JP4271711B2 - 運動補助装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ユーザの運動を補助するための装置に関する。
近年、ユーザの身体に対して脚体関節(股関節、膝関節、足関節)回りのトルクを付与することにより、このユーザの歩行運動を補助する装置が提案されている。そして、このような装置において、ユーザの歩行運動リズムに変化に追従しながらも、歩行補助装置による歩行誘導リズムに自律性を持たせるように、この歩行補助装置を制御するシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
この特許文献1の装置では、歩行補助装置による歩行補助リズムが適当なものであっても、補助力やその作用距離に過不足が生じ、歩幅や脚体関節角度が過大または過小となってしまう可能性があった。すなわち、ユーザの運動を誘導するリズムが、その運動のリズムを目標リズムに一致させるものである一方、ユーザの運動を誘導するための補助力やその作用距離が、その運動のスケールを目標スケールから乖離させるものとなり、ユーザに違和感等を覚えさせる可能性があった。そこで、ユーザの運動のリズムおよびスケールをその目標とするリズムおよびスケールにそれぞれ一致させるようにユーザの運動を補助しうる装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特許文献2の装置では、ユーザの運動を測定して生成された第1振動子に基づいて、ユーザの運動のリズムが目標リズムに合致するように第2振動子を生成し、この生成された第2振動子に基づいて、仮想的なバネ等の弾性要素モデルを用いて運動スケールが目標スケールから乖離しないように補助振動子を生成して、この補助振動子に応じたトルクをユーザに付与するよう制御を行う。
特開2004−73649号公報 特開2007−61217号公報
ところで、歩行補助装置において、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスが取れるように、ユーザの歩行が補助されることがより望ましい。特に、例えばユーザの歩行運動のトレーニングを目的とする場合、歩行比等のユーザの運動のスケールとリズムとのバランスを示す指標値が所定の基準値となるように歩行することが望ましい。
しかしながら、特許文献2の装置では、運動のリズムを目標リズムに一致させることに加えて、運動のスケールを目標スケールに一致させるように制御が行われるものの、運動のリズムとスケールとのバランスについては考慮されていない。このため、弾性要素モデルの影響の度合によっては、運動のリズムとスケールとのバランスが適切なバランスとならない可能性がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ユーザの運動のリズムおよびスケールをその目標とするリズムおよびスケールにそれぞれ一致させるようにユーザの運動を補助しうると共に、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスが取れるように運動を補助しうる運動補助装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、ユーザの運動を補助するために当該ユーザに与えられる時間変化する補助力を決定するための、時間変化するパラメータである補助振動子に応じて当該ユーザの運動を補助するための装置であって、前記ユーザの身体運動に応じて時間変化するパラメータとしての第1および第2運動振動子と、前記ユーザの身体運動に応じて時間変化する、該ユーザの運動スケールを表すパラメータとしての第3運動振動子とを測定する運動振動子測定手段と、入力振動信号と相互に引き込み合うことで第1固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成する第1モデルに、前記運動振動子測定手段により測定された前記第1運動振動子を該入力振動信号として入力することにより、該出力振動信号として第1振動子を生成する第1振動子生成手段と、前記運動振動子測定手段により測定された前記第1運動振動子と前記第1振動子生成手段により生成された前記第1振動子との位相差である第1位相差に基づき、相互作用しながら第2位相差をもって周期的に変化する第1仮想振動子と第2仮想振動子とが表現されている仮想モデルに従って、該第2位相差が目標位相差に近づくように該第2仮想振動子の角速度を第2固有角速度として設定する固有角速度設定手段と、入力振動信号に基づき、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成する第2モデルに、前記運動振動子測定手段により測定された前記第2運動振動子を該入力振動信号として入力することにより、該出力振動信号として第2振動子を生成する第2振動子生成手段と、前記第2振動子生成手段により生成された前記第2振動子と、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度とに応じて、前記運動振動子測定手段により測定された前記第3運動振動子の値を前記ユーザの目標運動スケールに応じた目標値に近付けるように該ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力を表す第1補助振動子を生成し、該第1補助振動子を含む前記補助振動子を生成する補助振動子生成手段と、前記ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値を取得する運動指標値取得手段と、前記運動指標値取得手段により取得された前記運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記補助振動子生成手段により生成される前記第1補助振動子を逐次調整する補助振動子調整手段とを備える(第1発明)。
第1発明の運動補助装置によれば、主に次の理由により、ユーザの運動リズムをその目標とするリズムに一致させるようにユーザの運動が補助されうる。
すなわち第1運動振動子が入力振動信号として第1モデルに入力されることにより、第1モデルの出力振動信号としての第1振動子が生成される。「第1モデル」は入力振動信号と相互に引き込み合うことで固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成するモデルである。これにより、「第1振動子」は「第1運動振動子」との「相互引き込み」の効果によってユーザの第1運動振動子のリズムと調和しながら、固有角速度に基づいて定まる自律的なリズムまたは角速度をもって振動する。なお、第1運動振動子として、後述の第2運動振動子の時間微分が測定されてもよい。ここで「振動」とは、現実的または仮想的なものがほぼ一定の周期を持って揺れ動くことのほか、広く時間変化することを含む概念である。また「振動子」とは、値が時間変化する電気信号や、ソフトウェアにおいて値が時間変化するものとして定義された関数等を含む概念である。しかるに、第1振動子は、ユーザの運動リズムと運動補助装置による誘導リズムとの調和を図りながら、ユーザの運動リズムを目標リズムに一致させる観点から、ユーザの運動振動子と不適当な位相差を有している可能性がある。したがって、第1振動子から直接的に補助振動子が生成された場合、この補助振動子によって補助されたユーザの運動リズムが、目標リズムから乖離してしまうおそれがある。
そこで、第1運動振動子と第1振動子との位相差である第1位相差に基づき、相互作用しながら第2位相差をもって周期的に変化する第1仮想振動子と第2仮想振動子とが表現されている仮想モデルに従って、該第2位相差が目標位相差に近づくように該第2仮想振動子の角速度が第2固有角速度として設定される。これにより、第2固有角速度は第1運動振動子により特定されるユーザの運動リズムとの目標位相差に応じた調和を図りつつ、ユーザの運動リズムを目標運動リズムに一致させるようにユーザの運動を補助するという観点から適当な振動子の角速度に相当するものになりうる。これにより、ユーザの運動リズムが急に変化した場合でも、この変化への補助振動子の追従性を、ユーザに違和感等を与えない観点から適当なものとし、ユーザの運動リズムを目標リズムに適度なペースで徐々に一致させることができる。
続いて、第2運動振動子が入力振動信号として第2モデルに入力され、第2モデルからの出力振動信号として第2振動子が生成される。「第2モデル」は入力振動信号に基づき、第2固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成するモデルである。これにより、当該第2固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する「第2振動子」が生成される。さらに第2振動子に基づいて「補助振動子」が生成される。これにより、補助振動子によって補助されたユーザの運動リズムと補助振動子のリズムとを調和させながら、ユーザの運動リズムを目標運動リズムに一致させることができる。ユーザの運動リズムと補助振動子のリズムとの調和により、運動補助装置による誘導リズムがユーザの運動リズムに調和し、かつ、ユーザの運動リズムも運動補助装置による誘導リズムに調和するといったようにユーザ(人間)と装置(機械)との調和(相互の歩み寄り)が図られる。
また、第1発明の運動補助装置によれば、主に次の理由により、ユーザの運動スケールをその目標とするスケールに一致させるようにユーザの運動が補助されうる。
ユーザの運動スケールに応じた第3運動振動子をその目標値に近付けるように当該ユーザの運動を補助するための仮想的なバネ等の弾性要素の弾性力を表している「第1補助振動子」が生成され、この第1補助振動子を含む補助振動子が生成される。なお、第3運動振動子として第2運動振動子が測定されてもよい。仮想的な弾性要素の弾性力は、ユーザの運動リズムとの調和を図りつつ、ユーザの運動リズムを目標リズムに一致させるようにユーザの運動を補助するという観点から適当な振動子の角速度に相当する新たな固有角速度に応じている。したがって、第1補助振動子を含む補助振動子に応じてユーザの運動が補助されることで、ユーザの運動リズムと補助振動子のリズムとの調和、およびユーザの運動リズムと目標リズムとの一致を図り、かつ、ユーザの運動スケールに応じた第3運動振動子の値が目標値に近づくように、すなわち、ユーザの運動スケールが目標スケールに近付くようにユーザの運動が補助されうる。
