JP4271030B2 - 硬磁性物体、および磁気ベクトルの方向と位置を調節する方法 - Google Patents

硬磁性物体、および磁気ベクトルの方向と位置を調節する方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、請求項1および10の総括部分に記載された、硬磁性物体、および硬磁性物体の磁気ベクトルを調節する方法に関する。
【0002】
様々な機械/技術/医療用途で、硬磁性物体の使用が知られている。硬磁性物体は、特に、測定装置および磁気軸受に使用される。特に心臓補助ポンプとして人体に埋め込まれる血液ポンプ用の磁気軸受は、一般的な軸受とは対照的に、磨耗がなく、血液に対して穏やかである。
【0003】
用途によっては、一般的な南北の整合を超える、硬磁性物体の磁気ベクトルのより具体的な幾何学的整合が必要になる。特に血液ポンプの軸受では、磁気軸受の軸受クリアランスを保証するために、硬磁性物体の磁気ベクトルの方向と位置の正確な整合および補正が非常に重要である。
【0004】
軸受では、一般に、軸受剛性、軸受クリアランス、および磨耗挙動が特徴的である。磁気軸受では、軸受内を案内される構成要素は、装置の他の構成要素に機械的に接触せず、その機械的な幾何学構造とは無関係に、特に、仮想的な磁気軸の周りまたは磁気軸に沿って移動する。移動速度が遅い間は、用途によっては、低い軸受剛性および精度を許容することができる。特に回転移動が速い場合および/または大きな質量が移動する場合、不均衡が生じ、または案内される部品の質量の慣性があるので、許容範囲の狭い、高い軸受剛性が必要となる。小容量用の人工心臓補助システムとして使用される軸流血液ポンプでは、供給能力のために大きい回転速度が必要である。血液に加わる応力を、最適化されたポンプ内部の幾何学構造における正当な限界内に維持するには、たとえば、ロータと0.01mmのポンプ・チューブとの間の最大隙間寸法を維持すべきである。機械軸受(たとえば転がり軸受)は、機械的な要件を容易に満たすが、血液に直接接触して血液物質を過剰に破壊する。この用途で機械軸受を密封挿入する場合、この用途に必要な長期間の漏れ耐久性は、現在の技術水準では保証することができない。さらに、シャフトとシールの間の移行部分では血液が損傷を受け、シールの境界部では血栓症の危険が増大する。磨耗がなく、磁気的な力を用いて自由に浮上しているポンプ・ロータは、これらの欠点を最小限に抑える。しかし、ロータの磁気軸受の軸受剛性は、限られた構成空間およびポンプ圧力に必要な水力学的負荷では届かせることができない、限られた軸受クリアランスを意味する。不均衡によってさらなる軸受負荷が生じると、この軸受クリアランスが増大する。不均衡を最小限に抑えるには、磁気軸受の軸を、駆動されるポンプ・ロータの軸受の幾何学的な軸にできる限り正確に一致させなければならない。血液ポンプの用途の場合、不均衡を制限し、クリアランス長を維持するために、幾何学的回転軸からの軸受磁石の合成磁気ベクトルの偏角を、0.3°未満にしなければならない。しかし、磁気軸受の能力パラメータに必要な、一般的な異方性の高保磁性磁石は、極面の法線に対して約3°までの平均偏差測定値を有しており、これは、原材料の基本配向性に対応して、それぞれの平均値の周りの釣鐘型分布として統計的な配向性がある。伝統的に1片の標準材料から作製される磁石からは、非常に低収率の磁石しか得られず、その合成磁気ベクトル偏差は、極法線に対して0.3°未満である。
【0005】
これは、成型物の磁気ベクトルの最適または所望の方向およびサイズが、磁気的挙動を担う、すべての非補整回転モーメントの統計分布に反するからである。完全な単結晶にだけ、統計分布内に単一範囲区画が存在する。しかし、それらは、材料特性が磁気軸受または他の技術的関連装置の製造に適していない(たとえば、エネルギー生成が低すぎる)ので、利用を考えられない。また、明確な異方性を有する材料でも、変動幅を有する非補整回転モーメントの明確な統計分布が存在するが、強固に制限されている。それは、特定の許容範囲内にある合成磁気ベクトルの統計的な方向変動内で巨視的に作用する。
【0006】
この事実は、永久磁石の大部分の技術的用途では、製造に起因する所望のゼロ位置周りの磁気ベクトルの変動が許容可能であるので、優れた役割を果たさない。
【0007】
ただし、用途によっては、たとえば、埋込み可能な血液ポンプでは、統計的な方向変動が不利であり、これは、磁気ベクトルが所望の方向からはずれた永久磁石を利用すると、過度に大きい不均衡が生じ、その結果、過度に大きい磁気クリアランスが生じるからである。
