JP3759934B2 - 磁気センサの配置方法及びアクティブ磁気シールド装置 - Google Patents

磁気センサの配置方法及びアクティブ磁気シールド装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気センサの配置方法及びアクティブ磁気シールド装置に係り、特に、外部から到来して磁性材料から成る磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消す磁界をキャンセリング・コイルによって発生させるために、磁界を検出する磁気センサを適正に配置するための磁気センサの配置方法、及び該磁気センサの配置方法が適用されたアクティブ磁気シールド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電界又は磁界を印加することで偏向させた電子ビームをガラスマスクや半導体ウェハ等の描画対象物に照射することで、描画対象物上に所望の集積回路のパターンを描画可能な電子線描画装置が知られている。この電子線描画装置は、例えば電車・自動車・変電所・送電線等の磁気発生源から装置設置箇所へ到来する外部磁界(外部磁場)の影響で電子ビームが偏向されて描画が乱れることを回避するために、電子ビームを発生・偏向させて描画対象物に照射する部分がパーマロイ等の磁性材料から成るケーシング(磁気遮蔽体)で覆われた構造とされている。
【0003】
集積回路の集積度向上のために、電子線描画装置が描画対象物上に描画可能な線の最小幅は年々微細化の傾向にある。そして、描画線幅の微細化に伴い、微少な外部磁界による電子線描画装置の描画の若干の乱れも無視できなくなってきており、磁気遮蔽体による外部磁界遮蔽効果だけでは不十分となってきている。外部磁界の影響を排除するために、パーマロイ等の磁性材料で囲まれた磁気シールド室内に電子線描画装置を設置することも行われているが、磁気シールド室は、重量が嵩むために設置場所が制限されると共に、高コストであり、室内空間が閉鎖されているために入室者に圧迫感を与えるという欠点がある。
【0004】
このため、電子線描画装置の設置箇所に到来した外部磁界を検出し、電子線描画装置の近傍に配置したコイルによって外部磁界を打ち消す磁界を発生させることで、外部磁界が電子線描画装置に及ぼす影響を排除するように構成されたアクティブ磁気シールド装置が提案されている(例えば特許文献1〜特許文献3等を参照)。アクティブ磁気シールド装置は、外部磁界を打ち消す磁界を発生させるためのキャンセリング・コイル、外部磁界(磁束密度)を検出する磁気センサ、及び、該磁気センサによる外部磁界の検出信号に基づき外部磁界を打ち消す磁界をキャンセリング・コイルで発生させるフィードバック回路の組が、X,Y,Zの各方向から到来する外部磁界に対応してX,Y,Zの各方向について各々設けられて構成されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−97690号公報
【特許文献2】
特開2001−332888号公報
【特許文献3】
特開2002−94280号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アクティブ磁気シールド装置により、電子線描画装置の設置箇所に到来する外部磁界が電子線描画装置に及ぼす影響を排除するためには、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を検出し、該磁界がゼロ又は非常に小さくなるようにキャンセリング・コイルで発生される磁界を制御する必要がある。しかし、磁気遮蔽体の内部空間には電子線描画装置の構成部品が高密度に配置され磁気センサの配置スペースを確保することが困難なため、磁気センサは磁気遮蔽体の外部に配置せざるを得ない。
【0007】
しかしながら、電子線描画装置の磁気遮蔽体はパーマロイ等の高透磁率の磁性材料で構成されているため、電子線描画装置の設置箇所に到来した外部磁界によって生ずる磁気遮蔽体の外部における磁界(磁束密度)の分布は、磁気遮蔽体によって乱されて歪められると共に、キャンセリング・コイルで発生される磁界によって生ずる磁気遮蔽体の外部における磁界(磁束密度)の分布についても、磁気遮蔽体によって乱されて歪められる。このため、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界(磁束密度)を、磁気遮蔽体の外部に配置した磁気センサによって精度良く検出することは困難であり、磁気センサによる検出結果に基づき、磁気遮蔽体の内部空間に侵入する磁界が精度良く打ち消されるようにキャンセリング・コイルで発生される磁界を制御することも困難であるのが実情であった。
【0008】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なように磁気センサを配置できる磁気センサの配置方法を得ることが第1の目的である。
【0009】
また本発明は、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なアクティブ磁気シールド装置を得ることが第2の目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
磁性材料から成る磁気遮蔽体の配置位置へ外部から磁界が到来した場合に、磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の強さに対する磁気遮蔽体の周囲の特定部位における磁界の強さの比Geは、到来磁界の強さが変化しても通常の範囲では殆ど変化しない。また、磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルにより磁界を発生させた場合に、磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の強さに対する前記特定部位における磁界の強さの比Gcについても、キャンセリング・コイルによって発生される磁界の強さが変化しても通常の範囲では殆ど変化しない。
