JP2005169463A - セラミックス製ロール - Google Patents

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茂禎 杉山
Shigeyuki Hamayoshi
繁幸 濱吉
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Abstract

【課題】 金属製軸材の外周にセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールにおいて、絶縁性を十分に維持するとともに、耐摩耗性の劣化を防ぐことができる、また耐熱衝撃性、強度に優れたセラミックス製ロールを提供する。
【解決手段】 熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いられ、金属製軸材の外周に絶縁性を有するセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールであって、セラミックス製スリーブが窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなり、該スリーブの鋼板と接触する表面に、窒化チタンの被膜を形成したことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いられるセラミックス製ロールに係り、詳しくは金属製軸材の外周に絶縁性を有するセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールに関する。
鉄鋼熱間圧延ラインで鋼板を搬送するのに用いられ、絶縁性を有するセラミックス製ロールが種々提案されている。
特許文献1には、熱間圧延ラインにおいて、圧延鋼板の上下から互いに対向した誘導加熱コイルを配置して圧延鋼板の幅方向両端部を加熱する誘導加熱装置の直下または前後に配置され、金属製芯金にセラミックス製スリーブを嵌合した熱間圧延ライン向けローラであって、セラミックス製スリーブは窒化ケイ素焼結体からなり、金属製芯金の胴長方向の両側にそれぞれ外嵌され、そのスリーブ外嵌部がローラの胴長方向中央部よりも大径となることが記載されている。
特許文献2には、ロールバレルの外周に間隔を置いて嵌装された複数の絶縁リングと、この絶縁リングそれぞれの外側に嵌装された耐熱合金製のリングとを有する鋼板搬送用ロールが記載されている。絶縁リングとして、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニアなど、また耐熱合金製のリングとして、高クロム鋼、ステンレス鋼などが記載されている。
特許文献3には、ロール表面母材の上部に酸化物系のAl23、ZrO2、Cr23のみか、またはこれらを主成分としてSiO2を含むセラミックス、もしくはこれを組み合せたセラミックスの溶射によって電気絶縁皮膜を設け、さらにその上にWC、MoC、TiC、NbC、HfC、VC、Cr32などの炭化物系セラミックスを含むサーメットを50〜300μmの厚さで溶射を施して耐摩耗皮膜を設けた金属板搬送用電気絶縁ロールが記載されている。
特開2002−178020号公報 特開平7−265932号公報 特開平8−192944号公報
特許文献1のロールは、窒化ケイ素焼結体からなるセラミックス製スリーブを金属製軸材(芯金)に嵌合した構成であるため、絶縁性を十分維持するとともに、後述の溶射皮膜における剥離の問題を解消できる。しかしながら、窒化ケイ素焼結体は鉄族金属との親和性に富むために、鋼板を搬送するにしたがい次第に耐摩耗性が劣化する問題がある。また、窒化ケイ素焼結体の耐熱衝撃性が十分といえず、ロールが破壊しやすく耐用寿命が短いという問題がある。
特許文献2のロールは、絶縁リングの外側に嵌装された高クロム鋼などの耐熱合金製リングが耐摩耗性に劣る問題がある。また、耐熱合金製リングを嵌装させるため、絶縁リングとの密着性が悪く位置ずれしやすいという問題がある。
特許文献3のロールは、熱膨張係数が7〜11×10−6/℃程度であるアルミナやジルコニアなどのセラミックスを250〜300μmの厚みで、鋼製のロール母材表面に溶射して電気絶縁皮膜を形成しており、被溶射材であるロール母材の熱膨張係数15〜40×10−6/℃程度に比べて熱膨張係数差が大きいため、ロール全体が繰り返し加熱冷却(稼動中のロール表面温度は約700〜1300℃、冷却時は常温)された際に電気絶縁層皮膜が剥離しやすく絶縁性を十分に確保するのが難しいという問題がある。
そこで、本発明は金属製軸材の外周にセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールにおいて、絶縁性を十分に維持するとともに、耐摩耗性の劣化を防ぐことができる、また耐熱衝撃性、強度に優れたセラミックス製ロールを提供することを目的とする。
すなわち、本発明のセラミックス製ロールは、熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いられ、金属製軸材の外周に絶縁性を有するセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールであって、セラミックス製スリーブが窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなり、該スリーブの鋼板と接触する表面に、窒化チタンの被膜を形成したことを特徴とする。
また本発明において、前記窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、常温における熱伝導率が50W/(m・K)以上であることを特徴とする。前記窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、相対密度が98%以上であり、常温における4点曲げ強度が700MPa以上であることを特徴とする。
窒化ケイ素を主成分とする焼結体製スリーブの鋼板と接触する表面に、耐摩耗性に優れた窒化チタンの被膜を形成することにより、窒化チタンの被膜は鉄族金属との化学的反応性が低いこともあいまって長期にわたって耐摩耗性を維持できる。また、窒化チタンの被膜を形成時に、下地となる窒化ケイ素を主成分とする焼結体を構成する成分のうち、特に窒素が窒化チタンの被膜中に良く拡散するので、付着強度が著しく高く剥離し難いものとなる。
窒化チタンの被膜は非絶縁性であるが、下地となる窒化ケイ素を主成分とする焼結体製スリーブが高い絶縁性を有するので、誘導加熱時の鋼板と窒化ケイ素を主成分とする焼結体製スリーブとの間のスパーク発生は十分防止できる。また、窒化チタンの被膜は黄褐色などの有色でなることから、表面の摩耗状況の識別も容易となる。
窒化チタンの被膜は、化学蒸着法(CVD法)や物理蒸着法(PVD法)により形成することができる。
