JP4273802B2 - アルキレン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキレン誘導体の製造方法、詳しくは、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイド触媒を用いて、二酸化炭素の存在下にエチレンオキシド等のアルキレンオキシドと水又は二酸化炭素とを反応させて、エチレングリコール等のアルキレングリコール又はエチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートを製造する方法に係り、特に、この反応系から4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイド触媒を効率的に回収して循環使用する方法に関する。
【0002】
なお、本発明におけるアルキレングリコールとは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数2〜10程度のアルキレングリコールを指し、アルキレンカーボネートとは、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭素数2〜10程度のアルキレンカーボネートを指す。
【0003】
【従来の技術】
エチレングリコールは、エチレンオキシド(酸化エチレン)を水と直接反応させて加水分解することにより、大規模に製造されているが、この方法では、加水分解に際し、ジエチレングリコールやトリエチレングリコールなどの副生を抑制するために、エチレンオキシドに対して化学量論量よりも大過剰の水を使用しなければならない。そのため、生成したエチレングリコール水溶液を蒸留して大過剰の水を脱水する必要があり、精製されたエチレングリコールを取得するのに多大のエネルギーを要するという問題がある。
【0004】
この問題を解決する方法として、二酸化炭素の存在下に水とエチレンオキシドとを反応させることにより、エチレングリコールを製造する方法が提案されている。この反応は、エチレンオキシドと二酸化炭素との反応でエチレンカーボネートが生成し、エチレンカーボネートが加水分解されることによりエチレングリコールが生成する2段反応である。この2段反応は、反応系に水が存在するため、同一の反応器内でも進行するが、第2段目の反応を完結させるために、後段に更に反応器を設けても良い。エチレンカーボネートの加水分解では、ジエチレングリコールやトリエチレングリコールなどは殆ど副生しないため、加水分解は化学量論量より若干過剰の水で行わせることができ、生成したエチレングリコール水溶液の脱水に要する費用を大きく減少させることができる。なお、エチレンオキシドと二酸化炭素との反応で生成したエチレンカーボネートの加水分解で二酸化炭素が生成するため、この二酸化炭素は循環再使用される。
【0005】
また、この方法では、反応条件を低温化して原料水量を低下させることでエチレングリコールの生成量を抑え、エチレンカーボネートを製造することも可能である。
【0006】
このようにしてエチレンオキシドからエチレングリコール及び/又はエチレンカーボネートを製造する際の触媒としては種々のものが提案されているが、その好ましいものの一つは有機ホスホニウム塩、特に好ましくは4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドである(特公昭55−47617号公報)。また、このような有機ホスホニウム塩に助触媒としてアルカリ金属の炭酸塩を併用しても良い(特開平12−128814号公報)。
【0007】
ところで、原料のエチレンオキシドは、エチレンの酸化により製造されるが、その際、反応系には、酸化反応の選択性を向上させるためにエチルクロライド等のクロロ炭化水素が選択性調節剤として供給される(特開平2−104579号公報)。
【0008】
【特許文献1】
特公昭55−47617号公報
【特許文献2】
特開平12−128814号公報
【特許文献3】
特開平2−104579号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
二酸化炭素の存在下でエチレンオキシドと水又は二酸化炭素とを反応させてエチレングリコール又はエチレンカーボネートを製造する方法は、上述の如く、副生物の問題のない工業的に有利な方法であるが、反応を継続することにより、反応効率が低下するという問題がある。
【0010】
本発明者は、この反応効率低下の原因について検討した結果、反応系内の4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイド触媒が触媒活性の低いクロライドに変換されることが原因であることを知見した。実際、約1年の装置の稼動により、反応系内の4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイド触媒の20%程度が4級ホスホニウムクロライドに変換されていた。
【0011】
4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドが4級ホスホニウムクロライドに変換される理由は、原料のエチレンオキシドに不純物として含まれる塩素化合物が反応系内に導入されることによるものと考えられた。即ち、前述の如く、エチレンオキシドの製造工程では、反応の選択性の向上のために反応系にクロロ炭化水素が選択性調節剤として供給されているが、このクロロ炭化水素に含まれる塩素は、精製系を経てもなお製品エチレンオキシドに塩素化合物として残留するため、これがエチレングリコール又はエチレンカーボネートの製造工程に混入することとなる。この製品エチレンオキシドに混入して導入される塩素化合物により、その反応機構の詳細は明らかではないが、4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドが4級ホスホニウムクロライドに変換されるものと考えられる。
