JP2019203224A - 手袋の製造方法及び手袋 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことのできる手袋の製造方法及び手袋の提供を目的とする。【解決手段】本発明の手袋の製造方法は、繊維製の手袋本体の外面の少なくとも指部の掌側の一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する被覆層積層工程と、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける粗面化工程とを備える。上記粗面化工程の研削処理が、ショットブラスト処理を行うブラスト加工であるとよい。上記粗面化工程の研削処理が、研磨機を用いた表面研磨加工であるとよい。本発明の手袋は、着用者の手を覆う繊維製の手袋本体と、上記手袋本体の外面の少なくとも指部の掌側の一部を被覆し、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層とを備える手袋であって、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、手袋の製造方法及び手袋に関する。
滑止加工が施された手袋として、繊維製手袋の少なくとも掌側に被覆層が積層された滑止手袋が公知である(例えば、特開2012−77416号公報、特開2013−177711号公報参照)。この滑止手袋では、溶剤への浸漬や、滑止粒子の含有により、被覆層に凹凸形状を形成し、滑止効果を高めている。
従来の滑止手袋は、このように被覆層の表面に凹凸を付けることで、固形物表面のホコリや液体を凹部に逃がしている。これにより、上記従来の滑り止め手袋は、被覆層表面を固形物に直接接触させる面積を広げ、その接触する面の摩擦力により固形物を掴み易くしている。しかしながら、例えば氷のように表面が解け易く、その解けた液体により表面に液体層が逐次形成される固形物を掴む場合、従来の滑止手袋では、この液体を凹部に逃がし切ることができず液体層を介して固形物を掴むことになり、被覆層表面を固形物に直接接触させることができない。このため、従来の滑止手袋では、被覆層と固形物との間の摩擦力が低下し、このような表面が解け易い固形物が掴み難い。
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであり、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことのできる手袋の製造方法及び手袋の提供を目的とする。
本発明者らは、滑止手袋について鋭意検討した結果、ショットブラスト処理により微粒子を指部の掌側の被覆層表面に吹き付けて凹凸を形成することで、氷のように表面が解け易い固形物を劇的に掴み易くなることを見出した。従来、滑止効果を得るには、一定の大きさの表面粗さが必要であると考えられてきたが、このショットブラスト処理により形成される凹凸は表面粗さが比較的小さい。本発明者らは、氷を掴む場合では、この比較的小さい表面粗さを有する凹凸により、解け出した水が速やかに排出され、摩擦力が低下することが抑止されたため、氷が掴み易いという効果を奏したと考えた。
本発明者らは、上記考えに基づき、研磨機を用いた表面研磨加工を行い、表面粗さが比較的小さい凹凸を被覆層表面に形成したところ、同様に氷が掴み易いという効果が得られることを知得し、本発明を完成させた。つまり、本発明者らは、従来、被覆層表面に形成されることのなかった微細な凹凸の形成、即ち被覆層の表面を敢えて粗面化することが、氷のように表面が解け易い固形物を劇的に掴み易くすることを見出したのである。
すなわち上記課題を解決するためになされた発明は、繊維製の手袋本体の外面の少なくとも指部の掌側の一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する被覆層積層工程と、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける粗面化工程とを備える手袋の製造方法である。
当該手袋の製造方法では、粗面化工程で研削処理により指部の掌側の被覆層表面に凹凸を形成するので、形成される凹凸の表面粗さが比較的小さい。この比較的表面粗さが小さい凹凸により表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できるので、当該手袋の製造方法により製造される手袋は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
上記粗面化工程で、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaを0.1μm以上7μm以下に制御するとよい。このように粗面化工程で、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaを上記範囲内に制御することで、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記粗面化工程で、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaを8μm以下に制御するとよい。このように粗面化工程で、指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaを上記上限以下に制御することで、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記粗面化工程の研削処理が、ショットブラスト処理を行うブラスト加工であるとよい。ブラスト加工により研削処理を行うことで、表面が解け易い固形物を掴み易い被覆層表面の凹凸を容易に形成することができる。
上記粗面化工程で吹き付ける複数の粒子が酸化アルミニウム粉体であるとよい。本発明者らは、粗面化工程で吹き付ける複数の粒子を酸化アルミニウム粉体とすると、被覆層表面の凹凸が多段状に形成され易く、表面が解け易い固形物がさらに掴み易くなることを見出している。
上記粗面化工程で吹き付ける複数の粒子の粒度としては、#30以上#180以下が好ましい。このように粗面化工程で吹き付ける複数の粒子の粒度を上記範囲内とすることで、指部の掌側の被覆層表面粗さが適度に制御され、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記粗面化工程の研削処理が、研磨機を用いた表面研磨加工であるとよい。本発明者らは、研磨機を用いた表面研磨加工によっても表面が解け易い固形物を掴み易い被覆層表面の凹凸を形成できることを見出している。粗面化工程の研削処理を、研磨機を用いた表面研磨加工とすることで、上記被覆層表面の凹凸を安価に形成することができる。
上記研磨機が、バフ研磨機、ディスクグラインダー又はベルトサンダーであるとよい。このように上記研磨機をバフ研磨機、ディスクグラインダー又はベルトサンダーとすることで、指部の掌側の被覆層表面粗さが適度に制御され、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記被覆層の最外部の主成分がニトリルブタジエンゴムであるとよい。このように被覆層の最外部の主成分をニトリルブタジエンゴムとすることで、研削処理により指部の掌側の被覆層表面に容易に凹凸を形成することができ、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。なお、「被覆層の最外部」とは、被覆層の露出面を構成する部分を指し、被覆層が多層構成である場合は最表層のみを意味し、被覆層が単層構成である場合は被覆層全体を意味する。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、着用者の手を覆う繊維製の手袋本体と、この手袋本体の指部の掌側の外面の少なくとも一部を被覆し、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層とを備える手袋であって、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である。
