JP4272431B2 - 診断試験法 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明はアレルギー、特にニッケルアレルギーの診断方法に関する。また、診断方法を実施するために使用されうるキットにも関係する。
発明の背景
ニッケルアレルギーは接触アレルギーのうち最も一般的なアレルギーの一つである。ヨーロッパでは全女性の約10%がこの種のアレルギーに罹患しているが、男性ではそれほど多くない。深刻な職業疾患であるが、ニッケル含有製品の普及のために一般大衆に重大な問題である。男女間の相違は、女性では宝飾品類がより一般に使用されるということによって一部説明され、かなり頻繁に耳のピアスがその疾患を誘発する現象であるようである。ニッケルアレルギーは通常一生であり、暴露を避ける以外に、現在、効果的な処置は存在しない。
他の多くのアレルギー(例えば動物、花粉、植物などに対する)と違って、接触アレルギーはアレルギー特異的なIgE抗体の増加に通常関係しない。インビトロのアレルギー診断は通常、血清中の特異的IgE抗体の検出に基づいているが、現在、適切なニッケルアレルギーの血清試験が欠落している。最も広く利用されているニッケルアレルギーを証明する方法は、ニッケルを患者の皮膚に取り込む、いわゆるパッチテストを基にしたもので、局部的な炎症の有無に応じて患者がアレルギーであるかアレルギーでないかを診断する。炎症部位の測定サイズはアレルギーの重症度の指標としても役目を果たしうる。パッチテストの主要な難点は(それが個体に引き起こしうる不快を除いて)、 試験の間のニッケルへの暴露自体がその疾患を誘発する、または増大させうるという危険性である。試験はまた、虚偽の陽性応答または虚偽の陰性応答を与えるかもしれない。そして応答能は、一部の薬物およびUV光の他に、個体のホルモン状態によって影響をうけるかもしれない。
ニッケルを用いたインビトロ暴露後の細胞の特異的活性化を測定する試みがなされた。これは刺激を受けた細胞の細胞増殖またはその細胞によって放出されるサイトカインを測定することによって実施される。しかし末梢血中のニッケル特異的細胞が低頻度である場合、細胞増殖はしばしば非常に非感受性で信頼できないことが示されており、ニッケルによって誘導されるサイトカイン産出のELISAによる検出は、最初に応答細胞の集合(population)を増大させるために、通常、細胞の繁殖(propagation)およびインビトロ培養を必要とする。さらに、ニッケル特異的T細胞クローンの解析から示されるように、サイトカインの産出は不均一(heterogenous)であり、いかなるサイトカインも、応答細胞によって常に産出されるということは示されていない。
発明の概要
本発明は、単一細胞レベルでニッケルの暴露によりインターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、および/またはインターロイキン-13(IL-13)を検出することによって、ニッケル特異的T細胞を検出できることを初めて証明した。同様の結果が他の接触アレルゲン(即ち、非ニッケルアレルゲンおよび非金属アレルゲン)を用いても得られた。したがって、本発明は被験体における接触アレルギーを診断するインビトロの方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(i)以下の(a)から(c)を提供する段階、
(a)接触アレルゲン、
(b)被験体由来のT細胞、および
(c) 前記アレルゲンに応答するT細胞から放出されたサイトカインに特異的に結合することができる一次特異的結合作用因子が固定された表面;
(ii)以下の(a)および(b)に適切な条件下で試料を前記アレルゲンに接触させる段階、
(a)インビボで前記アレルゲンに提示されていたT細胞によるサイトカインの放出、および
(b)前記一次特異的結合作用因子へのサイトカインの結合;ならびに
(iii) 前記一次特異的結合作用因子へのサイトカインの結合を検出する段階。
本発明はまた本発明の方法を実施するキットも提供し、このキットは接触アレルゲン、接触アレルゲン応答時にT細胞から放出されるサイトカインと特異的に結合することができる一次特異的結合作用因子、および任意選択で、サイトカインに特異的に結合する作用因子の結合を検出する手段を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、接触アレルゲン感受性T細胞(sensitive T cell)を検出することによって接触アレルギーを診断する、インビトロの方法を提供する。このような細胞は、アレルゲンに応答して1つまたは複数のT細胞から放出される、1つまたは複数のサイトカインを検出できるアッセイ法を用いて検出される。接触アレルゲン感受性T細胞を検出する方法は本質的に以下の段階からなる:
