JP4281084B2 - 水蒸気改質器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成する反応室を設けた水蒸気改質器に関し、特に反応室に粒子状の触媒を偏りなく均一充填できる反応室を設けた水蒸気改質装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタン等の炭化水素、メタノール等の脂肪族アルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、天然ガスや都市ガス等の原料ガスと水蒸気の混合物(以下、原料−水蒸気混合物という)を水蒸気改質触媒の存在下に水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを生成する水蒸気改質器が知られている。このような水蒸気改質器として例えば、水蒸気改質触媒に酸化触媒を共存させ、原料ガスを水蒸気と酸素の存在下に該触媒で自己酸化および改質を行い、水素リッチな改質ガスを生成する自己酸化型の水蒸気改質器が特許文献1で提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−192201号公報
【0004】
特許文献1に提案された技術では、酸化触媒と水蒸気改質触媒からなる混合触媒層で酸化反応による発熱と水蒸気改質反応を同時に行っている。すなわち、酸化発熱層と水蒸気改質反応(吸熱反応)層が共存することにより、酸化反応による加熱部の温度と改質反応による吸熱部の温度を同等に維持することが可能となり、触媒等の構成部材の温度を所定の改質反応温度以下、例えば700℃近傍に抑制でき,それによって構成部材の寿命短縮も防止でき得るとしている。また水蒸気改質器内部の熱を有効に回収する機能を併せ持っているので高い改質効率を得られるとされている。
【0005】
図3は自己酸化型の水蒸気改質器の1例を示す模式的な断面図である。水蒸気改質器1は反応室1aを備え、反応室1aは内筒2とその周囲に配置した外筒3により構成される。内筒2内の最上部には水蒸気改質触媒と酸化触媒を混合した混合触媒層4および酸素含有ガス導入部5を設けた高温反応部6が配置され、その下側に伝熱層からなる隣接層7が配置され、更に隣接層7の下側に高温シフト触媒層8と低温シフト触媒層9が順に配置される。
【0006】
水蒸気改質触媒は原料ガスを水蒸気改質する触媒層であり、例えばNiS−SiO2 3 やNiS−WS2 ・SiO2 ・Al2 3 などの水蒸気改質触媒が使用される。
【0007】
酸化触媒は原料−水蒸気混合物中の原料ガスを酸化発熱させて、水蒸気改質反応に必要な温度を得るもので、例えば白金(Pt)やパラジウム(Pd)が使用される。水蒸気改質触媒に対する酸化触媒の混合割合は、水蒸気改質すべき原料ガスの種類に応じて1〜5%程度の範囲で選択される。例えば原料ガスとしてメタンを使用する場合は3%±2%程度、メタノールの場合は2%±1%程度の混合割合とされる。
【0008】
高温シフト触媒層7や低温シフト触媒層9を形成するシフト触媒としては、CuO−ZnO2 、Fe2 3 、Fe3 4 または酸化銅の混合物等が使用されるが、700℃以上で反応を行う場合にはCr2 3 を使用することもある。隣接層7を構成する伝熱層は、高温反応部6から流出する改質ガスから熱を吸収して冷却するもので、セラミック粒子などの伝熱性のよい粒子を充填して形成する。なお、伝熱粒子を充填する代りに上下にガス流路を形成した耐熱性のセラミック構造体や伝熱フィンで伝熱層を形成することもできる。
【0009】
内筒2に配置した混合触媒層4、隣接層7、高温シフト触媒層8および低温シフト触媒層9の各底部は、通気性の支持体10,11,12,13でそれぞれ支持される。酸素含有ガス導入部5は導入管14とその先端部に設けた複数の噴出孔15により構成され、例えば図示しない空気圧縮装置から供給される加圧空気を酸素含有ガスとして導入管14に供給し、噴出孔15からその酸素含有ガスを混合触媒層4内に吹き込むようになっている。
【0010】