さらに、第1発明の運動補助装置によれば、運動指標値取得手段により、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値(例えば、歩行比、歩幅など)が取得される。そして、補助振動子調整手段により、ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように第1補助振動子が逐次調整される。すなわち、ユーザの運動のリズムを目標リズムに一致させるように生成された第2振動子に対して、ユーザの運動のスケールを目標スケールに一致させるようにユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力が、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値を基準値に近付けさせるように逐次調整されることとなる。このように、ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように第1補助振動子を調整することで、生成される補助振動子におけるリズムとスケールとのバランスが調整されるので、補助振動子によるユーザの運動の補助が適切なバランスで行われうる。
以上のように、本発明の運動補助装置によれば、ユーザの運動のリズムおよびスケールをその目標とするリズムおよびスケールにそれぞれ一致させるようにユーザの運動を補助しうると共に、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスが取れるように運動を補助しうる。
なお、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値として、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスを直接的に示す値(例えば、歩行比など)を用い、例えば、ユーザの運動から測定された歩行比を、基準歩行比に近付けさせるように第1補助振動子が調整されるものとしてもよい。また、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値として、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスを直接的に示す値(例えば、歩行比など)に関連した値(例えば、歩幅など)を用い、例えば、ユーザの運動から測定された歩幅を、基準歩行比から得られる基準歩幅に近付けさせるように第1補助振動子が調整されるものとしてもよい。
ユーザの運動には、歩行、走行、ものづくりに伴う手作業等、種々の運動が含まれ得る。たとえば、自動車等の製品の製造に関する手作業が補助される場合、ユーザは補助振動子にしたがうことで、目標とする動きのリズムおよび動きの大きさ(または力加減)をもって作業することができる。目標となる運動のリズムおよびスケールが、熟練作業者等の手作業に基づいて設定されている場合、このユーザに熟練作業者の微妙な手の動きや力加減等を実感させ、その技術を早期に修得させることができる。
また、第1発明の運動補助装置において、前記補助振動子生成手段は、前記仮想的な弾性要素の弾性係数としての、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度と第1パラメータとの関数である第1係数、前記第3運動振動子の値と前記目標値との偏差と第3パラメータとの関数である第3係数、及び前記第2振動子との積として算出される振動子が含まれている前記第1補助振動子を生成するものであり、前記補助振動子調整手段は、前記運動指標値と、該運動指標値の前記基準値との偏差に基づき、該運動指標値を該基準値に近付けさせるように、前記第1係数を算出するための前記第1パラメータ、および前記第3係数を算出するための前記第3パラメータのうち少なくともいずれか一つを逐次調整することを特徴とする(第2発明)。
第2発明の運動補助装置によれば、第1補助振動子が、第1係数を弾性係数(バネ係数)とし、かつ、ユーザの運動スケールに応じた第3運動振動子(例えば、股関節角度)の値を目標値(例えば、目標股関節角度)に復元させる仮想的なバネ等の弾性要素(第3係数)による弾性力として表現される。これにより、筋肉の収縮状態から伸展状態への移行時の弾性力等、ユーザの身体の弾性要素が反映されたリズムおよびスケールをもってユーザの運動が補助されうる。このとき、補助振動子調整手段により、運動指標値を基準値に近付けさせるように、第1係数を算出するための第1パラメータ、および第3係数を算出するための第3パラメータのうち少なくともいずれか一つが逐次調整される。これにより、ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力に、運動指標値を基準値に近付けさせるような調整が逐次加えられる。
なお、前記第1パラメータ及び第3パラメータが、複数のパラメータからなるパラメータの組である場合、パラメータの組に含まれる各パラメータをそれぞれ逐次調整しうる。
また、第1又は第2発明の運動補助装置において、ユーザからの操作又はユーザの運動状態に応じて前記運動指標値の前記基準値を設定する手段を備えることを特徴とする(第3発明)。
第3発明の運動補助装置によれば、例えば歩行運動のトレーニング等のための、運動指標値の基準値(例えば、歩行比などの基準値)を、ユーザが操作して指定したり、ユーザの運動状態に応じて選択的に設定したりすることを容易に行いうる。
また、第1〜第3発明の運動補助装置において、前記ユーザの目標運動スケールに応じた前記目標値を、前記運動指標値の前記基準値に基づいて設定する手段を備えることを特徴とする(第4発明)。
第4発明の運動補助装置によれば、ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力を表す第1補助振動子が、第3運動振動子の値をユーザの運動指標値の基準値に基づいた目標値に近付けるように生成される。これにより、ユーザの運動指標値を基準値に近付かせ、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスが取れるように運動を補助しうる。
また、第1〜第4発明の運動補助装置において、前記ユーザの運動は該ユーザの左部と右部とでそれぞれ行われるものであり、前記補助振動子調整手段は、前記ユーザの左部と右部との運動のそれぞれについて、前記ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記第1補助振動子を逐次調整することを特徴とする(第5発明)。
第6発明の運動補助装置によれば、ユーザの運動が、例えば歩行運動のように、ユーザの左部と右部とでそれぞれ行われるものである場合に、ユーザの左部と右部との運動のそれぞれについて、第1補助振動子を独立に調整可能である。よって、ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力が、ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、より緻密に逐次調整されうる。
また、第1〜第5発明の運動補助装置において、前記ユーザの運動は屈曲方向の運動と伸展方向の運動とからなり、前記補助振動子調整手段は、前記ユーザの屈曲方向の運動と伸展方向の運動とのそれぞれについて、前記ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記第1補助振動子を逐次調整することを特徴とする(第6発明)。
第6発明の運動補助装置によれば、ユーザの運動が、例えば歩行運動のように、屈曲方向の運動と伸展方向の運動とからなる場合に、ユーザの屈曲方向の運動と伸展方向の運動とのそれぞれについて、第1補助振動子を独立に調整可能である。よって、ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力が、ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、より緻密に逐次調整されうる。
本発明の運動補助装置の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の運動補助装置の外観図であり、図2は図1の運動補助装置の制御システムの機能ブロック図であり、図3は図1の運動補助装置の全体的な作動(歩行補助処理)を示すフローチャートであり、図4は補助振動子生成に関する仮想的なバネおよびダンパの説明図であり、図5は図1の歩行補助処理における第1補助振動子を生成する処理を示すフローチャートである。
以下、脚体等の左右を区別するためにパラメータに添字「L」および「R」を付記するが、左右を区別する必要がない場合や左右成分を有するベクトルを表現する場合には当該添字を省略する。
図1に示されている歩行補助装置(運動補助装置)10は、第1装具11と、左右一対の第2装具12と、左右一対のアクチュエータ14と、バッテリ16と、第1制御装置100と、股関節角度センサ102とを備えている。
第1装具11および第2装具12は、ともに剛性のある素材と柔軟性のある繊維等の素材とが組み合わせられて形成されている。第1装具11は、人間(ユーザ)Pの腰部または胴体下部(第1身体部分)の後側に装着される。第2装具12は、人間Pの大腿部または脚体上部(第2身体部分)の前側および後側に装着される。第2装具12は左右両側ではなく左右片側のみに設けられてもよい。
アクチュエータ14はモータにより構成され、必要に応じてモータに加え減速機およびコンプライアンス機構のうち一方または両方により構成される。アクチュエータ14は第1装具11が腰部に取り付けられたとき、腰部の左右両側に配置されるように第1装具11に連結されている。アクチュエータ14は、連結部材15を介して大腿部の前後それぞれに装着される第2装具12に連結されている。連結部材15は軽量の硬質プラスチック等の定形性のある素材により形成され、第1装具11が腰部に取り付けられ、かつ、第2装具12が大腿部に取り付けられたとき、腰部の横から大腿部の横外側に沿って下方に延びた後で大腿部の前後両側に沿うように枝状に分かれた形状に形成されている。これにより、アクチュエータ14が動作することで、腰部および大腿部の相対運動が補助されるように腰部および大腿部の両方に力が作用する。腰部および大腿部の相対運動には、離床している脚体の大腿部の腰部に対する前後運動が含まれ、着床している脚体に対する腰部の前後運動が含まれる。