【0012】
従って、エチレングリコール又はエチレンカーボネートの製造工程では、反応系から触媒由来の反応活性の低い4級ホスホニウムクロライドを分離除去し、高活性の4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドのみを残すようにする必要がある。しかしながら、従来においては、経時による反応効率の低下がこのクロライドへの経時的変換に起因するものであるとの解明もなされておらず、まして反応系の触媒である4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドと4級ホスホニウムクロライドとを分離する方法についても、4級ホスホニウムクロライドを4級ホスホニウムヨーダイド又はブロマイドに変換する方法についても全く検討されていなかった。
【0013】
本発明は上記従来の問題点を解決し、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイド触媒を用いて二酸化炭素の存在下にエチレンオキシド等のアルキレンオキシドと水又は二酸化炭素とを反応させてエチレングリコール等のアルキレングリコール又はエチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートを製造する方法において、反応系で生成した4級ホスホニウムクロライドを効率的に4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドに変換して回収し、これを反応系に循環使用する方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルキレン誘導体の製造方法は、
4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを触媒として用いて、二酸化炭素の存在下にアルキレンオキシドと水とを反応させてアルキレングリコールを生成させる反応工程を備えるアルキレングリコールの製造方法、
或いは、
4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを触媒として用いて、アルキレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてアルキレンカーボネートを生成させる反応工程を備えるアルキレンカーボネートの製造方法
において、
該反応工程から得られた、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物に、ヨウ化物及び/又は臭化物を添加して4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として有機溶媒中で析出させることにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを回収することを特徴とする。
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために種々検討を重ねた結果、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイド触媒を用いて、二酸化炭素の存在下にアルキレンオキシドと水又は二酸化炭素とを反応させてアルキレングリコール又はアルキレンカーボネートを生成させる反応工程から得られた、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物に、ヨウ化物及び/又は臭化物を添加することにより、この混合物中の4級ホスホニウムクロライドをヨーダイド及び/又はブロマイドに変換させることが可能であり、一方4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を有機溶媒への溶解度の低い無機塩化物とし有機溶媒中で析出させ、これを分離することにより、有機溶媒中に溶解した4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを回収することができることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
なお、以下において、上述の如く、4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を有機溶媒中で無機塩化物として析出させる操作を「無機塩化物析出操作」と称す場合がある。また、4級ホスホニウムクロライドの塩素を無機塩化物として析出させるために、ヨウ化物及び/又は臭化物を添加する、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物を「処理対象混合物」と称す場合がある。また、反応器から流出する液ないし反応器から抜き出した液を「反応液」と称し、この反応液から水及びアルキレングリコール、アルキレンカーボネートを蒸留分離することにより、触媒が濃縮された液を単に「触媒液」と称す場合がある。
【0017】
本発明は、この処理対象混合物として、アルキレングリコール又はアルキレンカーボネートの反応工程から抜き出した触媒を含有する反応液に対して、そのまま適用することが可能であるが、別法としてこの反応液中の溶媒であるアルキレングリコール又はアルキレンカーボネートの一部又は全量を蒸発除去した後の液状の触媒液又は固体状の残留物に対して水を添加して触媒の一部を析出させて回収した後の液に適用することも可能である(以下において、この触媒液又は固体状の残留物に水を添加して触媒の一部を析出させて回収する操作を「前回収」と称す場合がある。)。即ち、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドは水に対する溶解度が4級ホスホニウムクロライドよりも低いことから、このように水を添加することにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドの多くは析出し、一方、4級ホスホニウムクロライドの多くは水に溶解する。このような前回収処理を経ることにより、処理対象混合物の4級ホスホニウムクロライドの濃度を高めることができ、その4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドへの転換、回収率を高めることができる。
