JP4270798B2 - 抗菌性ペプチド組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リゾチームをプロテアーゼで分解して得られるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物に関する。さらに詳しくは、リゾチームをペプシン及び/又はトリプシンで分解して得られるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
リゾチームはムラミダーゼまたはムコペプチドグリコヒドロラーゼとも呼ばれ、細菌の細胞壁のペプチドグリカン層等に存在するN−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミン間のβ−1,4−ムラミド結合を加水分解する酵素蛋白質である。リゾチームは動植物界に広く分布し、現在、哺乳動物の涙、唾液、尿、乳、鳥類の卵中の卵白、魚類の体表粘液、微生物、バクテリオファージT4等に由来するリゾチームが知られている。
【0003】
リゾチームは、古くから抗菌活性を有することが知られているが、この抗菌作用はリゾチームの酵素作用により細菌の細胞壁が切断され、細菌が溶菌することによるものである。なかでも鶏卵の卵白由来のリゾチームは大量製造が可能であり、その抗菌活性を利用して医薬、化粧品、食品、飼料分野等において、抗炎症剤、防腐剤、鮮度保持剤、抗菌剤、殺菌剤等として利用されている。
【0004】
リゾチームの抗菌活性は、特にグラム陽性菌に対して活性を示し、グラム陰性菌に対しては、ほとんど抗菌活性がないことが知られている。グラム陽性菌はグラム染色により、紫色に染色される細菌で、球菌(ミクロコッカス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属等)、胞子形成桿菌(バチルス属、クロストリジウム属等)、乳酸菌(ラクトバチルス属等)、コリネフォーム細菌(コリネバクテリウム属、ノカルディア属等)、放線菌(ストレプトマイセス属等)、等が知られている。その細胞壁は20〜80nmの厚いペプチドグリカン層より構成され、リゾチームに対する感受性が高い。即ち、リゾチームは容易にペプチドグリカン層を加水分解し、グラム陽性菌を溶菌させる作用を示す。
【0005】
一方、グラム陰性菌はグラム染色で染色されない細菌で、光合成細菌(ロドシュードモナス属等)、シュードモナス属細菌、腸内細菌群(エシェリヒア属、サルモネラ属等)、化学無機栄養細菌(ニトロバクター属、チオバチルス属等)、メタン生成細菌、および一部の球菌(ニセリア属等)等が知られている。その細胞の表層は細胞膜(内膜)の外側に2〜3nm程度の薄いペプチドグリカン層があり、さらにその外側にリポ多糖を含む外膜を有する。このためリゾチームは、容易にペプチドグリカン層を切断することができず、エチレンジアミン四酢酸等を用いて外膜に損傷を与えない限りリゾチーム感受性にはならない。
【0006】
このようにリゾチームは、グラム陽性菌に対しては抗菌活性を示すものの、グラム陰性菌に対しては、ほとんど抗菌活性がないため、その用途はグラム陽性菌の増殖抑制を目的とした食品の日持ち向上剤、化粧品の防腐剤、抗炎症医薬品等に限定されている。しかし、これらの用途においては、グラム陽性菌よりもむしろ人や動物の生活や健康により悪影響を及ぼす大腸菌、サルモネラ菌などのグラム陰性菌の増殖を抑制することの方がより重要であるといわれている。
【0007】
また、リゾチームのグラム陰性菌に対する抗菌活性に関しても医薬、化粧品、食品、飼料分野等では、添加量の低減等が実施できる等の理由により、さらに強い活性を発現させることが望まれている。
【0008】
ところで、リゾチームの有する抗菌活性を、グラム陽性菌のみならずグラム陰性菌にも作用するようにする試み、即ちリゾチームの抗菌スペクトルを拡大する試みがいくつか報告されている。たとえば、メイラード反応を利用しデキストラン等の多糖類を結合させた修飾リゾチームが、50℃、30分間の加熱条件下でグラム陰性菌に対して抗菌活性を持つことが開示されている(Agric.Biol.Chem.,54巻,3057−3059頁,1990年)。また、パルミチン酸(J.Agric.Food Chem.,39巻,2077−2082頁,1991年)、ステアリン酸、ミリスチン酸(J.Agric.FoodChem.,41巻,1164−1168頁,1993年)等の脂肪酸を結合させた修飾リゾチームや、遺伝子操作技術によりリゾチームのC末端に疎水性ペプチドを導入して得られた修飾リゾチーム(Biosci.Biotech.Biochem.,56巻,1361−1363頁,1992年)が、グラム陰性菌に対して強い抗菌活性を持つことが開示されている。特開平8−27027号には、加熱処理、高圧力処理、酸処理、アルカリ処理、有機溶剤処理、界面活性剤処理、酸化処理及び酵素処理を単独あるいは併用することでリゾチームの立体構造を変化させてグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して抗菌活性を持たせることを特徴とする抗菌性組成物の製造方法、並びに当該変性リゾチームを有効成分とする抗菌剤、及び当該抗菌剤を含有する医薬、化粧品、食品及び飼料に関する技術が開示されている。
【0009】
しかしながら、これら従来法は、グラム陰性菌に対して、有効な抗菌活性を示すためには、グラム陰性菌に対して50℃の加熱処理を必要とする、脂肪酸の結合や立体構造の変性によりリゾチームの溶解性が著しく悪くなる、非常に煩雑な遺伝子操作技術や化学合成法を用いる等の問題点があり、実用的なものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、リゾチームをプロテアーゼで処理して得られるペプチド類を有効成分とするグラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して優れた抗菌活性を有する抗菌性ペプチド組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リゾチームのグラム陽性菌に対する抗菌活性を増加させること、並びにグラム陰性菌に対しても抗菌活性を発現させることについて、鋭意検討した結果、リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2〜6kDaの範囲であるペプチド類がグラム陽性菌に対する抗菌活性を示すこと、ペプシンで分解して得られるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類がグラム陰性菌に対してリゾチームより強い抗菌活性を示すこと、トリプシン及びペプシンを併用することで、それぞれのタンパク質分解酵素単独で処理することよりも抗菌活性が増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
