JP4273221B2 - アクティブ磁気シールド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体磁気計測、精密フォトリソグラフィ、磁気非破壊検査、古地磁気分析などに利用されるアクティブ磁気シールドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体磁気に関連する分野において特に重要な脳磁界の計測では、環境磁界などの外乱磁界を一万分の一程度まで減少する磁気シールドが必要とされている。これまで、パーマロイ(登録商標)などの強磁性体やアルミニウムなどの良導体のみで外乱磁界を一万分の一程度まで減少しているのは、ドイツ国の物理工学研究所(Berlin MSR)のみであると考えられるが、このためには、パーマロイ(登録商標)で構成された壁を6重にするとともに、25トンの材料(パーマロイ(登録商標)、銅、アルミニウム等)を必要とする。
【0003】
一般的に普及している磁気シールドの場合、パーマロイ(登録商標)から構成された壁を2〜3重にするとともに、磁気シールドの総重量も数トンとなるが、重要な生体磁気の存在する低周波数帯におけるシールド機能は、必要とされるものに比べて1〜2桁不足する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
シールド機能を向上するために、磁気シールドの外側にアクティブ磁気シールドを設ける技術が提案されている。アクティブ磁気シールドは、磁気シールドに近接して配置されたペアコイルによって、外乱磁界と逆位相の磁界を発生し、これらの磁界を相殺するものである。しかしながら、コイルに近接して存在する磁性金属のために位相の乱れが生じ、その結果、2Hz以上の周波数帯ではほとんど効果が生じない。
【0005】
また、ヘルムホルツコイルなどの立体的なコイルのみを用いたアクティブ磁気シールドも従来から提案されているが、コイルの占有する体積に比べて、シールド可能な領域が小さいという不都合がある。
【0006】
本発明の目的は、0〜数十Hzの周波数帯、特に2Hz以上の周波数帯においても外乱磁界を比較的広い領域に亘って大幅に減少することができるアクティブ磁気シールドを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によるアクティブ磁気シールドは、
マトリックス状に配置された複数の磁気ダイポールを具え、
これら磁気ダイポールの各々が、
入射された磁界を計測する磁気センサと、
その磁気センサが位置する中心軸を有し、かつ、ダイポール磁界を発生する第1の円形コイルと、
前記磁気センサが位置する中心軸を有し、前記第1の円形コイルの半径に比べて小さい半径を有し、かつ、前記磁界センサへの負帰還磁界を発生する第2の円形コイルとを有し、
前記磁気センサによって計測された磁界に応じて、前記磁気ダイポールの前記第1及び第2の円形コイルに流れる電流を制御する制御回路を更に具えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、制御回路が、磁気センサによって計測された磁界に応じて、磁気ダイポールの第1及び第2の円形コイルに流れる電流を制御する。これによって、第1の円形コイルがダイポール磁界を発生するとともに、第2の円形コイルが磁界センサへの負帰還磁界を発生する。これらの磁界によって、0〜数十Hzの周波数帯における外乱磁界、したがって、2Hz以上の周波数帯における外乱磁界も相殺することができ、その結果、2Hz以上の周波数帯における外乱磁界も大幅に減少する。また、磁気ダイポールがマトリックス状に配置されているので、外乱磁界の大幅な減少を比較的広い領域に亘って行うことができる。なお、制御回路を、単一の磁気ダイポールの第1及び第2の円形コイルに対してそれぞれ設けることができる。また、全ての磁気ダイポールに共通する単一の制御回路によって全ての磁気ダイポールの第1及び第2の円形コイルに流れる磁界を制御することもできる。さらに、制御回路を、所定のグループごと(例えば磁気ダイポールの行ごと)に設けることもできる。
【0009】
0〜数十Hzの周波数帯、特に2Hz以上の周波数帯において外乱磁界を大幅に低減する場合でも、例えば、前記制御回路によって、前記磁気センサの出力が零となるよう前記第1及び第2の円形コイルに流れる電流が制御され、前記第1の円形コイルに流す電流の一部を前記第2の円形コイルに流して実質的な負帰還磁界を発生させ、又は前記磁気センサからの出力と前記負帰還磁界の相当する電圧との差に応じた前記第1の円形コイルに流す電流が決定される。なお、0〜数十Hzの周波数帯、特に2Hz以上の周波数帯においても外乱磁界を比較的広い領域に亘って大幅に減少するためには、磁気センサは、少なくとも所定の平面に対する法線方向の磁界を計測すればよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によるアクティブ磁気シールドの実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明によるアクティブ磁気シールドを示す図であり、図2は、図1の磁気ダイポールを示す図である。このアクティブ磁気シールドは、マトリックス上に配置された複数の磁気ダイポール1から構成されたダイポールアレイ2を具える。