【0018】
4級ホスホニウムクロライドをヨーダイド又はブロマイドに変換し、クロライド由来の塩素を無機塩化物として有機溶媒中で析出させて、これを分離した後の分離液は、有機溶媒中に4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドが溶解したものである。従って、この分離液の有機溶媒を蒸発除去することにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを固体として回収することができる。回収した4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドは所望により水で洗浄した後に、そのまま或いは適当な溶媒に溶解させて、アルキレングリコール又はアルキレンカーボネートの反応工程へ循環使用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のアルキレン誘導体の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
なお、以下においては、本発明を、4級ホスホニウムヨーダイド触媒を用いてエチレンオキシドからエチレングリコールを製造する反応に適用する場合について主に説明するが、本発明は、その他、プロピレンオキシドからのプロピレングリコールの製造等、各種アルキレングリコールの製造に好適に適用可能である。また、触媒として4級ホスホニウムブロマイドを用いる場合、或いは、触媒として4級ホスホニウムヨーダイドと4級ホスホニウムブロマイドとを併用する場合にも同様に適用することができる。更にまた、本発明は、前述の如く、このアルキレングリコールの製造方法と同様の手法で、反応条件を変更し、反応温度を低温下してエチレングリコール等のアルキレングリコールの生成量を抑え、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートを製造する反応にも適用することができ、また、アルキレンカーボネートとアルキレングリコールとの両方を目的生成物とする反応にも適用することができる。
【0021】
また、以下においては、処理対象混合物に無機ヨウ化物を添加して4級ホスホニウムクロライドを4級ホスホニウムヨーダイドに変換すると共に、4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として析出させる方法を例示するが、臭化物を添加して、4級ホスホニウムクロライドを4級ホスホニウムブロマイドに変換すると共に、4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として析出させても良く、また、ヨウ化物と臭化物を併用添加して4級ホスホニウムクロライドを4級ホスホニウムヨーダイド及び4級ホスホニウムブロマイドに変換すると共に、4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として析出させても良い。
【0022】
本発明に適用可能な4級ホスホニウムヨーダイド触媒としては、特公昭58−22448号公報に記載の化合物がある。代表的なものとしては、トリフェニルメチルホスホニウムヨーダイド、トリフェニルプロピルホスホニウムヨーダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムヨーダイド、トリブチルメチルホスホニウムヨーダイド等が挙げられる。このような4級ホスホニウムヨーダイド触媒は、エチレンオキシドに対して0.001〜0.05倍モルとなるように反応系に供給するのが好ましい。なお、4級ホスホニウムブロマイド触媒を用いる場合、上記4級ホスホニウムヨーダイド触媒に対応するブロマイド触媒を用いることができ、その好適な使用量は、4級ホスホニウムヨーダイド触媒と同等である。
【0023】
本発明においては、反応系内に助触媒としてアルカリ金属の炭酸塩を共存させても良く、これによりエチレングリコールの生成効率を高めることができる。アルカリ金属の炭酸塩を反応系内に共存させるには、ナトリウム又はカリウム、好ましくはカリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩を添加すれば良く、いずれのアルカリ金属化合物を添加しても、これらは反応系内では炭酸塩として存在する。この場合、アルカリ金属の炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムは、4級ホスホニウムヨーダイドに対してモル比で0.01〜1となるように存在させることが好ましい。
【0024】
エチレンオキシドに対する水の量は化学量論量まで減らすことが可能であり、また、反応形式によってはそれ以下でも良いが、通常エチレンオキシドに対して1.0〜10.0倍モル程度用いることが好ましい。また、二酸化炭素はエチレンオキシドに対し当モル以下の量で十分な効果が得られ、通常の条件下においてはエチレンオキシド1モル当り0.1〜5.0モル程度用いられる。しかし、これらの量比については必ずしも厳密な制限はない。
【0025】
