JP4273900B2 - アンテナ内蔵式電子時計 - Google Patents

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Description

本発明は、時刻情報等を含んだ外部無線情報を受信して時刻修正等の処理を行う電波修正時計に代表されるアンテナ内蔵式電子時計に関する。
外部からの時刻情報を受信して時刻修正を行う電波修正時計等のアンテナ内蔵式電子時計が知られている。
このようなアンテナが内蔵された電子時計においては、指針を駆動するモータの駆動に伴い発生するノイズが受信性能に悪影響を与える可能性があるため、モータコイルとアンテナとは可能な限り平面的に離して配置していた(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−121569号公報(段落0010)
しかしながら、腕時計のような狭いスペース内に、アンテナおよびモータを平面的に離して配置する場合、アンテナの長さ寸法を長くすると、その分、モータに近づくことになる。従って、アンテナの長さをあまり長くできず、アンテナ特性を向上することが難しいという問題があった。
本発明の目的は、アンテナ内蔵式電子時計において、アンテナ特性を向上することができるアンテナ内蔵式電子時計を提供することにある。
本発明のアンテナ内蔵式電子時計は、外装ケースと、この外装ケース内に配置されて外部無線情報を受信するアンテナと、アンテナで受信した外部無線情報を処理する受信手段と、時刻表示手段と、前記受信手段および時刻表示手段の駆動を制御する駆動制御手段とを備え、前記アンテナは、コアに巻かれたコイルを備えて構成され、前記時刻表示手段は、モータコイルを有するモータと、このモータによって駆動される表示部とを備えて構成され、前記モータコイルは、その軸方向が前記アンテナの軸方向に対して略平行となるように前記アンテナに並設されて前記アンテナのコイルと磁気的に結合可能とされ、前記駆動制御手段は、前記外部無線情報に含まれるデータのうち、少なくともデータ処理に利用される有効なデータを受信している間は前記モータを停止し、前記モータコイルをアンテナの無給電素子として機能させることを特徴とするものである。
このような本発明においては、駆動制御手段により、少なくとも外部無線情報(電波)の有効なデータを受信している間、モータは停止されているので、アンテナにモータコイルを並設した場合、つまりアンテナの軸直交方向に隣接してモータコイルを配置した場合でも、モータコイルのノイズが受信信号の有効なデータに影響することを防止できる。
そして、ノイズが発生していないモータコイルは、アンテナに並設することで、アンテナと磁気的に結合し、アンテナの無給電素子(非励磁素子)として機能させることができる。そして、アンテナに対し、無給電素子であるモータコイルを並べて配置することで、実質的にはアンテナの断面積が拡大した場合と同等となり、電波の磁界成分(磁束)がアンテナ近傍に多く集まって磁束密度が高くなり、その分、アンテナ内を通過する磁束量が高まるため、アンテナ特性を向上することができる。
なお、有効なデータとは、各時計において処理に必要なデータ部分を意味する。例えば、時刻情報を有する標準電波には、JJYを例にして説明すると、時データ、分データの他、1月1日からの通算日データ、西暦データ、曜日データが含まれ、さらに、現時点では使用されていないデータ領域も存在する。従って、時刻表示の他、日付表示も行うが、曜日表示は行わない時計であれば、時、分、通算日、西暦の各データは有効なデータとなり、曜日データは不要なデータとなる。このように、有効データは、各時計における処理や機能によって設定されることになる。
また、現在受信しているデータが有効なデータであるか、無効なデータであるかの判断は、例えば、標準電波のように、タイムコードが決められている場合には、そのタイムコードにおいて各データが送信されるタイミングで制御してもよいし、データ内に次に送られる各データの種類を示すマーカーなどが含まれている場合には、そのマーカー情報を参照し、その後に送られるデータがその時計において有効なデータであるか否かを判断してもよい。さらには、各データの先頭からの一部を受信解析し、そのデータの種類を判断して有効か否かを判定してもよい。
なお、アンテナの軸方向は、そのアンテナにおいて電波受信の指向性が最も強い方向に直交する方向を意味する。例えば、アンテナが直線状に形成されたバーアンテナの場合には、通常、その長手方向に沿った方向を意味する。また、アンテナが平面湾曲形状とされた円弧状のアンテナの場合には、アンテナの軸方向は、通常、アンテナの両端間の中心部における円弧の接線方向を意味する。さらに、アンテナが、直線状の中間部と、中間部に対して傾斜して設けられた端部とを備えている構成されている場合には、通常、前記中間部の長手方向に沿った方向を意味する。
従って、モータコイルがアンテナに対して、それらの各軸方向が互いに略平行となるように並設されるとは、例えば、モータコイルおよびアンテナが共に直線状に形成されている場合、その長手方向に沿った軸方向が互いに略平行となるように配置されていることを意味する。また、アンテナが平面円弧状に湾曲されている場合には、前記アンテナの軸方向(アンテナの中心部の接線方向)とモータコイルの長手方向に沿った軸方向とが略平行となるように配置されていることを意味する。
ここで、略平行とは、各軸方向が平行である場合に限らず、モータコイルを並設した際に、アンテナを鎖交する磁束数を増加できる向きに配置されていればよい。すなわち、アンテナを鎖交する方向の磁束密度を向上させるには、アンテナを鎖交する磁束の方向とモータコイルを鎖交する磁束の方向とがほぼ一致している必要がある。従って、アンテナおよびモータコイルの各軸方向の交差角度が0度、つまり平行であることが最も好ましいが、各軸方向の交差角度が約30度以内程度であっても、モータコイルによって磁束密度を向上する効果は得られる。従って、モータコイルはアンテナを鎖交する磁束数を増加できる向きに配置されていればよく、例えば、各軸方向の交差角度が30度以内、好ましくは15度以内、より好ましくは5度以内であればよい。ここで、各軸方向の交差角度が0度とは、例えば、腕時計において、前記アンテナの軸方向とモータコイルの軸方向とが、時計の平面方向および断面方向の各方向において0度であること、つまり各軸方向が3次元的にも平行であることを意味する。
また、通常の時計、特に腕時計では、ムーブメントを薄型に形成することが求められているため、モータコイルおよびアンテナは時計の断面方向(外装ケースの軸方向)に重ならないように配置されるが、ムーブメントの厚さ制限が少ない時計の場合には断面方向に重ねてもよい。
さらに、モータコイルは、前記アンテナのコイルと磁気的に結合可能とされていればよいため、アンテナおよびモータコイル同士を当接させる必要はなく、所定間隔離れて配置されていてもよい。要するに受信動作時に磁気的に結合できる間隔で隣接配置されていればよい。この磁気的結合が可能な間隔は、アンテナ長によって変化し、アンテナ長が長くなると、モータコイルとの間隔が大きくなっても磁気的結合が可能となる。従って、アンテナおよびモータコイルの間隔は、アンテナ長に応じて設定すればよい。
また、モータによって駆動される表示部としては、時針、分針、秒針、クロノグラフ秒針等の各種指針に限らず、日付が印刷された日車等も含むものであり、時計で計時する各種時刻(年月日等も含む)、時間を表示するものであればよい。
本発明のアンテナ内蔵式電子時計において、前記モータコイルおよびアンテナは、前記モータコイルおよびアンテナ間の各軸直交方向の距離をD、アンテナの長さの値をL、アンテナの断面積の値をS、所定の定数をAとした際に、D<A×L/S(式1)となる位置に配置されていることが好ましい。
ここで、通常は、前記距離Dの単位はmmであり、コアの長さの値Lはコアの長さをLmmとした時の数値Lであり、コア断面積の値Sはコアの断面積をSmm2とした時の数値Sであり、所定の定数Aは単位mmの定数値である。なお、定数Aは、アンテナの特性、外装ケースの金属部分の材質、外装ケースの形状、モータコイルの大きさ等に基づいて設定されるものであり、モータコイルのサイズなどによって設定すればよい。なお、通常の腕時計においては、定数Aは、2〜4mm程度であり、特に「3mm」程度とすればよい。
また、アンテナの長さLは、アンテナのコアが直線状に形成されている場合には、その両端面間の距離を意味する。一方で、コアが平面湾曲していたり、その長手方向の途中で折曲されて平面多角形状に形成されている場合には、コアの両端間の直線距離としてもよいし、コアの軸線に沿った距離(コアが平面円弧状に形成されている場合には、その円弧状の中心軸の長さ)としてもよい。この場合、同じアンテナであっても、直線距離とした場合と軸線距離とした場合とで長さLの数値が相違するが、定数Aを設定する際に、直線距離用あるいは軸線距離用の定数Aを設定し、その設定された定数Aに応じた距離Lを選択して用いればよい。
