JP4277130B2 - 粒子状黒鉛系炭素材料、その製造方法、負極材料およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子状黒鉛系炭素材料とその製造方法、この様な粒子状黒鉛系炭素材料からなるリチウム二次電池用負極材料、ならびにこの様な負極用炭素材料を使用するリチウム二次電池に関する。
【0002】
理想的には6員環の集合からなる黒鉛も、実際には内部に多くの準安定状態を有しており、5員環および7員環の結合、安定化ラジカルなど(活性種)が存在する。黒鉛系炭素材料粒子を含む材料をプレスして、電極を製造する際には、炭素材料の被覆の有無に関わりなく、炭素材料粒子表面および内部に存在するこれらの活性種が、粒子の変形乃至破損により露出するので、リチウム二次電池を組み上げた場合に、電解液と接触して、供給されたリチウムと反応する。本明細書においては、これらの活性種存在部を「活性点」という。
【0003】
【従来の技術】
近年電子機器、情報機器などの携帯用機器類(以下「携帯機器」という)の小型化および軽量化が目覚ましく進行しつつあり、それらを駆動する二次電池が非常に重要な部品となってきている。リチウム二次電池は、軽量かつ高エネルギー密度を有するため、携帯機器の駆動用電源として有望視され、研究開発が活発に進められている。しかしながら、リチウム金属を負極に用いた場合には、充放電サイクルを繰り返すことにより金属リチウム上にデンドライトが生成・成長して、内部短絡を引き起こすため、二次電池化が困難である。また、リチウム金属に代えてリチウム-アルミニウム合金の様なリチウム合金の使用が提案されているが、この場合には、充放電サイクル或いは深い充放電を行うと、合金の偏析などがおこるため、長期的に十分な特性は得られない。
【0004】
そこで、炭素材料をホスト材料とし、リチウムイオンの挿入/脱離反応(インターカレーション/デインターカレーション)を利用する負極を用いた電池が提案され、研究開発が進められ、実用化されてきている。炭素材料を負極に用いるリチウム二次電池では、サイクル特性、安全性などが改善されるものと期待されている。しかしながら、黒鉛系炭素材料を負極材料として使用する場合には、理論放電容量が372Ah/kgであるにもかかわらず、電解液との副反応を生じるので、実際の放電容量は320Ah/kg程度であり、初期クーロン効率も90%を超えるものは少ない。
【0005】
特に、初期クーロン効率は、電池の構成上重要なパラメーターであり、そのより一層の向上が求められている。すなわち、炭素材料をリチウム二次電池の負極として使用する場合には、リチウムイオン量とのバランスから正極の量が決定されるので、炭素材料の初期クーロン効率が低いと、より多くの正極材料をパッキングすることが必要となる。従って、正極材料のパッキング重量および体積を減少させるとともに、コスト軽減をはかるためにも、負極用炭素材料の初期クーロン効率の改善が強く求められている。
【0006】
負極用炭素材料の初期クーロン効率は、リチウムならびに電解液との副反応と密接に関連しているので、黒鉛系炭素材の表面をピッチ、タールなどの固体あるいは液体有機物でコーティング処理し、その表面改質を行うことにより、副反応を抑制する試みがなされている。
【0007】
より具体的には、炭素材料の負極としての性能改善を目的として、物性値或いは微細組織を規定した種々の炭素材料が提案されている。例えば、特開平4-368778号公報、特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報、特開平9-213328号公報などは、芯材となる黒鉛粒子の表面を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を提案している。
【0008】
特開平4-368778号公報に記載された技術においては、炭化水素ガスの熱分解により、炭素被覆層を形成しているので、各炭素粒子の融着或いは凝集などは起こらず、性能に優れた炭素材料が得られるとされている。しかしながら、この方法は、量産に適しておらず、コストが高いという問題点を有している。また、炭素粒子と気体とを均一に接触させることは困難であるため、全体として均一な性能を備えた材料が得られ難い。さらに、加熱/攪拌装置としてロータリーキルンを使用する場合には、反応炉の金属部が触媒としての作用を発揮するので、炭化水素ガスの自己分解による不純物炭素が生成するという問題点もある。さらにまた、炭素被覆層を有する炭素材料粒子を用いて電極を作製する場合には、プレス圧が高くなると、炭素材料粒子が変形ないし破損して、粒子表面および内部の活性点が再び露出するので、活性点との接触による電解液の安定性阻害という問題点は、解決されない。
【0009】
特開平4-370662号公報、特開平5-121066号公報などは、一般に量産性、コストなどの点で有利な液相炭素化による被覆炭素材料の製造方法を開示している。しかしながら、液相の有機化合物と黒鉛粒子とを混合し、焼成する方法によれば、炭素化に際して黒鉛粒子同士が融着・凝集するので、電極作成に先立ち、材料を粉砕する必要がある。この粉砕により、粉砕粒子の比表面積が増大して、黒鉛の活性な面が新たに露出するので、電解液の安定性を阻害するという新たな問題点を生ずる。また、炭化物の粉砕時に不純物が混入しやすく、工程が複雑であることも、大きな問題点である。さらに、得られた炭素材料粒子は、黒鉛粒子に対する被覆炭素の割合が非常に大きい。この材料を用いて電極成形を行う場合、成形プレス圧が低い場合にはあまり問題とはならないが、プレス圧が高くなると、被覆炭素部分が変形ないし破損して、内部の活性点が露出するので、活性点との接触による電解液の安定性阻害という問題点は、やはり回避できない。
