JP4271807B2 - カプセル化されたel用蛍光体粒子、elディスプレイパネル及びカプセル化されたel用蛍光体粒子の製造方法 - Google Patents

カプセル化されたel用蛍光体粒子、elディスプレイパネル及びカプセル化されたel用蛍光体粒子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカプセル化されたエレクトロルミネセンス(以下において「EL」という。)用蛍光体粒子、これを用いたELディスプレイパネル、及びカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL用蛍光体材料は平板ディイスプレーパネル及び装飾品、ブラウン管、並びに蛍光照明器具のような様々な用途に用いられている。このEL用蛍光体材料としては単結晶や蒸着蛍光膜なども使われる。しかしながら、最も一般的に使用されているのは、硫化亜鉛(ZnS)系のEL用蛍光体である。EL用蛍光体に電圧を印加し、発光させるEL装置は基本構造の違いにより、EL用蛍光体粒子(以下において、単に「蛍光体粒子」と略記する。)を用いた分散型EL装置と蛍光体薄膜を用いた薄膜EL装置に分けられる。
【0003】
分散型EL装置は図19に示すように、蛍光体粒子を強誘電体に分散したものを蛍光層54とし、それを発光を妨げない透明電極43及び背面電極46の間に挟んだ一種の平行平板型コンデンサである。透明電極43には端子31が、背面電極46には端子32が接続されている。蛍光層54と背面電極46との間には、更に、絶縁層45が挿入されている。そして、この絶縁層45を介して、端子31と端子32との間に所定の電圧を印加することにより、EL発光をする。この材料として一般的に使用されているのはZnS系の蛍光体粒子22である。
【0004】
一方薄膜EL装置は、真空蒸着法などによって作成した厚さ1μm程度の蛍光膜を発光層とし、それを透明電極と金属電極で挟みこんだものである。
【0005】
EL装置を実用レベルのものにするためには、蛍光体粒子は、次の3つの条件を備えていなければならない。
【0006】
(1)耐湿性に優れていること、
(2)発光効率が優れていること、
(3)電場による励起が容易であること。
【0007】
第一の条件については、蛍光体粒子の発光強度は、高湿度の条件下では急激に減衰する性質を有するため、信頼性が高く安定したEL装置の実現には必須の条件である。このため、図19に示すように、EL装置は一般に比較的厚い、例えば、25から125 μmの防湿フィルム41により包まれている。更に、その内部に吸湿層42が挿入されている。また、図18に示すように蛍光体粒子22を、金属酸化物薄膜24で被覆する技術が提案されている(特許第2756044号参照)。金属酸化物薄膜24としては、チタン(TiO)及びチタン/ケイ素、TiO/(SiO)、アルミナ(Al) 、酸化スズ(SnO)、ジルコニア(ZrO)等が知られている。また、これらの金属酸化物薄膜24の厚みは、約0.1〜3.0μmである。
【0008】
第二の条件に付いては蛍光体粒子全体について当然成立しなければならない条件であり、このためには発光効率の良い発光中心が存在するか、あるいは吸収端発光の場合にはその発光過程を妨げるような不純物や格子欠陥などの少ないことが必要である。
【0009】
第三の条件については、蛍光体粒子の周囲の誘電率を上げることにより電場による励起を容易にすることが重要である。またELの明るさは一般に加えた電圧の2から3乗に比例するため、蛍光体粒子に加える電圧はできるかぎり高い方が望ましい。よって蛍光体粒子の周りを誘電率が高く、かつ電気的損失の少ない強誘電体材料で覆うことがきわめて重要になってくる。
【0010】
強誘電体材料においては、変位型の強誘電体とりわけペロブスカイト型強誘電体は非常に重要である。その代表例としてチタン酸バリウム(BaTiO)が挙げられる。十分に高温で結晶は完全な立方晶であるが、ある特定の温度以下では、Ti4+,Ba2+の正イオンがO2−の負イオンに対して相対的に変位して自発分極を生じ、正方晶に相転移する。この相転移温度がキュリー温度である。自発的なイオンシフトの誘引力は、局所電界によって増幅された双極子相互作用といえる。ペロブスカイト型強誘電体は、分極軸を3本有するため、焼結体において分極処理により単結晶に匹敵する特性を持った材料を作製出来る。BaTiOは、焼成温度が高いこと、比誘電率の経時変化が大きいことなどのいくつかの問題点がある。
【0011】
「ゾルゲル法」とは金属の有機又は無機化合物の溶液状態から出発し、溶液中での化合物の加水分解・重縮合反応によって溶液を金属酸化物又は水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、更に反応を進行させてゲル化させる。こうしてできた多孔質ゲルを加熱して酸化物固体を作成する方法である。合成する酸化物固体としてはガラス(非晶質セラミックス)を主とするが、非晶質を経て作られる多結晶性材料(いわゆるセラミックス)も含まれる。
【0012】
ゾルゲル法の発明が盛んに行われるようになったのは、従来までの溶融法(原料粉末を1500℃以上の高温で加熱溶融して液体とし、これを冷却しガラス体を得る方法で)と比較して次のような優れた特徴を持っていたからである。
【0013】
(1)条件を選べばガラスを溶融法に比べてはるかに低い温度で合成し、セラミックスを従来の原料を用いる場合に比べてはるかに緻密焼結することができる。
【0014】