【0008】
したがって、このような用途には、開磁気回路内の一般に硬磁性物体の磁気ベクトルの方向と位置を、それぞれ変更または補正する必要がある。そのような変更または補正は、それぞれ様々な方法で達成することができる。
【0009】
単純な可能性は、所望の方向および強度に磁化できる、等方性硬磁性材料を利用することである。現在、そのような方法に関しては、最大エネルギー密度では技術的最上値よりも低い範囲だけを補う、高磁性材料だけが知られている。しかし、そのようなエネルギー密度の低い材料は、要求される軸受剛性が得られないので、前述のタイプの磁気軸受に関する用途を見出だすことができない。
【0010】
高エネルギー密度が必要な限り、高エネルギー密度に適した磁性材料と幾何学的形態を選択することによって、所望の磁気ベクトルの大きさが実現される可能性がある。したがって、協調(concerted)「角切削(angle cutting)」を用いて、原磁石中の合成磁化ベクトルの位置が正確にわかるときには、磁気ベクトルの所望の方向を構成要素の幾何学構造に近似させることができる。作業支出および材料消費が増加することと、磁気ベクトルの方向の的中確度が明確な偏差内でしか達成されないことが不利である。
【0011】
さらに、硬磁性物体の部分的な領域または全体の、それぞれ協調した消磁または磁化によって、磁気ベクトルの変化を実現することが知られている。この消磁または磁化は、部分磁界、非対称磁界、変化させた磁界勾配、または他の方法を用いて達成することができる。この方法の欠点は、一般に、磁石のエネルギー含量が完全に使用されないことである。またこれは、磁気特性の温度依存性を使用して、すなわち、局所的または非対称的にそれぞれ加温または冷却することによって、磁気ベクトルを変化させるときにも当てはまる。さらに、たとえば、対応するように形成・方向設定されたコイルとの結合を用いて能動的に影響を与えることが知られており、駆動部を変更することによって補正可能性を変えることができる。ただし、これには、挿入スペースおよび追加的なエネルギーが必要である。
【0012】
他の硬磁性物体の設計、ならびに磁石の配列を構築する方法は、GB777315、CH304762、US4777464、US2320632、DE2106227A、およびDE2607197A1で知られている。
【0013】
US2320632には、磁性材料を鋳造し、一体連結磁性構成要素として形成することによって、冷却プロセス時の熱変形をスロットによって取り去る、永久磁性構成要素と軟磁性構成要素の連結方法が記載されている。この場合、永久磁性構成要素は、軟磁極部品の間に配置される。したがって、前述のような技術用途では、永久磁性構成要素の磁界の方向に対して影響を及ぼすことができない。
【0014】
US777315およびCH304762には、永久磁性構成要素と軟磁性構成要素の間の連結として、磁気ヨークが記載されている。ヨークは、たとえば電気測定装置内の、閉磁気回路の部品である。永久磁性構成要素は、軟磁性極片の間に配置されている。従って、永久磁性構成要素の磁界の方向に影響を及ぼすことができない。
【0015】
DE2106227AおよびDE2607197A1には、空隙磁気システムが記載されている。この場合、永久磁性部品は、磁気回路内の軟磁性部品に埋め込まれている。永久磁性部品の磁界の方向への影響は、隣接する軟磁性部品によって無効化されるので、意図されておらず、また実現可能でない。
【0016】
また、US4777464にも、空隙を備え、閉磁気回路を有する、磁気システムが記載されている。軟磁性の外部ヨークには、それぞれ2つの磁性材料から組み合わされた、対向する2つの永久磁性部品が片側に結合しており、内側に同じだけ磁性化している。これらの永久磁石の互いに対向する側には、その発明による軟磁極シュー(shoe)が形成された、作動空隙が形成されている。その配列の目的は、作動空隙内の磁界分布をできる限り一定にすることである。永久磁性部品の磁界の方向に影響を及ぼすことは、意図されていない。使用する磁石は、同一方向を有するものにすべきである。各方向変化は、軟磁性ヨークおよび極シューのところで無効化される。磁気ベクトルの振幅は、古典的解釈では、使用する様々な種類の磁石の幾何学的関係および寸法を変更することによって達成される。
【0017】