バッテリ16は第1装具11に収納されており(たとえば、第1装具11を構成する複数枚の素材の間に固定されており)、アクチュエータ14および第1制御装置100等に対して電力を供給する。
股関節角度センサ102は人間Pの腰部の横に配置されるロータリエンコーダにより構成され、股関節角度に応じた信号を出力する。
なお、バッテリ16および後述の第1制御装置100はそれぞれ、第1装具11ではなく第2装具12に収納されていてもよいし、第1装具11および第2装具12と別体で設けられていてもよい。
第1制御装置100は、第1装具11に収納されたコンピュータ(CPU、ROM、RAM、信号入力回路、信号出力回路等により構成される。)と、このコンピュータのメモリまたは記憶装置に格納されているソフトウェアとにより構成されている。当該ソフトウェアを当該コンピュータで実行することにより第1制御装置100の諸機能が実現される。
第1制御装置100は、バッテリ16からアクチュエータ14への供給電力を調節することにより、アクチュエータ14の動作または出力(トルク)を制御する。
図2に示されているように、第1制御装置100は、運動振動子測定手段110と、第1振動子生成手段120と、固有角速度設定手段130と、第2振動子生成手段140と、補助振動子生成手段150と、目標運動設定手段111と、補助振動子調整手段160と、運動指標値取得手段161とを備えている。各手段はそれぞれ別個のCPU等により構成されていてもよく、共通のCPU等により構成されていてもよい。
運動振動子測定手段110は股関節角度センサ102の出力に基づき、左右の股関節のそれぞれの角速度および角度のそれぞれを第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2のそれぞれとして測定する。第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2は人間Pの周期的な運動に応じて周期的に変化するパラメータに該当する。運動振動子を測定するとはパラメータの周期的な変化パターンを測定することを意味する。「周期的」とは振幅および位相、さらには位相の1回時間微分値である角速度を定義することができることを意味しており、必ずしも振幅や位相が一定であることを意味するものではない。
なお、第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2の組み合わせとして、人間Pの周期的な運動に応じて周期的に変化する任意の異なるパラメータの組み合わせが適当なセンサを用いて測定されてもよい。たとえば、一方の運動振動子として股関節、膝関節、足関節、肩関節、肘関節等の任意の関節の角度、大腿部、足平部、上腕部、手部、腰部の位置(人間Pの重心を基準とした前後方向の位置または上下方向の位置など)が測定され、他方の運動振動子として同じ関節の角速度、角加速度または同じ部位の前後方向への変位速度、加速度等の時間微分値が測定される等、同一部位の周期的な動きのリズム(周期またはその逆数に比例する角速度により特定される。)を表わすリズムでそれぞれ周期的に変化するパラメータが第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2(=dnφ1/dtn(n=1,2,‥))として測定されてもよい。
また、一方の運動振動子として第1関節の角度または第1部位の位置が測定され、他方の運動振動子として第1関節とは異なる第2関節の角速度、角加速度または第1部位とは異なる第2部位の速度、加速度等の時間微分値が測定される等、異なる部位の周期的な動きのリズムを表わすリズムでそれぞれ周期的に変化するパラメータが第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2として測定されてもよい。
さらに、左右の脚体の着床するときに生じる音、呼吸音、意図的な発声音等、歩行運動リズムと連関したリズムで変動する種々のパラメータが第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2のうち一方または両方として測定されてもよい。
後述するように第1運動振動子φ1および第2運動振動子φ2のそれぞれは、補助振動子ηの生成基礎となる、人間Pの運動の速さ(運動リズム)を表わす第4運動振動子φ4および人間Pの運動の大きさ(運動スケール)を表わす第3運動振動子φ3のそれぞれにも該当する。第3運動振動子φ3としては、運動補助装置10により人間Pが実際に補助される部分(補助力が付加される部分)の運動の大きさが測定される。なお、第4運動振動子φ4として第1運動振動子φ1とは異なる周期的に変化するパラメータが測定されてもよく、第3運動振動子φ3として第2運動振動子φ2とは異なる周期的に変化するパラメータが測定されてもよい。
また、後述するように第4運動振動子φ4および第3運動振動子φ3のそれぞれは、第1補助振動子η1の調整基礎となる、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスを示す運動指標値(歩行比)Rの算出に用いられる第5運動振動子φ5にも該当する。なお、第5運動振動子φ5として第4運動振動子φ4および第3運動振動子φ3とは異なる周期的に変化するパラメータが測定されてもよい。
目標運動設定手段111は、人間Pの目標運動とするリズムおよびスケールに関する値を設定する。具体的には、目標運動設定手段111は、当該目標リズムおよびスケールに関する係数、目標位相差δθ0、人間Pの目標運動スケールに応じた目標値(本実施形態では目標股関節角度φ0)、および人間Pの運動指標値の基準値(本実施形態では基準歩行比R0)を設定する。設定された目標位相差δθ0は固有角速度設定手段130で用いられる。また、設定された係数、目標値φ0、人間Pの運動指標値の基準値R0は、補助振動子生成手段150および補助振動子調整手段160で用いられる。
第1振動子生成手段120は、運動振動子測定手段110により測定された第1運動振動子φ1を入力振動信号として第1モデルに入力することにより、出力振動信号として第1振動子ξ1を生成する。振動子を生成するとはパラメータの周期的な変化パターンを定めることを意味する。「第1モデル」は、入力振動信号と相互に引き込み合うことで第1固有角速度ω1に基づいて定まる角速度で変化する出力振動信号を生成するモデルである。なお、第1振動子設定手段120は、固有角速度設定手段130により設定された最新の第2固有角速度ω2を最新の第1固有角速度ω1として採用することにより第1モデルを逐次再定義し、以後の第1運動振動子φ1を入力振動信号として当該定義後の第1モデルに入力することにより、出力振動信号として以後の第1振動子ξ1を生成してもよい。
固有角速度設定手段130は、第1位相差δθ1に基づき、仮想モデルにしたがって、第2位相差δθ2が目標位相差δθ0に近づくように第2固有角速度ω2を設定する。第1位相差δθ1は、運動振動子測定手段110により測定された第1運動振動子φ1と、第1振動子生成手段120により生成された第1振動子ξ1との位相差である。「仮想モデル」は、第1運動振動子φ1(広義には人間Pの運動に伴って周期的に時間変化するパラメータ)が第1仮想振動子ψ1として表現され、運動補助装置10の動作に伴って周期的に変化する補助振動子η(または第1振動子ξ1)が第2仮想振動子ψ2として表現され、かつ、第1運動振動子φ1と補助振動子ηとの位相差が、第1仮想振動子ψ1と第2仮想振動子ψ2との位相差である第2位相差δθ2として表現されているモデルである。
固有角速度設定手段130は、第1位相差設定手段131と、第2位相差設定手段132と、相関係数設定手段133と、第1角速度設定手段134と、第2角速度設定手段135とを備えている。第1位相差設定手段131は第1運動振動子φ1と第1振動子ξ1との位相差を第1位相差δθ1として設定する。第2位相差設定手段132は「仮想モデル」において定義されている第1仮想振動子ψ1と第2仮想振動子ψ2との位相差を第2位相差δθ2として設定する。相関係数設定手段133は、第2位相差設定手段132により設定された第2位相差δθ2が、第1位相差設定手段131により設定された第1位相差δθ1に近づくように第1仮想振動子ψ1と第2仮想振動子ψ2との相関係数εを設定する。第1角速度設定手段134は、相関係数設定手段133により設定された相関係数εに基づき、第1仮想振動子ψ1の角速度ω1/を設定する。
第2角速度設定手段135は、第1角速度設定手段134により設定された第1仮想振動子ψ1の角速度ω1/に基づき、第2位相差設定手段132により設定された第2位相差δθ2が目標位相差δθ0に近づくように第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/を設定する。固有角速度設定部130は第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/を第2固有角速度ω2として設定する。
第2振動子生成手段140は、運動振動子測定手段110により測定された第2運動振動子φ2を入力振動信号として第2モデルに入力することにより、出力振動信号として第2振動子ξ2を生成する。「第2モデル」は入力振動信号に基づき、固有角速度設定手段130により設定された第2固有角速度ω2に基づいて定まる角速度で変化する出力振動信号を生成するモデルである。
補助振動子生成手段150は、第2振動子生成手段140により生成された第2振動子ξ2に基づき、運動補助装置10のアクチュエータ14により大腿部pに与えられるトルクを定める補助振動子ηを生成する。
補助振動子生成手段150は、第1補助振動子生成手段151と、第2補助振動子生成手段152と、補助振動子調整手段とを備えている。