(2)溶液から出発するので多成分系において原料が分子レベル、原子レベルで混合し、ガラスでは全体の均質性が増し、多成分系の多結晶セラミックスではどの粒子も希望の組成を有するようになる。
【0015】
(3)結晶性や分相のために従来のガラス溶融法では均質のガラスとならない組成をガラス化することができる。また多成分系の多結晶性セラミックスでは、出発時に均質に成分の混合が起こっているので、炭酸塩のようなこれまでの原料粉末を使用する方法では得られない新しい組成の多結晶体を得ることができる。
【0016】
(4)微粒子で単分散型の原料を作ることができるので、粒径の整った高性能の焼結体を作ることができる。
【0017】
(5)機能性材料の合成に使用されている化学気相蒸着法(CVD法)やスパッタリングなどに比べて生産効率を高くすることが可能である。CVD法では気相の微粒子がすべてデポジットすることなく、多くの微粒子が担体ガスと共に失われる。液相ではすべての原料が個体性生物となる可能性があるので、効率の向上が期待出来る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の分散型蛍光体粒子は、大気中の湿分による劣化のため長時間使用することができないという不都合を有していた。さらに、従来の分散型蛍光体粒子は、焼成に伴う熱による劣化が激しいという不都合を有していた。
【0019】
分散型EL装置を、低電圧で長時間使用するためには電場による励起を容易にすることが必要である。これについては図19に示すように、蛍光体粒子の周囲に絶縁層45を設け、絶縁層45の誘電率を上げてやれば良い。しかしながら、従来の分散型EL装置では、シアノセルロースなどのシアノ化した有機物をバインダーとして用いており、実用化にあたっては輝度が低く、寿命が短いといった問題がある。
【0020】
一方、無機強誘電体の誘電率は有機化合物のそれに比べてはるかに高い値を有するものがある。この理由で、最近ではゾルゲル法によりBaTiO前駆体ゾルを調製し、これを蛍光体粒子中に分散させ導電性ガラスに挟みこみそのまま焼成するという試みがなされている。しかしながら、結晶性の良いBaTiO薄膜を得るためには600℃以上の高温が必要であるため、ZnS蛍光体粒子の分解を招いた。
【0021】
そこで本発明は、耐湿性が高く、しかも輝度が高い蛍光体粒子を提供することを目的とする。
【0022】
本発明の他の目的は、構造が簡単で安価なELディスプレイパネルを提供することである。
【0023】
本発明の更に他の目的は、比誘電率が高く均質性に優れた鉛系ペロブスカイト化合物薄膜を、低温でEL用蛍光体粒子の表面に皮膜することが出来るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法を提供することである。
【0024】
本発明の更に他の目的は、母体の蛍光体粒子の劣化を防止しながら、結晶性の良好な鉛系ペロブスカイト化合物薄膜をその表面に皮膜することが出来るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴は、蛍光体粒子と、この蛍光体粒子を被覆する結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜とから構成されたカプセル化されたEL用蛍光体粒子であることである。「結晶構造」とは、ペロブスカイト型の結晶構造である。本発明の第1の特徴に係る「鉛系ペロブスカイト化合物」は、一般式A(B′B″)Oで表わされAサイトにPbを、Bサイトにはそれぞれ2価・5価、2価・6価などの組み合わせによって4価になり得る元素の組み合わせで表わされる化合物である。これらは単体で固有の材料特性を持っており、キュリー温度、比誘電率の温度特性が異なるため、組み合わせによって様々な温度特性を有する材料の合成が可能である。「鉛系ペロブスカイト化合物」の代表例として、チタン酸鉛(PbTiO)があげられる。PbTiOは、キュリー温度が490℃で、比誘電率が比較的小さい強誘電体である。PbTiOは、ペロブスカイト型の強誘電体としては、格子異方性(c/a)が1.064と最も大きく、長軸であるC軸の方向に大きな自発分極、焦電性、圧電性を有する。
【0026】
通常のセラミックスにおいては、各結晶粒の結晶軸方向が配向していないために分極の向きをそろえることができず、材料の特性をすべて引き出すことができないが、鉛系ペロブスカイト化合物薄膜として形成する場合は、結晶粒が基板上に順次積層して成長していくため基板を適当に選択することにより、結晶軸方向のそろった配向膜、エピタキシャル膜を形成することが可能である。このため、大きな電界を比較的大きな領域を通して膜に加えることができる。本発明の第1の特徴に係る鉛系ペロブスカイト化合物薄膜は、単結晶若しくは多結晶のペロブスカイト構造を有するので、電気的損失が少なく、しかも高い比誘電率を有する。つまり、蛍光体粒子の周囲の比誘電率が高いので、電場による蛍光体粒子の励起が効率的で且つ容易である。ELの明るさは一般に加えた電圧の2から3乗に比例するので、本発明の第1の特徴に係る蛍光体粒子には、高い電圧を印加できる。このため、高い耐湿性と同時に高い輝度を実現できる。
【0027】
本発明の第1の特徴に係る蛍光体粒子としては、ZnS粒子が代表的である。鉛系ペロブスカイト化合物薄膜の厚さは、0.5μm〜3μm程度が好ましい。鉛系ペロブスカイト化合物薄膜21の厚さが、0.5μmより薄くなると、耐湿性が不十分となる。また、3μmより厚くなるとクラックが発生し易くなるので好ましくない。
【0028】