反応温度はアルキレンオキシドの種類、触媒の種類、反応当初の反応液組成等により異なるが、一般に50〜180℃の範囲で行われる。圧力は二酸化炭素の量、反応温度等によって異なり、また反応の進行に伴い、その経過に応じても変化するが、一般に0.5〜5.0MPaの範囲で行われる。
【0026】
反応器の形式は気液反応を円滑に行うことができるものであれば良く、特に限定はない。また反応器の数、滞留時間も所望の転化率が達成できるように選択される。なお、エチレングリコールを製造する場合は、必要に応じて反応器を付加して反応液中のエチレンカーボネートを加水分解する。
【0027】
反応器からでた反応液は、水及びエチレングリコールの大部分を蒸留により分離する。残った触媒を含む液(触媒液)は、触媒を再度反応に使用するために反応器に循環される。
【0028】
本発明に係る、4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドとを含有する処理対象混合物に含まれる4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの比率、組成はエチレングリコール製造プロセス内の塩素とヨウ素の比率、ブリードする場所、以下に示すその後の処理(前回収操作の有無等)により変化する。処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの存在比、濃度は特に限定がないが、ヨーダイドに対するクロライドの比率及びクロライドの濃度が高い方が回収操作の効率の面からは望ましく、好ましくは処理対象混合物中の4級ホスホニウムヨーダイドに対する4級ホスホニウムクロライドが1/20モル倍以上、さらに好ましくは1/10以上であり、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドの濃度が0.1重量%以上、特に1重量%以上であることが好ましい。
【0029】
本発明を適用する具体例としては、処理対象混合物を得る方法とヨウ化物の添加方法別に以下の各方法が挙げられる。これらを順に説明するが、本発明は何ら以下の方法に限定されるものではない。
【0030】
[適用例I]
触媒を含有する液としてエチレングリコール製造プロセス内の液を一部抜き出す。プロセス内に存在する触媒を含有する液であれば、特に抜き出し場所は限定されるものではない。前述の如く、エチレンオキシドからのエチレングリコールの生成反応は、エチレンオキシドと二酸化炭素との反応でエチレンカーボネートが生成し、エチレンカーボネートが加水分解されることによりエチレングリコールが生成する2段反応である。従って、この製造プロセスからの液の抜き出しは、この反応を直列に2段に設けた反応器で行う場合、いずれの反応器から抜き出しても良く、両方の反応器から抜き出しても良い。反応器の出口で液を抜き出す場合、後工程での4級ホスホニウムヨーダイドの回収率を高くするには、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライド、ヨーダイドの濃度が高い方が好ましいので、この場合は溶媒である水、エチレングリコール又はエチレンカーボネートを留去して濃縮することが好ましい。留去する方法は蒸留塔でも可能であるが、単純な蒸発缶を使用しても良い。好ましくは、処理対象混合物中の4級ホスホニウムヨーダイドの濃度が溶媒の1/20モル倍以上になるまで濃縮する。4級ホスホニウム塩の耐熱性を考慮すると、この蒸留による濃縮操作は減圧で行うのが好ましい。好適には200℃以下の温度で実施するのが好ましい。
【0031】
反応液の蒸留濃縮により得られた高濃度触媒液には、4級ホスホニウムヨーダイドとエチレングリコール製造プロセス内で4級ホスホニウムヨーダイドが塩素化されて生成した4級ホスホニウムクロライドが含有される。なお、触媒液としては、反応液をプロセス外に取り出して濃縮したものであっても良く、プロセス内の、水、エチレングリコール、エチレンカーボネートと触媒液とを分離する蒸留塔から抜き出した触媒液であっても良い。
【0032】
得られた高濃度触媒液には、溶媒としてエチレングリコール及び/又はエチレンカーボネートが存在するため、この触媒液に対して本発明の無機塩化物析出操作を施すことも可能であるが、ヨウ化物を添加した際に生成する無機塩化物の溶解能力が低い他の有機溶媒を添加することも好適である。また、高濃度触媒液中のエチレングリコール及び/又はエチレンカーボネートを更に除去して実質的に無溶媒の固体とし、これを他の有機溶媒で再溶解させると、無機塩化物の溶解度がより一層低下して析出効率が向上し、望ましい。
【0033】
ここで使用される有機溶媒としては、無機塩化物の溶解力が低い一方で4級ホスホニウム塩を溶解させる能力が高いものが望ましい。好適な溶媒としては、脂肪族ハロゲン化炭化水素、ケトン、アルコール、ニトリル、アミド、尿素化合物、炭酸エステルが挙げられる。
【0034】
このうち、アルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,1−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、2−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1,6−ヘキサンジオール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,6−ジクロロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
ニトリルとしては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
【0037】
アミドとしては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0038】
尿素化合物としては、例えば、テトラメチルウレア、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン等が挙げられる。