【0010】
特開平5-94838号公報は、黒鉛系炭素材と固形有機物との混合物を加熱処理することにより、黒鉛系炭素材表面を固形有機物に由来する炭素成分により被覆する方法を開示している。しかしながら、この方法においては、黒鉛系炭素材よりも粒径の小さい固形有機物を使用するので、固形有機物の残渣の少なくとも一部が、分離されることなく、被覆黒鉛材料中に残存する。この残渣が、負極材料としての特性を却って低下させるという問題点がある。
【0011】
特開平9-213328号公報は、黒鉛性炭素質物粒子と有機物の混合体に芳香族系有機溶媒を添加して粘度を調整したスラリー状体を、パドルを備えた混合攪拌室に導入し、攪拌下に溶媒を脱気しつつ、固形状の中間物質を製造した後、これを不活性ガス雰囲気下で600℃以上に加熱し、炭素化する方法(以下この方法を「液相法」という)を開示している。この液相法によれば、黒鉛性炭素質物粒子をほぼ被覆する、極微量の薄い有機物層を備えた電極用炭素材料粒子が形成される。しかしながら、この液相法による製造方法は、工程が煩雑であるため、コスト高となる。さらに、得られた炭素材料粒子を用いて電極を作製するに際し、電極成形時のプレス圧が低い場合にはあまり問題とはならないが、プレス圧が高くなると、被覆された炭素材料粒子が変形ないし破損して、内部の活性点が露出するので、活性点との接触による電解液の安定性阻害という問題点は、やはり回避できない。
【0012】
従って、黒鉛材料粒子の表面を被覆する従来方法においては、(イ)電極製造時のプレス成形により、黒鉛粒子とその被覆層とが破壊され、新たな活性点が露出するので、電解液の安定性を低下させ、ひいては初期クーロン効率を低下させる、(ロ)黒鉛材料粒子表面の被覆層は、充放電容量に寄与しないので、粒子の被覆量に応じて、単位重量/容積当たりの容量低下を招くという問題点が存在する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、リチウム電池電極用炭素材料として、電極形成のためにプレス成形を行った場合にも、活性点の露出による電解液の安定性阻害を生じることがなく、生産コストが低く、さらに単位重量/容積当たりの充放電容量低下を実質的に生じない炭素材料を提供することを主な目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような従来技術の現状に留意しつつ、研究を重ねた結果、以下に示す種々の新規なる知見を得た。
(a)リチウム二次電池用負極材料の初期クーロン効率の低下を引き起こす副反応には、従来から提唱されている「黒鉛表面活性点と電解液との反応」による阻害要因よりは、むしろ「黒鉛材料中に含まれている不対電子とリチウムイオンおよび電解液との反応」による阻害要因の方が、より大きく関与してい
る。
(b)黒鉛材料中の不対電子は、特定の手法により、定量的に測定することができる。
(c)黒鉛材料中の不対電子を減少率と負極材料の初期クーロン効率の改善との間には、比例乃至相関関係がある。
(d)不対電子量を著しく減少させた黒鉛材料は、黒鉛材料を実質的に被覆することなく、特定の手法を用いて、材料表面および内部の活性点を不活性化することにより、容易に製造することができる。
(e)このようにして得られた黒鉛材料をリチウム二次電池の負極用材料として使用する場合には、リチウム二次電池の容量を一層高めることができる。
【0015】
本発明は、この様な新知見に基づいて完成されたものであり、下記の炭素材料、その製造方法、この様な炭素材料からなるリチウム二次電池用負極材料、ならびにこの様な負極材料を用いたリチウム二次電池を提供するものである。
1.粒子状黒鉛系炭素材料であって、10KでのESR測定により観測される2.001<g<2.004の測定ピーク高さとQ値とにおいて、下式
【0016】
【数3】
で定義される指数Xが、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジドについての指数Xの4.0×10-7倍以下であることを特徴とする黒鉛系炭素材料。
2.レーザーラマン分光法により観測される1550〜1600cm-1のピーク強度(IL155 0)と1400〜1500cm-1の最低強度(IL1400)との比が下式
0.15>IL1400/IL1550
を充足する上記項1に記載の炭素材料。
3.X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が0.34nm以下の黒鉛系炭素材である上記項1または2に記載の炭素材料。
4.粒子状黒鉛系炭素材料の製造方法において、X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛系炭素材Aを熱分解性成分含有固形有機物Bの共存下に非酸化性雰囲気中400〜3000℃で加熱処理した後、分級して、黒鉛系炭素材Aに由来する炭素材料部分を収得することを特徴とする方法。
5.熱分解性成分含有固形有機物Bが、加熱処理により炭素不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を発生する上記項4に記載の方法。
6.熱分解性成分含有固形有機物Bが、ピッチである上記項4または5に記載の方法。
7.ピッチが、下式
【0017】
【数4】
