JP4279192B2 - 覆工用pc板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの既設のトンネルは雨、風、水漏れ、土圧などにより損傷し経時的にクラックや欠けなどを生じて、トンネルの強度が劣化する。この場合、補修方法として、例えば特許文献1に記載されたように複数スパン分の覆工用PC板をヒンジ部を介してトンネルの内面にアーチ型に組み立てて組み立て覆工版を形成し、トンネル内面と組み立て覆工版との空隙にモルタルなどの裏込め材を充填して一体化した覆工工法がある。
このようなトンネル覆工工法に用いられるPC板は略円弧状の板状をなしていて内部に主筋と配力筋とを組み込んだ鉄筋構造をコンクリートで被せて形成されており、円弧形状の方向に全長に亘って例えば80〜100mm程度の同一厚みで形成されている。そしてトンネルの周方向において両側に打設した側壁上に2つのPC板をヒンジで連結した組み立て覆工版をアーチ状に建て込んで覆工する。
しかも、トンネル内面に所定厚みのPC板を据え付けたトンネルについて、既設の覆工コンクリートが経年変化で強度低下を来すことによってPC板の強度の低下を招くおそれがあった。
本発明は、このような実情に鑑みて、車両建築限界を侵すことなく、トンネルの補修や補強等を行えるようにした覆工用PC板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、トンネル内の肩部に相当する領域に薄肉部が位置するように覆工用PC板をトンネル内面に建て込むことで、トンネル内を通過する車両等の肩部に対向する覆工用PC板の領域がトンネル側に凹んだ薄肉部となるために、覆工用PC板をトンネルの車両建築限界を侵すことなく組み込むことができる。しかも覆工用PC板に関して、薄肉部には鉄筋だけでなく繊維材料が混入されているために両側部と同等またはそれ以上の強度を確保できる。そして、覆工用PC板の薄肉部の厚みを両側部よりも小さく設定することで、この部分が自重でだれて体力消耗するのを防止できて長寿命を確保できる。
なお、覆工用PC板は、薄肉部の内面が少なくともトンネル側(径方向外側)に凹んでいればよいが、好ましくは薄肉部が両側部よりも小さい厚みに形成されているため、覆工用PC板は、外周面が滑らかなアーチ型(略円弧状)を形成し、内周面が両側でアーチ型(略円弧状)をなすと共に中央領域で外側に落ち込んだ凹陥部を形成していることが好ましい。
本発明は、トンネル内の肩部に相当する領域に薄肉部が位置するように覆工用PC板を建て込むことで、トンネル内を通過する車両等の肩部に対向する領域がトンネル側に凹んだ薄肉部となるために、覆工用PC板をトンネル内面に建て込んでも車両建築限界を侵すことがない。しかも覆工用PC板に関して、薄肉部には鉄筋だけでなく鋼板が取り付けられているために両側部と同等またはそれ以上の強度を確保できる。鋼板は薄肉部だけでなく両側部まで延びて薄肉部との一体性を確保するのが好ましく、薄肉部に設ける鉄筋を削減することができる。
また、鋼板を取り付けた薄肉部のコンクリートに繊維材料を混入させてもよく、一層の強度増強を図れる。
薄肉部の内部に配設された鉄筋は薄肉部だけでなくその両側の両側部にも含まれていて、両側部に設けた鉄筋とオーバーラップするように配設されていることでPC板全体の強度と一体性を確保できる。好ましくは薄肉部の鉄筋は薄肉部に含有された繊維材料よりも外側に延びている。
本発明によれば、予め鉄筋を薄肉部の型枠内部に配設すると共に、繊維材料は高価であるために強度補強の必要な薄肉部にのみ混入してコンクリート打ちして薄肉部を形成しておき、次いでこの薄肉部をPC板成形用の型枠内に配設し、その両側である両側部の部分に薄肉部から突出する鉄筋とオーバーラップするように鉄筋を配設した状態でコンクリート打ちすることで、PC板を製造できる。これによって強度と一体性の高い覆工用PC板を容易に製作できる。
なお、繊維材料に代えて、または繊維材料と共に薄肉部に鋼板を張り付けてもよい。
また、本発明による覆工用PC板の製造方法によれば、上述したPC板を容易に製造できる。