このような本発明において、前記定数Aは、例えば基準となるアンテナを用いて実験あるいはシミュレーションによって求められる。例えば、L=20mm、S=5mm2のアンテナを基準アンテナとした場合、アンテナおよびモータコイル間の距離Dを変化させて受信感度の変化を実験等で求め、所望の受信感度が得られた距離から前記定数Aを算出する。
次に、時計つまり外装ケースのサイズ等に応じて使用するアンテナのサイズ(L,S)を設定し、上記式1に各数値を代入してDを求める。そして、アンテナおよびモータコイルを、少なくとも前記距離D以下に近付けて配置する。
なお、モータコイルの配置位置のアンテナからの距離の上限は前記距離Dで設定されるが、下限は特に設定されていない。アンテナの受信感度向上の点では、アンテナおよびモータコイルは近接配置することが好ましいため、前記下限は、アンテナおよびモータコイルの納まり、他の部品との配置関係等によって設定すればよい。
このような本発明においては、Aは定数であるため、L/Sが大きくなると、つまり基準となるアンテナに比べて、実際に使用するアンテナの長さLが長くなったり、断面積Sが小さくなると、前記式1で求められる距離Dは大きくなるため、アンテナは基準となるアンテナを用いた場合に比べてモータコイルから離して配置することができる。
一方、L/Sが小さくなると、つまり基準となるアンテナに比べて、実際に使用するアンテナの長さLが短くなったり、断面積Sが大きくなると、前記距離Dは小さくなるため、アンテナは基準となるアンテナを用いた場合に比べてモータコイルにより近接して配置しなければならない。
ここで、電子時計内に組み込まれるアンテナは、通常、バーアンテナが利用され、このバーアンテナは、図15,16に示すように、通常、指向性を有する。つまり、バーアンテナは、コアやコイルの軸方向の磁界に反応する指向性を有している。また、図15,16から分かるように、アンテナの指向性は、細長い形状のアンテナ800Aのほうが、太く短い形状のアンテナ800Bに比べて鋭くなる。なお、一方のアンテナの指向性が他方のアンテナよりも鋭い(強い)とは、一方のアンテナの半値角が、他方のアンテナの半値角よりも狭いことを意味し、逆に、一方のアンテナの指向性が他方のアンテナよりも鈍い(弱い)とは、一方のアンテナの半値角が、他方のアンテナの半値角よりも広いことを意味する。
そして、指向性が鋭い場合には、アンテナの長手方向に直交する方向の電波の受信感度が高くなってモータコイルと結合しやすくなるため、アンテナおよびモータコイル間の距離が離れても、磁気的結合が可能になる。但し、アンテナの指向性が強い場合には、受信電波の進行方向とアンテナの指向性の向きを合わせる必要があるため、受信時にアンテナの向きをある程度電波に合わせる必要がある。
一方、指向性が鈍い場合には、アンテナの長手方向に直交する方向の電波の受信感度が弱くなってモータコイルと結合し難くなるため、アンテナおよびモータコイル間の距離を近付けなければ、磁気的結合することができなくなる。但し、アンテナの指向性が弱い場合には、アンテナの指向性の向きに対して受信電波の進行方向がある程度ずれていても、電波を受信することができる。
従って、L/Sの大きなアンテナつまり指向性の鋭いアンテナを用いれば、アンテナおよびモータコイルをある程度離して配置しても、モータコイルの作用でアンテナを鎖交する磁束数を増加できる。このため、アンテナの受信感度を向上でき、かつ、アンテナおよびモータコイルの配置の自由度を向上できて時計のレイアウト設計を容易にできる。
また、L/Sの小さなアンテナつまり指向性の鈍いアンテナを用いれば、モータコイルの作用でアンテナを鎖交する磁束数を増加できるとともに、指向性が弱くなるため受信可能な電波の方向が広がって受信が容易になるとともに、ケースの小型化を実現できる。
このように、L/Sという新規なパラメータに基づいて距離Dを求めることができるので、アンテナおよびモータコイルの並設する際の配置位置の設計を容易に行うことができ、かつ各種時計の特性に応じた受信特性に設定できる。
さらに、前記アンテナは、モータコイルおよび外装ケースの内周面間に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、外装ケースの内側にアンテナが配置され、さらにアンテナの内側にモータコイルが配置されるため、アンテナおよびモータコイルが時計の断面方向に重ならず、ムーブメントつまり時計を薄型化できる。また、モータは外装ケースの中心側に位置する輪列を駆動するため、アンテナの内側に配置されていれば、モータおよび輪列を近接配置でき、部品配置が容易になる。
なお、外装ケースの内周面を円周面とし、アンテナを円弧状に形成して内周面に沿って配置すれば、外装ケースの中心側のスペースを大きく確保でき、ケースの内部空間を有効に利用することができる。このため、外装ケースをより小型化でき、例えば、男性用の腕時計に比べて小さい女性用の腕時計においてもアンテナを内蔵させることができる。
さらに、アンテナが外装ケースの内周面に沿って配置されていれば、つまりアンテナの軸方向がケース内周面にほぼ沿っていれば、アンテナの端面が外装ケースの内周面に対向していないので、外装ケースを金属製とした場合でも、そのケース内に配置されるアンテナを、外装ケースに近接して配置することができ、アンテナ特性を向上できる。
すなわち、外装ケースを金属製にした場合には、アンテナやモータコイルのように電波の磁束が鎖交する部材の端面が外装ケース内周面に対向して近接配置されると電波がケースで減衰し、受信感度が数デシベル劣化してしまう。このため、アンテナ等の端面を外装ケースから離して配置しなければならないが、その場合には、腕時計のように小さな外装ケース内に配置されるアンテナの場合、アンテナの長さも短くなり、アンテナ特性が低下してしまう。
一方、本発明のように、アンテナ等を外装ケースの内周面に沿って配置すれば、アンテナを外装ケース内周面に近接配置しても、コアの端面は外装ケースからある程度離すことができる。従って、外装ケースを金属製とした場合でも、アンテナの受信感度の劣化を抑えることができ、アンテナの長さもある程度確保できて、アンテナ特性の低下も防止できるとともに、時計を小型化することもできる。
その上、外装ケースを金属製にできるため、金属調の外観が得られて高級感を高めることができる。
また、前記外装ケースの少なくとも一部は金属で構成されていることが好ましい。
外装ケースが金属製ケースで構成されていたり、プラスチック製ケースに金属製カバーを取り付けて構成されている場合のように、少なくとも一部、特に外装ケース表面に金属を用いれば、高級感の高い外観意匠のアンテナ内蔵式電子時計とすることができる。
さらに、前記コアは積層アモルファス箔からなる磁性体で構成されていることが好ましい。この際、アモルファス箔の積層方向は時計の厚さ方向でもよいし、時計の平面方向(前記厚さ方向に直交する方向)でもよい。
積層アモルファス箔としては、コバルト系アモルファス金属、鉄系アモルファス金属磁性材料等の各種アモルファス金属薄板が利用できる。このような磁性体コアとして、積層アモルファス箔を用いれば、磁束が流れる方向の断面積を小さくでき、磁束変化により生じる渦電流が抑制され、鉄損を小さくできる。すると、渦電流により生じる磁界を抑制することができ、結果としてアンテナの受信感度を向上させることができる。
また、アモルファス箔の積層方向を時計の厚さ方向、つまり時計の裏蓋および表面ガラスを結ぶ方向にした場合には、アンテナの前記厚さ方向の寸法を小さくすることができる。すなわち、アモルファス箔の厚さ寸法は、通常、0.01mm〜0.05mm程度であり、このアモルファス箔を10〜30枚程度積層してアンテナが構成される。従って、コアのアモルファス積層方向の厚さ寸法は、最大でも1.5mm程度であり、従来のフェライトコアなどに比べて非常に薄くすることができる。このため、時計自体の厚さ寸法も小さくでき、薄型で高級感のある時計を提供できる。
さらに、アモルファス箔の積層方向を時計の平面方向、つまり時計の裏蓋および表面ガラスを結ぶ方向に対して直交する方向にした場合には、アンテナの前記平面方向の寸法を小さくすることができる。このため、時計内部においてアンテナが占める平面スペースを小さくでき、ムーブメント等の配置スペースを大きくすることができる。また、アンテナを外装ケース内周面に沿って平面円弧状に形成する場合、矩形状に切り出したアモルファス箔を湾曲させて積層すればよく、簡単かつ効率的に製造することができる。
また、本発明の時計は、電力供給用の電池を備え、前記アンテナは外装ケースの内周面の中心を挟んで前記電池の反対側に配置されていることが好ましい。
電池は、通常、ステンレス製のケースを備えて構成されており、アンテナの近傍に配置されるとアンテナ特性に影響を与える。従って、アンテナおよび電池を外装ケースの中心を挟んで配置すれば、アンテナおよび電池を離して配置でき、電池によるアンテナ特性の低下を防止できる。
さらに、前記駆動制御手段は、前記受信手段が駆動されている間は、前記モータを停止するものでもよい。
