JP4278258B2 - 加飾性多層押出成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅用等に使用できる、耐久性、耐候性を有するとともに艶感、質感を備えた加飾性多層押出成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅等の内外装材や室内のユニットバスやキッチンのカウンター部材として模様を有する加飾性成形体が多種使用されている。これらの製品を大別すると、基材の表面に後加工処理を加え模様を付与したものおよび模様を有する基材に保護層として透明樹脂からなる表面層を被覆したものである。前者の例としてポリ塩化ビニル等の基材樹脂に発泡剤を配合した組成物を連続的に押出発泡成形させた後、オンラインまたはオフラインにおいて塗装、プリント、シート貼りまたはエンボス加工等を行ったもの、また後者の例としては、基材としての発泡樹脂に発泡ムラによる模様や立体模様を形成し、その上に透明樹脂層を積層したもの(例:特開平7−329229号公報、特開平9−216268号公報)等が例示できる。
【0003】
基材樹脂の表面に模様を塗装、プリント、シート貼りまたはエンボス加工等する場合、一旦押出成形等を行った後に別工程でプリント等を行うため、どうしても生産性の低下およびコストの上昇を招くことになる。更に、後工程がシール等の貼り付けである場合、必ず剥がれ等接着性の問題が生じることとなる。
一方、基材側に模様を形成し、これに透明表面層を積層したものでは、深みのある模様の発現は可能であるが、木目模様等の艶感、木目の質感を表現することが困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、深みを有するとともに艶感・質感を有し、且つ耐候性と耐久性の優れた加飾性成形体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)低発泡熱可塑性合成樹脂からなる基材層および(b)基材層の表面に設けられた加飾合成樹脂層の少なくとも2層からなる多層押出成形体であって、該成形体表面には押出工程において形成されてなる少なくとも2本以上の溝を有し、該溝は、溝幅が0.5〜5mm、溝深さが0.5〜5mm、該溝間隔が1〜30mmであり、該加飾合成樹脂層(b)が基材層上に連続層または不連続層として設けられた模様層からなり、該多層押出成形体が表面に木目模様を有する加飾性多層押出成形体に関する。
また、本発明は、加飾性多層押出成形体が、最表面層として共押出成形により形成された透明層(c)を有する上記いずれかに記載の加飾性多層押出成形体に関する。
【0006】
上記構成からなる本発明の加飾性多層押出成形体は、加飾合成樹脂層、または加飾合成樹脂層と基材層の組み合わせからなる深みのある模様層に更に溝による陰影、質感が付与され木目模様独自の艶感、質感が表現可能である成形体を提供することができる。
加えて、表面層に透明樹脂層を設けることにより、意匠性を一層向上できるとともに、この樹脂の種類を選択することによって耐薬品性等の特性が付与され、用途を拡大することができ、例えば洗面所や浴室等にも使用可能となる。また耐候性の優れた樹脂を使用することにより、外装用としても使用可能となり用途範囲に幅が出てくる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の加飾性多層押出成形体は、(a)低発泡熱可塑性合成樹脂からなる基材層、(b)基材層の表面に設けられた加飾合成樹脂層の少なくとも2層および加飾層側表面に形成された溝によって構成される。もうひとつの態様として本発明は加飾合成樹脂層の更に表面に透明合成樹脂層を有する。
本発明の加飾性多層押出成形体は、構成体全体が同時多層押出されたところに特徴があり、更に表面側に有する溝も該多層押出工程で同時に形成される。
したがって、このようにして形成された溝は、例えば、溝加工等の後加工によって形成された溝と異なり、次のような特徴を有する:
1)幅および深さが5mm以下の細かい溝である、
2)後加工のように、表面スキンや表面透明樹脂層の溝部分が削り取られることがないため、当該表面部分からの吸水、あるいは表面スキンがめくれるという欠点がない、
3)溝間隔が自由に設定できる。
【0008】
本発明の加飾性多層押出成形体の断面形状を図1に、また多層構成の例を図2〜4に示した。図中、1は加飾層、2は基材層、3は透明樹脂層、4は溝を表す。
【0009】
本発明において、基材層(a)は多層成形体に厚みを持たせて、内外装材として使用した場合に高級感と重厚感を付与すると共に、加飾体成形体に強度を持たせ、且つ下地構造体への取り付けを容易にするという役割を有する。
相当の厚さを持たせた場合でも加工性と軽量性を保持することができるように、また成形時の冷却工程での反りや変形を防止するためにも、基材層には低発泡の熱可塑性合成樹脂を用いる。多層成形体の厚さは基材層の厚さによって大略決定されるが、基材層の厚さは用途によって広い範囲で変えることができ、通常5〜40mmの範囲で自由に設計することができる。