図1は、補修後の既設のトンネル1を示すものであり、トンネル1は所定厚みの鉄筋コンクリートで略アーチ型に形成されている。そして、トンネル1の路面に起立する左右の側壁部1a、1aの内側に例えば現場打ちコンクリートによる側壁2,2を構築する。そして、左右一対の略円弧形の覆工用PC板3、3(以下、単にPC板という)を、それぞれその上端3a,3aを天端において接合し、下端3b、3bでは埋設した高さ調整ボルト4、4で側壁2、2の上端に位置決め固定する。
図2に示すようにPC板3、3の各上端3a,3aは凸部と凹部からなる段差部が互い違いに嵌合し、両凸部に設けた2つの貫通孔3c、3c内にボルト10を挿通してナットで連結固定する。これによってヒンジ連結できる。また、下端3b、3bには高さ調整ボルト4、4が側壁2、2の上端面に向けて突出しており、このボルト4、4の突出量を調整することで側壁2,2上に位置決めできる。これによって、一対のPC板3,3は互いに連結されて略半円のアーチ型形状をなして側壁2、2上に建て込みできる。トンネル1と据え付けられた一対のPC板3,3との間隙には裏込め材18(固結剤)が充填されている。
一対のPC板3、3をトンネル1内に組み込んだ図1に示す状態で薄肉部5,5はトンネル1内を通過する車両の肩部(上端角部)付近に対向して位置している。
また薄肉部5のコンクリート内には繊維材料12が分散状態で混入されており、繊維材料12として例えばビニロン、炭素繊維、硝子繊維(GRB)等の鋼繊維が用いられる。この繊維材料12の外径と長さは種類によって相違しており適宜寸法の繊維を採用でき、繊維材料12はコンクリート中に例えば約2vol%程度含まれている。このような薄肉部5は主筋8及び配力筋9が高強度鉄筋(異形鉄筋)からなり、コンクリートも例えば反応性微粉末を用いた無機系複合材料からなる高強度繊維補強コンクリートからなっていることが好ましい。
まず、図5(a)に示すように薄肉部5だけを形成するために薄肉部5の型枠15内に高強度鉄筋からなる主筋8及び配力筋9を配設し、その両側から各主筋8及び配力筋9の一部を突出させた状態で型枠15内に、鋼繊維からなる繊維材料12を例えば約2vol%混入させた高強度コンクリートを打ち込む。これによって高強度繊維補強コンクリートからなる薄肉部5を形成する。なお、図5(a)や図4に示すように、薄肉部5は肉厚の小さい部分だけでなくテーパ部4d、4d及び肉厚の大きい部分(側部6と同等の肉厚部分)を含めて一体形成されている。これは型成形時における側部6との接触面積を大きくして一体性と強度を高めるためである。なお、肉厚の小さい部分だけで薄肉部5を形成してもよい。
次に図5(b)に示すように、PC板3の型枠16内の中央部分の薄肉型枠部16aに薄肉部5を載置し、その両側の側部型枠部16b、16b内に高強度鉄筋からなる主筋8と配力筋9を配設する。その際に、薄肉部8から突出する主筋8及び配力筋9とオーバーラップするように側部6内の主筋8と配力筋9を配設する。
その後、図5(c)に示すように、繊維材料12を含まない高強度コンクリートを打つことで両側部6,6と薄肉部5が一体化したPC板3を製作できる。
この場合、PC板3の厚みは例えば側部6、6で100mmとすると薄肉部5で50mm程度になる。薄肉部5が繊維材料12を補強した高強度コンクリートからなることで薄肉部5の強度は側部6の約2倍になる。そのため、薄肉部5の厚みを側部6と同程度の強度になるまで小さく形成できるが、薄肉部5の厚みをあまり小さくすると鉄筋8,9がコンクリートを被らなくなるので、これを防いでコンクリートを被る程度に薄肉部5の厚みを設定する。
先ず、図1において、既設のトンネル1の内面において、左右の側壁部1a、1aの内側に例えば現場打ちコンクリートによる側壁2,2を構築する。そして、側壁2、2の上部にトンネル1の内面アーチ形状に倣った形状に形成した左右一対のPC板3,3をトンネル1内に搬入し、フォークリフト等の昇降装置にジャッキアップ装置等(図示せず)をセットしてトンネル内面との間に若干の間隙kを生じるように2つのPC板3、3を順次または同時に建て込む。PC板3、3は図2に示すように天端側の上端3a、3aの各凸部と凹部を対向させて互い違いに嵌合させ、各凸部に形成した貫通孔3c、3c内に継手金物としてのボルト10を挿通してナットで固着することで係合させ、ヒンジ構造を形成する。