また、本発明によって得られた抗菌性ペプチド組成物にはリゾチームの抗菌作用であるムラミダーゼまたはムコペプチドヒドロラーゼ活性は消失し、リゾチームのプロテアーゼ分解により得られたペプチド類による抗菌活性、つまり、リゾチームと異なる新しい機構で抗菌活性を示すことを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、(1)リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2〜6kDaの範囲であるペプチド類を有効成分とするグラム陽性菌に対する抗菌性ペプチド組成物、(2)リゾチームをペプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とするグラム陰性菌に対する抗菌性ペプチド組成物、(3)リゾチームをトリプシン及びペプシンで同時に分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とするグラム陽性菌及び陰性菌に対する抗菌性ペプチド組成物の前記(1)〜(3)いずれかの抗菌性ペプチド組成物に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるリゾチームとは、N−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミン間のβ−1,4−ムラミド結合を加水分解する酵素蛋白質をいい、人由来、卵白由来、魚類の体表粘液由来、微生物由来、バクテリオファージ由来等の各種由来の精製リゾチーム、またリゾチーム遺伝子を利用して遺伝子操作技術により調製されたリゾチームが知られている。また、鶏卵卵白由来のリゾチームの平均分子量は14.3〜14.6kDaであることが知られている。
【0015】
従来技術にある変性リゾチームとは、リゾチームの酵素蛋白質の活性は失活していないが、リゾチームの蛋白質としての立体構造が変化したものを指す。リゾチーム蛋白質の立体構造の変化とは、本来、リゾチーム蛋白質が有する立体構造が変化することを指す。特開平8−27027号記載の蛋白質の立体構造が変化した変性リゾチーム含有抗菌剤では、加熱処理、高圧力処理、酸処理、アルカリ処理、有機溶剤処理、界面活性剤処理、酸化処理及び酵素処理を単独あるいは併用することでリゾチームの立体構造を変化させることで、グラム陽性菌、陰性菌、特にグラム陰性菌の細胞膜に対してリゾチームより強い親和性を示し、容易に結合することにより、細胞膜の物質の能動輸送などに障害を与えることにより抗菌性を示すことが開示されている。また、特開平8−27027号では、リゾチームの立体構造を変化させるために酵素処理を利用する場合には、トリプシン、キモトリプシン、プロナーゼ及びパパインなどの蛋白分解酵素を添加してリゾチームを変性させるが、これはリゾチームの酵素活性を維持しながら、立体構造のみを変化させる技術が開示されているにすぎない。つまり、酵素処理の時間は極めて短時間であり、本発明の抗菌性ペプチド組成物と比較して平均分子量や抗菌活性の機構が全く異なる。すなわち、変性リゾチームはリゾチームの酵素活性を有し、平均分子量は本発明の抗菌性ペプチド組成物と比較して大きいものであり、本発明の抗菌性ペプチド組成物とは全く異なる技術である。
【0016】
本発明におけるペプチド類とはトリプシン及び/又はペプシンにより分解されて得られるペプチドの混合物を意味する。
【0017】
本発明における抗菌性ペプチド組成物とは、リゾチームをトリプシンで分解することにより得られるペプチド類を有効成分とするグラム陽性菌に対する抗菌性ペプチド組成物、(2)リゾチームをペプシンで分解することで得られたペプチド類を有効成分とするグラム陰性菌に対する抗菌性ペプチド組成物、(3)リゾチームをトリプシン及びペプシンで同時に分解することにより得られたペプチド類を有効成分とするグラム陽性菌及び陰性菌に対する抗菌性ペプチド組成物の前記(1)〜(3)いずれかの抗菌性ペプチド組成物を指す。
【0018】
本発明の抗菌性ペプチド組成物は、リゾチーム及び変性リゾチームが有するN−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミン間のβ−1,4−ムラミド結合を加水分解する酵素蛋白質としての活性(溶菌活性)が消失し、いわゆるリゾチームの溶菌作用とは別の作用により抗菌活性が発現されたものを指す。従って、本発明の抗菌性ペプチド組成物の抗菌活性は、従来のリゾチームの細菌に対する作用機序とは異なる技術である。
【0019】
本発明におけるトリプシンとは、酵素番号(EC Number)がEC3.4.21.4のプロテアーゼを指し、ウシ膵臓、ブタ膵臓、遺伝子組換え技術により生産されたもの等を用いることができ、その由来は限定されない。
【0020】
本発明におけるペプシンとは、酵素番号(EC Number)がEC3.4.23.1のプロテアーゼを指し、ウシ胃、ブタ胃、遺伝子組換え技術により生産されたもの等を用いることができ、その由来は限定されない。
【0021】