本発明の第2の特徴は、背面電極と、この背面電極の上部に、背面電極に接して配置された蛍光層と、この蛍光層の上部に、蛍光層に接して配置された透明電極とからなるELディスプレイパネルであることである。ここで、「蛍光層」は、上記本発明の第1の特徴に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子から構成されている。
【0029】
上記において説明したように、本発明の第1の特徴に係る結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜は、高い比誘電率を有するので、従来のように絶縁層を介して、蛍光層に電界を印加する必要はない。従って、本発明の第2の特徴に係るELディスプレイパネルは、従来のような絶縁層が不要で、構造が簡単で、しかも製造工程数も少なくなる。従って、本発明の第2の特徴に係るELディスプレイパネルによれば、その製造コストを下げることが可能である。
【0030】
本発明の第3の特徴は、(イ)蛍光体粒子を用意する工程と、(ロ)鉛系ペロブスカイト化合物前駆体を調製する工程と、(ハ)蛍光体粒子と鉛系ペロブスカイト化合物前駆体とを混合し、混合体を生成する工程と、(ニ)減圧により、混合体から溶媒成分を蒸発させ、ZnS蛍光体粒子を含む鉛系ペロブスカイト化合物の湿潤ゲルを生成する工程と、(ホ)湿潤ゲルを乾燥させて乾燥ゲルとする工程と、(ヘ)この乾燥ゲルを300℃〜490℃の焼成温度にて焼成する工程とから少なくともなることを特徴とするカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法であることである。
【0031】
従来、実用上、十分な大きさの鉛系ペロブスカイト化合物単結晶の合成はとても困難であった。単結晶の合成が困難である理由は、処理中の鉛の揮発性と立方晶から正方晶に変形する際の大きな収縮のためであると考えられる。しかし、本発明の第3の特徴に係る製造方法においては、比誘電率が高く均質性に優れた鉛系ペロブスカイト化合物薄膜を、低温でEL用蛍光体粒子の表面に、簡単に皮膜することが出来る。また、本発明の第3の特徴に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法によれば、母体の蛍光体粒子の劣化を防止しながら、結晶性の良好な鉛系ペロブスカイト化合物薄膜をその表面に皮膜することが出来る。
【0032】
本発明の第3の特徴に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法において、乾燥ゲルを焼成する工程は、300℃〜400℃における仮焼成工程と、仮焼成工程よりも高温における本焼成工程とからなる2段階の熱処理工程であることが好ましい。
【0033】
本発明の第3の特徴においては、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体として、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾル、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体溶液を用いるのが、好ましい。これらの前駆体ゾル若しくは前駆体溶液は、溶媒としてエタノール(COH)や酢酸(CHCOOH)等の有機物を用いている。鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾル、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体溶液を乾燥させた粉体のTG、DTAの測定によると、300℃付近で有機物の熱分解による減量が見られる。そこで十分に有機物を蒸発させるために、本発明の第3の特徴においては、300℃〜400℃における仮焼成工程(前処理)、より望ましくは、350℃で仮焼成工程(前処理)を行うのである。350℃で10分の前処理(後仮焼)する場合、得られた試料には残留有機物がかなり多い。従って、350℃で1時間程度の条件での前処理が好ましい。
【0034】
また、本発明の第3の特徴における本焼成工程の焼成温度は、420℃〜480℃であることが好ましい。この本焼成工程の焼成温度ならば、蛍光体粒子の電気的な劣化が僅かである。例えば、蛍光体粒子として代表的なZnS蛍光体粒子は、500℃より高い熱処理では酸化されZnOを生じるので、500℃以上の焼成温度は好ましくない。
【0035】
また、本発明の第3の特徴に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法において、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体は、化学量論組成の鉛系ペロブスカイト化合物前駆体溶液であり、本焼成工程は、焼成温度450℃において、3時間〜5時間の焼成時間であることが好ましい。この本焼成工程の条件ならば、蛍光体粒子の酸化等による劣化もみられず、鉛系ペロブスカイト化合物の結晶化も十分に進行し、ペロブスカイトの結晶構造となる。この結果、膜厚の一様性と、膜質の均質性に優れ、比誘電率の高い鉛系ペロブスカイト化合物薄膜が得られる。また、SEM観察によれば、本発明の第3の特徴における鉛系ペロブスカイト化合物前駆体溶液を用いた蛍光体粒子の被覆は、膜厚の均一性が良好であり、ほぼ均一にコーティングされている。また、クラックの発生も少ない。しかし、凝集も確認出来る。また鉛過剰にする場合、過剰分の鉛が酸化物として存在し焼成時間を2時間,3時間と長くしてもX線回折パターンは変化しない。
【0036】
