JP2021155877A - 物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋、並びにコーティング被膜層の形成方法及び手袋の製造方法 - Google Patents

物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋、並びにコーティング被膜層の形成方法及び手袋の製造方法 Download PDF

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Kaori Shibata
香織 柴田
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梨沙 中川
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Abstract

【課題】粉体付着法による滑り止めに比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋、並びに形成方法などを提供する。【解決手段】表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部を有するコーティング被膜層を備えた物品であって、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとした。物品の表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部が形成されたコーティング被膜層の形成方法であって、前記物品の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することとした。【選択図】図1

Description

本発明は、物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋、並びにコーティング被膜層の形成方法及び手袋の製造方法に関する。
従来、作業時に手指を保護すべく、手袋が用いられている。
中でも、天然ゴムや合成ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの如き弾性材料よりなるコーティング被膜層で被覆した手袋は、柔軟性を保ちつつも、耐水性や耐油性、耐薬品性などの機能に優れるため、広く用いられている。
しかし、コーティング被膜層の表面を平滑に形成すると、例えば水濡れしているときは把持対象物との間に働く摩擦が小さく、物が掴みにくい場合がある。
そこで、手袋のベースとなる手袋基体の表面に付着させた凝固前の弾性材料上に所定の粉末を更に付着させ、弾性材料を固化させた後にこの粉末を溶解させるなどして除去することで、手袋の最外を覆うコーティング被膜層の表面に微細な凹部を形成する方法(以下、粉体付着法ともいう。)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このような構成とすれば、把持対象物との間に働く摩擦力を大きくすることができ、手袋を装着した状態での作業性を向上させることができる。
特開2008−274521号公報
ところが、上記従来の粉体付着法にて形成した手袋は、コーティング被膜層の表面に形成した微細な凹部に小さなゴミがたまりやすいという問題があった。
また、粉体付着法にて形成した手袋は作業性に優れた手袋であるものの、より摩擦力の大きな手袋が求められていた。
この点、本発明者らは上記問題点に鑑み、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる技術を開発すべく、鋭意検討した。その結果、本発明者らは凹部を形成するために粉体を必須の構成とする従来の技術思想から脱却し、液体の性質を応用することにより、かかる問題点が解決されると共に、単に手袋表面のみならず、広く物品の滑り止めとして利用可能であることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る物品表面の滑り止め構造では、(1)物品の表面を被覆するコーティング被膜層に、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、をそれぞれ複数備えてなることとした。
また、本発明に係る滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品では、(2)表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部を有するコーティング被膜層を備えた物品であって、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとした。
また、本発明に係る滑り止め体は、(3)(2)に記載の物品であって、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体とした。
また、本発明に係る手袋では、(4)本発明に係る手袋では、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなる手袋において、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとした。
また、本発明に係るコーティング被膜層の形成方法では、(5)物品の表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部が形成されたコーティング被膜層の形成方法であって、前記物品の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することとした。
