JP4278268B2 - 透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設のコンクリート舗装等の硬化体と、該硬化体に対して新たに打継がれる透水性コンクリートの間に介在させて用いるための透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルに関する。
【0002】
【従来の技術】
透水性コンクリートは、雨水等の水はけが良くなるので、歩道や駐車場の舗装として実用化されている。また、近年、優れた透水性と大きな曲げ強度をもつ透水性コンクリートが開発され、交通量の多い車道での実用化が進められている。さらに、上記舗装以外の用途として、護岸用コンクリートとしての実用化も検討されている。
【0003】
従来、現場打ちの透水性コンクリートは、打設現場に砂利を敷設した後、該砂利の上に打設されていた。しかしながら、今後、透水性コンクリートの用途をさらに広げるには、既設の硬化体(例えば、コンクリート舗装やコンクリート構造物等のコンクリート硬化体、アスファルト舗装等)の上方に透水性コンクリートを打継ぐ技術の確立が必要である。特に、既設の硬化体と透水性コンクリートとを、充分な付着強度で付着させるための手段を見出すことが、非常に重要である。
【0004】
従来、既設の硬化体(例えば、コンクリート構造物)の上方に、新たな普通コンクリートを打継ぐ場合には、次のような手順で施工が行なわれていた。すなわち、まず、既設の硬化体の表面のレイタンス層又は薄いペースト層を除去し、凹凸状の粗面を形成させる。そして、硬化体の粗面上に、打継ぎ用モルタルを層状に薄く塗布する。最後に、打継ぎ用モルタルの上面に、新たな普通コンクリートを打設する。
ここで、打継ぎ用モルタルとしては、通常、水、セメント、細骨剤、遅延剤を含むモルタルが使用されている。また、打継ぎの際の温度ひび割れを防止するために、特開昭63−78966号公報には、水、セメント、細骨材、超遅延剤、ノンブリージング剤の各成分を含むモルタルが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来、既設の硬化体に透水性コンクリートを打継ぐことは、行なわれていなかった。したがって、透水性コンクリートの打継ぎ用として、如何なる配合のペースト又はモルタルを用いれば、充分な付着強度が得られるのかという知見は、今までなかった。
そこで、本発明は、既設の硬化体に透水性コンクリートを打設するに際して、既設の硬化体と透水性コンクリートの間に介在させて、付着強度を向上させるための透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1記載の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルは、既設の硬化体と、該硬化体に打継がれる透水性コンクリートの間に介在させて用いるためのペースト又はモルタルであって、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部と、細骨材0〜300重量部と、ポリマー0.5〜20重量部(固形分換算)と、ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間が3〜15秒となるように配合される水とを含むことを特徴とする。
上記透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルは、更に、0.2重量部以下の遅延剤及び/又は5重量部以下の収縮低減剤を含むことができる(請求項2)。
上記セメントを含む粉体混合物は、例えば、50重量%以上のセメントと50重量%以下の高炉スラグ及び/又はフライアッシュとからなる(請求項3)。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)セメント又はセメントを含む粉体混合物
本発明で用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、ホワイトセメント、アルミナセメント等が挙げられる。
セメントを含む粉体混合物とは、上記セメントに、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉、珪石粉、シリカフューム等から選ばれる一種以上の無機質粉末を添加してなるものをいう。中でも、高炉スラグ、フライアッシュが好ましい。無機質粉末は、3,000cm2/g以上のブレーン比表面積を有するものが好ましい。
セメントを含む粉体混合物中に占めるセメントの割合は、強度発現性の確保のため、50重量%以上であることが好ましい。
【0008】
(2)細骨材
本発明で用いる細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、及びこれらの混合物が挙げられる。
細骨材の添加量は、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部に対し、0〜300重量部であり、好ましくは30〜150重量部である。細骨材を添加することによって、モルタルが、硬化後に乾燥して収縮するのを抑制することができる。細骨材の添加量が300重量部を超えると、既設の硬化体と透水性コンクリートの付着強度が低下する。
【0009】
(3)ポリマー
本発明で用いるポリマーとしては、合成ゴムラテックス、熱可塑性樹脂エマルション、熱硬化性樹脂エマルション、再乳化形粉末樹脂、水溶性ポリマー等が挙げられる。合成ゴムラテックスとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が、熱可塑性樹脂エマルションとしては、ポリアクリル酸エステル(PAE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)等が、熱硬化性樹脂エマルションとしては、エポキシ樹脂等が、再乳化形粉末樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、酢酸ビニルビニルバーサテート(VAVeoVa)、ポリアクリル酸エステル(PAE)等が、水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
