JP4279954B2 - 太陽電池モジュール用瓦 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建物の屋根材として用いられる瓦に太陽電池モジュールを搭載した太陽電池モジュール用瓦に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物の屋根材として用いられる瓦に太陽電池を搭載し、太陽エネルギーを電気に変換して利用する技術は、実開昭62−52610号公報、実開平1−148417号公報、実開平4−28524号公報及び実開平5−3430号公報等で知られている。
【0003】
実開昭62−52610号公報は、瓦や外壁を対象とした外装材の上面に太陽電池に適合する形状の凹陥部を設け、この凹陥部に太陽電池を装着したものである。
【0004】
実開平1−148417号公報は、平板瓦の下部表面に太陽電池を設け、この太陽電池のリード線を平板瓦の上縁両端裏面の空間部が形成される部分から導出したものである。
【0005】
実開平4−28524号公報は、瓦の表面に凹陥部を設け、この凹陥部に太陽電池を接着剤を介して接着するとともに、凹陥部の一部に端子導出孔を穿設し、太陽電池の端子を端子導出孔から瓦の裏面側に導出したものである。
【0006】
実開平5−3430号公報は、瓦の表面に太陽電池を接着するとともに、太陽電池の表面に不透明なシートを剥離可能に密着し、瓦葺き作業時にシートによって太陽電池を保護するようにしたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来の太陽電池搭載型瓦は、瓦本体に対して太陽電池を直接接着剤によって接着したり、瓦本体に凹陥部を設け、この凹陥部の底面に太陽電池を接着剤を介して接着し、さらに太陽電池と凹陥部の内周面との間の隙間にコーキング材を充填することにより固定している。
【0008】
しかしながら、接着剤やコーキング材は劣化しやすく、殊に屋根のように太陽光に晒されて高温度となったり、風雨に晒される環境下においては、劣化の進行も早く、亀裂が生じて雨水等が浸入しやすいという問題と急勾配の屋根の場合には瓦本体から太陽電池が落下する恐れがある。また、コーキング材がはみ出して太陽電池の表面に付着すると光電変換効率が低下するという問題もある。
【0009】
さらに、前述した実開昭62−52610号公報や実開平4−28524号公報のように瓦の表面に凹陥部を設け、この凹陥部に太陽電池を接着したものは、凹陥部の底部に雨水が溜まり、溜まった雨水が太陽熱によって加熱されて膨張し、太陽電池が浮き上がる恐れがある。また、実開平4−28524号公報のように凹陥部の底部に端子導出孔を設けたものは、端子導出孔から雨水が瓦の裏面側に流れ込み、野地板を腐食させ、雨漏りの原因となる。
【0010】
さらに、実開平1−148417号公報のように太陽電池のリード線を平板瓦の上縁両端裏面の空間部が形成される部分から導出したものは、配線作業が困難であるとともに、雨水等が浸入した場合には漏電、短絡の恐れがある。また、1枚の瓦を太陽電池とともに交換しようとしても、周囲の数枚の瓦をいったん取り外さなければならないという困難な作業となる。また、実開平5−3430号公報は、接着剤が劣化して太陽電池が瓦から剥離すると太陽電池が脱落する恐れのある構造である。
【0011】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、太陽電池モジュールを収納する凹陥部に雨水等が浸入しても漏電、短絡の恐れはなく、また野地板等の腐食の恐れはない信頼性の高い太陽電池モジュール用瓦を提供することにある。
【0012】
【問題を解決するための手段】
この発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、太陽電池モジュールを収納する瓦本体に、瓦本体を貫通する排水孔を形成し、この排水孔は太陽電池モジュールを瓦本体に固定する固定具を貫通する孔を兼ねていることを特徴とする太陽電池モジュール用瓦にある。
【0013】
請求項2は、瓦本体の上面に排水溝を設け、この排水溝の少なくとも一部に前記請求項1の排水孔を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3は、瓦本体の上面に太陽電池モジュールを収納する凹陥部を設けるとともに、この凹陥部に前記請求項2の排水溝を設けたことを特徴とする
【0015】
請求項4は、複数枚の瓦本体を縦方向に並べて瓦葺きした際、上段側の瓦本体の請求項1〜3のいずれかの排水孔は下段側の瓦本体の上面に対向する位置に設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項1によれば、排水孔を利用して太陽電池モジュールを瓦本体に確実に固定することができる。
【0018】
請求項2、3によれば、凹陥部に雨水等が浸入しても、排水溝に沿って排水され、さらに排水孔から排水されるため凹陥部に雨水等が溜まることはない。また、請求項4によれば、上段の瓦本体の排水孔から排水された雨水等は下端の瓦本体の上面を伝わって排水される。