また、本発明に係るコーティング被膜層の形成方法では、(6)前記物品は、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体であることにも特徴を有する。
また、本発明に係る手袋の製造方法では、(7)表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部が形成された手袋の製造方法において、手指外形状に形成された半製品体の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することとした。
更に、本発明に係る手袋の製造方法では、(8)前記弾性材料に張力を与えることで、形成した前記凹部に異方性を付与することにも特徴を有する。
本発明に係る物品表面の滑り止め構造によれば、物品の表面を被覆するコーティング被膜層に、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、をそれぞれ複数備えてなることとしたため、粉体付着法により形成した滑り止め構造に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することができる。
また、本発明に係る滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品によれば、表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部を有するコーティング被膜層を備えた物品であって、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとしたため、粉体付着法により得られる滑り止めを備えた物品に比して滑り止めの凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる物品を提供することができる。
また、上記物品であって、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体とすれば、滑り止め効果を付与したい対象物、例えばイスやテーブル、床面、階段の踏面、手すりなど、様々なものに対して手軽に優れた滑り止め効果を付与することができる。
また、本発明に係る手袋によれば、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなる手袋において、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとしたため、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる手袋を提供することができる。
また、本発明に係るコーティング被膜層の形成方法によれば、物品の表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部が形成されたコーティング被膜層の形成方法であって、前記物品の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することとしたため、さまざまな物品に対し、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起可能な滑り止め効果を付与することができる。
また、前記物品は、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体とすれば、滑り止め効果を付与したい様々な対象物に対して手軽に優れた滑り止め効果を付与することができる。
また、本発明に係る手袋の製造方法によれば、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部が形成された手袋の製造方法において、手指外形状に形成された半製品体の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することとしたため、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる手袋を製造することができる。
また、前記弾性材料に張力を与えることで形成した前記凹部に異方性を付与することとすれば、凹部に入り込んだゴミの脱去しやすさや、発生する摩擦力に異方性を付与することができる。
本実施形態に係る手袋の表面構造を示す説明図である。 粉体付着法にて形成した手袋の表面構造を示す説明図である。 本実施形態に係る手袋の断面構造を示した説明図である。
本発明は、物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋に関し、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなり、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起可能とするものである。
また付言すれば、本願は、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品に関し、更にはその物品の表面に形成された滑り止めの構造や、同物品の具体的な一態様が所謂滑り止め体そのものであったり、同じく物品の具体的な一態様が手袋であることについて提案するものである。