このような制御を行えば、受信手段が駆動されている間、モータを停止し続けるようにすれば、モータ駆動によるノイズが受信信号に混入することを確実に防止できる。また、受信手段の駆動とモータ駆動とを選択的に制御すればよく、受信中のデータが有効なデータであるか否かを判断してモータの駆動を制御する必要がないため、簡単に制御できる。
また、前記駆動制御手段は、前記有効なデータを受信している間は前記モータを停止し、不要なデータを受信している間に前記モータを駆動するものでもよい。
不要なデータを受信している間にモータを駆動するように制御すれば、例えば、1分間に1回のモータ駆動パルスで駆動できる時分針を、不要データ受信時にモータ駆動パルスを出力して駆動することで、外部無線情報を受信している間も時分針を正しい時刻で表示させ続けることができる。
ここで、前記外部無線情報は標準電波であり、前記駆動制御手段は、標準電波に含まれる時刻データに基づいて時刻表示手段の表示を制御可能に構成され、前記有効なデータは、標準電波に含まれるデータのうち、時刻表示手段の表示処理に利用されるデータであることが好ましい。
例えば、1分間で1つの時刻情報を送信する長波標準電波(JJY)では、50〜59秒の間は、曜日等の時刻修正に必ずしも必要ないデータが送信されるため、これ以外の部分(0〜49秒部分)のデータを有効データ、50〜59秒間のデータを無効データと判断できる。従って、有効データの受信時にモータを停止することで、有効データにモータによるノイズが影響することを防止でき、時刻修正に必要な正しい有効データを受信できるので、時刻修正を精度良く行うことができる。
さらに、前記駆動制御手段は、前記モータを停止する際に、前記モータコイルを所定の電位に固定することが好ましい。
モータ停止時にモータコイルを所定の電位に固定すれば、モータコイルがオープン状態になっている場合に比べて、モータコイルの状態を安定化できるため、アンテナ特性を向上することができる。
前述のように本発明のアンテナ内蔵式電子時計によれば、アンテナ内蔵式電子時計において、アンテナ特性を向上することができるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明にあたって、同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態に係るアナログ内蔵式電子時計としての電波修正時計1の構成を示すブロック図が示されている。
本発明の電波修正時計1は、一般的な電波修正時計と同様の構成を備えるものであり、時刻情報を含む電波(外部無線情報)を受信する通信手段としての受信手段2と、駆動制御手段である駆動制御回路部3と、指針を駆動する駆動手段4と、時刻をカウントするカウンタ部6と、電力を供給する電力供給手段7と、リュウズなどの外部入力装置8とを備えて構成されている。
受信手段2は、電波を受けるアンテナ21と、コンデンサ等で構成されてアンテナ21で受信する電波に同調させる同調回路部22と、アンテナ21で受けた情報を処理する受信回路23と、受信回路23で処理された時刻データを記憶する時刻データ記憶回路部24とを備えて構成されている。
アンテナ21は、図2に示すように、磁性体コア211にコイル212を巻いて構成されており、必要に応じて、耐食性に優れるカチオン電着塗装等で絶縁を施したものである。
磁性体コア211は、例えば、コバルト系のアモルファス箔(例;Co50wt%以上のアモルファス箔)を型で打ち抜くか、エッチングで成形したものを10〜30枚程接着して重ね合わせ、焼鈍等の熱処理を行って磁気特性を安定化させたものである。すなわち、磁性体コア211は、平面矩形状のアモルファス箔を時計の平面方向に積層し、さらに湾曲させて構成されている。なお、磁性体コアとしては、積層アモルファス箔に限定されず、フェライトを用いてもよく、この場合には、型等で成形し、熱処理して製造すればよい。
ここで、磁性体コア211の各アモルファス箔は、厚さ寸法が0.01mm〜0.05mm程度であるため、例えば30枚積層した場合、磁性体コア211の積層方向の厚さ寸法は0.3〜1.5mm程度である。アモルファス材はフェライトに比べて磁気特性が良いため、より小型・薄型のアンテナ21を実現できる。そして、アンテナ特性は、コアの体積によって影響されるため、アンテナを薄くする分、アンテナ特性を維持するには、アンテナの平面積を大きくするか、アンテナ長さ(コア長さ)を長くする必要がある。従って、本実施形態では、磁性体コア211の幅寸法は例えば0.5〜3.5mm程度であり、長さは15〜30mm程度とされている。なお、アモルファス金属板の厚みが0.05mmより厚くなると、板圧中央部は迅速な冷却を行うことが困難なため、金属はアモルファス化させることなく結晶化されてしまう。すなわち、アモルファス金属を製造するには、金属が結晶化される以前に、迅速な冷却作業を行う必要があり、そのためには、金属の厚みを薄くしなくてはならない。また、アモルファス金属板の厚みが0.01mmより薄くなると、組立作業等において、アモルファス金属板の強度が弱くなって変形しやすくなるので、部品の位置決め作業や部品の取扱作業等が非常にやりにくくなる。
コイル212は、長波標準電波(40〜77.5kHz)を受信する場合は、10mH程度のインダクタンス値が必要となる。このため、本実施形態では、コイル212として直径0.1μm程度のウレメット線を数百ターンほど巻いて構成している。なお、本実施形態では、コイル212の巻き作業を容易にし、端部の巻きくずれを防止するため、コイル212をコア211の端面211Bまで巻くのではなく、コア211の端面211Bから所定寸法(通常は数ミリ)離した位置まで巻いている。従って、コア211の端部211Aには、コイル212が巻かれていない部分が存在することになる。
また、コイル212の巻き方としては、特に限定されず、乱巻きなどでもよいが、特に整列巻きが好ましい。整列巻きを採用すれば、コイル線材間の無駄な空間が無くなり、同じインダクタンス値を得るためのコイル体積を小さくできる。なお、本実施形態では、コア211が平面円弧状であるため、次のようにしてアンテナ21を製造している。まず、ボビンに自己融着電線のコイル212を巻いた後、熱もしくは溶液に浸してコイル212を固める。コイル212が固まった後、ボビンを引き抜き、ボビンを引き抜くことで形成されたコイル212の貫通孔部分に前記磁性体コア211を挿入してアンテナ21を完成させている。なお、コイルを巻いたボビンにコアを挿入してアンテナを構成してもよい。この場合、ボビンが存在する分、サイズが大きくなるが、アンテナを容易に製造できる。
同調回路部22は、図3に示されるように、アンテナ21に対して並列に接続された2つのコンデンサ22A,22Bを備えて構成され、一方のコンデンサ22Bはスイッチ22Cを介してアンテナ21に接続されている。
そして、駆動制御回路部3から出力される周波数切替え制御信号により、前記スイッチ22Cをオンまたはオフすることで、アンテナ21で受信する電波の周波数を切り替えるように構成されている。これにより、例えば、日本国内において、送信周波数40kHzのおおたかどや山(東日本)の標準電波出力局と、送信周波数60kHzのはがね山(西日本)の標準電波出力局とから出力されている2種類の周波数の長波標準電波を切り替えて受信することができるように構成されている。
受信回路23は、図3に示されるように、アンテナ21によって受信された長波標準電波信号を増幅する増幅回路231と、増幅された長波標準電波信号から所望の周波数成分のみを抜き出すバンドパスフィルタ232と、長波標準電波信号を平滑化し復調する復調回路233と、増幅回路231のゲインコントロールを行ない長波標準電波信号の受信レベルが一定になるように制御するAGC(Automatic Gain Control)回路234と、復調された長波標準電波信号をデコードして出力するデコード回路235とを備えて構成されている。
受信回路23で受信され信号処理された時刻データは、図1に示すように、時刻データ記憶回路部24に出力されて記憶される。
受信回路23は、予め設定されたスケジュールや外部入力装置8による強制受信操作等によって、駆動制御回路部3から出力される受信制御信号に基づいて時刻情報の受信を開始する。
駆動制御回路部3は、図1に示されるように、パルス合成回路31からのパルス信号が入力される。パルス合成回路31は、水晶振動子などの基準振動子311からの基準パルスを分周してクロックパルスを生成し、また、基準パルスからパルス幅やタイミングの異なるパルス信号を発生させる。
駆動制御回路部3は、一秒に一回出力され秒針を駆動させる秒駆動パルス信号PS1と、一分間に一回出力され時分針を駆動させる時分駆動パルス信号PS2とを、各秒駆動回路41、時分駆動回路42に出力して、指針の駆動を制御する。すなわち、各駆動回路41,42は、各回路41、42からのパルス信号によって駆動されるステッピングモータからなる秒モータ411,時分モータ421を駆動し、これにより各モータ411,421に接続された秒針と、分針および時針とを駆動する。そして、各指針、モータ411,421、駆動回路41,42によって時刻を表示する時刻表示手段が構成されている。なお、時刻表示手段としては、1つのモータで、時針、分針、秒針を駆動するものでもよい。
