JP4270739B2 - 熱間加工用支持体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、建設機械、電機製品、農業機械等の各種部品を、例えば鍛造(塑性)加工によって製造する際に、被加熱体であるビレット材等の鋼材を加熱するために使用される熱間加工用支持体及び該熱間加工用支持体を使用した誘導加熱炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種機械部品を温熱間鍛造加工によって製造する際には、被加熱体であるビレット材が、予め、加熱炉によって加熱された後に、鍛造加工されるようになっている。このような鍛造加工用加熱炉としては、燃焼式加熱炉に替わって、図4に示すような、誘導加熱炉が普及している。誘導加熱炉は、ビレット材4が搬送される炉心管11にコイルを巻回した構造をとり、当該コイルに通電することによって、炉心管内を搬送されるビレット材4が電磁誘導加熱される仕組みとなっている。
即ち、当該炉心管11は被加工材であるビレット材4を熱間加工する際の支持体として機能している。
【0003】
そのような熱間加工用支持体は、目的に応じて、実公平2−4120号公報、実公昭62−13722号公報に開示されたような単管構造、特開平10−272534号公報に開示されたような二重管構造等、種々の形状のものが用いられるが、これらの熱間加工用支持体を構成する材質としては、熱効率を向上させ、強度を確保する観点から、高熱伝導率、高強度、高輻射率を有し、アルカリ、アルミニウム、炭酸ガス、酸化雰囲気等に対する耐磨耗性に優れる、炭化珪素質の耐火セラミックを使用することが好ましいとされている(特開平10−272534号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱間加工用支持体の材料として炭化珪素質の耐火セラミックを用いた場合でも、耐食性、耐衝撃性が不足しているために該支持体が腐食し、或いは破損する等の問題が生じる場合があり、未だ熱間加工用支持体を構成する材料としての必要条件を充分に満足しているとは言えなかった。
【0005】
そのような腐食、破損等は、後に説明するように、熱間加工用支持体の加熱温度が高いほど発生しやすく、特に炉心管の出口から100〜500mmの領域において、大きさ20〜100mm程度の損耗が局部的に発生することが分かっている。
従来、誘導加熱炉の炉心管は、一本の長さが300〜800mm程度の熱間加工用支持体を複数本並べることにより構成されているが、その一部のみが損耗し、健全な部分が多く残っている支持体を、一本丸ごと交換しなければならないことが問題となっていた。
【0006】
そこで、実用新案登録第3057198号公報には、熱間加工用支持体を底部材とその他の部分に分割し、該底部材に、一体的に作られた、被加熱体を摺動させるレールを設けた誘導加熱装置が開示されている。これは、分割された底部材の2本のレール上の突起により被加熱体を支えるが、レール部分に破損や消耗が生じた場合には、底部材のみを交換できるようにすることで、破損等があっても交換作業が簡易に行え、経済性及び省資源性の向上が図られるとされている。
【0007】
しかしながら、この誘導加熱装置では、レール部分に破損や消耗が生じた場合には分割された底部材のみを交換できるが、熱間加工用支持体全長において一律に同じ材質及び同じ長さの底部材を用いており、前述したような、破損等が生じやすい部分とそうでない部分を考慮していないと思われる。従って、破損等が生じることが前提であり、破損が生じやすい部分については度々交換を要することになると考えられる。しかも、一律に同じ長さの底部材を用いていることから、破損した部分のみを無駄なく交換することはできないと考えられる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、交換対応性及び耐反応性の高い熱間加工用支持体及び該熱間加工用支持体を使用してなる誘導加熱炉を提供することにある。
【0009】
即ち、本発明によれば、被加熱体を炉心管の外部から誘導コイルによって加熱する熱間加工用支持体であって、被加熱体を載置する第一支持部材と、当該第一支持部材を保持する第二支持部材からなり、当該第一支持部材が、被加熱体の搬送方向に対し、複数に分割され、且つ当該第一支持部材が、単層若しくは複層にて構成されていることを特徴とする熱間加工用支持体、が提供される。
【0010】
本発明の熱間加工用支持体は、前記第一支持部材の表層として、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア、又は炭化クロムのうち少なくとも1種からなることが好ましい。前記第一支持部材の長さとしては、10〜300mmであることが好ましい。
また第一支持部材が複層にて構成されている場合その表層の厚みは、2mm以上であることが好ましい。第二支持部材としては、炭化珪素質、窒化珪素質、若しくは金属珪素含浸炭化珪素質の焼結体からなることが好ましい。