【0011】
一方、磁気遮蔽体の近傍に配置した磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルで、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を発生させる場合には、磁気遮蔽体の内部空間及び外部空間には、到来磁界とキャンセリング・コイルによって発生された磁界とを重畳した磁界が存在することになり、磁気センサも上記の重畳磁界を検出することになるが、磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づき、例えばGc/Geが1又は1に近い値となる位置に磁気センサを配置し、磁気センサによって検出される磁界の強さがゼロ又はゼロに近い値となるようにキャンセリング・コイルで発生される磁界を制御すれば、磁気遮蔽体の内部空間においても、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の強さと、キャンセリング・コイルで発生されて磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の強さの比率が、磁気センサの配置位置と同様に1又は1に近い値となるので、磁気センサの配置位置での外部磁界による磁界の強さや、磁気遮蔽体の内部空間で外部磁界による磁界の強さが未知であっても、磁気遮蔽体の内部空間における磁界の強さは理論的にゼロ又はゼロに近い値になる。
【0012】
本願発明者等は上記事実に想到し、磁気遮蔽体の周囲(及び内部空間)におけるGeとGcの比の分布を以下のようにして解析(演算)した。すなわち、電子線描画装置のケーシングは、一般に略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された形状とされているため、磁気遮蔽体として、図1に示すように電子線描画装置のケーシング(磁気遮蔽体)の外形形状を模した磁気遮蔽体モデル10を設定した。なお、磁気遮蔽体モデル10は、基部筐体に対応する部分(基部筐体モデル10A)の底面のサイズを1500mm×1500mm、高さを432mmとし、上部筐体に対応する部分(上部筐体モデル10B)の底面のサイズを200mm×200mm、高さを800mmとした。
【0013】
また、外部磁界を模したX方向の磁界を加えるための励磁コイル12A,12B,12Cを磁気遮蔽体モデル10の周囲に配置すると共に、励磁コイル12A,12B,12Cによって加えられるX方向の磁界を打ち消す磁界を発生させるためのキャンセリング・コイル14A,14Bを取り付けた枠体16を、磁気遮蔽体モデル10の周囲に配置した解析モデルを設定した。なお、励磁コイル12A〜12Cは一辺が2800mmの矩形状とし、X方向に沿って1400mmの間隔を空けた配置とした。また、キャンセリング・コイル14A,14Bは一辺が1500mmの矩形状とし、X方向に沿って1500mmの間隔を空けた配置とした。
【0014】
また、解析領域は対称性を考慮して全領域(基部筐体モデル10Aの底面から600mm上方の解析平面上の領域)の1/4とし(図2も参照)、解析方法として磁気ベクトルポテンシャル法及び一次六面体辺要素を用いた三次元有限要素法を適用して渦電流を考慮した。そして、外側の励磁コイル12A,12Cに5AT、中心の励磁コイル12Bに3ATの電流(周波数=0.1,10,50Hz)を流し、外部磁界を模したX方向に略一様な磁界を磁気遮蔽体モデル10に加えたときの、磁気遮蔽体モデル10の外側の磁界Bxeo及び上部筐体モデル10Bの内部の磁界Bxeiの分布を求め、上部筐体モデル10Bの内部における磁界Bxeiの平均値と、磁気遮蔽体モデル10の外側の各位置における磁界Bxeoの比Ge(Bxeo/Bxei)の分布を求めた。
【0015】
また、同様に、キャンセリング・コイル14A,14Bに1.29ATの電流(周波数=0.1,10,50Hz)を流してX方向の磁界を磁気遮蔽体モデル10に加えたときの、磁気遮蔽体モデル10の外側の磁界Bxco及び上部筐体モデル10Bの内部の磁界Bxciの分布を求め、上部筐体モデル10Bの内部における磁界Bxciの平均値と、磁気遮蔽体モデル10の外側の各位置における磁界Bxcoの比Gc(Bxco/Bxci)の分布を求めた。なお、解析ではパーマロイの増分透磁率μs=10000、導電率σ=1.626×106〔S/m〕(四端子法による測定値)とした。
【0016】
その結果、周波数=0.1,10,50HzにおけるGeの分布として図3(B)〜図5(B)に示す分布が得られ、周波数=0.1,10,50HzにおけるGcの分布として図3(A)〜図5(A)に示す分布が得られた。そして、図3〜図5に示すGe及びGcの分布に基づき、GeとGcの比としてGc/Geを演算した結果、周波数=0.1,10,50Hzにおいて、Gc/Geが各々図6(A)〜(C)に示すように分布していることが明らかになった。
【0017】
上記に基づき、請求項1記載の発明に係る磁気センサの配置方法は、磁性材料から成る磁気遮蔽体の近傍に配置された磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、前記磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルで、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を発生させるにあたり、外部から磁界が到来した場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求め、前記磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて前記磁気センサの配置位置を決定し、決定した配置位置に前記磁気センサを配置することを特徴としている。
【0018】