(i)以下(a)から(c)を提供する段階、
(a)接触アレルゲン、
(b)被験体由来のT細胞、および
(c) 前記アレルゲンに応答するT細胞から放出されたサイトカインに特異的に結合することができる一次特異的結合作用因子が固定された表面;
(ii)以下の(a)および(b)に適切な条件下で試料を前記アレルゲンに接触させる段階、
(a)インビボで前記アレルゲンに提示されていたT細胞によるサイトカインの放出、および
(b)前記一次特異的結合作用因子へのサイトカインの結合;ならびに
(iii) 前記一次特異的結合作用因子へのサイトカインの結合を検出する段階。
アレルギー
遅延型過敏反応を誘導する任意のアレルゲンに対するアレルギーを本発明の方法を用いて診断できる。好ましいアレルゲンは非タンパク性、または非ペプチド性のアレルゲンである。本発明の方法によって検出できるアレルギーは、典型的には接触アレルギーである。一つの態様において、接触アレルギーは金属アレルギーである。好ましくは、金属は宝飾品類で広く利用される金属、または洋服の留め具のような皮膚に接触する他の金属品目である。さらに好ましくは、金属はクロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、または亜鉛である。さらに好ましくは、アレルゲンはニッケルである。別の態様において、接触アレルギーは非金属アレルギーである。好ましくは、非金属はヘルスケア製品、接着剤、塗料、ゴム製品、または薬物として通常使用されるものである。さらに好ましくは、非金属はラノリン、メチルクロロイソチアゾリン、メチルイソチアゾリノン(Kathon CG)、ペルーバルサム、エポキシ樹脂、ラテックス、またはネオマイシンである。
被験体
被験体は一般にヒトであるが、家畜でもよい。典型的には、動物は非ヒトほ乳類(たとえばネコ、イヌ、ウサギ、ウシ、またはウマ)である。被験体は接触アレルゲンに露出されてきたことが、一般に知られる。被験体はアレルギーに対して遺伝性素因または後天性素因を有してもよい。
T細胞
一般に、本発明の方法で使用するために提供されるT細胞は、被験体の血液試料中から採取されるが、T細胞を含む他の種類の試料を使用することもできる。試料を直接アッセイ法に加えてもよく、または最初に加工されてもよい。典型的には、加工は、例えば水または緩衝液を用いた試料の希釈を含むことができる。典型的には、試料は1.5倍〜100倍(例えば2倍〜50倍、または5倍〜10倍)に希釈される。
加工は、血液試料構成成分、または他の試料の構成成分の分離を含む。通常、単核細胞(MC)または末梢血単核球(PBMC)の試料が調製される。MCはT細胞および抗原提示細胞(APC)を含む。したがって、本方法において分離されたMCに存在するAPCは、T細胞に対して、接触アレルギーによって修飾されたペプチドを提示できる。別の態様において、T細胞のみ(たとえばCD4 T細胞のみまたはCD8 T細胞のみ)が試料から精製される。PBMC、MCおよびT細胞は試料から当技術分野において既知の技術(たとえばLalvaniら(1997) J. Exp. Medに記載されている技術)を用いて分離される。
好ましくは、アッセイ法で用いられるT細胞は、未加工の試料もしくは希釈された試料の形、または単離されたばかりのT細胞(たとえば、単離されたばかりのMCもしくはPBMCの形)で直接エキソビボで使用される(即ち、本方法で使用される前に培養されない)。典型的には、105〜107個、好ましくは5x105〜5x106個、さらに好ましくは2x105〜2x106個のPBMCが各アッセイ法に加えられる。
APCは天然のAPCまたは人工APCでもよい。APCはT細胞にペプチドを提示できる細胞である。典型的には、それはB細胞、樹状細胞、またはマクロファージである。典型的には、それはT細胞と同じ試料から分離され、かつ典型的にはT細胞と一緒に精製される。したがってAPCはMCまたはPBMC中に存在する。APCは典型的には、単離されたばかりのエキソビボ細胞、または培養細胞である。それは、短期細胞株または不死化細胞株のような細胞株の形態でありうる。APCはその表面上に空の(empty)MHCクラスII分子を発現できる。
サイトカイン
診断されたアレルギーの原因であるアレルゲンに感受性のあるT細胞がアレルゲンに接触すると、そのT細胞は典型的には1つまたは複数のサイトカインを放出する。アレルゲン応答時にT細胞によって放出されるいかなるサイトカインも、本発明の方法で検出できる。好ましくはヘルパー(Th2)T細胞から放出される。さらに好ましくは本発明の方法で検出されるサイトカインはIL-2、IL-4、IL-5、IL-13、およびIFN-γから選択される。本発明の方法は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のサイトカインを、同時にまたは順次に検出できる。異なるサイトカインを検出するよう設計された、2つ以上のアッセイ法のそれぞれは、1つのアレルギーを診断するために実施されてもよい。好ましくは、2つ以上のサイトカインの検出が必要である場合、サイトカインは単一アッセイ法を用いて検出される。