当該手袋は、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが上記範囲内である。当該手袋は、この比較的表面粗さが小さい指部の掌側の被覆層表面の凹凸により、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できる。従って、当該手袋は、表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaとしては、8μm以下が好ましい。このように上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaを上記上限以下とすることで、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記指部の掌側の被覆層表面の最大高さRzとしては、0.5μm以上15μm以下が好ましい。このように指部の掌側の被覆層表面の最大高さRzを上記範囲内とすることで、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下を抑止する効果が高められる。
上記指部の掌側の被覆層表面が多段状であるとよい。本発明者らは、このように指部の掌側の被覆層表面を多段状とすることで、表面が解け易い固形物が掴み易くなることを見出している。
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。「算術平均うねりWa」とは、JIS−B−0601(2013)に準拠して、基準長さ1000μmで測定される値を意味する。「算術平均粗さRa」及び「最大高さRz」とは、JIS−B−0601(2001)に準拠して、基準長さ70μmで測定される値を意味する。「粒子の粒度」は、JIS−R−6001(1998)に準拠して測定される粗粒(F)の粒度を意味する。
以上説明したように、本発明の手袋の製造方法により製造される手袋及び本発明の手袋は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
[第一実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法及び手袋について詳説する。
以下、本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法及び手袋について詳説する。
[手袋の製造方法]
本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法は、図1に示すように被覆層積層工程S1と、粗面化工程S2とを備える。
本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法は、図1に示すように被覆層積層工程S1と、粗面化工程S2とを備える。
<被覆層積層工程>
被覆層積層工程S1では、繊維製の手袋本体の外面の指部の掌側の少なくとも一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する。
被覆層積層工程S1では、繊維製の手袋本体の外面の指部の掌側の少なくとも一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する。
(手袋本体)
手袋本体は、着用者の手本体を覆うよう袋状に形成された本体部と、着用者の指を覆うよう上記本体部から延設された延設部と、着用者の手首を覆うよう上記本体部から上記延設部とは反対方向に延設された筒状の裾部とを有する。上記延設部は、着用者の第一指(親指)、第二指(人差指)、第三指(中指)、第四指(薬指)及び第五指(小指)をそれぞれ覆う第一指部、第二指部、第三指部、第四指部及び第五指部を有している。この第一指部から第五指部は、指部先端が閉塞された筒状に形成されている。また、上記裾部は、着用者が手を挿入可能な開口部を有している。
手袋本体は、着用者の手本体を覆うよう袋状に形成された本体部と、着用者の指を覆うよう上記本体部から延設された延設部と、着用者の手首を覆うよう上記本体部から上記延設部とは反対方向に延設された筒状の裾部とを有する。上記延設部は、着用者の第一指(親指)、第二指(人差指)、第三指(中指)、第四指(薬指)及び第五指(小指)をそれぞれ覆う第一指部、第二指部、第三指部、第四指部及び第五指部を有している。この第一指部から第五指部は、指部先端が閉塞された筒状に形成されている。また、上記裾部は、着用者が手を挿入可能な開口部を有している。
上記手袋本体を構成する繊維としては、特に限定されず、天然繊維、合成繊維、無機繊維等を用いることができる。上記天然繊維としては、綿、絹、ウール、麻等が挙げられる。上記合成繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、超強力ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等を挙げることができる。また、上記無機繊維としては、ステンレス繊維、タングステン繊維、ガラス繊維等を挙げることができる。
上記手袋本体は、上記繊維からなる糸を用いて形成されている。これらの糸としては、紡績糸、フィラメント糸、捲縮加工等を施した加工糸等を挙げることができる。また、これらの糸に用いる繊維は、1種類としてもよいし、2種以上を混合してもよい。例えば2種の繊維を混合して用いる糸としては、綿とポリスエテル短繊維を混紡した紡績糸や、ステンレス繊維をナイロン等でカバーリングした複合糸を挙げることができる。
また、上記手袋本体は、上記繊維を用いる織布、編布又は不織布を手袋の形に切り抜き、縫製して形成してもよいが、シームレス編機でシームレス状に編成し形成したものが好ましい。上記手袋本体としてシームレス編機で編成し形成したものを用いることで、当該手袋の製造方法により製造される手袋は製造コスト、柔軟性、及び着用感に優れる。シームレス編機で上記手袋本体を編成する場合、上記手袋本体の編みゲージ数としては、10ゲージ以上26ゲージ以下が望ましい。
上記手袋本体の平均厚みの下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。一方、上記手袋本体の平均厚みの上限としては、1.3mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。上記手袋本体の平均厚みが上記下限未満であると、手袋自体の強度に欠け、耐久性が低下するおそれがある。逆に、上記手袋本体の平均厚みが上記上限を超えると、製造される手袋の厚みが大きくなることで柔軟性が低下して、着用時における作業性が低下するおそれがある。なお、平均厚みは、JIS−L1086/L1096準拠の定圧厚さ測定器(例えば株式会社テクロックの「PG−15」)を用いて、任意の5箇所を測定して得た値の平均値である。
なお、上記手袋本体には、例えば柔軟剤、撥水撥油剤、抗菌剤等を用いて各種処理が行われてもよく、また、紫外線吸収剤等を塗布又は含浸等させて、紫外線防止機能が付与されていてもよい。また、上記手袋本体に使用する繊維そのものにこのような機能を示す薬剤が練り込まれていてもよい。
(被覆層)
被覆層は、被覆層を形成したい部分にゴム又は樹脂組成物を上記手袋本体に含浸することにより形成される。具体的には、被覆層積層工程S1は、例えば凝固剤溶液への浸漬工程と、ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程と、水分蒸発工程と、架橋促進工程とを備える。以下、各工程について説明する。
被覆層は、被覆層を形成したい部分にゴム又は樹脂組成物を上記手袋本体に含浸することにより形成される。具体的には、被覆層積層工程S1は、例えば凝固剤溶液への浸漬工程と、ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程と、水分蒸発工程と、架橋促進工程とを備える。以下、各工程について説明する。
〔凝固剤溶液への浸漬工程〕
凝固剤溶液への浸漬工程では、用意された手袋本体を手袋成形用手型に被せ、この手型を凝固剤溶液に浸漬し、引き上げた後、溶媒を揮発させる。
凝固剤溶液への浸漬工程では、用意された手袋本体を手袋成形用手型に被せ、この手型を凝固剤溶液に浸漬し、引き上げた後、溶媒を揮発させる。
上記凝固剤溶液としては、公知のもの、例えば多価金属塩や有機酸を含むメタノール溶液や水溶液等を用いることができる。中でも多価金属塩を含むことが好ましい。上記凝固剤溶液に多価金属塩を含ませることで、ゴム又は樹脂組成物の手袋本体への過剰な浸透を抑止し易い。
上記多価金属塩としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を組合せて使用することもできる。