なお、本発明における磁気遮蔽体としては、例えば電子線描画装置のケーシングを適用することができるが、外部磁界が及ぼす影響を排除する必要がある装置としては、電子線描画装置の他に生体磁気の計測を行う装置等が挙げられる。この種の装置のうち、ケーシングが磁性材料から成る装置であれば、該ケーシングを本発明における磁気遮蔽体とすることで、本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0019】
請求項1記載の発明では、外部から磁界が到来した場合の磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求めている。なお、磁気遮蔽体の周囲の各部位におけるGe及びGc(Ge及びGcの分布)は、例えば本願発明者等が行った解析と同様に、有限要素法等を用いて演算により求めることができるが、これに代えて、各部位に磁気センサを配置して実測するようにしてもよい。これにより、例として図3〜図5に示すようなGe及びGcの分布を得ることができる。
【0020】
そして請求項1記載の発明では、磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて磁気センサの配置位置を決定し、決定した配置位置に磁気センサを配置する。上記のように、磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布(一例としてはGc/Geの分布)を求めることで、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消す磁界をキャンセリング・コイルで発生させるための磁気センサの適切な配置位置を容易に把握することができるので、請求項1記載の発明のように、GeとGcの比の分布に基づいて磁気センサの配置位置を決定することで、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なように磁気センサを配置することができる。
【0021】
なお、請求項1記載の発明において、磁気センサの配置位置は、具体的には、例えば請求項2に記載したように、Gc/Geの値が0.9〜1.1となる範囲内の位置とすることができる。これにより、磁気センサによって検出された磁界の強さがゼロとなるように、キャンセリング・コイルで発生される磁界の強さを制御することで、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消す磁界をキャンセリング・コイルで発生させることができる。
【0022】
また、図3〜図5からも明らかなように、Geの分布及びGcの分布は周波数によって相違し、これに伴いGeとGcの比の分布も周波数によって相違するので(一例として図6を参照)、外部から到来する磁界(打ち消し対象の磁界)の周波数帯域が比較的広い等の場合には、Ge及びGcの分布を複数の周波数について各々求めることで、GeとGcの比の分布を複数の周波数について各々求め、各周波数におけるGeとGcの比の分布を考慮して磁気センサの配置位置を決定すればよい(例えば各周波数においてGc/Geの値が各々0.9〜1.1の範囲内となっている位置にする等)。
【0023】
また、第1の目的を達成するために、請求項3記載の発明に係る磁気センサの配置方法は、磁性材料から成り略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された外形形状の磁気遮蔽体の近傍に配置された磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、前記磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルで、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を発生させるにあたり、前記磁気センサを、前記キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ前記上部筐体と接するように前記上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、前記到来方向に直交しかつ前記上部筐体と所定距離隔てて前記上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に配置することを特徴としている。
【0024】
一方、本願発明者等は前述の解析によって得られたGc/Geの分布に対して検討を加えた結果、磁気遮蔽体の外形形状が、略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された形状であれば、例として図7に示すように、キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ上部筐体と接するように上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、到来方向に直交しかつ上部筐体と所定距離隔てて上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域(図7にハッチングで示す領域及びその上方の空間)内はGc/Geの値が1又は1に近い値となっており、この所定領域内に磁気センサを配置し、磁気センサによって検出された磁界の強さがゼロとなるようにキャンセリング・コイルで発生される磁界の強さを制御すれば、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消す磁界をキャンセリング・コイルで発生できる、という知見を得た。
【0025】
請求項3記載の発明では、上記の第1の仮想平面、第2の仮想平面及び基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に磁気センサを配置するので、前述した請求項1記載の発明のように、Geの分布及びGcの分布を求め、更にGeとGcの比の分布を求めたりすることなく、磁気センサの配置位置を決定することができ、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なように磁気センサを配置することを、より簡単に実現することができる。