本発明における抗菌性ペプチド組成物を得るためのトリプシンでの分解、ペプシンでの分解及びトリプシンとペプシンの同時分解における温度及びpHは使用される酵素の至適作用範囲内であれば特に問題はない。また、処理時間及び酵素の量は使用される酵素の比活性の強さに合わせて適宜選択できる。例えば、比活性が6000〜15000 BAEE units/mg proteinのウシ膵臓由来のトリプシンで分解する場合、1/20〜1/30の酵素量でpH7.0〜9.0、好ましくはpH7.5〜8.5で、温度20〜50℃、好ましくは温度30〜45℃、処理時間5〜30時間、好ましくは10〜20時間の処理により得ることができる。また、比活性が600〜4500 units/mgproteinのブタ胃粘膜由来のペプシンで分解する場合、1/20〜1/30の酵素量でpH0.5〜2.0、好ましくはpH0.8〜1.5、温度20〜50℃、好ましくは温度30〜45℃、処理時間20〜90分、好ましくは、45〜85分の処理により得ることができる。トリプシン及びペプシンの同時に分解する場合は、例えば上述のペプシンでの分解を行い、中和後にトリプシンで分解することにより得ることができるが、ペプシンでの分解とトリプシンでの分解の順序は特に限定されない。
【0022】
本発明における抗菌性ペプチド組成物の平均分子量は、トリプシンで分解して得られるペプチド類では2.0〜6.0kDa、好ましくは3.5〜5.5kDa、さらに好ましくは4.0〜5.2kDaであり、ペプシンで分解して得られるペプチド類及びトリプシンとペプシンの同時分解で得られるペプチド類では2.5kDa以下、好ましくは2.0kDa以下、さらに好ましくは1.8kDa以下である。
【0023】
本発明における抗菌性ペプチド組成物の平均分子量の測定方法は、特に限定されないが、ゲルロ過法、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法及び超遠心法等があげられるが、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法が好ましい。
【0024】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法での測定方法は特に限定されないが、例えば、0.1%SDSを含む10%アクリルアミド分離ゲルと3%固定ゲルを用いたLaemmliの方法(Nature,227巻,680,1970年)等があげられる。
【0025】
本発明の抗菌性ペプチド組成物、リゾチーム及び変性リゾチームの相違は、上記に記載したリゾチームの有する酵素活性及び平均分子量以外に逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析からも確認することができる。例えば、展開溶媒をA溶媒に0.09% トリフロオロ酢酸(TFA)水溶液、B溶媒に0.085% TFA−アセトリトリル溶液を用いてA溶媒の0〜40%の直線グラジエントによるODSカラムを用いたHPLCの分析が例示できる。
【0026】
本発明の抗菌性ペプチド組成物は、単独で使用、または他の成分と併用して使用しても問題はない。その形態については、溶液、粉末のいずれでもよい。粉末化の方法としては、熱風乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等、通常の公知の粉末化方法を用いればよい。
【0027】
本発明の抗菌性ペプチド組成物は、医薬、化粧品、食品、飼料等に添加して抗菌、防腐等を目的として使用することができる。例えば、抗炎症や抗菌を目的とした医薬品、虫歯の原因菌の抑制を目的とした洗口液や歯磨き剤等の医薬部外品として、フケの原因菌の抑制を目的としたシャンプーやリンス等の化粧品として、腐敗防止や殺菌を目的とした生鮮野菜、鮮魚、蒲鉾、カスタードクリーム、漬物、ソーセージ、ハム、炊飯米、鶏卵加工品等の食品の日持ち向上剤として、家畜や水産動物の疾病予防を目的とした飼料添加剤や動物医薬品としての利用が可能である。また、食品用の機械、器具、包丁、まな板などの調理器具の殺菌及び手指の消毒、室内殺菌などに、噴霧または浸漬することにより使用することができる。
【0028】
これらの目的に使用する本発明の抗菌性ペプチド組成物の配合量は、特に限定されるものではないが、通常0.005重量%以上、好ましくは0.01重量%以上となるように、各種用途に応じてその使用量を適宜変える事ができる。
以下本願発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
【実施例】
実施例1
10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)を0.5%の濃度となるよう5gを溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。このリゾチーム溶液にトリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I)を0.02%になるように0.2g添加し、37℃で15時間放置し、トリプシンで分解した。そして95℃で10分間放置してトリプシンを失活させた。速やかに冷却後、卓上型遠心分離機で遠心分離(3000g、10分間)し、上清995mlを集め、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品1)990gを得た。
【0030】
実施例2
0.15N塩酸1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)5gを0.5%の濃度となるよう溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。このリゾチーム溶液にペプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ブタ胃粘膜由来)を0.02%になるように0.2g添加し、37℃で1時間放置し、ペプシンで分解した。そして、0.1N水酸化ナトリウムで中和(pH7.0に調整)後、95℃で10分間放置してペプシンを失活させた。速やかに冷却後、卓上型遠心分離機で遠心分離(3000g、10分間)し、上清995mlを集め、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品2)990gを得た。
【0031】
実施例3