上記凝固剤溶液における上記多価金属塩の含有量の下限としては、溶媒100質量部に対して0.3質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。一方、上記多価金属塩の含有量の上限としては、被覆層の手袋本体からの剥離を抑止できれば特に限定されないが、溶媒100質量部に対して5質量部が好ましく、4質量部がより好ましい。
また、上記有機酸としては、酢酸、クエン酸等を挙げることができる。上記凝固剤溶液における上記有機酸の含有量としては、溶媒100質量部に対して5質量%部50質量部以下が好ましい。この有機酸は、単独で使用することもできるが、多価金属塩と混合して使用することが好ましい。多価金属塩と混合して使用することで、被覆層の厚みが薄くなることを抑止できる。また、それぞれを単独で用いる場合よりも凝固剤溶液の成膜能力の制御が容易となる。
上記手型を凝固剤溶液に浸漬させる際の手型の温度としては、手袋本体への凝固剤の浸透の観点から40℃以上70℃以下が好ましい。
凝固剤溶液への浸漬及び引き上げ後に溶媒を揮発させる温度としては、25℃以上70℃以下が好ましく、溶媒を揮発させる時間としては、10秒以上600秒以下が好ましい。この溶媒の揮発により、次工程におけるゴム又は樹脂組成物の浸透を制御することができるので、被覆層が手袋本体の内部まで浸透して手袋内面の触感を低下させることを抑止しつつ、形成された被覆層が剥離することを防止できる。このゴム又は樹脂組成物の浸透の制御の観点から、溶媒がメタノールである場合は、10秒以上60秒以下がより好ましく、溶媒が水である場合は、30秒以上600秒以下がより好ましい。
〔ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程〕
ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程では、上記凝固剤溶液への浸漬工程後の手袋本体に覆われた手型をゴム又は樹脂組成物へ浸漬し、引き上げる。
ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程では、上記凝固剤溶液への浸漬工程後の手袋本体に覆われた手型をゴム又は樹脂組成物へ浸漬し、引き上げる。
上記ゴム又は樹脂組成物は、主成分のゴム又は樹脂に加え、溶媒を含有する。また、上記ゴム又は樹脂組成物は、必要に応じてさらに添加剤を含有してもよい。
上記ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、エピクロヒドリンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴムあるいはこれらを混合したもの等が挙げられる。これらの中でも、ニトリルブタジエンゴムが好ましい。被覆層の主成分をニトリルブタジエンゴムとすることで、ショットブラスト処理により被覆層表面に容易に凹凸を形成することができ、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレンあるいはこれらを混合したもの等が挙げられる。これらの中でもポリ塩化ビニル又はポリウレタンを用いることが好ましい。
上記溶媒としては、例えば水、有機溶媒等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、上記添加剤としては、例えば架橋剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤、顔料、増粘剤等を適宜用いることができる。これらは単独で又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔水分蒸発工程〕
水分蒸発工程では、ゴム又は樹脂組成物への浸漬により形成された被膜の水分を蒸発させる。この水分蒸発工程は、例えば公知のオーブンを用いて行うことができる。
水分蒸発工程では、ゴム又は樹脂組成物への浸漬により形成された被膜の水分を蒸発させる。この水分蒸発工程は、例えば公知のオーブンを用いて行うことができる。
水分を蒸発させる温度としては、50℃以上100℃以下が好ましい。上記温度が上記下限未満であると、未乾燥の被膜が垂れてくるおそれがあり、被覆層が不均一となるおそれがある。逆に、上記温度が上記上限を超えると、急速な乾燥により乾燥ムラが生じ易くなり、被覆層が不均一となるおそれがある。
昇温後の水分を蒸発させる時間としては、製造効率の観点から20分以上80分以下が好ましい。
ゴム又は樹脂組成物への浸漬工程と、水分蒸発工程とは、複数回繰り返して行ってもよい。これらの工程を複数回行うことで、形成される被膜の均一性が向上する。繰り返し回数としては、製造効率の観点から2回又は3回が好ましい。
なお、樹脂組成物の主成分がポリ塩化ビニルである場合は、この水分蒸発工程に代えてゲル化工程が行われる。具体的には、例えば180℃以上220℃以下のオーブンで2分以上3分以下の加熱を行い、樹脂組成物をゲル化する。
〔架橋促進工程〕
架橋促進工程では、水分蒸発工程後の被膜の架橋反応を促進させる。この架橋促進工程は、例えば公知のオーブンを用いて行うことができる。
架橋促進工程では、水分蒸発工程後の被膜の架橋反応を促進させる。この架橋促進工程は、例えば公知のオーブンを用いて行うことができる。
架橋反応を促進させる際の温度としては、100℃以上150℃以下が好ましい。架橋反応を促進させる際の温度が上記下限未満であると、架橋反応が十分に促進されないおそれがある。逆に、架橋反応を促進させる際の温度が上記上限を超えると、架橋反応にムラが発生するおそれや、手袋本体や被覆層に熱による劣化が生じるおそれがある。
昇温後の架橋を促進させる時間としては、製造効率の観点から10分以上40分以下が好ましい。
樹脂組成物の主成分がポリ塩化ビニルである場合は、架橋促進工程に代えて硬化工程が行われる。具体的には、例えば180℃以上220℃以下のオーブンで8分以上12分以下の加熱を行い、樹脂を硬化させる。
また、上記被覆層は、多層構造とすることもできる。この場合は、各層ごとに上述の工程を繰り返し行うことで被覆層が形成できる。なお、上記被覆層を多層構造とする場合は、被覆層の最外部の主成分をニトリルブタジエンゴムとすることが好ましい。
なお、この架橋促進工程は、後述する粗面化工程S2の後に行うことも可能である。
<粗面化工程>
粗面化工程S2では、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける。
粗面化工程S2では、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける。
当該手袋の製造方法では、粗面化工程S2の研削処理として、ショットブラスト処理を行うブラスト加工を用いる。ショットブラスト処理とは、圧縮空気を媒体として複数の粒子を対象物に吹き付けることで対象物に加工を施す処理である。ここでは、ショットブラスト処理により、複数の粒子を指部の掌側の被覆層に吹き付けることで、指部の掌側の被覆層表面に凹凸を形成する。ショットブラスト処理は、公知のショットブラスト機を用いて行うことができる。
なお、上記被覆層へのショットブラスト処理は、指部の掌側の被覆層全体に対して行ってもよいが、指部の掌側の被覆層の一部に行ってもよい。また、被覆層が指部の掌側以外に積層されている場合、指部の掌側以外の被覆層に対してもショットブラスト処理を行ってもよい。
粗面化工程S2で吹き付ける複数の粒子としては、ショットブラスト処理を行えるものであれば特に限定されず、酸化アルミニウム(白色アルミナ、褐色アルミナ)、スチール、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、鉄粉、重曹、ガラスビーズ、セラミック、銅、珪砂、亜鉛、炭化ケイ素、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、天然鉱石、天然素材の殻(コーン、クルミ、ピーチ、アプリコットなど)等の粉体を用いることができる。中でも、酸化アルミニウム粉体が好ましい。本発明者らは、粗面化工程S2で吹き付ける複数の粒子を酸化アルミニウム粉体とすると、ショットブラスト処理を行った被覆層表面の凹凸が多段状に形成され易く、表面が解け易い固形物が掴み易くなることを見出している。
また、上記複数の粒子の形状としては、特に限定されないが、球状、塊状、円柱状、針状、円すい状とできる。