外筒3内の最上部に水蒸気改質触媒層16が配置され、その下側に伝熱層17が配置される。そして水蒸気改質触媒層16および伝熱層17の底部はそれぞれ通気性の支持体18,19で支持される。伝熱層17の下方に原料ガス−水蒸気混合物の供給部20が連通し、水蒸気触媒層16の上側に排出部21が連通し、その排出部21は内筒2の高温反応部6の上側に連通する供給部22に連通する。さらに内筒2の最下側に配置した前記低温シフト触媒層9の下方に改質ガスを排出する排出部23が連通する。
【0011】
高温反応部6の内部温度は水蒸気改質反応を促進する高温領域に維持する必要がある。そのためには可能な限り不要な熱拡散を抑制することが重要になり、高温反応部6を配置した内筒2部分と水蒸気触媒層16を配置した外筒3部分の間に中空部を有する断熱部24が設けられる。
【0012】
次に上記した水蒸気改質器1による改質操作について説明する。先ず原料ガス−水蒸気混合物を供給部20に供給すると、その原料ガス−水蒸気混合物は隣接層7、高温シフト触媒層8および低温シフト触媒層9からの伝熱で温度上昇している伝熱層17を通過する間に温度上昇し、次いで水蒸気改質触媒層16に流入して原料ガスの一部が水蒸気改質される。外筒3の排出部21から改質ガスと残りの原料ガス−水蒸気混合物が排出し、内筒2の供給部22から高温反応部6に流入する。
【0013】
高温反応部6では原料ガス−水蒸気混合物に含まれる原料ガスの一部が混合触媒層4を構成する酸化触媒の存在下に、酸素含有ガス導入部5から供給される酸素含有ガスの酸素により酸化反応する。この酸化反応により原料−水蒸気混合物は改質反応に必要な温度範囲、例えば650℃〜750℃程度、標準的には700℃前後まで昇温する。すなわち酸化触媒による自己酸化加熱が行われ、その昇温によって原料ガス−水蒸気混合物の水蒸気改質反応が促進され、水素リッチな改質ガスが効率よく生成する。なお前記外筒3の水蒸気改質触媒層16は高温反応部6の予備改質部として機能する。
【0014】
高温反応部6で生成した改質ガスはその下側の隣接層7に流出し、そこで熱交換されて温度低下してから高温シフト触媒層8、低温シフト触媒層9を順に通過し、残留する一酸化炭素の殆どが水素に変換される。そして高純度の改質ガスが低温シフト触媒層9から排出部23を経て図示しない負荷設備、例えば工業用、家庭用または車両搭載用等の燃料電池に供給される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記水蒸気改質触媒、酸化触媒およびシフト触媒は、通常均一な直径に造粒した小さい粒子状のものが使用され、それら多数の粒子状の触媒を反応室1a内に層状に最密充填することにより、水蒸気改質触媒層16、混合触媒層4、高温シフト触媒層8および低温シフト触媒層9等が形成される。
【0016】
これら触媒層の外周は反応室1aを構成する側壁の内面に接するが、その内面には触媒層を形成する個々の小さな粒子状の触媒がそれぞれ点接触される。図4は高温反応部6を例として、反応室1aを構成する内筒2の内面2aと混合触媒層4との接触状態を模式的に示す部分拡大図である。粒子状の触媒30を最密充填して混合触媒層4を形成した場合には、混合触媒層4の最外周部に存在する粒子状の触媒30は内面2aの平らな面に沿って均一に配列する。
【0017】
上記配列した各粒子状の触媒30は、それぞれ内面2aとA部分で点接触しており、その接触点以外の周面は内面2aから離反している。その離反部分には空隙部Bが形成されるが、空隙部Bは2段目以降において互いに隣接する粒子状の触媒30の間に形成される空隙部Cより大きくなる。すなわち空隙部Cは粒子状の触媒30を最密充填することによって比較的小さくできるが、隣接面が平らな内面2aである場合の空隙部Bはそれより大きくなる。
【0018】
このように混合触媒層4の中間部分に三次元的に形成される各空隙部Cの空隙率(単位容積あたりの空隙容積)と内面2aに接した部分に二次元的に形成される各空隙部Bの空隙率を比較すると、前者より後者のほうが大きくなる。そのため混合触媒層4は原料ガス−水蒸気混合物の流通方向に垂直な面の空隙率の分布が異なる結果になり、結果として単位断面積当たりのガス流量は空隙率の小さい中間部分より空隙率の大きい周辺部分のほうが大きくなる。
【0019】