カウンタ部6は、秒をカウントする秒カウンタ回路部61と、時分をカウントする時分カウンタ回路部62とを備えて構成されている。
秒カウンタ回路部61は、秒位置カウンタ611と、秒時刻カウンタ612と、一致検出回路613とを備えて構成されている。秒位置カウンタ611および秒時刻カウンタ612はともに60カウント、つまり1Hzの信号が入力された場合には60秒でループするカウンタである。秒位置カウンタ611は、駆動制御回路部3から秒駆動回路41に供給される駆動パルス信号(秒駆動パルス信号PS1)をカウントしている。つまり、秒針を駆動させる駆動パルス信号をカウントすることによって、秒針が示している秒針の位置をカウントしている。
秒時刻カウンタ612は、通常は、駆動制御回路部3から出力される1Hzの基準パルス信号(クロックパルス)をカウントする。また、受信手段2で時刻データを受信した場合には、この時刻データのうちの秒データに合わせてカウンタ値が修正される。
同様に、時分カウンタ回路部62は、時分位置カウンタ621と、時分時刻カウンタ622と、一致検出回路623とを備えて構成されている。時分位置カウンタ621および時分時刻カウンタ622はともに24時間分の信号が入力されるとループするカウンタである。時分位置カウンタ621は、駆動制御回路部3から時分駆動回路42に供給される駆動パルス信号(時分駆動パルス信号PS2)をカウントし、時針、分針が示している時分針の位置をカウントしている。
時分時刻カウンタ622は、通常は、駆動制御回路部3から出力される1Hzのパルス(クロックパルス)をカウントする(正確には1Hzを60回計数したところで1カウントとする)。また、受信手段2で時刻データを受信した場合には、この時刻データのうちの時分データに合わせてカウンタ値が修正される。
各一致検出回路613,623は、各位置カウンタ611,621と各時刻カウンタ612,622とのカウント値の一致を検出し、一致しているか否かを示す検出信号を駆動制御回路部3に出力する。
駆動制御回路部3は、各一致検出回路613,623から不一致信号が入力されると、一致信号が入力されるまで各駆動パルス信号PS1,PS2を出力し続ける。このため、通常運針時は、駆動制御回路部3から1Hzの基準信号によって各時刻カウンタ612,622のカウンタ値が変化して位置カウンタ611,621と不一致となると、各駆動パルス信号PS1,PS2が出力されて各指針が動くとともに、各位置カウンタ611,621が時刻カウンタ612,622と一致することになり、この動作を繰り返すことで、通常の運針制御が行われる。
また、受信した時刻データで各時刻カウンタ612,622が修正されると、そのカウンタ値に各位置カウンタ611,621のカウンタ値が一致するまで、各駆動パルス信号PS1,PS2が出力され続け、指針が早送りされて正しい時刻に修正される。
電力供給手段7は、自動巻発電機や太陽電池(ソーラー発電機)等によって構成された発電手段としての発電装置71と、発電装置71で発電された電力を蓄電する高容量二次電源72とを備えて構成されている。高容量二次電源72は、リチウムイオン電池のような二次電池が利用できる。なお、電力供給手段7としては、銀電池等の一次電池を用いてもよい。
外部入力手段としての外部入力装置8は、リュウズ等を備え、受信動作や時刻合わせなどを行うために利用される。
次に、電波修正時計1の具体的構造について説明する。
電波修正時計1は、図4,5にも示すように、約リング状に形成されたケーシング(胴)91と、ケーシング91の表面側に装着されたカバーガラス92と、ケーシング91の裏面側に着脱可能に取り付けられた裏蓋93とを備えている。ケーシング91は、ステンレス鋼、真鍮、チタン等の金属材で構成されている。従って、ケーシング91によって、本実施形態における金属製の外装ケース(時計ケース)9が構成されている。外装ケース9内には、アンテナ21を含む前記各構成が組み込まれている。
すなわち、駆動制御回路部3およびカウンタ部6を構成する受信IC81、CPU82、基準振動子311等が取り付けられた回路基板や、駆動手段4を構成するモータ411,421や輪列40等が組み込まれた時計体(ムーブメント)98、電力供給手段7を構成する高容量二次電源(二次電池)72、時計体の表面側に設けられた文字板95や地板96等の各構成部材が組み込まれている。
なお、アンテナ21は熱可塑性樹脂(ホットメルト)、紫外線硬化型エポキシ等を用いて地板96に固定されている。また、アンテナ21の緩衝材としての機能を持たせるため、弾性のあるシーリング材を利用して固定してもよい。
ここで、アンテナ21と受信IC81とは2本の配線で接続されている。すなわち、コイル212をアンテナ端部から取り出して回路基板80にはんだ付けすることにより、アンテナ21と受信IC81とは電気的に接続されている。なお、前記電気的接続は、アンテナ21にポリイミド等からなるフレキシブル基板を取り付け、この基板を回路基板にネジ留めすることなどで行ってもよい。
また、文字板95は、黄銅(真鍮、Bs)、洋白(洋銀、NS)等の金属で製造されたものを用いることもできるが、プラスチックやセラミックなどの非導電性部材(電気絶縁体)、つまり標準電波を通し易い材質のもので構成されていることが好ましい。
裏蓋93は、ケーシング91と同様な金属材で構成してもよいが、プラスチックやガラス等の非導電性部材(電気絶縁体)、つまり電波を通し易い材質で構成されていることが好ましい。
ケーシング91の対向する2カ所、通常は文字板95における12時方向および6時方向には、時計バンドを連結するための連結用突片(カン)94がそれぞれ突設されている。このケーシング91に取り付けられる時計バンド97は、複数の駒部材をピン(バネ棒等)で互いに回動可能に連結することで構成されている。そして、端部の駒部材もケーシング91にピンで回動可能に連結されている。
アンテナ21は、ケーシング91つまり外装ケース9の円周状の内周面91Aに沿って配置されている。すなわち、図4に示すように、アンテナ21の磁性体コア211の平面形状は、内周面91Aと略同心円の円弧状に形成され、コイル212は磁性体コア211に巻かれることで平面略円弧状に構成されている。
また、アンテナ21は、外装ケース9の中心点Oに対して9時方向に配置されている。一方、高容量二次電源(二次電池)72は、前記中心点Oに対し略4時方向に配置されている。従って、アンテナ21および二次電池72は、比較的離れて配置されている。また、基準振動子311も略3時方向に配置され、受信IC81等と比べてアンテナ21から離れて配置されている。このように、二次電池72や基準振動子311は、アンテナ21から離して配置され、二次電池72や基準振動子311が鎖交磁界に影響しないようにされている。すなわち、二次電池72はステンレス等の金属製ケースを備えているため、アンテナ21に近接して配置されると鎖交磁界に影響を与える。一方、基準振動子311は、32.768kHzの水晶振動子が利用されており、この振動周波数が長波受信周波数(40kHz)に近いため、基準振動子311がアンテナ21に近接して配置されると、アンテナ21にノイズとして信号が混入する可能性がある。従って、二次電池72や基準振動子311は、アンテナ21に対して比較的離して配置されている。
アンテナ21で長波標準電波等の電波を受信するときは、図6にも示すように、電波の一部である磁界成分は、アンテナ21のコア211を、その一方の端部211Aから他方の端部211Aへと通過する。すると、コア211に巻回されたコイル212に交流電流が誘導され、これに伴ってコイル212の両端に交流電圧が発生する。そして、この交流電圧がアナログ受信信号として受信回路23に流れる。
そして、このアナログ受信信号を受信回路23で増幅、復調、デコード等の処理をしてデジタルの時刻データとし、時刻データ記憶回路部24に記憶している。
次に、各モータ411,421および各駆動回路41,42の具体的構成に関して説明する。なお、各駆動回路41,42の構成は、基本的には同じであるため、秒モータ411の駆動回路41を例示して説明する。
秒モータ411および時分モータ421は、パルス信号によって駆動されるステッピングモータで構成されている。具体的には、図4に示すように、駆動回路41,42から供給される駆動パルスによって磁力を発生する駆動コイル412,422と、この駆動コイル412,422によって励磁されるステータ413,423と、ステータ413,423の内部において励磁される磁界により回転するロータ414,424と、前記駆動コイル412,422内に挿通されて前記ステータ413,423に接続されたコア415,425とを備えている。