【0026】
第2の目的を達成するために、請求項4記載の発明に係るアクティブ磁気シールド装置は、磁性材料から成る磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルと、外部から磁界が到来した場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、前記キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求めることで得られる、前記磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて配置位置が決定された磁気センサと、前記磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を前記キャンセリング・コイルによって発生させる制御手段と、を含んで構成されている。
【0027】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明と同様にして決定された配置位置に磁気センサが配置されており、制御手段は、磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界をキャンセリング・コイルによって発生させるので、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことができる。
【0028】
なお、請求項4記載の発明において、磁気センサは、例えば請求項5に記載したように、磁気遮蔽体の周囲のうちGc/Geの値が0.9〜1.1となる範囲内に配置することができる。これにより、制御手段は、磁気センサによって検出された磁界の強さがゼロとなるように、キャンセリング・コイルで発生される磁界の強さを制御することで、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消す磁界をキャンセリング・コイルで発生させることができる。
【0029】
第2の目的を達成するために、請求項6記載の発明に係るアクティブ磁気シールド装置は、磁性材料から成り略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された外形形状の磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルと、前記キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ前記上部筐体と接するように前記上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、前記到来方向に直交しかつ前記上部筐体と所定距離隔てて前記上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に配置された磁気センサと、前記磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を前記キャンセリング・コイルによって発生させる制御手段と、を含んで構成されている。
【0030】
請求項6記載の発明では、請求項3記載の発明と同様の所定領域内に磁気センサが配置されており、制御手段は、磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界をキャンセリング・コイルによって発生させるので、請求項4記載の発明と同様に、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことができる。
【0031】
なお、請求項4又は請求項6記載の発明において、キャンセリング・コイル、磁気センサ及び制御手段は、例えば請求項7に記載したように、打ち消し対象の磁界の複数種の到来方向(例えば互いに直交するX,Y,Zの各方向)に対応して複数組設けることができる。また、磁気遮蔽体が略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された形状である場合、本願発明者等は、到来方向がZ方向(鉛直方向)の磁界の打ち消しについては、基部筐体の上面上の何れの位置に磁気センサを配置したとしても、磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の打ち消し性能が大きく相違しないことを実験により確認しており、打ち消し対象の磁界の到来方向がZ方向とされたキャンセリング・コイル、磁気センサ及び制御手段の組については、必ずしも本発明で規定する配置位置に配置しなくてもよい。
【0032】
また、請求項4又は請求項6記載の発明において、制御手段は、例えば請求項8に記載したように、磁気センサが磁気を検出することで磁気センサから出力される信号に基づき、磁気センサの配置位置における磁界を打ち消す磁界がキャンセリング・コイルで発生されるように生成した電流をキャンセリング・コイルに流すことで、磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界をキャンセリング・コイルによって発生させることが好ましい。このように、磁気センサから出力される信号を利用して、キャンセリング・コイルに流す電流を生成する(例えば磁気センサで検出された磁界に比例した電圧の信号が磁気センサから出力される場合には、信号を増幅した後に電圧−電流変換することで、キャンセリング・コイルに流す電流を生成する)ことで、制御手段の構成を簡単にすることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図8には、本発明に係るアクティブ磁気シールド装置26と、該アクティブ磁気シールド装置26による磁気遮蔽対象の装置としての電子線描画装置20が各々示されている。
【0034】