運動指標値取得手段161は、運動振動子測定手段110により測定された第5運動振動子φ5に基づいて、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスを示すユーザの運動指標値を取得する。本実施形態では、股関節角速度および股関節角度に基づき、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値として、歩行比R(=歩幅W/歩行率U)を取得する。なお、運動指標値としては、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスを示す歩行比Rに関連する値として、歩幅Wを用いてもよい。さらに、運動指標値として、歩幅Wに代えて、屈曲方向と伸展方向とで独立に設定された歩幅や股関節角度等を用いてもよい。
補助振動子調整手段160は、補助振動子生成手段150が後述の第1補助振動子ηを生成するために用いる、目標運動設定手段111により設定された係数を調整する。このとき、補助振動子調整手段160は、運動指標値取得手段161により取得された運動指標値(歩行比)Rと、目標運動設定手段111により設定された運動指標値の基準値(基準歩行比)R0との偏差に基づいて、係数を調整する。
補助振動子生成手段150は、第2振動子生成手段140により生成された第2振動子ξ2に基づき、運動補助装置10のアクチュエータ14により大腿部pに与えられるトルクを定める補助振動子ηを生成する。詳細には、補助振動子生成手段150は、第2振動子ξ2に基づき、固有角速度設定手段130により設定された第2固有角速度ω2と、運動振動子測定手段110により測定された第3運動振動子φ3と、補助振動子調整手段160により調整された係数とを用いて、第1補助振動子η1を生成する。また、補助振動子生成手段150は、第2振動子ξ2に基づき、固有角速度設定手段130により設定された第2固有角速度ω2と、運動振動子測定手段110により測定された第3運動振動子φ3と第4運動振動子φ4と、目標運動設定手段111により設定された係数とを用いて、第2補助振動子η2を生成する。そして、補助振動子生成手段150は、第1補助振動子η1と第2補助振動子η2を含む補助振動子ηを生成する。
前記構成の歩行補助装置10により人間Pの歩行運動が補助されるが、その補助方法について図2〜図4を用いて説明する。
第1制御装置100により歩行補助装置10の動作が次に説明するように制御される。まず、人間Pが歩行運動を開始すると運動振動子測定手段110が、股関節角度センサ102の出力に基づき、人間Pの左右の股関節角速度を第1運動振動子φ1=(φ1L,φ1R)および第4運動振動子φ4=(φ4L,φ4R)のそれぞれとして測定する(図3/S011)。また、運動振動子測定手段110が、股関節角度センサ102の出力に基づき、人間Pの左右の股関節角度を第2運動振動子φ2=(φ2L,φ2R)および第3運動振動子φ1=(φ3L,φ3R)として測定する(図3/S012)。
さらに、第1振動子生成手段120が、運動振動子測定手段110により測定された第1運動振動子φ1を入力振動信号として第1モデルに入力することにより、出力振動信号として第1振動子ξ1を生成する(図3/S020)。第1モデルは左右の脚体等、複数の第1要素の相関関係を表現するモデルであり、前記のように入力振動信号と相互に引き込み合うことで第1固有角速度ω1=(ω1L,ω1R)に基づいて定まる角速度で変化する出力振動信号を生成するモデルである。第1モデルはたとえば式(10)で表わされるファン・デル・ポル(van der Pol)方程式によって定義される。
Figure 0004271711
“A”は第1振動子ξ1およびその1回時間微分値(dξ1/dt)がξ1−(dξ1/dt)平面で安定なリミットサイクルを描くように設定される正の係数である。“g”は人間Pの左右の脚体等、異なる身体部分の相関関係を、第1振動子ξ1の左右各成分の相関関係(複数の第1要素の出力振動信号の相関関係)に反映させるための第1相関係数である。“K1”は第1運動振動子φ1に応じたフィードバック係数である。
第1振動子ξ1=(ξ1L,ξ1R)はルンゲ・クッタ法にしたがって算定または生成される。第1振動子ξ1の成分ξ1Lおよびξ1Rのそれぞれの角速度は、左右の脚体のそれぞれの運動を補助する仮定的なリズムを表わしている。また、第1振動子ξ1はファン・デル・ポル方程式の1つの性質である「相互引き込み」により、実際の歩行運動リズムとほぼ同じ角速度またはリズムで変化する第1運動振動子φ1のリズムと調和しながらも第1固有角速度ω1に基づいて定まる自律的な角速度またはリズムをもって周期的に変化または振動するという性質がある。
なお、式(10)で表現されたファン・デル・ポル方程式とは異なる形のファン・デル・ポル方程式によって第1モデルが表現されてもよく、入力振動信号との相互引き込みを伴い、第1固有角速度ω1に基づいて定まる角速度で周期的に変化する出力振動信号が生成されるあらゆる方程式によって第1モデルが表現されてもよい。また、測定対象となる第1運動振動子φ1の数が増やされてもよい。第1モデルに入力される第1運動振動子φ1が多くなるほど、この第1モデルを定義するファン・デル・ポル方程式等の第1振動子ξ1の生成に応じた非線形微分方程式における相関項は多くなるが、当該相関係数の調節によって人間Pの身体の様々な部分の動きに鑑みた一層緻密な運動の補助が実現される。
続いて、目標運動設定手段111が、人間Pの目標運動とするリズムおよびスケールに関する値として、目標位相差δθ0=(θ0L,θ0R)、を設定する(図3/S030)。目標位相差δθ0としては、予め定められた値が用いられる。このとき、目標運動設定手段111は、歩行補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pによって設定された値を、目標位相差δθ0として設定してもよい。また、目標運動設定手段111は、運動振動子測定手段110により測定された1つ以上の運動振動子に基づいて人間Pの歩行状態を判定し、この判定した歩行状態に応じて、予め定められた複数の値のうちから目標位相差δθ0を選択して設定してもよい。具体的には、目標運動設定手段111は、歩行状態と、股関節角速度φ4を含むn(n=1、2、‥)個の運動振動子によってn次元空間に描かれる軌道パターンとの、予め定められた対応関係をメモリから読み込む。そして、目標運動設定手段111は、読み込んだ対応関係と、測定されたn個の運動振動子によってn次元空間に描かれるパターンとに基づき「歩行状態」を判定する。
人間Pの歩行状態には、人間Pがほぼ平坦な床面を歩行する「平地歩行状態」、人間Pが坂または階段を昇る「上昇歩行状態」および人間Pがある坂または階段を下る「下降歩行状態」並びに人間Pがゆっくりと歩行する「スロー歩行状態」および人間Pが速く歩行する「クイック歩行状態」等が含まれ得る。
なお、歩行状態判定用の運動振動子として、人間Pの股関節角度や、膝関節、足関節、肩関節、肘関節の角度や角速度、角加速度、脚体の一部の位置、さらには歩行者の着地音、呼吸音、意図的な発声音等、歩行運動リズムと連関したリズムで変動する種々のパラメータが測定されてもよい。
続いて、固有角速度設定手段130が、運動振動子測定手段110により測定された第1運動振動子φ1と第1振動子生成手段120により生成された第1振動子ξ1とに基づき、第1運動振動子φ1と第1振動子ξ1との位相差である第1位相差δθ1に基づき、第2位相差δθ2が目標位相差δθ0に近づくように第2固有角速度ω2を設定する。
具体的には、第1位相差設定手段131が、運動振動子測定手段110により測定された第1運動振動子φ1と、第1振動子設定手段120により生成された第1振動子ξ1との位相差を第1位相差δθ1として設定する(図3/s031)。たとえば、φ1=0かつ(dφ1/dt)>0となる時刻と、ξ1=0かつ(dξ1/dt)>0となる時刻との時間差に基づいて第1位相差δθ1が算定または設定される。
また、第2位相差設定手段132が、最近の3歩行周期にわたって第1位相差δθ1が一定であることまたは第1位相差δθ1の変動が許容範囲内に収まっていることを要件として、第2位相差δθ2を設定する(図3/S032)。具体的には、式(21)および(22)により定義され仮想モデルにおいて定義される第1仮想振動子ψ1=(ψ1L,ψ1R)と第2仮想振動子ψ2=(ψ2L,ψ2R)との位相差を式(23)にしたがって第2位相差δθ2として設定する。第1仮想振動子ψ1は、仮想モデルにおいて第1運動振動子φ1を擬似的に表現する。第2仮想振動子ψ2は仮想モデルにおいて補助振動子ηを擬似的に表現する。
Figure 0004271711
“ε=(εL,εR)”の各成分は第1仮想振動子ψ1の各成分および第2仮想振動子ψ2の各成分の相関関係を表わす相関係数である。“ω1/=(ω1/L,ω1/R)”は第1仮想振動子ψ1の各成分の角速度である。“ω2/=(ω2/L,ω2/R)”は第2仮想振動子ψ2の各成分の角速度である。
続いて、相関係数設定手段133が、第1位相差設定手段131により設定された第1位相差δθ1と第2位相差設定手段132により設定された第2位相差δθ2との偏差が最小になるように相関係数εを設定する(図3/S033)。
具体的には式(24)にしたがって、左右各成分について第1運動振動子φ1が0となる各時刻tiにおける相関係数ε(ti)が逐次設定される。
Figure 0004271711
“B=(BL,BR)”の各成分は、第1位相差δθ1の各成分と、第2位相差δθ2の左右各成分とを近づけるポテンシャルV=(V,V)の安定性を表す係数である。
次に、第1角速度設定手段134が、相関係数設定手段133により設定された相関係数εに基づき、第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/が一定であるという条件下で、各成分について第1位相差δθ1および第2位相差δθ2の偏差が最小となるように第1仮想振動子ψ1の角速度ω1/を式(25)にしたがって設定する(図3/S034)。
Figure 0004271711
“α=(αL,αR)”の各成分は系の安定性を表す係数である。