0.15N塩酸1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)を0.5%の濃度となるよう5g溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。このリゾチーム溶液にペプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ブタ胃粘膜由来)を0.02%になるように0.2g添加し、37℃で1時間放置し、ペプシンで分解した。そして、0.1N水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した後、トリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I)を0.02%になるように0.2g添加し、37℃で15時間放置し、トリプシンで分解した。そして95℃で10分間放置してペプシン及びトリプシンを失活させた。速やかに冷却後、卓上型遠心分離機で遠心分離(3000g、10分間)し、上清997mlを集め、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品3)991gを得た。
【0032】
実施例4
卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)1kgを10mMのリン酸緩衝液(pH8.0)100リットルに溶解した後、トリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I)40gを添加した。その溶液を攪拌しながら液温を37±2℃で15時間放置し、トリプシンで分解した。その後、90℃で10分間放置してトリプシンを失活させた。速やかに冷却した後、ロ過してロ液を得た。得られたロ液をスプレードライ法(熱風温度150℃、排風温度80℃)で粉末化し、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品4)を960g得た。
【0033】
実施例5
卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)1kgを0.15N塩酸100リットルに溶解した後、ペプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ブタ胃粘膜由来)40gを添加した。その溶液を攪拌しながら液温を37±2℃で1時間放置し、ペプシンで分解した。そして、0.1N水酸化ナトリウムで中和後、90℃で10分間放置してトリプシンを失活させた。速やかに冷却した後、ロ過してロ液を得た。得られたロ液をスプレードライ法(熱風温度150℃、排風温度80℃)で粉末化し、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品5)を965g得た。
【0034】
実施例6
卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)1kgを0.15N塩酸100リットルに溶解した後、ペプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ブタ胃粘膜由来)40gを添加した。その溶液を攪拌しながら液温を37±2℃で1時間放置し、ペプシンで分解した。そして、0.1N水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した後、トリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I)40gを添加した。その溶液を攪拌しながら液温を37±2℃で15時間放置し、トリプシンで分解した。その後、90℃で10分間放置してペプシン及びトリプシンを失活させた。速やかに冷却した後、ロ過してロ液を得た。得られたロ液をスプレードライ法(熱風温度150℃、排風温度80℃)で粉末化し、本発明の抗菌性ペプチド組成物(本発明品6)を978g得た。
【0035】
比較例1
10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)を0.5%の濃度となるよう5g溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。このリゾチーム溶液にトリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I)を0.02%になるように0.2g添加し、37℃で3時間放置し、トリプシンでリゾチームを変性させた。ゲルロ過によりトリプシン画分を除去して変性リゾチーム(比較品1)3.4gを得た。
【0036】
比較例2
0.15N塩酸1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)5gを0.5%の濃度となるよう溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。このリゾチーム溶液にペプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ブタ胃粘膜由来)0.2gを0.02%になるように添加し、37℃で0.5時間放置し、ペプシンでリゾチームを変性させた。ゲルロ過によりペプシン画分を除去して変性リゾチーム(比較品2)3.0gを得た。
【0037】
比較例3
イオン交換水1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)5gを0.5%の濃度となるよう溶解し、リゾチーム溶液1リットルを調製した。50mgのキモトリプシン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、ウシ膵臓由来、Type I−s)を添加後、水酸化ナトリウムでpH10に調整後、20℃で2時間放置し、キモトリプシンでリゾチームを変性させた。ゲルロ過によりキモトリプシン画分を除去して変性リゾチーム(比較品3)3.8gを得た。
【0038】
比較例4
10mMリン酸緩衝液(pH6.0)1リットルに卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)5gを0.05%の濃度となるよう溶解した。このリゾチーム溶液を90℃で20分間放置した後、氷冷水中で冷却することによりリゾチームを変性させ、変性リゾチーム(比較品4)4.2gを得た。