【0039】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。
【0040】
炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる
有機溶媒は、これらの1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0041】
有機溶媒の添加量は、特に制限はないが、通常、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの合計の1〜10重量倍とされる。
【0042】
4級ホスホニウムヨーダイドを回収するために用いる無機ヨウ化物としては、4級ホスホニウムクロライドとイオン交換できるような、水中で解離するイオン性化合物であればいずれも適用可能であるが、溶解度、毒性、価格の面から、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0043】
ヨウ化物の添加量としては、処理対象混合物中に存在する4級ホスホニウムクロライドの等量以上であれば良い。好適な範囲としては、処理対象混合物中に存在する4級ホスホニウムクロライド1モルに対して1〜10倍モルであれば良い。ヨウ化物を必要以上に添加することは回収率を高めはするが、過剰のヨウ化物はロスとなるので望ましくない。
【0044】
ヨウ化物の添加は固体又は有機溶媒溶液の形態で行うことができるが、工業的に実施する場合、液体である方が取り扱い上便利であるので、有機溶媒溶液として添加するのが好ましい。例えばヨウ化ナトリウムはアセトンによく溶解するので好適な組み合わせである。またヨウ化カリウムはエチレングリコールに溶解するのでこのような組み合わせも好適である。ただし、この場合、有機溶媒へのヨウ化物の完全溶解は必ずしも必要ではない。ヨウ化物の飽和溶解量が微量であっても、処理対象混合物中に添加された後、ヨウ化物は4級ホスホニウムクロライドと反応して消費されるのでその分を補充するようにさらに溶解が進行する。結果的に溶解度を上回る量が反応して無機塩化物を生成させることができる。ヨウ化物と有機溶媒の選択で必要なのは、ヨウ化物と、このヨウ化物と4級ホスホニウムクロライドとの反応で生成する無機塩化物とで、有機溶媒に対するモル溶解度に差があることである。このような組み合わせとして、ヨウ化カリウムに対するブタノール、エチレングリコールが例として挙げられる。
【0045】
処理対象混合物にヨウ化物を添加する装置はどのような形態の容器でも実施可能であるが、イオン交換反応を促進するために攪拌装置を有したベッセルで行うのが好ましい。
【0046】
この操作により処理対象混合物中に存在する4級ホスホニウムクロライドの4級ホスホニウムは4級ホスホニウムヨーダイドとなり、一方、塩素は無機塩化物として析出する。この析出温度は特に限定されるものではなく、無機塩化物の溶解温度依存性、使用する有機溶媒の沸点、粘度、4級ホスホニウム塩の溶解度を鑑みて決定される。通常は0〜50℃の常温で行われる。ヨウ化物と4級ホスホニウムクロライドとの反応は、溶媒の粘度が低ければ迅速に進行するが、高粘度溶媒であったり、ヨウ化物の溶解度が低い場合は、混合時間を長くすることが望ましい。好適には1分〜3時間程度で反応は完了する。この操作により有機溶媒中の4級ホスホニウムクロライドの4級ホスホニウムは90%以上の転化率でヨーダイドに変換されると共に、塩素が無機塩化物として沈殿する。
【0047】
析出した無機塩化物は、これを濾別して除去する。濾過の方法は特に制限はなく、通常のフィルターによる濾過のほか、遠心分離などが適用可能である。
【0048】
無機塩化物を濾過分離した後の濾液には触媒である4級ホスホニウムヨーダイドが溶解しているため、この濾液から有機溶媒を蒸発除去することにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び過剰量添加した場合はヨウ化物が固体として回収される。有機溶媒の除去は通常の蒸発器で実施可能である。この有機溶媒の蒸発除去は、前述の如く、回収された4級ホスホニウムヨーダイドの耐熱性を考慮して、必要に応じて減圧することにより200℃以下の温度で実施することが望ましい。
【0049】
このようにして回収した4級ホスホニウムヨーダイドの純度は、過剰量添加したヨウ化物と残存する溶媒を除くと、90%以上のものであるので、そのまま或いはエチレングリコール等の適当な溶媒に溶解させて反応工程へ循環使用することができるが、好ましくは回収した固体は、反応工程に循環使用する前に、水で洗浄して残存するヨウ化物及び溶媒を除去する。この水洗には、回収固体に洗浄水を添加してスラリー状とし、これを濾過又は遠心分離すれば良い。この場合、洗浄水への溶解ロスを考慮して、添加する洗浄水量は回収固体に対して2重量倍以下とすることが好ましい。
【0050】
上記方法における無機塩化物の除去方法の別法として、無機塩化物を濾別せずに溶媒の除去を同様の操作により行い、その後上記水洗を行うことにより無機化合物を水に溶解させて除去することも可能である。
【0051】
本発明の別の実施態様として、以下の方法がある。
【0052】
[適用例II]
適用例Iにおいて、4級ホスホニウムヨーダイドの濃度がエチレングリコールに対して1/20モル倍以上であるか、或いはこのような濃度に濃縮した高濃度触媒液に対して、水を添加混合した後冷却して4級ホスホニウムヨーダイドを選択的に析出させてこれを回収する前回収を行う。ここで、水の添加量は任意であるが、少なすぎる場合は十分な析出効果を得ることができないため、少なくとも溶存する4級ホスホニウムヨーダイドの0.1重量倍以上を添加する必要がある。水の添加量の上限については特に制限はないが、処理容量を過度に大きくしないために溶存する4級ホスホニウムヨーダイドに対して5重量倍以下程度とするのが好ましい。
