JP4275836B2 - 水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法、それにより製造されたゼラチン、及び該ゼラチンを含むハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法、それにより製造されたゼラチン、及び該ゼラチンを含むハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法に関し、特に該ゼラチンを再溶解したときの濾過性が改良されたものに関する。さらに、本発明は、特にこのようにして製造されたゼラチンを写真の成分に用いることに関する。
【0002】
【従来の技術】
銀塩感光材料は、ハロゲン化銀とゼラチンを用いて発展してきた。特に後者であるゼラチンの写真への作用は幅広く、ハロゲン化銀粒子の調製、塗布、乾燥、貯蔵、撮影、処理、画像保存など銀塩写真の最初から最後まで全ての工程に関与している。最近の銀塩感光材料調製技術の精密化に伴ない、写真用ゼラチンに対する要求も非常に厳しくなってきている。
【0003】
この要求に応えるべく努力がためされているが、ひとつの方法として、ゼラチンの改質がある。種々の改質の中でも、米国特許第5187259号や特開昭56−2324号などにゼラチンを水可溶性のまま、鎖延長(高分子量化)する方法が開示されている(いわゆる水可溶性鎖延長ゼラチン)。この水可溶性鎖延長ゼラチンは、写真要素の製造における支持体層上で、マイクロフィルム製品の製造における分散色素用キャリアー層として、またはカラー乳剤製品における迅速硬膜剤用のキャリアー層として有用であり、さらに該ゼラチンを用いた溶液の粘度は高く、カーテン塗布に適する場合、高い塗布速度を与えることもできると記載されている。その他、分子量増大の本質に基づくハロゲン化銀粒子や分散色素などのような水不溶性写真有用物質の保護コロイド性の向上が期待できる。
【0004】
しかしながら、高分子量化したが故に、該ゼラチン溶液の粘度が高くなり各操作性への負荷が増える点、低濃度溶液でもゲル化速度が早く製造上の取り扱いが厳しく、また収率への影響も大きく製造コストに影響する点など製造には問題が多い。
【0005】
従って該ゼラチンの場合、イオン交換樹脂や限外濾過などでの精製は上記の理由で現実的ではない。そのためできるだけ工程を省略し、乾燥、粉体化する必要がある。しかし、その場合、該ゼラチンを写真の成分に用いる際、濾過性に起因する製造上の問題(塗布適性、塗布面状故障)があった。この改良に関し、上記開示された特許を含め、反応後の記載についてはなく、粉体ゼラチンの再溶解時の溶液の濾過性改良が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製造負荷をかけずにゼラチンの粉体を再溶解した液の濾過性が改良された水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記手段によって達成された。
【0008】
(1) 部分架橋反応による水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法において、該部分架橋反応後の反応水溶液を濾過した後、該水溶液のpH値を部分架橋反応後のゼラチンの等電点±1.5に相当する値の範囲に調整し、該調整した液をそのまま濃縮、乾燥、粉体化することを特徴とする水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0009】
(2) 前記の調整するpH値が、部分架橋反応後のゼラチンの等電点±0.5に相当する値の範囲であることを特徴とする(1)に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
(3) 前記部分架橋反応が、ビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し得る化合物を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0010】
(4) 前記部分架橋反応が、該反応前のゼラチン(以下、元ゼラチンという)の水溶液の濃度が6〜25質量%で、元ゼラチン100gあたり0.25〜10ミリモルのビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し得る化合物の溶液を添加し、反応温度を40〜65℃にし、反応pH値を元ゼラチンの等電点に相当する値以上にし、反応時間を1時間〜8時間にすることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0011】
(5) 前記ビス−(ビニルスルホニル)化合物が、下記一般式1及び下記一般式2で表わされる化合物群から選択されることを特徴とする(3)または(4)に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0012】
一般式1
【0013】
【化6】
Figure 0004275836
【0014】
式中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表わし、それらの基は置換されていてもよい。nは0または1を表わす。
【0015】
一般式2
【0016】
【化7】
Figure 0004275836
【0017】
式中、Yはビニル基を表わす。Aは単結合または2価の連結基を表わす。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わすが、1分子中に2個あるRは同じでも異なってもよい。
【0018】
(6) 前記カルボキシル基を活性化し得る化合物が下記一般式3及び下記一般式4で表わされる化合物群から選択されることを特徴とする(3)または(4)に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0019】