また、各PC板3,3の下端3b、3bには高さ調整ボルト4、4を埋設してあり、各高さ調整ボルト4、4の下方への突出長さを調整することで側壁2、2の上端面に着座させ、各PC板3,3を位置決めする。これによって、一対のPC板3,3は側壁2,2上に互いに連結されてアーチ型に建て込みされる。そして、トンネル1の前後に隣接する方向に同様にしてPC板3,3を連続させて建て込んでいく。
そして、補修後のトンネル1は一対のPC板3,3をアーチ型に建て込んで、天端で上端3a、3aを接続しており、両下端3b、3bを側壁2、2上で高さ調整ボルト4,4によって位置決めした構成であるから、トンネル内を通過する車両の肩部に相当する領域に薄肉部5、5が位置することになり、据え付け状態における一対のPC板3,3は車両限界を侵して狭めることを防止できる。
しかも、薄肉部5に繊維材料12を含有させることで薄肉部5の強度を増大できるから、トンネル強度を初期強度以上に補強できる。また、PC板3の厚みを薄肉部5で両側部6、6よりも小さくすることで軽量化でき、そのためにPC板3が自重でだれて強度の消耗を来すことを防止できて長寿命化できる。
図6に示す第二の実施の形態によるPC板20において、その外周面4aには薄肉部5から両側の側部6,6の途中にかけて鋼板21が高強度コンクリートに取り付けられて同一面状に形成されている。そして、鋼板21の内側には鋼板21の長手方向に略直交する方向にジベル筋22が溶着されて所定間隔で配列されている。また、薄肉部5には鋼板21と共に両側の側部6,6内まで先端が延びる主筋8が配設され、この主筋8に略直交する方向に配力筋9が配列されている。また薄肉部5の鋼板21と主筋8及び配力筋9は繊維材料12を含まない高強度コンクリートによって一体化されている。
そして、両側部6,6には円弧方向に沿って延びる主筋8とこれに略直交する配力筋9とが配列されており、両側部6、6の主筋8及び配力筋9は、薄肉部5の両端との接続部(一点鎖線で図示)では薄肉部5から突出する主筋8及び配力筋9と鋼板21とにオーバーラップして配設されている。これらの鉄筋と鋼板21は高強度コンクリートによって被されて一体化されて形成されている。
側部6、6のコンクリート内にも繊維材料12を混入させてもよく、この場合にはPC板3全体を薄肉に形成できる。側部6での繊維材料12の含有率を薄肉部5での含有率より落とすことで肉厚を比較的厚くしてもよい。
3、20、24 PC板(覆工用PC板)
4c 凹陥部
5 薄肉部
6 側部
8 主筋
9 配力筋
12 繊維材料
21 鋼板
Claims (5)
- トンネルの内面に装着するために該内面に沿ってアーチ型に形成されてなる覆工用PC板であって、
該覆工用PC板はアーチ型の両側部に対して中間部が前記トンネル側に凹んだ薄肉部として形成され、該薄肉部は繊維材料を混入した鉄筋入りコンクリートからなることを特徴とする覆工用PC板。 - トンネルの内面に装着するために該内面に沿ってアーチ型に形成されてなる覆工用PC板であって、
該覆工用PC板はアーチ型の両側部に対して中間部が前記トンネル側に凹んだ薄肉部として形成され、該薄肉部は鋼板を取り付けると共に鉄筋入りコンクリートからなることを特徴とする覆工用PC板。 - 前記薄肉部のコンクリートには繊維材料を混入したことを特徴とする請求項2に記載の覆工用PC板。
- 前記薄肉部の鉄筋は両側部内に延びていて該両側部に設けた鉄筋とオーバーラップして設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の覆工用PC板。
- 鉄筋を含むと共に繊維材料を含有したコンクリートからなる薄肉部を形成し、その後、該薄肉部を型枠内に載置してその両側に配設した鉄筋と共にコンクリートで共打ちして形成するようにしたことを特徴とする覆工用PC板の製造方法。
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