【0039】
試験例1.抗菌性ペプチド組成物の酵素活性の測定
実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1〜4で得られた比較品1〜4の変性リゾチーム及び卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)の酵素活性の比較を行った。リゾチームの酵素活性はミクロコッカス・リゾデイクティカス(M.lysodeikticus)菌体に対する溶菌活性で比較した。それぞれの試料をLowry法(Lowry,O.ら,J.Biol.Chem.,193巻,265(1951))で測定して最終濃度が1μg/mlとなるように50mMのリン酸緩衝液(pH6.2)に懸濁した菌体液(初期濁度A600nm=0.75〜0.80)に添加し、25℃でその濁度変化を測定した。卵白リゾチームの濁度変化量を100%とした場合、実施例1〜3で得られた抗菌性ペプチド組成物(本発明品1〜3)のそれは、いずれも0%であった。一方、比較例1〜4で得られた変性リゾチーム(比較品1〜4)のそれはそれぞれ73%、70%、69%及び14%であった。これらのことから、本発明の抗菌性ペプチド組成物は、リゾチームの酵素活性が認められないことが明らかとなった。このことから、本発明の抗菌性ペプチド組成物は変性リゾチーム及び卵白リゾチームと異なっていた。
【0040】
試験例2.抗菌性ペプチド組成物の平均分子量測定
実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1〜4で得られた比較品1〜4の変性リゾチーム及び卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)の平均分子量を測定した。平均分子量は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した(0.1%SDSを含む10%アクリルアミド分離ゲルと3%固定ゲルを用いてLaemmliの方法(Nature,227巻,680,1970年)に準じて行った)。その結果、本発明品1、本発明品2及び本発明品3の平均分子量は、それぞれ4.7kDa、1.1kDa及び1.1kDaであった。一方、卵白リゾチーム、比較品1、比較品2、比較品3及び比較品4のそれは、それぞれ14.4kDa、10.2kDa、12.3kDa及び14.3kDaであった。これらのことから、卵白リゾチーム及び変性リゾチームと比較して、本発明の抗菌性ペプチド組成物は、低分子化されたペプチド断片であることがわかった。このことから、本発明の抗菌性ペプチド組成物は変性リゾチーム及び卵白リゾチームと異なっていた。
【0041】
試験例3.抗菌性ペプチド組成物のHPLC分析
実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1で得られた比較品1の変性リゾチーム及び卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)の逆相カラムによるHPLC分析を行った。この時の分析条件は表1に示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004270798
【0043】
実施例1で得られた本発明品1の抗菌性ペプチド組成物、実施例2で得られた本発明品2の抗菌性ペプチド組成物、実施例3で得られた本発明品3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1で得られた比較品1の変性リゾチーム及び卵白リゾチームのHPLC分析結果を図1、図2、図3、図4及び図5にそれぞれ示した。
【0044】
図1〜図5から明らかなように実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物は、比較品1の変性リゾチーム及び卵白リゾチームと比較して、保持時間30分以内の早い時間にペプチドに由来する複数のピークが検出された。このことから、本発明の抗菌性ペプチド組成物は変性リゾチーム及び卵白リゾチームと異なっていた。
【0045】
以上、試験例1〜3より、本発明の抗菌性ペプチド組成物と比較品である変性リゾチームでは、酵素活性、平均分子量及び表面の立体構造が異なる結果が得られた。このことから、本発明の抗菌性ペプチド組成物と変性リゾチームはその性質がまったく異なるものであることが明らかとなった。
【0046】
試験例4.グラム陽性菌に対する抗菌性ペプチド組成物の抗菌活性
実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1〜4で得られた比較品1〜4の変性リゾチーム及び卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)のグラム陽性菌に対する抗菌活性を比較した。グラム陽性菌としてはStaphylococcus aureus IFO14462株を用いた。対数増殖期のS.aureus IFO14462を1×10細胞/mlとなるように生理的食塩水に懸濁させた。BHI液体培地が入っている96穴マイクロプレートに懸濁液の100μlを添加後に各試料を添加した。試料の添加量は、Lowry法(Lowry,O.ら,J.Biol.Chem.,193巻,265(1951))で測定したタンパク質濃度として、培地中の終濃度で0.42mg/mlになるように添加した。37℃で18時間培養後の575nmの濁度を測定することで細菌の増殖を調べた。卵白リゾチームの濁度を100%として、それぞれの濁度を比較した結果、本発明品1、本発明品2及び本発明品3のそれは、それぞれ43.4%、98.1%及び23.4%であった。一方、比較品1、比較品2、比較品3及び比較品4のそれは、それぞれ62.9%、63.8%、66.7%及び65.5%であった。
【0047】