で定義される芳香族指数fa=0.60〜0.98を呈する上記項6に記載の方法。
8.ピッチの軟化点が、150℃以上である上記項6または7に記載の方法。
9.ピッチが、光学的等方性ピッチである上記項6〜8のいずれかに記載の方法。
10.ピッチのトルエン不溶分量が、1重量%以下である上記項6〜9のいずれかに記載の方法。
11.熱分解性成分含有固形有機物Bから発生する炭素不飽和結合を有する化合物が、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一種である上記項4〜10のいずれかに記載の方法。
12.加熱処理を常圧下に600〜1300℃で行う上記項4〜11のいずれかに記載の方法。
13.加熱処理の前後において、黒鉛系炭素材Aの粒子径と熱分解性成分含有固形有機物Bの粒子径とが、Aの粒子径<Bの粒子径なる関係にある上記項4〜12のいずれかに記載の方法。
14.上記項1〜3のいずれかに記載された粒子状炭素材料からなるリチウム二次電池用負極材料。
15.放電容量330mAh/g以上かつ初期クーロン効率85%以上の性能を示す上記項14に記載のリチウム二次電池用負極材料。
16.上記項14または15に記載のリチウム二次電池用負極材料を構成要素とするリチウム二次電池。
17.リチウム二次電池が、非水系リチウム二次電池である上記項16に記載のリチウム二次電池。
18.リチウム二次電池が、リチウムポリマー二次電池である上記16に記載のリチウム二次電池。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明による黒鉛材料中の不対電子の量は、黒鉛をHe置換後、常圧において、10KにおけるESR解析により測定することができる。本発明黒鉛材料においては、10KでのESR測定により観測される2.001<g<2.004の測定ピーク高さとQ値とにおいて、下式
【0019】
【数5】
で定義される指数Xが、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジドについての指数X(以下「基準指数X」ということがある)の4.0×10-7倍以下となっている(すなわち、ESR比率=指数X/基準指数X<4.0×10-7である)場合には、黒鉛材料中の不対電子の量が十分に減少しており、負極材料としての初期クーロン効率が大巾に改善されるとともに、リチウム二次電池の容量を著しく増大させることができる。
【0020】
なお、通常の黒鉛材料の指数Xは、基準指数Xの1.0×10-6倍以上であり、本発明の黒鉛材料の指数Xに比して、著しく高い。
【0021】
本発明による黒鉛材料は、初期クーロン効率および容量をより一層高めるために、その表面および内部にアモルファスカーボン、難黒鉛性カーボンなどの不純物をできるだけ含まないことが好ましい。不純物の量は、レーザーラマン分光法により観測される2つの強度比により判定し、制御することができる。すなわち、レーザーラマン分光法により観測される1550〜1600cm-1のピーク強度(IL1550)と1400〜1500cm-1の最低強度(IL1400)との比が下式
0.15>IL1400/IL1550
を充足する場合に、当該黒鉛材料は、負極材料として、優れた効果を発揮する。
【0022】
また、黒鉛材料の高い黒鉛性を示す値として、X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が、0.34nm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明による黒鉛材料は、X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛系炭素材Aを熱分解性成分含有固形有機物Bの共存下に非酸化性雰囲気中400〜3000℃で加熱処理した後、分級して、黒鉛系炭素材Aに由来する炭素材料部分を収得することにより、得られる。
【0024】
本発明の黒鉛材料製造方法においては、粒子状黒鉛系炭素材Aと熱分解性成分含有粒子状固形有機物Bとの混合物を焼成する際に、粒子径のより大きい固形有機物Bに由来する熱分解性成分が適量に揮発して、粒子状黒鉛系炭素材Aの表面および内部に含まれる活性点を選択的に不活性化する(換言すれば、不対電子量を減少させる)ものと推測される。
【0025】
従って、篩い分けという簡易な手法により収得される炭素材A由来の炭素材料部分においては、当初の活性点が不活性化された部位以外には、熱分解性成分に由来する焼結体は実質的に存在しないという特徴を有している。
【0026】
以下においては、黒鉛系炭素材A表面および内部の活性点部位にこの様な熱分解性成分に由来する焼結体が存在している炭素材料を「活性点不活性化炭素材」ということがある。
【0027】
一般に、電池の負極材料としての人造黒鉛、天然黒鉛などの黒鉛系炭素材は、他のアモルファス系炭素材料に比して、電池の高電圧出力量を高めることができるものの、活性点が多いので、電解液に対する安定性が劣るという問題がある。
【0028】
