JP4269304B2 - スプリンクラ消火設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンションなどの共同住宅に設置されるスプリンクラ消火設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のマンションなどの共同住宅におけるスプリンクラ消火設備は、一般に、一端が地下等に設けた貯水槽及び送水ポンプからなる加圧送水装置に接続された主給水管を建築物の上下方向に延長して設置し、この主給水管に各階ごとに設けた横引き管を接続する。そして、この横引き管に各住戸ごとに設けた住戸配管を流水検知装置を介して接続し、住戸配管に直接又はヘッダを介して枝管を接続し、この枝管にスプリンクラヘッドを接続していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスプリンクラ消火設備においては、横引き配管、住戸配管及び枝管は、通常床スラブと天井との間の空間に、冷暖房のダクト、諸配線等と共に配管されるが、マンションは一般に床スラブと天井との間が狭いため、これら配管の配管作業や配管後の維持管理がきわめて面倒であった。
また、各住戸ごとに流水検知装置が設けられているため、コストアップになっていた。
【0004】
さらに、このようなスプリンクラ消火設備においては、主給水管とは別に建築物の上下方向に設けた排水管と、各階に設けた横引き配管との間に常閉の試験弁を設け、試験の際にこの試験弁を開放して横引き配管及びその下流側に充水された消火用水を排水して、スプリンクラヘッドが動作した場合と同様の状態にし、流水検知装置を動作させて試験を行っている。このような試験にあたっては、試験者は各階を移動して試験弁を開放したり閉止したりしなければならないので、きわめて面倒であった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、マンションなどの共同住宅の各住戸に設けた空間部を有効に利用することにより配管の施工性を向上すると共に、試験時における試験弁の開閉を容易に行うことのできるスプリンクラ消火設備を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明は、複数階からなり、一つの階にそれぞれ複数の住戸が設けられた共同住宅のスプリンクラ消火設備において、複数階ごとに防護区画を形成し、前記共同住宅の上下方向に設置された縦本管から分岐して前記各防護区画の最下層の各住戸にわたって設置された横給水管のそれぞれに、該横給水管が設置された前記防護区画内において、上下方向に位置する各階の住戸にわたる縦給水管を接続してその最下部にそれぞれ流水検知装置を設け、前記縦給水管から各住戸ごとにそれぞれ住戸配管を分岐して該住戸配管にスプリンクラヘッドを接続し、前記各住戸に、自己の住戸に設置された前記縦給水管に設けた前記流水検知装置との間で信号の授受を行う住宅情報盤を設け、前記流水検知装置が、前記スプリンクラヘッドの放水による流水信号を、該流水検知装置を有する縦給水管が設置された各住戸の住宅情報盤に送信するようにしたものである。
【0007】
(2)また、本発明は、縦給水管は複数の住戸にわたって設けられ、その最上階部分の縦給水管と排水管とを連結する常閉の試験弁を設けたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係るスプリンクラ消火設備の模式的説明図、図2は図1の下階と上階の一部拡大図である。
図において、1は複数の階からなり、一つの階に複数の住戸が設けられたマンション等の共同住宅の建築物、2はその外壁、3は上下の階を仕切る床スラブである。A,B,C,Dは上下方向の住戸単位を示すもので、マンションにおいては、一般に、同じ住戸単位は上下階とも同じ間取りで同じ床面積の場合が多い。4は各住戸を仕切る仕切り壁である(なお、住戸単位B,Cの間の仕切り壁は図示していない)。
【0010】
5a,5b,5cは各住戸単位A,B,C,Dごとに隔壁6によって仕切られ、上下階の住戸にわたって連続して設けられて、上下方向に生活用の給排水管等が設置されたパイプスペース(以下、単に5と記すことがある)で、住戸単位B,Cのパイプスペース5bは両住戸単位B,Cに共通の場合が示してある。なお、本発明においては、複数階ごとに防護区画を形成しており、図1は高層マンションの途中の階(例えば、11階から18階まで)を示したもので、以下の説明では、11階から14階までを防護区画I、15階から18階までを防護区画IIという。
【0011】
11は一端が送水ポンプ、貯水槽等からなる加圧送水設備(図示せず)に接続され、外壁2と隔壁6との間に上下方向に設置された縦(竪)本管で、上部の防護区画IIの最下層(図には15階の場合が示してある)には、ブースタポンプ12が接続されている。
13aは縦本管11から分岐して防護区画Iの最下層(11階)の住戸単位A,B,C,Dの床スラブ3と床との間に設置された横給水管、13bは縦本管11から分岐し又はブースタポンプ12に接続され、防護区画IIの最下層(15階)の住戸単位A,B,C,Dの床スラブ3と床との間に設置された横給水管である(以下の説明では、横給水管13a,13bを単に13と記すことがある)。
【0012】