更に、本発明によれば、上記した熱間加工用支持体を使用してなる誘導加熱炉、が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、誘導加熱炉の一般的な構成について図面を参照しながら概説した上で、本発明の熱間加工用支持体1について詳細に説明する。
但し、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。
【0012】
図4は、誘導加熱炉の一般的な構成を示す縦断面図である。
誘導加熱炉は、炉心管内部を電磁誘導により加熱する加熱炉であって、例えば円筒状のビレット材4等を鍛造加工するために用いられるものである。
【0013】
誘導加熱炉は、炉心管11を外殻14で固定してなる複数の熱間加工用支持体1(以下、単に「支持体」という。)からなり、各支持体は、ビレット材4を所定温度に加熱するために必要な長さになるように、所定の個数が並列されている。
また、各支持体1は、ビレット材4を連続的に送り込めるように炉心管11開口部が一致するように、水平方向に並列されている。
【0014】
炉心管11は、図示の如くビレット材4が送り込まれる側の開口端にフランジ部11aが設けられる場合もあるが、フランジ部11a以外は一定の厚さを有する管状構造になっている。また、炉心管11の外周面は、全体にわたって、断熱材12によって覆われている。
【0015】
炉心管11には、断熱材12を介して銅製のコイル導管13が巻回されている。このコイル導管13は、断面四角形の中空パイプ状になっており、その外周面は絶縁材によって被覆されている。更に、コイル導管13の内部には、冷却水が通流されるようになっている。
【0016】
炉心管11は、ノンアスベスト等の耐熱材によって構成された外殻14の中心部に、水平状態に架設されて、各端部がアルミナセメント15によって、外殻14に固定されている。
【0017】
誘導加熱炉においては、コイル導管13への通電による電磁誘導によって炉心管11内部が加熱される。従って、誘導加熱炉入口側の炉心管11開口部からプッシャー、ピンチローラー等によって炉心管11内にビレット材4を連続的に送り込むことにより、例えば図3に示すような炉心管構造を有する誘導加熱炉においては、ビレット材4が、各支持体21・22・23の炉心管11内を順番に通過し、順次加熱され、最後の支持体23における炉心管11内では、1200℃程度の高温に加熱される。
【0018】
図3は、誘導加熱炉において、3本の支持体21・22・23によって炉心管11を構成した場合の模式図である。例えば、この炉心管内でビレット材4を1200℃まで温めていく場合には、およそ第2支持体22の中間部分において、その温度は1100℃を超えることになる。誘導加熱炉の支持体は、目的に応じた材質を用いてはいるが、この1100℃以上になる領域において、溶損や摩耗による腐食が観察されている。
【0019】
そこで、本発明の熱間加工用支持体1は、図1、図2(a)、(b)、(c)に示すように、被加熱体を載置する第一支持部材2と、該第一支持部材2を保持する第二支持部材3から構成し、該第一支持部材2を被加熱体の搬送方向に対し、複数に分割するようにする。このようにすることで、腐食の予想される温度領域に交換対応性の高い前記第一支持部材2を配置しておくことができ、無駄なく容易に炉心管を修復することができる。
本発明の熱間加工用支持体は、誘導加熱炉の炉心管全長において使用できることはもちろんであるが、炉心管の一部にのみ使用してもよい。前述したように、支持体の損耗の生じやすいのは炉心管が高温になる出口側であり、この部分に本発明の支持体を適宜使用すればよいと考えられる。即ち、実際の誘導加熱炉それぞれに応じて、コストが最小限になるように従来の支持体と、本発明の支持体を組み合わせてもよいということである。
【0020】
このとき、第一支持部材2としては、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア又は炭化クロムのうち少なくとも1種からなることが好ましい。第一支持部材2は、加熱されたビレット材4による溶損や摩耗に強く耐反応性の高い、これらの材質材質により作製されており、しかも、炉心管11内の要求特性の厳しい部分に対応できる、幾つかの材質により作製されているので、その要求特性に応じ、且つコスト面を考慮した上で、適宜、各材質の支持部材を配置することができる。
尚、これらの材質は、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア、炭化クロムの順でより耐反応性が高くなるので、その順に温度条件的に厳しい部分に当てはめていくと好適となる。
【0021】
また、第一支持部材2の長さとしては、10mmから300mmであることが好ましく、更には、損耗の生じやすい温度領域においては、第一支持部材2の長さとして、20mmから100mmであることが好ましい。