秒モータ411のロータ414の回転は、かなを介してロータ414に噛合された五番車、四番車等からなる輪列40Aによって秒針に伝達される。一方、時分モータ421のロータ424の回転は、三番車、二番車、日の裏車、筒車等からなる輪列40Bによって分針、時針に伝達されている。
各駆動回路41,42は、図7に示すように、直列に接続されたpチャンネルMOS43AおよびnチャンネルMOS44Aと、直列に接続されたpチャンネルMOS43BおよびnチャンネルMOS44Bとによって構成されたブリッジ回路を備えている。
また、駆動回路41,42は、pチャンネルMOS43A,43Bとそれぞれ並列に接続された回転検出用抵抗45A,45Bと、これらの抵抗45A,45Bにチョッパパルスを供給するためのサンプリング用のpチャンネルMOS46A,46Bとを備えている。従って、これらのMOS43A,43B,44A,44B,46A,46Bの各ゲート電極に駆動制御回路部3からそれぞれのタイミングで所定の極性およびパルス幅の制御パルスを印加することにより、駆動コイル412に極性の異なる駆動パルスを供給したり、あるいは、ロータ414の回転検出用や磁界検出用の誘起電圧を励起する検出用のパルスを供給することができるようになっている。
ここで、時分モータ421のモータコイル422は、図8にも示すように、アンテナ21の内側に並設されている。すなわち、モータコイル422は、アンテナ21の軸直交方向に隣接し、かつ、モータコイル422の軸方向A1およびアンテナ21の軸方向A2とが略平行に配置されている。
ここで、モータコイル422の軸方向A1は、直線状のコア425の長手方向となる。また、アンテナ21の軸方向A2は、アンテナ21において電波受信の指向性が最も強い方向に直交する方向を意味する。すなわち、本実施形態の平面湾曲形状とされた円弧状のアンテナ21の場合には、アンテナの軸方向A2は、アンテナ21の両端間の中心部C1における円弧(アンテナ側面)の接線方向である。
なお、モータコイル422の軸方向A1に沿った方向のアンテナ21に対する相対位置は、前記アンテナ21の中心点C1を通り、前記軸方向A2に直交する中心線C2がモータコイル422に重なる位置に配置されている。すなわち、モータコイル422の一方の端部が前記中心線C2に重なる位置から、モータコイル422の他方の端部が前記中心点C2に重なる位置までの範囲で設置されている。特に、モータコイル422の軸方向の中心点C3が前記中心線C2に重なる位置であることが好ましい。
そして、アンテナ21およびモータコイル422間の距離Dは、D<A×L/S(式1)の条件を満たすように設定されている。ここで、Lは図8に示すように、コア211の両端間の直線距離の値を示し、Sは、コア211の断面積の値を示し、Aは定数である。例えば、コア211の両端間の距離が20mm、断面積が5mm2である場合、L=20、S=5となる。定数Aは、例えば3.0mmに設定される。これらを前記式1に代入し、D=12mmが求められる。従って、アンテナ21およびモータコイル422間の間隔は、距離D=12mmよりも小さくされている。
このようにアンテナ21およびモータコイル422間の距離の上限は前記距離Dで設定されるが、距離の下限は、アンテナ21およびモータコイル422の納まりによって設定される。すなわち、各コイル212,422が直接接触するまで近接することはできないため、距離の下限は各コイル212,422が接触しない範囲で最も近接する距離にすればよい。
従って、アンテナ21およびモータコイル422間の距離Dは、通常、約3.0〜12mm程度に設定すればよい。
また、図5に示すように、各モータ411,421の高さ位置は、アンテナ21の高さ位置と略同じ位置に配置されている。なお、モータ411,421の駆動コイル412,422の厚さ寸法はアンテナコイル212の厚さ寸法よりも小さいため、本実施形態ではアンテナ21の高さ寸法内にモータ411,421が納まるように配置されている。
なお、アンテナ21のコイル212の長さ(アンテナ長)は、長波標準電波(40〜77.5KHz)を受信することができる長さに設定されており、具体的には、14〜15mm程度以上に設定されている。
このような構成による電波修正時計1の動作を説明する。
まず、通常時の時刻表示について説明する。通常は、駆動制御回路部3は、パルス合成回路31から入力されるパルス信号(基準信号)を利用し、1Hzのパルス信号を送って秒時刻カウンタ612のカウンタ値をカウントアップする。秒時刻カウンタ612がカウントアップして秒位置カウンタ611のカウンタ値と異なると、一致検出回路613はその不一致を検出して駆動制御回路部3に不一致信号を出力する。駆動制御回路部3は、その不一致信号に基づいて、秒駆動パルス信号PS1を出力する。この秒駆動パルス信号PS1の出力により、秒位置カウンタ611がカウントアップされるとともに、秒駆動回路41の各MOS43A,43B,44A,44Bが適宜オン、オフされることで秒モータ411が駆動され、秒針が駆動される。以上の処理は一致検出回路613で各カウンタ611,612の値が一致するまで行われる。従って、通常運針時は、秒時刻カウンタ612に1Hzが入力されてカウンタ値が「1」カウントアップされる毎に、秒駆動パルス信号PS1が1つ出力され、秒針が1秒分毎ステップ運針される。
時分についても同様に、時分時刻カウンタ622でカウントされるカウント値に時分位置カウンタ621のカウント値を一致させるように駆動制御回路部3から時分駆動パルス信号PS2が出力され、時分駆動パルス信号PS2に応じて時分駆動回路42から時分モータ421にパルス信号が出力され時針、分針が駆動される。
次に、時刻情報を受信する場合の動作について説明する。
駆動制御回路部3は、設定された受信開始時間になると、図9に示すように、受信制御信号をオン(Hレベル信号)に切り替えて受信回路23を作動させる。同時に、駆動制御回路部3は、1秒ごとに出力していたモータ駆動用パルスの出力は停止する一方で、所定のパルス信号を秒駆動回路41および時分駆動回路42に出力し、各MOS43A,43Bをオンして駆動コイル412の両端を電位VDDに接続してショート状態する。なお、本実施形態では、電位VDD(高電圧側)を基準電位(GND)に取り、VSS(低電圧側)を電源電圧として生成している。
駆動制御回路部3は、各モータ411,421の駆動コイル412をショート状態にした後、受信回路23を駆動して時刻情報の受信を開始する。なお、外部入力装置8による受信動作開始の操作によって強制的に開始(強制受信)させることも可能であるが、この場合も外部入力装置8によって受信動作が指示されると、駆動制御回路部3はまず駆動コイル412をショートしてその電圧を所定電位(例えばVDD)に固定した後、受信回路23を駆動して時刻情報の受信を開始する。
受信回路23が作動されると、アンテナ21を介して受信された電波(時刻情報)は受信回路23で処理されたのち、記憶回路部24に記憶される。この際、アンテナ21に対してモータコイル422が並設されているため、図10に示すアンテナ21が単独で配置されている場合に比べて、アンテナ21近傍の磁束密度が高くなり、図11に示すように、アンテナ21を鎖交する磁束数が増加し、アンテナ21の感度が向上する。
そして、受信した時刻データが正しいか否かの検証も合わせて行われる。具体的には、長波標準電波の時刻情報は1分毎のデータとなるため、受信した複数の時刻データが1分間隔の異なるデータになっているか等で判断される。
受信された時刻情報が正しいデータと判断されると、駆動制御回路部3の指示によって、時刻データは秒時刻カウンタ612と時分時刻カウンタ622に出力され、秒時刻カウンタ612と時分時刻カウンタ622のカウント値が修正される。この際、駆動コイル412のショート状態も解除される。
そして、各時刻カウンタ612,622のカウント値が修正された結果、各位置カウンタ611,621と異なる値になると、それらのカウント値が一致するまで各一致検出回路613,623の不一致信号を受けて、駆動制御回路部3は、各駆動パルス信号PS1、PS2を出力し、各指針を駆動する。この指針の駆動は、各カウンタ値が一致するまで早送りで継続されるため、受信時刻に合わせて指針位置が自動的に修正され、時刻合わせが行われる。
前述の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)アンテナ21に並設してモータ421のモータコイル422を配置し、かつ、駆動制御回路部3により、受信回路23の駆動時つまり電波受信時にはモータ411,421を停止するように構成したので、モータコイル422を、アンテナ21の無給電素子として利用できる。このため、アンテナ21およびモータコイル422によって仮想的なアンテナが形成され、その断面積はアンテナ21単体に比べて大きいため、アンテナ21部分の磁束密度が高くなり、その分、アンテナ21を鎖交する電波の磁界の磁束量が増えてアンテナ21の特性を向上できる。