抗体
アレルゲン応答時にT細胞によって分泌される基質に特異的に結合できるいかなる作用因子もT細胞から放出される基質を検出するために用いることができる。作用因子が優先的に、または高い親和性をもってある基質に結合し、それがその基質に対して特異的であるが、他の基質に結合しない、実質的に結合しない、またはほんのわずかな親和性で結合するとき、作用因子はその基質に「特異的に結合する」。基質に特異的に結合できる作用因子は、典型的には、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のような抗体である。モノクローナル抗体は、本発明の方法の使用するのに好ましい。
本発明の方法の使用に適した抗体は、典型的には1つまたは複数のサイトカイン、好ましくは1つのサイトカインに特異的に結合する。好ましくは抗体はIL-2、IL-4、IL-5、IL-13、またはIFN-γに特異的に結合する。本発明の方法は1つまたは複数(例えば2つまたは3つ)の抗体が使用でき、それぞれの抗体は異なる1つのサイトカインに特異的に結合できる。例えばIL-2およびIL-4、IL-2およびIL-5、IL-2およびIL-13、IL-2およびIFN-γ、IL-4およびIL-5、IL-4およびIL-13、IL-4およびIFN-γ、IL-5およびIL-13、IL-5およびIFN-γ、またはIL-13およびIFN-γに対する抗体を本発明の方法で使用できる。サイトカインに対する抗体は市販されている、または標準的な技術を用いて作製できる。Mabthech AB(ストックホルム、スウェーデン)から市販されている抗体は次のモノクローナル抗体を含む:IL-2に対するIL2-IおよびIL2-II、IL-4に対する82.4および12.1、IL-5に対するTRFK5および5A10、IL-13に対するIL13-IおよびIL13-II、ならびにIFN-γに対する1-D1Kおよび7-B6-1。
特異的結合作用因子は固相上に固定される。任意の適当な固相支持体(例えば、ポリビニリデンジフルオライド膜)を使用できる。固定された支持体は、マイクロタイタープレートのような、ウェル付のプレートでもよい。したがって、別個のアッセイ法をプレート上の別個のウェルで実施できる。好ましくは、特異的に結合する作用因子が固定される表面はウェルの底である。抗体は、抗体が支持体に結合するのに適した条件下で支持体と接触させ、かつ洗浄して非結合抗体を除去することによって支持体に結合できる。
アッセイ法に加えるアレルゲンの形態
アレルゲンは任意の適当な形で提供してよい。好ましくは、アレルゲンは、溶液のような液体の形態中に存在する。金属塩を含む任意の適当な溶液が、本発明の方法で使用できる。典型的には、アレルゲンがニッケルである場合、NiCl2またはNiSO4の溶液が使用できる。任意の適当な塩濃度が使用されうる。典型的には、陽イオンの塩の濃度は、1μl〜10mMであり、例えば5μM〜1mM、10μM〜100μM、20μM〜90μM、30μM〜80μM、40μM〜60μM、好ましくは50μM〜100μMである。
適したアッセイ法の型式(format)
T細胞とアレルゲンを、T細胞がアレルゲンによって活性化されるのに適した任意の条件下で接触させることができる。アレルゲンが存在することによってT細胞が刺激され、IL-4、IL-5、および/またはIL-13のようなサイトカインが産出されるとき、T細胞はアレルゲンによって活性化される。その条件は基質が固定された特異的に結合する作用因子と直接相互作用するのにも適している。一般に、T細胞は液体試料中に存在していると考えられ、その液体試料は結合作用因子が固定された表面に接触している。表面に接触した状態で、アレルゲンをT細胞の試料に加えてもよい。あるいは、アレルゲンは、結合作用因子が固定されている表面に接触するような溶液中に存在してもよく、T細胞をそのアレルゲンに加えてもよい。アレルゲンは、特異的結合作用因子が固定された表面のような表面に固定されてもよい。その次にT細胞をアレルゲンおよび特異的結合作用因子に同時に接触させてもよい。
アッセイ法は任意の適当な容量で実施できる。一般に、T細胞試料およびアレルゲン溶液は等しい容量で用いられる。典型的には、T細胞試料の容量範囲は10μl〜1ml、好ましくは50μl〜500μl、さらに好ましくは100μl〜200μlである。
典型的には、T細胞がアレルゲンおよび特異的結合作用因子と一緒にインキュベートされる時間は、4時間〜50時間、例えば48時間、8時間〜45時間、12時間〜36時間、または16時間〜24時間、好ましくは6時間〜16時間である。典型的には、T細胞、アレルゲン、および特異的結合作用因子は一晩インキュベートされる。