【0053】
この析出操作時の温度は低温の方が、水中への4級ホスホニウムヨーダイドの残存量が少なく好ましい。好適には0〜30℃で行われる。
【0054】
析出した4級ホスホニウムヨーダイドを回収した残りの水溶液には、析出しなかった4級ホスホニウムヨーダイドと4級ホスホニウムクロライドが存在するため、この4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドを含有する水溶液の水の好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上を蒸発させて除去したものを処理対象混合物として、無機塩化物析出操作することができる。即ち、この処理対象混合物を、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの合計に対して1〜10重量倍の有機溶媒で溶解させ、これに対してヨウ化物の添加を行う。
【0055】
添加するヨウ化物種、添加濃度及び添加方法、析出物の濾別方法、その後の処理等は前述の適用例Iの方法と同様である。
【0056】
なお、この方法において、高濃度触媒液に4級ホスホニウムヨーダイドを析出させるために添加する水の代わりにヨウ化物水溶液を添加することも可能であり、この場合には、後段のヨウ化物の添加は不要となる。
【0057】
いずれの場合も、無機塩化物の析出物を固液分離した後の有機溶媒溶液から、有機溶媒を除去することにより4級ホスホニウムヨーダイドを更に回収することができ、先に回収した4級ホスホニウムヨーダイドと共に再使用することができる。
【0058】
さらなる別の実施態様として、以下の方法がある。
【0059】
[適用例III]
適用例Iにおいて、4級ホスホニウムヨーダイドの濃度がエチレングリコールに対して1/20倍以上であるか、或いはこのような濃度に濃縮した高濃度触媒液を更に濃縮し、溶媒の90%以上を留去する。この場合、残留物(蒸留残渣)は冷却と共に固化する。この固化した残留物を適量の水で洗浄することにより、残留物中の4級ホスホニウムクロライドを水側へ溶出させて除去することができる。この場合も洗浄する水の温度は低温の方が洗浄水中への4級ホスホニウムヨーダイドの溶解量が少なく好ましい。好適には0〜30℃で行われる。
【0060】
洗浄に用いる水の量は、特に制限はないが、洗浄効率と排水への4級ホスホニウムヨーダイドのロスを勘案すると、洗浄される固体残留物の0.5〜10重量倍であることが望ましい。洗浄に用いる水は純水である必要はなく、プロセス内のリサイクル水が使用可能である。また、何度も循環使用することも可能である。特に、4級ホスホニウムヨーダイドを含む水溶液であれば、4級ホスホニウムヨーダイドの水中への溶解ロスを低減できるので好ましい。
【0061】
洗浄後の水には溶出した4級ホスホニウムクロライドとわずかに溶解した4級ホスホニウムヨーダイドが存在するため、この4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドを含有する水溶液の水の好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上を蒸発させて除去したものを処理対象混合物として、無機塩化物析出操作することができる。即ち、この処理対象混合物を、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの合計に対して1〜10重量倍の有機溶媒で溶解させ、これに対してヨウ化物の添加を行う。
【0062】
添加するヨウ化物種、添加濃度及び添加方法、析出物の濾別方法、その後の処理等は前述の適用例Iの方法と同様である。
【0063】
なお、この方法においても、洗浄水の代わりにヨウ化物水溶液を使用することも可能であり、この場合、後段のヨウ化物の添加は不要となる。
【0064】
いずれの場合も、無機塩化物の析出物を固液分離した後の有機溶媒溶液から、有機溶媒を除去することにより4級ホスホニウムヨーダイドを更に回収することができ、先に回収した4級ホスホニウムヨーダイドと共に再使用することができる。
【0065】
また、上記4級ホスホニウムヨーダイドの濃度がエチレングリコールに対して1/20倍以上であるか、そのように濃縮した高濃度触媒液を更に濃縮し、溶媒の90%以上を留去した後に90℃以上の温度を保つことで液体状態を保つことができるので、ここに水を添加した後に0〜40℃に冷却して4級ホスホニウムヨーダイドを析出させることも可能である。この場合も析出した4級ホスホニウムヨーダイドを分離回収した残りの水溶液には、析出しなかった4級ホスホニウムヨーダイドとクロライドが存在するため、この4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドを含有する水溶液の水の好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上を蒸発させて除去したものを処理対象混合物として、無機塩化物析出操作することができる。即ち、この処理対象混合物を、処理対象混合物中の4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドの合計に対して1〜10重量倍の有機溶媒で溶解させ、これに対してヨウ化物の添加を行う。
【0066】
添加するヨウ化物種、添加濃度及び添加方法、析出物の濾別方法、その後の処理等は前述の適用例Iの方法と同様である。
【0067】
この方法においても、上記水の代わりにヨウ化物水溶液を使用することも可能であり、この場合、後段のヨウ化物の添加は不要となる。
【0068】
全ての実施態様を通して、ヨウ化物を添加し無機塩化物を析出させて、これを固液分離した後の分離液になお残存する4級ホスホニウムクロライドとヨーダイドに関して本発明を適用することも可能である。即ち、所望の回収率に達するまで繰り返しヨウ化物の添加、無機塩化物の除去を実施することも可能である。