これらのことから、本発明品の抗菌性ペプチド組成物のうちでトリプシン分解で得られた本発明品1、ペプシンとトリプシン同時分解で得られた本発明品3の抗菌性ペプチド組成物は、比較品1〜4の変性リゾチーム及び卵白リゾチームと比較して、グラム陽性菌に対して強い抗菌活性を発現した。
【0048】
試験例5.グラム陰性菌に対する抗菌性ペプチド組成物の抗菌活性
実施例1〜3で得られた本発明品1〜3の抗菌性ペプチド組成物、比較例1〜4で得られた比較品1〜4の変性リゾチーム及び卵白リゾチーム(太陽化学(株)製、リゾチーム太陽)のグラム陰性菌に対する抗菌活性を比較した。グラム陰性菌としては大腸菌(Escherichia coli K−12株)を用いた。対数増殖期の大腸菌を1×10細胞/mlとなるように生理的食塩水に懸濁させた。マッコンキー液体培地が入っている96穴マイクロプレートに懸濁液の100μlを添加後に各試料を添加した。試料の添加量は、Lowry法(Lowry,O.ら,J.Biol.Chem.,193巻,265(1951))で測定したタンパク質濃度として、培地中の終濃度で0.42mg/mlになるように添加した。37℃で18時間培養後の575nmの濁度を測定することで細菌の増殖を調べた。卵白リゾチームの濁度を100%として、それぞれの濁度を比較した結果、本発明品1、本発明品2及び本発明品3のそれは、それぞれ0%、95%及び0%であった。一方、比較品1、比較品2、比較品3及び比較品4のそれは、それぞれ49.5%、51.3%、50.9%及び49.8%であった。
【0049】
これらのことから、本発明品の抗菌性ペプチド組成物のうちでペプシン分解で得られた本発明品2及びペプシンとトリプシン同時分解で得られた本発明品3の抗菌性ペプチド組成物は、グラム陰性菌に対して抗菌活性を発現し、その強さは比較品1〜4の変性リゾチームよりも強いものであった。また、卵白リゾチームは抗菌活性を全く示さなかった。
【0050】
実施例7.カスタードクリームへの利用
【0051】
【表2】
Figure 0004270798
【0052】
表2に示した処方のカスタードクリームに実施例4で調製した本発明品4、実施例5で調製した本発明品5及び実施例6で調製した本発明品6の抗菌性ペプチド組成物を0.2%添加して、無添加カスタードクリーム、卵白リゾチーム、比較例1で調製した比較品1である変性リゾチームを0.2%添加したカスタードクリームと保存性を比較した。保存温度は室温で行った。保存性は試料中の一般細菌数により評価した。即ち、各試料1gを標準寒天培地を用いて35℃、48時間インキュベートし、形成されたコロニー数より細菌数を算出した。細菌数は1g当たりのCFU(コロニー形成単位)で表した。保存試験の結果を表3に示した。
【0053】
【表3】
Figure 0004270798
【0054】
表3から、無添加区、卵白リゾチーム添加区、変性リゾチーム添加区と比べ、本発明の抗菌性ペプチド組成物添加区である本発明品4〜5は一般細菌数の増加が抑制されており、日持ち延長効果が認められた。
【0055】
実施例8.ポテトサラダへの利用
【0056】
【表4】
Figure 0004270798
【0057】
実施例4で調製した本発明品4、実施例5で調製した本発明品5及び実施例6で調製した本発明品6の抗菌性ペプチド組成物を0.15%添加した表4で示したポテトサラダを28℃で保存した結果、一般細菌数が2日後には本発明の抗菌性ペプチド組成物無添加区では2.5×10CFU/gであったが、本発明の抗菌性ペプチド組成物である本発明品4、本発明品5及び本発明品6を添加したものは、それぞれ6.8×10CFU/g、4.5×10CFU/g及び3.2×10CFU/gに菌数が抑えられ、日持ち延長効果が認められた。日持ち延長効果は一般細菌数を測定することにより評価した。具体的には、各試料1gを標準寒天培地を用いて35℃、48時間インキュベートし、形成されたコロニー数より一般細菌数を算出した。
【0058】
実施例9.一夜漬けへの利用
野菜(きゅうり、きゃべつ)1kgに対して食塩30gを加え、これに実施例4で調製した本発明品4、実施例5で調製した本発明品5及び実施例6で調製した本発明品6の抗菌性ペプチド組成物を、それぞれ2gを添加し、一夜漬けを製造した。冷蔵庫、又は25℃で4日間保存した後の品質を無添加品と比較し調べた結果、冷蔵庫、25℃保存品共に本発明の抗菌性ペプチド組成物を添加したものの方が、臭い、外観の劣化はみられず、保存性が向上した。
【0059】
実施例10.カット野菜への利用
カット野菜(きゃべつ、にんじん、ごぼう)10kgを実施例4で調製した本発明品4、実施例5で調製した本発明品5及び実施例6で調製した本発明品6の抗菌性ペプチド組成物0.2%液に10分間浸漬処理した後、充分に水切りし、ビニール袋に小袋充填した。4℃の冷蔵庫に保存し、2日後に大腸菌群の検出率を調べた結果、検出率は浸漬未処理品に比べ、本発明品4、本発明品5及び本発明品6で処理すると、それぞれ65%、94%及び98%の減少が認められた。大腸菌群はBGLB培地法により、35℃、48時間培養後判定し、浸漬処理品、未処理品各々20袋における検出率を比較した。
【0060】
実施例11.エビむき身への利用
新鮮なエビむき身500gを実施例6で調製した実施例4で調製した本発明品4、実施例5で調製した本発明品5及び実施例6で調製した本発明品6の抗菌性ペプチド組成物10%液に5分間浸漬処理した後、充分に水切りし、4℃の冷蔵庫に保存し経時的に品質を検査した。浸漬処理のしなかったものは3日後から官能検査で明らかな異臭と外観の光沢の消失がみられたが、浸漬処理をしたものでは官能検査でも異臭はみられず、新鮮な状態を維持していた。
【0061】
実施例12.チューインガムへの利用
ガムベース20.0kg、砂糖60.0kg、結晶ブドウ糖18.9kg、香料1.0kg、実施例4で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物抗菌剤0.1kgからなるチューインガムを常法により作成した。
【0062】
実施例13.養豚用飼料への利用
脱脂粉乳32.1kg、小麦粉29.9kg、パン粉7.0kg、大豆粕5.0kg、魚粉5.0kg、砂糖4.0kg、ブドウ糖9.0kg、油脂2.0kg、ビタミン・ミネラル類3.0kg、実施例5で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物1.0kgを混合し、常法により養豚用飼料98kgを得た。