【0010】
特に透明または半透明の表面層を設けた場合は、基材層は、加飾層が不連続である場合に、加飾層の隙間を通してその色および模様が隣り合う加飾層の色および模様と組み合わされ、より意匠性のある模様を形成し、その効果が、直接または透明樹脂層(c)を通して表面から透視される。
基材層における模様とは、単に着色しただけのものであってもよいし、多色混合により色斑を形成したものでもよく、また木粉等の加飾性粉体を混合したもの等種々の模様形態を含む。例えば加飾層より淡い同系色の着色を行えば木目調に極めて近い模様を作り出すこともできる。場合により基材層には、単に着色するだけでなく、独自の模様を持たせてもよい。
【0011】
基材層を形成する熱可塑性合成樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂(以後、PVC樹脂という)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(以後、ABS樹脂という)、ポリスチレン樹脂(以後、PS樹脂という)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(以後、HIPS樹脂という)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(以後、AS樹脂という)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(以後、PPE樹脂という)またはこれらの混合樹脂等、押出成形が可能であれば特に限られるものではない。成形性、物性、コストの面から好ましいのはPS樹脂、ABS樹脂である。
これらの熱可塑性合成樹脂には、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シラスバルーン等の充填材や軽量化材、ガラス繊維やセルロース繊維等の補強材、難燃剤、その他の、合成樹脂成形体に添加される各種添加材を含むことができる。
【0012】
低発泡である基材層の発泡倍率は1.5〜3.5倍、好ましくは2.0〜3.0倍である。1.5以下では軽量化と加工性の特徴を発現することが困難であり、3.5以上では強度が不十分となる。
また、基材層は平板である必要はなく、建築構造への取り付けを容易にするためにL型その他の異型断面であってもよく、また補強用のリブを有する構造であってもよい。このような構造も多層押出成形工程において同時に形成することができる。
【0013】
加飾層は基材層上に連続層として形成されてもよいし、不連続層として形成されてもよく、いずれであっても基材層とともに同時多層押出されて基材層に積層される。
加飾層は着色剤によって単色に着色したものであってもよいし、更に、木粉、マイカ粉末、有機繊維、熱可塑性樹脂等の加飾粉粒体を配合して模様付けをしてもよい。また、例えば、加飾層を構成する合成樹脂と同系統でより高い軟化点を有する樹脂を配合してその流動むらにより模様を形成してもよい。
【0014】
不連続層として形成される加飾層の形状の例としては、ストランド状、島状、虫食いのあるマトリックス状等の形状が挙げられる。このような加飾層が不連続層である場合の特徴ひとつは、上記加飾層の不連続部分に下部の基材層が入り込んで、両者が組み合わされた模様を形成することである。
加飾層のストランドや島の部分、および虫食い部の大きさは同一である必要はなく、種々の大きさのものが混合されていてもよい。ストランドの場合はその幅、ストランド間の間隔、およびピッチは一定でもよいし、種々の大きさのものが混ざっていてもよい。
またストランドの場合、各ストランドの端部はエッジの立った歯型に形成されていてもよいし、円弧のように端部から中心部へ厚みが漸増していてもよい。生産性の点からすれば、中心部へ向かって厚みが漸増するものの方が好ましい。
【0015】
加飾層を形成する熱可塑性合成樹脂は、押出成形性を有するものであれば特に制限されるものではなく、PVC樹脂、ABS樹脂、PS樹脂、HIPS樹脂、AS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PPE樹脂またはポリメチルメタクリレート樹脂(以後、PMMA樹脂という)、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、並びにこれらの混合樹脂等を使用することができる。
【0016】
加飾層の厚さは0.5〜2.5mm、好ましくは1.0〜1.5mmである。0.5mm以下では深みのある模様が得難く、一方、2.5mm以上になると多層成形体としての加工性を損なう。
【0017】