ポリマーの添加量は、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部に対し、固形分換算で0.5〜20重量部であり、好ましくは0.5〜10重量部である。添加量が0.5重量部未満では、既設の硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が低下する。添加量が10重量部を超えると、ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間を15秒以内にすることが困難となるうえ、コストが高くなることから好ましくない。
【0011】
(4)水
本発明で用いる水の量は、ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間が3〜15秒、好ましくは4〜12秒となるような量である。ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間が3秒未満となるような水量では、本発明のペースト又はモルタル自体の強度が弱くなるうえ、既設の硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が低下する。ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間が15秒を超えるような水量では、ペースト又はモルタルの作業性が悪くなり、好ましくない。
【0012】
本発明においては、ペースト又はモルタルの作業性を向上させたり、既設の硬化体と透水性コンクリートとの付着強度を向上させたりするために、ペースト又はモルタルに遅延剤及び/又は収縮低減剤を添加することが好ましい。
遅延剤としては、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ酸等の有機酸又はこれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属塩が挙げられる。
具体的には、モノカルボン酸としては、蟻酸、酢酸等が挙げられ、ポリカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、オキシカルボン酸としては、ヘプトン酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、マンデル酸等が挙げられ、アミノ酸としては、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。
【0013】
これらのうち、オキシカルボン酸もしくはその塩、又はポリカルボン酸もしくはその塩を使用することが好ましい。
遅延剤の添加量は、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部に対し、0.2重量部以下が好ましく、0.02〜0.15重量部がより好ましい。遅延剤の添加量が0.2重量部を超えると、養生期間を長くする必要があり、工期が長くなる。また、既設の硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が低下する。
【0014】
収縮低減剤としては、化学式としてRO(AO)nHで示される低級アルコールのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。ここで、式中のRは、炭素数4〜6のアルキル基である。このような基としては、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。また、式中のAは、炭素数2〜3の1種又は2種のアルキレン基であり、エチレン基及び/またはプロピレン基が挙げられる。さらに、式中のnは、1〜10の整数である。
【0015】
RO(AO)nHで示される低級アルコールのアルキレンオキサイド付加物の中でも好ましいものは、n−ブチルアルコールのプロピレンオキサイド(付加モル数2)/エチレンオキサイド(付加モル数3)である。市販品としては、太平洋セメント株式会社製の「AS21」(商品名)が挙げられる。
収縮低減剤の添加量は、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部に対し、5重量部以下が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。収縮低減剤の添加量が5重量部を超えると、既設の硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が低下する。
なお、収縮低減剤は、水の一部と置き換えて使用することが好ましい。
【0016】
本発明の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルの混練方法や混練装置は、特に限定されるものではなく、慣用の方法、及び慣用のミキサを用いれば良い。
【0017】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルに、石膏(無水石膏、半水石膏、2水石膏、又はこれらの混合物)及び/又は粘土(ベントナイト、酸性白土等のモンモリロナイト系粘土)を添加することは差し支えない。
【0018】
[透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルの使用方法]
本発明の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルは、既設の硬化体の表面を、必要に応じて凹凸状の粗面に形成させた後、その上に打設する。
既設の硬化体としては、例えば、コンクリート舗装、コンクリート構造物等のコンクリート硬化体や、アスファルト舗装等が挙げられる。なお、コンクリートとしては、通常の生コンクリートや、各種繊維で補強した繊維補強コンクリート等が挙げられる。
【0019】
透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルを、既設のコンクリート硬化体の上方に打継ぐ場合は、既設のコンクリート硬化体表面のレイタンス層又は薄いペースト層を除去するとともに、凹凸が形成された粗面とすることが好ましい。粗面に形成させる方法としては、例えば、ワイヤーブラシを用いる方法や、湿砂を吹付ける方法等が挙げられる。