T細胞を、アレルゲンおよび特異的結合作用因子と、任意の適当な温度でインキュベートしてもよい。適した温度は、T細胞が由来するヒトまたは動物の正常体温と同じ範囲である。典型的には、インキュベーションは35℃〜39℃の間、好ましくは36℃〜38℃、さらに好ましくは37℃で実施される。
抗体/サイトカイン複合体の検出
固定された特異的結合作用因子とアレルゲン応答時にT細胞から放出されるサイトカインとで形成される複合体を、任意の適当な手段で検出できる。作用因子を結合させると、サイトカインはそれを分泌したT細胞の近くに残ると考えれる。つまり、サイトカイン/作用因子複合体の「スポット」は支持体上に形成され、個々のスポットはサイトカインを分泌しているT細胞を表している。そのスポットの定量し、典型的には、対照と比較することによって、アレルゲンの認識を判定できる。特異的結合作用因子が固定された表面は、通常、洗浄され(例えばPBS中で)、結合しなかったサイトカインが除去される。
典型的には、作用因子/サイトカイン(例えば、抗体/サイトカイン)複合体は、その複合体と結合する二次結合作用因子を用いて検出できる。二次結合作用因子は典型的には、一次特異的結合作用因子と異なる作用因子である。典型的には、二次結合作用因子は、一次作用因子が結合する部位とは異なる部位で、サイトカインに結合する。二次結合作用因子は、サイトカインと固相支持体上に固定された一次結合作用因子とで形成された複合体に結合できる。好ましくは二次結合作用因子は抗体である。さらに好ましくは、二次結合作用因子はサイトカインに特異的に結合する抗体である。サイトカインが一次結合作用因子に結合されるとき、典型的には、二次結合作用因子はサイトカインに結合できる。つまり、一次および二次結合作用因子は通常、サイトカイン分子の異なる部分に結合する。
一般に、二次結合作用因子は直接的にまたは間接的のどちらかで検出できる標識を用いて標識される。直接検出できる標識を含む特異的結合作用因子には、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、またはオレゴングリーンといった蛍光標識が含まれてもよい。二次蛍光標識された作用因子の、固定された一次作用因子/基質複合体への結合は、例えば蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡を用いた、顕微鏡観察によって検出できる。
間接的に検出可能な標識を含む二次結合作用因子は、検出可能な標識によって直接的にまたは間接的に標識された三次作用因子によって検出できる。三次結合作用因子は、典型的には、二次作用因子上の標識に結合する。例えば、二次作用因子は、好ましくはビオチン部分(ストレプトアビジン部分を含む三次抗体、および検出可能な標識として典型的にはアスカリフォスファターゼによって検出される)を含んでもよい。
二次結合作用因子は、従来の低倍率下(例えば立体顕微鏡の10x倍率、20x倍率、または50x倍率)で検出可能な沈殿非蛍光基質(precipitating non-fluorescent substrate)に作用する酵素を含むことができる。好ましくは、沈殿非蛍光基質は、自動ELISpotリーダーを用いて検出される。自動ELISpotリーダーは、典型的には、ビデオカメラと、スポット分析用に適合させた画像分析ソフトウェアを基にしている。
二次特異的結合作用因子は、一次抗体およびT細胞を取得した被験体の両方と異なる種に由来した抗体でもよい。そして、三次結合作用因子は、二次抗体が由来する種由来のタンパク質を特異的に認識する抗体でもよい。
全ての検出段階において、二次作用因子およびその次の作用因子の非特異的結合を最小限にする作用因子を含むことが望ましい。例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはウシ胎児血清(FCS)を、非特異的結合をブロックするために使用できる。
一つの態様において、アレルゲンはNi2+であり、これはアレルギー被験体由来のT細胞を刺激して、インターロイキン-4(IL-4)を産出させる。T細胞から分泌されたIL-4は、固相支持体に固定された一次IL-4抗体に結合する。結合したIL-4は、次に、検出可能な標識によって標識された二次IL-4抗体を用いて検出される。一次および二次IL-4抗体は、IL-4と一次抗体との結合がIL-4と二次抗体との結合を妨げることがないように、IL-4分子の異なった領域に結合する。