ここで物品は、本実施形態に係る滑り止め構造を形成可能な物品であれば特に限定されるものではない。本願では物品の一態様として手袋を中心に説明するが、上述の条件に当てはまる物品であれば良く、例えば、靴下やスリッパ、靴、マットの他、先述の如くイスやテーブル、床面、階段の踏面、手すりなど、様々なものが含まれる。
また滑り止め体は、滑り止め効果を付与したい物品に対して配設可能な構成であれば良く、粘着テープや粘着パッドの如き態様であったり、ボルト等で固定可能なプレート状であっても良いし、また粘着や固定の手段を備えず、配置するのみの態様のものも含まれる。
本実施形態に係る滑り止め構造は、これら本実施形態に係る物品や滑り止め体、手袋等に共通する滑り止めのための構造であり、本願の大きな特徴の一つである。この滑り止め構造の具体的な特徴については、滑り止め構造の形成対象又は滑り止め体の配設対象としての物品を手袋とした場合について以下に説明するので、これとあわせて順次説明する。
本実施形態に係る手袋は、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなるものであり、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる手袋である。
また、本実施形態に係る手袋は、手袋基体を使用しない樹脂皮膜の表面にコーティング被膜層を形成したアンサポートタイプの手袋であっても良いし、手袋基体を採用し、同手袋基体の表面に直接又は所定の樹脂被膜層を介してコーティング被膜層が形成されたサポートタイプの手袋とすることもできる。
すなわち、表面を被覆するコーティング被膜層の形成対象である半製品体が、手袋基体を使用しないもの又は使用するものの何れのタイプであっても良く、半製品体表面のコーティング被膜層に複数の凹部を備える滑り止め構造が形成された本実施形態に係る手袋を構成することができる。この手袋表面の凹部は、樹脂皮膜の表面全体に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。なお、ここで半製品とは、本実施形態に係る手袋を形成する過程での半製品を意味するものであり、本実施形態に係る手袋をベースとする二次加工品の製造過程で本実施形態に係る手袋を半製品として使用することを意味するものではなく、またこれを妨げるものでもない。
手袋基体としては、例えば編布や織布で形成してある手袋を挙げることができる。その素材は、特に限定されるものではなく、以下のような公知の種々の素材を用いることができる。例えば綿、木綿、麻、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ、アセテート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系、ポリクラール、アラミド繊維、セルロース、グラスファイバー等の合成繊維が挙げられる。
本実施形態に係る手袋の表面を被覆するコーティング被膜層の形成材料、すなわち、本実施形態に係る手袋の製造工程において、同手袋の半製品でもある手袋基体の表面に付着される弾性材料は、同弾性材料を未凝固の状態から凝固状態に変化させることのできる凝固剤が存在し、また、この凝固剤は液剤として調製可能であり、更に、未凝固の弾性材料が凝固液の液滴と接触(衝突)した際にその接触箇所に衝突痕が残る程度に速やかに凝固するものであればよく、凝固法による被膜形成に一般的な弾性材料、例えば、天然ゴムや合成ゴム(例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR))、ポリウレタンなどを挙げることができる。
凝固法は樹脂組成物を塩凝固や酸による凝固、有機溶剤による凝固によってゲル化させる方法である。
凝固対象である樹脂組成物が天然ゴムや合成ゴムの場合、これを塩凝固により凝固させる凝固剤としては、例えば硝酸カルシウム、塩化カルシウム等の金属塩を溶解したメタノール溶液、もしくは水溶液を使用できる。また、酸により凝固させる際の凝固剤としての酸は、酢酸やクエン酸などの有機酸を用いることができる。なお、凝固は金属塩による凝固又は酸による凝固のいずれかを単独で行っても良いが、両者を併用することも可能である。
また、凝固対象である樹脂組成物がポリウレタンの場合、これを有機溶剤による凝固により凝固させる凝固剤としては、例えば、ヘプタンなどの有機溶剤を使用できる。
コーティング被膜層の厚みは、0.05〜2mmが好ましい。樹脂皮膜が厚くなるほどその部分が硬くなる傾向がある。
コーティング被膜層の厚みを薄くするほど柔軟性を有するので、フィット性、手へのしっくり感が良好になる。しかし、手袋の強度が低下してしまうため、重作業に使用する手袋の場合は、ある程度の厚みが必要である。ただし、粉体付着法にて形成した手袋に比してコーティング被膜層の表面部や凹部が滑らかであり、また開口径に対する凹部深さが浅いため、同様の厚みに形成した際のコーティング被膜層の強度は、粉体付着法による手袋と比較すると高くなる傾向があることは特筆すべき点である。
また、コーティング被膜層は素材によっても柔らかさや風合いにかなり違いがある。例えば同じ厚みであっても天然ゴム、軟質ポリ塩化ビニルなど低モジュラス素材では柔らかく、ニトリルゴムなど高モジュラス素材では硬くなる傾向がある。
そして、本実施形態に係る手袋に特徴的な点としては、コーティング被膜層に形成された本実施形態に係る滑り止め構造の複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることが挙げられる。