このようにガス流量に偏りを生じると、触媒層を通過するガスが触媒と接触する時間にバラツキが起こり、全体としての反応効率が低下する。また触媒層の外周部分は粒子状の触媒30の充填効率が低くなるので、その面からも反応効率が低下する。そこで本発明はこのような粒子状の触媒30を充填して形成した触媒層の問題を解決することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成する反応室を設けた水蒸気改質器において、前記反応室の内部に粒子状の触媒を充填した触媒層を配置し、該触媒層に接する反応室の内面を凹面が二次元的に均一に連続するディンプル面とし、前記粒子状の触媒が前記凹面に面接触できるように構成したことを特徴とする(請求項1)。
【0021】
上記水蒸気改質器において、前記反応室は酸素含有ガス導入部と高温反応部を有する内筒と、内筒の周囲に設けた外筒を備え、前記高温反応部に粒子状の水蒸気改質触媒と酸化触媒を充填した混合触媒層を配置し、前記外筒に粒子状の水蒸気改質触媒を充填した水蒸気改質触媒層を配置し、混合触媒層に接する内筒の内面および水蒸気改質触媒層に接する外筒の内面をそれぞれ前記ディンプル面とすることが出来る(請求項2)。
【0022】
上記内筒と外筒を反応室とする水蒸気改質器において、前記内筒に更に粒子状のシフト触媒を充填したシフト触媒層を配置し、そのシフト触媒層に接する内筒の内面を前記ディンプル面とすることが出来る(請求項3)。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明に係る水蒸気改質器1における反応室1aの内面2aを示す部分的な斜視図である。図1の反応室1aは図3と同様な内筒2と外筒3により構成されるが、その内筒2に設けた高温反応部6の混合触媒層4を例として説明する。
【0024】
高温反応部6に配置した混合触媒層4は小さい粒子状の触媒30(粒子状の水蒸気触媒および粒子状の酸化触媒の混合触媒)を最密充填して形成される。内筒2における少なくとも混合触媒層4と接する内面2aは凹面が二次元的に等間隔で連続するディンプル面40とされる。そして混合触媒層4を形成する粒子状の触媒30の最外周部分がディンプル面40と接する。
【0025】
ディンプル面40の各凹部は等しい曲率半径を有し、その曲率半径は均一に造粒成形された粒子状の触媒30の曲率半径と等しいか又は僅かに大きく(例えば数%大きく)される。一般に造粒成形により作られる水蒸気改質触媒、酸化触媒またはシフト触媒等の直径は1.0〜4.0mm程度であるので、その曲率半径に適合した凹部を有するディンプル面40を形成する。
【0026】
図2は混合触媒層4と内面2aとの接触状態を模式的に示す拡大図である。前記のように、ディンプル面40の各凹部は粒子状の触媒30と実質的に等しい曲率半径とすることにより、内筒2の内面2aに接する粒子状の触媒30は各凹部に面接触した状態で配列する。そのため内面2aと粒子状の触媒30との間に形成される空隙部Bは図4の例より小さくなり、2段目以降において互いに隣接する粒子状の触媒30の間に形成される空隙部Cと実質的に同等になる。
【0027】
上記のように空隙部Bと空隙部Cの大きさが同程度になると、混合触媒層4全体が同じ空隙率になるので、流通する原料ガス−水蒸気混合物に偏りを生じることがなく均一流を維持できる。そのため混合触媒層4を通過する原料ガス−水蒸気混合物と触媒との接触時間も均一化し、高温反応部6における図4の例のような反応効率低下は起こらない。また粒子状の触媒30も理想的な最密充填が可能になるので、同じ空間内に多くの粒子状の触媒30を充填することができる。従って高温反応部6の反応効率は図4の例より向上する。
【0028】