アレルゲン応答時にT細胞から放出されるサイトカインは、アレルゲン非存在下でもT細胞から自発的に放出される可能性がある。したがって、1つまたは複数のT細胞がアレルゲン応答時にサイトカインを放出しているかどうか判断するために、1つまたは複数の陰性対照アッセイ法を実施することが必要な場合もある。例えば、そのアッセイ法はアレルゲン非存在下で実施され、アレルゲン非存在下で検出された「スポット」の数を、アレルゲン存在下で検出された「スポット」(陽性T細胞)から差し引くことができる。典型的には、アレルゲン非存在下において、0〜10細胞/2x105細胞が基質を放出すると考えられる。
アレルギー被験体
アレルゲン存在下で検出された陽性T細胞の数が、アレルゲン非存在下で検出された陽性T細胞の数より多い場合、被験体は特異的なアレルゲンに対してアレルギーであると診断されうる。典型的には、アレルゲン存在下では、2x105細胞あたり少なくとも5細胞、好ましくは少なくとも7細胞、少なくとも10細胞、少なくとも15細胞、少なくとも20細胞、少なくとも30細胞、少なくとも40細胞、少なくとも50細胞、または少なくとも100細胞以上が、同じ被験体のアレルゲン非存在下の細胞と比較して、サイトカインを放出すると考えられる。
キット
本発明はまた、アレルゲン、アレルゲン応答時にT細胞から放出されたサイトカインに特異的に結合できる固定された作用因子を含む表面、任意選択で、その作用因子のサイトカインへの結合を検出する手段を含む、方法を実施するためのキットも提供する。
キットは、アレルゲンおよびT細胞試料を有する表面を接触させる手段を含んでもよい。このような手段は任意の適当な容器(例えば、単一ウェルまたはマイクロタイタープレートのウェル)であってもよい。
キットはまた、サイトカイン/作用因子複合体を検出する手段も含む。サイトカインが結合すると、作用因子自体に検出可能な変化(例えば、色の変化)が生じてもよい。あるいは、検出用に直接的にまたは間接的に標識された二次作用因子を、スポットを判定するために、サイトカイン/作用因子複合体に結合させることができる。上記の記載のように、二次作用因子はサイトカインに特異的であってもよいが、基質上の一次作用因子と異なる部位に結合してもよい。
特異的に結合している作用因子が付着する表面は、ウェルの表面でもよく、好ましくはウェルの底でもよい。典型的には、ウェルは、マイクロタイタープレートのようなウェル付プレートに存在する。したがって、それぞれのアッセイ法がプレートの別個のウェルで実施できる。
キットは、検出段階で使用される、T細胞用培地、検出作用因子、または洗浄緩衝液をさらに含んでもよい。キットは、試料からの分離(例えば、PBMCまたはT細胞の試料からの分離)に適した試薬をさらに含んでもよい。キットは、試料の構成成分の分離を必要とせずに、T細胞を試料中で直接検出できるように設計することができる。
キットはまた、陽性対照または陰性対照といった対照を含んでもよい。陽性対照は、検出システムを試験することを可能にする。したがって、陽性対照は上記の方法のいずれかにおいて、典型的にはアレルゲンの認識を模倣する。典型的には、インビトロでの認識を判定するように設計されたキットにおいて、陽性対照はIL-2、IL-4、IL-5、IL-13、またはIFN-γといったサイトカインである。あるいは、陽性対照は、ポリクローナルに(polyclonally)刺激されたT細胞を分析する手段を含むことができる。例えば、このような手段は、T細胞を刺激するために、フィトヘマグルチニン(PHA)または抗CD3を含むことができる。
キットはまた、宿主由来のT細胞を含む試料(たとえば、血液試料)を採取する手段を含むことができる。キットは宿主由来の試料から単核細胞またはT細胞を分離する手段を含むことができる。
実施例
実施例1:ニッケルアレルギー検査のための患者および対照被験体の選別
ニッケル誘導接触アレルギー皮膚炎(ACD)患者であるすべての個体をACDの先の記述に基づいて選別した(n=11、年齢範囲28〜52、すべて女性)。対照個体は以前の記録されたACDに関する問題を持っていなかった(n=9、年齢範囲40〜54、すべて女性)。すべての個体はインフォームドコンセントを得たのち調査に参加し、かつ本プロジェクトは地域の倫理委員会よって調査され了承された。
非アレルギー対照群に潜在的アレルギー個体が含まれないこと、および患者がニッケルに対してアレルギーであることを確かめるために、すべての個体にパッチテストを行った。対照群にパッチテストを行う前に、ELISpot分析へのパッチテストの影響を回避するために、ELISpot分析用に血液試料を採取した。ワセリンに混ぜた5% NiSO4を用いたパッチテストを皮膚上に48時間貼り付け、その後、反応部位を検査した。陽性に応答した対照はなかった。すべてのACD患者を、最高のスコアとして3+をもつ、2+または3+のスコアを示している先のパッチテストに基づき選択した。パッチテストの結果を表1に示す。
(表1)ニッケルアレルギー個体および非アレルギー個体におけるNiCl2に対するIL-4ELISpotの応答
Figure 0004272431