一方、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体が、鉛20%過剰の鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾルである場合は、本焼成工程は、焼成温度450℃において、1時間〜5時間の焼成時間が好ましい。しかし、鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾルを用いて蛍光体粒子を被覆する場合、得られた試料には残留有機物が多く、膜厚も不均一である。従って、一部で厚く付きすぎ、クラックや凝集が見られる。このため、被覆が不十分な蛍光体粒子も見られる。鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾルは、鉛20%過剰にして450℃、1時間の条件であればペロブスカイトの結晶構造となる。鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾルをこの条件で焼成して形成した用いて鉛系ペロブスカイト化合物薄膜のX線回折測定によれば、母体の蛍光体粒子の結晶構造と鉛系ペロブスカイト化合物ペロブスカイトの結晶構造とが同定される。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子は、ZnS蛍光体粒子22と、この蛍光体粒子22を被覆する結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜21とから構成されている。本発明の第1の実施の形態においては、鉛系ペロブスカイト化合物薄膜21は、PbTiO薄膜である。
【0039】
本発明の第1の実施の形態に係る鉛系ペロブスカイト化合物薄膜(PbTiO薄膜)21は、単結晶若しくは多結晶のペロブスカイト構造を有するので、電気的損失が少なく、しかも高い比誘電率を有する。つまり、蛍光体粒子22の周囲の比誘電率が高いので、電場による蛍光体粒子励起が容易である。ELの明るさは一般に加えた電圧の2から3乗に比例するが、本発明の第1の実施の形態に係る蛍光体粒子には、高い電圧を印加できる。このため、高い耐湿性と同時に高い輝度を実現できる。
【0040】
本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO薄膜21の厚さは、0.5μmから3μm程度に選ばれる。PbTiO薄膜21の厚さが、0.5μmより薄くなると、耐湿性が不十分となる。また、3μmより厚くなるとクラックが発生し易くなるので好ましくない。好ましくは、PbTiO薄膜21の厚さは、0.8μm〜1.5μm程度である。0.8μm〜1.5μm程度の範囲の膜厚を選定することにより、耐湿性が高く、しかも、蛍光体粒子22に十分な電界を印加可能な誘電率を実現できる。更に、好ましくは、PbTiO薄膜21の厚さを0.9μm〜1.2μm程度にすると良い。0.9μm〜1.2μm程度の厚さに選ぶことにより、蛍光体粒子22を均質且つ厚さの一様なPbTiO薄膜21で皮膜することが出来る。
【0041】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るELディスプレイパネルの模式的断面図である。即ち、図2に示すように、背面電極46と、この背面電極46の上部に、背面電極46に接して配置された蛍光44層と、この蛍光層44の上部に、蛍光層44に接して配置された透明電極43とから少なくとも構成されている。即ち、図1に示したカプセル化されたEL用蛍光体粒子からなる蛍光層44を、透明電極43と背面電極46とで挟んだ一種の平行平板型コンデンサの構造をしている。この平行平板型コンデンサの上部電極となる透明電極43には端子31が、下部電極となる背面電極46には端子32が接続されている。図19に示す従来のELディスプレイパネルとは異なり、蛍光層54と背面電極46との間には、絶縁層45が挿入されていない。即ち、蛍光層44は直接背面電極46に接している。なぜなら、本発明の第1の実施の形態に係る結晶構造を有する鉛系ペロブスカイト化合物薄膜(PbTiO薄膜)21は、高い比誘電率を有するので、従来のような絶縁層45は、不要であるからである。そして、端子31と端子32との間に所定の電圧を印加することにより、高い輝度のEL発光をすることが可能である。
【0042】
図2に示す本発明の第2の実施の形態に係るELディスプレイパネルにおいては、従来のような絶縁層45が不要であるので、構造が簡単で、製造工程数も少なくなる。従って、本発明の第2の実施の形態に係るELディスプレイパネルによれば、その製造コストを下げることが可能である。
【0043】
本発明の第2の実施の形態に係るELディスプレイパネルは、更に図2に示すように、防湿フィルム41により包まれているが、その厚さを25μm以下に薄くでき、より薄型のパネルを提供できる。本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子が高い耐湿性を有するからである。図2においては、防湿フィルム41と透明電極43との間に吸湿層42が挿入されている。しかし、本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子が高い耐湿性を有するため、一定の目的のためには、吸湿層42は、省略可能である。この結果、更なる薄型化と、製造コストの低減が可能となる。
【0044】
(カプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法)