上記複数の粒子の粒度の下限としては、#30が好ましく、#40がより好ましく、#45がさらに好ましい。一方、上記複数の粒子の粒度の上限としては、#180が好ましく、#150がより好ましく、#100がさらに好ましい。上記複数の粒子の粒度が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。逆に、上記複数の粒子の粒度が上記上限を超えると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが不足し、滑止効果が不十分となるおそれがある。
また、上記複数の粒子の平均粒子径の下限としては、50μmが好ましく、60μmがより好ましく、100μmがより好ましい。一方、上記複数の粒子の平均粒子径の上限としては、700μmが好ましく、500μmがより好ましく、450μmがさらに好ましい。上記複数の粒子の平均粒子径が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが不足し、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記複数の粒子の平均粒子径が上記上限を超えると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
上記複数の粒子のモース硬度の下限としては、2が好ましく、5がより好ましい。上記複数の粒子のモース硬度が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面が十分に加工できないおそれがある。一方、上記複数の粒子のモース硬度の上限は特に限定されず、10であってもよい。
上記複数の粒子の嵩密度の下限としては、0.5g/cm3が好ましく、1g/cm3がより好ましい。上記複数の粒子の嵩密度が上記下限未満であると、被覆層表面が十分に加工できないおそれがある。一方、上記複数の粒子の嵩密度の上限は、吹き付ける粒子の加速ができる限り特に限定されないが、上記複数の粒子の嵩密度は通常5g/cm3以下である。なお、「嵩密度」とは、200mLシリンダに粒子を充填した際の質量から算出した密度を意味する。
複数の粒子を吹き付ける際の圧力(圧縮空気の圧力)の下限としては、0.1MPaが好ましく、0.2MPaがより好ましい。一方、上記圧縮空気の圧力の上限としては、6MPaが好ましく、4MPaがより好ましい。上記圧縮空気の圧力が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが不足し、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記圧縮空気の圧力が上記上限を超えると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
粗面化工程S2では、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが所定範囲内となるように制御するとよい。指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaの制御値の下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。一方、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaの制御値の上限としては、7μmが好ましく、5μmがより好ましい。指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaの制御値が上記下限未満であると、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaの制御値が上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。なお、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaは、複数の粒子の種類、粒度、吹き付ける際の圧力、吹き付ける時間などにより制御できる。
粗面化工程S2では、指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaが所定値以下となるように制御するとよい。指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaの制御値(上述の所定値)の上限としては、8μmが好ましく、5μmがより好ましい。指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaの制御値が上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。なお、指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaは、複数の粒子の種類、粒度、吹き付ける際の圧力、吹き付ける時間などにより制御できる。
なお、ショットブラスト処理後に、被覆層に付着している粒子は流水等で除去し、被覆層を乾燥させる。その後、被覆層が形成された手袋本体を手型から外すことで、手袋が得られる。
<利点>
当該手袋の製造方法では、粗面化工程S2で研削処理により指部の掌側の被覆層表面に凹凸を形成するので、形成される凹凸の表面粗さが比較的小さい。この比較的表面粗さが小さい凹凸により表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できるので、当該手袋の製造方法により製造される手袋は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
当該手袋の製造方法では、粗面化工程S2で研削処理により指部の掌側の被覆層表面に凹凸を形成するので、形成される凹凸の表面粗さが比較的小さい。この比較的表面粗さが小さい凹凸により表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できるので、当該手袋の製造方法により製造される手袋は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
また、当該手袋の製造方法では、ブラスト加工により研削処理を行うことで、表面が解け易い固形物を掴み易い被覆層表面の凹凸を容易に形成することができる。
〔手袋〕
図2の手袋1は、着用者の手を覆う繊維製の手袋本体11と、この手袋本体11の外面の指部の掌側の一部を被覆する被覆層12とを備える。当該手袋1は、例えば上述の当該手袋の製造方法により製造することができる。
図2の手袋1は、着用者の手を覆う繊維製の手袋本体11と、この手袋本体11の外面の指部の掌側の一部を被覆する被覆層12とを備える。当該手袋1は、例えば上述の当該手袋の製造方法により製造することができる。
<手袋本体>
手袋本体11は、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明した手袋本体と同様であるので、説明を省略する。
手袋本体11は、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明した手袋本体と同様であるので、説明を省略する。
<被覆層>
被覆層12は、ゴム又は樹脂を主成分とする。上記ゴムとしては、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明したゴム組成物のゴムと同様とできる。また、上記樹脂としては、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明した樹脂組成物の樹脂と同様とできる。
被覆層12は、ゴム又は樹脂を主成分とする。上記ゴムとしては、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明したゴム組成物のゴムと同様とできる。また、上記樹脂としては、当該手袋の製造方法の被覆層積層工程S1で説明した樹脂組成物の樹脂と同様とできる。
被覆層12が被覆する指部の掌側の領域としては、特に限定されず、指部の掌側全体であってもよいが、例えば図2に示すように指部の第1関節相当位置より先端の指先領域とすることもできる。指先領域は固形物を掴む際に個体物に接触し易い領域であるので、被覆層12が被覆する指部の掌側の領域は、指先領域を含むことが好ましい。