ここで半球状とは、必ずしも正確な半球形状に限定するものではなく、半球よりはやや浅い凹部であったり、平面視において楕円形状の如き凹部も含む。また平面視における形状を表す略円形状の用語も、必ずしも正確な円に限定するものではなく、その凹部の開口縁の環状形状の多くの部分が開口縁外方へ凸でおよそ連続的な曲線を呈した形状であれば良く、例えば図1(a)にて黒枠で示す凹部が半球状凹部である。なお、黒枠で示した凹部は、発明の理解に供すべく、図1(a)の中に含まれた半球状凹部のうち一部を例示したものであって、黒枠で示した凹部のみが全ての半球状凹部ではなく、黒枠で示していない半球状凹部も、半球状凹部でない凹部と共に幾つか存在していることに留意されたい。
有膜凹部は、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた構造を有する凹部である。このような有膜凹部は、既に形成された半球状凹部のごく近傍に凝固液の液滴が衝突し、先の半球状凹部の一部を侵食するように新たな半球状凹部が形成されることで、例えば図1(b)にて破線枠で示す如く、先の半球状凹部に由来する侵食凹部と半球状凹部とにより構成される。
また、侵食凹部と半球状凹部との境界部分には、前述の新たな半球状凹部の形成の際の凝固液の衝突によって肉寄せされた弾性材料が、先の半球状凹部の内方へ向けて凸状に湾曲した隔膜壁を形成する。この隔膜壁は、独立して形成された半球状凹部の周囲の壁と比較して薄い場合が多く、把持対象物に絡みつくことで、摩擦力高める役割を有するものと考えられる。
また、半球状凹部や有膜凹部に共通する特徴としては、これら凹部の多くが、いずれもオーバーハング形状を殆ど備えていないことが挙げられる。
すなわち、図2(a)の断面図にて黒三角の矢印で示すように、粉体付着法にて形成した凹部は、コーティング被膜層中に埋もれた粒に由来し、凹部の開口径よりも大径の内部空間によってオーバーハング部が形成されている。
このようなオーバーハング部を多く備える凹部は、凹部内に入り込んだゴミやコーティング被膜層の摩耗カスが離脱しにくく、これらが凹部内に詰まる原因となってしまう。
また、二つの凹部の間に形成されたオーバーハング状の壁、例えば図2(a)にて白三角の矢印及び白破線で示す壁は、コーティング被膜層の表層から深部にかけてその壁厚が薄くなる部分を有するため華奢であり、摩擦時に欠落するなどしてゴミの発生が助長される。
このことは、図2(b)に示すように、平面視における開口縁の形状が、ガタガタとした不定形を呈することも相俟って、摩擦力に由来する応力の集中を招来し、コーティング被膜層の脱落塊を生じさせる。
また更には、先述の如く表層から深部にかけてその壁厚が徐々に薄くなる構造は、壁に余分な柔軟性をもたらすことで、コーティング被膜層での把持対象物に吸盤の如く吸着する効果(所謂吸盤効果)を乏しくする原因となっており、図2(a)で示すベースラインの定まらない荒い表面形状により空気漏れが発生しやすく、凹部内の十分な陰圧を保つことが困難であった。
これに対し、本実施形態に係る手袋の凹部は、図3の断面図に示すように、殆どの場合オーバーハング部を備えていない。従って、ゴミやコーティング被膜層の摩耗カスが凹部内に入り込んだとしても容易に離脱させることができ、これらが凹部内に詰まることが防止される。なお、本実施形態に係る手袋の滑り止めの構造を構成する凹部群は、オーバーハング構造を有する凹部が必ずしも厳密に除外される必要はない。すなわち、従来の製品に対する上述の効果の優位性を損なわない程度であれば、多少のオーバーハング構造を有する凹部の存在は許容される。
また、二つの半球状凹部の間に形成された壁は、図3にて白三角の矢印及び白破線で示す如く、なだらかな山形状であって肉厚且つ応力が集中しにくい形状であり、コーティング被膜層の脱落塊などゴミの発生が助長されにくい。
また更に、なだらかな山形状の壁は適度な柔軟性を有し、凹部形成前の表面に相当するベース面(ベースライン)が比較的はっきりとした、凹部以外の場所が比較的平滑な構造であることから空気漏れが少なく、凹部内の陰圧を十分に保つことができ、吸盤効果を効果的に生起させることができる。
また、本発明に係る手袋の独特な構造について、他の表現をするならば、例えば、一の半球乃至半楕円体状の平滑凹部の側壁を構成する曲面と、隣接する他の平滑凹部の側壁を構成する曲面との間に形成された肉厚状の平滑壁構造を主体としつつ、一の楕円に他の楕円が重畳して形成されること(一の楕円が他の楕円により浸食形成された)で前記一の楕円の内方に前記肉厚の平滑壁よりも薄い薄壁が形成された部分も存在している手袋の滑り止めにおける表面構造とも言える。
また更に、異なる表現をするならば、例えば、一の楕円の内壁を構成する曲面と、隣接する他の楕円の内壁を構成する曲面との間に形成された肉厚の平滑壁構造を主体としつつ、一の楕円に他の楕円が重畳して形成されること(一の楕円が他の楕円により浸食形成された)で前記一の楕円の内方に前記肉厚の平滑壁よりも薄い薄壁が形成された部分も存在している手袋の滑り止めにおける表面構造とも言える。
また、本明細書では、このような特徴を有する手袋の製造方法についても提供する。具体的には、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部が形成された手袋の製造方法において、手指外形状に形成された半製品体の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することを特徴としている。