次に、図5に示すフローチャートに従って、本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法について説明する。ZnS蛍光体粒子22の表面に、ペロブスカイト結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜(PbTiO薄膜)21を被覆するためには、図5のステップS301において、鉛系ペロブスカイト化合物(PbTiO)前駆体ゾル、若しくは鉛系ペロブスカイト化合物(PbTiO)前駆体溶液を作成(調整)する必要がある。そこでまず、図3に示すフローチャートに従って、PbTiO前駆体ゾルの調整方法を、図4に示すフローチャートに従って、PbTiO前駆体溶液の調整方法を説明する。PbTiO前駆体溶液は、分子設計による調整方法である。以下においては、化学量論的組成の場合と、鉛20%過剰にする場合について説明する。従って、以下において[ ]内の数字は鉛過剰にする場合の数値である。
【0045】
即ち、まず図3に示すフローチャートに従って、図5のステップS301に記載のPbTiO前駆体ゾルの調整方法を説明する。
【0046】
(イ)図3のステップS101に示すように、まず、セパラブルフラスコに酢酸鉛(II)三水和物(Pb(CHCOO))を5.72g(0.015モル)[6.86g]採り150℃で5時間乾燥させる。
【0047】
(ロ)次に、ステップS102に示すように、酢酸(CHCOOH)を3.6ml(0.06モル)加えて78℃で1時間還流する。
【0048】
(ハ)一方、ステップS111に示すように、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(iso−OC)を4.25g(0.015モル)採り酢酸(CHCOOH)を1.8ml(0.03モル)加え、30分撹拌する。更に、ステップS112に示すように、室温において、溶媒としてエタノール(COH)を加え、30分撹拌する。
【0049】
(ニ)次に、ステップS103に示すように、ステップS102及びステップS112で作成した溶液を混合し、30分間撹拌する。更に、ステップS104に示すように、溶媒としてエタノール(COH)を加え、30分撹拌する。
【0050】
(ホ)そして、ステップS105に示すように、水(H)を3ml加え30分撹拌することによって加水分解させる。
【0051】
(ヘ)その後、ステップS106に示すように、安定剤としてアセチルアセトン(AcAc)を1.53ml(0.015モル)加えて30分撹拌する。
【0052】
(ト)最後に、ステップS106に示すように、溶媒としてエタノール(COH)を加え150mlに調製する。
【0053】
以上の(イ)〜(ト)の工程で、図5のステップS301における0.1モルPbTiO前駆体ゾル150mlの調製工程が説明された。
【0054】
一方、図4に示すフローチャートに従って、図5のステップS301に記載のPbTiO前駆体溶液の調整方法を説明すると以下のようになる。
【0055】
(イ)まず、図4のステップS201に示すように、セパラブルフラスコに酢酸鉛(II)三水和物(Pb(CHCOO))を5.72g(0.015モル)[6.86g]採り150℃で5時間乾燥させる。
【0056】
(ロ)次に、ステップS202に示すように、(イ)で5時間乾燥したPb(CHCOO)に、無水エタノール(COH)を120ml加えアンモニア(NH)ガスを流しながら78℃で3時間還流する。
【0057】
(ハ)一方、ステップS211に示すように、ステップS202と同時にチタニウムテトライソプロポキシド(Ti(iso−OC)を4.25g(0.015モル)採り、無水エタノール(COH)を30ml加え78℃で3時間還流する。
【0058】
(ニ)ステップS203に示すように、ステップS202及びステップS211で還流した溶液を混合して78℃で4時間還流する。
【0059】
(ホ)ステップS204に示すように、ステップS203の溶液に、安定剤としてアセチルアセトン(AcAc)を1.53ml加えて再び78℃で1時間還流する。
【0060】
以上の(イ)〜(ホ)の工程によって、図5のステップS301における0.1モルPbTiO前駆体溶液150mlの調製工程が説明された。
【0061】
ここでは、図1に示した構造において、ZnS蛍光体粒子22一個に対して1μmの厚さのPbTiO薄膜21を被覆する場合を説明する。この場合は、ZnSの平均粒径16.47μmとしてZnSとPbTiO前駆体溶液(ゾル)との混合比を計算すると、
[PbTiO]/[ZnS]=0.1351・・・・・(1)
となる。
【0062】
以上の準備的説明を基礎として、以下において、図5に示すフローチャートに従って、本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法について説明する。
【0063】
(イ)上記のように、ステップS301においては、図3に示したフローチャートに従って鉛系ペロブスカイト化合物(PbTiO)前駆体ゾル、若しくは、図4に示したフローチャートに従って鉛系ペロブスカイト化合物(PbTiO)前駆体溶液を調製する。同時に、ステップS311に示すように、ZnS蛍光体粒子22を用意する。
【0064】
(ロ)そして、ステップS302において、(1)式で示す混合比で蛍光体粒子とPbTiO前駆体溶液(ゾル)を混合する。
【0065】