一般式3
【0020】
【化8】
Figure 0004275836
【0021】
式中、R、Rはアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。RとRが互いに結合して窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rはアルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、またはN−アルキルカルバモイル基を表わす。Xは1価のアニオンを表わす。Rが置換基としてスルホ基、スルホオキシ基、またはスルホアミノ基を含むときは、分子内塩を形成してXは存在しなくてもよい。
【0022】
一般式4
【0023】
【化9】
Figure 0004275836
【0024】
式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基、またはアラルキル基を表わす。RはRに定義された基または下記一般式5で表わされる基を表わす。
【0025】
一般式5
【0026】
【化10】
Figure 0004275836
【0027】
式中、Rはアルキレン基、R〜R11はアルキル基を表わし、いずれか一つが水素原子であってもよい。また、R〜R11のうち二つが結合して窒素原子とともに複素環を形成してもよい。
【0028】
(7) 前記反応前のゼラチンが、酸処理骨ゼラチンおよび石灰処理骨ゼラチンから選択されることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
(8) 前記反応前のゼラチンが石灰処理骨ゼラチンであることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
【0029】
(9) (1)ないし(8)のいずれか1項に記載された製造方法で製造された水可溶性鎖延長ゼラチン。
【0030】
(10) (1)ないし(8)のいずれか1項に記載された製造方法で製造された水可溶性鎖延長ゼラチンを含むことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法における部分架橋反応については、米国特許第5187259号、特開昭56−2324号を参考にすることができる。該部分架橋反応においては、ビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し得る化合物を用いる。
【0032】
まず、ビス−(ビニルスルホニル)化合物について説明する。
このビス−(ビニルスルホニル)化合物は、好ましくは、下記一般式1及び後掲の一般式2で表される化合物群から選択される。
【0033】
一般式1
【0034】
【化11】
Figure 0004275836
【0035】
一般式1中、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−ブチル基)、炭素数6〜20のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基)、炭素数5〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、ピリジル基)であり、それらの基は置換されていてもよい。置換基の例としてはスルホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを挙げることができる。Rとして特に好ましいのは水素原子である。nは0または1を表わし、0が好ましい。
【0036】
以下に一般式1で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化12】
Figure 0004275836
【0038】
次に、一般式2について説明する。
【0039】
一般式2
【0040】
【化13】
Figure 0004275836
【0041】
一般式2中、Yはビニル基を表わす。Aは単結合または2価の連結基を表わす。2価の連結基としては何でもよいが、好ましくは炭素数1〜10の環式あるいは非環式のアルキレン基で、そのうち1〜3個がN,S,O等のヘテロ原子で置き換わってもよい。より好ましくは炭素数1〜5の鎖状炭化水素基であり、炭素数2〜6の場合枝分かれしてもよいし、直鎖状であってもよい。またこの鎖はメトキシ、エトキシなどのアルコキシやクロル、ブロモなどのハロゲン、ヒドロキシ、アセトキシなどの置換基を有していてもよい。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わし、1分子中に2個あるRは同じでも異なってもよい。以下に一般式2で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化14】
Figure 0004275836
【0043】
次にゼラチンのカルボキシル基を活性化し得る化合物について説明する。
【0044】
このゼラチンのカルボキシル基を活性化し得る化合物は、好ましくは下記一般式3及び後掲の一般式4で表される化合物群から選択される。
【0045】
一般式3
【0046】
【化15】
Figure 0004275836
【0047】