【0069】
本発明の適用には、連続稼動している反応プロセスから、連続的に又は間欠的に反応液及び/又は触媒液の少なくとも一部を抜き出して、必要に応じて濃縮及び/又は前回収を行った後、4級ホスホニウムクロライドの4級ホスホニウムヨーダイドへの変換及び4級ホスホニウムヨーダイドの回収を行い、回収した4級ホスホニウムヨーダイド触媒を反応器に循環させれば良い。この場合、4級ホスホニウムヨーダイド触媒の回収のために抜き出す反応液及び/又は触媒液の量には特に制限はないが、触媒の回収コストを過度に高めない範囲で4級ホスホニウムクロライドを除去して反応効率を高く維持するために、反応器内のヨーダイドに対する4級ホスホニウムクロライドの重量比が0.01〜1.0の範囲になったところで反応液及び/又は触媒液を連続的又は間欠的に抜き出して処理することが好ましい。抜き出し量としては、特に制限はないが、それぞれ系内の反応液量又は触媒液量に対して0.1〜100重量%程度が好ましい。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0071】
実施例1
二酸化炭素2.0MPaで加圧した滞留時間1Hr、100℃の第一反応器に、触媒としてトリブチルメチルホスホニウムヨーダイド5重量部/Hr、炭酸カリウム0.8重量部/Hr、原料エチレンオキシド水溶液(60重量%)78重量部/Hrを供給することによりエチレンカーボネート及びエチレングリコール(EG)を含む反応液を得た。これを全量滞留時間2Hr、圧力0.5MPa、温度150℃の第2反応器に移液して含有されるエチレンカーボネートを加水分解して、触媒を含有するエチレングリコールの水溶液66.5重量部/Hrを得た。
【0072】
得られた反応液を塔底140℃、80mmHgの減圧蒸留塔により蒸留して塔底から脱水された液を得、これをさらに140℃、60mmHgで操作される減圧蒸発器によりエチレングリコールの大部分を蒸発させ、蒸発器底部より触媒が濃縮された触媒液を13重量部/Hrを回収した。回収した触媒液は触媒として第1反応器へ循環使用した。1年の連続運転後の触媒液の組成は下記の通りであった。
[触媒液組成]
エチレングリコール :約59重量%
ヨウ素塩(4級ホスホニウムヨーダイド) :約33重量%
塩素塩 (4級ホスホニウムクロライド) :約 6重量%
炭酸カリウム :約 2重量%
【0073】
上記組成に到達後、この触媒液の一部を0.02重量部/Hrで抜き出す運転に変更した。抜き出した触媒液(以下、「抜き出し液A」と称す。)をフラッシュベッセルに供給し、3torr(400Pa)、128℃の条件で、液中に含まれるエチレングリコールの約93重量%を除去した。エチレングリコール除去後の液(以下、「濃縮物A」と称す。)を95℃に保ったまま、濃縮物Aと等重量の水を添加し撹拌混合しながら20℃まで冷却した後、1時間静置した。
【0074】
析出物(以下、「析出物A」と称す。)を吸引濾過器により固液分離し、得られた濾液(以下、「濾液A」と称す。)を分析したところ、この濾液Aの組成は下記の通りであり、上記抜き出し液A中の塩素塩のうちの約80%を含むものであった。
[濾液A組成]
水 :約78重量%
エチレングリコール :約7重量%
ヨウ素塩(4級ホウスホニウムヨーダイド) :約1重量%
塩素塩 (4級ホスホニウムクロライド) :約10重量%
炭酸カリウム :4重量%
【0075】
一方、前記析出物Aを分析したところ、この析出物Aの組成は下記の通りであり、これは、上記抜き出し液A中のヨウ素塩のうちの約98%を含むものであった。
[析出物A組成]
水 :約16重量%
エチレングリコール :約1重量%
ヨウ素塩(4級ホウスホニウムヨーダイド) :約80重量%
塩素塩 (4級ホスホニウムクロライド) :約2重量%
炭酸カリウム :1重量%以下
【0076】
濾液Aに含まれる水及びエチレングリコールを140℃で操作される蒸発器を用いて除去した。水とエチレングリコールの除去に従い圧力を低下させ、最終的に5torr(660Pa)で30分保持した。この操作で蒸留残渣に含まれる水とエチレングリコールの量は10重量%以下となった。このようにして水とエチレングリコールを除去した後の残留物に等重量のアセトンを添加した。次に得られた液を攪拌機付き貯槽に移送して、含有される塩素塩に対し1.2モル倍のヨウ化ナトリウムを固体のまま添加して室温で1時間攪拌をした。
【0077】
この無機塩化物析出操作で析出した析出物を吸引濾過器で固液分離して分析したところ、この析出物中には、濾液A中の塩素塩の98%以上に相当する塩化ナトリウムが存在した。一方、この固液分離で得られた濾液(以下、「濾液B」と称す。)を5torr,110℃で操作される蒸発器に導入して、濾液B中のアセトンとエチレングリコールの実質的に全量を蒸発させ、得られた固体を等重量の水と混合して洗浄した後、吸引濾過器で固液分離した。得られた固体(以下、「固体B」と称す。)を分析したところ、下記組成であった。
[固体B組成]
水 :約17重量%
エチレングリコール: :1重量%以下
ヨウ素塩(4級ホウスホニウムヨーダイド) :約81重量%
塩素塩 (4級ホスホニウムクロライド) :1重量%以下
ヨウ化ナトリウム :約1重量%
【0078】
この固体Bと前記析出物Aとを合わせたものは、抜き出し液A中のヨウ素塩及び塩素塩の約98%を4級ホスホニウムヨーダイドとして含むものであり、これらを等重量のエチレングリコールに溶解させて、反応器へと循環使用した。
【0079】
このようにして触媒の回収及び循環を行いながら運転を継続したところ、エチレングリコールの製造工程において反応効率の低下の問題なく、効率的な運転を継続することができた。
【0080】
実施例2