(ハ)更に、ステップS304に示すように、ロータリーエバポレーターを用いて約78℃で減圧しながら溶媒を蒸発させる。ロータリーエバポレーターの回転数を一定にすることによって蛍光体粒子をほぼ均一に溶液(ゾル)内に分散することができる。こうして、ZnS蛍光体粒子を含むPbTiOの湿潤ゲルが得られる。
【0066】
(ニ)こうして得られたPbTiO前駆体ゾルとPbTiO前駆体溶液は乾燥機中に80℃で放置すると次第に粘度を増して数時間で湿潤ゲルへと変化する。更に、ZnS蛍光体粒子を含むPbTiOの湿潤ゲルを、ステップS305に示すように、乾燥機内で80℃で1日間(PbTiO前駆体ゾルから得られたゲルは酢酸(CHCOOH)を含んでいるため117℃で2日間)乾燥させることによりゲルは表面からひび割れ、溶媒のエタノール(COH)、酢酸(CHCOOH)が蒸発して完全に乾燥し、乾燥ゲルが得られる。
【0067】
(ホ)そして、ステップS303に示すように、この乾燥ゲルを乳鉢で粉砕して所定の焼成条件で焼成する。ステップS303における焼成は、300℃〜400℃、好ましくは350℃で1時間の条件で前処理(仮焼成)を行い、更に高温の本焼成を行う2段階の熱処理工程である。溶媒として用いたエタノール(COH)や酢酸(CHCOOH)の熱分解過程を調べるためにPbTiO前駆体ゾル、PbTiO前駆体溶液を乾燥させた粉体のTG、DTAの測定によると、300℃付近で有機物の熱分解による減量が見られる。そこで十分に有機物を蒸発させるために、本発明では、350℃で前処理を行うのである。350℃で10分の前処理(後仮焼)では、得られた試料には残留有機物がかなり多い。従って、上記の350℃で1時間の条件で前処理を行うことにする。従って、ステップS303における「所定の条件」とはこの前処理(仮焼成)の後に、420℃〜480℃で、本焼成する2段階の熱処理工程をいう。この条件ならば、ZnS蛍光体粒子22の電気的な劣化が僅かである。ZnS蛍光体粒子22は、500℃より高い熱処理では酸化されZnOを生じるので、500℃以上の焼成温度は好ましくない。具体的に述べると、PbTiO前駆体ゾルの場合は、鉛20%過剰の条件で焼成温度450℃において1時間〜5時間の焼成時間が好ましい。特に、450℃、1時間の条件が好ましい。できるだけ、母体のZnS蛍光体粒子22自身の焼成に伴う劣化を減らすため、PbTiOが結晶化する最短の焼成時間で焼成することが必要であるからである。一方、PbTiO前駆体溶液の場合は、化学量論組成の乾燥ゲルを、焼成温度450℃において、3時間〜5時間の焼成時間で焼成することが好ましい。これらの条件では、ペロブスカイト単相が形成されるからである。PbTiO前駆体溶液の場合も、特に、450℃、3時間の条件が好ましい。母体のZnS蛍光体粒子22自身の焼成に伴う劣化を減らすため、PbTiOが結晶化する最短の焼成時間で焼成することが好ましいからである。鉛過剰の場合は、化学量論組成のものと比べて短い焼成時間で結晶化が始まる。しかし、PbTiO前駆体溶液は、鉛過剰にする場合、過剰分の鉛が酸化物として存在するので好ましくない。また、後述するように、分子設計されたPbTiO前駆体溶液を用いた方が、コロイドが析出したPbTiO前駆体ゾルを用いた場合よりも組成が均質である。
【0068】
本発明において、これらの焼成条件が好ましい条件として選ぶのは、以下のようなX線回折測定及び走査電子顕微鏡(SEM)観察の結果に基づいている。
【0069】
図3で示すフローチャートに従って調製したPbTiO前駆体ゾルから得られたPbTiO乾燥ゲルを、350℃1時間で前処理(仮焼成)した後、焼成温度450℃で焼成時間10分,30分,1時間の条件で本焼成する2段階の熱処理工程を行う。鉛20%過剰の乾燥ゲルについても同様の2段階の熱処理条件で焼成する。図6に示すように、化学量論組成のPbTiOX線回折パターンによれば、焼成温度450℃で、焼成時間10分では、ほとんどがアモルファス(非晶質)状態である。つまり、焼成時間10分では、ほとんど結晶化していないことが分かる。焼成温度450℃で、焼成時間30分では、僅かにペロブスカイト相が確認出来るが、アモルファスな部分が多く結晶性はあまり良くないことが分かる。焼成温度450℃で、焼成時間1時間では、ほとんどが結晶化し、酸化物(PbO)の結晶化ピークが確認出来る。一方、図7に示す鉛20%過剰のPbTiOのX線回折パターンによれば、焼成温度450℃で、焼成時間10分のものは、アモルファスな部分がほとんどで、僅かしか結晶化していない。焼成時間30分では、ほとんど結晶化しているがアモルファスな部分が少し存在しており酸化物(PbO)の存在も確認出来る。焼成温度450℃で、焼成時間1時間になるとほぼ完全にペロブスカイト単相となっている。
【0070】
次に、図4で示すフローチャートに従って調製したPbTiO前駆体溶液から得られたPbTiO乾燥ゲルを、350℃1時間仮焼した後、450℃で焼成時間30分,1時間,2時間,3時間の条件で本焼成する2段階の熱処理工程を行う。鉛20%過剰の乾燥ゲルについても同じ2段階の熱処理工程で焼成する。図8に示すように、化学量論組成のPbTiOの場合は、焼成時間30分ではペロブスカイト単相が確認出来、酸化物(PbO)の存在も確認出来る。化学量論組成のPbTiOの場合で、焼成時間1時間では、ほぼ結晶化しているが、僅かに酸化物が確認出来る。焼成時間を2時間,3時間にすると、結晶性は良くなり、3時間でほぼペロブスカイト単相となっている。一方、図9に示す鉛20%過剰のPbTiOのX線回折パターンによれば、焼成温度450℃で、焼成時間30分ではペロブスカイト相が確認出来るが、酸化物も存在している。焼成温度450℃で、焼成時間1時間,2時間,3時間ではペロブスカイト単相の鋭いピークが確認出来るが、同時に酸化物の存在も確認出来る。これは焼成時間を上げても消えず、ほとんど同じX線回折パターンとなっている。これは過剰にした鉛が酸化物となっていると考えられる。従って、PbTiO前駆体溶液を鉛過剰にするのは好ましくない。
