JP4276746B2 - 内燃機関の排気管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重構造を有した内燃機関の排気管に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排気管として、内管とこの内管の外周を覆う外管とからなる二重管構造を有するものが知られている。こうした二重管構造の排気管では、内管と外管との間に形成される空間によって高い断熱性能を得ることができるようになる。
【0003】
ところで、二重管構造の排気管では、所定の断熱性能を得るために、内管と外管との間に隙間が確保された状態で、両管を互いに支持する必要がある。
そこで従来では、特開平6−299848号公報に見られるように、内管と外管との間にワイヤメッシュリングを介在させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようにワイヤメッシュリング等の別部材を介在させることで、内管と外管との間の隙間を確保することはできる。
【0005】
しかしながら、こうした構成とした場合、排気ガスにさらされるワイヤメッシュリング等の部材には、内管や外管と同様、耐食性に優れた材料を用いる必要があり、その製造コストの増大は避けきれないものとなる。
【0006】
また一方で、こうした二重管構造の排気管においては、ある程度の強度が必要とされる外管に対し、内管は排気管全体の軽量化を図るべく、その管壁が非常に薄くされている。このため、複数の筒を溶接によって接合することにより内管を形成するようにすると、こうした接合部において溶け落ち等の溶損が生じ、品質の不安定化を招くことともなる。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二重管構造を有した内燃機関の排気管において、製造コストを低減するとともにその品質の安定化を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載した発明は、複数の筒体を接続してなる内管と該内管の外周を所定の隙間を介して覆う外管とを備える内燃機関の排気管において、前記各筒体はそれらの端部同士を重合し、同重合部を前記外管側に膨出して塑性変形させた塑性変形部により互いに接続されるものであり、該塑性変形部は前記外管の内周面に当接するものであることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、各筒体の端部同士を互いに重合させ塑性変形させることにより、各筒体を互いに接続するようにしているため、溶接によって筒体を接続する場合とは異なり、内管における溶損の発生が回避されるようになる。
【0010】
しかも、この塑性変形部を外管側に膨出させて同外管の内周面に当接させるようにしているため、ワイヤメッシュリング等の別部材を設けなくとも、内管は、外管との間に所定の隙間が確保された状態で、同外管により支持されるようになる。
【0011】
従って、請求項1に記載した発明の上記構成によれば、排気管の品質を安定化させることができ、しかも製造コストの低減を図ることができるようになる。
また、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した内燃機関の排気管において、前記塑性変形部は前記内管の周方向において部分的に形成されるものであることを要旨とする。
【0012】
例えば、上記塑性変形部を内管(筒体)の周方向全周にわたって形成し、外管の内周面に当接させる構成とした場合、塑性加工の精度上、同塑性変形部と外管の内周面とをその周方向において一様に当接させることは難しく、両者の間に部分的に微小な隙間が生じるのは避けられない。そして、このように塑性変形部と外管の内周面との間に微小な隙間が存在していると、内管や外管が振動した際に、この隙間の存在する部分において塑性変形部と外管の内周面とが衝突を繰り返すことにより騒音が発生するようになる。
【0013】
この点、請求項2に記載した発明の上記構成によれば、内管と外管とが上記塑性変形部において部分的に接触するようになるため、上記のように塑性変形部と外管の内周面との間に微小な隙間が形成されるのを極力回避することができ、こうした隙間の存在に起因する騒音の発生を抑制することができるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、図1はこの排気管の断面図であり、図2は、図1における2―2線に沿った断面図である。
【0015】
これら各図に示されるように、この排気管10は、外管12と同外管12の内部に挿入された内管11とによって構成されている。これら内管11及び外管12は、いずれもステンレス等の耐食性に優れる金属材料によって円管状に形成されている。外管12は、内管11よりもその径が大きく設定されており、同内管11の外周を所定の隙間Lを介して覆っている。従って、これら各管11,12,の間には断面円環状の空間16が形成されている。また、内管11の肉厚は排気管10の軽量化を図るべく比較的薄く(例えば「0.8mm」)設定され、一方、外管12の肉厚は所定の強度を確保するために内管11の肉厚よりも厚く設定されている。
【0016】
内管11は、複数の筒体11aによって構成されている。これら筒体11aは、それらの端部同士を重合し塑性変形させた塑性変形部13において挿脱不能に固定され互いに接続されている。
【0017】
図2に示されるように、この塑性変形部13は、内管11の周方向において等角度間隔を隔てて部分的に形成されている。これら各塑性変形部13は外管12の側に向けて膨出するとともに、その頂部が外管12の内周面に当接している。その結果、内管11は、外管12との間に所定の隙間Lが確保された状態で外管12により支持されている。
【0018】
また、上記塑性変形部13は、例えばこれをプレス加工によって各筒体11aの重合させた部分に形成することができる。次に、こうした塑性変形部13をプレス加工により形成する方法について図3を併せ参照して説明する。
【0019】
例えば、この加工に際しては、図3(b)及び(c)において一点鎖線及び破線で示されるように、内管11をその内周面から張り出し成形するためのくさび51及び内型52及び外型53と、この張り出し形成した部分を管軸方向においてつぶし成形するための上型61及び下型62とが用いられる。
【0020】