一般式3中、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基)、炭素数7〜15のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基)、または炭素数6〜15のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基)を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR、Rは互いに結合して、窒素原子とともに複素環を形成することも好ましい。環を形成する例としてはピロリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などが挙げられる。特に好ましいのはモルホリン環である。Rは水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、スルホ基、ウレイド基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または炭素数2〜20のジアルキルアミノ基を表わす。Rがアルコキシ基、アルキル基、ジアルキルアミノ基、N−アルキルカルバモイル基であるとき、それらの基はさらに置換されてもよく、置換基の例としてはハロゲン原子、カルバモイル基、スルホ基、スルホオキシ基、ウレイド基が挙げられる。Xは1価のアニオンを表わし、N−カルバモイルピリジニウム塩の対イオンとなる。Rの置換基にスルホ基、スルホオキシ基、スルホアミノ基を含むときは、分子内塩を形成してXは存在しなくてもよい。1価のアニオンの好ましい例としてはハロゲン化物イオン、硫酸イオン、スルホネートイオン、ClO ,BF 、PF などが挙げられる。特に好ましいのは分子内塩を形成する場合である。
【0048】
以下に一般式3で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化16】
Figure 0004275836
【0050】
次に一般式4について説明する。
【0051】
【化17】
Figure 0004275836
【0052】
式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基)、炭素数5〜8のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)、炭素数3〜10のアルコキシアルキル基(例えばメトキシエチル基)、または炭素数7〜15のアラルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基)を表わす。
【0053】
はRに定義された基または一般式5で表わされる基を表わす。
【0054】
【化18】
Figure 0004275836
【0055】
式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基(例えばエチレン基、プロピレン基)を表わす。R〜R11はそれぞれ同じであっても異なってもよく、炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル基、エチル基)を表わす。またいずれか一つが水素原子であってもよい。さらにR〜R11のうち二つが結合して窒素原子とともに複素環(例えばピロリジン環、ピペラジン環、モルホリン環)を形成することも好ましい。また、R〜R11は置換されてもよく、置換基の例としては置換もしくは無置換のカルバモイル基、スルホ基などが好ましい。Xは1価のアニオンを表わし、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、スルホネートイオン、ClO 、BF ,PF などが挙げられる。またR10がスルホ基で置換された場合には、分子内塩を形成してXは存在しなくてもよい。
【0056】
以下に一般式4で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化19】
Figure 0004275836
【0058】
本発明における好ましい部分架橋反応条件としては、上記一般式1または2で表されるビス−(ビニルスルホニル)化合物、または一般式3または4で表わされるカルボキシル基を活性化し得る化合物の添加量は、鎖延長される元ゼラチン乾燥重量100gあたり0.25〜10ミリモル、反応温度は40〜65℃、反応pHの値は元ゼラチンの等電点に相当する値以上、反応時間は1〜8時間、反応ゼラチン濃度は6〜25質量%である。より好ましくは、一般式1または2で表されるビス−(ビニルスルホニル)化合物、または一般式3または4で表わされるカルボキシル基を活性化し得る化合物の添加量は、好ましくは、鎖延長される元ゼラチン乾燥重量100gあたり0.25〜8ミリモル、反応温度は45〜60℃、反応pHの値は元ゼラチンの等電点に相当する値〜等電点+3に相当する値以下、反応時間は1〜6時間、反応ゼラチン濃度は6〜20質量%である。特に好ましくは、該化合物の添加量は、鎖延長される元ゼラチン乾燥重量100gあたり0.25〜5ミリモル、反応温度は50〜60℃、反応pHの値は元ゼラチンの等電点に相当する値〜等電点+2.5に相当する値以下、反応時間は1〜5時間、反応ゼラチン濃度は7〜18質量%である。一般式1または2で表されるビス−(ビニルスルホニル)化合物、または一般式3または4で表わされるカルボキシル基を活性化し得る化合物の添加方法は、水あるいはアルコール溶液にして一括添加してもよいし、30分〜3時間かけて滴下しながら添加してもよい。好ましくは30分〜2時間かけて滴下しながら添加するのがよく、特に好ましくは30分〜1.5時間かけて滴下しながら添加するのがよい。該溶液の濃度は0.5〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。
【0059】
次に、鎖延長されるゼラチンについて説明する。写真用ゼラチンの主要な供給源は、牛類の皮と骨であり、どちらも用いることができるが、骨から生産されるゼラチンが好ましい。また、元ゼラチンは処理方法によっても大きく二つに分けられ、酸処理、アルカリ(石灰)処理ゼラチンのどちらも用いることができるが、より好ましくはアルカリ(石灰)処理ゼラチンである。酸処理、アルカリ(石灰)処理ゼラチンの等電点は異なることが知られている。一方、前記架橋反応においては、延長される元ゼラチンと反応後の鎖延長ゼラチンの等電点はほとんど変化しない。そのため、延長される元ゼラチンを混合して用いてもよいが、混合する場合、元ゼラチンの等電点の差が1.5以下が好ましく、より好ましくは1以下である。
【0060】
