JP4269478B2 - 滑り止め手袋の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ゴム、合成ゴム、軟質合成樹脂等からなる手袋を製造する方法に関し、とくに表面に多数の凹凸を形成することにより滑り止め効果を高めた手袋を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、手で種々の物品を取り扱うことを容易にすると共に、手を保護する目的で、ゴム手袋が広く使用されている。また天然ゴムに代えて、NBRのようなゴム状の合成樹脂を用いたものも一般化している。
【0003】
このような合成樹脂製手袋は、液体を透過せず、かつ柔軟性および強度も大きいことから、種々の分野で広く利用されているが、表面が平滑であるために、特に水その他の液体で濡れた状態では非常に滑りやすいという欠点がある。
【0004】
この欠点をなくすために、手袋の表面に凹凸を形成する方法がすでに提案されている。例えば特許第2639415号公報には、未固化状態にある液状樹脂組成物の表面に、その固化した樹脂組成物の溶解しない溶液に溶ける粉粒物を付着させてから、その液状樹脂組成物を固化することにより、樹脂表面に凹凸を形成する方法が開示されている。また特開平11−192663号公報に記載された方法では、手袋の表面に凹凸を形成するために、基材に積層されて未固化状態にある流動性樹脂組成物の表面に、その流動性樹脂組成物に非溶解または難溶解性で昇華性を有する物質からなる粒体を付着させ、ついで、その皮膜を固化させ、その後、昇華性物質を昇華させて粒体を皮膜から除去するという手段が採られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の技術には、つぎのような欠点がある。すなわち、特許第2639415号の方法では、樹脂組成物の溶解しない溶液に溶ける粉粒物として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化カリウム等の塩類や、蓚酸、硼酸等の酸類、あるいはシクロヘキシルアミン塩等の有機塩類を使用するとされており、このような物質は、手袋基材となる樹脂によっては適用できないものがあり、粉粒物を選択するに当たっても多大な労力を要している。また特開平11−192663号公報に記載された方法では、凹凸を形成するのに、ナフタリン等の昇華性物質や、ドライアイス等の温度差により固体から気体へ変化する物質、あるいは炭酸アンモニアのように加熱によって分解する物質が使用されている。このような昇華性物質は、常態で、あるいはわずかな温度変化で昇華するので、その取り扱いが容易でなく、工業的な規模での実用化は困難である。
【0006】
さらに上記の方法ではいずれも、手袋基材の肉厚内に直接に粒状物を部分的に陥没させているので、手袋基材の肉厚は、凹部の形成された部分で著しく薄くなり、引張り強度等の物理的な強度も、腐食等の化学的な強度も著しく低下するのを避けられない、という欠点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、上記のような従来の技術における欠点をなくし、表面に多数の凹部を有する滑り止め手袋を容易に製造することが可能な方法を提供することである。
【0008】
すなわち本発明は、第1のゾル状樹脂により手袋形状に成形された第1のゾル状樹脂層からなる基体部を固化する第1の固化工程と、前記基体部表面の所定部位に第2のゾル状樹脂を付着させて第2のゾル状樹脂層を形成した後、熱溶融性の粉粒体を第2のゾル状樹脂層の表面に付着させる付着工程と、第2のゾル状樹脂層を固化させる第2の固化工程と、前記粉粒体の融点以上に加熱して前記粉粒体を溶融させて除去する除去工程とを備えていることを特徴とする滑り止め手袋の製造方法である。
【0009】
前記第1の固化工程では、成形された基体部を熱処理した後、常温まで冷却することによって行うことができる。
【0010】
また前記第2の固化工程では、前記第2のゾル状樹脂層の表面を硬化させて前記粉粒体を固定し、その後に前記第2のゾル状樹脂層の全体を固化させることにより行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にしたがって滑り止め手袋を製造する方法の工程を示している。本実施の形態では、軍手のような編手袋又はメリヤス編布から裁断縫製された縫手袋などのように、手袋の形状に成形された繊維糸ニットの基布を製品手袋の形状を有する金型、陶型に嵌め込み、これを指先を下に向けた状態でNBRゾル浴に浸漬し、ついで引き上げることにより、基布の表面に第1のゾル状樹脂をコーティングして第1のゾル状樹脂層を設ける(工程S1)。なお、この工程では、スプレー、流下などの方法により第1のゾル状樹脂をコーティングすることも可能である。これにより、基布とその上に設けられた第1のゾル状樹脂層からなる基体部が形成される。