しかるに、本発明においては、上述の「固相気化法」により、黒鉛系炭素材Aを処理することにより、固形有機物Bに由来する熱分解性成分が炭素材Aの表面の活性点のみならず、その内部の活性点までをも選択的に不活性化する。従って、本発明による活性点不活性化炭素材をリチウム二次電池用負極材料として使用する場合には、黒鉛系炭素材が有する活性点による電解液分解能が著しく抑制されるので、黒鉛系炭素材A固有の優れた特性が最大限に発揮される。また、炭素材Aと固形有機物Bとを併用することにより、炭素材Aと固形有機物Bとを均一に攪拌混合した後は、混合物をそのまま静置した状態で昇温反応を行っても、均一な性状の目的生成物が得られるので、加熱/撹拌装置の様な高価な設備は、不要である。しかも、固形有機物に由来する成分で不活性化処理された部分は、実施例に示す結果から明らかな様に、電極材料の高圧プレス成型時にも、殆ど損傷されない。従って、本発明による活性点不活性化炭素材をリチウム二次電池の負極材料として採用する場合には、高容量(重量あたりおよび体積あたり)で且つ安全性の高いリチウム二次電池を得ることができる。
【0029】
前述の公知の液相法により被覆炭素材料を直接製造する場合には、被覆層厚さの大小に関係なく、炭素材料の全面乃至ほぼ全面に均一な被覆が形成される。この様な炭素材料を用いて高圧プレス成形により電極を製造する場合には、被覆層が容易に破壊されて、炭素材料表面および内部の活性点が再度露出するので、比較例に示す結果から明らかな様に、電極表面の活性点と電解液との反応性が再び高くなる。
本発明において、「活性点の選択的不活性化或いは不対電子量の著しい減少」が生じる作用機序、不活性化部分の性状などの詳細については、未だ十分に解明されるに至っていない。しかしながら、上述の如く、本発明による黒鉛系炭素材料を用いて高圧プレス成形により電極を製造する場合にも、その不活性化状態がそのまま維持されることから、「選択的不活性化」が、活性点の単なる被覆によるものではないことが明らかである。
【0030】
本発明において使用する黒鉛系炭素材A(以下、単に「炭素材A」ということがある)としては、X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が0.34nm以下であることを必須とする。この様な炭素材Aは、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化炭素繊維粒子などから選択される。炭素材Aの粒子径は、通常0.1〜200μm程度の範囲内にあり、0.5〜150μm程度の範囲内にあることがより好ましい。
【0031】
揮発性の熱分解成分(エチレン、プロピレンなどの炭素不飽和結合を有する化合物)を含有する粒子状固形有機物B(以下、単に「固形有機物B」ということがある)としては、石油系および石炭系の光学的等方性ピッチなどが挙げられる。
【0032】
なお、炭素材Aとエチレン、プロピレンなどの気体とを直接接触させる場合には、比較例に示す結果から明らかな様に、本発明の所望の効果を備えた黒鉛系炭素材料は得られない。
【0033】
固形有機物Bとしては、石油系の光学的等方性ピッチがより好ましい。固形有機物Bの粒子径は、通常4μm〜5mm程度の範囲内にあり、250μm〜2mm程度の範囲内にあることがより好ましい。
【0034】
固形有機物Bとしてのピッチにおいては、下式
【0035】
【数6】
で定義される芳香族指数faが、0.60〜0.98程度の範囲にあることが好ましく、0.60〜0.8程度の範囲にあることがより好ましく、0.6〜0.7程度の範囲にあることがさらに好ましい。
【0036】
固形有機物Bとしてのピッチの軟化点は、通常150℃以上であり、150〜300℃程度であることがより好ましい。
【0037】
また、ピッチ中のトルエン不溶分量は、1重量%以下であることが好ましい。トルエン不溶分量が過剰である場合には、黒鉛表面への不要炭素の付着が多くなるので、容量および初期クーロン効率が低下する傾向にある。
【0038】
なお、本明細書においては、粒子に関して、「平均粒径」とは、湿式レーザー回折測定法により得られた体積分布における中心粒径を意味する。
【0039】
本発明による炭素材料の製造に際しては、炭素材Aの粒子径が固形有機物Bの粒子径よりも小さいことが重要である。すなわち、本発明による炭素材料は、その表面全体が層状に被覆されるのではなく、実質的にその活性点が、固形有機物Bに由来する熱分解成分により選択的に不活性化されていることを必須とする。このため、炭素材Aと固形有機物Bとの混合物を加熱処理した後に、炭素材Aに由来する炭素材料が固形有機物Bの残渣物から完全に分離できなければならない。固形有機物Bの粒径が炭素材Aの粒径よりも小さい場合には、固形有機物Bが凝縮して、分級(例えば、篩い分け、風簸、遠心分離など)に際して、炭素材Aに由来する所望の炭素材料中に混入するおそれがある。固形有機物Bの平均粒径は、炭素材Aの平均粒径の1.1〜10000倍程度であることが好ましく、10〜1000倍程度であることがより好ましい。
【0040】
炭素材Aは、有機固形物Bの共存下に非酸化性雰囲気中で加熱処理される。両材料は、加熱処理に先立って予め均一に混合しておくことが好ましい。
【0041】
炭素材Aと有機固形物Bとの配合割合は、後者の熱分解成分含有量にも依存するが、通常前者100重量部を基準として、後者5〜50重量部程度、より好ましくは後者5〜15重量部程度とする。炭素材Aに対する有機固形物Bの配合量が少なすぎる場合には、加熱処理時に有機固形物Bから気化する熱分解成分の量が十分でなくなるので、炭素材Aの活性点の不活性化が不十分となり、電極を形成した場合に所望の効果が得られない。炭素材Aに対する有機固形物Bの配合量が多すぎる場合には、逆に加熱処理時に有機固形物Bから気化する熱分解成分の量が過剰となって、炭素材Aの表面に層状の被覆が形成される。その結果、充放電に寄与しない被覆炭素量が多くなり、容量および効率が低下するとともに、電極の成型時に被覆層が破壊され、耐久性などに劣るものとなる。