本発明の特徴は加飾層側表面に、間隔が1〜30mmの溝が形成されていることである。この溝によって、本発明の加飾性多層押出成形体は、押出成形体としては従来得られなかったような木目独自の艶感、質感を発現することができる。この溝は多層同時押出成形時の押出工程で形成されるところに特徴がある。溝がこのような工程で形成されていることによって上記したような本発明の特徴が得られる。
溝の間隔は1〜30mm、好ましくは5〜10mmであり、一定であってもよいし不規則であってもよい。溝間隔とは溝の中心間距離をいう。
溝幅および溝深さは、いずれもそれぞれ0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmである。なお溝ごとに幅、深さが異なってもよい。
溝の表面のエッジおよび底面のコーナーは角度を形成してもよいが、好ましくは滑らかに、いわゆるアールを有する方が好ましい。
溝の形成は押出ダイス・サイザー等に対し溝形状を設ける等により賦形される。
【0018】
本発明の加飾性多層押出成形体のもうひとつの態様では、加飾層側表面に透明樹脂層(c)が設けられる。
透明樹脂層(c)は存在してもよいし、なくてもよいが、透明樹脂層(c)を設けることにより、例えば模様層または模様層と基材層によって形成される模様により深みを与えたり、光沢を付与することができる等、模様に幅を持たせることができる。また樹脂の種類を選択することにより、表面硬度を改良したり耐候性を付与することができ成形体をより耐久性のあるものとすることができる。またこのような保護層としての表面層の利用により加飾層の樹脂選択の幅が広がるとともに、外装用としても使用可能となる。
【0019】
表面透明樹脂層には透明または半透明の合成樹脂が用いられる。例えば、PVC樹脂、アクリル系樹脂、透明ABS樹脂、AS樹脂、またはこれらの混合樹脂等を使用することができる。耐候性および成形性の点から好ましいのはアクリル系樹脂であり、特に耐候性の点より好ましいのはPMMA樹脂である。
透明樹脂層には耐候性を高めるために、通常使用される種々の紫外線吸収剤を添加してもよく、また、透明または半透明性を損なわない範囲で、シリコン系樹脂等の他の樹脂、着色剤、助剤等を添加してもよい。
透明樹脂層の厚さは0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜0.5mmである。0.1mm以下では深みを出すことが難しく、1.5mm以上では効果が変わらない割りには経済的に不利となり、また多層積層体としての加工性も低下する。
【0020】
表面透明樹脂層は、基材層および加飾層とともに同時に多層押出成形され、一体の加飾性多層押出成形体を構成する。溝は表面の透明樹脂層の上から付けられる。
【0021】
本発明の加飾性多層押出成形体は、共押出成形法によって成形することができる。特に加飾層がストランド状の場合は、生産性、長尺物成形、製品特性の一定性という面から、図5に示すような多層押出成形法により、1個のダイス内で各樹脂を共押出成形して積層するのが最も適切である。
共押出成形を行うには、いわゆるセルカ法等の従来から合成樹脂の共押出成形に使用されているものを適宜利用して、通常の共押出成形方法により行うことができる。
この場合、ストランド状加飾層は、例えば櫛形の金型を通して押出することが好ましくまた簡単である。櫛形金型の溝の形状や寸法を適宜選択することにより、ストランドの形状や幅、ピッチを自由に設計することができる。
【0022】
基材層を低発泡押出するために、上記の基材層の熱可塑性合成樹脂には発泡剤を配合する必要がある。発泡剤は押出温度で分解して気体を発生する固体状の発泡剤が好ましく、このような発泡剤として重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボン酸アミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド等を用いることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に且つ具体的に説明する。
実施例 1〜2
図5に示す多層押出成形機を用いて、基材層の合成樹脂コンパウンドを基材層用押出成形機Cからダイス内に押出すとともに、加飾層の合成樹脂コンパウンドを加飾層用押出機Bを用いて金型内でストランド状に押出し、ダイス内で基材層の樹脂と混ざらないように押出し、積層一体化することで2層の押出成形体を成形した。なお、加飾性側表面に、溝幅2mm、深さ1mmの溝を10mmの間隔をもって形成した。また成形体の厚みは10mmである。得られた加飾性多層押出成形体の横方向断面構造を図2に示した。
押出条件は次の通りである:
基材用押出機: 45φ、二軸押出機(押出温度 180℃)
加飾層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
【0024】
基材層には表1に示すように次の配合の樹脂コンパウンドを用いた。
<基材配合>