図2に示す当該手袋1では、5指全てが指部の掌側に被覆層12を備えているが、指部の掌側に被覆層12を備えない指部があってもよい。固形物の掴み易さの観点から、指部の掌側に被覆層12を備える指部の指数の下限としては、2指が好ましく、3指がより好ましく、5指、すなわち全ての指部が被覆層12を備えることがさらに好ましい。
被覆層12は、手袋本体11に含浸していることが好ましい。一方、上記被覆層12は、手袋本体11の内面まで浸透していないことが好ましい。被覆層12を手袋本体11に含浸させ、かつ手袋本体11の内面まで浸透させないことで、当該手袋1の内面の触感の低下を抑止しつつ、被覆層12の剥離を抑止できる。
被覆層12の表面の算術平均粗さRaの下限としては、0.1μmであり、0.2μmがより好ましい。一方、被覆層12の表面の算術平均粗さRaの上限としては、7μmであり、5μmがより好ましい。被覆層12の表面の算術平均粗さRaが上記下限未満であると、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、被覆層12の表面の算術平均粗さRaが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
被覆層12は、その表面に凹凸を有する。被覆層12の表面の算術平均うねりWaの上限としては、8μmが好ましく、5μmがより好ましい。被覆層12の表面の算術平均うねりWaが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。一方、被覆層12の表面の算術平均うねりWaの下限としては、特に限定されず、0μmであってもよいが、通常1μm以上である。
被覆層12の表面の最大高さRzの下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、被覆層12の表面の最大高さRzの上限としては、15μmが好ましく、10μmがより好ましい。被覆層12表面の最大高さRzが上記下限未満であると、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、被覆層12の表面の最大高さRzが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
被覆層12の硬度の下限としては、A30が好ましく、A40がより好ましい。一方、被覆層12の硬度の上限としては、A90が好ましく、A80がより好ましい。被覆層12の硬度が上記下限より小さいと、被覆層12の強度が不十分となるおそれがある。逆に、被覆層12の硬度が上記上限を超えると、当該手袋1の柔軟性が不足し、氷に対する追従性が不十分となるため、把持力が低下するするおそれがある。なお、上記硬度は、JIS−K6253−3(2012)に準拠し、タイプAデュロメータを用いて測定される硬さを意味する。
また、被覆層12の表面が多段状であるとよい。本発明者らは、被覆層12の表面を多段状とすることで、表面が解け易い固形物が掴み易くなることを見出している。具体的な多段状の形としては、被覆層12の表面の凹部や凸部の高さが段階的に変化する階段状の形や、小片が重なり合った鱗状の形、凸状部の頂部にさらに凸状部が積層したクラスター状の形等を挙げることができる。
<利点>
当該手袋1は、指部の掌側の被覆層12表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である。当該手袋1は、この比較的うねりが小さい指部の掌側の被覆層12表面の凹凸により、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できる。従って、当該手袋1は、表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
当該手袋1は、指部の掌側の被覆層12表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である。当該手袋1は、この比較的うねりが小さい指部の掌側の被覆層12表面の凹凸により、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下が抑止できる。従って、当該手袋1は、表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
[第二実施形態]
以下、本発明の第一実施形態とは異なる実施形態に係る手袋の製造方法について詳説する。
以下、本発明の第一実施形態とは異なる実施形態に係る手袋の製造方法について詳説する。
当該手袋の製造方法は、第一実施形態で説明した手袋の製造方法と同様、図1に示すように被覆層積層工程S1と、粗面化工程S2とを備える。当該手袋の製造方法を用いることで、例えば第一実施形態で説明した図2に示す手袋を製造することができる。
<被覆層積層工程>
被覆層積層工程S1では、繊維製の手袋本体の外面の指部の掌側の少なくとも一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する。この被覆層積層工程S1は、第一実施形態の被覆層積層工程S1と同様であるので、詳細説明を省略する。
被覆層積層工程S1では、繊維製の手袋本体の外面の指部の掌側の少なくとも一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する。この被覆層積層工程S1は、第一実施形態の被覆層積層工程S1と同様であるので、詳細説明を省略する。
<粗面化工程>
粗面化工程S2では、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける。
粗面化工程S2では、上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける。
当該手袋の製造方法では、粗面化工程S2の研削処理として、研磨機を用いた表面研磨加工を用いる。つまり、当該手袋の製造方法では、研磨機により指部の掌側の被覆層表面を擦ることで被覆層表面に凹凸を形成する。
上記研磨機としては、バフ研磨機、ディスクグラインダー、ベルトサンダー、ハンドグラインダー、電動やすり等を挙げることができ、中でもバフ研磨機、ディスクグラインダー、ベルトサンダーが好ましい。このように上記研磨機をバフ研磨機、ディスクグラインダー又はベルトサンダーとすることで、指部の掌側の被覆層表面粗さが適度に制御され、表面が解け易い固形物をさらに掴み易くすることができる。
上記研磨機としてバフ研磨機、ディスクグラインダー又はベルトサンダーを用いる場合、上記研磨機に装着する研磨材としては、使用する研磨機にもよるが、不織布、ラジアルホイル、研磨布紙、研磨ベルト等を挙げることができる。
上記研磨材の粒度の下限としては、#30が好ましく、#40がより好ましく、#45がさらに好ましい。一方、上記研磨材の粒度の上限としては、#180が好ましく、#150がより好ましく、#100がさらに好ましい。上記研磨材の粒度が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが大きくなり過ぎ、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。逆に、上記研磨材の粒度が上記上限を超えると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが不足し、滑止効果が不十分となるおそれがある。
研磨機を用いた表面研磨加工を行う時間(研磨時間)の下限としては、30秒が好ましく、50秒がより好ましい。一方、上記研磨時間の上限としては、150秒が好ましく、120秒がより好ましい。上記研磨時間が上記下限未満であると、指部の掌側の被覆層表面の粗さが不足し、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記研磨時間が上記上限を超えると、研磨時間の増加に対して表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果の向上が飽和するため、製造効率が低下するおそれがある。