【0042】
炭素材Aの加熱処理は、有機固形物Bの共存下に、還元雰囲気中、不活性ガス気流中、不活性ガス充填密閉空間中、真空乃至減圧下などの非酸化性雰囲気中で、通常400〜3000℃程度(より好ましくは500〜1300℃程度)で行う。加熱処理は、熱分解性成分による炭素材A中の活性点の不活性化が良好に進行する不活性ガス或いは還元性ガスの密閉雰囲気中で行うことが、好ましい。これらの雰囲気の圧力は、実用上の観点からは、常圧或いは常圧近傍で行うことが好ましい。
【0043】
ついで、加熱処理後の配合物を分級して、炭素材Aに由来する粒径のより小さい黒鉛系炭素材料部分を収得する。
【0044】
本発明による黒鉛系炭素材料は、下記の性状により特徴付けられる。
*炭素材Aの表面および内部の活性点が、選択的に実質的に不活性化されている。この不活性化は、不対電子量の減少に伴って、発現されたものと推測される。
*活性点は、全体的にかつ強固に不活性化されているので、黒鉛系炭素材料を用いて電極の成形を行うに際し、炭素材料の破損ないし変形が生じたとしても、従来の黒鉛系炭素材料を使用する電極とは異なり、内部露出に伴う電解液との
副反応が促進されることはない。
【0045】
本発明は、さらに、上記の黒鉛系炭素材料を構成要素とするリチウム二次電池用負極材料およびこの負極材料を使用するリチウム二次電池をも提供する。
【0046】
本発明による黒鉛系炭素材料をリチウム二次電池電極用炭素材料として使用する場合には、容量のより高いリチウム二次電池を得ることができる。また、電解質と有機溶媒との反応が抑制されるので、電解液の分解、炭素材料の破壊などを生じにくくなる。その結果、充放電効率が向上し、電池の安全性も改善されるという利点が得られる。
【0047】
電極の製造に際しては、本発明による黒鉛系炭素材料を公知のバインダーなどと混合した後、集電体上に活物質層を形成する。バインダーとしては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。この場合のバインダーの量としては、活物質100重量部に対して、通常1〜30重量部程度の範囲であり、より好ましくは1〜20重量部程度であり、さらに好ましくは1〜15重量部程度である。バインダーの量が多すぎると、電極中の活物質の密度が低下するため、好ましくない。また、バインダーが少なすぎると、電極中の活物質を保持する能力が十分得られず、電極の安定性が低下するため、好ましくない。また、電極を形成する方法としては、活物質とバインダーとを混合したペーストを作製し、ドクターブレード、バーコーターなどにより集電体上に活物質層を形成する方法、或いは活物質とバインダーとを混合したものを成型器などに入れ、プレス成形などにより成形体とする方法などが挙げられる。
【0048】
また、本願発明によるリチウム二次電池の電解質としては、公知の有機電解液、無機固体電解質、高分子固体電解質などを用いることができる。
【0049】
これらの中でも、イオン伝導度の観点からは、有機電解液が特に好ましい。有機電解液用の溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの置換テトラヒドロフラン;ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどが例示される。これらの溶媒は、単独でまたは混合して使用することができる。電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、6フッ化燐酸リチウム、6フッ化砒酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、塩化アルミン酸リチウムなどのリチウム塩などが例示され、これらの1種或いは2種以上を使用することができる。有機電解液は、上記の溶媒に電解質を溶解することにより、調製される。なお、電解液を調製する際に使用する溶媒および電解質は、上記に例示されたものに限定されないことはいうまでもない。
【0050】
無機固体電解質としては、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物などが挙げられ、より具体的には、Li3N、LiI、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li4SiO4、Li2SiS3などが例示される。
【0051】
有機固体電解質には、上記の電解質と電解質の解離を行う高分子とから構成された物質、高分子にイオン解離基を持たせた物質などがある。電解質の解離を行う高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、リン酸エステルポリマーなどがある。上記の非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性極性溶媒との混合物、電解液にポリアクリロニトリルを添加した材料も、使用可能である。さらに、無機固体電解質と有機固体電解質とを併用することも、可能である。
【0052】