要約すれば、公知の方法のいずれによっても、硬磁性部品の磁界の方向に影響を及ぼせないことを指摘することができる。前述の方法の核心は、設けられた磁石(またはコイル)によって可能となる磁束を、閉磁気回路を用いて最大限に結合させて、この発明の作業域にすることであり(空隙については、US2320632、DE2106227、およびDE2607197、軟磁性試験物体については、US777315およびCH304762)、あるいは、US4777464では、指定値での磁界の空隙内で、できる限り一定の磁界分布が達成されることが重要である。
【0018】
したがって、公知の方法では、磁界の整合を達成することができない。ゆえに、硬磁性物体における磁界の方向に関する影響は、閉磁気回路を備える配置によって、前述に指定した方法であれば硬磁性物体に隣接する軟磁性部品を用いて、直接的に打ち消される。したがって、磁界の方向のそれ以前の変更または調節が、それぞれ取り消される。軟磁性部品は、飽和時には動作しないが、透磁性の差に応じて、ただし方向には無関係に、硬磁性物体の方を向く接触面に磁束を集中させる。磁束は、磁位の差分勾配に従って、これらの部品内を延びる。磁界は、軟磁性部品から、周囲または近隣の部品への透磁性の飛び越し(jump)が起こる位置の上面に対して垂直に抜け出る。したがって、磁力線の外部軌道は、与えられた外部磁界条件に依存する。前述の方法では、磁力線は、主に所定の磁気回路内を延びる。これらの配置では、磁気ベクトルに影響を及ぼすことができない。
【0019】
したがって、本発明は、外部磁気回路を用いて影響を及ぼさずに、所定の許容範囲の枠内を移動する所望の合成磁気ベクトルを有する、硬磁性物体とその製造方法とを提供するための目的に基づくものであり、さらに、硬磁性物体は、従来の技術に比べて高い最大エネルギー密度を有する。
【0020】
その目的は、請求項1および10の特徴部分を用いて解決される。有利な改良形態については、従属請求項に記載している。
【0021】
本発明の利点は、特に、主に硬磁性物体の磁気ベクトルの方向と位置の調節および補正を、それぞれ、一般的に公知の材料を単純な方法で利用することによって達成できることである。
【0022】
本発明によれば、硬磁性物体は、その磁気ベクトルが、大部分が所定の許容範囲の枠内にある開放磁界の範囲にあり、少なくとも1つの硬磁性成型物と、少なくとも他の成型要素とからなる。これらは、形状を利用して集結し整合させると、硬磁性物体の磁気ベクトルの所定の方向と位置が所定の側で得られるように組み合わされる。硬磁性物体の磁気ベクトルは、硬磁性成型物の磁気ベクトルと成型要素の磁気ベクトルとの合成磁気ベクトルである。
【0023】
また、整合した硬磁性物体は、空隙を備える、または空隙のない閉磁気回路で使用することもできる。整合した磁気ベクトルの効果は、磁気回路内の整合側で、飽和状態にない近隣の軟磁性部品(たとえば、極シュー、ヨークなど)を用いて完全に打ち消すことができない。
【0024】
請求項2の実施形態によれば、他の成型要素は、フェリ磁性、強磁性、反強磁性、常磁性、超常磁性、反磁性材料などの材料からなる。
【0025】
請求項3の実施形態によれば、硬磁性成型物および/または成型要素は、回転対称体として形成される。
【0026】
請求項4は、硬磁性成型物および成型要素の非回転対称形成物を提供するものである。
【0027】
硬磁性成形物および成型要素は、請求項5および6によって、小型または中空体として形成することができる。
【0028】
請求項7によれば、硬磁性成型物および成型要素が、互いに対して相対移動可能および/または固定可能に配置されるので好ましい。
【0029】
請求項8による本発明の他の実施形態では、硬磁性成型物および成型要素が、互いに固定して連結される。この場合、部品を糊付けすることが特に適している。
【0030】
請求項9による本発明の他の実施形態では、成型要素が、硬磁性成型物内の中空チャンバとして形成される。
【0031】
本発明による硬磁性物体の磁気ベクトルの調節方法は、硬磁性成型物と成型要素を連結し整合することによって、硬質磁気成型物と成型要素の磁気ベクトルとの合成磁気ベクトルの方向と位置を調節することを特徴とする。
【0032】
請求項11の改良形態によれば、本発明による方法は、硬磁性成型物および成型要素の磁気ベクトルの方向と位置を事前に決定し、その後、成型要素の連結および整合と併せて、形状をさらに変更することによって、合成磁気ベクトルの所定の方向と位置を達成することを特徴とする。