【0012】
NBRゾル浴から引き上げた後、下向きであった基体部を指先が上に向くように上下を反転させたのち、加熱槽を通過させて、第1のゾル状樹脂層を乾燥させる熱処理を行い(工程S2)、ついで大気中に取り出して常温まで放冷する。ここまでの工程は、通常の手袋の製造工程と同様であり、この段階で樹脂手袋の形態となる。
【0013】
本発明では、つぎに全体を再び上下反転させて指先を下向きとし、第2のゾル状樹脂であるNBRが貯留されているNBRゾル浴に浸漬し、ついで引き上げることにより、第1のゾル状樹脂層の表面上に第2のゾル状樹脂層を形成する第2回目のコーティングを行う(工程S3)。この第2回目のコーティングは、手袋の滑り止めが必要な部分のみ、例えば指先から手首まで、又は、手の平などの部分のみでよい。また、コーティングの方法としては、第2のゾル状樹脂をスプレー、又は、流下することにより行ってもよい。
【0014】
工程S2の終了後、工程S3の前に、第1のゾル状樹脂層を常温まで放冷することが望ましい。これにより、第1のゾル状樹脂層が十分に固化し、第2のゾル状樹脂層を全面にわたって均一に形成することができる。
【0015】
つぎの工程S4は、第2回目のコーティングにより形成された第2のゾル状樹脂層が固化しないうちに、その表面に熱溶融性の粉粒体を第2のゾル状樹脂の粘着性を利用して付着させる付着工程である。この状態の断面図を図2に示す。図2において、符号1は基布を示し、この基布1上に第1のゾル状樹脂層2と、その上に位置する第2のゾル状樹脂層3が形成され、この第2のゾル状樹脂層3に、多数の熱溶融性の粉粒体4が、第2のゾル状樹脂層3に部分的に埋設された状態で付着している。
【0016】
熱溶融性の粉粒体としては、ゾル状樹脂の融点よりも低い温度で溶融する、常温で固体の粉粒体であればよいが、好ましい粉粒体は、天然ワックスおよび合成ワックスである。天然ワックスには、動・植物ワックス、鉱物ワックスおよび石油ワックスがあり、また合成ワックスにはフィッシャー・トロプスワックス、ポリエチレンワックスおよびその他の合成ワックスがあり、本発明ではいずれのワックスも使用可能であるが、最も好ましいワックスは石油ワックス、とくにパラフィンワックスである。
【0017】
パラフィンワックスは、減圧蒸留留出油から分離された、炭素数20〜40程度、分子量300〜550程度の炭化水素からなり、90%程度がノルマルパラフィンである。このため、40〜70℃程度の温度で容易に溶融し、しかも溶融した状態では粘度は極めて低いという特性を有する。また無味・無臭であるという利点もある。
【0018】
工程S4において第2のゾル状樹脂層に熱溶融性の粉粒体を付着させたのち、少なくとも第2のゾル状樹脂層が完全に液体と接触するように、凝固液に浸漬される(工程S5)。この工程S5は、未だ凝固していない第2のゾル状樹脂層を、熱溶融性の粉粒体が付着したままの状態で速やかに凝固させるために行われる。凝固液としては、第2のゾル状樹脂層を構成する樹脂をゲル化もしくは加硫にて固化させる性質を有し、かつ熱溶融性の粉粒体を溶解しない液体であればよく、第2のゾル状樹脂がNBRラテックス、熱溶融性の粉粒体がパラフィンワックスである場合、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ケイフッ化ナトリウム、硫酸アルミニウム、第二鉄塩硫酸亜鉛、塩化カリウム、蓚酸、硼酸、酢酸、シクロヘキシルアミン塩等の水溶液又はアルコール含有水溶液を使用することができる。特に、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸の水溶液又はアルコール含有水溶液がより望ましい。また、前記アルコール含有水溶液において、水と混合されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等を用いることができ、メタノール、エタノールの使用がより好適である。
【0019】