(2)また、アンテナ21およびモータコイル422間の距離Dは、前記式1にアンテナ21の長さLや断面積Sを代入することで非常に簡単に求めることができる。すなわち、アンテナ21およびモータコイル422間の距離Dは、L/Sという新規なパラメータを利用し、前記距離DはこのL/Sに比例させればよいという新規な数式を用いているため、非常に簡単に算出でき、時計の設計も容易に行うことができる。
その上、前記式1を用いることで、アンテナ21の指向性に応じてモータコイル422の配置位置を設定できるため、アンテナ21の受信感度の低下を抑えつつ、レイアウトの自由度も向上でき、アンテナ特性の低下防止と時計の小型化を実現できる。
(3)駆動制御回路部3により受信回路23の駆動時に、前記モータコイル412,422を所定の電位(VSS)に固定して安定化させているので、オープン状態となっている場合に比べて、アンテナ特性をより一層向上することができる。
(4)アンテナ21を、外装ケース9の内周面91Aに沿って配置しているので、アンテナ21において電波が鎖交する端面と、この端面に対向する位置にある内周面91Aとの間隔を比較的大きくすることができる。このため、コイル212を鎖交する標準電波の磁界が外装ケース9によって妨げられることが少なくなり、金属製の外装ケース9を用いた場合でも、アンテナ特性の低下を抑えることができる。
従って、金属製のケース9を用いても外部無線情報を受信することができるため、ケースをプラスチック等で構成した場合に比べて高級感の高い外観意匠が得られ、これによりデザイン上の制約も少ない電波修正時計1を提供することができる。その上、外装ケース9に切欠部を形成したり、外装ケースをプラスチックと金属の2重ケースにする必要がないため、製造コストも低減できる。さらに、アンテナ21を内周面91Aに近接して配置できるので、アンテナ21の長さもある程度確保できて、アンテナ特性の低下も防止できるとともに、時計1を小型化することもできる。
(5)アンテナ21において、鎖交磁束によって発生する電流値が最も大きくなる軸方向の中心部分に隣接して前記モータコイル422を配置したので、アンテナ21の中心部分(中心点C1部分)に、モータコイル422を並設することで集められる磁束をより多く流すことができる。従って、モータコイル422の長さが短くても、その配置を最も適切な位置にすることで、アンテナ21の感度を効果的に向上することができる。
(6)モータコイル422をアンテナ21に対して外装ケース9の中心側に配置し、アンテナ21およびモータコイル422を平面的(外装ケース9の表面から見た状態)に並設し、時計1の断面方向に重ねていないので、ムーブメントつまり時計1を薄型化することができる。
(7)アンテナ21を高容量二次電源(二次電池)72から離して配置しているので、金属ケースを有する電池72がアンテナ特性に影響を与えることを減少でき、アンテナ特性の低下をより一層抑えることができる。
また、アンテナ21を基準振動子311からも離して配置しているので、基準振動子311の信号が受信信号にノイズとして混入することを防止でき、アンテナ特性の低下をより一層抑えることができる。
(8)アンテナ21を平面円弧状に形成したので、アンテナ21をその全長に渡ってケース内周面91Aに沿って配置できる。このため、内周面91Aとアンテナ21との間の隙間を非常に小さくできてケース9内部のデッドスペースを無くすことができ、ケース9の内部空間を有効に利用することができる。このため、外装ケース9の小型化を可能とし、例えば、男性用の腕時計に比べて小さい女性用の腕時計においてもアンテナ21を内蔵させることができる。
その上、アンテナ21の円弧状の内側面に沿ってモータ421を配置し、アンテナ21のコア211の両端を結ぶ弦のアンテナ21側にモータコイル422を配置できるため、アンテナ21およびモータコイル422の配置スペースを小さくすることができる。従って、ケース9の内部に配置される輪列40、電池72、IC81,82等の配置スペースを十分に確保でき、レイアウトの自由度も高めることができる。
(9)外装ケース9をプラスチック等の金属材以外で構成する場合、必要な強度を確保するために、肉厚にしたり補強リブを設けるなど、ケース9の製造に工夫を要するが、本実施形態では金属製のケース9を用いているので、プラスチック製の場合と同じ肉厚にした場合には、より強度の高いケース9にできたり、同じ強度を確保するために必要なケース9の肉厚寸法を小さくすることができる。
(10)アモルファス箔を平面矩形状に形成して時計1の平面方向(時計1の厚み方向に対して直交する方向つまり横方向)に積層してコア211を製造しているので、各アモルファス箔を平面円弧形状に成形する必要が無く、平面矩形状(長方形状)に成形できるため、各アモルファス箔つまりはコア211を簡単にかつ効率的に製造することができる。
また、各アモルファス箔を湾曲させる必要があるが、アモルファス箔は薄膜であるため、比較的容易に湾曲でき、製造も容易に行うことができる。
また、アンテナ21は磁性体コア211が挿入されているので、アンテナ21の指向性をよりシャープにでき、アンテナ特性を向上できる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、1つのモータコイル431のみを有する1モータタイプの時計である点が前記第1実施形態と相違するものであるため、その部分のみを説明する。なお、以下の各実施形態において、前述した各実施形態と同一または同様の構成部分には同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
第2実施形態の時計では、図12に示すように、1つのモータのみが設けられており、このモータのモータコイル431がアンテナ21に並設されている。なお、アンテナ21およびモータコイル431間の距離Dは、前記実施形態と同様に、D<A×L/Sとなるように設定されている。
この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。その上、モータが1つのみであるため、モータを配置するスペースを小さくでき、その分、アンテナ21をより長くすることができ、アンテナ21と電池72等とをより離して配置することもできる。
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、アンテナの平面形状が前記第1,2実施形態と相違するものであるため、その部分のみを説明する。第3実施形態のアンテナ51の磁性体コア511は、図13に示すように、各端部511Aと、各端部511A間を連結する中間部511Bとを備えている。ここで、各端部511Aおよび中間部511Bは平面円弧状ではなく、直線状に形成されている。また、中間部511Bにアンテナコイル512が巻かれている。
アンテナ51の中間部511Bに並設してモータコイル431が設定されている。この際、アンテナ51の軸方向はコイル512が巻かれた中間部511Bの長手方向となり、このアンテナ51の軸方向と前記モータコイル431の軸方向とが平行となるように、アンテナ51およびモータコイル431が並設されている。
この第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、アンテナ51を平面円弧形状ではなく、多角形状に構成したので、コア511をアモルファス板から切り出して形成する作業や、コイル512の巻線作業を、円弧形状のコアを用いる場合に比べてより容易に行うことができ、アンテナ51の製造作業性を向上できる。
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、以上述べた実施の形態に対し、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができる。
例えば、アンテナの構成としては、前記各実施形態のものに限らず、例えば、第3実施形態のコア511の中間部511Bを複数の直線部で構成し、このコア511にコイル512を巻き付けた平面多角形状のアンテナを用いてもよい。このアンテナは、前記第3実施形態のアンテナ51と同様に、コアの切り出しやコイルの巻線作業を容易にできる上、前記アンテナ51に比べてより円弧形状に近くなるため、アンテナとケース内周面91A間のデッドスペースを前記アンテナ51に比べて小さくでき、スペース効率を向上できる。
さらに、コアの中間部を円弧状に形成し、両端部を直線状に構成したアンテナを用いてもよい。
また、アンテナとしては、平面直線状(棒状)のコアを有するアンテナでもよい。但し、前記各実施形態のように、平面円弧状等としたほうが、ケース内周面91Aに沿って配置できてムーブメント98の配置スペースを確保できる点で有利である。
また、アンテナのコアは全長に渡って同じ幅寸法で構成されているものに限らず、コイルが巻かれない両端部の幅寸法を、コイルが巻かれる部分に比べて大きく形成してもよい。このようにコア両端部の幅寸法を大きくすれば、コイルが巻かれた部分の厚さ寸法を変えることなく、コアの体積を大きくすることができ、アンテナを大きくすることなく、アンテナ特性を向上することができる。