電子線描画装置20は、略箱状とされた基部筐体22Aの上面(XY平面)の略中央に、軸線が鉛直方向(Z方向)に沿うように配置された円筒状の上部筐体22Bが連結された外形形状のケーシング22を備えている。ケーシング22は強磁性材料(例えばパーマロイ)から成り、請求項1等に記載の磁気遮蔽体に対応している。ケーシング22のうち基部筐体22Aの内部空間にはガラスマスクや半導体ウェハ等の試料(描画対象物)を移動させる試料ステージが収納されている。また、上部筐体22Bの内部空間には、上端部に電子ビームを射出する電子銃が配置されており、電子銃の下方(試料ステージの間)には加速部、電磁レンズ及び偏向器が各々配置されている(何れも図示省略)。
【0035】
電子銃から射出された電子ビームは、加速部によって加速されると共に電磁レンズによってビームウェスト径が絞られ、試料上に描画すべき集積回路のパターンに応じて偏向器によりX方向及びY方向に偏向された後に、試料ステージに配置された試料に照射される。これにより、試料(描画対象物)に所望の集積回路のパターンが描画される。なお、試料に照射される電子ビームは、外部から到来するX方向及びY方向の磁界によって曲げられる可能性があり、この場合、描画の乱れが生ずるという不都合が生ずる。
【0036】
一方、アクティブ磁気シールド装置26は、電子線描画装置20を取り囲むように配置された枠体28を備えている。枠体28は、X,Y,Zの何れかの方向に沿って配置された各方向毎に4本の長尺体が、全体として略直方体状を形成するように各々の端部で相互に連結されて成り、電子線描画装置20は枠体28の内部空間に収納されている。
【0037】
また、枠体28には外部磁界をキャンセルするための6個のキャンセリング・コイル30が内蔵されている。キャンセリング・コイル30は、コイルの軸線が各々X方向に一致されX方向に沿って間隔を空けて配置された一対のキャンセリング・コイル30Xと、コイルの軸線が各々Y方向に一致されY方向に沿って間隔を空けて配置された一対のキャンセリング・コイル30Yと、コイルの軸線が各々Z方向に一致されZ方向に沿って間隔を空けて配置された一対のキャンセリング・コイル30Zから構成されている。
【0038】
一対のキャンセリング・コイル30Xは直列に接続されており、キャンセリング・コイル30Xに接続された制御ユニット34の電圧電流変換器38Xから電流が供給されることで、外部から到来した磁界のX方向成分を打ち消すためのX方向の磁界を発生する。また、一対のキャンセリング・コイル30Yも直列に接続され、キャンセリング・コイル30Yに接続された制御ユニット34の電圧電流変換器38Yから電流が供給されることで、外部から到来した磁界のY方向成分を打ち消すためのY方向の磁界を発生する。更に、一対のキャンセリング・コイル30Zも直列に接続され、キャンセリング・コイル30Zに接続された制御ユニット34の電圧電流変換器38Zから電流が供給されることで、外部から到来した磁界のZ方向成分を打ち消すためのZ方向の磁界を発生する。
【0039】
また、アクティブ磁気シールド装置26は、電子線描画装置20の基部筐体22Aの上面上に各々設置された磁気センサ32X,32Y,32Zを備えている。磁気センサ32Xは制御ユニット34の増幅器36X、電圧電流変換器38Xを介してキャンセリング・コイル30Xに接続されており、X方向(磁気センサ32Xに接続されたキャンセリング・コイル30Xによる打ち消し対象の磁界の方向)に直交しかつ上部筐体22Bと接するように上部筐体22BのX方向上流側に配置された第1の仮想平面と、X方向に直交しかつ上部筐体22Bと所定距離隔てて上部筐体22BのX方向下流側に配置された第2の仮想平面に挟まれた基部筐体22Aの上面上の所定範囲内に、X方向の磁界を検出する向きに配置されている。磁気センサ32Xを上記のように配置することは請求項3記載の発明に対応している。
【0040】
また、磁気センサ32Yは制御ユニット34の増幅器36Y、電圧電流変換器38Yを介してキャンセリング・コイル30Yに接続されており、Y方向(磁気センサ32Yに接続されたキャンセリング・コイル30Yによる打ち消し対象の磁界の方向)に直交しかつ上部筐体22Bと接するように上部筐体22BのY方向上流側に配置された第1の仮想平面と、Y方向に直交しかつ上部筐体22Bと所定距離隔てて上部筐体22BのY方向下流側に配置された第2の仮想平面に挟まれた基部筐体22Aの上面上の所定範囲内に、Y方向の磁界を検出する向きに配置されている。磁気センサ32Yを上記のように配置することも請求項3記載の発明に対応している。
【0041】
また、本実施形態に係るアクティブ磁気シールド装置26は請求項6(詳しくは請求項7)に記載のアクティブ磁気シールド装置に対応しており、制御ユニット34は請求項6(詳しくは請求項8)に記載の制御手段に対応している。
【0042】
更に、磁気センサ32Zは制御ユニット34の増幅器36Z、電圧電流変換器38Zを介してキャンセリング・コイル30Zに接続されており、基部筐体22Aの上面上の任意の位置に、Z方向の磁界を検出する向きに配置されている。
【0043】
以下、本実施形態の作用を説明する。例えば電車・自動車・変電所・送電線等の磁気発生源で発生された磁界(外部磁界)が電子線描画装置20の設置位置に到来すると、到来した外部磁界のX方向成分が磁気センサ32Xによって検出され、到来した外部磁界のY方向成分が磁気センサ32Yによって検出され、到来した外部磁界のZ方向成分が磁気センサ32Zによって検出されることで、個々の磁気センサ32X,32Y,32Zからは、個々の磁気センサ32X,32Y,32Zで検出された磁界の特定方向成分の強さに比例した電圧の交流信号が出力される。
【0044】
磁気センサ32Xから出力された信号は、増幅器36Xで増幅された後に電圧電流変換器38Xに入力され、磁気センサ32Xで検出された外部磁界のX方向成分の強さに比例した大きさの交流電流に変換されてキャンセリング・コイル30Xに供給される。これにより、キャンセリング・コイル30Xからは、磁気センサ32Xで検出された外部磁界のX方向成分と逆向きのX方向の磁界(外部磁界のX方向成分を打ち消す磁界)が発生される。