上述の部分架橋反応が終了したら、濾過、濃縮、乾燥、粉体化の工程に移行するが、本発明では濾過と濃縮の間にpH調整の工程を入れることを特徴とする。すなわち、本発明では上記部分架橋反応後の反応水溶液を濾過した後、該反応水溶液のpH値を生成した水可溶性鎖延長ゼラチンの等電点±1.5に相当する値の範囲に調整する。好ましくは等電点−0.5から等電点+1.0に相当する値の範囲に、さらに好ましくは等電点−0.5から等電点+0.5に相当する値の範囲に調整する。これにより粉体ゼラチンの再溶解時における溶液の濾過性を改良することができる。
【0061】
調整する酸、もしくはアルカリについては、酸としては硫酸、塩酸、硝酸、アルカリとしてはNaOH、KOHが好ましく用いられる。その中でも、酸としては硫酸、アルカリとしてはNaOHが最も好ましい。該部分架橋反応では、元ゼラチンの等電点以上のpHで反応を行うのが好ましいので、必要最小限の酸により目的の範囲のpHに調整するのがよい。調整する酸、もしくはアルカリの濃度としては1〜5mol/Lが好ましく、さらには1〜3mol/Lが好ましい。pH調整するときの温度は40〜60℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは40〜50℃の範囲が好ましい。
【0062】
次に濃縮、乾燥、粉体化工程を経て適度の粒度を有するゼラチンを得る。この一連の工程は公知の特許、学術文献に記載されている方法を用いて行うことができる。こうして得られた水可溶性鎖延長ゼラチンは、写真要素に用いることができる。該写真要素は適切には、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であり、該要素は白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータベースからのレーザー照射により感光された紙から選択される。その中でも特にカラーネガフィルムへの使用が好ましく、例えば特開平11−305396号を挙げることができる。
【0063】
それら写真要素に、該ゼラチンを再溶解し、各種組成物に添加され塗布されるが、該ゼラチン溶液の良好な濾過性により面状故障も起こらず製造適性が付与された。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。以下に説明する実施例は、ここでの教示をさらに詳しく説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【0065】
実施例1
・ビス−(ビニルスルホニル)化合物を用いた高分子ゼラチンAの製造
5Lの三つ口フラスコに石灰処理骨ゼラチン(等電点5.0)568.2gを添加し、純水4260gを加え1分間激しく攪拌した後、攪拌を停止し、室温で1時間膨潤させた。その後内温60℃まで昇温し、1時間加熱溶解した。溶解後5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.8に調整した。pH調整後、ビスー(ビニルスルホニル)化合物(H−6)の1質量%水溶液146gを、内温60℃に保ちながら1時間かけて滴下した。滴下後、そのままの温度で3時間反応させた。反応終了後、濾過を行い、濾液を2mol/Lの硫酸でpH5.0に調整し、ゼラチン濃度27質量%まで濃縮し、その後乾燥、粉体化することにより目的物の水可溶性高分子ゼラチンAを得た。該高分子ゼラチンの等電点は5.0であった。分子量はPAGI法に基づいて測定を行い、GPCプロフィールにおける使用したカラム(GS-620)の排除限界のボイド部分(約200万以上)とα鎖(分子量10万)に対する高さの比率(V/α比)は0.40であった。
【0066】
実施例2
・カルボキシル基を活性化し得る化合物を用いた高分子ゼラチンBの製造
5Lの三つ口フラスコに石灰処理骨ゼラチン(等電点5.0)568.2gを添加し、純水4200gを加え1分間激しく攪拌した後、攪拌を停止し、室温で1時間膨潤させた。その後内温60℃まで昇温し、時間加熱溶解した。溶解後5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.8に調整した。pH調整後、カルボキシル基を活性化し得る化合物(H-16)の1質量%水溶液180gを、内温60℃に保ちながら1時間かけて滴下した。滴下後、そのままの温度で3時間反応させた。反応終了後、濾過を行い、濾液を2mol/Lの硫酸でpH5.0に調整し、ゼラチン濃度25質量%まで濃縮し、その後乾燥、粉体化することにより目的物の水可溶性高分子ゼラチンBを得た。該高分子ゼラチンの等電点は5.1であった。分子量はPAGI法に基づいて測定を行い、GPCプロフィールにおける使用したカラム(GS-620)の排除限界のボイド部分(約200万以上)とα鎖(分子量10万)に対する高さの比率(V/α比)は0.41であった。
【0067】
・濾過性のpH依存性
次に高分子ゼラチンA,Bそれぞれについて、各部分架橋反応終了後濾過を行い、濾液を小分けしpHを種々変えて調整し(pH3〜9)、それぞれ濃縮、乾燥、粉体化を行い、50℃で再溶解し6.7質量%の溶液を各々調製した。それらの溶液について富士写真フィルム(株)製FCフィルター(孔径3μm)にて濾過性を調べた。各溶液を一定流速で通し濾過圧上昇値(6分後の濾過圧値−1分後の濾過圧値)を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0004275836
【0069】
【表2】
Figure 0004275836
【0070】
高分子ゼラチンA、Bともに反応後のpH値により再溶解したゼラチンの濾過性が劇的に変化し、等電点付近の値が最良であることがわかる。該高分子ゼラチンのpH値を等電点に相当する値から+2高くした7にすると途中で溶液が詰まり濾過することが全く不可能であった。一方、逆に該高分子ゼラチンのpH値を等電点に相当する値から−1.5低くした3.5にすると濾過性は問題無いが、高分子量成分が減少することがV/α比から分かる。おそらく濃縮、乾燥時に加水分解が起こったためと思われる。従って濾過性は反応後のpH値を等電点に相当する値から下げる場合注意が必要である。