粗面化工程S2では、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが所定範囲内となるように制御するとよい。また、粗面化工程S2では、指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaが所定値以下となるように制御するとよい。上記算術平均粗さRa及び上記算術平均うねりWaの制御値は、第一実施形態と同様とできる。なお、指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRa及び算術平均うねりWaは、使用する研磨材の種類、粒度、研磨する時間などにより制御できる。
なお、上記表面研磨加工の後、被覆層が形成された手袋本体を手型から外すことで、手袋が得られる。
<利点>
当該手袋の製造方法では、研磨機を用いた表面研磨加工を行うので、表面が解け易い固形物を掴み易い被覆層表面の凹凸を形成することができる。また、粗面化工程の研削処理を、研磨機を用いた表面研磨加工とすることで、上記被覆層表面の凹凸を安価に形成することができる。
当該手袋の製造方法では、研磨機を用いた表面研磨加工を行うので、表面が解け易い固形物を掴み易い被覆層表面の凹凸を形成することができる。また、粗面化工程の研削処理を、研磨機を用いた表面研磨加工とすることで、上記被覆層表面の凹凸を安価に形成することができる。
[第三実施形態]
以下、本発明の第一実施形態とは異なる実施形態に係る手袋について詳説する。
以下、本発明の第一実施形態とは異なる実施形態に係る手袋について詳説する。
図2の手袋2は、着用者の手を覆う繊維製の手袋本体21と、この手袋本体21の外面全体を被覆する被覆層22とを備える。当該手袋2は、例えば第一実施形態や第二実施形態で説明した当該手袋の製造方法と同様の方法で製造することができる。
<手袋本体>
手袋本体21は、第一実施形態で説明した手袋1の手袋本体11と同様であるので、説明を省略する。
手袋本体21は、第一実施形態で説明した手袋1の手袋本体11と同様であるので、説明を省略する。
<被覆層>
被覆層22は、ゴム又は樹脂を主成分とする。上記ゴムとしては、第一実施形態で説明した手袋1の被覆層12のゴム組成物のゴムと同様とできる。また、上記樹脂としては、第一実施形態で説明した手袋1の被覆層12の樹脂組成物の樹脂と同様とできる。
被覆層22は、ゴム又は樹脂を主成分とする。上記ゴムとしては、第一実施形態で説明した手袋1の被覆層12のゴム組成物のゴムと同様とできる。また、上記樹脂としては、第一実施形態で説明した手袋1の被覆層12の樹脂組成物の樹脂と同様とできる。
被覆層22は、手袋本体21に含浸していることが好ましい。一方、上記被覆層22は、手袋本体21の内面まで浸透していないことが好ましい。被覆層22を手袋本体21に含浸させ、かつ手袋本体21の内面まで浸透させないことで、当該手袋2の内面の触感の低下を抑止しつつ、被覆層22の剥離を抑止できる。
被覆層22は、掌領域(手首から指の付け根までの、手を握ったときに内側になる領域)の一部の表面に凹凸を有する掌部滑止領域22aを備える。また、被覆層22は、この掌部滑止領域22aに連続し、第一指部、第二指部、第三指部、第四指部及び第五指部のそれぞれの掌側の一部の表面に凹凸を有する指部滑止領域22bを備える。
掌部滑止領域22a及び指部滑止領域22bの被覆層22表面の算術平均粗さRaの下限としては、0.1μmであり、0.2μmがより好ましい。一方、上記被覆層22表面の算術平均粗さRaの上限としては、7μmであり、5μmがより好ましい。つまり、当該手袋2は、手袋本体21の外面の指部の掌側の少なくとも一部が、表面の算術平均粗さRaが上記範囲内である被覆層により被覆されている。上記被覆層22表面の算術平均粗さRaが上記下限未満であると、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記被覆層22の表面の算術平均粗さRaが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
掌部滑止領域22a及び指部滑止領域22bの被覆層22表面の算術平均うねりWaの上限としては、8μmが好ましく、5μmがより好ましい。上記被覆層22表面の算術平均うねりWaが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。一方、上記被覆層22表面の算術平均うねりWaの下限としては、特に限定されず、0μmであってもよいが、通常1μm以上である。
掌部滑止領域22a及び指部滑止領域22bの被覆層22表面の算術平均粗さRaの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。一方、上記被覆層22表面の算術平均粗さRaの上限としては、7μmが好ましく、5μmがより好ましい。つまり、当該手袋2は、手袋本体21の外面の指部の掌側の少なくとも一部が、表面の算術平均粗さRaが上記範囲内である被覆層により被覆されている。上記表面の算術平均粗さRaが上記下限未満であると、滑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記表面の算術平均粗さRaが上記上限を超えると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。
掌部全体に対する被覆層22の掌部滑止領域22aの面積割合の下限としては、30%が好ましく、50%がより好ましく、70%がさらに好ましい。上記面積割合が上記下限未満であると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。一方、上記面積割合の上限としては、特に限定されず、100%であってもよい。
指部の掌側全体に対する被覆層22の指部滑止領域22bの面積割合の下限としては、30%が好ましく、50%がより好ましく、70%がさらに好ましい。上記面積割合が上記下限未満であると、表面が解け易い固形物を掴む場合の摩擦力の低下抑止効果が不足するおそれがある。一方、上記面積割合の上限としては、特に限定されず、100%であってもよい。
また、被覆層22の掌部滑止領域22a及び指部滑止領域22bの表面は、第一実施形態で説明した手袋1の被覆層12表面と同様に、多段状であるとよい。
<利点>
当該手袋2は、手袋本体21の外面全体を被覆層22で覆い、その指部の掌側の一部を滑止領域とすることで、優れた耐水性や耐薬品性等を有しつつ、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
当該手袋2は、手袋本体21の外面全体を被覆層22で覆い、その指部の掌側の一部を滑止領域とすることで、優れた耐水性や耐薬品性等を有しつつ、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
粗面化工程の研削処理として、第一実施形態ではブラスト加工を用いる場合を説明し、第二実施形態では表面研磨加工を用いる場合を説明したが、これらの加工は1つの手袋に対して異なる部位に使用することもできる。
また、粗面化工程の研削処理は、ブラスト加工や表面研磨加工には限定されず、被覆層表面を研削できる他の加工処理であってもよい。
上記第三実施形態では、手袋の指部の掌側以外である掌領域の被覆層に、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である滑止領域を有する場合を説明したが、滑止領域が指部の掌側の少なくとも一部に設けられている限り、この滑止領域が他の位置に配設された手袋も本発明の意図するところである。手袋の使用環境に応じて、固形物を掴む際に固形物と接触し得る位置に追加して配設することで、摩擦力の低下抑止効果をさらに向上できる。
上記滑止領域を手袋の指部の掌側以外に配設する場合、その滑止領域の凹凸は、指部の掌側の滑止領域と同様に粗面化工程により形成できる。つまり、本発明の手袋の製造方法は、粗面化工程を指部の掌側に加えて他の領域に行う製造方法も含む。
また、上記第三実施形態では、指部全てに滑止領域を有する場合を説明したが、この指部滑止領域は必須の構成ではなく、その一部又は全部を省略してもよい。
また、第三実施形態のように表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である指部滑止領域が被覆層の一部に設けられる場合、被覆層の他の領域の表面の算術平均粗さRaは特に限定されず、0.1μm未満であっても、7μm超であってもよい。算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である指部滑止領域が被覆層の一部に設けられる限り、摩擦力の低下抑止効果が得られる。