【0063】
実施例14.ブロイラー用飼料への利用
トウモロコシ58.0kg、大豆粕15.9kg、ふすま5.0kg、魚粉6.0kg、アルファルファ3.0kg、炭酸カルシウム7.0kg、リン酸カルシウム1.6kg、食塩0.4kg、ビタミン・ミネラル類0.1kg、大豆油2.0kg、実施例6で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物1.0kgを混合し、常法によりブロイラー用飼料100kgを得た。
【0064】
実施例15.養殖魚用飼料への利用
魚粉6.4kg、小麦グルテン1.0kg、デキストリン0.8kg、ビタミン・ミネラル類0.5kg、セルロース0.3kg、タラ肝油0.5kg、実施例4で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物0.1kgを混合し、湿式造粒後、乾燥し養殖魚用飼料10.0kgを得た。
【0065】
実施例16.美白クリームへの利用
ミツロウ6.0kg、セタノール5.0kg、還元ラノリン8.0kg、スクワラン37.5kg、グリセリン脂肪酸エステル6.0kg、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル2.0kg、プロピレングリコール5.0kg、ビタミンK0.5kg、実施例1で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物0.2kg、香料適量、酸化防止剤適量、精製水を加え全量を100kgとし、常法により美白クリーム98kgを得た。
【0066】
実施例17.トローチ剤への利用
アラビアガム6.0kg、ブドウ糖72.0kg、モノフルオロリン酸ナトリウム0.7kg、ゼラチン1.0kg、乳糖19.0kg、香料1.0kg、実施例2で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物1.5kg、ステアリン酸マグネシウム適量を混合し、常法によりトローチ剤99.7kgを得た。
【0067】
実施例18.シャンプーへの利用
ラウリル硫酸ナトリウム10.0kg、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム20.0kg、ラウリルジエタノールアミド4.0kg、加水分解コラーゲン1.0kg、ジステアリン酸エチレングリコール1.0kg、エデト酸四ナトリウム四水塩0.1kg、プロピレングリコール5.0kg、実施例3で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物0.5kg、クエン酸、香料適量、精製水を加え全量を100kgとし、常法によりシャンプー98.7kgを得た。
【0068】
実施例19.飲料への利用
果糖ぶどう糖液糖15.0kg、クエン酸0.2kg、香料、着色料適量、実施例4で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物0.1kgを混合し、常法により飲料15kgを得た。
【0069】
実施例20.かまぼこへの利用
冷凍ヘイクすり身1kgに実施例5で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物5gを混合し、空ずりした後、食塩30gを加え塩ずりし、澱粉30g及び水100gを加えてねり上げ、成型して90℃、30分間加熱し、冷却してかまぼこ0.9kgを得た。
【0070】
実施例21.魚肉ソーセージへの利用
冷凍スケソウダラすり身150g、マグロ挽肉60g、バレイショ澱粉35g、食塩20g、砂糖5g、亜硝酸ナトリウム0.2g、リン酸ナトリウム3g、香辛料を適量加え、サイレントカッターで2分間混合した。これに実施例6で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物15gを加え、さらに3分間混合した。得られた混合物をフィルムケーシングに充填し、85℃、60分間の加熱を行い、魚肉ソーセージ252gを得た。
【0071】
実施例22.鶏卵加工品への利用
コーンサラダ油74.0kg、全卵液15.0kg、リンゴ酢5.0kg、水2.3kg、食塩2.0kg、辛子粉0.5kg、キサンタンガム0.2kg、実施例4で調製した本発明の抗菌性ペプチド組成物1.0kgの配合割合で常法により、水中油型のドレッシングを得た。
【0072】
本発明の他の各種態様を以下に例示する。
(1)リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2〜6kDaの範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(2)リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が3.5〜5.5kDaの範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(3)リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が4.5〜5.2kDaの範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(4)前記(1)〜(3)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物がグラム陽性菌に対するものである抗菌性ペプチド組成物。
(5)リゾチームをペプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
【0073】
(6)リゾチームをペプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.0kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(7)リゾチームをペプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が1.8kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(8)前記(5)〜(7)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物がグラム陰性菌に対するものである抗菌性ペプチド組成物。