【0033】
この、本発明による成型物の磁気ベクトルの意図的な重ね合せによって、所定の許容範囲の枠内にある合成磁気ベクトルが得られる。
【0034】
請求項12による、本発明による方法の他の実施形態では、硬磁性物体の結合時または結合後に合成磁気ベクトルを決定して制御し、さらに結果として生じる磁気ベクトルの変化に対応してこの配置を繰り返し意図的に変更することによって、所定の側で硬磁性物体の合成磁気ベクトルの方向と位置を調節する。
【0035】
本発明による、硬磁性成型物の磁気ベクトルと、いくつかの成型要素の磁気ベクトルとの意図的な重ね合せは、強磁性、フェリ磁性、反強磁性、反磁性、常磁性、または超常磁性材料で可能である。この場合、成型部品は、隣り合わせて、次々に上に重ねて、完全にまたは部分的に他のものの内部に、表面的に完全に接して、部分的に接して、変更された軸に対称的または非対称的に、ねじれた関係で、回転対称にねじれた関係で、回転対称に傾けて配置することができ、距離の効果と併せて傾けてまたはまっすぐな状態で使用することができ、ワッシャを用いて、斜めに切断して、楔形に互いに隣接させて、または他の方法によって、強度および方向を変化させてまたは変化させずに配置することができ、糊付けして、または他の様式で固定して、ぴったり合わせて配置することができる。
【0036】
本発明による硬磁性物体は、特に、磁気軸受の部品として使用される。
【0037】
本発明について、図面および実施形態を用いて詳細に説明する。
【0038】
図1および図2は、軸方向に磁化した成型要素として形成された、回転対称の硬磁性成型物1および成型要素11を示す。成型物1の対称軸2および成型要素11の対称軸12は、端面3および13上に垂直に配置され、ここでは例示的に磁北極として形成されている。
【0039】
図3は、硬磁性成型物1と成型要素11とからなる、本発明による回転対称の硬磁性物体を示す。成型物1は、強度5(ベクトルの長さ)の磁気ベクトル4を有する。成型要素11は、強度15の磁気ベクトル14を有する。角度6および16は、所望の位置(ここでは対称軸)に対する磁気ベクトル4および14の誤った位置を表している。磁気ベクトル4と14を重ね合わせることによって、合成磁気ベクトル20が形成される。磁気ベクトル4と14の重ね合せは、たとえば成型物1または成型要素11を回転させることによって、磁気ベクトル20が所定の許容範囲に調節されるように調節することができる。
【0040】
図3の角度6および16の補整(補償)は、公知の図式的追加によって単純に達成されるものではない。したがって、図1〜3の、強度5および15ならびに角度6および16は、本発明による方法を実証するために示すものにすぎない。図3では、上方の北側の磁気ベクトルだけを示している。南側の合成結果は、対称軸の外側にある。
【0041】
図3では、合成磁気ベクトル20の並びが、対称軸2および12に整合すべきである。磁気ベクトル20を意図的に整合するには、部品の磁気ベクトルの位置および振幅を正確に測定する必要がある。たとえば、初めに、成型物1の磁気ベクトル4の正確な位置を測定する。磁気ベクトル4の、北極側への射影4aを、たとえば、端面13上に破線を用いて示す。極法線に垂直に作用する、成型物1の磁気ベクトル4の成分は、成型物1の上面内で作用し、振幅が同一であるが180°ずれた、成型要素11の磁気ベクトル14の成分によって補整すべきである。それが、成型要素11の磁気ベクトル14の、極法線に垂直に作用する測定成分ではなく、磁性物体を結合した後に成型物1の上面内で作用する、磁気ベクトル14の成分の振幅であることに留意すべきである。すなわち、成型物1と同様の技術的な測定条件下で測定され、成型要素11の磁気ベクトル14の極法線に垂直に配置された成分の値は、材料および幾何学的寸法に応じて、成型物1の成分よりも対合因子(pairing factor)の分だけ大きくしなければならない。しかし、直接に極の法線方向にある磁気ベクトルの振幅のサイズは、方向の補整には関係しないが、硬磁性物体の合成振幅のサイズにだけは関係する。対合因子は、試験を実施し、その後結果を確認することによって、決定または近似しなければならない。補整に利用可能な角度値を有する成型要素11は、たとえば、成型物1と同様の偏位方向を特徴とする、いくつかの測定された磁石から選択される。成型要素11の角度値は、成型物1の偏角に無次元の対合因子を乗じることによって決定される、角度値の許容可能な変動幅の範囲内でずれることができるにすぎない。この例では、合成磁気ベクトルを回転対称軸の方向に整合させるために、成型要素1に対して軸方向に180°回転した射影14aを表す印を有する選択された成型要素11が、成型物1の磁南極の中心にある、端面13の磁北極で位置決めされている。