内型52はくさび51の挿入移動に伴って、内管11の径方向に移動するように、同くさび51と接する部分が傾斜した形状を有している。また、内型52の一端には拡幅部52aが設けられ、こうしたくさび51の挿入により内管11の張り出し成形が可能となっている。一方、上型61及び下型62はいずれも、内管11が挿入可能な貫通孔を有している。上型61の貫通孔の周縁部には、上記張り出し成形によりその径方向に膨出した部分を内管11の軸方向に押しつぶし、つぶし部13bを成形するための刃61aが形成されている。
【0021】
これらくさび51及び各型52,53,61,62を用いて塑性変形部13を形成する際には、先ず、内管11を構成する各筒体11aの端部同士を重ね合うようにして嵌合させる(図3(a))。次に、内管11を外型53に挿入するとともに、内型52を内管11に挿入し、拡幅部52aを塑性変形部13を設ける所望の位置まで移動させる。そして、内管11と外型53及び内型52との位置関係を保ったままくさび51を図3(b)において上向きの矢印方向に移動させる。すると、拡幅部52aにより、内管11が張り出し成形され、膨出部13aが成形される(図3(b))。次に、くさび51及び内型52を内管11より取り出した後、内管11を上型61及び下型62の貫通孔に挿入し、これら各型61,62が互いに接触するまで図3(c)において下向きの矢印方向に上型61を押圧する。すると、膨出部13aはその一部が上型61の刃61aにより内管11の軸方向に押しつぶされて塑性変形部13が形成され(図3(c))、そして、上記各工程が繰り返されることにより、各筒体11aの端部が接合され、これら筒体11aが互いに接続される。このようにして形成された内管11が外管12内に挿入され支持されることで排気管10が構成される。
【0022】
以上のようにして形成された内管11は、内燃機関の始動により、内管11が径方向に熱膨張した際には、塑性締結されていない部分に内管11の材料の延びが集中することとなり、局部的な熱応力を緩和することができる。そして、内燃機関が停止した後は、内管11の温度の低下に伴い、熱収縮され、元の状態に戻る。
【0023】
以上説明したこの実施形態にかかる排気管10によれば、以下に示すような優れた効果が得られるようになる。
(1) 塑性変形部13により、内管11は、所望のクリアランスが確保された状態で外管12内で支持される。これにより、外管12内で内管11を支持するための部材、例えば、ワイヤメッシュ等を必要としないので、部品点数の削減が可能となり、製造コストの低減を図ることができる。しかも、この塑性変形部13を設けることにより、各筒体11a同士の接合が行えるため、溶接の場合のように溶損の発生がない。これにより、内管11の品質安定化を図ることができる。
【0024】
(2) また、塑性変形部13を内管11の周方向において部分的に形成することで、内管11を外管12の内周面に部分的に接触させるようにしているため、同塑性変形部13を内管11の全周にわたって形成するようにした構成とは異なり、塑性変形部13と外管12の内周面との間に微小な隙間が形成されるのと極力回避することができ、こうした隙間の存在に起因する騒音の発生を抑制することができるようになる。
【0025】
(3) しかも、上記のように内管11を外管12の内周面に部分的にしか接触させていないため、内管11から外管12への熱の伝播を抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができるようになる。
【0026】
(4) 更に、各筒体11aは、塑性変形部13において互いに固定されているものの、塑性変形部13が形成されていない部分では単に端部同士が重ね合わされているだけであるため、その相対移動が若干許容されるようになる。従って、内管11の熱膨張による変形をこの塑性変形部13が形成されていない部分において吸収することができ、内管11、特に筒体11aの接続部分において過大な熱応力が作用するのを回避することができるようになる。
【0027】
なお、上記実施形態は、例えば、以下のように構成を適宜変更することもできる。
・ 上記実施形態では、図2に示すように、塑性変形部13を4カ所設けたが、この塑性変形部13の数は内管11の外径や肉厚等により適宜、変更することができる。例えば、この塑性変形部13を3カ所あるいは5カ所等設けてもよい。
【0028】
・ 上記実施形態では、塑性変形部13は図1及び図2に示す形状及び大きさとしたが、この形状及び大きさは内管11の外径や板厚等により適宜、変更することができる。例えば、図4に示されるように、塑性変形部13を内管11の軸方向に長く、周方向の幅の小さい長細形状(図4(a))としたり、軸方向に長く、周方向の幅の大きい形状(図4(b))、あるいは、軸方向に短く、周方向の幅の大きい形状(図4(c))等にしてもよい。
【0029】
・ 上記実施形態では、内管11の肉厚を外管12の肉厚よりも薄くしたが、これを内管11の肉厚を外管12の肉厚と等しくしてもよい。
・ 上記実施形態では、図1に示すようにつぶし部13bを塑性変形部13に設けた。つまり、塑性変形部13の内管11における管軸方向の一方側に設けた。これを図4に示すようにつぶし部13bを塑性変形部13に設けてもよい。すなわち、塑性変形部13の内管11の管軸方向の両端側につぶし部13bを設けたり(同図4(a))、塑性変形部13の頂部の近傍につぶし部13bを設けて(同図4(b))もよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態にかかる排気管の断面図。
【図2】図1における2―2線断面図。
【図3】塑性変形部の形成工程を説明するための説明図。
【図4】他の実施形態における塑性変形部の形状を示す断面図。
【符号の説明】
10…排気管、11…内管、11a…筒体、12…外管、13…塑性変形部、L…隙間。
Claims (2)
- 複数の筒体を接続してなる内管と該内管の外周を所定の隙間を介して覆う外管とを備える内燃機関の排気管において、
前記各筒体はそれらの端部同士を重合し、同重合部を前記外管側に膨出して塑性変形させた塑性変形部により互いに接続されるものであり、該塑性変形部は前記外管の内周面に当接するものである
ことを特徴とする内燃機関の排気管。 - 前記塑性変形部は前記内管の周方向において部分的に形成されるものであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気管。
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