上記実施形態は混合触媒層4が接する内筒2の内面2aについて説明しているが、本発明はこれに限らず、水蒸気改質触媒層16が接する外筒3の内面、高温シフト触媒層8や低温シフト触媒層9が接する内筒2の内面2aについても同様に適用できる。また内筒と外筒により構成される反応室1aを有する水蒸気改質器に限らず、その他の形式の反応室1aを備えた水蒸気改質器にも本発明は同様に適用できる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明の水蒸気改質器は、原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成する反応室の内部に粒子状の触媒を充填した触媒層を配置し、該触媒層に接する反応室の内面を凹面が二次元的に均一に連続するディンプル面とし、前記粒子状の触媒が前記凹面に面接触できるように構成したことを特徴とする。
【0030】
このように触媒層に接する反応室の内面を上記のようなディンプル面とすることにより、触媒層を通過するガスと触媒との接触時間も均一化し、従来のような反応効率低下は起こらない。また粒子状の触媒を理想的に最密充填することが可能になるので、同じ空間内に多くの粒子状の触媒を充填することができる。従って水蒸気改質器の反応効率を向上できる。
【0031】
上記水蒸気改質器において、前記反応室は酸素含有ガス導入部と高温反応部を有する内筒と、内筒の周囲に設けた外筒を備え、前記高温反応部に粒子状の水蒸気改質触媒と酸化触媒を充填した混合触媒層を配置し、前記外筒に粒子状の水蒸気改質触媒を充填した水蒸気改質触媒層を配置し、混合触媒層に接する内筒の内面および水蒸気改質触媒層に接する外筒の内面をそれぞれ前記ディンプル面とすることが出来る。このように二重筒構造の反応室に複数の触媒層を配置した水蒸気改質器であっても、各触媒層が接する反応室の内面を前記ディンプル面とすることにより、それぞれの反応部について前記と同様に反応効率をそれぞれ向上できる。
【0032】
上記内筒と外筒を反応室とする水蒸気改質器において、その内筒に更に粒子状のシフト触媒を充填したシフト触媒層を配置し、そのシフト触媒層に接する内筒の内面を前記ディンプル面とすることができる。このようなシフト触媒層と接する内面を前記ディンプル面とすることにより、その反応部について前記と同様に反応効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水蒸気改質器における反応室部分の部分的な斜視図。
【図2】本発明に係る水蒸気改質器における反応室の内面とそれに接する触媒層を模式的に示す部分拡大図。
【図3】自己酸化型の水蒸気改質器の1例を示す模式的な断面図。
【図4】図3における反応室の内面とそれに接する触媒層を模式的に示す部分拡大図。
【符号の説明】
1 水蒸気改質器
1a 反応室
2 内筒
2a 内面
3 外筒
4 混合触媒層
5 酸素含有ガス導入部
6 高温反応部
7 隣接層
8 高温シフト触媒層
9 低温シフト触媒層
10〜13 支持体
14 導入管
15 噴出孔
16 水蒸気改質触媒層
17 伝熱層
18,19 支持体
20 供給部
21 排出部
22 供給部
23 排出部
24 断熱部
30 粒子状の触媒
40 ディンプル面
A 接触点
B,C 空隙部

Claims (3)

  1. 原料ガスと水蒸気を反応させて改質ガスを生成する反応室1aを設けた水蒸気改質器1において、
    前記反応室1aの内部に粒子状の触媒30を充填した触媒層が配置され、該触媒層に接する反応室1aの内面は凹面が二次元的に均一に連続するディンプル面40とされ、前記粒子状の触媒30が前記凹面に面接触できるように構成したことを特徴とする水蒸気改質器。
  2. 請求項1において、
    前記反応室1aは酸素含有ガス導入部5と高温反応部6を有する内筒2と、内筒2の周囲に設けた外筒3を備え、前記高温反応部6には粒子状の水蒸気改質触媒と酸化触媒を充填した混合触媒層4が配置され、前記外筒3には粒子状の水蒸気改質触媒を充填した水蒸気改質触媒層16が配置され、混合触媒層4に接する内筒2の内面2aおよび水蒸気改質触媒層16に接する外筒3の内面がそれぞれ前記ディンプル面40とされていることを特徴とする水蒸気改質器。
  3. 請求項2において、
    前記内筒2には更に粒子状のシフト触媒を充填したシフト触媒層8.9が配置され、そのシフト触媒層8,9に接する内筒2の内面2aが前記ディンプル面40とされていることを特徴とする水蒸気改質器。
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