さらに、手袋本体の一部に被覆層が積層され、その被覆層の一部に表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である領域が設けられている手袋も、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である領域に指部の掌側の一部が含まれる限り、本発明の意図するところである。このような手袋としては、手袋本体の掌領域と、指部の掌側全部及び甲側の一部とに被覆層が積層され、指部の掌側の領域の被覆層表面のみの算術平均粗さRaを0.1μm以上7μm以下とした手袋を挙げることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(手袋本体)
まず、島精機社の13G手袋編機「N−SFG」を用いて、シームレス編み手袋本体を作製した。
(手袋本体)
まず、島精機社の13G手袋編機「N−SFG」を用いて、シームレス編み手袋本体を作製した。
(被覆層)
次に、上記手袋本体を手型に被せ、メタノール100質量部に対して硝酸カルシウム3質量部を溶解した凝固剤溶液へ上記手袋本体全体を浸漬し引き上げた後、溶媒の一部を揮発させた。
次に、上記手袋本体を手型に被せ、メタノール100質量部に対して硝酸カルシウム3質量部を溶解した凝固剤溶液へ上記手袋本体全体を浸漬し引き上げた後、溶媒の一部を揮発させた。
次に、表1に示すゴム組成物(ラテックス原料)に上記手袋本体全体を浸漬し引き上げた後、80℃で60分間、ラテックス原料への浸漬により形成された被膜の水分を蒸発させた。その後、再度上記ラテックス原料への浸漬及び水分の蒸発を同じ条件で行った。つまり、このラテックス原料への浸漬及び水分蒸発は、合計で2回行った。その後、120℃で30分間の架橋促進を行った。このようにして手袋本体の表面に被覆層を形成した。
次に、上記手袋本体の掌部及び指部の掌側の被覆層に、0.4MPaの圧縮空気を媒体とし、吹き付ける粒子として酸化アルミニウム粉体(ホワイトアランダム、粒度#46の白色アルミナ)を用いて、5指と掌とにそれぞれ約2分間ずつ、合計で約12分間のショットブラスト処理を行った。その後、ホワイトアランダムを流水で洗い流し、風乾させた。このようにして掌部及び指部の掌側に凹凸を有する被覆層を備える実施例1の手袋を得た。
<実施例2>
ショットブラスト処理で吹き付ける粒子を粒度#46のクルミとした以外は実施例1と同様にして実施例2の手袋を得た。
ショットブラスト処理で吹き付ける粒子を粒度#46のクルミとした以外は実施例1と同様にして実施例2の手袋を得た。
<実施例3>
ショットブラスト処理で吹き付ける粒子を粒度#80〜#100相当の重曹とした以外は実施例1と同様にして実施例3の手袋を得た。
ショットブラスト処理で吹き付ける粒子を粒度#80〜#100相当の重曹とした以外は実施例1と同様にして実施例3の手袋を得た。
<比較例1>
実施例1でショットブラスト処理を行わず、滑止粒子(ニトリルブタジエンゴム系粒子及びアクリルゴム系粒子の混合物、粒子径50μm以上150μm以下)を被覆層の最外部に付着させた。具体的には、ラテックス原料への浸漬により形成された被膜の水分を蒸発させた後、被膜が形成された手袋本体を、NBRラテックス100質量部に対して滑止粒子を40質量部添加したゴム組成物に浸漬して、滑止粒子を含む被膜(滑止層)をさらに形成した。上記以外は実施例1と同様にして比較例1の手袋を得た。
実施例1でショットブラスト処理を行わず、滑止粒子(ニトリルブタジエンゴム系粒子及びアクリルゴム系粒子の混合物、粒子径50μm以上150μm以下)を被覆層の最外部に付着させた。具体的には、ラテックス原料への浸漬により形成された被膜の水分を蒸発させた後、被膜が形成された手袋本体を、NBRラテックス100質量部に対して滑止粒子を40質量部添加したゴム組成物に浸漬して、滑止粒子を含む被膜(滑止層)をさらに形成した。上記以外は実施例1と同様にして比較例1の手袋を得た。
<比較例2>
実施例1でショットブラスト処理を行わず、溶剤(メチルエチルケトン、MEK)を用いて表面に模様を付した以外は実施例1と同様にして比較例2の手袋を得た。このMEKにより表面に模様を付す方法としては、ゴム組成物(ラテックス原料)に浸漬し引き上げた後、200℃で20秒乾燥させ、MEKに浸漬する方法を用いた。なお、MEK浸漬後のラテックス原料への浸漬により形成された被膜の水分蒸発及び架橋促進は、実施例1と同様の条件で行った。
実施例1でショットブラスト処理を行わず、溶剤(メチルエチルケトン、MEK)を用いて表面に模様を付した以外は実施例1と同様にして比較例2の手袋を得た。このMEKにより表面に模様を付す方法としては、ゴム組成物(ラテックス原料)に浸漬し引き上げた後、200℃で20秒乾燥させ、MEKに浸漬する方法を用いた。なお、MEK浸漬後のラテックス原料への浸漬により形成された被膜の水分蒸発及び架橋促進は、実施例1と同様の条件で行った。
<参考例1>
参考例1として、実施例1で被覆層を形成した状態(ショットブラストを行わない)で処理を終了し、参考例1の手袋を得た。つまり、参考例1の手袋の被覆層には、凹凸を形成していない。
参考例1として、実施例1で被覆層を形成した状態(ショットブラストを行わない)で処理を終了し、参考例1の手袋を得た。つまり、参考例1の手袋の被覆層には、凹凸を形成していない。
[評価]
得られた実施例1〜3、比較例1、2及び参考例1の手袋の5指及び掌部分について、被覆層の表面粗さ及びグリップ性能を評価した。
得られた実施例1〜3、比較例1、2及び参考例1の手袋の5指及び掌部分について、被覆層の表面粗さ及びグリップ性能を評価した。
<表面粗さの評価>
被覆層の表面粗さについては、まず算術平均うねりWaの測定を行った。測定にはキーエンス株式会社のデジタルマイクロスコープ「VHX−6000」を用い、照明法を同軸落射、倍率を1500倍とし、JIS−B−0601(2013)に準拠して行った。なお、基準長さは1000μmとし、カットオフは基準長さの1/5とした。また、測定は掌部及び指部の掌側の任意の10箇所で行い、測定結果の平均値を算術平均うねりWaの値とした。結果を表2に示す。
被覆層の表面粗さについては、まず算術平均うねりWaの測定を行った。測定にはキーエンス株式会社のデジタルマイクロスコープ「VHX−6000」を用い、照明法を同軸落射、倍率を1500倍とし、JIS−B−0601(2013)に準拠して行った。なお、基準長さは1000μmとし、カットオフは基準長さの1/5とした。また、測定は掌部及び指部の掌側の任意の10箇所で行い、測定結果の平均値を算術平均うねりWaの値とした。結果を表2に示す。
表2に示すようにショットブラスト処理を行った実施例1〜3は、ショットブラスト処理を行っていない比較例1、2よりも算術平均うねりWaが小さい。なお、測定条件を同一とした比較を行うため、比較例1、2についても基準長さ1000μmで測定したが、比較例1、2はうねりが大きく、例えば基準長さを2000μmとすると、表2の( )内のように数値が増大する。このように基準長さを長くすると大きく数値が上昇する場合は、うねりが大き過ぎ、基準長さ1000μmの測定では過小評価となっていると考えられるので、比較例1、2の算術平均うねりWaは、実際にはさらに表2の測定結果よりも大きいと考えられる。
次に、算術平均うねりWaが小さかった実施例1〜3及び参考例1の表面の凹凸状態をさらに詳細に調べるため、算術平均粗さRa及び最大高さRzを測定した。測定にはZygo社の三次元光学プロファイラーシステム「NewView6300」を用い、走査型白色干渉法で視野70μm×50μmの範囲で、JIS−B−0601(2001)に準拠して行った。なお、基準長さは70μmとし、カットオフはなしとした。また、測定は掌部及び指部の掌側の任意の10箇所(算術平均うねりWaの10箇所と同一箇所とは限らない)で行い、測定結果の平均値を算術平均粗さRa及び最大高さRzの値とした。結果を表2に示す。
<グリップ性能>
被験者10人にそれぞれ10枚の手袋を装着してもらい、氷を掴んだ際の掴み易さについて下記の3段階で評価し、評価結果を平均した。結果を表2に示す。
(グリップ性能の評価基準)
3点:氷を掴むことが容易である。
1点:安定性には劣るものの、氷を掴むことができる。
0点:氷を掴むことが困難である。
被験者10人にそれぞれ10枚の手袋を装着してもらい、氷を掴んだ際の掴み易さについて下記の3段階で評価し、評価結果を平均した。結果を表2に示す。
(グリップ性能の評価基準)