さらに凝固工程後、さらに好ましくは、第2のゾル状樹脂層がその内部まで十分に固化するのに必要な時間にわたって放置することにより、第2のゾル状樹脂層の確実な固化を行わせる。このように上記付着工程、凝固工程を経て、熱溶融性の粉粒体は第2のゾル状樹脂層の表層部のみに固定され、その内部にまで達して埋没されるという事態を防止することができる。
【0020】
工程S5で第2のゾル状樹脂層に凝固液を接触させた後、熱溶融性の粉粒体を除去する工程S6が行われる。この工程S6では、熱溶融性の粉粒体は溶融するが、ゾル状樹脂は溶融しない温度に加熱する操作が行われる。加熱手段としては、温風又は温水を熱溶融性の粉粒体に吹き付け、あるいは温水浴に浸漬する手段が適用できる。
【0021】
この工程S6において、第2のゾル状樹脂層に付着していた熱溶融性の粉粒体が溶融除去され、図3に示すように、第2のゾル状樹脂層3に部分的に埋設されていた熱溶融性の粉粒体が除去された後に、多数の凹部5が形成される。なお、ここで、加熱操作により溶融除去された前記熱溶融性の粉粒体は、常温に放置することで再固化するため、特別な装置を用いる必要もなく、容易に回収可能である。特に、温水浴に浸漬する手段を用いる場合には、溶融された熱溶融性の粉粒体は、水と分離した状態で浮力により自然と水面に集まるため、より短時間のうちに除去されると共に、凝固液などから残留する水溶性物質の混入が抑えられた状態で回収できる。
【0022】
また図4は、このようにして製造された滑り止め手袋の外観を示している。手袋全体のうち、手首よりも上方の部分には第1のゾル状樹脂層2が露出しているが、その他の部分は、多数の微細な凹部を有する第2のゾル状樹脂層3に覆われている。
【0023】
なお、上記実施の形態では、型に繊維ニットからなる基布を被せ、その上にゾル状樹脂層を設けて基体部を形成したが、基布を使用せず、型をそのままNBRゾル浴に浸漬することにより第1のゾル状樹脂層のみからなる基体部を形成し、これを上記と同様の熱処理後に第2回目のコーティングを行ってもよい。又、第1のゾル状樹脂及び第2のゾル状樹脂として、それぞれ異なった材料を用いても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、基体部の第1のゾル状樹脂層の上に第2のゾル状樹脂層を設け、この第2のゾル状樹脂層に熱溶融性の粉粒体を付着させたのちこれを溶融除去することにより凹部を形成するので、得られた手袋製品は、その最も薄い部分でも、少なくとも第1のゾル状樹脂層の厚さを有することになり、所定の強度を確実に維持することが可能である。また熱溶融性の粉粒体を付着させる際にも、内層の第1のゾル状樹脂層はすでに十分に固化しており、熱溶融性の粉粒体の付着工程において粉粒体が内部まで進入し過ぎることを顧慮する必要はないので、工程の管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にしたがって滑り止め手袋を製造する工程を示す工程図である。
【図2】図1に示した実施の形態において第2のゾル状樹脂層に熱溶融性の粉粒体が付着された状態を示す概略的断面図である。
【図3】図1に示した実施の形態において第2のゾル状樹脂層に付着した熱溶融性の粉粒体を溶融除去した後の状態を示す概略的断面図である。
【図4】本発明にしたがって製造された滑り止め手袋の外観を示す正面図である。
【符号の説明】
1 基布
2 第1のゾル状樹脂層
3 第2のゾル状樹脂層
4 熱溶融性の粉粒体
5 凹部
Claims (3)
- 第1のゾル状樹脂により手袋形状に成形された第1のゾル状樹脂層からなる基体部を固化する第1の固化工程と、
前記基体部表面の所定部位に第2のゾル状樹脂を付着させて第2のゾル状樹脂層を形成した後、熱溶融性の粉粒体を第2のゾル状樹脂層の表面に付着させる付着工程と、
第2のゾル状樹脂層を固化させる第2の固化工程と、
前記粉粒体の融点以上に加熱して前記粉粒体を溶融させて除去する除去工程とを備えていることを特徴とする滑り止め手袋の製造方法。 - 前記第1の固化工程では、成形された基体部を熱処理した後、常温まで冷却することを特徴とする請求項1に記載の滑り止め手袋の製造方法。
- 前記第2の固化工程では、前記第2のゾル状樹脂層の表面を硬化させて前記粉粒体を固定し、その後に前記第2のゾル状樹脂層の全体を固化させることを特徴とする請求項1に記載の滑り止め手袋の製造方法。
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