【0022】
誘導加熱炉においては、前述したように、支持体が1100℃以上になる領域において損耗が発生し、特に最高温度付近、即ち、炉心管出口付近において損耗が激しくなる。その損耗は、加熱炉の設計及び処理する被加熱体4の径により変化するが、炉心管出口から約100mmから500mm程度の部分で顕著となり、損耗の状態としては、支持部材の表層が被加熱体と接触している形状で削られるように摩耗していく。その損耗は、被加熱体の搬送方向に対して、20mmから100mm程度の大きさで発生することが、これまでに使用された炉心管の観察により分かっている。
【0023】
これらのことより、損耗が発生しにくい部分においては、第一支持部材2を300mmまで長くすることにより、該支持部材の生産コストを下げ、第一支持部材2の安定性を向上させることができる。これ以上長くすると、一つの支持部材中に破損の発生の可能性が高くなり、破損の生じた部分だけ交換できるという本発明の効果を失うことになる。
また、第一支持部材2が10mmより短いと、第二支持部材3上に該第一支持部材2を安定的に保持することは困難となり、また、被加熱体4による衝撃に対する抵抗も弱くなってしまう。
更に、損耗が発生しやすい部分においては、第一支持部材2を20から100mmの長さの部材とすると、その発生する損耗に応じて、無駄なく部材を交換でき、また、載置される温度に応じた材質により作製された該支持部材を適宜用いることができることとなる。
【0024】
本発明の熱間加工用支持体1における実施形態としては、特に制限はないが、例えば図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すように、第一支持部材2として、被加熱体4に接する面がV字形をしているものが好ましい。本発明において想定している被加熱体4は円柱形状のものであるので、図6(a)、図6(b)に示すように、第一支持部材2がU字状若しくは平板状であると一点での接触となり接触面圧が上昇し損耗しやすくなるからである。これに対し、第一支持部材2がV字状であれば、図5に示すように、接触面5が2点となり接触面圧が低下することから損耗をより防ぐことができることとなる。
【0025】
また、第一支持部材2を支える第二支持部材3としては、第一支持部材2の安定性の面から該第一支持部材2の下面と同一の形状をとり、できるだけ隙間なく接することができる形状をとることが好ましく、図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すように、U字状、半円状、若しくはV字状の形状であることが好ましい。これは、第二支持部材3の周囲を包んでいる加熱コイル13が円形状をしているため、第二支持部材3も円形状に近い方が断熱層を多くとれるためである。
【0026】
支持体を単に短く分割するだけでは、被加熱体が該支持体上を圧力かけながら移動していく際に、その衝撃や摩擦により分割体が移動したり、破損する可能性が大きく、その場合には、誘導コイルに偏った荷重がかかり、コイルの変形や破損につながる可能性がある。
本発明では、以上説明した実施形態のように、荷重、衝撃に対する対策として第二支持部材3を使用し、耐反応性を第一支持部材2にて付与するという構成を採用することにより、使用に耐えうる安定性を実現し、更に長寿命を実現することができた。
【0027】
本発明において、第一支持部材2は、単層若しくは複層にて構成されていてもよい。複層で構成される場合には、前述したように、その表層面が窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア又は炭化クロムのうち少なくとも1種からなることが好ましい。表層ではない、第二支持部材3に接する層においても、表層と同様の材質であってもよく、また、後述する第二支持部材3と同様の材質であってもよい。複層で構成された第一支持部材2の作製方法としては、あらかじめ分割しておいた各成形体をそれぞれ焼成し、次いで、該各成形体を適当に加工して組み合せるとよい。このように、第一支持部材2が複層に構成されている場合は、第一支持部材2の表層の厚みは、2mm以上であることが好ましい。該表層は、被加熱体と接触するため、耐反応性及び耐衝撃性を必要とするためである。
【0028】
また、本発明の第二支持部材3としては、窒化珪素質、炭化珪素質、若しくは金属珪素含浸炭化珪素質の焼結体からなることが好ましい。
第二支持部材3は、支持部材を載置する支持体の構成部分であるため、少なくとも被加工材の加熱条件(温度、雰囲気等)における強度と高い熱伝導率を有する材質で構成することが必要であり、この他にも耐熱性、耐衝撃性、及び耐食性を備えた材質で構成することが好ましく、均一かつ速やかな加熱を担保するべく比熱が小さい材質により構成することが好ましい。
【0029】