なお、この場合、コアのコイルを巻く部分には、20〜30μm程度の厚みの絶縁テープを巻いておくことが好ましい。この絶縁テープを巻いておけば、コイルとコアとを確実に絶縁でき、かつ、コアが断面矩形状に形成されている場合に、巻線がコアの角のエッジで切れることを防止できる。また、コアの段部つまりコイルが巻かれる部分の端部には、ポリエステル等でできた略U字型の巻き枠をセットすれば、コイルを容易に巻くことができるとともに、コイル端部の巻きくずれを防ぐことができる。
また、アンテナの配置位置は、前記第1実施形態のようなケース9内において時計の9時方向に限らず、時計の9時方向や、6時方向、3時方向などの他の位置でもよい。但し、3時方向には通常、りゅうずの巻真やボタンの軸等が設けられ、これらと干渉しないようにアンテナを配置しなければならないため、他の6,9,12時方向に配置することが好ましい。特に、2時および4時にボタンが配置されている場合には、アンテナを12時方向や6時方向に配置すると、アンテナやモータコイルがボタンの軸に干渉しないように、アンテナの長さが制限されるおそれがあるため、アンテナを9時方向に配置することが最も好ましい。
また、アンテナに対するモータコイルの軸方向の相対位置は、前記実施形態のように、モータコイル422がアンテナ21の軸方向中心点C1の横に並設されていることが好ましいが、アンテナ21の軸方向端部側にモータコイルを並設させてもよい。
さらに、前記実施形態では、1つのモータコイルのみをアンテナ21に並設させていたが、2つのモータコイルをアンテナ21に並設させてもよい。例えば、直線状のアンテナを配置し、その左右両側にモータコイルを配置してもよいし、アンテナの片側に2つのモータコイルをモータコイルの軸方向に離して配置してもよい。さらには、アンテナに並設して1つのモータコイルを配置し、さらにこのモータコイルに並設して他のモータコイルを配置してもよい。すなわち、アンテナの無給電素子として利用されるモータコイルは、その軸方向が前記アンテナの軸方向に略平行に配置されていればよく、その本数や配置場所は時計におけるレイアウト等を考慮して適宜設定すればよい。
また、複数のモータコイルを配置する際には、すべてのモータコイルがアンテナに対して前記距離D内に配置されていることが好ましいが、少なくとも1つのモータコイルが前記距離D内に配置されていればよい。
また、アンテナおよびモータコイルは時計の厚さ方向(断面方向)に並設してもよい。つまりアンテナの文字板側あるいは裏蓋側にモータコイルを配置してもよい。さらに、2つのモータコイルのうち、1つのモータコイルは前記実施形態と同様にアンテナに対して平面方向に並設し、他のモータコイルはアンテナに対して時計の厚さ方向に並設してもよい。
但し、アンテナおよびモータコイルを時計の厚さ方向に並設すると、時計の厚さ寸法が大きくなるため、特に腕時計のように薄型化が求められる場合には、前記実施形態のように時計の平面方向に並設することが好ましい。
また、本発明の時計1における外装ケース9は、金属製のものに限らず、例えば、図14に示すように、プラスチックケース110の表面にステンレスやチタン等の金属製カバー111を取り付けて構成されたものでもよい。さらに、外装ケース9は、合成樹脂やセラミックなどの非導電性材料で構成してもよく、さらにはこれらプラスチック等にメタリック塗装などの表面処理を施して金属層を形成したもので構成してもよい。但し、外装ケースの少なくとも一部を金属製としたほうが高級感のある外観とすることができる利点がある。
さらに、裏蓋93も金属製のものに限らず、例えば、図14に示すように、金属製の外周リング93A内にガラス板93Bを嵌め込んだものを用いてもよい。裏蓋93の一部をガラス製にすれば、電波がガラス板93B部分から外装ケース9内部に侵入し易くなるため、受信感度を向上できる。同様に、文字板95もプラスチック製にすれば、電波がケース9内に入りやすくなり、受信感度を向上できる。
前記実施形態では、アモルファス箔を平面矩形状に形成して時計1の平面方向に積層してコア211を製造していたが、アモルファス箔を平面湾曲形状に形成して時計1の厚さ方向(時計1の裏蓋93および表面ガラス92を結ぶ方向)に積層してコアを製造してもよい。
さらに、アンテナのコアとしては、積層アモルファス箔で構成されたものに限らず、フェライトコアなどの磁性体を用いてもよい。
また、アンテナコアの長さは、適宜設定でき、例えば、円弧状に形成された場合であれば、その中心角が180度程度まで長くすることもでき、さらに180度以上とすることもできる。アンテナ特性は、アンテナの長さが長い方が向上する。従って、アンテナ長を最低15mm程度確保する場合には前記中心角は50〜60度程度とすればよいが、アンテナ特性をより向上させる点では中心角をより大きくすることが好ましい。一方で、前記中心角を180度以上とすると、アンテナ21の両端部の軸方向つまり鎖交磁界(磁束)が入る方向および出る方向と、アンテナ21の中間部における磁束の方向とが90度以上となり、磁界成分の流れがスムーズでなくなるため、180度を大幅に超えて大きくすることは好ましくない。従って、アンテナコアの長さは円弧状あるいは円弧に近似した多角形状に形成した場合、その中心角が約50度〜240度程度の範囲に納めることが好ましく、前記鎖交磁束の方向やアンテナ特性を考慮すると、前記中心角が約60〜180度の範囲であることが好ましい。なお、実際には、モータコイルや電池等の他の部品の配置スペース等も考慮して設定すればよい。
なお、コアが円弧状に形成されていない場合でも、各端面の位置関係が円弧状の場合と同様となるように構成すればよい。
さらに、本発明において、無給電素子として利用されるモータは、時計において一般的に用いられるステップモータ等が利用できる。従って、モータのコアも、パーマロイ等の一般的な時計のステップモータに使用されるコアが利用できる。
また、前記実施形態の駆動制御回路部3は、受信回路23を駆動している間、指針を駆動するモータを停止していたが、受信回路23が駆動している間であっても、不要なデータを受信している間はモータを駆動するように制御してもよい。
すなわち、指針のうち、時針および分針は、通常1つのステップモータで駆動されるが、このモータに対する駆動パルスを1分間に1回加えれば、時分針は正しく駆動することができる。一方で、例えば、日本の時刻情報である標準電波JJYは、1分間に渡って1つの時刻情報を送信するが、その50秒〜59秒間は、「曜日情報」等の、直接時刻修正には必要ない情報(不要データ)を送信している。従って、標準電波のタイムコードにおいて、0〜49秒間の電波修正処理に有効なデータを受信している間は前記モータの駆動を停止し、50〜59秒間の電波修正処理に不要なデータを受信している間にモータを駆動させるようにすれば、有効データにモータノイズが影響することがなく、正しいデータを受信でき、正しい時刻修正処理を行うことができる。また、不要データの受信中にモータ駆動パルスを出力できるため、1分間に1回のモータ駆動パルスで駆動できる時分針を、外部無線情報の受信中も作動させることができ、正しい時刻表示を継続できる。
従って、受信回路の動作中にモータを駆動することができ、正しい時刻指示を行いながら、安定したデータ受信を行うことができる。また、受信回路23は、受信回路23の電源を入れて作動し始めたときは、回路が安定するまで時間が掛かるため、頻繁にオン、オフすると、安定して作動させることが難しいが、不要データ受信中も作動させ続けるようにすれば、受信回路23の安定性も高めることができる。
なお、現在受信中のデータがタイムコードの0〜49秒間に相当する有効データであるか、50〜59秒間に相当する無効データであるかの判断は、例えば、時計の秒時刻カウンタ612のカウンタ値で行うことができる。すなわち、モータ駆動に必要なパルスの出力は1秒間以下で行えるため、例えば、タイムコードが55秒の時にモータ駆動パルスを出力してモータを駆動するように設定すればよい。一方で、電波修正時計における電波受信時の時刻指示誤差は、通常、1秒以下であるため、前記カウンタ値が55秒の時にモータを駆動すれば、その際に受信している標準電波JJYも、54〜56秒の時刻修正に必要ない情報を送信していることになり、有効データの受信中にはモータ駆動を停止し、無効データの受信中にモータを駆動する制御を容易に行うことができる。
一方、秒針を有する時計の場合、秒針を駆動するモータに対しては、時刻指示のためには、1秒毎にモータ駆動パルスを出力する必要があり、このため、電波受信時に秒針を駆動するモータにおいて、時刻指示用の駆動は停止させる必要がある。但し、カウンタ612のカウンタ値が50〜59秒の範囲内で、1〜2秒間程度のモータ駆動パルスの出力で秒針を早送り駆動することは、分針の場合と同様に、電波受信に影響することがないため、例えば、秒針を駆動して電波受信時の電界強度レベルを表示するような制御を電波受信時にも行ってもよい。