【0045】
キャンセリング・コイル30XでX方向の磁界が発生されると、磁気センサ32Xでは、外部磁界のX方向成分にキャンセリング・コイル30Xで発生されたX方向の磁界が重畳された磁界が検出されることになるが、磁気センサ32X、増幅器36X、電圧電流変換器38X及びキャンセリング・コイル30Xにより、磁気センサ32Xによって検出される磁界がゼロとなるように(磁気センサ32Xによって検出される外部磁界のX方向成分がキャンセリング・コイル30Xによって発生される逆向きの磁界によって打ち消されるように)、キャンセリング・コイル30Xによって発生されるX方向の磁界のフィードバック制御が行われるので、磁気センサ32Xの配置位置におけるX方向の磁界はゼロ又はゼロに近い大きさに抑制されることになる。
【0046】
また、磁気センサ32XはX方向の磁界についてGc/Geが1又は1に近い値となる所定領域内に配置されており、磁気センサ32Xの配置位置において、キャンセリング・コイル30Xによって発生されるX方向の磁界を外部磁界のX方向成分と逆向きで略等しくすることで、ケーシング22の内部空間においても、外部磁界のX方向成分のうちケーシング22の内部空間へ侵入する磁界と、キャンセリング・コイル30Xで発生されてケーシング22の内部空間へ侵入する磁界が逆向きで略等しくなるので、ケーシング22の内部空間においても、X方向の磁界をゼロ又はゼロに近い大きさに抑制することができる。
【0047】
また同様に、磁気センサ32Yから出力された信号は、増幅器36Yで増幅された後に電圧電流変換器38Yに入力され、磁気センサ32Yで検出された外部磁界のY方向成分の強さに比例した大きさの交流電流に変換されてキャンセリング・コイル30Yに供給されるので、キャンセリング・コイル30Yからは、磁気センサ32Yで検出された外部磁界のY方向成分と逆向きのY方向の磁界(外部磁界のY方向成分を打ち消す磁界)が発生される。
【0048】
また、磁気センサ32Y、増幅器36Y、電圧電流変換器38Y及びキャンセリング・コイル30Yにより、磁気センサ32Yによって検出される磁界がゼロとなるように(磁気センサ32Yによって検出される外部磁界のY方向成分がキャンセリング・コイル30Yによって発生される逆向きの磁界によって打ち消されるように)、キャンセリング・コイル30Yによって発生されるY方向の磁界のフィードバック制御が行われるので、磁気センサ32Yの配置位置におけるY方向の磁界はゼロ又はゼロに近い大きさに抑制されることになる。
【0049】
そして磁気センサ32YもY方向の磁界についてGc/Geが1又は1に近い値となる所定領域内に配置されており、磁気センサ32Yの配置位置において、キャンセリング・コイル30Yによって発生されるY方向の磁界を外部磁界のY方向成分と逆向きで略等しくすることで、ケーシング22の内部空間においても、外部磁界のY方向成分のうちケーシング22の内部空間へ侵入する磁界と、キャンセリング・コイル30Yで発生されてケーシング22の内部空間へ侵入する磁界が逆向きで略等しくなるので、ケーシング22の内部空間においても、Y方向の磁界をゼロ又はゼロに近い大きさに抑制することができる。
【0050】
更に、磁気センサ32Zから出力された信号は、増幅器36Zで増幅された後に電圧電流変換器38Zに入力され、磁気センサ32Zで検出された外部磁界のZ方向成分の強さに比例した大きさの交流電流に変換されてキャンセリング・コイル30Zに供給されるので、キャンセリング・コイル30Zからは、磁気センサ32Zで検出された外部磁界のZ方向成分と逆向きのZ方向の磁界(外部磁界のZ方向成分を打ち消す磁界)が発生される。
【0051】
また、磁気センサ32Z、増幅器36Z、電圧電流変換器38Z及びキャンセリング・コイル30Zにより、磁気センサ32Zによって検出される磁界がゼロとなるように(磁気センサ32Zによって検出される外部磁界のZ方向成分がキャンセリング・コイル30Zによって発生される逆向きの磁界によって打ち消されるように)、キャンセリング・コイル30Zによって発生されるZ方向の磁界のフィードバック制御が行われるので、磁気センサ32Zの配置位置におけるZ方向の磁界はゼロ又はゼロに近い大きさに抑制されることになる。
【0052】
本実施形態では、Z方向の磁界を検出する磁気センサ32Zを基部筐体22Aの上面上の任意の位置に配置しており、磁気センサ32Zの配置位置については、Z方向の磁界についてGc/Geが1又は1に近い値となる位置とは限らないが、本願発明者等は、磁気遮蔽体が略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された形状である場合、Z方向(鉛直方向)の磁界の打ち消しについては、基部筐体の上面上の何れの位置に磁気センサを配置したとしても、磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界の打ち消し性能が大きく相違しないことを実験により確認しているので、磁気センサ32Zの配置位置において、外部磁界のZ方向成分とキャンセリング・コイル30Zによって発生されるZ方向の磁界を逆向きで略等しくすることで、ケーシング22の内部空間におけるZ方向の磁界を非常に小さく抑制することができる。
【0053】
なお、上記では本実施形態に係る電子線描画装置20のケーシングの形状が、請求項3に記載した磁気遮蔽体の形状と類似していることから、水平方向の磁界を検出する磁気センサ32X,32Yを、請求項3記載の発明で規定する位置に配置した例を説明したが、これに限定されるものではなく、請求項1に記載したように、Geの分布を求めると共にGcの分布を求め、更に、磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布(例えばGc/Geの分布)を求め、求めたGeとGcの比の分布に基づいて磁気センサ32X,32Yの配置位置を決定するようにしてもよい。この場合、本実施形態に係るアクティブ磁気シールド装置26は請求項4に記載のアクティブ磁気シールド装置に対応することになる。