【0071】
さらに、特開平11−305396号公報に記載の実施例1の第7層(中間層)のゼラチンを実施例1で得られた高分子ゼラチンA(濾過後の最終pH調整値5)に全量置き換える以外は全て同じ方法でハロゲン化銀写真感光材料を調製した。該ゼラチン溶液の良好な濾過性により面状故障(ブツの発生)も無く製造適性が付与された。一方、比較例として、高分子ゼラチンAの製造方法において、表1の濾過後の最終pH調整値を7にして調製された高分子ゼラチンを用いて上記と同じハロゲン化銀写真感光材料を調製したところ、面状故障が発生した。なお、該高分子ゼラチンA(濾過後の最終pH調整値5)を用いて調製された第7層(中間層)の乳化物の安定性は高分子化していないゼラチンに比べて乳化物の分散安定性が格段に改良されるという結果も得られた。

Claims (10)

  1. 部分架橋反応による水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法において、該部分架橋反応後の反応水溶液を濾過した後、該水溶液のpH値を部分架橋反応後のゼラチンの等電点±1.5に相当する値の範囲に調整し、該調整した液をそのまま濃縮、乾燥、粉体化することを特徴とする水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  2. 前記の調整するpH値が、部分架橋反応後のゼラチンの等電点±0.5に相当する値の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  3. 前記部分架橋反応が、ビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し得る化合物を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  4. 前記部分架橋反応が、該反応前のゼラチン(以下、元ゼラチンという)の水溶液の濃度が6〜25質量%で、元ゼラチン100gあたり0.25〜10ミリモルのビス−(ビニルスルホニル)化合物またはカルボキシル基を活性化し得る化合物の溶液を添加し、反応温度を40〜65℃にし、反応pH値を元ゼラチンの等電点に相当する値以上にし、反応時間を1時間〜8時間にすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  5. 前記ビス−(ビニルスルホニル)化合物が、下記一般式1及び下記一般式2で表わされる化合物群から選択されることを特徴とする請求項またはに記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
    一般式1
    Figure 0004275836
    式中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表わし、それらの基は置換されていてもよい。nは0または1を表わす。
    一般式2
    Figure 0004275836
    式中、Yはビニル基を表わす。Aは単結合または2価の連結基を表わす。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わすが、1分子中に2個あるRは同じでも異なってもよい。
  6. 前記カルボキシル基を活性化し得る化合物が下記一般式3及び下記一般式4で表わされる化合物群から選択されることを特徴とする請求項またはに記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
    一般式3
    Figure 0004275836
    式中、R、Rはアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表わし、互いに同じであっても異なっていてもよい。RとRが互いに結合して窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rはアルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、またはN−アルキルカルバモイル基を表わす。Xは1価のアニオンを表わす。Rが置換基としてスルホ基、スルホオキシ基、またはスルホアミノ基を含むときは、分子内塩を形成してXは存在しなくてもよい。
    一般式4
    Figure 0004275836
    式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基、またはアラルキル基を表わす。RはRに定義された基または下記一般式5で表わされる基を表わす。
    一般式5
    Figure 0004275836
    式中、Rはアルキレン基、R〜R11はアルキル基を表わし、いずれか一つが水素原子であってもよい。また、R〜R11のうち二つが結合して窒素原子とともに複素環を形成してもよい。
  7. 前記反応前のゼラチンが、酸処理骨ゼラチンおよび石灰処理骨ゼラチンから選択されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  8. 前記反応前のゼラチンが石灰処理骨ゼラチンであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水可溶性鎖延長ゼラチンの製造方法。
  9. 請求項1ないしのいずれか1項に記載された製造方法で製造された水可溶性鎖延長ゼラチン。
  10. 請求項1ないしのいずれか1項に記載された製造方法で製造された水可溶性鎖延長ゼラチンを含むことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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