続いて第2角速度設定手段135が各成分について、第1角速度設定手段134により設定された第1仮想振動子ψ1の角速度ω1/に基づき、第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/を設定する(図3/S035)。具体的には、第2角速度設定手段135が、各成分について第2位相差δθ2が目標位相差δθ0に近づくように、式(26)にしたがって第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/=(ω2/L,ω2/R)を設定する。そして、第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/が第2固有角速度ω2として設定される(図3/S036)。
Figure 0004271711
“β=(βL,βR)”の各成分は系の安定性を表す係数である。
また、第2振動子生成手段140が、運動振動子測定手段110により測定された第2運動振動子φ2を入力振動信号として第2モデルに入力することにより、出力振動信号として第2振動子ξ2=(ξ2L+,ξ2L-,ξ2R+,ξ2R-)を生成する(図3/S040)。第2モデルは各脚体の屈曲方向(前方)への動きおよび伸展方向(後方)への動きを司る神経要素等、複数の第2要素の相関関係を表現するモデルであり、前記のように入力振動信号に基づき、固有角速度設定手段130により設定された第2固有角速度ω2に基づいて定まる角速度で変化する出力振動信号を生成するモデルである。第2モデルはたとえば式(30)により表現される連立微分方程式により定義される。当該連立微分方程式には左大腿部の屈曲方向(前方)および伸展方向(後方)のそれぞれへの運動を支配する神経要素L+およびL−、並びに右大腿部の屈曲方向および伸展方向のそれぞれへの運動を支配する神経要素R+およびR−の膜電位の変動に対応する状態変数ui(i=L+,L−,R+,R−)と、神経要素iの順応効果を表現するための自己抑制因子viとが含まれている。
Figure 0004271711
“τ1i”は状態変数uiの変化特性を規定する時定数であり、ω依存性を有する係数t(ω)と、定数γ=(γL,γR)とを用いて式(31)により表現されるが、第2固有角速度ω2に依存して変化する。
Figure 0004271711
“τ2i”は自己抑制因子viの変化特性を規定する時定数である。“wi/j”は人間Pの左右各脚体の屈曲方向および伸展方向への動きを司る神経要素の相関関係を第2振動子ξ2の各成分の相関関係(複数の第2要素の出力振動信号の相関関係)に反映させるための負の第2相関係数である。“λL”および“λR”は慣れ係数である。“K2”は第2運動振動子φ2に応じたフィードバック係数である。
“f1”は正の係数cを用いて式(32)により定義される第2固有角速度ω2の1次関数である。“f2”は係数c0,c1およびc2を用いて式(33)により定義される第2固有角速度ω2の2次関数である。
Figure 0004271711
第2振動子ξ2iは、状態変数uiの値が閾値uth未満である場合は0、状態変数uiの値が閾値uth以上である場合は1とする。このuiの値をとる。あるいは、第2振動子ξ2iは、シグモイド関数fsによって定義されている(式(30)参照)。これにより、大腿部の屈曲方向(前方)への動きについてはこの動きを支配する第2要素(神経要素)L+、R+の出力である第2振動子ξ2L+およびξ2R+が、他の第2要素の出力よりも大きくなる。また、大腿部の伸展方向(後方)への動きについてはこの動きを支配する第2要素L−、R−の出力である第2振動子ξ2L-およびξ2R-が、他の第2要素の出力よりも大きくなる。脚体(大腿部)の前方または後方への動きは、たとえば、股関節角速度の極性によって識別される。
なお、測定対象となる第2運動振動子φ2の数が増やされてもよい。第2モデルに入力される第2運動振動子φ2が多くなるほど、この第2モデルを定義する連立微分方程式における相関項は多くなるが、当該相関係数の調節によって人間Pの身体の様々な部分の動きに鑑みた一層緻密な運動の補助が実現される。
次に、補助振動子生成手段150が、運動振動子測定手段110によって測定された第3運動振動子φ3および第4運動振動子φ4と、第2振動子生成手段140により生成された第2振動子ξ2と、固有角速度設定手段130によって設定された第2固有角速度ω2とに基づき、補助振動子η=(ηL,ηR)を設定する。前記のように第2運動振動子φ2と同じく第3運動振動子φ3として測定される股関節角度と、第1運動振動子φ1と同じく第4運動振動子φ4として測定される股関節角速度とに基づいて補助振動子ηが設定される。
具体的には、第3運動振動子φ3と、第2振動子ξ2と、第2固有角速度ω2とに基づき、式(40)にしたがって第1補助振動子η1=(η1L,η1R)が生成される(図3/S051)。
Figure 0004271711
“g1+”は係数ak+(k=0〜3)を用いて式(41)により定義される第2固有角速度ω2の3次関数である。“g1-” は係数ak-(k=0〜3)を用いて式(42)により定義される第2固有角速度ω2の3次関数である。“g+”は係数ci+(i=1,2)および第3運動振動子φ3の値の正方向の目標値(股関節角度の屈曲方向の目標値)φ0+を用いて式(43)により定義される第3運動振動子φ3の3次関数である。“g-” は係数ci-(i=1,2)および第3運動振動子φ3の値の負方向の目標値(股関節角度の伸展方向の目標値)φ0-を用いて式(44)で定義される第3運動振動子φ3の3次関数である。
Figure 0004271711
なお、g1+,g1-は本発明の第1係数に相当し、ak+,ak-(k=0〜3)は本発明の第1パラメータに相当する。また、g+,g-は本発明の第3係数に相当し、c1+,c2+,c1-,c2-は本発明の第3パラメータに相当する。
第1補助振動子η1は第1係数g1+およびg1-をそれぞれ弾性係数とする、第3運動振動子φ3の値を正方向の目標値φ0+および負方向の目標値φ0-のそれぞれに復元させる、図4に示されている2つの仮想的な弾性要素(たとえばバネ)G1+およびG1-による弾性力として表現されている。この第1補助振動子η1に基づいて人間Pの歩行運動が補助されることにより、筋肉の収縮状態から伸展状態への移行時の弾性力等、人間Pの筋肉等の弾性要素の挙動特性に鑑みて適切な運動スケールが実現されるようにこの人間Pの歩行運動が補助されうる。
第1補助振動子η1のうち“g1+(ω2L)g+(φ3L)ξ2L+”および“g1+(ω2R)g+(φ3R)ξ2R+”は、弾性係数g1+に応じて第3運動振動子φ3の値を正方向の目標値φ0+に近付けるように人間Pの大腿部に作用する、一方の仮想的な弾性要素G1+の弾性力を表現している(式(40)(41)(43)、図4参照)。すなわち、当該項は第3運動振動子(股関節角度)φ3の値が正方向の目標値φ0+未満である場合、大腿部を前方に動かす一方、第3運動振動子φ3の値が正方向の目標値φ0+を超えた場合、大腿部を後方に動かすような弾性要素G1+の弾性力を表現している。一方、第1補助振動子η1のうち“−g1-(ω2L)g-(φ3L)ξ2L-”および“−g1-(ω2R)g-(φ3R)ξ2R-”は、弾性係数g1-に応じて第3運動振動子φ3の値を負方向の目標値φ0-に近付けるように人間Pの大腿部に作用する、一方の仮想的な弾性要素G1-の弾性力を表現している(式(40)(42)(44)、図4参照)。すなわち、当該項は第3運動振動子(股関節角度)φ3の値が負方向の目標値φ0-より大きい場合、大腿部を後方に動かす一方、第3運動振動子φ3の値が負方向の目標値φ0-を下回った場合、大腿部を前方に動かすような弾性要素G1-の弾性力を表現している。
また、前記のように大腿部の前方への動きおよび後方への動きの別に応じて複数の第2要素i(=L+,L−,R+,R−)のうち一部から偏重的に出力があるので、2つの仮想的な弾性要素G1+およびG1-のそれぞれの弾性力が相殺される事態が回避される。たとえば、左の大腿部が前方に動いているとき、この動きを支配する第2要素L+に応じた第2振動子ξ2L+の値が他の第2要素L−に応じた第2振動子ξ2L-の値より大きくなるので、式(40)により表現される第1補助振動子η1Lが式(45)により近似的に表現される。すなわち、左の大腿部が前方に動いているとき、第1補助振動子η1は両方の弾性要素G1+およびG1-の弾性力の和ではなく、第3運動振動子φ3の値を正方向の目標値φ0+に近付けるように人間Pの左の大腿部に作用する一方の弾性要素G1+の弾性力として近似的に表現される。これは右の大腿部についても同様である。これにより、2つの仮想的な弾性要素G1+およびG1-のそれぞれの弾性力が相殺される事態が回避される。
Figure 0004271711
また、たとえば、左の大腿部が後方に動いているとき、この動きを支配する第2要素L−の出力が他の第2要素L+の出力より大きくなり、これによって第2要素L−に応じた第2振動子ξ2L-の値が第2要素L+に応じた第2振動子ξ2L+の値より大きくなって、式(40)により表現される第1補助振動子η1Lは式(46)により近似的に表現される。すなわち、左の大腿部が後方に動いているとき、第1補助振動子η1は両方の弾性要素G1+およびG1-の弾性力の和ではなく、第3運動振動子φ3の値を負方向の目標値φ0-に近付けるように人間Pの左の大腿部に作用する一方の弾性要素G1-の弾性力として近似的に表現される。これは右の大腿部についても同様である。これにより、2つの仮想的な弾性要素G1+およびG1-のそれぞれの弾性力が相殺される事態が回避される。
Figure 0004271711
第3運動振動子φ3の値の目標値φ0+およびφ0-は歩幅等の目標運動スケールに応じて人間Pの股関節角速度を含む脚体の姿勢を特定するための幾何学的特徴にしたがって設定される。また、第2固有角速度ω2の関数である第1係数g1+(ω2)およびg1−(ω2)のそれぞれに含まれる係数ak+およびak-は歩行率(=単位時間当たりの歩数)等の目標運動リズムに応じた係数として設定されうる。なお、第3運動振動子φ3の値の目標値φ0+およびφ0-は運動補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pの歩行運動を観察する者等によって設定された目標運動スケールに基づき、人間Pの股関節角度を含む脚体の姿勢の幾何学的条件にしたがって設定されてもよい。また、第1係数g1+(ω2)およびg1-(ω2)のそれぞれに含まれる係数ak+およびak-は、運動補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pによって設定された目標とする「歩行率」に応じて設定されてもよい。