【0071】
更に、PbTiO薄膜21を蛍光体粒子22に被覆するに際しては、母体のZnS蛍光体粒子22自身が焼成に伴い劣化することを回避することも重要となる。焼成温度を500℃、550℃、600℃と変化させた場合のX線回折の測定結果を図10に示す。焼成温度550℃から、2θ=36.2°のX線回折強度が見い出されるようになり、焼成温度600℃において、2θ=36.2°のX線回折強度が強くなっている。2θ=36.2°のX線回折ピークは、ZnOの(101)面からの回折パターンである。また、図10において、2θ=28.7°のX線回折ピークは、ZnSの(008)面からの回折パターンである。
【0072】
図11は、図10の結果を基に、ZnSのX線回折の相対強度、及びZnOのX線回折の相対強度を示すグラフである。即ち、加熱処理をしない状態におけるZnSの相対強度を100%として、加熱処理温度を450℃から700℃の間で変化させた場合の2θ=28.7°のX線回折の相対強度の減少を実線で示す。加熱処理温度700℃において、2θ=28.7°のX線回折強度は、完全に消失している。そして、この700℃での加熱処理により、ZnSピークが完全に消失した状態でのZnOの相対強度を100%として、加熱処理温度を450℃から700℃の間で変化させた場合の2θ=36.2°のX線回折の相対強度の増大を破線で示す。即ち、破線は、加熱処理温度の増大に伴うZnSの(008)面からのX線回折の相対強度の変化を示す。図11のグラフから、550℃以上の加熱処理温度条件で、母体のZnS蛍光体粒子22自身が酸化され、ZnOが生成することが分かる。
【0073】
本発明の実施の形態に係るPbTiO前駆体ゾルを用いて被覆したZnS蛍光体粒子22のX線回折測定結果を図12に示す。図12から、PbTiOの結晶化したピークとZnSのピークが共存していることが分かる。しかしPbTiOのピークは鋭いものではなくブロードなものである。また得られた粉体は残留有機物が多く、黒い部分が確認出来る。一方、PbTiO前駆体溶液を用いて被覆したZnS蛍光体粒子22のX線回折測定結果を図13に示す。PbTiO前駆体ゾルを用いたものと同様に、PbTiOとZnSが共存している。またPbTiOのピークはPbTiO前駆体ゾルを用いたものと比較して鋭く、結晶性が良好であることが分かる。
【0074】
標準試料として、ZnS蛍光体粒子22の未処理状態の外観と表面の微構造のSEM写真を模式化した図を図14に示す。図14(a)は、1,800倍の、図14(b)は、8,500倍のSEM写真に対応する。図15に示すように、PbTiO前駆体ゾルを用いて被覆した場合、図14に示す標準試料と比較して表面の微構造と外観の明らかな違いが分かる。図15(a)は、1,800倍の、図15(b)は、8,500倍のSEM写真に対応する。よってPbTiO薄膜21による被覆は可能であることが分かる。しかし得られた試料には、PbTiO薄膜21により被覆されている部分とまったくされていない部分が確認出来る。試料の被覆されている部分では蛍光体粒子22の全体を被覆しているものは少なく、付着しているような形状が多く見らる。また膜厚は不均一であり、図17には、厚すぎるためにクラックが生じている蛍光体粒子22や凝集が確認出来る。図17(a)は、3,500倍の、図17(b)は、25,000倍のSEM写真に対応する。PbTiO前駆体ゾルを用いた場合、残留有機物が多く得られた試料には黒ずんだ部分が確認出来る。一方、図16に示すように、PbTiO前駆体溶液を用いて被覆した場合、図14に示す未処理試料(標準試料)との比較から、PbTiO薄膜21により良好に被覆されていると判断出来る。図16(a)は、1,800倍の、図16(b)は、8,500倍のSEM写真に対応する。図15に示すPbTiO前駆体ゾルを用いたものと比較して、均一にPbTiO薄膜21によりコーティング出来ている蛍光体粒子22を数多く確認出来る。表面を比較してみると、図17に示したPbTiO前駆体ゾルを用いた試料よりも、PbTiO前駆体溶液を用いた試料の方が小さい粒の集まりによってコーティングされている。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、耐湿性が高く、しかも輝度が高いカプセル化されたEL用蛍光体粒子を提供することが出来る。
【0076】
また、本発明によれば、構造が簡単で安価なELディスプレイパネルを提供することが出来る。
【0077】
更に、本発明のカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法によれば、比誘電率が高く均質性に優れたPbTiO薄膜を、低温でEL用蛍光体粒子の表面に皮膜することが出来る。
【0078】
更に、本発明のカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法によれば、母体の蛍光体粒子の劣化を防止しながら、結晶性の良好なPbTiO薄膜をその表面に皮膜することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るカプセル化されたEL用蛍光体粒子を用いたディスプレイパネルの模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体ゾルの調製法を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体溶液の調製法を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体溶液(ゾル)を、ZnS蛍光体に被覆する方法を説明するフローチャートである。