【0020】
なお、本件明細書には「凹陥部の一部には太陽電池モジュールの端子ボックスを収納する端子ボックス収納凹部が設けられ、この端子ボックス収納凹部には瓦本体の上部側に偏倚した位置にケーブル導出孔を設けた太陽電池モジュール用瓦」の発明が開示されている。この発明によれば、太陽電池モジュールの端子ボックスが端子ボックス収納凹部に収納されて保護されるとともに、この端子ボックス収納凹部には瓦本体の上部側に偏倚した位置にケーブル導出孔が設けられているため、端子ボックス収納凹部に雨水等が浸入してもケーブル導出孔からの漏水を防止できる。
さらに本件明細書には「端子ボックス収納凹部の裏面は、瓦本体の前垂れ部と略同一高さであることを特徴とする太陽電池モジュール用瓦」の発明が開示されている。この発明によれば、端子ボックス収納凹部の裏面と瓦本体の前垂れ部と略同一高さであるため、瓦本体を安定した状態に葺くことができ、保管に際しても安定した状態に積み重ねることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図4は第1の実施形態を示し、図1は太陽電池モジュール用瓦の斜視図、図2は瓦本体の平面図、図3は太陽電池モジュール用瓦の縦断側面図、図4は太陽電池モジュール用瓦の瓦葺き状態を示す縦断側面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、瓦本体1は、例えばセメント瓦によって矩形平板状に形成されている。瓦本体1の両側部には左右に隣り合う瓦本体1と雄雌関係で嵌合するオーバラップ部1a,1bが設けられ、下端部裏面には前垂れ部1cが、上端部表面には後立上り部1dが設けられている。そして、前垂れ部1cは下段側の瓦本体1の上面に重なり、後立上り部1dは上端側の瓦本体1の下面に重なるようになっている。
【0024】
瓦本体1の上面には略全面に亘って矩形状の凹陥部2が設けられている。この凹陥部2は後述する太陽電池モジュールの肉厚より僅かに深く形成されており、この凹陥部2の略中央部には矩形状の端子ボックス収納凹部3が設けられている。この端子ボックス収納凹部3の底部で、瓦本体1の上端部側に偏倚した位置にはケーブル導出孔3aが穿設されている。さらに、端子ボックス収納凹部3の裏面は瓦本体1の前垂れ部1cと略同一高さに形成されていて、瓦本体1を屋根に安定した状態に載置できるようになっている。
【0025】
前記凹陥部2の底面には凹陥部2の上辺及び両側辺に沿ってコ字状に連続する第1の排水溝4aが設けられている。また、凹陥部2の底面の中央部には端子ボックス収納凹部3を囲むようにコ字状に連続する第2の排水溝4bが設けられている。さらに、凹陥部2の下辺の角部には横方向全長に亘って第3の排水溝4cが設けられ、第1及び第2の排水溝4a,4bは第3の排水溝4cに連通している。つまり、第1及び第2の排水溝4a,4b内を流れる水は第3の排水溝4cに集流するようになっている。
【0026】
また、第3の排水溝4cの両端部及び第2の排水溝4bと第3の排水溝4cとの合流部の合計4箇所には排水孔5が穿設され、これら排水孔5は瓦本体1の裏面に貫通している。
【0027】
前述のように構成された瓦本体1の凹陥部2は、太陽電池モジュール6の寸法に適合した大きさに形成され、この凹陥部2には太陽電池モジュール6が収納されている。この太陽電池モジュール6は、例えば1枚のガラス基板に透明電極層、アモルファス半導体層、裏面電極層、封止材を形成した薄膜太陽電池で、裏面には断熱材を介して鋼板が一体的に設けられた矩形状の薄板パネル構造であるが、アモルファス半導体層に限定されるものではなく、単結晶、多結晶、微結晶またはSi系でも化合物系でもよく、ガラス基板下に太陽電池セルを配置し,封止した結晶系太陽電池でもよい。
【0028】
図3に示すように、太陽電池モジュール6の裏面の略中央部には端子ボックス7が固定され、この端子ボックス7には出力取出しケーブル8が接続されている。そして、端子ボックス7は瓦本体1の端子ボックス収納凹部3に収納され、出力取出しケーブル8はケーブル導出孔3aから瓦本体1の裏面側に導出されている。
【0029】
太陽電池モジュール6を瓦本体1の凹陥部2に固定する手段としては接着剤9を用いており、凹陥部2の底面のみに塗布した接着剤9によって太陽電池モジュール6が固定されており、さらに太陽電池モジュール6の外周面と凹陥部2の内周面との間にはガスケット10が介在されている。
【0030】
次に、前述のように構成された太陽電池モジュール用瓦を用いて建物の屋根を施工する、いわゆる瓦葺きについて説明すると、図4に示すように、屋根11には棟側12から軒側13に向かって下り勾配に傾斜する野地板14が設けられており、この野地板14に直接または瓦下地材を介して太陽電池モジュール用瓦を載置する。
【0031】