【0054】
磁気遮蔽対象の装置のケーシングの形状が請求項3に記載した磁気遮蔽体の形状と類似している場合、上記のようにGeとGcの比の分布に基づいて決定した磁気センサ32X,32Yの配置位置は、請求項3記載の発明によって規定される磁気センサ32X,32Yの配置位置と大きくは相違しないが、特に、磁気遮蔽対象の装置のケーシングの形状が請求項3に記載した磁気遮蔽体の形状と類似していない場合には、GeとGcの比の分布に基づいて磁気センサ32X,32Yの配置位置を決定することで、外部から到来してケーシング(磁気遮蔽体)の内部空間へ侵入する磁界をより精度良く打ち消せる位置に磁気センサ32X,32Yを配置することができる。
【0055】
また、上記では水平方向の磁界を検出する磁気センサ32X,32Y(X方向の磁界を検出する磁気センサ32X及びY方向の磁界を検出する磁気センサ32Y)についてのみ、本発明を適用した位置に配置する例を説明したが、これに限定されるものではなく、鉛直方向(Z方向)の磁界を検出する磁気センサ32Zの配置位置についても、例えば請求項1記載の発明を適用し、GeとGcの比の分布(例えばGc/Geの分布)に基づいて決定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記では磁気遮蔽体を備えた装置として電子線描画装置20を例に説明したが、本発明に係るアクティブ磁気シールド装置によって磁気を遮蔽すべき装置は上記に限定されるものではなく、例えば本発明を磁気シールド室と併用することで、より高い磁気遮蔽性能が要求される装置、例えば生体磁気を計測する装置等についての磁気遮蔽に本発明を適用することも可能である。
【0057】
【実施例】
本願発明者等は、Gc/Geが1又は1に近い位置に磁気センサを配置し、キャンセリング・コイルで発生させる磁界を制御することの有効性を、実際の電子線描画装置を用いて検証する実験を行った。
【0058】
この実験では、電子線描画装置としてエリオニクス社製のELS-7700を用いると共に、励磁コイルとして直径1400mm,20turnの円形コイルを用い、この励磁コイルを電子線描画装置の上部筐体の水平方向中心点からY方向に3200mm隔てた位置に配置した。アクティブ磁気シールド装置の磁気センサとしてはフラックスゲート型磁力計(バーリントン社製)を用い、電子線描画装置の上部筐体の水平方向中心点からX方向に65mm、Y方向に140mm隔てた位置(Gc/Ge≒1となる位置)に配置した。また、キャンセリング・コイルは1200mm×1200mm×2000mmの枠体に取り付け、電子線描画装置を取り囲むように配置した。
【0059】
そして、励磁コイルによって電子線描画装置の上部筐体の水平方向中心点に、1HzでB=2×10-6〔T〕、100HzでB=3.5×10-6〔T〕のX方向の磁界を順に印加し、アクティブ磁気シールド装置の作動を停止させている状態及びアクティブ磁気シールド装置を作動させた状態での電子線描画装置による描画結果を走査型電子顕微鏡で観察し、写真として撮影した。上記の実験の結果を図9に示す。
【0060】
図9(A)はアクティブ磁気シールド装置の作動停止状態で1Hzの磁界を印加した場合、図9(C)はアクティブ磁気シールド装置の作動停止状態で100Hzの磁界を印加した場合であるが、何れも描画ライン位置のシフトが明瞭に現れている。これに対し、アクティブ磁気シールド装置の作動状態で1Hzの磁界を印加した場合(図9(B))及びアクティブ磁気シールド装置の作動状態で100Hzの磁界を印加した場合(図9(D))には、描画ライン位置のシフトが明らかに低減されており(例えば100Hzの磁界を印加した場合には描画ライン位置の揺れ幅が1/4に低減されている)、Gc/Geが1又は1に近い位置に磁気センサを配置することの有効性が確認された。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、外部から磁界が到来した場合の磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求め、磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて磁気センサの配置位置を決定するので、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なように磁気センサを配置することができ、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことができる、という優れた効果を有する。
【0062】
また本発明は、略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された外形形状の磁気遮蔽体に対し、キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ上部筐体と接するように上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、前記到来方向に直交しかつ上部筐体と所定距離隔てて上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に磁気センサを配置するので、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことが可能なように磁気センサを配置することができ、外部から到来して磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を精度良く打ち消すことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Gc/Geの分布の解析に用いた解析モデルの(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】 Gc/Geの分布の解析における解析領域を示す斜視図である。
【図3】 周波数0.1HzにおけるGc及びGeの分布の解析結果を示す線図である。