実施例2:末梢血単核球の分離
ACD患者または対照個体からの血液を静脈穿刺によって採取し、無菌のヘパリン処置ガラスバイアルに回収した。末梢血単核球(PBMC)を、フィコール・ハイパックを用いた密度勾配遠心法によって分離した。分離した後、PBMCを実験のために、培地(グルタミン、ヘペス、ペニシリン/ストレプトマイシン、10%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640)で2回洗浄し、新鮮なまま使用した。もう一つは、PBMCを90% FCS/10%ジメチルスルホキシド中で凍結し、液体窒素中で試験するまで保存した。試験の前に、凍結細胞を37℃で解凍させ、培地を滴下した後、その細胞を培地で2回洗浄した。NiCl2に対する、または他の刺激に対するサイトカイン応答に関して、ELISpotの際に新鮮細胞および凍結細胞の使用を比較した結果、同等のスポット数が得られた。
実施例3:PBMCの刺激
PBMCを様々な濃度のNiCl2を用いて刺激し、増殖性応答およびサイトカイン応答について分析した。細胞に加える前に、保存濃度50mMのNiCl2を培地と混合し、5分より長い時間インキュベートした。4〜6x106細胞/mlの細胞濃度まで希釈したPBMCに、等量の培地希釈NiCl2を加え、その結果、最終濃度は2x106細胞/mlになり、NiCl2の濃度範囲は10〜100μlになった。細胞懸濁液はプラスチックバイアルにおいて、37℃、4時間、加湿インキュベータ内でインキュベートされた。PBMCをNiCl2と一緒にインキュベートすることと平行して、同じ濃度のPBMCをマイトジェン(1μgフィトヘマグルチニン(PHA)/ml)と一緒に、対照抗原(10μg破傷風毒素(TT)/ml、または10μg精製蛋白誘導体(PPD)/ml)と一緒に、または、刺激物非存在下でインキュベートした。限られた数の個体において、NiCl2およびNiSO4によって誘導されるELISpotサイトカイン応答を比較した結果、同様の応答が得られた。
増殖性応答を、50μM NiCl2によるPBMCの刺激を刺激物非存在下で細胞の増殖で割ることによって得られたcpm値と対応する刺激の指標(SEQ ID NO.)として、表1に表示した。
50μM NiCl2に対する増殖性応答の平均値はアレルギー個体群の方が高く(表1)、その差は統計的に有意であった(マンホイットニー検定;p<0.0002)。しかしながら、アレルギー群で最も低い応答個体と、非アレルギー群で最も高い応答個体で差はほとんどなかった。
実施例4:ELISpotアッセイ法
ヒトIL-4、IL-5、またはIL-13に対して調和する組み合わせのモノクローナル抗体(mAb)がELISpotアッセイ法(Mabtech AB, Stockholm, Sweden)に使用された。各組み合わせについて、一つのmABが捕獲mAbとして使用された:82.4(IL-4)、TRFK5(IL-5)、およびIL13-I(IL-13)、ならびに検出用のその他(12.1(IL-4)、5A10(IL-5)、およびIL13-II(IL-13))。検出用に使用されるMAbはビオチン化された。
ポリビニリデンジフルオライド膜付き96ウェルプレート(MAIPS45-10、Millipore)を70%EtOH 100μlで2〜10分処理し、続いて無菌脱イオン水 200μlで6回洗浄した。各ウェルに対して、リン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈された15μg/mlの濃度の捕獲mAb 100μlを添加し、+4℃で一晩インキュベートした。そのプレートを無菌PBS 200μlで3回、および2%FCS含有培地 200μlで3回洗浄した。各ウェルに、試験管内において、刺激物ありの条件下または刺激物なしの条件下で4時間インキュベートしたPBMCを浮遊させ、細胞懸濁液(2x105細胞)を加えた。さらに44時間インキュベートした後、ウェルを空にして、PBS 200μlで6回洗浄した。0.5%FCS含有PBSで希釈した1μg/ml ビオチン化検出mAbの100μl容量を加え、室温で2時間インキュベートし、その後、ウェルをPBSで6回洗浄した。続いて、0.5%FCS含有PBSで希釈した50ng/ml SA-ALP(ストレプトアビジンアルカリフォスファターゼ、Mabtech)100μlを各ウェルに添加して1時間インキュベートし、続いてPBSで6回洗浄し、その後、100μl ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)基質(Sigma)で約1時間反応させた。水道水でプレートをリンスした後、プレートを乾燥させ、スポットを光学顕微鏡を用いて計測した。