【図6】化学量論組成のPbTiOのX線回折パターンである。
【図7】鉛20%過剰のPbTiOのX線回折パターンである。
【図8】化学量論組成のPbTiOのX線回折パターンである。
【図9】20%過剰のPbTiOのX線回折パターンである。
【図10】450℃から700℃の間で蛍光体粒子を加熱処理した場合のX線回折パターンの変化を示す図である。
【図11】450℃から700℃の間で蛍光体粒子を加熱処理した場合のX線回折パターンの相対強度比の変化を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体ゾルを用いて被覆したZnS蛍光体粒子のX線回折測定結果示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体溶液を用いて被覆したZnS蛍光体粒子のX線回折測定結果示す図である。
【図14】ZnS蛍光体粒子の未処理状態の外観と表面の微構造のSEM写真を模式化して示す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体ゾルを用いて被覆したZnSのSEM写真を模式化して示す図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiO前駆体溶液を用いて被覆したZnSのSEM写真を模式化して示す図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係るPbTiOを用いて被覆したZnSの表面に見られたクラックや凝集のSEM写真を模式化して示す図である。
【図18】従来の蛍光体粒子の構造を示す模式的な断面図である。
【図19】従来の蛍光体粒子を用いたディスプレイパネルの模式的な断面図である。
【符号の説明】
21 PbTiO薄膜
22 蛍光体粒子
24 金属酸化物薄膜
31,32 端子
41 防湿フィルム
42 吸湿層
43 透明電極
44,54 蛍光層
45 絶縁層
46 背面電極

Claims (8)

  1. 蛍光体粒子と、
    前記蛍光体粒子を被覆する結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜とを備え、
    前記鉛系ペロブスカイト化合物薄膜は、ペロブスカイト単相が形成されるように結晶化していることを特徴とするカプセル化されたEL用蛍光体粒子。
  2. 前記蛍光体粒子は、ZnS粒子であることを特徴とする請求項1記載のカプセル化されたEL用蛍光体粒子。
  3. 前記鉛系ペロブスカイト化合物薄膜の厚さは、0.5μm〜3μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のカプセル化されたEL用蛍光体粒子。
  4. 背面電極と、
    蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子を被覆する結晶構造の鉛系ペロブスカイト化合物薄膜とからなるカプセル化されたEL用蛍光体粒子から構成され、前記背面電極の上部に、前記背面電極に接して配置された蛍光層と、
    前記蛍光層の上部に、前記蛍光層に接して配置された透明電極とを備え、
    前記鉛系ペロブスカイト化合物薄膜は、ペロブスカイト単相が形成されるように結晶化していることを特徴とするELディスプレイパネル。
  5. 蛍光体粒子を用意する工程と、
    鉛系ペロブスカイト化合物前駆体を調製する工程と、
    前記蛍光体粒子と前記鉛系ペロブスカイト化合物前駆体とを混合し、混合体を生成する工程と、
    減圧により、前記混合体から溶媒成分を蒸発させ、ZnS蛍光体粒子を含む鉛系ペロブスカイト化合物の湿潤ゲルを生成する工程と、
    前記湿潤ゲルを乾燥させて乾燥ゲルとする工程と、
    前記乾燥ゲルを300℃〜490℃の焼成温度にて焼成する工程
    とを含み、 前記焼成する工程は、300℃〜400℃における仮焼成工程と、前記仮焼成工程よりも高温における本焼成工程とからなる2段階の熱処理工程であることを特徴とするカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法。
  6. 本焼成工程の焼成温度は、420℃〜480℃であることを特徴とする請求項5記載のカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法。
  7. 前記鉛系ペロブスカイト化合物前駆体は、化学量論組成の鉛系ペロブスカイト化合物前駆体溶液であり、
    前記本焼成工程は、焼成温度450℃において、3時間〜5時間の焼成時間であることを特徴とする請求項5又は6記載のカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法。
  8. 前記鉛系ペロブスカイト化合物前駆体は、鉛20%過剰の鉛系ペロブスカイト化合物前駆体ゾルであり、
    前記本焼成工程は、焼成温度450℃において、1時間〜5時間の焼成時間であることを特徴とする請求項5又は6記載のカプセル化されたEL用蛍光体粒子の製造方法。
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