ここで半製品体は、前述の如く、手袋基体を使用せず手指外形状に形成した樹脂皮膜であっても良く、また、編布や織布で形成した手袋基体や、その表面に樹脂被膜を形成したものを半製品体として使用することが可能である。
また半製品体は、必ずしも手指外形状を正確に象る必要はなく、またその全体とする必要はない。例えば、ミトンの如き形状でも良いし、一部の指が露出するように形成したものであっても良い。
このような半製品体の表面に、まずは未凝固の弾性材料を付着させる。弾性材料の付着は、半製品体に対して弾性材料を塗着させても良く、また、弾性材料中に半製品体を浸けることで行っても良い。
このように半製品体に付着した弾性材料に対し、弾性材料の凝固剤の液滴を衝突させる。この液滴の衝突は、例えばスプレーなどによることが可能であるが、その液滴が衝突した際に弾性材料表面に凹みを形成できる程度に、液滴に運動エネルギーを付与できる方法であれば、特に限定されるものではない。この工程により、弾性材料の表面には、前述の半球状凹部や有膜凹部が形成される。
そして、このような凹部が形成された弾性材料を、必要に応じて深部まで凝固させ、手袋の製造が行われる。
なお、弾性材料には必要に応じて配合剤を添加することも可能である。配合剤としては、安定剤、架橋剤、架橋分散体、老化防止剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤等を使用することができ、手袋の使用用途に応じて適宜調整が可能である。
上記した配合剤のうち、架橋分散体は、硫黄や過酸化物などの架橋剤の他に、BZ、TT、CZ、PZなどの架橋促進剤、亜鉛華などの架橋促進助剤、あるいは老化防止剤などの固体物を、水に分散させることで得ることができる。架橋分散体は、樹脂組成物がゴムラテックスの場合に主に用いられ、これを使用することで、ゴム分子を網目状に結合させ、樹脂皮膜の強度などの物性を上げることができる。
また、本実施形態に係る手袋の製造方法では、弾性材料に張力を与えることで形成した前記凹部に異方性を付与することとしても良い。
すなわち、凹部が形成されたものの、完全に凝固する前の弾性材料に対し、面方向における所定方向への張力を付与することで、例えば円形状に形成された凹部群の各凹部を、それぞれ所定方向に長軸を配向させた楕円形状に変形させて、異方性を付与することも可能である。なお、以下の説明において、楕円形状に変形させた凹部群の長軸の方向を配向方向ともいう。
このような処理を施すことにより、凹部内のゴミの取れやすさや、摩擦力の起き方に異方性を生起させることが可能である。
凹部の開口径、例えば半球状凹部の開口径は特に限定されるものではないが、把持対象物を特に限定しない汎用性の高い手袋を想定すると、敢えて言及するならば0.5mm以下とすることができ、更には0.01〜0.5mm程度、より好ましくは0.05〜0.25mm程度とすることができる。
本実施形態に係る手袋は、例えばサポートタイプの場合、概ね以下のような工程を経ることで製造することができる。
(1) 手型にメリヤス編みの手袋基体を被せて型温調整を行い、凝固剤に浸漬する。
(2) 樹脂組成物に浸漬し、引き上げて乾燥させる。必要に応じて、数回浸漬して、浸透防止膜として作用する皮膜を形成する。この浸透防止膜を形成する樹脂組成物は、後述のコーティング被膜層を形成する樹脂組成物と同じものでも良く、違うものでも良い。
(3) その後、コーティング被膜層形成用の樹脂組成物に浸漬させ、樹脂組成物が固化する前に、凝固剤の液滴に凹部形成可能な運動エネルギーを付与しつつ、弾性材料表面に衝突させる。
(4) 乾燥及び架橋をへてコーティング被膜層の固化を行ない、手型から手袋を離型する。なお、使用する樹脂によっては、架橋工程を省略することもできる。
なお、アンサポートタイプの手袋は、手袋基体の有無を除けば、大体においてサポートタイプの手袋と同じ製造方法であるから、説明を省略する。また手袋の内側に植毛加工を施すこともできる。
また、更なる態様として、本実施形態に係る手袋のコーティング被膜層には、気泡を含ませても良い。ここで気泡は、液体または固体中にあって気体を含む部分を指称するほか、気泡の一部分または大部分が固体表面に表れて開口し、気体を含まない凹部となっている部分、例えば破泡痕をも指称する意味で使用している。
コーティング被覆層に気泡を含ませたり破泡痕を形成する方法としては、同コーティング被覆層の形成材料である弾性材料に気泡を含ませる方法が挙げられ、この弾性材料に気泡を含ませる方法としては、例えば、機械発泡による方法や化学発泡による方法を挙げることができる。
機械にて発泡させる方法は、例えばミキサー等の撹拌機で未凝固状態の弾性材料を撹拌して気泡を含ませる。
また、化学的に発泡させる方法としては、未凝固状態の弾性材料に発泡剤を添加し、この発泡剤を手袋の成形時に加える熱で発泡させることで気泡を含ませることができる。
発泡剤は、スポンジ製品の製造にも使用される薬品であり、熱を加えることで分解し、炭酸ガス、窒素ガス、アンモニア等のガスを発生させ気泡構造を形成する。発泡剤の具体例としては、重曹、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤、あるいはニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド等の有機発泡剤が挙げられる。
なお、一般的に化学的な発泡方法よりも、機械的な発泡方法を採用する方が弾性材料中に気泡を均一または略均一に分散させやすいようである。気泡を均一または略均一に分散させることができれば、弾性材料の凝固により得られるコーティング被覆層に含まれた気泡も均一または略均一に分散することになる。