【0011】
磁気ダイポール1の各々は、入射された磁界を計測する磁気センサ11と、ダイポール磁界を発生する巻数Nの円形コイル12と、磁界センサ11へのフィードバック(負帰還)磁界を発生する巻数nの円形コイル13と、磁気センサ11によって計測された磁界に応じて円形コイル12,13に流れる電流を生成する制御回路14とを有する。この場合、磁気センサ11は、円形コイル12,13の中心軸上に配置され、円形コイル12の半径aを円形コイル13の半径bより大きくする。
【0012】
図1において、ダイポールアレイ2は、例えば計測室の壁面に設置され、外乱となる磁界源は計測室の外に存在する。計測室の近傍のエレベータ又は戸外の自動車や配電用電力トランス等が発生する外乱磁界は、少し離れるとダイポール磁界で近似することができる。図1では、このような外乱を磁気ダイポール3として表しており、簡単のために、磁気ダイポール3は、z成分のみを有するとともにz軸上に存在し、Mの大きさを有する。それに対して、外乱を低減すべき空間は、図1の右側に存在し、その結果、ダイポールアレイ2を具える本発明によるアクティブ磁気シールドは、磁気ダイポール3と、外乱を低減すべき空間との間に存在する。
【0013】
本実施の形態によれば、後に詳細に説明するようにして、磁気センサ11に入射される外乱磁界の強度に応じて、円形コイル12,13に流れる電流を制御回路14によって自動的に決定するので、図1におけるダイポールアレイ2の右側の特定の領域4において、外乱磁界は、磁気ダイポール3付近に比べて十分の一〜数十分の一に低減することができる。なお、平面状のダイポールアレイ2は、容易に計測室などの壁面に設置することができる。また、部屋(例えば、計測室)の中程に設置された磁気シールドルームがある場合、このような磁気シールドルームと、本発明によるアクティブ磁気シールドと組み合わせて用いることによって、全体のシールド機能を十〜数十倍まで高めることができる。
【0014】
次に、ダイポールアレイ2を構成する複数の磁気ダイポール1に対する入射磁界の対応付けについて説明する。円形コイル12,13の中心軸上の所定の位置における磁界は、入射磁界、他の複数の円形コイル12,13によるダイポール磁界及び円形コイル12,13それ自体が発生する磁界の三つからなる。
【0015】
ダイポールアレイ2上の位置(i,j)における入射磁界をHi,jとし、他の複数の円形コイル12,13によるダイポール磁界をpi,jとし、円形コイル12,13それ自体が発生するキャンセル磁界をHcani , jとした場合、磁界pi,jは、ダイポールアレイ2を構成する面に対して垂直になり、磁界Hcani , jに対して平行であるが向きが逆になる。位置(i,j)における電流ループに流れる電流をIi,jとした場合(この際、円形コイル12,13は、電流Ii,jが共通して流れる構造を有する。)、磁界Hcani , jは、次式で与えられる。
磁界Hcani , j=(N/a−n/b)/2・Ii,j …(1)
また、電流Ii,jによる磁気ダイポール1の大きさmi,jは、次式で与えられる。
mi,j=π(Na2−nb2)Ii,j …(2)
ここで、N≫nである場合、a>bの範囲でa又はbを調整することによって、磁気ダイポール1の大きさに影響を及ぼすことなく、負帰還用の円形コイル13から発生する磁界−n/(2b)Ii,jが、円形コイル12によってその中心で発生する磁界N/(2a)Ii,jの一部を相殺し、それを数分の一から十分の一程度に低減することができる。すなわち、Na2≫nb2で(1−na/Nb)を0.1〜0.5程度に設定することができる。これによって、円形コイル13は、磁気ダイポール1の大きさを変えることなく、磁気センサ11に入射される磁界を大きく変化することができる。
【0016】
ここで、磁界pi,jの表現を具体的に考えるために、図3に示すように、ダイポールアレイ2が3×3の行列の磁気ダイポール1から構成された場合について説明する。図3において、磁気ダイポール1が各ブロックの中心にあるものとする。
【0017】