(9)リゾチームをペプシン及びトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(10)リゾチームをペプシン及びトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.0kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
【0074】
(11)リゾチームをペプシン及びトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が1.8kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とする抗菌性ペプチド組成物。
(12)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する医薬。
(13)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する化粧品。
(14)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する食品。
(15)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する飼料。
(16)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するシャンプー。
(17)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するリンス。
(18)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する洗口液。
(19)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する歯磨き剤。
(20)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する蒲鉾。
【0075】
(21)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する麺。
(22)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するカスタードクリーム。
(23)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する漬物。
(24)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するソーセージ。
(25)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するハム。
【0076】
(26)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有するパン。
(27)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する炊飯米。
(28)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する鶏卵加工品。
(29)前記(1)〜(11)いずれか記載の抗菌性ペプチド組成物を含有する飲料。
【0077】
【発明の効果】
従来、リゾチームの抗菌活性はグラム陽性菌に対するものとして限定され、その用途目的が限定されていた。本発明における抗菌性ペプチド組成物は、従来のリゾチームが有するグラム陽性菌に対する抗菌活性を増強する効果を有する。また、従来のリゾチームの抗菌スペクトルはグラム陽性菌に限定されていたが、本発明における抗菌性ペプチド組成物はその抗菌スペクトルを拡大する効果を有し、グラム陰性菌に対しても強い抗菌活性を示す。本発明の抗菌性ペプチド組成物は、このような抗菌活性を有する抗菌性ペプチドを有効成分とするものであり、医薬、化粧品、食品、飼料分野等において効果が期待される。
【0078】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製した抗菌性ペプチド組成物のHPLC分析結果を示した図である。
【図2】実施例2で調製した抗菌性ペプチド組成物のHPLC分析結果を示した図である。
【図3】実施例3で調製した抗菌性ペプチド組成物のHPLC分析結果を示した図である。
【図4】変性リゾチームのHPLC分析結果を示した図である。
【図5】卵白リゾチームのHPLC分析結果を示した図である。

Claims (4)

  1. リゾチームをトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2〜6kDaの範囲であるペプチド類を有効成分とするペプチド組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の菌増殖抑制方法。
  2. リゾチームをぺプシン及びトリプシンで分解して得られるペプチド類であって、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した平均分子量が2.5kDa以下の範囲であるペプチド類を有効成分とするペプチド組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の菌増殖抑制方法。
  3. 請求項2記載の菌がグラム陰性菌である飲食品の菌増殖抑制方法。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の菌増殖抑制方法により得られた飲食品。
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