通常の瓦葺き作業と同様に太陽電池モジュール用瓦を軒側13から順次棟側12に向かって野地板14に載置するが、左右に隣り合う瓦本体1相互は、瓦本体1のオーバラップ部1a,1bを雄雌関係で嵌合し、瓦本体1の上端部側に設けられた取付け孔15(図1及び図2参照)に釘を通して野地板14に固定する。また、下段側の瓦本体1の後立上り部1dの上部に上段側の瓦本体1の前垂れ部1cをオーバラップさせ、さらに、上段側の瓦本体1の排水孔5が下段側の瓦本体1の後立上り部1dより下方(軒側13)に位置させる。そして、上段の瓦本体1も同様に取付け孔15に釘を通して野地板14に固定する。
【0032】
前述と同様に方法を繰り返すことにより、太陽電池モジュール用瓦によって屋根11を構成することができ、この瓦葺き作業と平行して端子ボックス7から導出された出力取出しケーブル8相互を直列または並列に接続することにより、複数枚の太陽電池モジュール6を電気的に接続することができる。
【0033】
図5は第2の実施形態を示し、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。図5(a)は太陽電池モジュール用瓦の一部を示す平面図、同図(b)はX−X線に沿う断面図である。太陽電池モジュール6の下端縁部で、瓦本体1のいずれか一つまたは複数の排水孔5と対応する部分には切欠部17が設けられており、この切欠部17の底部には太陽電池モジュール6の下端縁部を貫通し、排水孔5と対向する貫通孔18が穿設されている。
【0034】
貫通孔18には切欠部17に適合する形状の頭部19aを有する割りピン構造の固定具19が挿入されており、この固定具19の脚部19bを排水孔5を貫通して瓦本体1の裏面側に折曲することにより、太陽電池モジュール6を瓦本体1に固定している。この構造によれば、太陽電池モジュール6を瓦本体1に対して一層確実に固定でき、接着剤9を省略または節約できる。
【0035】
なお、排水孔5を利用して固定具19を挿入したが、専用の取付け孔を瓦本体1に設けてもよく、また固定具19は割りピン構造に限定されず、ボルト・ナットでもよく、また切欠部17は必ずしも必要としない。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1,2の発明によれば、瓦本体の凹陥部に雨水等が浸入しても、排水溝に沿って排水され、さらに排水孔から排水されるため凹陥部に雨水等が溜まることはなく、太陽電池モジュールの端子ボックスに雨水等が浸入することはなく、電気的短絡、漏電等を防止することができ、また太陽電池モジュールを固定する接着剤等の劣化、汚染を防止できる。
【0037】
請求項3によれば、上段の瓦本体の排水孔から排水された雨水等は下端の瓦本体の上面を伝わってスムーズに排水されるため、雨水等の溜まりを防止できる。
【0038】
請求項4によれば、端子ボックス収納凹部には瓦本体の上部側に偏倚した位置にケーブル導出孔が設けられているため、端子ボックス収納凹部に雨水等が浸入してもケーブル導出孔からの漏水を防止でき、野地板の腐食を防止できる。
【0039】
請求項5によれば、排水孔を利用して太陽電池モジュールを瓦本体に確実に固定することができる。請求項6によれば、瓦本体を安定した状態に葺くことができ、保管に際しても安定した状態に積み重ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す太陽電池モジュール用瓦の斜視図。
【図2】同実施形態の瓦本体の平面図。
【図3】同実施形態の太陽電池モジュール用瓦の縦断側面図。
【図4】同実施形態の太陽電池モジュール用瓦の瓦葺き状態を示す縦断側面図。
【図5】この発明の第2の実施形態を示し、(a)は太陽電池モジュール用瓦の一部を示す平面図、(b)はX−X線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…瓦本体
2…凹陥部
3…端子ボックス収納凹部
3a…ケーブル導出孔
4a,4b,4c…排水溝
5…排水孔
6…太陽電池モジュール
7…端子ボックス
8…出力取出しケーブル
Claims (4)
- 太陽電池モジュールを収納する瓦本体に、瓦本体を貫通する排水孔を形成し、この排水孔は太陽電池モジュールを瓦本体に固定する固定具を貫通する孔を兼ねていることを特徴とする太陽電池モジュール用瓦。
- 瓦本体の上面に排水溝を設け、この排水溝の少なくとも一部に前記排水孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用瓦。
- 瓦本体の上面に太陽電池モジュールを収納する凹陥部を設けるとともに、この凹陥部に前記排水溝を設けたことを特徴とする請求項2記載の太陽電池モジュール用瓦。
- 複数枚の瓦本体を縦方向に並べて瓦葺きした際、上段側の瓦本体の排水孔は下段側の瓦本体の上面に対向する位置に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用瓦。
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