磁界pi,jは、位置(i,j)における磁気ダイポール1以外の8個の磁気ダイポール1が作り出す磁界の重ね合わせである。9個の磁気ダイポール1を、上から下に及び左から右に順番に一列に並べ替え、9次元のベクトルとする。この場合、(m1,1,m2,1,m3,1,m2,1,m2,2,m3,2,m1,3,m2,3,m3,3)となるが、簡単のために、図3の括弧内に示すように番号の付け替えを行い、ベクトル{mi}=(m1,m2,m3,m4,m5,m6,m7,m8,m9)とし、磁界pi,jに対しても同様に9次元ベクトル表示を行うと、p1は、円形コイル12,13の位置関係のみから決定される係数Li,jを用いて次式のように表される。
p1=L1,2m2+L1,3m3+L1,4m4+L1,5m5+L1,6m6+L1,7m7+L1,8m8+L1,9m9 …(3)
【0018】
他の8成分についても同様であるので、ベクトル{mi}及びベクトル{pi}は、Li,jを要素とする行列{Li,j}で関係づけられる。すなわち、
{pi}={Li,j}{mj} …(4)
ここで、行列{Li,j}の主対角成分は零、すなわち、Li,i=0である。磁気ダイポール1のそれぞれを制御する高感度の磁界センサ11(例えば、フラックスゲート磁界センサ)が検知しうる磁界は、上記磁界Hcani,Hi及びpiの和に相当する{Hcani}+{Hi}+{pi}である。なお、上記磁界Hcani,Hiもベクトル形式で表記している。
【0019】
本実施の形態によれば、磁界のキャンセル法として、磁気センサ11の出力が零となるようにし(零位法)、すなわち、iの各々に対して(5)式が成立するように電流{Ii}を制御する。なお、電流Iiもベクトル形式で表記している。したがって、制御回路14を、簡単な負帰還回路として実現することができる。Hcani+Hi+pi=0 …(5)
{Hcani}は、式(1),(2)からベクトル{mi}によって次の式で表される。
{Hcani}=(N/a−n/b)/2・1/π(Na2−nb2){mi} …(6)
N≫n,a>bの条件下で(6)式を変形すると、
{Hcani}=(N/a−n/b)/{2π(Na2−nb2)}{mi}
≒1/(2πa3){1−na/(nb)}{mi} …(7)
(4),(5),(7)式から、ベクトル{mi}を求めるための以下の連立方程式が得られる。
[1/(2πa3){1−na/(nb)}E−{Li,j}]{mj}
=−{Hi} …(8)
ここで、Eは単位行列である。さらに、
k={1−na/(Nb)} …(9)
とすると、ベクトル{mi}は、以下のように設定される。これによって、磁気ダイポール1の大きさは、入射磁界に比例関係であることがわかる。
{mi}=−{k/(2πa3)E−{Li,j}}{Hj} …(10)
行列{mi}が決定されると、電流{Ii}は次式のようになる。
{Ii}={mi}/π(Na2−nb2) …(11)
【0020】
次に、本発明の効果を具体的に説明する。N=40,n=2,a=30cmとした円形コイル12,13を有する5行5列の磁気ダイポール1を1mの間隔で25個配置したダイポールアレイ2を構成し、ダイポールアレイ2が形成する面(以下、「ダイポールアレイ面」と称する。)から3m離間した位置でダイポールアレイ面に垂直となるように、磁気ダイポール3を配置する。
【0021】
部屋の壁面に対応するダイポールアレイ面から約2〜5m離間した位置で磁界の低減効果が最大となるように、k=0.11と最適化した。これは、kを変数として低減比を数値計算によって求め、相対比較することによって求まる。また、最適化されたkから負帰還用の円形コイル13の半径bは、(9)式からb=1.7cmとなる。低減結果を図4に示す。ここで、低減比の評価面は、図1に示すようにダイポールアレイ面2に平行な領域4となり、その位置は、図4の横軸の値で示すとおりである。また、評価領域を、4m×4mの正方形領域とする。
【0022】
図4からわかるように、ダイポールアレイ面に垂直な成分(z成分)は、ダイポールアレイ面から約3mの位置で1/5の低減効果が得られ、約2〜5mの位置で1/4程度の低減効果が得られる。また、ダイポールアレイ面に平行な成分(x成分)は、3〜7mの位置で約1/4以下となり、4〜6mの位置で1/5以下となる。なお、ダイポールアレイ2からの距離が遠くなるに従って、外乱となる磁界の低減効果(低減比が1になると磁界低減効果は0)も減少するが、外乱磁界そのものも距離の3乗で減衰するので、実質的にはほとんど影響がない。
【0023】
次に、磁気ダイポール3がダイポールアレイ面に対して0.5mまで近接したときの低減効果を、図5に示す。この場合、a=20cmとした円形コイル12,13を有する5行5列の磁気ダイポール1を0.5mの間隔で25個配置したダイポールアレイ2を構成している。最適なkの値は0.3となる。このときの円形コイル13の半径bは、N=40,n=2,a=20cmに対して1.4cmとなる。図5に示すように、外乱となる磁気ダイポール3がダイポールアレイ面に近接した場合、1/10以上の外乱磁界低減効果を示す。