合成樹脂(ABS) 100 重量部
発泡剤(重炭酸ナトリウム) 2.5 重量部
無機質充填材(タルク) 10.0 重量部
着色剤(グレー) 1.5 重量部
また加飾層としては、表1に示すように実施例1および2のコンパウンドを用いた。加飾層に使用した樹脂のうち、ABS樹脂-1はABS樹脂に木粉を20PHR配合したものであり、ABS樹脂-2は予めダークブラウンに着色したABS樹脂である。
【0025】
実施例 3〜5
基材層、加飾層および表面層のコンパウンドまたは合成樹脂を、それぞれ基材層用押出機、加飾層用押出機、表面層用押出機から同時に押出し、ダイス内で積層して3層の押出成形体を成形した。加飾層の形状は実施例1および2と同じである。実施例1および2と同様にして、表面透明樹脂の側から溝幅2mm、深さ1mmの溝を10mm間隔をもって形成した。また成形体の厚みは10mmである。
得られた加飾性多層押出成形体の横方向断面図を図3に示した。
押出条件は次の通りである:
基材用押出機: 45φ、二軸押出機(押出温度 180℃)
加飾層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
表面透明樹脂層用押出機:30φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
【0026】
基材層には実施例1および2同様次の配合のコンパウンドまたは樹脂を用いた。
<基材配合>
合成樹脂(ABS) 100 重量部
発泡剤(重炭酸ナトリウム) 2.5 重量部
無機質充填材(タルク) 10.0 重量部
着色剤(グレー) 1.5 重量部
表面透明樹脂層には、表2に記載したようにPMMA樹脂(三菱レイヨン社製、「アクリペット」)またはこれに着色剤(ベージュ)を添加したものを用いた。
また加飾層としては、表1に示すように実施例3〜5の配合物を用いた。
【0027】
実施例 6
基材層、加飾層および表面層のコンパウンドまたは合成樹脂を、それぞれ基材用押出機、加飾層用押出機、表面層用押出機から同時に押出し、ダイス内で積層して3層の押出成形体を成形した。加飾層は基材層表面側全面に積層した。上記各実施例と同様に、表面透明樹脂層側から溝幅2mm、深さ1mmの溝を10mm間隔で成形した。また成形体の厚みは10mmである。得られた加飾性多層成形体の横方向断面図を図4に示した。
押出条件は次の通りである:
基材用押出機: 45φ、二軸押出機(押出温度 180℃)
加飾層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
表面透明樹脂層用押出機:30φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
【0028】
【表1】
【0029】
こうして得られた加飾性多層成形体は、優れた装飾性を有するものであった。特に表面層を付与しているものについては、非常に柔らかな模様を得ることができるものであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の多層成形体は、従来の積層化粧板とちがって、深みを有すると共に艶感、質感のある木目模様を有し、しかも耐候性、耐久性に優れ、住宅等の室内の加飾性を要する部位をはじめ、外壁等にも使用でき、建築物の価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加飾性多層押出成形体の横断面図。
【図2】 加飾層がストランド状である本発明実施例1および2の加飾性多層押出成形体の構成を示す横断面図。
【図3】 加飾層がストランド状であり、表面に透明樹脂層を有する本発明実施例3〜5の加飾性多層押出成形体の構成を示す横断面図。
【図4】 加飾層が連続層であり、表面に透明樹脂層を有する本発明実施例6の加飾性多層押出成形体の構成を示す横断面図。
【図5】 本発明の加飾性多層成形体の成形方法の1例を示す共押出成形の模式図。
【符号の説明】
1:加飾層、
2:基材層、
3:表面透明樹脂層、
4:溝、
A:表面透明樹脂層用押出機、
B:加飾層用押出機、
C:基材層用メイン押出機。
Claims (2)
- (a)低発泡熱可塑性合成樹脂からなる基材層および(b)基材層の表面に設けられた加飾合成樹脂層の少なくとも2層からなる多層押出成形体であって、該成形体表面には押出工程において形成されてなる少なくとも2本以上の溝を有し、該溝は、溝幅が0.5〜5mm、溝深さが0.5〜5mm、該溝間隔が1〜30mmであり、該加飾合成樹脂層(b)が基材層上に連続層または不連続層として設けられた模様層からなり、該多層押出成形体が表面に木目模様を有する加飾性多層押出成形体。
- 加飾性多層押出成形体が、最表面層として共押出成形により形成された透明層(c)を有する請求項1に記載の加飾性多層押出成形体。
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