コーティング被覆層に含まれる気泡の量は、コーティング被覆層の単位体積に対して5〜30vol%が好ましい。気泡量が5vol%未満では、十分な滑り止め効果が得られないので好ましくなく、30vol%を越えると滑り止め効果及び柔軟性は十分であるが、耐摩耗性が悪くなって耐久性が低下するので好ましくない。
水や油等の液体を取り扱う場合、気泡を含んだコーティング被覆層の多孔性により、液体が樹脂皮膜を浸透して手側に入り込む恐れがある。これを防止するために、コーティング被覆層の下側に、液体に対する浸透防止膜として作用する気泡を含まない樹脂皮膜を設けることも可能である。
気泡を含まない樹脂皮膜を設けることで、手袋の強度を向上させることもできる。気泡を含まない樹脂皮膜は、コーティング被覆層を構成する弾性材料と同じ素材を用いることができる。接着性の観点からはその方が好ましい。なお、水や油等の液体を取り扱わない手袋の場合は、浸透防止膜として作用する気泡を含まない樹脂皮膜を省略することもできる。
このように、本実施形態に係る手袋や手袋の製造方法は上述してきた構成を備えるものであるが、前述の如く、これら構成は必ずしも手袋に限定的な構成ではなく、種々の物品において適用可能である点に留意すべきである。
以下、本実施形態に係る物品表面の滑り止め構造、滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品、滑り止め体、及び手袋、並びにコーティング被膜層の形成方法及び手袋の製造方法に関し、本実施形態に係る手袋及びその製造方法をメインに実際の製造例を参照しながら説明する。なお、以下ではコーティング被覆層に気泡を含まないサポートタイプの手袋を例に説明するが、前述の如くコーティング被覆層に気泡を含む手袋であったり、アンサポートタイプの手袋も本発明に含まれるのは言うまでもない。
〔1.手袋の製造〕
サポートタイプの手袋の製造にあたり、まず、浸透防止膜とコーティング被膜層とを形成するための天然ゴム配合液の調製、及び凝固液の調製を行った。具体的には、天然ゴムラテックス(ゴム固形分60重量%)のゴム固形分100重量部に対して安定剤1重量部、硫黄1重量部、加硫促進剤EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)0.5重量部、亜鉛華1重量部、増粘剤0.5重量部を添加し、攪拌して天然ゴム配合液を得た。また、凝固液は、3重量%の硝酸カルシウムメタノール溶液を調製することで得た。
次に、上記のようにして得た天然ゴム配合液を使用し、手袋基体に対して以下のような処理を行った。
まず、手型にメリヤス編みの手袋基体を被せた。この手袋基体を被せた手型を、凝固剤(3重量%の硝酸カルシウムメタノール溶液)が入った浸漬槽内に浸漬し、その後に引き上げて乾燥させた。
次に天然ゴム配合液が入った浸漬槽内にこの手型を浸漬し、引き上げた後、70℃で30分乾燥させた。これにより手袋基体の表面に天然ゴム配合液によって構成される浸透防止膜を形成した半製品体が作成された。
次に、浸透防止膜を備える半製品体が装着された上記手型を、再び天然ゴム配合液が入った浸漬槽に浸漬した。そして、浸漬槽から引き上げた後、この手型表面の天然ゴム配合液が固まる前に、スプレーノズルを装着した噴霧器を用い、圧力0.1〜1.0MPaにて凡そ10〜30cm程度離れた位置から凝固剤を噴霧し、凝固剤の液滴を衝突させた。なお、スプレーノズルは特に限定されるものではなく市販のものを適宜採用することが可能であるが、例えば、株式会社いけうち製の空円錐ノズル(No.K040)や、扇形ノズル(No.VEP90157)を使用することができる。また液送圧力やスプレーノズルから噴霧対象面までの距離についても上記値は一例であり特に限定されるものではない。要するに、付着させた弾性材料表面に凝固液の液滴が到達した際にその衝撃で凹部が形成できれば良く、このような圧力や距離は実施する装置等の構成によってそれぞれ異なるのは勿論であるが、これらの値を模索することは困難ではなく、圧力や距離を違えた幾つかのサンプルを顕微鏡等で観察して凹部形成された条件を採用するなどして決定することも可能である。
なお、先述の気泡を含むコーティング被膜層を形成する場合には、半製品体に付着させる未凝固の弾性材料としての天然ゴム配合液に気泡を含ませることで実現することが可能である。例えば、天然ゴム配合液をミキサーで撹拌して機械発泡を行う。撹拌は、天然ゴム配合液全体に占める気泡の体積割合が5〜30vol%、一例として20vol%程度になるまで行うことが可能である。この場合、100mLの天然ゴム配合液の体積が、気泡を含むことで120mLに増えるまで撹拌を続けることとなる。メスシリンダーを用い、発泡前後における同一重量での体積変化を確認することで、どの程度気泡を含むかについて確認することができる。
そして、80℃で60分乾燥させた後、110℃で40分架橋を行い、本実施形態に係る手袋を得た。
〔2.手袋表面構造の顕微鏡観察〕
次に、得られた手袋の表面の顕微鏡観察を行った。その結果、図1(a)にて示したように、コーティング被膜層の表面には、無数(複数)の凹部が形成されており、この複数の凹部は、同じく図1(a)にて黒枠で示すような半球状凹部と、図1(b)にて破線枠で示す有膜凹部とを多く備えることが確認された。
また、図1(a)に示すように、コーティング被膜層が完全に凝固する前に手袋に対し張力を付与した部分の各凹部は楕円状に変形しており、その長軸は概ね一定方向に指向して異方性を呈していた。