透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルを打設する方法は、特に限定されるものではなく、慣用の任意の方法を用いることができる。
打設後に形成されるペースト又はモルタル層の厚みは、通常、2mm〜40mm程度であり、好ましくは3mm〜30mmである。
【0020】
ペースト又はモルタル層の上に新たに打設される透水性コンクリートの種類も、特に限定されるものではなく、任意である。例えば、特開平9−273105号公報に開示されている「粗骨材と、該粗骨材100%に対する容積比が30〜80%のペースト又はモルタルからなり、該ペースト又はモルタルが、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部、細骨材0〜140重量部、高性能減水剤又は高性能AE減水剤0.5〜2.0重量部及び水16〜28重量部である舗装用混練物を敷設してなる透水性コンクリート舗装」や、特公平5−34299号公報に開示されている「セメントコンクリート1m3当たり、300〜400kgのポルトランドセメント、該セメント1重量部に対して0.005〜0.01重量部のバインダーと0.35〜0.45重量部の水、及び残部の骨材からなる配合割合で構成されるセメントコンクリート混合物を混練し、該混練物をフィニッシャーで被舗装面に打設してなる、透水性セメントコンクリート舗装」等が挙げられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明する。
[実施例1〜9、比較例1〜2]
1.使用材料
以下に示す材料を使用した。
1)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
2)高炉スラグ;ファインセラメント10A(第一セメント(株)製)
3)ポリマー;「トマックスーパー」(商品名)(ジェイエスアール(株)製、スチレンブタジエンゴム(SBR)系エマルション)
4)細骨材;市原産細目山砂(粒径2.5mm以下)
5)遅延剤;グルコン酸ソーダ(藤沢薬品工業(株)製)
6)収縮低減剤;「AS21」(商品名)(太平洋セメント(株)製)
7)水;水道水を使用した。
【0022】
2.透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルの配合及び混練
前記材料を使用し、表1に示す配合にしたがって、透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルを調製した。混練は、ハンドミキサー(0.01m3)を用いて、90秒間行なった。
【0023】
【表1】
【0024】
硬化したφ10cmのコンクリート円柱供試体の上面を、ブラッシングおよび洗浄することによって、表面のレイタンス層を除去し、凹凸が形成された粗面とした。その上に表1の各ペースト又はモルタルを打設(塗布)し、厚さ5mm程度のペースト又はモルタル層を形成させた後、速やかに透水性コンクリートを打設し、20℃で7日間、気中養生し、供試体を作製した。
【0025】
なお、透水性コンクリートとしては、普通ポルトランドセメント80重量部、高炉スラグ(ファインセラメント10A)20重量部、細骨材(市原産細目山砂)50重量部、粗骨材(青梅産砕石6号)400重量部、高性能減水剤(マイティ150)1.0重量部、及び水20重量部の配合で混練した混練物を、振動数3,000vpmにて20秒間締め固めたものを用いた。
【0026】
供試体の作製後、各供試体の付着強度を、「JIS A 6909(建築用仕上塗材)」に準じて測定した。
また、透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルに関し、塗布時の作業性を「◎:非常に良好」、「○:良好」、「×:悪い」で評価した。さらに、透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間も測定した。
結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から、本発明で規定する透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルを用いた実施例1〜9では、既設のコンクリート硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が大きく、かつ、作業性に問題がないことがわかる。
一方、本発明で規定する以外のモルタルを用いた比較例1、2では、既設のコンクリート硬化体と透水性コンクリートとの付着強度が小さいか、又はモルタルの作業性が悪いことがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタルは、既設の硬化体(コンクリート硬化体等)の表面に、透水性コンクリートを新たに打設するに際し、付着強度を向上させるための材料として極めて有用である。
Claims (3)
- 既設の硬化体と、該硬化体に打継がれる透水性コンクリートの間に介在させて用いるためのペースト又はモルタルであって、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部と、細骨材0〜300重量部と、ポリマー0.5〜20重量部(固形分換算)と、ペースト又はモルタルのJ14ロートの流下時間が3〜15秒となるように配合される水とを含むことを特徴とする透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタル。
- 更に、0.2重量部以下の遅延剤及び/又は5重量部以下の収縮低減剤を含む請求項1記載の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタル。
- 上記セメントを含む粉体混合物が、50重量%以上のセメントと50重量%以下の高炉スラグ及び/又はフライアッシュとからなる請求項1又は2記載の透水性コンクリート打継ぎ用ペースト又はモルタル。
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JP2002316860A (ja) | モルタルコンクリート用接着材 |
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