本発明のリチウム二次電池における正極としては、常法に従って、例えばリチウムを含有する酸化物を正極活物質として用いることができる。正極活物質の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、これらの類縁化合物であるLixMyNzO2(ここで、MはFe、Co、NiおよびMnのいずれかであり、Nは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiMn2O4、その類縁化合物であるLiMn2-xNyO4(ここで、Nは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiVO2などが挙げられる。この様な正極活物質に導電材、バインダーおよび、必要に応じ、固体電解質などを混合して、正極が形成される。これら各材料の混合比は、活物質100重量部に対して、導電材5〜50重量部程度、バインダー1〜30重量部程度とすることができる。この様な導電材としては、特に制限されず、公知のカーボンブラック(アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなど)などの炭素類、グラファイト粉末、金属粉末などを用いることができ。また、バインダーとしても、特に限定されず、公知のポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。正極の作製に際しては、結着性を改善するために、各バインダーの融点近傍の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0053】
また、電解液を保持するためのセパレーターとしては、公知の電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維などの不織布あるいは織布、アルミナなどの粉末の成形体などが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの不織布が品質の安定性などの点から好ましい。これら合成樹脂の不織布には、電池が異常発熱した場合に、セパレーターが熱により溶解して、正極と負極との間を遮断する機能を付加したものがあり、安全性の観点から、これらも好適に使用することができる。セパレーターの厚みは、特に限定されず、必要量の電解液を保持することが可能であり、かつ正極と負極との短絡を防ぐことができればよく、通常0.01〜1mm程度であり、好ましくは0.02〜0.05mm程度である。
【0054】
集電体としては、公知の銅、ニッケル、ステンレス、アルミ、チタンなどの金属の箔状体、メッシュ体、多孔質体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【発明の効果】
本発明においては、固形有機物Bの存在下に、炭素材Aを加熱処理することにより、炭素材Aの活性点を不活性化する(不対電子量を減少させる)ことができるので、放電容量、初期クーロン効率、サイクル性、安全性などの諸特性に優れ、かつ高容量のリチウム二次電池用負極材料を製造することができる。
【0056】
また、本発明により得られる黒鉛系炭素材料を使用して、非水系二次電池或いはポリマー電池を作製する場合には、高容量で、充放電特性と安全性とに優れた電池を製造することが可能となる。
【0057】
さらに、本発明は、安価な天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛系材料とピッチなどの固形有機物とを原料として使用し、その製造方法も簡単でであり、量産性にも優れているので、従来の液相法に比して、安価な高性能リチウム二次電池用負極材料を製造することを可能とする。
【0058】
【実施例】
以下実施例および比較例を示し、発明の特徴とするところをより一層具体的に説明する。
実施例1
平均粒径18μmの人造黒鉛(TIMCAL社製、“SFG-44”)25gと粒径500〜1000μmの石油系ピッチ3gとからなる均一な混合物を炭化炉内に入れ、窒素雰囲気下で昇温速度300℃/hで1100℃まで昇温し、同温度に3時間保持した後、放冷した。次いで、得られた炭化物を400メッシュの篩を通すことにより、本発明による粒子状黒鉛系炭素材料を収率90%で得た。得られた炭素材料を50000倍の電解電子顕微鏡で観察したところ、被覆層の形成は認められなかった。
【0059】
上記で得られた粒子状黒鉛系炭素材料0.88mgをESR管内にHeとともに封入し、10KでESR測定を行った。
【0060】
測定に際しては、ESR測定装置(BRUKER社製、“ESP350E”)、マイクロ周波数カウンター(HEWLETT PACKEARD社製)、ガウスメーター(BRUKER社製、“ER035M”)、クライオスタット(OXFORD社製、“ESR910”)を使用した。また、測定条件は、以下の通りであった。
【0061】
測定温度 :10K
磁場掃引範囲 :286.0〜386.0mT
変調 :100kHz,1.0mT
マイクロ波 :lmW、9.44GHz
掃引時間 :335.544s×4回
時定数 :327.68ms
データポイント数 :2048points
キャビティー :TM110、円筒型
2.001<g<2.004に観察される測定ピークは、ゲイン1.25×104で、高さ3000であり、Q値は2800であった。この測定グラフを図1に示す。
【0062】
したがって、本処理によって得られた黒鉛系材料について、指数xは、7.26×10-8となった。
【0063】
さらに、測定された不対電子の規格化のため、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル((C6H5)2NNC6H2(NO2)3、以下「DPPH」と略記する)の15%ベンゼン含有物(ナカライテスク社製)を乳鉢で粉砕した後、その0.47gを採取し、ESR管にHeとともに封入し、上記と同様に10KでESR測定を行った。測定条件は、以下の通りであった。