ELISpotを用いたNiCl2応答PBMCの測定を実施し、IL-4産出細胞数を列挙した(表1)。両群において、IL-4を自発的に産出する細胞が低頻度で観察され、アレルギー群で1〜9スポット/200,000細胞、および非アレルギー群で2〜9スポット/200,000細胞であった。その一方、アレルギー群においてNiCl2応答のIL-4産出細胞の数が増加したが、対照群ではそのような増加はみられなかった。自発的スポットの数を差し引いた後、両群において、NiCl2誘導スポットの数を比較すると、スポットの数は全てのアレルギー個体においてより多かった(表1、最後の縦2列)。このことは50μM NiCl2または100μM NiCl2のどちらかを用いたときにみられ、かつその差は高濃度の方がより明らかであったが、その増加は両ケースにおいて統計学的に有意であった(マンホイットニー検定 50mMでp<0.0002、100mMでp<0.0005)。10μM NiCl2を用いて刺激をおこなっても、両群の差は小さかったが、アレルギー群の平均値がより高いという結果になった(データは示していない)。
両群の、NiCl2応答時に他のサイトカインを産出する細胞数を比較するために、ELISpotのIL-5およびIL-13について、ある一部の個体からのPBMCを分析した(表1)。IL-4応答と同じように、アレルギー個体(n=8)由来のPBMCはNiCl2応答時にIL-5およびIL-13を産出することがみられたが、このことは非アレルギー個体(n=7)においてはみられなかった。IL-4の場合と同様、いずれの群でも少数の細胞が自発的にIL-5を産出することを発見した。自発的に産出されるIL-13はわずかにより多かったが、二つの群において有意な差はなかった。NiCl2誘導IL-4、IL-5、およびIL-13のスポット数について二つの群を比較すると、アレルギー群の方が、3つのサイトカインすべてについて、応答性が高かった(マンホイットニー検定;それぞれp=0.0032、p=0.0078、およびp=0.0038)。また、IL-4スポット数とIL-5スポット数の明らかな関連、およびIL-4スポット数とIL-13スポット数の明らかな関連もなかった(データは示していない)。
実施例5:血漿中の総IgEレベルの測定
総IgE含有量について、調査に参加した全ての個体の血漿を分析した。試験は市販のアッセイ法を用いて、製造者の使用説明書にしたがって実施した。血漿中の総IgEレベル(表1)は両試験群で近似しており、アレルギー群で2〜90kU/lの範囲、および非アレルギー群で2〜63kU/lの範囲であった。このことは、NiCl2に対するサイトカイン応答はアレルゲン特異的であり、偏ったTH2型の有糸細胞分裂の活性化を反映しない、ということ示唆している。
実施例6:ケーソンアレルギー試験
防腐剤化合物ケーソン(Kathon)(メチルイソチアゾリオン)に対するアレルギーであると定義された個体が選択された。対照個体は以前に記録されたケーソンアレルギーに関わる問題を持っていなかった。すべての個体はインフォームドコンセントを得たのち調査に参加し、かつ本プロジェクトは地域の倫理委員会よって調査され了承された。
実施例2の記載のとおりに、末梢血単核球(PBMC)をケーソンアレルギー患者および対照個体から採取した。
PBMCをケーソンで刺激し、サイトカイン応答を分析した。
ヒトIL-4、IL-5、IL-13、またはIFN-γに対して調和する組み合わせのモノクローナル抗体(mAb)がELISpotに用いられた(Mabtech AB, ストックホルム、スウェーデン)。前記実施例4にあるように、各組み合わせについて、一つのmAbを捕獲mAbとして、その他は検出のために用いられた。検出に使用したmAbをビオチン化した。
ポリビニリデンジフルオライド膜付き96ウェルプレート(MAIPS45-10、Millipore)を70%EtOH 100μlで2〜10分処理し、続いて無菌脱イオン水 200μlで6回洗浄した。各ウェルに対して、リン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈された15μg/mlの濃度の捕獲mAb 100μlを添加し、+4℃で一晩インキュベートした。そのプレートを無菌PBS 200μlで3回、および2%FCS含有培地 200μlで3回洗浄した。各ウェルに、試験管内において刺激物ありの条件下または刺激物なしの条件下で4時間インキュベートしたPBMCを浮遊させ、細胞懸濁液(2x105細胞)を加えた。さらに44時間インキュベートした後、ウェルを空にして、PBS 200μlで6回洗浄した。0.5%FCS含有PBSで希釈した1μg/ml ビオチン化検出mAbの100μl容量を加え、室温で2時間インキュベートし、その後、ウェルをPBSで6回洗浄した。続いて、0.5%FCS含有PBSで希釈した50ng/ml SA-ALP(ストレプトアビジンアルカリフォスファターゼ、Mabtech)100μlを各ウェルに添加して1時間インキュベートし、続いてPBSで6回洗浄し、その後、100μl ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)基質(Sigma)で約1時間反応させた。水道水でプレートをリンスした後、プレートを乾燥させ、スポットを光学顕微鏡を用いて計測した。