【図4】 周波数10HzにおけるGc及びGeの分布の解析結果を示す線図である。
【図5】 周波数50HzにおけるGc及びGeの分布の解析結果を示す線図である。
【図6】 周波数0.1,10,50HzにおけるGc/Geの分布の解析結果を示す線図である。
【図7】 請求項3記載の発明における磁気センサの配置範囲を示す斜視図である。
【図8】 本実施形態に係る電子線描画装置及びアクティブ磁気シールド装置の概略図である。
【図9】 本願発明者等が実施した実験の結果を示す線図である。
【符号の説明】
10 磁気遮蔽体モデル
12 励磁コイル
14 キャンセリング・コイル
20 電子線描画装置
22 ケーシング
22A 基部筐体
22B 上部筐体
26 アクティブ磁気シールド装置
30 キャンセリング・コイル
32 磁気センサ
34 制御ユニット

Claims (8)

  1. 磁性材料から成る磁気遮蔽体の近傍に配置された磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、前記磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルで、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を発生させるにあたり、
    外部から磁界が到来した場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求め、
    前記磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて前記磁気センサの配置位置を決定し、
    決定した配置位置に前記磁気センサを配置することを特徴とする磁気センサの配置方法。
  2. 前記磁気センサの配置位置を、前記磁気遮蔽体の周囲のうちGc/Geの値が0.9〜1.1となる範囲内の位置とすることを特徴とする請求項1記載の磁気センサの配置方法。
  3. 磁性材料から成り略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された外形形状の磁気遮蔽体の近傍に配置された磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、前記磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルで、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を発生させるにあたり、
    前記磁気センサを、前記キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ前記上部筐体と接するように前記上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、前記到来方向に直交しかつ前記上部筐体と所定距離隔てて前記上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に配置することを特徴とする磁気センサの配置方法。
  4. 磁性材料から成る磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルと、
    外部から磁界が到来した場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Geを求めると共に、前記キャンセリング・コイルで磁界が発生された場合の前記磁気遮蔽体の内部空間での磁界の強さに対する前記磁気遮蔽体の周囲の各部位における磁界の強さの比Gcを求めることで得られる、前記磁気遮蔽体の周囲におけるGeとGcの比の分布に基づいて配置位置が決定された磁気センサと、
    前記磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を前記キャンセリング・コイルによって発生させる制御手段と、
    を含むアクティブ磁気シールド装置。
  5. 前記磁気センサは、前記磁気遮蔽体の周囲のうちGc/Geの値が0.9〜1.1となる範囲内に配置されていることを特徴とする請求項4記載のアクティブ磁気シールド装置。
  6. 磁性材料から成り略箱状の基部筐体の上面に筒状の上部筐体が連結された外形形状の磁気遮蔽体の近傍に配置されたキャンセリング・コイルと、
    前記キャンセリング・コイルによる打ち消し対象の磁界の到来方向に直交しかつ前記上部筐体と接するように前記上部筐体の前記到来方向上流側に配置された第1の仮想平面と、前記到来方向に直交しかつ前記上部筐体と所定距離隔てて前記上部筐体の前記到来方向下流側に配置された第2の仮想平面と、基部筐体の上面に囲まれた所定領域内に配置された磁気センサと、
    前記磁気センサによる磁界の検出結果に基づいて、外部から到来して前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を前記キャンセリング・コイルによって発生させる制御手段と、
    を含むアクティブ磁気シールド装置。
  7. 前記キャンセリング・コイル、前記磁気センサ及び前記制御手段は、打ち消し対象の磁界の複数種の到来方向に対応して複数組設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項6記載のアクティブ磁気シールド装置。
  8. 前記制御手段は、前記磁気センサが磁界を検出することで前記磁気センサから出力される信号に基づき、前記磁気センサの配置位置における磁界を打ち消す磁界がキャンセリング・コイルで発生されるように生成した電流をキャンセリング・コイルに流すことで、前記磁気遮蔽体の内部空間へ侵入する磁界を打ち消すための磁界を前記キャンセリング・コイルによって発生させることを特徴とする請求項4又は請求項6記載のアクティブ磁気シールド装置。
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