ここで、上述の第1補助振動子η1を生成する処理(図3/s051)について、図5のフローチャートを参照して説明する。
まず、運動指標値取得手段161が、運動振動子測定手段110により測定された第5運動振動子(股関節角度および股関節角速度)φ5に基づいて、人間Pの歩行比R(人間Pの運動指標値)を取得する(図5/s201)。具体的には、測定された股関節角度に基づいて、人間Pの脚体の姿勢の幾何学的条件にしたがって歩幅Wを測定する。また、測定された股関節角速度の時系列データから歩行率U(=歩数/分)を測定する。なお、例えば、加速度センサ等を備えて歩数を測定することで、歩行率Uが直接的に測定されるようにしてもよい。そして、運動指標値取得手段161は、測定された歩幅Wと歩行率Uとを用いて、歩行比R(=歩幅W/歩行率U)を取得する。なお、歩幅Wおよび歩行率Uとしては、制御周期毎に測定された歩幅W及び歩行率Uの所定回数分の制御周期における平均値を用いてもよい。
次いで、目標運動設定手段111が、基準歩行比(人間Pの運動指標値の基準値)R0を設定する(図5/s202)。基準歩行比R0としては、予め定められた値が用いる。このとき、目標運動設定手段111は、人間Pの歩行状態を判定し、この判定した歩行状態に応じて、予め定められた複数の値のうちから基準歩行比R0を選択して設定してもよい。また、目標運動設定手段111は、歩行補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pによって設定された値を、基準歩行比R0として設定してもよい。
次いで、目標運動設定手段111が、上記式(41)(42)で示される第2固有角速度ω2の関数である第1係数g1+(ω2)およびg1-(ω2)のそれぞれに含まれる、目標となる運動リズム(歩行率)に応じた係数(第1パラメータ)ak+およびak-を設定する。これと共に、目標運動設定手段111が、上記式(43)(44)で示される股関節角度(第3運動振動子)φ3の関数である第3係数g+(φ3)およびg-(φ3)のそれぞれに含まれる、目標となる運動スケール(歩幅)に応じた係数(第3パラメータ)c1+,c2+,c1-,c2-を設定する(図5/s203)。
このとき、目標運動設定手段111は、人間Pの歩行状態を判定し、この判定した歩行状態に応じて、予め定められた複数の値のうちから第1パラメータak+,ak-、第3パラメータc1+,c2+,c1-,c2-を選択して設定してもよい。また、目標運動設定手段111は、歩行補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pによって設定された目標とする「歩行比」に応じて、第1パラメータak+,ak-、第3パラメータc1+,c2+,c1-,c2-を設定してもよい。
次いで、目標運動設定手段111が、S202で設定された基準歩行比R0に基づいて、人間Pの股関節角度を含む脚体の姿勢の幾何学的条件にしたがって、第3運動振動子(股関節角度)φ3の目標値φ0+およびφ0-を設定する(図5/S204)。具体的には、まず、目標運動設定手段111は、S201で測定された歩行率Uと、S202で設定された基準歩行比R0に基づいて、歩幅Wの目標値W0(=基準歩行比R0*歩行率U)を算出する。このとき、歩行率Uとしては、制御周期毎に測定された歩行率Uを、所定回数分の制御周期で平均した平均値を用いてもよい。
次いで、目標運動設定手段111は、測定された第3運動振動子(股関節角度)φ3から得られる、伸展方向の最大股関節角度φm+に基づいて、伸展方向の歩幅W+を算出する。このとき、伸展方向の最大股関節角度φm+としては、制御周期毎に測定された伸展方向の最大股関節角度φm+を、所定回数分の制御周期で平均した平均値を用いてもよい。
次いで、目標運動設定手段111は、算出された目標歩幅W0から、算出された伸展方向の歩幅W+を減じて、屈曲方向の歩幅W-の目標値W0-を算出する。
次いで、目標運動設定手段111は、算出された屈曲方向の目標歩幅W0-から、人間Pの股関節角度を含む脚体の姿勢の幾何学的条件にしたがって、屈曲方向の股関節角度の目標値φ0+を算出する。
なお、目標運動設定手段111は、伸展方向の股関節角度の目標値φ0-としては、人間Pの股関節角度を含む脚体の姿勢の幾何学的条件にしたがった、予め定められた上限値を用いる。なお、上限値は、人間Pの歩行状態に応じて設定されてもよい。また、上限値は、歩行補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pによって設定された目標とする「歩幅」に基づいて設定されてもよい。
また、基準歩行比R0に基づいて屈曲方向の股関節角度の目標値φ0+を設定し、伸展方向の股関節角度の目標値φ0-は、予め定められた上限値を用いるものとしたが、基準歩行比R0に基づいて伸展方向の股関節角度の目標値φ0+を設定し、屈曲方向の股関節角度の目標値φ0-は、予め定められた上限値を用いるものとしてもよい。また、運動指標値が、例えば、屈曲方向と伸展方向とで独立に設定された歩幅や股関節角度等である場合には、屈曲・伸展方向にそれぞれ対応するバネモデルで、屈曲方向と伸展方向とで独立に股関節角度の目標値φ0+およびφ0-を設定しうる。
次いで、補助振動子調整手段160が、S203で設定された第1パラメータak+,ak-(k=0〜3)、第3パラメータc1+,c2+,c1-,c2-を調整する(図5/S205)。このとき、補助振動子調整手段160は、S201で取得された歩行比Rと、S202で設定された基準歩行比R0との偏差に基づいて、パラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-を調整する。具体的には、上記式(24)にしたがって第1位相差δθ1と第2位相差δθ2との偏差が最小になるように相関係数εを逐次設定した手法と同様に、歩行比Rと基準歩行比R0との偏差が最小になるようにパラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-とが逐次設定される。すなわち、補助振動子調整手段160は、歩行比Rを基準歩行比R0に近付けさせるように、パラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-を設定値から変分させる。なお、パラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-の調整は、制御周期毎(1歩毎)でなく、所定回数分の制御周期毎(例えば、3歩毎)に行うものとする。
また、補助振動子調整手段160は、複数のパラメータからなるパラメータの組である第1パラメータ及び第3パラメータについて、第1パラメータak+,ak-のそれぞれ、、第3パラメータc1+,c2+,c1-,c2-のそれぞれのうち、少なくともいずれか一つを逐次調整しうる。
また、運動指標値として、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスを示す歩行比Rに関連する歩幅Wを用いた場合、補助振動子調整手段160は、歩幅Wを、基準歩行比R0から得られた基準歩幅W0に近付けさせるように、パラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-を調整する。また、運動指標値として、屈曲方向と伸展方向とで独立に設定された歩幅や股関節角度等を用いた場合、屈曲方向と伸展方向とで独立にパラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-が調整される。
次いで、補助振動子生成手段150が、第3運動振動子(股関節角度)φ3と、第2固有角速度ω2と、S204で設定された股関節角度の目標値φ0+およびφ0-と、S205で調整されたパラメータak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-とを、上記式(41)〜(44)に代入して、第1係数g1+,g1-、第3係数g+,-を算出する。そして、この算出した第1係数g1+,g1-、第3係数g+,-と、ξ2iと、第2固有角速度ω2を、上記式(40)に代入して、第1補助振動子η1を生成する(図5/S206)。
以上が第1補助振動子η1を生成する処理である。
なお、第3運動振動子φ3の値を変数とするシグモイド関数fs(式(30)参照)が第1係数g1+,g1-に組み込まれ、これにより第3運動振動子φ3の1回時間微分値dφ3/dtの極性により特定される大腿部の前後への動きの別に応じて、複数の第2要素iの出力としての第2振動子ξ2iのうち一部が偏重的に反映された形で第1補助振動子η1が生成されてもよい。これによっても2つの仮想的なバネG1+およびG1-のそれぞれの弾性力が相殺される事態が回避されうる。
さらに、運動振動子測定手段110により測定された第4運動振動子φ4と、第2振動子生成手段140により生成された第2振動子ξ2と、固有角速度設定手段130により設定された第2固有角速度ω2とに基づき、式(50)にしたがって第2補助振動子η2が設定される(図3/S052)。
Figure 0004271711
“g2+”は係数bk+(k=0〜3)を用いて式(51)により定義される第2固有角速度ω2の3次関数である。“g2-”は係数bk-(k=0〜3)を用いて式(52)により定義される第2固有角速度ω2の3次関数である。“H+”は式(53)により定義される第4運動振動子φ4の1回時間積分値の関数である。“H-”は式(54)により定義される第4運動振動子φ4の1回時間積分値の関数である。
Figure 0004271711
第2補助振動子η2は、第2係数g2+およびg2-をそれぞれ減衰係数とし、第4運動振動子φ4に応じてその時間積分値の絶対値の増大を抑制する、図5に示されている2つの仮想的な減衰要素(たとえばダンパ)G2+およびG2-の減衰力として表現されている。この第1補助振動子η1に基づいて人間Pの歩行運動が補助されることにより、筋肉の収縮状態から伸展状態への移行時の減衰力等、人間Pの筋肉等の減衰要素の挙動特性に鑑みて適切な運動スケールが実現されるようにこの人間Pの歩行運動が補助されうる。