【0064】
測定温度 10K
磁場掃引範囲 332.0〜342.0mT
変調 100kHz、0.05mT
マイクロ波 0.05mW、9.45GHz
掃引時間 83.886s×1times
時定数 81.92ms
データボイント数 2048points
キャビティー TM110、円筒型
2.001<g<2.004に観察される測定ピークはゲイン20で、高さ6400となり、Q値は3200であった。これらの測定値を用いて得られたDPPHの指数x(基準指数)は、2.27×10-1となった。この測定グラフを図2に示す。
【0065】
従って、本発明による黒鉛系材料の指数x/DPPHの指数xとの比(以下この比を「ESR比」ということがある)は、
7.26×10-8/2.27×10-1=3.20×10-8倍<4.0×10-7倍
であった。
【0066】
さらに、本発明による黒鉛系材料のラマン分析を3回行った。測定に使用した装置は、以下の通りであった。
【0067】
・装置 :Ramaonor T-64000(Jobin Yvon/愛宕物産)
・光源 :Ar+レーザー (NEC GLG3460 5145A)
結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
表1に示す通り、平均値の比較で、IL1400/IH1550=0.08<0.15が得られた(以下この比を「ラマン比率」ということがある)。
【0069】
このラマン分析結果から、本発明黒鉛材料では、コーティングが殆ど行われていないことがわかる。
【0070】
上記で得られた本発明黒鉛系材料10gとポリフッ化ビニリデン0.8gとをN-メチルピロリドン9.2g中で混合してペースト状とした後、ドクターブレードにより、厚さ25μmの銅箔上に縦1cm×横1cm×厚さ100〜120μmに塗布し、乾燥した。乾燥物をロールプレスして、銅箔を含めた全厚を100μmとすることにより、リチウム二次電池特性評価用負極とした。
【0071】
次いで、参照極および対極をリチウムとしたセルにより、特性評価用電極の充放電特性を評価した。
【0072】
電解液としては、1M過塩素酸リチウムを含むEC:DEC=1:1の混合溶液を使用した。
【0073】
充電は、1mA/cm2で1mVまで定電流充電し、1mVとなったときに1mV定電位充電に切り替え、トータルで12時間充電した時点を充電終了ポイントとした。放電は、1mA/cm2で1.2Vまで定電流放電した。
【0074】
得られた負極材料の特性は、電極密度=1.19の場合には、放電容量=357mAh/g、初期クーロン効率=94.6%であった。
【0075】
また、電極密度=1.39の場合には、放電容量=354mAh/g、初期クーロン効率=93.8%であった。
比較例1
実施例1で使用したと同様の人造黒鉛(未処理人造黒鉛)の負極材料としての特性をESR測定により評価した。測定条件は、以下の通りであった。
【0076】
測定温度 :10K
磁場掃引範囲 :286.0〜386.0mT
変調 :100kHz,1.0mT
マイクロ波 :lmW、9.44GHz
掃引時間 :335.544s×2回
時定数 :327.68ms
データポイント数 :2048points
キャビティー :TM110、円筒型
重量 :0.82g
2.001<g<2.004に観察される測定ピークはゲイン2.50×104で、高さ12400となり、Q値は2700であった。これらの測定値を用いて得られた未処理人造黒鉛の指数xは、1.47×10-6となった。この測定グラフを図3に示す。
【0077】
従って、未処理人造黒鉛系材料の指数x/DPPHの指数xとの比(「ESR比」)は、
1.47×10-6/2.27×10-1=6.48×10-6倍>4.0×10-7倍
であった。
【0078】
また、この非処理人造黒鉛の負極材料としての特性を実施例1と同様にして評価したところ、電極密度=1.17の場合には、放電容量=354mAh/g、初期クーロン効率=89.0%であった。
比較例2
実施例1で使用したと同様の人造黒鉛30gに対し、エチレンボトム油10gおよびトルエン35gを加え、80℃で攪拌し、スラリーを得た。このスラリーを400℃、660Torrで12時間放置し、乾燥することにより、固体物を得た。この固体物をさらに窒素雰囲気下1100℃で炭化した後、分級することにより、平均粒径20μmの黒鉛系炭素材料を得た。この黒鉛系炭素材料の表面は、エチレンボトム油に由来する炭化物により、全面的に被覆されていた。
【0079】
得られた粒子状被覆黒鉛を実施例1と同様にしてESR測定およびラマン分析に供した。
【0080】
本比較例による被覆黒鉛系材料の指数x/DPPHの指数xとの比(「ESR比」)は、
3.34×10-7/2.27×10-1=1.47×10-6倍>4.0×10-7倍
であった。
【0081】
また、ラマン分析結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
表2に示す通り、平均値の比較で、IL1400/IH1550(ラマン比率)=0.25>0.15が得られた。
【0083】
このラマン分析結果から、本発明黒鉛材料では、表面へのコーティングが行われていることがわかる。
【0084】
また、この被覆人造黒鉛の負極材料としての特性を実施例1と同様にして評価したところ、電極密度=1.16の場合には、放電容量=330mAh/g、初期クーロン効率=90.7%であった。