【0042】
図4aは、硬磁性成型物1と成型要素11、21とからなる、硬磁性物体を示す。この場合、2つの下方成型要素11および21が、成型物1の磁気ベクトル4の、所望の位置からの角度偏差を補整する。成型要素21は、磁気ベクトル24と相関がある。下方合成磁気ベクトル27は、回転軸に平行ではない。磁気ベクトル4a、14a、24aの、硬磁性成型物1の端面3の平面への射影が、図4bに硬磁性成型物1および成型要素11、21の上面図として表されており、磁気ベクトルの整合の原理を説明している。矢印の長さは、回転軸に垂直な硬磁性成型物1の平面3に作用する、個々の成型部品の磁気ベクトル4、14、24の成分に対応する(4aは、成型物1の磁気ベクトル4の成分;14aは、成型要素11の磁気ベクトル14の成分;24aは、成型要素21の磁気ベクトル24の成分)。成分14aと24aは、成分4aの振幅の少なくとも半分を有する等しいものにしなければならず、部品11および21を互いに接して回転軸周りに回転させることによって、成型物1の磁気ベクトルの偏差に関する補整を、ゼロから考えられる最大力までの間で調節し、補整値に適合させることができる。下方合成磁気ベクトル27は、この実施形態では、回転軸の外側に配置される。
【0043】
図5は、回転軸上に配置された、硬磁性成型物1と成型要素11、21とからなる硬磁性物体を示す。ベクトル4、14、24のこの配置では、上方合成磁気ベクトル20および下方合成磁気ベクトル27が、回転軸に関して整合している。磁気ベクトル14を備える中央の成型要素11は、その長さおよび方向を用いてベクトル4および24を補整する。
【0044】
図6は、回転軸上に配置された、成型物1と、成型要素11と、軟磁性成型要素21とからなる硬磁性物体を示す。ベクトル4、14のこの配置では、上方合成磁気ベクトル20が、回転軸に関して整合している。磁気ベクトル14を備える中央の部品11は、その長さおよび方向を用いてベクトル4を補整する。下方の軟磁性成型要素21は、飽和状態では配置されておらず、記憶された角度位置を無効にする。磁力線は、軟磁性成型要素21の上面を法線方向に抜け出て、外部磁界に続く。
【0045】
図7は、回転軸上に配置された、軟磁性成型要素21と、成型物1と、成型要素11とからなる、硬磁性物体を示す。ベクトル4、14のこの配置では、上方合成磁気ベクトル20を、回転軸に関して整合すべきである。磁気ベクトル4を備える中央の部品1は、その位置および方向を用いて成型要素11のベクトル14を補整する。軟磁性成型要素21は、硬磁性成型物1および成型要素11の磁気ベクトルの振幅の、小領域の変動を補整する。成型要素21が飽和状態にある場合、磁気ベクトル4と14の重ね合せ(成型要素21を含まない合成ベクトル)によってそれまでに形成されていた磁気ベクトル20の方向は、無効化されない。成型要素21を備える合成磁気ベクトル20aの方向は、磁気ベクトル20の方向をいくらか保持し、この場合には振幅が変化している。
【0046】
図8aおよび8bは、回転軸上に配置された、成型物1と成型要素11とからなる硬磁性物体を示す。ベクトル4、14のこの配置では、上方合成磁気ベクトル20および下方合成磁気ベクトル27が、対称軸の外側に整合している。
【0047】
図9a〜9fは、硬磁性成型物1と、1つまたは複数の成型要素11、21、31とから構成される、回転対称硬磁性物体の例を示しており、成型要素11、21、31が、硬磁性成型物1内の中空スペースとして形成されている。この場合、ベクトルの整合は、たとえば、上方合成磁気ベクトル20が対称軸に一致するように達せられる。
【0048】
図9gおよび9hは、成型物1と成型要素11とからなる硬磁性物体を示す。
【0049】
図10aおよび10bは、図9gおよび9hに対応する硬磁性物体の例を示しており、非磁性成型要素21(たとえばアルミニウム)に囲まれた反発力を取り込むためのものである。
【0050】
図11a〜11fは、それぞれ、1つの硬磁性成型物1と、成型要素11とから構成される回転対称硬磁性物体の例を示す。これらの図では、接合位置の他の例も示されている。
【0051】