第2補助振動子η2のうち“−g2+(ω2L)φ4L+(∫dtφ4L)ξ2L+”および“−g2+(ω2R)φ4R+(∫dtφ4R)ξ2R+”は、減衰係数g2+および第4運動振動子φ4の値に応じて、正方向の第4運動振動子φ4の時間積分値の絶対値の増大を抑制するように人間Pの大腿部に作用する、一方の仮想的な弾性要素G2+の弾性力を表現している(式(50)(51)(53)、図4参照)。すなわち、当該項は第4運動振動子(股関節角速度)φ4の値が正方向に大きいほど、大腿部の前方への動きを強く抑制するような減衰要素G2+の減衰力を表現している。一方、第2補助振動子η1のうち“g2-(ω2L)φ4L-(∫dtφ4L)ξ2L-”および“g2-(ω2R)φ4R-(∫dtφ4R)ξ2R-”は、減衰係数g2-に応じて、負方向の第4運動振動子φ4の時間積分値の絶対値の増大を抑制するように人間Pの大腿部に作用する、他方の仮想的な弾性要素G2-の弾性力を表現している(式(50)(52)(54)、図4参照)。すなわち、当該項は第4運動振動子(股関節角速度)φ4の値が負方向に大きいほど、大腿部の後方への動きを強く抑制するような減衰要素G2+の減衰力を表現している。
また、第2補助振動子η2には、股関節角度φHの関数としての階段関数H+,H-が含まれている。したがって、2つの仮想的なダンパG2+およびG2-のそれぞれの減衰力が相殺される事態が回避される。
第2固有角速度ω2の関数である第2係数g2+(ω2)およびg2-(ω2)のそれぞれに含まれる係数bk+およびbk-は歩行率等の目標運動リズムに応じた係数として設定されうる。なお、当該係数bk+およびbk-は、運動補助装置10に設けられている設定ボタン(図示略)の操作を通じて、人間Pにより設定されてもよい。
さらに、補助振動子生成手段150が、第1補助振動子生成手段151により生成された第1補助振動子η1=(η1L,η1R)と、第2補助振動子生成手段152により生成された第2補助振動子η2=(η2L,η2R) との合計を補助振動子η(=η1+η2)として生成する(図3/S053)。そして、第1制御装置100により補助振動子ηに基づいてバッテリ16から左右のアクチュエータ14(またはこれを構成するモータ)にそれぞれ供給される電流I=(IL,IR)が調節される。電流Iは補助振動子ηに基づき、たとえばI(t)=G1・η(t)(G1は定数)と表現される。これにより、第1装具11および第2装具12を介して運動補助装置10から人間Pに与えられる、腰部(第1身体部分)に対して左右の大腿部(第2身体部分)を相対的に前後方向に動かすような力または股関節回りのトルクT=(TL,TR)が調節される(図3/S060)。トルクTは電流Iに基づき、たとえばT(t)=G2・I(t)(G2は定数)と表現される。また、バッテリ16の残電量が閾値以下になったこと、動作スイッチがONからOFFに切り替えられたこと等の制御終了条件が満たされているか否かが判定される(図3/S062)。制御終了条件が満たされていないと判定された場合(図3/S062‥NO)、前記一連の処理が繰り返される(図3/S011,S012,S020,‥等参照)。これにより、腰部(第1身体部分)および左右の大腿部(第2身体部分)の相対的な運動を伴う人間Pの歩行運動が運動補助装置10によって継続的に補助される。一方、制御終了条件が満たされていると判定された場合(図3/S062‥YES)、前記一連の処理が終了する。
前記機能を発揮する本発明の歩行補助システム1によれば、運動補助装置10により人間Pの腰部(第1身体部分)および大腿部(第2身体部分)のそれぞれにアクチュエータ14の出力が与えられる。これにより、当該2つの部分の相対運動を伴う人間Pの歩行運動が、運動リズムの目標運動リズムに一致させ、かつ、運動スケールを目標運動スケールに一致させるように補助される。
具体的には、次の理由により、人間Pの運動リズムをその目標とする運動リズムに一致させるように人間Pの運動が運動補助装置10によって補助されうる。すなわち、第1運動振動子φ1に基づき、第1モデルにしたがって生成された第1振動子ξ1は、この第1モデルの性質である「相互引き込み」の効果によってこの第1運動振動子φ1の角速度と調和しながら、第1固有角速度ω1に基づいて定まる角速度で周期的に変化する(式(10)、図3/S020参照)。したがって、第1振動子ξ1に基づいて補助振動子ηが直接的に生成されることにより、第1運動振動子φ1により表現される人間Pの周期的な運動と調和するような補助振動子ηがただちに生成されうる。
しかるに、第1運動振動子φ1により表現される人間Pの周期的な運動と、補助振動子ηにより表わされる運動補助装置10による周期的な動作との位相差は、運動補助装置10の動作に対する人間Pの運動態様を定めるものである。たとえば、この位相差が正である場合、人間Pは運動補助装置10を先導するような形態で運動することができる。一方、この位相差が負である場合、人間Pは運動補助装置10によって先導されるような形態で運動することができる。このため、第1振動子ξ1の第1運動振動子φ1に対する位相差(第1位相差)δθ1が目標位相差δθ0から乖離していると、人間Pの運動態様が判定になりやすい。その結果、補助振動子ηに応じた角速度で周期的に変化するトルクTによって腰部および大腿部の相対的運動が補助される人間Pの運動リズムが、目標運動リズムから乖離してしまう可能性が高い。
そこで、第2振動子ξ2が生成された上で、第1振動子ξ1ではなく第2振動子ξ2に基づいて補助振動子ηが生成されるが(図3/S040,S051〜S053参照)、第1運動振動子φ1と第1振動子ξ1との相互調和性を維持しつつも、人間Pの運動リズムを目標運動リズムに一致させる観点から、第2振動子ξ2の角速度を定める適当な第2固有角速度ω2が設定される。すなわち、歩行補助装置10による補助リズムを人間Pの運動リズムに調和させながら、この人間Pの運動リズムを目標運動リズムに一致させるため、歩行補助装置10の補助リズムと人間Pの運動リズムとの適切な位相差を実現する観点から、適当な第2固有角速度ω2が設定される。
具体的には、第1運動振動子φ1と第1振動子ξ1との位相差(第1位相差)δθ1と、第1仮想振動子ψ1と第2仮想振動子ψ2との位相差(第2位相差)δθ2との偏差が最小になるように仮想モデルの特性を定める相関係数εおよび第1仮想振動子ψ1の角速度ω1/が設定される(図3/S033,S034参照)。これにより、第1運動振動子φ1および第1振動子ξ1の相互調和性(第1モデルの性質)に鑑みて、第1仮想振動子ψ1および第2仮想振動子ψ2のそれぞれの挙動状態が適当に表現されるように仮想モデルが構築される。すなわち、第1仮想振動子ψ1により表現される第1運動振動子φ1と、第2仮想振動子ψ2により表現される補助振動子ηまたはその生成基礎である第2振動子ξ2とが第2位相差δθ2をもって相互に調和しながら周期的に変化するように仮想モデルが構築される。また、第2位相差δθ2が目標位相差δθ0に近づくように第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/が設定される(図3/S035参照)。これにより、第1仮想振動子ψ1により表現されている第1運動振動子φ1と、第2仮想振動子ψ2により表現されている補助振動子ηまたはその生成基礎である第2振動子ξ2とが前記のように相互調和性を維持しつつも、第1運動振動子φ1と、補助振動子ηまたはその生成基礎である第2振動子ξ2との位相差を目標位相差δθ0に近づける観点から、第2仮想振動子ψ2の適当な角速度ω2/が設定される。そして、第2仮想振動子ψ2の角速度ω2/が、この第2仮想振動子ψ2により擬似的に表現されている補助振動子ηの生成基礎となる第2振動子ξ2の角速度を定める第2固有角速度ω2として設定される(図3/S035,S051,S052参照)。
また、第2固有角速度ω2に基づいて定まる角速度で周期的に変化する第2振動子ξ2に基づいて生成される補助振動子ηも、第2固有角速度ω2に基づいて定まる角速度で周期的に変化する(式(309(40)(50)、図3/S040,S050参照)。したがって、補助振動子ηに基づくトルクTが人間Pに与えられることにより(図3/S060参照)、人間Pの運動リズムと運動補助装置10の動作リズムとを調和させ、かつ、運動リズムを目標運動リズムに一致させるようにこの人間Pの歩行運動が補助される。
また、次の理由により、人間Pの運動スケールを目標運動スケールに一致させるように人間Pの運動が運動補助装置10によって補助されうる。すなわち、前記のように第1補助振動子η1は、第3運動振動子(股関節角度)φ3を正目標値φ0+および負目標値φ0-のそれぞれに近付けるように左右大腿部に作用する仮想的な弾性要素の弾性力を表す(式(40)〜(46)参照)。また、前記のように第2補助振動子η2に含まれている第2係数g2+,g2-は、第4振動子(股関節角速度)φ4の1回時間積分値(股関節角度)の絶対値の増大を、第4振動子φ1の値に応じて抑制するように左右大腿部に作用する仮想的な減衰要素の減衰力を表す。したがって、第1補助振動子η1および第2補助振動子η2の和である補助振動子ηに基づくトルクTが人間Pに与えられることにより、第3運動振動子φ3により表現される人間Pの運動スケールが、正目標値φ0+および負目標値φ0-により表現される目標運動スケールに近付くように、かつ、第4運動振動子φ4により表現される仮想的な抑制力により人間Pの運動リズムが目標運動リズムから乖離しないように人間Pの運動が補助されうる。
このとき、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値の基準値に基づいて、人間Pの目標運動スケールに応じた目標値φ0+およびφ0-が設定される(図5/S204)。これと共に、人間Pの運動指標値を基準値に近付けさせるように、第1補助振動子η1を算出する際に用いられる第1係数、第3係数のパラメータ(ak+,ak-,c1+,c2+,c1-,c2-)が逐次調整される(図5/S205)。すなわち、人間Pの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力が、人間Pの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値を基準値に近付けさせるように逐次調整されることとなる。