〔3.ゴミの詰まりにくさの確認試験〕
次に、凹部へのゴミの詰まりにくさや取れやすさについての確認試験を行った。具体的には、粉体付着法にて製造した手袋の掌部より切り取った5cm×5cmの大きさの比較試験片と、本実施形態に係る手袋より同様に得た試験片を使用し、コーティング被膜層を上に向けて机上に貼着し、その上に土を10回擦りつけ、余剰に乗った土を除いて計量し、擦り付け前の試験片の重量との差を求めることで凹部に詰まったゴミの量を求めた。
またその後、手で試験片を100回叩いてゴミを払い落とし、再び計量して擦り付け後の試験片の重量との差を求めることで、凹部に詰まったゴミがどの程度除去されたかについて確認した。
試験片は、粉体付着法にて製造した5つの手袋からそれぞれ1つずつ計5枚、同じく、本実施形態に係る手袋からも計5枚得て、各手袋について同様の試験を各5回ずつ行った。粉体付着法にて製造した手袋の結果を表1に、本実施形態に係る手袋の結果を表2に示す。
Figure 2021155877
Figure 2021155877
表1からも分かるように、粉体付着法にて製造した手袋より得た比較試験片は、土の擦り込みにより25cm2あたり平均して0.046gのゴミが凹部に詰まることとなったが、これに対し本実施形態に係る手袋では、表2に示すように、25cm2あたり平均して0.009gと約1/5の量にまでゴミ詰まりを抑制できることが示された。
また、除去されたゴミの割合について参照すると、粉体付着法にて製造した手袋は、払い落としの作業を行っても凹部に詰まったゴミのうち平均して78.8%のゴミしか除去することはできなかったが、本実施形態に係る手袋では、93.6%ものゴミを除去することができた。
また驚くべきことに、5回の実験において異なる実験者により3回も実質的に全てのゴミが除去されたことを示す100%の値が確認された。勿論、実験後の試験片を見ると土色の着色が観察されるため、正確な意味での全てのゴミが除去された訳ではないが、肉眼で観察しても凹部内の汚れは殆ど確認されず、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、たまったゴミは粉体付着法により得られた手袋に比して容易に除去可能であることが示された。
〔4.ドライ状態における摩擦性能確認試験〕
次に、ドライ状態における摩擦性能を確認すべく、試験を行った。試験に供した手袋は、凹部を形成していない手袋(手袋P)、粉体付着法にて製造した手袋(手袋Q)、本実施形態に係る手袋であって凹部に異方性を付与していない(等方性の)手袋(手袋R)、本実施形態に係る手袋であって凹部に異方性を付与した手袋(手袋S)の四種類である。
試験は、コーティング被膜層が形成されている各手袋の掌部分を幅5.5cm×長さ7.5cmの大きさで切り取り、立て掛け角度を45度に固定した板の表面に切り取った試料を貼着して配置し、各試料の表面に高さ0.6cm、直径3.0cmの偏平状で重量が23gの金属製円柱体の底面を対向させて載置して、円柱体が試料表面を滑り落ちるまでの時間を計測することでドライ状態における摩擦性能の確認を行った。なお、手袋Sは、配向方向を傾斜方向とした場合(手袋S1)と、傾斜方向に直交する方向にした場合(手袋S2)との2パターンについて試験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2021155877
表3からも分かるように、凹部形成していない手袋Pの表面を円柱体が滑り落ちる時間は2.12秒であり、粉体付着法にて形成した手袋Qでの時間は32.43秒であった。
これに対し、本実施形態に係る手袋であって異方性を付与していない手袋Rでの時間は、手袋Pや手袋Qを大幅に上回る48.78秒であり、極めて優れた摩擦性能を有することが示された。
特に、接触面積が手袋Pよりも小さいにも拘わらず、このように大幅な摩擦性能の向上が観察されたのは特筆すべき点である。この現象は、本発明者らの鋭意研究による解析が待たれるところではあるが、先述した吸盤効果が生起されたことによるものと考えている。
また、本実施形態に係る手袋であって異方性が付与された手袋Sでの時間は、勾配方向に配向させた手袋S1では45.39秒、勾配方向と直交する方向に配向させた手袋S2では51.46秒であり、摩擦性能に異方性が現れることが確認された。
これらの結果から、本実施形態に係る手袋は、粉体付着法により得られた手袋に比して、ドライ条件下においてより大きな摩擦力を生起することのできる手袋であることが示された。
〔5.ウェット状態における摩擦性能確認試験〕
次に、ウェット状態における摩擦性能を確認すべく、試験を行った。試験に供した手袋は、前述の〔4.ドライ状態における摩擦性能確認試験〕と同様に、凹部を形成していない手袋(手袋P)、粉体付着法にて製造した手袋(手袋Q)、本実施形態に係る手袋であって凹部に異方性を付与していない(等方性の)手袋(手袋R)、本実施形態に係る手袋であって凹部に異方性を付与した手袋(手袋S)の四種類である。
試験は、コーティング被膜層が形成されている各手袋の掌部分を幅5.5cm×長さ7.5cmの大きさで切り取り、立て掛け角度を45度に固定した板の表面に切り取った試料を貼着して配置し、その表面を霧吹きで濡らすことでウェット状態とした。
次いで、各試料の表面に、家庭用冷蔵庫の製氷皿で生成した氷1個を、平らな面を対向させて載置して、氷が試料表面を滑り落ちるまでの時間を計測することでウェット状態における摩擦性能の確認を行った。なお、手袋Sは、配向方向を傾斜方向とした場合(手袋S1)と、傾斜方向に直交する方向にした場合(手袋S2)との2パターンについて試験を行った。その結果を表4に示す。