また、アンテナ21と電池72や基準振動子311との配置関係は前記実施形態に限定されず、電池72や基準振動子311がアンテナ21の受信に影響しない程度の間隔を設けて配置すればよい。
さらに、前記各実施形態では、コアの両端部近傍までコイルを巻いていたが、コアの中間部のみにコイルを巻いてもよい。但し、アンテナ特性やスペース効率の点では前記実施形態のようにコアの両端部近傍までコイルを巻くことが好ましい。
さらに、アンテナ21によって受信する無線情報としては、時刻情報を含む長波標準電波に限定されない。例えば、時刻情報を受信する場合でも、その無線信号としては、300MHz帯の微弱電波無線、400MHz帯の特定小電力無線、2.4GHz帯のBluetooth(ブルートゥース)等を利用してもよい。これらの無線を受信する場合には、周波数が高いため、コイル212のターン数は少なくてよく、アンテナ21も小さくできる。
また、電波を用いた無線通信に限らず、電磁結合方式や電磁誘導方式等の他の無線通信方式を用いてもよい。なお、電磁結合や電磁誘導方式は、通信機器同士を近接させる必要があるが、ステンレス等の非磁性体であれば金属部分でも透過して通信が可能なため、アンテナが内蔵されるケースをステンレス等の金属製で構成できる利点がある。
さらに、前記アンテナ21を用いて通信する無線情報としては、時刻情報に限らない。例えば、時計1内にICカード機能を内蔵させ、電車の定期券や各種プリペイドICカードのような情報を送受信するために利用してもよい。例えば、ケース9内にICチップとアンテナ等を組み込み、ICカードを用いた改札機や入退室管理機、各種の課金支払機等に腕時計を近接させて情報をやり取りできるようにしてもよい。この場合、別途、ICカードを出し入れする必要がなく、時計をはめた手を近付けるだけでよいため、操作性を非常に向上することができる。なお、外部無線情報に含まれるデータが有効データであるか無効データであるかは、各時計に組み込まれた機能等に応じて設定すればよい。
従って、本発明の外装ケース9に内蔵されるアンテナ21としては、標準電波を受信する場合のような受信専用に用いるものでもよいし、非接触ICを用いたタグのように、情報を送受信するために用いてもよいし、さらには送信専用に用いてもよく、これらは本発明を適用する電子時計つまりはアンテナ内蔵式電子機器の種類に応じて適宜選択すればよい。
本発明のアンテナ内蔵式電子機器としては、前述の電波修正時計に限定されず、例えば、前記ICカード機能のみが設けられた電子機器等の各種電子機器にも適用できる。例えば、電子機器としては、脈拍や体温等の測定機器や通信、通話機能を備えた通信機器、カレンダやスケジュール、アドレス帳機能を備えた携帯情報端末機器、電子計算機能を備えた携帯型コンピュータ、音楽や画像、映像再生機能を備えたAV機器、非接触型通信機能を備えた個人情報管理用機器等の各種の無線情報の通信機能を有する電子機器に適用できる。
これらの電子機器においても、例えば本体に液晶表示部等を設け、外装ケース9内に組み込まれたアンテナで受信したり、外部に送信する情報、例えば残金情報や使用履歴等の情報を表示するようにしてもよい。さらには、電子機器から利用者のID情報を通信できるようにし、その電子機器と通信するシステム側から利用者に情報を提供するようにしてもよい。例えば、交通機関への乗降車時や、イベント会場や店舗への入退場時、会社等への出退勤時に、利用者全員にメッセージを送ったり、特定の人(IDで特定)に特別なメッセージ(特典ポイントの案内、イベント情報)を送るようにしてもよい。
また、アンテナ21は、ループアンテナに限らず、誘導体アンテナ等の他のアンテナを用いてもよく、これらは送信あるいは受信する無線情報の種類等に応じて適宜設定すればよい。なお、ループアンテナを用いる場合は、磁性体コアが挿入されていないものを用いてもよい。
本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。 前記実施形態のアンテナの構成を示す斜視図である。 前記実施形態の受信回路の構成を示すブロック図である。 前記実施形態の時計の概略平面図である。 前記実施形態の時計の概略断面図である。 アンテナによる電波の受信を説明する概念図である。 モータの駆動回路を示す回路図である。 前記実施形態のアンテナおよびモータコイルの配置関係を示す概略図である。 前記実施形態におけるモータパルスおよび受信制御信号を示す信号波形図である。 従来技術におけるアンテナを鎖交する磁束数を示す概略図である。 本発明におけるアンテナを鎖交する磁束数を示す概略図である。 本発明の第2実施形態の時計の概略平面図である。 本発明の第3実施形態の時計の概略平面図である。 本発明の他の変形例を示す概略断面図である。 アンテナの指向性を説明するための図である。 アンテナの指向性を説明するための図である。
符号の説明
1…電波修正時計、2…受信手段、3…駆動制御回路部、4…駆動手段、9…外装ケース、21,51…アンテナ、71…発電装置、72…高容量二次電源、80…回路基板、91…ケーシング、91A…内周面、92…カバーガラス、93…裏蓋、95…文字板、96…地板、211,511…磁性体コア、212,512…アンテナコイル、311…基準振動子、411…秒モータ、421…時分モータ、412,422,431…モータコイル、415,425…コア、800A…アンテナ、800B…アンテナ。

Claims (10)

  1. 外装ケースと、この外装ケース内に配置されて外部無線情報を受信するアンテナと、アンテナで受信した外部無線情報を処理する受信手段と、時刻表示手段と、前記受信手段および時刻表示手段の駆動を制御する駆動制御手段とを備え、
    前記アンテナは、コアに巻かれたコイルを備えて構成され、
    前記時刻表示手段は、モータコイルを有するモータと、このモータによって駆動される表示部とを備えて構成され、
    前記モータコイルは、その軸方向が前記アンテナの軸方向に対して略平行となるように前記アンテナに並設されて前記アンテナのコイルと磁気的に結合可能とされ、
    前記駆動制御手段は、前記外部無線情報に含まれるデータのうち、少なくともデータ処理に利用される有効なデータを受信している間は前記モータを停止し、前記モータコイルをアンテナの無給電素子として機能させることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  2. 請求項1に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記モータコイルおよびアンテナは、前記モータコイルおよびアンテナ間の各軸直交方向の距離をD、アンテナの長さの値をL、アンテナの断面積の値をS、所定の定数をAとした際に、
    (数1)
    D<A×L/S
    となる位置に配置されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記アンテナは、モータコイルおよび外装ケースの内周面間に配置されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記外装ケースの少なくとも一部は金属で構成されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記コアは積層アモルファス箔からなる磁性体で構成されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    電力供給用の電池を備え、前記アンテナは、外装ケースの内周面の中心を挟んで前記電池の反対側に配置されていることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記駆動制御手段は、前記受信手段が駆動されている間は、前記モータを停止することを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記駆動制御手段は、前記有効なデータを受信している間は前記モータを停止し、不要なデータを受信している間に前記モータを駆動することを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記外部無線情報は標準電波であり、
    前記駆動制御手段は、標準電波に含まれる時刻データに基づいて時刻表示手段の表示を制御可能に構成され、
    前記有効なデータは、標準電波に含まれるデータのうち、時刻表示手段の表示処理に利用されるデータであることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のアンテナ内蔵式電子時計において、
    前記駆動制御手段は、前記モータを停止する際に、前記モータコイルを所定の電位に固定することを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。

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