図12a〜12sは、それぞれ、硬磁性成型物1と成型要素11とから構成される長方形の硬磁性物体の例を示す。これらの図面では、構成要素の構成に関する他の例も示されている。
【0052】
図13a〜13bは、所望の位置および方向に配置された合成磁気ベクトル20を得るための、1つの硬磁性成型物と、いくつかの成型要素11、21、31とから構成される長方形の硬磁性物体の2つの例を示す。
【0053】
図14aおよび14bは、無作為に形成された硬磁性物体の例を示しており、例では、それぞれ、1つの硬磁性成型物1と1つの成型要素11とから構成されている。例では、合成磁気ベクトル20は、重力の磁気中心で法線方向に整合している。また、硬磁性成型物1および成型要素11は、任意の形態の(例に示すように異なる)上方側面および下方側面を有することができる。これらの成型部品は、任意の位置でぴったり合わせて、または上面をぴったり合わせずに、あるいはさらに互いにある距離をあけて(たとえば、糊付け連結して、または鋳造して、あるいは別法で)対合させることができるので、成型部品の磁気ベクトルを追加することによって、合成磁気ベクトル20の位置および方向が達成される。
【0054】
図15bは、硬磁性成型物1と、成型要素11と、「非磁性」(たとえば、常磁性または反磁性)成型要素21とから構成される硬磁性物体の一例を示しており、上方合成磁気ベクトル20を備え、これを回転軸に一致させなければならない。図15aでは、説明のために仮想出発条件が示されており、硬磁性成型物1と成型要素11とが、図15bおよび15cと同一の整合で、距離を開けずに直接重ね合わされている。硬磁性成型物1および成型要素11は、この仮想出発位置で、上方を向く、回転対称軸に一致しない合成磁化ベクトル20を生成する。この出発位置で、成型物1の上面で作用する、極法線に垂直な成型要素11のベクトル成分が、成型物1のベクトル成分よりも大きい場合には、距離を増大させることによって所望の方向補正を達成することができる。図15bおよび15cでは、同一極を有して180°ずれて整合する硬磁性成型物1および成型要素11を用い、極法線に垂直に作用する成型物1および成型要素11のベクトル成分を用いて、特には、「非磁性」成型要素21、あるいはスペーサ37で定められた(真空、ガスまたは液体で満たした)空のスペース38によって距離を増加させることにより、合成磁気ベクトル20aを補正して、この例で望ましいように磁気ベクトルを法線に整合させる。
【0055】
図16bは、硬磁性成型物1と、成型要素11と、非磁性(常磁性または反磁性材料)成型要素21とから構成される、硬磁性物体の一例を示す。図16aでは、説明のために、図16bに対応する硬磁性物体の仮想出発条件が示されている。磁化が上向きの図16aでは、出発成型物1および出発成型要素11が、合成磁化ベクトル20を回転軸に一致して整合させる。図16bでは、「非磁性」成型要素21で満たされた成型物1および成型要素11の構成要素が省略されている。また図16bに対応して、合成磁気ベクトル20aでは、これらの部品の寄与も欠落している。部品の欠落に対応して、合成磁気ベクトル20aの振幅が減少し、位置が、回転軸の外側の新しい重力の磁気中心に移動している。極平面に関する方向は、ある程度維持されている。構成された成型部品では、方向も変化することがある。
【0056】
図17bは、硬磁性成型物1と、成型要素11と、非磁性(常磁性または反磁性材料)成型要素21とから構成される、硬磁性物体の他の例を示す。図17aでは、説明のために、図17bに対応する硬磁性物体に関する仮想出発条件が示されている。磁化が上向きの図17aでは、出発成型物1および出発成型要素11が、合成磁化ベクトル20を、中央に配置し、回転軸に一致しないように整合させる。図17bでは、「非磁性」成型要素21で満たされた成型物1の部品が省略されている。また図17bの合成磁気ベクトル20aでは、この成型部品の寄与も欠落している。部品の欠落に対応して、合成磁気ベクトル20aの振幅が減少し、位置が、回転軸の外側の新しい重力の磁気中心に移動しており、この例では、方向が極法線の方向に変化している。
【0057】
また、図面の図1〜図17の個々の部品も、いくつかの部品からなることもある。
【0058】
本発明は、ここに示す実施形態だけに制限されるものではない。むしろ、本発明の範囲から逸脱することなく、指定した手段および特徴を組み合わせ、変更することによって、他の変形形態を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 硬磁性成型物の回転形成物を示す図である。