Figure 2021155877
表4からも分かるように、凹部形成していない手袋Pの表面を氷が滑り落ちる時間は0.165秒であり、粉体付着法にて形成した手袋Qでの時間は0.204秒であった。先のドライ状態における試験と比較すると、ウェット状態における摩擦性能としては、粉体付着法による凹部が形成された手袋Qの方が優れていることが示された。
これに対し、本実施形態に係る手袋であって異方性を付与していない手袋Rや、本実施形態に係る手袋であって凹部に異方性を付与した手袋S1,S2は、実に驚くべきことに、同じ立て掛け角度では滑り落ちなかった。このことから本実施形態に係る手袋は、粉体付着法により得られた手袋に比して、ウェット状態においても極めて優れた摩擦性能を有することが示された。
なお、立て掛け角度を更に大きくして滑り落ちる角度について検討を行ったところ、手袋Rは90度を越える角度でも滑り落ちず、逆さまとなる180度の角度でも落下しない現象が何度か観察された。このように、垂直抗力がなく摩擦力が生じない90度を超えた角度においても滑り落ちたり落下しない現象が観察されることから、コーティング被膜層と氷との間には先述した吸盤効果が働いているものと考えられた。
また、手袋S1や手袋S2についても、手袋Rと同様に、90度を越える角度でも滑り落ちず、コーティング被膜層と氷との間には先述した吸盤効果が働いているものと考えられた。また更に、氷の重さを重くし、手袋R、手袋S1、手袋S2についてどの程度の角度まで氷を保持できるのかについて確認したところ、手袋Rが53度まで氷を保持できたときに、手袋S1は48度、手袋S2は57度であり、摩擦性能に異方性が現れることが確認された。
これらの結果から、本実施形態に係る手袋は、粉体付着法により得られた手袋に比して、ウェット条件下においても、より大きな摩擦力を生起することのできる手袋であることが示された。
上述してきたように、本実施形態に係る滑り止め効果を付与するコーティング被膜層を備えた物品によれば、表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部を有するコーティング被膜層を備えた物品であって、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとしたため、粉体付着法により得られる滑り止めを備えた物品に比して滑り止めの凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる物品を提供することができる。
また、本実施形態に係る手袋では、表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなる手袋において、前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることとしたため、粉体付着法により得られた手袋に比して凹部にゴミがたまりにくく、また、より大きな摩擦力を生起することのできる手袋を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
P〜S 手袋

Claims (8)

  1. 物品の表面を被覆するコーティング被膜層に、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、をそれぞれ複数備えてなる物品表面の滑り止め構造。
  2. 表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部を有するコーティング被膜層を備えた物品であって、
    前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることを特徴とする物品。
  3. 請求項2に記載の物品であって、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体。
  4. 表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部を形成してなる手袋において、
    前記複数の凹部は、平面視略円形状の半球状凹部と、2以上の半球状凹部が一部重畳して連結しその結合境界が隔膜壁で仕切られた有膜凹部と、を備えることを特徴とする手袋。
  5. 物品の表面を被覆して前記物品に滑り止め効果を付与する、複数の凹部が形成されたコーティング被膜層の形成方法であって、
    前記物品の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することを特徴とするコーティング被膜層の形成方法。
  6. 前記物品は、更なる他物品に配設することで当該他物品に滑り止め効果を付与する滑り止め体であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング被膜の形成方法。
  7. 表面を被覆するコーティング被膜層に複数の凹部が形成された手袋の製造方法において、
    手指外形状に形成された半製品体の表面に付着した未凝固の弾性材料に凝固剤の液滴を衝突させ、衝突箇所を窪ませつつ凝固させて前記凹部を形成することを特徴とする手袋の製造方法。
  8. 前記弾性材料に張力を与えることで、形成した前記凹部に異方性を付与することを特徴とする請求項7に記載の手袋の製造方法。
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