実施例1において、エチレングリコールを分離除去後の濃縮物Aに、有機溶媒として等重量のノルマルブタノールを添加して溶解させた。この溶液を攪拌機付きの貯槽に移送し、液中に含まれる塩素塩と等モル量の固体状のヨウ化カリウムを添加して常温で2時間混合した。
【0081】
析出物を吸引濾過器により固液分離して分析したところ、この析出物中には、濃縮物Aに含まれる塩素塩の95%以上に相当する塩化カリウムが存在した。
【0082】
一方、濾液を5torr,110℃で操作される蒸発器に導入し、濾液中のブタノールとエチレングリコールの実質的に全量を蒸発させ、得られた固体を等重量の水と混合して洗浄した後、吸引濾過器で固液分離した。得られた固体を分析したところ、下記組成であり、抜き出し液A中のヨウ素塩及び塩素塩の約95%を4級ホスホニウムヨーダイドとして含むものであった。
[固体組成]
水 :約18重量%
エチレングリコール: :2重量%
ヨウ素塩(4級ホウスホニウムヨーダイド) :約80重量%
塩素塩 (4級ホスホニウムクロライド) :1重量%以下
ヨウ化カリウム :約1重量%以下
【0083】
この固体を等重量のエチレングリコールに溶解させて、反応器へと循環使用した。
【0084】
このようにして触媒の回収及び循環を行いながら運転を継続したところ、エチレングリコールの製造工程において反応効率の低下の問題なく、効率的な運転を継続することができた。
【0085】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイド触媒を用いて二酸化炭素の存在下にエチレンオキシド等のアルキレンオキシドと水又は二酸化炭素とを反応させてエチレングリコール等のアルキレングリコール又はエチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートを製造する方法において、反応系で生成した4級ホスホニウムクロライドを効率的に4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドに変換して回収し、これを反応系に循環使用することができる。このため、触媒活性の低い4級ホスホニウムクロライドの系内蓄積を防止すると共に、これを触媒活性の高い4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドに変換して循環使用することにより、系内の触媒活性を高く維持し、アルキレングリコール又はアルキレンカーボネートの生成反応を長期に亘り安定かつ効率的に行うことができる。
Claims (5)
- 4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを触媒として用いて、二酸化炭素の存在下にアルキレンオキシドと水とを反応させてアルキレングリコールを生成させる反応工程を備えるアルキレン誘導体の製造方法において、
該反応工程から得られた、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物に、ヨウ化物及び/又は臭化物を添加して4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として有機溶媒中で析出させることにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを回収することを特徴とするアルキレン誘導体の製造方法。 - 4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを触媒として用いて、アルキレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてアルキレンカーボネートを生成させる反応工程を備えるアルキレン誘導体の製造方法において、
該反応工程から得られた、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物に、ヨウ化物及び/又は臭化物を添加して4級ホスホニウムクロライド由来の塩素を無機塩化物として有機溶媒中で析出させることにより、4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを回収することを特徴とするアルキレン誘導体の製造方法。 - 請求項1又は2において、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物が、下記(a)〜(c)のいずれかであることを特徴とするアルキレン誘導体の製造方法。
(a) 前記反応工程から抜き出した反応液に水を添加して前記触媒を析出させ、これを分離した後の水溶液を脱水して得られる液又は固体
(b) 前記反応工程から抜き出した反応液から水及び/又は目的生成物のアルキレン誘導体の少なくとも一部を蒸留除去した後の残留物に、水を添加して前記触媒を固体として析出させ、これを分離した後の水溶液を脱水して得られる液又は固体
(c) (a)又は(b)で、脱水して得られた液又は固体を、有機溶媒に溶解して得られる液 - 請求項1又は2において、4級ホスホニウムクロライドと4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドとを含有する混合物が、下記(d),(e)のいずれかであることを特徴とするアルキレン誘導体の製造方法。
(d) 前記反応工程から抜き出した反応液を有機溶媒で希釈した液
(e) 前記反応工程から抜き出した該反応液から水及び/又は目的生成物のアルキレン誘導体の少なくとも一部を蒸留除去した後の残留物、或いは該残留物を有機溶媒に溶解して得られる液 - 請求項1ないし4のいずれか1項において、回収した4級ホスホニウムヨーダイド及び/又はブロマイドを前記反応工程に循環することを特徴とするアルキレン誘導体の製造方法。
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