ELISpotを用いたケーソン応答PBMCの測定を実施し、IL-4、IL-5、IL-13、およびIFN-γ産出細胞数を列挙した(表2)。
(表2)ケーソンアレルギー個体、および非アレルギー個体のELISpot試験
Figure 0004272431
*患者3はアレルギーであると選別されたが、パッチテストでは陰性であると検査された。
表2のデータはケーソンに特異的に応答する細胞の数を表している。つまり、任意の自発的スポット(すなわち、刺激なし)がみられた場合は、これらを削除した。IL-4、IL-5、およびIL-13の場合、このような自発的スポットの数は常に少なかったが、IFN-γの自発的産出は個体差がより大きかった。
非アレルギー対照群に潜在的アレルギー個体が含まれないこと、および患者がケーソンに対してアレルギーであることを確かめるために、すべての個体にパッチテストを行った。対照群にパッチテストを行う前に、ELISpot分析へのパッチテストの影響を回避するために、ELISpot分析用に血液試料を採取した。皮膚上にパッチテストを48時間貼り付け、その後、反応部位を検査した。陽性に応答した対照はなかった。患者1、2、および4はパッチテストで陽性に応答した。ケーソンアレルギーであるため選択された患者3は、パッチテストでは陰性であると示された。この患者はELISpotアッセイ法でも陰性の結果を示した(表2参照)。
NiCl2応答時に、ニッケルアレルギー個体または非アレルギー個体由来のT細胞から放出されるサイトカインを示す。アレルギー個体(n=8)または非アレルギー個体(n=7)由来のPBMCを50μM NiCl2で刺激し、IL-4、IL-5、またはIL-13を産出する細胞数をELISpotによって計測した。中心線より上のバーは、自発的に産出されたスポットを控除した後の、アレルギーおよび対照における平均NiCl2応答を示す。中心線より下のバーは差し引かれた自発的スポット数を表し、逆の目盛を用いて示される。

Claims (11)

  1. 以下の段階を含む、被験体における接触アレルゲンに応答する T 細胞検出するインビトロの方法:
    (i)以下の(a)から(c)を提供する段階、
    (a)接触アレルゲン、
    (b)被験体由来のT細胞、および
    (c) 該アレルゲンに応答するT細胞から放出されたサイトカインに特異的に結合することができる一次特異的結合作用因子が固定された表面;
    (ii)以下の(a)および(b)に適切な条件下で T 細胞を該アレルゲン及び該表面に接触させる段階
    (a)インビボで該アレルゲンに提示されていたT細胞による該サイトカインの放出、および
    (b)該一次特異的結合作用因子への該サイトカインの結合;ならびに
    (iii) 該一次特異的結合作用因子への該サイトカインの結合を検出することにより、単一細胞レベルでアレルゲン特異的 T 細胞を検出する段階
  2. 接触アレルゲンが金属アレルゲンである、請求項1記載の方法。
  3. 接触アレルゲンがニッケルアレルゲンである、請求項2記載の方法。
  4. 接触アレルゲンがNiCl2およびNiSO4から選択される溶液として提供される、請求項2または3記載の方法。
  5. 接触アレルゲンが非金属アレルゲンである、請求項1記載の方法。
  6. 非金属アレルゲンがケーソンアレルゲンである、請求項5記載の方法。
  7. サイトカインがTh2型応答に関連するサイトカインである、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
  8. サイトカインが、IL-4、IL-5、IL-13、およびINFγから選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. 一次特異的結合作用因子へのサイトカインの結合を、サイトカインに特異的に結合する二次特異的結合作用因子を用いて検出する、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  10. 一次特異的結合作用因子が一次抗体であり、および/または二次特異的結合作用因子が二次抗体である、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
  11. 二次特異的結合作用因子が標識されている、請求項9または10記載の方法。
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