【0024】
次に、エレベータや乗用車の移動による外乱を考えて必要とされる電流を見積もり、キャンセル電流が通常の電子回路で供給できるレベルであることを示す。文献(笹田、古賀、原田、電気学会マグネティックス研究会資料科、MAG−91−246(1991)“九大箱崎キャンパスにおける低周波外乱磁界の測定とその発生源”)によれば、測定値から7m離れた位置のエレベータからの磁界が12nTであると記載されているので、これを基準とし、簡単のために磁気ダイポール3をμ0/73=12×10−9から見積もれば、m=3.28Am2となる。ここで、μ0は、真空の透磁率であり、4π×10−7である。
【0025】
この程度のダイポール磁界が部屋の壁面から3m外の位置にある場合、図4に従ってk=0.11,N=40,n=2,a=30cm,b=1.7cmの値を設定し、(11)式に従ってキャンセル電流を計算すると、−0.0061A〜−0.0014Aの範囲となる。ここで、最も絶対値の大きいキャンセル電流は、ダイポールアレイ2の中心に位置する円形コイルの電流であり、ダイポールアレイ2の中心から離れるに従ってキャンセル電流の絶対値が小さくなる。
【0026】
また、磁気ダイポール3が部屋の壁面から0.5m外の位置にある場合、図5に従ってk=0.3,N=40,n=2,a=20cm,b=1.4cmの値を設定し、同様にキャンセル電流を計算すると、−0.159A〜−0.0021Aの範囲となる。上記いずれの場合も、通常の電子回路で容易に供給できる電流範囲内にある。
【0027】
kについては、本発明を適用する個別の場合について磁気ダイポール3の大体の位置の特定を行うことによって決定することができ、例えば、建物内のエレベータが外乱磁界の発生源として問題になる場合には、距離を特定できるため、数値計算によって適切なkを設定することができる。
【0028】
本実施の形態では、ダイポール磁界の発生に影響を及ぼさない程度の半径が比較的小さく、かつ、巻数の少ない円形コイル13によって磁界センサ11に負帰還磁界を付与し、磁気センサ11への入射磁界が零となるバランス点を実質的にシフトすることによって、最適なkを実現している。
【0029】
したがって、本実施の形態によれば、部屋から比較的に近接した位置(0.5m〜7m)にある磁界源からの外乱となる0〜数十Hzの周波数帯の磁界を十分の一から数十分の一に低減することができる。キャンセル磁界は、外乱磁界に応じて自律的に生成されるので、時間的に変動する外乱磁界や、場所を移動する外乱磁界の発生源にも対応することができる。また、本発明によるアクティブ磁気シールドが平面的であるので、計測室や精密な電子ビーム露光室の壁面に設置することができ、その結果、精密計測や電子ビームを利用するマイクロ加工に大きな成果が期待できる。
【0030】
なお、磁気ダイポール1の各々が発生する磁界は、他の磁気ダイポール1の磁気センサ11に干渉するおそれがあるが、そのような干渉を考慮した上で全てのキャンセル電流を一度に決定することもできる。
【0031】
本発明を要約すると、次の通りである。低周波環境磁界は、周波数に反比例して振幅が増大する性質を有する。その磁界源は、多種多様であり、例えば、地磁気中で磁気ダイポール的な振る舞いをする車両、エレベータ等の移動体の発するものや、電車の走行に伴う架線電流の変動に起因するものがある。
【0032】
生体磁気計測では、0.1Hz〜30Hzの領域に重要な生体信号が存在するが、アクティブ磁気シールドを用いることなく、すなわち、磁気シールドのみを用いて(0.1Hz〜30Hzの領域を含む)低周波環境磁界を十分にシールドすることは、容易でない。例えば、広く用いられているパーマロイ磁気シールドでは、数Hz以下の領域において、シールド機能は、数Hzを超える領域に比べて1/100程度まで低減する。
【0033】
シールド機能を向上するために、アクティブ磁気シールドを設ける技術が提案されており、例えば、磁気シールドの側面又は近傍に配置された3個の対をなすループ状のキャンセルコイルを用いて、外乱磁界を能動的に相殺することを試みている。
【0034】
アクティブ磁気シールドを設ける技術の課題は、数Hz以上の帯域において十分な外乱磁界の相殺が行われないことであり、3重のパーマロイの壁を有する磁気シールドに対して適用した場合、2Hz以上の帯域において効果がほとんどない。この原因は、キャンセルコイルに流れる電流によって磁気シールド側面に渦電流が誘起されることにあり、その結果、発生する磁界の位相を、外乱磁界に対して180°異なるように維持できなくなる。2Hzより低い帯域では、渦電流は、無視しうる程度に小さいが、2Hz以上の帯域では、外乱磁界を十分に相殺できなくなる(D.Platzdk et al. “Active shielding to reduce low frequency disturbance in direct current near biomagnetic measurement”, Review of Scientific Instrument, vol. 70, No. 5, 1999)。