以上のように、本発明の歩行補助装置(運動補助装置)10によれば、ユーザの運動のリズムおよびスケールをその目標とするリズムおよびスケールにそれぞれ一致させるようにユーザの運動を補助しうる。これと共に、本発明の運動補助装置10によれば、ユーザの運動のスケールを目標スケールに一致させるようにユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力を表す第1補助振動子を、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値を基準値に近付けさせるように逐次調整することで、ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスが取れるようにユーザの運動を補助しうる。
なお、本実施形態では、補助振動子ηに応じた左右の股関節回りのトルクT=(TL,TR)がユーザの身体に作用させられたが、他の実施形態として、膝関節、足関節、肩関節、肘関節、手根関節等、種々の関節回りのトルクがユーザの身体に作用させされてもよい。トルク作用対象となる関節の組合せは、ユーザに応じてさまざまに変更されてもよい。
また、他の実施形態として、ヘッドホン等の聴覚装置(図示略)を介して歩行者が聴覚的に知覚可能な補助振動子ηに応じた周期的な音や、ゴーグル等の視覚装置(図示略)を介して知覚可能な補助振動子ηに応じた周期的な光または標識や、マッサージ機器等により歩行者が背中や肩等の身体の一部の触覚を介して知覚可能な補助振動子ηに応じた周期的な叩き(ノック)等がユーザに対して付与されてもよい。
また、本実施形態では、人間Pの歩行運動が補助されるように運動補助装置10が構成されているが(図1参照)、他の実施形態として人間Pのさまざまな身体部分に装着されうるように第1装具11および第2装具12の形状や素材等が変更されることにより、歩行運動以外のさまざま運動が補助されるように運動補助装置10が構成されてもよい。たとえば、人間Pの大腿部(第1身体部分)および上下腿部(第2身体部分)のそれぞれに第1装具11および第2装具12のそれぞれが装着され、大腿部に対する下腿部の周期的な相対運動を運動が補助されてもよい。また、人間Pの上腕部(第1身体部分)および大腿部(第2身体部分)のそれぞれに第1装具11および第2装具12のそれぞれが装着され、上腕部に対する大腿部の周期的な相対運動を運動が補助されてもよい。さらに、人間Pの肩部(第1身体部分)および上腕部(第2身体部分)のそれぞれに第1装具11および第2装具12のそれぞれが装着され、肩部に対する上腕部の周期的な相対運動を運動が補助されてもよい。また、自動車等の製品の製造に関する手作業が補助されるように運動補助装置10が構成されていてもよい。これにより、人間Pは補助振動子にしたがうことで、目標とする動きのリズムおよび動きのスケール(または力加減)をもって作業することができる。さらに、目標となる運動のリズムおよびスケールが、熟練作業者等の手作業に基づいて設定されている場合、人間Pに熟練作業者の微妙な手の動きや力加減等を運動補助装置10の動作を通じて実感させ、その技術を早期に修得させることができる。
また、他の実施形態として、運動補助装置が、人間Pに上向きの力を作用させ、この力を調節する体重免荷装置を備えていてもよい。この体重免荷装置としては、たとえば人間Pに取り付けられたワイヤの張力が調節されることにより、人間Pに上向きに作用する力の強弱が調節される構成の装置が採用されうる。当該構成の運動補助システム1によれば、体重免荷装置により人間Pに調節可能な上向きの力が与えられることにより、この人間Pの体重を支えるための脚体の負担を軽減することができる。
また、他の実施形態として、運動補助装置がトレッドミルを備え、このトレッドミルの上で人間Pが歩行運動してもよい。トレッドミルは2つのローラと、2つのローラにかけまわされた環状のベルトと、ベルトの裏側から人間Pの体重を支えるための支持部材と、2つのローラのうち一方を駆動する駆動機構と、駆動機構の動作を制御する制御装置とを備えている。トレッドミルの使用により比較的狭いスペースであっても人間Pの歩行運動または歩行訓練が実施されうる。
本発明の運動補助装置の外観図。 図1の運動補助装置の制御システムの機能ブロック図。 図1の運動補助装置の全体的な作動を示すフローチャート。 補助振動子生成に関する仮想的な弾性要素の説明図。 第1補助振動子を生成する処理を示すフローチャート。
符号の説明
10‥歩行補助装置(運動補助装置)、14‥アクチュエータ、100‥コンピュータ(制御システム)、102‥股関節角度センサ、110‥運動振動子測定手段、111‥目標運動設定手段、120‥第1振動子生成手段、130‥固有角速度設定手段、131‥第1位相差設定手段、132‥第2位相差設定手段、133‥相関係数設定手段、134‥第1角速度設定手段、135‥第2角速度設定手段、140‥第2振動子生成手段、150‥補助振動子生成手段、160‥補助振動子調整手段、161‥運動指標値取得手段。

Claims (6)

  1. ユーザの運動を補助するために当該ユーザに与えられる時間変化する補助力を決定するための、時間変化するパラメータである補助振動子に応じて当該ユーザの運動を補助するための装置であって、
    前記ユーザの身体運動に応じて時間変化するパラメータとしての第1および第2運動振動子と、前記ユーザの身体運動に応じて時間変化する、該ユーザの運動スケールを表すパラメータとしての第3運動振動子とを測定する運動振動子測定手段と、
    入力振動信号と相互に引き込み合うことで第1固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成する第1モデルに、前記運動振動子測定手段により測定された前記第1運動振動子を該入力振動信号として入力することにより、該出力振動信号として第1振動子を生成する第1振動子生成手段と、
    前記運動振動子測定手段により測定された前記第1運動振動子と前記第1振動子生成手段により生成された前記第1振動子との位相差である第1位相差に基づき、相互作用しながら第2位相差をもって周期的に変化する第1仮想振動子と第2仮想振動子とが表現されている仮想モデルに従って、該第2位相差が目標位相差に近づくように該第2仮想振動子の角速度を第2固有角速度として設定する固有角速度設定手段と、
    入力振動信号に基づき、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度に基づいて定まる角速度で時間変化する出力振動信号を生成する第2モデルに、前記運動振動子測定手段により測定された前記第2運動振動子を該入力振動信号として入力することにより、該出力振動信号として第2振動子を生成する第2振動子生成手段と、
    前記第2振動子生成手段により生成された前記第2振動子と、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度とに応じて、前記運動振動子測定手段により測定された前記第3運動振動子の値を前記ユーザの目標運動スケールに応じた目標値に近付けるように該ユーザの運動を補助するための仮想的な弾性要素による弾性力を表す第1補助振動子を生成し、該第1補助振動子を含む前記補助振動子を生成する補助振動子生成手段と、
    前記ユーザの運動のリズムとスケールとのバランスに関する運動指標値を取得する運動指標値取得手段と、
    前記運動指標値取得手段により取得された前記運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記補助振動子生成手段により生成される前記第1補助振動子を逐次調整する補助振動子調整手段とを備えることを特徴とする運動補助装置。
  2. 請求項1記載の運動補助装置において、
    前記補助振動子生成手段は、前記仮想的な弾性要素の弾性係数としての、前記固有角速度設定手段により設定された前記第2固有角速度と第1パラメータとの関数である第1係数、前記第3運動振動子の値と前記目標値との偏差と第3パラメータとの関数である第3係数、及び前記第2振動子との積として算出される振動子が含まれている前記第1補助振動子を生成するものであり、
    前記補助振動子調整手段は、前記運動指標値と、該運動指標値の前記基準値との偏差に基づき、該運動指標値を該基準値に近付けさせるように、前記第1係数を算出するための前記第1パラメータ、および前記第3係数を算出するための前記第3パラメータのうち少なくともいずれか一つを逐次調整することを特徴とする運動補助装置。
  3. 請求項1又は2記載の運動補助装置において、
    前記ユーザからの操作又は該ユーザの運動状態に応じて前記運動指標値の前記基準値を設定する手段を備えることを特徴とする運動補助装置。
  4. 請求項1〜3のうちいずれか記載の運動補助装置において、
    前記ユーザの目標運動スケールに応じた前記目標値を、前記運動指標値の前記基準値に基づいて設定する手段を備えることを特徴とする運動補助装置。
  5. 請求項1〜4のうちいずれか記載の運動補助装置において、
    前記ユーザの運動は該ユーザの左部と右部とでそれぞれ行われるものであり、
    前記補助振動子調整手段は、前記ユーザの左部と右部との運動のそれぞれについて、前記ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記第1補助振動子を逐次調整することを特徴とする運動補助装置。
  6. 請求項1〜5のうちいずれか記載の運動補助装置において、
    前記ユーザの運動は屈曲方向の運動と伸展方向の運動とからなり、
    前記補助振動子調整手段は、前記ユーザの屈曲方向の運動と伸展方向の運動とのそれぞれについて、前記ユーザの運動指標値を基準値に近付けさせるように、前記第1補助振動子を逐次調整することを特徴とする運動補助装置。
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