3点:氷を掴むことが容易である。
1点:安定性には劣るものの、氷を掴むことができる。
0点:氷を掴むことが困難である。
表2において、重曹の「粒子径」は未測定であることを意味する。また、実施例1〜3の「粒子」は、吹き付ける粒子の諸元を示す。これに対し、比較例1、比較例2の「粒子」は、実施例1〜3とは異なり被覆層に凹凸を付した手段を表しているため、諸元は( )を付して記した。なお、比較例2及び参考例1の「粒子」の「−」は、粒子を使用しないことを示す。また、比較例1、2の算術平均粗さ及び最大高さRzは、上述のとおり測定していない。
表2から、実施例1〜実施例3の手袋では氷を掴むことはできるのに対し、比較例1、比較例2及び参考例1の手袋では氷を掴むことができないことが分かる。実施例1〜実施例3の手袋の被覆層表面の算術平均粗さRaは、被覆層表面に処理を施していない参考例1よりも大きい。また、従来の方法で被覆層表面に凹凸を付けた比較例1及び比較例2では被覆層表面の算術平均うねりWaが大きく、被覆層表面の算術平均粗さRaは測定できない程度に大きいと考えられることから、実施例1〜実施例3の手袋の被覆層表面の算術平均粗さRaは、比較例1及び比較例2よりも小さい。このことから、被覆層に対してショットブラスト処理を行うことで、被覆層表面に適度な凹凸が形成され、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができると言える。
一方、比較例1及び比較例2の手袋では、研削処理により凹凸をつける粗面化工程を行っていないため、ひとつひとつの凸部の面積が大きく、例えば氷を掴む場合、氷から解け出した水が凸部と氷との間から排出され難いため、氷に対する把持力が不十分になったと考えられる。
さらに、詳細に見ると、ショットブラスト処理で吹き付ける粒子が酸化アルミニウム粉体(Al2O3粉体)である実施例1が、特に氷を掴み易いことが分かる。このことから、ショットブラスト処理で吹き付ける粒子は酸化アルミニウム粉体が好ましいと言える。
また、実施例2の手袋に比べて実施例1や実施例3の手袋の方がグリップ性能が高い。このことから、被覆層表面の算術平均粗さRaを0.2μm以上とすることで、さらに滑止効果を高められることが分かる。
[表面研磨加工による研削加工の評価]
被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける粗面化工程が有効であることを確認するために、研削処理として表面研磨加工を用いた場合について評価した。
被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける粗面化工程が有効であることを確認するために、研削処理として表面研磨加工を用いた場合について評価した。
<実施例4>
実施例1と同様にして準備した手袋本体の表面に、実施例1と同様にして被覆層を形成した。
実施例1と同様にして準備した手袋本体の表面に、実施例1と同様にして被覆層を形成した。
次に、上記手袋本体の掌部及び指部の掌側の被覆層に、研磨機として、バフ研磨機を用いて表面研磨加工を行った。上記バフ研磨機に装着する研磨材には、粒度#180の不織布を用いた。また、研磨時間は、120秒とした。このようにして掌部及び指部の掌側に凹凸を有する被覆層を備える実施例4の手袋を得た。
<実施例5〜8>
研磨機、研磨機に装着する研磨材及び研磨時間を表3に示すように変化させた以外は実施例4と同様にして実施例5〜8の手袋を得た。
研磨機、研磨機に装着する研磨材及び研磨時間を表3に示すように変化させた以外は実施例4と同様にして実施例5〜8の手袋を得た。
[評価]
得られた実施例4〜8の手袋の5指及び掌部分について、被覆層の表面粗さ及びグリップ性能を評価した。評価方法は、実施例1等の評価方法と同様であるので説明を省略する。結果を表3に示す。
得られた実施例4〜8の手袋の5指及び掌部分について、被覆層の表面粗さ及びグリップ性能を評価した。評価方法は、実施例1等の評価方法と同様であるので説明を省略する。結果を表3に示す。
表3の結果から、研削処理として表面研磨加工を用いた場合においても、氷を掴むことができることが分かる。実施例4〜実施例8の手袋の被覆層表面の算術平均粗さRaは、実施例1〜実施例3の手袋の被覆層表面の算術平均粗さRaと同程度である。このことから、被覆層に対して表面研磨加工を行う場合においても、被覆層表面に適度な凹凸が形成され、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができると言える。
以上のように、本発明の手袋の製造方法により製造される手袋及び本発明の手袋は、氷のように表面が解け易い固形物であっても容易に掴むことができる。
1、2 手袋
11、21 手袋本体
12、22 被覆層
22a 掌部滑止領域
22b 指部滑止領域
11、21 手袋本体
12、22 被覆層
22a 掌部滑止領域
22b 指部滑止領域
Claims (13)
- 繊維製の手袋本体の外面の少なくとも指部の掌側の一部に、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層を積層する被覆層積層工程と、
上記指部の掌側の被覆層表面に対する研削処理により凹凸をつける粗面化工程と
を備える手袋の製造方法。 - 上記粗面化工程で、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaを0.1μm以上7μm以下に制御する請求項1に記載の手袋の製造方法。
- 上記粗面化工程で、上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaを8μm以下に制御する請求項1又は請求項2に記載の手袋の製造方法。
- 上記粗面化工程の研削処理が、ショットブラスト処理を行うブラスト加工である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の手袋の製造方法。
- 上記粗面化工程で吹き付ける複数の粒子が酸化アルミニウム粉体である請求項4に記載の手袋の製造方法。
- 上記粗面化工程で吹き付ける複数の粒子の粒度が#30以上#180以下である請求項4又は請求項5に記載の手袋の製造方法。
- 上記粗面化工程の研削処理が、研磨機を用いた表面研磨加工である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の手袋の製造方法。
- 上記研磨機が、バフ研磨機、ディスクグラインダー又はベルトサンダーである請求項7に記載の手袋の製造方法。
- 上記被覆層の最外部の主成分がニトリルブタジエンゴムである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の手袋の製造方法。
- 着用者の手を覆う繊維製の手袋本体と、
上記手袋本体の外面の少なくとも指部の掌側の一部を被覆し、ゴム又は樹脂を主成分とする被覆層と
を備える手袋であって、
上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上7μm以下である手袋。 - 上記指部の掌側の被覆層表面の算術平均うねりWaが8μm以下である請求項10に記載の手袋。
- 上記指部の掌側の被覆層表面の最大高さRzが0.5μm以上15μm以下である請求項10又は請求項11に記載の手袋。
- 上記指部の掌側の被覆層表面が多段状である請求項10、請求項11又は請求項12に記載の手袋。
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JP2018099834A JP2019203224A (ja) | 2018-05-24 | 2018-05-24 | 手袋の製造方法及び手袋 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114213109A (zh) * | 2021-12-30 | 2022-03-22 | 辽宁省轻工科学研究院有限公司 | 一种高精度、高强度陶瓷手模及其制备方法 |
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2018
- 2018-05-24 JP JP2018099834A patent/JP2019203224A/ja active Pending
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