また、本発明はスリーブの常温における熱伝導率を50W/(m・K)以上に高めることにより、熱衝撃による割れを十分に防止できる。スリーブ自体の熱伝導率を高めることにより、実際の熱間圧延ラインにおいて急昇温、急冷却による熱がロールの表面を経て内部まで速く到達して耐熱衝撃性が高まる。通常の窒化ケイ素焼結体は、常温における熱伝導率が高々30W/(m・K)程度であるが、本発明における窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、焼結体中に不純物として存在するアルミニウムおよび酸素の含有量を低減することにより、好ましくは焼結体中のアルミニウムの含有量が0.2重量%以下、酸素の含有量が5.0重量%以下とすることにより、常温における熱伝導率が50W/(m・K)以上を達成することができる。さらには常温における熱伝導率が60W/(m・K)以上が好ましい。
さらには、窒化ケイ素を主成分とする焼結体の相対密度が98%以上、常温における4点曲げ強度が700MPa以上であると割れをいっそう防止できる。
図1は本発明の実施例であるセラミックス製ロールの概略図である。図1において、3個のセラミックス製スリーブ(スリーブ1a、1b、1c)を鋼製の軸材5に嵌着して配置した。セラミックス製スリーブはそれぞれ外径355mm×内径305mm×長さ100mmの窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなる。
次に本発明のセラミックス製スリーブの製造方法について説明する。平均粒径0.5μmの窒化ケイ素粉末に、焼結助剤として、平均粒径0.2μmの酸化マグネシウム粉末を3.0重量%、平均粒径2.0μmの酸化イットリウム粉末を3.0重量%添加し、適量の分散剤を加えエタノール中で粉砕、混合した。ついで、噴霧乾燥後、篩を通して造粒した後、ゴム型に充填し、静水圧により冷間静水圧プレス(CIP)を行い、所定形状の中空スリーブロールとなる成形体を作製した。この成形体を1950℃、60気圧の窒素ガス雰囲気中で5時間焼成し、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるスリーブを得た。
次いで、得られた焼結体を、ダイヤモンド砥石を用いて所定のスリーブ形状に加工した。その後、スリーブをCVD装置内に設置しCVD法により、スリーブの鋼板と接触する表面に、厚さ3μmの窒化チタンの被膜を形成した。以上により本発明のセラミックス製スリーブを完成させた。
また別に、得られた窒化ケイ素を主成分とする焼結体から、直径10mm×厚さ3mmの熱伝導率および密度測定用の試験片、縦3mm×横4mm×長さ40mmの4点曲げ試験片を採取した。密度はJIS R2205に基づいてアルキメデス法から求めた。相対密度はJIS R2205に準拠したアルキメデス法により実測密度を求めこれを計算により算出した理論密度で除した値とした。熱伝導率はレーザーフラッシュ法JIS R1611に準拠して常温での比熱および熱拡散率を測定し熱伝導率を算出した。4点曲げ強度は常温にてJIS R1601に準拠して測定を行った。
その結果、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるセラミックス製スリーブは、相対密度が99.1%、常温における熱伝導率が56W/(m・K)、常温における4点曲げ強度が930MPaであった。
また図1において、金属製スリーブ2a、2b、2cおよび2dとして、SUS304を用いて外径326mm、厚み13mmの中空円筒体を製作した。金属製スリーブの外径はセラミックス製スリーブのそれより小さくする。弾性部材3aおよび3bとして、SUS304を用いてリング状の皿バネを作製し、この皿バネを5枚直列に組み合わせて形成した。金属製締付部材4aおよび4bとして、SUS304を用いて内周面にねじ溝を形成した中空円筒体を製作した。
これらの部材を用いて、軸材5に3個のセラミック製スリーブ1a、1bおよび1cと、金属製スリーブ2a、2b、2cおよび2dを嵌めて、その後、弾性部材3aおよび3bを嵌めて、軸材5の胴部端部の外周面に設けたねじ部に、金属製締付部材4aおよび4bをロール軸方向にねじ回転移動させ、弾性部材3aおよび3bを伸縮させて、金属製スリーブ2aおよび2bに側圧を付与し、セラミックス製スリーブを所定の位置に位置決め固定した。位置決め後、金属製締付部材4aおよび4bのねじが緩まないように金属製締付部材4aおよび4bを軸材5に固定した。
そして、この本発明のセラミックス製ロールを実機ラインに長期間適用した結果、窒化ケイ素製スリーブの鋼板と接触する表面に、窒化チタンの被膜を形成したので、絶縁性を十分に維持するとともに、耐摩耗性の劣化を防ぐことができた。また、窒化ケイ素製スリーブは、熱伝導率が50W/(m・K)以上であるためロール表面に亀裂は見られず耐熱衝撃性に優れることを確認できた。
本発明のセラミックス製ロールによれば、絶縁性を十分に維持するとともに、耐摩耗性の劣化を防ぐことができる、また耐熱衝撃性、強度に優れロールの耐用寿命を伸ばすことができる。
本発明実施例のセラミックス製ロールの概略図である。
符号の説明
1 セラミックス製スリーブ、 1a(1b、1c) セラミックス製スリーブ、
2a(2b、2c、2d) 金属製スリーブ、
3a(3b) 弾性部材、
4a(4b) 金属製締付部材、 5 軸材

Claims (3)

  1. 熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いられ、金属製軸材の外周に絶縁性を有するセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールであって、セラミックス製スリーブが窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなり、該スリーブの鋼板と接触する表面に、窒化チタンの被膜を形成したことを特徴とするセラミックス製ロール。
  2. 前記窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、常温における熱伝導率が50W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス製ロール。
  3. 前記窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、相対密度が98%以上であり、常温における4点曲げ強度が700MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス製ロール。
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