【0035】
キャンセル磁界は、良導体である磁気シールドの非常に近くに発生する。本発明によれば、磁気シールドの設置された領域外から侵入する外乱磁界をできるだけ離れた位置、例えば、磁気シールドの設置された部屋の壁部の位置でキャンセル磁界を能動的に発生し、これによって、磁気シールドの設置された位置で外乱磁界を効率よく低減することができる。
【0036】
キャンセル磁界は、平面的に配置された複数の円形コイルのループ電流によって生成され、そのループ電流は、外乱磁界の大きさ及び符号によって能動的に制御される。また、ループ電流は、磁気ダイポールと等価であるので、能動的な磁気ダイポールアレイによってキャンセル磁界が生成される。
【0037】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
例えば、ダイポールアレイ2を構成する磁気ダイポール1の個数、間隔等を所望に応じて任意に選択することができる。また、円形コイル12,13に流れる電流を磁気ダイポール1ごとに独立して決定した場合、すなわち、1個の磁気ダイポール1について1個の制御回路14を用いる場合について説明したが、全ての磁気ダイポール1すなわちダイポールアレイ2について一度に決定することもでき、この場合、全ての磁気ダイポールについて複数点で計測された磁界の分布形状に応じて集中制御し、各円形コイル12,13に流す電流を設定する。さらに、制御回路14を、所定のグループごと(例えば磁気ダイポールの行ごと)に設けることもできる。上記実施の形態では、N≫nの場合について説明したが、N≧nとN<nのいずれでもよい。
【0038】
また、円形コイル12に流す電流の一部を円形コイル13に流すことによって、実質的な負帰還磁界を発生することもできる。この場合、kの設定は、円形コイル12,13に流れる電流比によって決定され、kの設定が更に容易になる。だらに、磁気センサ11からの出力を負帰還磁界に相当する電圧と電子回路で比較し、その差に応じて円形コイル12に流れる電流を決定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるアクティブ磁気シールドを示す図である。
【図2】 図1の磁気ダイポールを示す図である。
【図3】 ダイポールアレイが3×3の行列の磁気ダイポールから構成された場合を説明するための図である。
【図4】 本発明によるアクティブ磁気シールドの外乱磁気低減効果を示す図である。
【図5】 本発明によるアクティブ磁気シールドの外乱磁気低減効果を示す図である。
【符号の説明】
1,3 磁気ダイポール
2 ダイポールアレイ
4 領域
11 磁気センサ
12,13 円形コイル
14 制御回路
Claims (5)
- マトリックス状に配置された複数の磁気ダイポールを具え、
これら磁気ダイポールの各々が、
入射された磁界を計測する磁気センサと、
その磁気センサが位置する中心軸を有し、かつ、ダイポール磁界を発生する第1の円形コイルと、
前記磁気センサが位置する中心軸を有し、前記第1の円形コイルの半径に比べて小さい半径を有し、かつ、前記磁界センサへの負帰還磁界を発生する第2の円形コイルとを有し、
前記磁気センサによって計測された磁界に応じて、前記磁気ダイポールの前記第1及び第2の円形コイルに流れる電流を制御する制御回路を更に具えることを特徴とするアクティブ磁気シールド。 - 前記制御回路によって、前記磁気センサの出力が零となるよう前記第1及び第2の円形コイルに流れる電流が制御されることを特徴とする請求項1記載のアクティブ磁気シールド。
- 前記制御回路によって、前記第1の円形コイルに流す電流の一部を前記第2の円形コイルに流して実質的な負帰還磁界を発生させることを特徴とする請求項1記載のアクティブ磁気シールド。
- 前記制御回路によって、前記磁気センサからの出力と前記負帰還磁界の相当する電圧との差に応じた前記第1の円形コイルに流す電流が決定されることを特徴とする請求項1記載のアクティブ磁気シールド。
- 前記磁気センサが、少なくとも所定の平面に対する法線方向の磁界を計測することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のアクティブ磁気シールド。
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