従って、本発明においては支持体の第二支持部材3を耐火セラミックの中でも特に上記特性に優れる炭化珪素質(以下、「SiC質」と記す。)、窒化珪素質(以下、「Si34質」と記す。)、若しくは金属珪素含浸炭化珪素質(以下、「Si−SiC質」と記す。)からなる焼結体により構成することとした。
なお、本発明の支持体は第二支持部材3上面に支持層を形成するため、第二支持部材3については耐摩耗性や被加工材との反応性を考慮する必要はない。
【0030】
SiC質焼結体としては、例えばSiO2結合のSiC焼結体やSi34結合のSiC焼結体等が、Si34質焼結体としては、例えばSi34原料粉末に、イットリア等の焼結助剤を添加混合して成形後、焼成して得られるSi34焼結体等が挙げられる。
【0031】
上記いずれの焼結体もSiC、Si34のみで構成されている必要はなく、SiC、Si34を主成分とするもの、具体的にはSiC、Si34が75重量%以上焼結体中に含まれているものであれば足りる。
なお、第二支持部材3としてより高い熱伝導性が要求される場合にはSiC質焼結体を、耐衝撃性が要求される場合にはSi34質焼結体を選択することが好ましい。
【0032】
Si−SiC質焼結体とは、金属Si及びSiCを構成成分として含む焼結体をいい、例えば本出願人が既に開示した、SiC粉体、黒鉛粉、有機質バインダー及び、水分又は有機溶剤を含有してなる成形用原料を成形し、当該成形体を金属Si雰囲気で、かつ減圧の不活性ガス雰囲気又は真空中において、1350〜2500℃で焼成してなるSi−SiC質焼結体等が挙げられる(特開平5−270917号公報)。
Si−SiC質焼結体は熱伝導性、強度に優れるため、本発明の支持体を構成する第二支持部材3として特に好適に用いることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、熱間加工用支持体を、被加熱体と接触する第一支持部材と前記第一支持部材を保持する第二支持部材から構成することにより、被加熱体に接触する支持部材を分割することができる。そのことによって、熱間加工用支持体に損耗等の不良が発生した場合に、コストを最小限に抑えた上で不良部分を交換することができる。更に、炉心管内の各部分における要求特性に応じた熱間加工用支持体によって炉心管を構成することができる。この結果、本発明の熱間加工用支持体及び本発明の熱間加工用支持体を使用してなる誘導加熱炉は、長期安定性及び信頼性の向上が図られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱間加工用支持体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】 本発明の熱間加工用支持体の一実施形態(a)第二支持部材がU字状のもの、(b)第二支持部材が半円状のもの、(c)第二支持部材がV字状のもの、を示す断面図である。
【図3】 誘導加熱炉の炉心管構造を示す模式図である。
【図4】 誘導加熱炉の一実施形態を示す断面図である。
【図5】 本発明の熱間加工用支持体における第一支持部材の一実施形態を示す断面図である。
【図6】 従来の誘導加熱炉における第一支持部材の一実施形態(a)第一支持部材が円形状のもの、(b)第一支持部材が平板状のもの、を示す断面図である。
【符号の説明】
1…熱間加工用支持体、2…第一支持部材、3…第二支持部材、4…被加熱体(ビレット材)、5…接触面、10…加熱ブロック、11…炉心管、11a…フランジ部、12…断熱材、13…コイル導管、14…外殻、15…セメント、21…第一支持体、22…第二支持体、23…第三支持体。

Claims (6)

  1. 被加熱体を炉心管の外部から誘導コイルによって加熱する熱間加工用支持体であって、
    被加熱体を載置する第一支持部材と、当該第一支持部材を保持する第二支持部材からなり、
    当該第一支持部材が、被加熱体の搬送方向に対し、複数に分割され、且つ当該第一支持部材が、単層若しくは複層にて構成されていることを特徴とする熱間加工用支持体。
  2. 前記第一支持部材の表層が、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニア、又は炭化クロムのうち少なくとも1種からなる請求項1に記載の熱間加工用支持体。
  3. 前記第一支持部材の長さが、10〜300mmである請求項1又は2に記載の熱間加工用支持体。
  4. 前記第一支持部材の表層の厚みが、2mm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間加工用支持体。
  5. 前記第二支持部材が、窒化珪素質、炭化珪素質、若しくは金属珪素含浸炭化珪素質の焼結体からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間加工用支持体。
  6. 請求項1〜5に記載の熱間加工用支持体を使用してなることを特徴とする誘導加熱炉。
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