【図2】 他の硬磁性成型物の回転対称な実施形態を示す図である。
【図3】 硬磁性成型物と成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体を示す図である。
【図4】 図4aは、硬磁性成型物と2つの成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体を示す図である。
図4bは、硬磁性成型物と2つの成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体の上面図である。
【図5】 硬磁性成型物と2つの成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体を示す図である。
【図6】 硬磁性成型物と、成型要素と、軟磁性成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体を示す図である。
【図7】 硬磁性成型物と、成型要素と、軟磁性成型要素とからなる、本発明による硬磁性物体を示す図である。
【図8】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図9】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図10】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図11】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図12】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図13】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図14】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図15】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図16】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【図17】 硬磁性物体の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 硬磁性成型物
2 対称軸
3 端面
4 上方磁気ベクトル
4a ベクトル4の射影
5 強度
6 磁気ベクトルと対称軸の間の角度
11 成型要素
12 対称軸
13 端面
14 上方磁気ベクトル
14a ベクトル14の射影
15 強度
16 磁気ベクトルと対称軸の間の角度
20 上方合成磁気ベクトル
20a 上方合成磁気ベクトル
21 成型要素
24 成型要素21の上方磁気ベクトル
24a ベクトル24の射影
27 下方合成磁気ベクトル
31 成型要素
34 上方磁気ベクトル
37 スペーサ
38 空のスペース(たとえば空気)

Claims (16)

  1. 1つの対称軸を有する硬磁性物体であって、
    第1の形状及び前記対称軸に対して第1の角度の偏差をもつ磁気ベクトルを有する少なくとも1つの硬磁性成型物と、第2の形状及び前記対称軸に対して第2の角度の偏差をもつ磁気ベクトルを有する少なくとも1つの成型要素と、を有し、
    前記少なくとも1つの硬磁性成型物と前記少なくとも1つの成型要素とを整合させることによって組み合わせる際に第3の磁気ベクトルが生じ、
    該第3の磁気ベクトルは、前記少なくとも1つの硬磁性成型物の前記第1の形状と前記少なくとも1つの成型要素の前記第2の形状とによって、前記対称軸に対して所定の角度を実質的に指示するように決定されることを特徴とする硬磁性物体。
  2. 前記少なくとも1つの成型要素が、強磁性、フェリ磁性、反強磁性、常磁性、超常磁性、及び反磁性材料からなる群の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の硬磁性物体。
  3. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および前記少なくとも1つの成型要素が回転対称体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の硬磁性物体。