実施例2
黒鉛系炭素材Aとして平均粒径17.7μmの人造黒鉛(TIMCAL社製、“KS-44”)を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明による黒鉛系炭素材料を得た。
【0085】
得られた黒鉛系炭素材料について、実施例1と同様の手法で、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
【0086】
下記表3は、実施例1〜3および比較例1〜6による各炭素材料のについての測定結果をまとめて示す。
比較例3
黒鉛系炭素材Aとして平均粒径17.7μmの人造黒鉛(TIMCAL社製、“KS-44”)を使用する以外は比較例1と同様にして、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
比較例4
黒鉛系炭素材Aとして平均粒径17.7μmの人造黒鉛(TIMCAL社製、“KS-44”)を使用し、熱分解性成分含有有機物Bとして平均粒径20.0μmの石油系ピッチを使用するとともに、分級を行わない以外は実施例1と同様にして、黒鉛系炭素材料を得た後、実施例1と同様にして、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
実施例3
黒鉛系炭素材Aとして平均粒径20.5μmの塊状天然黒鉛(日本黒鉛社製、“LB-CG”)を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明による黒鉛系炭素材料を得た。
【0087】
得られた黒鉛系炭素材料について、実施例1と同様の手法で、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
比較例5
黒鉛系炭素材Aとして平均粒径20.5μmの塊状天然黒鉛(日本黒鉛社製、“LB-CG”)を使用する以外は比較例1と同様にして、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
比較例6
実施例1と同様の人造黒鉛を炭化炉に入れ、5%エチレン-95%アルゴンガス雰囲気下で昇温速度300℃/時間で1100℃まで昇温し、同温度に3時間保持した後、放冷した。
【0088】
得られた黒鉛系炭素材料について、実施例1と同様の手法で、ESR比、ラマン比率、電極密度、放電容量および初期クーロン効率を求めた。
【0089】
【表3】
【0090】
【実施例および比較例で得られた結果についての考察】
表3に示す結果から明らかな様に、黒鉛系炭素材Aを熱分解性成分含有固形有機物Bの共存下に非酸化性雰囲気中で加熱処理した後、篩い分けすることにより得られる本発明炭素材料は、電極製造時の成形圧力に殆ど影響されることなく、高放電容量と高い初期クーロン効率を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた黒鉛材料について行ったESR測定結果を示すチャートである。
【図2】実施例1で使用するDPPHについて行ったESR測定結果を示すチャートである。
【図3】実施例1で使用する未処理人造黒鉛について行ったESR測定結果を示すチャートである。
Claims (14)
- X線回折法により測定した(002)面の面間隔d002が0.34nm以下である黒鉛系炭素材Aを熱分解性成分含有固形有機物Bの共存下に非酸化性雰囲気中400〜3000℃で加熱処理した後、分級して、黒鉛系炭素材Aに由来する炭素材料部分を収得することを特徴とする粒子状黒鉛系炭素材料の製造方法であって、
加熱処理の前後において、黒鉛系炭素材 A の粒子径と熱分解性成分含有固形有機物 B の粒子径とが、 A の粒子径< B の粒子径なる関係にある、
粒子状黒鉛系炭素材料の製造方法。 - 熱分解性成分含有固形有機物Bが、加熱処理により炭素不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を発生する請求項1に記載の方法。
- 熱分解性成分含有固形有機物Bが、ピッチである請求項1または2に記載の方法。
- ピッチの軟化点が、150℃以上である請求項3または4に記載の方法。
- ピッチが、光学的等方性ピッチである請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
- ピッチのトルエン不溶分量が、1重量%以下である請求項3〜6のいずれかに記載の方法。
- 熱分解性成分含有固形有機物Bから発生する炭素不飽和結合を有する化合物が、エチレンおよびプロピレンの少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 加熱処理を常圧下に600〜1300℃で行う請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法によって得られた粒子状黒鉛系炭素材料からなるリチウム二次電池用負極材料。
- 放電容量330mAh/g以上かつ初期クーロン効率85%以上の性能を示す請求項10に記載のリチウム二次電池用負極材料。
- 請求項10または11に記載のリチウム二次電池用負極材料を構成要素とするリチウム二次電池。
- リチウム二次電池が、非水系リチウム二次電池である請求項12に記載のリチウム二次電池。
- リチウム二次電池が、リチウムポリマー二次電池である請求項12に記載のリチウム二次電池。
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