点まで温度を上昇させず、瞬時に溶接材4を塑性流動させるため、変形や強度低下が抑えられ、穴部3aの良好な肉盛りが可能となる。
【0015】
また、摩擦棒1の外径が肉盛りに必要な厚さだけ穴径より小さく設定され穴部3aと軸線を一致させて配されているので、摩擦棒1を圧入して溶接材4を塑性流動させた際に、溶接材4が摩擦棒1と母材3との隙間に押し出されて隙間を埋め、そのまま肉盛りとなるため、肉盛り厚さが自動的に必要な所定厚さとなる。
【0016】
本発明は、次のような実施形態をも含むものである。
(1)上記実施形態では、母材3と同じ材料の溶接材4を用いたが、溶接材料として肉盛りに適用可能な材料であれば、他の材料で溶接材を形成しても構わない。
(2)母材を3を貫通する穴部3aにおける肉盛りに適用したが、貫通していない有底形状の穴部における肉盛りに適用しても構わない。この場合、穴部に底があるため、強度上問題がなければ、上記実施形態のように穴部の底を形成するために当て板を当てがう必要はない。
(3)溶接材4の形状を円柱状にしたが、これに限るものではなく、他の形状のものを採用しても構わない。例えば、十分な摩擦熱が得られるものであれば、粒状の溶接材を適用してもよい。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1の発明に係る穴部の肉盛り方法によれば、穴部の底に溶接材を設置する工程と、穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒を回転させながら穴部に圧入する工程と、を備えているので、母材の融点まで温度を上昇させずに、摩擦熱で溶接材を瞬時に塑性化させ、摩擦棒の運動で摩擦棒と母材との隙間に押し出すことにより、部品の変形や機械強度低下を抑制することができる。したがって、従来の穴部に対する溶融溶接による肉盛り方法に比べて、劣化が格段に小さく、高い接合 強度有する良好な肉盛りが可能となる。
【0018】
(2)第2の発明に係る穴部の肉盛り方法では、貫通した穴部の一方を塞いで底を形成する工程を備え、また第3の発明に係る穴部の肉盛り装置では、上記の穴部の肉盛り装置では、貫通した穴部の一方を塞ぐ当て部材と、穴部の穴径よりも外径が小さい摩擦棒と、摩擦棒を回転させるとともに穴部に圧入する駆動手段と、を備えているので、摩擦棒と穴部の底(当て部材)とで溶接材を挟んで塑性流動させることができ、貫通した穴部でも容易に良好な肉盛りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る穴部の肉盛り方法および肉盛り装置の一実施形態における圧入前の状態を示す要部を破断した斜視図である。
【図2】 本発明に係る穴部の肉盛り方法および肉盛り装置の一実施形態における圧入後の状態を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
1 摩擦棒
1a 摩擦棒の先端面
2 駆動手段
3 母材
3a 穴部
4 溶接材
5 当て板(当て部材)

Claims (3)

  1. 穴部の底に溶接材を設置する工程と、外径が肉盛りに必要な厚さだけ穴部の穴径より小さく設定され、かつ、穴部と軸線を一致させて配されている摩擦棒を回転させながら穴部に圧入する工程と、を備えたことを特徴とする穴部の肉盛り方法。
  2. 貫通した穴部の一方を塞いで底を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の穴部の肉盛り方法。
  3. 貫通した穴部の一方を塞ぐ当て部材と、外径が肉盛りに必要な厚さだけ穴部の穴径より小さく設定され、かつ、穴部と軸線を一致させて配されている摩擦棒と、摩擦棒を回転させるとともに穴部に圧入する駆動手段と、を備えたことを特徴とする穴部の肉盛り装置。
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