  4. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および/または前記少なくとも1つの成型要素が非回転対称体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の硬磁性物体。
  5. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および/または少なくとも1つの前記成型要素が小型体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬磁性物体。
  6. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および/または前記少なくとも1つの成型要素が中空体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬磁性物体。
  7. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および前記少なくとも1つの成型要素が、互いに対して移動可能に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬磁性物体。
  8. 前記少なくとも1つの硬磁性成型物および前記少なくとも1つの成型要素が互いに固定連結されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬磁性物体。
  9. 前記少なくとも1つの成型要素が、硬磁性成型物内の中空チャンバとして形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬磁性物体。
  10. 1つの対称軸を有する硬磁性物体の磁気ベクトルの方向と位置とを調節する方法であって、
    第1の形状と前記対称軸に対して第1の角度の偏差をもつ第1の磁気ベクトル有する硬磁性成型物を準備し、第2の形状及び前記対称軸に対して第2の角度の偏差をもつ第2の磁気ベクトル有する成型要素を前記硬磁性成型物の前記第1の形状に対して整合させることによる前記硬磁性成型物及び前記成型要素からなる形状に基づいて、前記対称軸に対して所望のかつ所定の位置及び方向を有する第3の磁気ベクトルを生成するように調節ることを特徴とする方法
  11. 前記硬磁性成型物および前記成型要素の磁気ベクトルを最初に決定し、その後、成型要素を集結して形状を変化させる方法であって、
    その結果として生じる第3の磁気ベクトルを前記最初に決定するステップにおいて予め決めておくことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項1に記載の対称軸を有する硬磁性物体を備えた磁気軸受であって、第1の形状及び前記対称軸に対して第1の角度の偏差をもつ磁気ベクトルを有する少なくとも1つの硬磁性成型物と、第2の形状及び前記対称軸に対して第2の角度の偏差をもつ磁気ベクトルを有する少なくとも1つの成型要素と、を有し、
    前記第1の形状と前記第2の形状とを組み合わせ、前記少なくとも1つの硬磁性成型物と前記少なくとも1つの成型要素とを整合させることにより第3の磁気ベクトルが生じ、
    該第3の磁気ベクトルは、前記少なくとも1つの硬磁性成型物の前記第1の形状と前記少なくとも1つの成型要素の前記第2の形状とによって、前記対称軸に対して所定の角度を実質的に指示するように決定されることを特徴とする磁気軸受。
  13. 前記所定の角度は、実質的に前記対称軸と整合することを特徴とする請求項1に記載の硬磁性物体。
  14. 前記所定の角度は、実質的に前記対称軸と整合することを特徴とする請求項12に記載の磁気軸受。
  15. 前記少なくとも1つの磁性要素は、前記硬磁性物体中における回転対称な中空チャンバとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の硬磁性物体。
  16. 前記少なくとも1つの磁性要素は、前記硬磁性物体中における非回転対称な中空チャンバとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の硬磁性物体。
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