14aは一端がそれぞれ防護区画Iの下層側、例えば最下層に設けられた流水検知装置15を介して横給水管13aに接続され、各住戸単位A〜Dのパイプスペース5a〜5c内に設置されて、防護区画Iの最上階(14階)まで延設された縦給水管、14bは一端がそれぞれ流水検知装置15を介して横給水管13bに接続され、各住戸単位A〜Dのパイプスペース5a〜5c内に設置されて、防護区画IIの最上階(18階)まで延設された縦給水管である。なお、図1に示すように、隣接する住戸単位(例えば、BとC)との間にパイプスペース5bを設けた場合は、この中に設置した縦給水管14a,14b(以下、単に14と記すことがある)を両住戸単位B,Cで共用してもよい。
【0013】
16は一端が常時開放された開閉弁17を介して、各階ごとに縦給水管14a,14bに接続され、各住戸に配管された住戸配管で、他端にはそれぞれヘッダ18が接続されている。20は天井7に設置されたスプリンクラヘッドで、ヘッダ18とは可撓管21等により接続されている。なお、ヘッダ18を省略し、スプリンクラヘッド20を可撓管21等を介して直接住戸配管16に接続してもよく、あるいは住戸配管16部分を省略し、縦給水管14にヘッダ18を設け、このヘッダ18とスプリンクラヘッド20とを開閉弁17を介して可撓管21で接続してもよい。22は天井7に設置した火災感知器であるが、本発明に必須のものではない。
【0014】
23は一端が排水溝等(図示せず)に開口し、各パイプスペース5a〜5c内の上下方向に設置されて、他端が最上階まで延設された排水管で、各防護区画の最上階において、常時は閉止された試験弁24を介して縦給水管14とそれぞれ接続されている。なお、この排水管23は各流水検知装置15とそれぞれ接続されているが、常時は両者は連通しておらず、必要に応じて両者間には遠隔操作弁が設けられている。
【0015】
8は各パイプスペース5a〜5c内に上下方向に設置された生活用の給水管、9は同じく排水管で、各階ごとに設けた分岐管8a,9aがそれぞれ各住戸に配管されている。
【0016】
25は各住戸ごとに設けられた住宅情報盤、26は管理人室等に設置された住棟受信機で、火災感知器22からの火災信号は住宅情報盤25を介して住棟受信機26に送られ、住棟受信機26はこの火災信号に基いて、図示しないポンプ制御盤を介して加圧送水装置の送水ポンプに駆動信号を出力する。また、各住宅情報盤25は、自己の属する防護区画の住戸単位A〜Dに設けられた流水検知装置15との間で信号の授受を行う。なお、火災信号の代りに流水検知装置15からの流水信号で、住棟受信機26から送水ポンプに駆動信号を出力するようにしてもよく、あるいは、送水ポンプの近傍に縦本管11内の圧力低下を検出する圧力空気槽を設け、その圧力低下信号により送水ポンプを駆動するようしてもよい。
【0017】
次に、本発明の作用について説明する。先ず、各住戸の天井7にはスプリンクラヘッド20のみが設置されており、火災感知器22は設置されていない場合のシステムにおける作用について説明する。なお、この場合、流水検知装置15の下流側には消火用水が充水されているものとする。
【0018】
いま、例えば11階の住戸A5で火災が発生すると、その熱気流や火炎によってスプリンクラヘッド20が動作し、放水を開始する。放水によって縦給水管14内の消火用水が流出するため、流水検知装置15がこれを検知して内蔵する弁を開放すると共に、流水信号を住宅情報盤25を介して又は直接住棟受信機26に送信する。住棟受信機26はこの流水信号に基いて送水ポンプに駆動信号を送ってこれを駆動し、貯水槽内の水を縦給水管14に圧送して、スプリンクラヘッド20から放水する。
火災が鎮火したときは開閉弁17を閉じてスプリンクラヘッド20からの放水を停止する。そして送水ポンプを停止させる。
【0019】
次に、各住戸の天井板7にスプリンクラヘッド20と火災感知器22の両者が設置されている場合のシステムの作用について説明する。なお、この場合は、流水検知装置15には火災信号によって開放する弁を備えた予作動式流水検知装置が設けられており、その下流側は乾式、湿式どちらでもよい。
いま、例えば11階の住戸A11に火災が発生すると、その熱気流や火炎によって火災感知器22が動作し、その火災信号を住宅情報盤25を介して流水検知装置15に送り、これを開放する。ついで、スプリンクラヘッド20が動作して消火用水を放水すると、縦給水管14内の水が流動する。これを検知した流水検知装置15はこれに基づく流水信号を住宅情報盤25を介して(又は直接)住棟受信機26に送信し、住棟受信機26はこの流水信号を受信したときは送水ポンプに駆動信号を送ってこれを駆動する。以下の作用は、前記の場合と同様である。
【0020】
このように、各住戸にスプリンクラヘッド20と火災感知器22を併設した場合は、流水検知装置15に予作動式流水検知装置が用いられるので、火災感知器22からの火災信号と、スプリンクラヘッド20の動作との両者により流水検知装置15が開放する。このため、例えば火災が発生していないのにスプリンクラヘッド20が外力等によって破損し、消火用水を放水しても流水検知装置15が開放されないので、スプリンクラヘッド20から大量の水が放水されることがなく、水損を防止することができる。なお、上記の説明では、各住戸にスプリンクラヘッド20と火災感知器22を併設した場合を示したが、火災感知機能を有するスプリンクラヘッドを設置すれば、火災感知器22を省略することができる。
【0021】
次に、設備の試験にあたっては、各防護区画の最上階に設けた試験弁24を開放し、縦給水管14、住戸配管16、可撓管21内に充水された消火用水を排水管23から排水して、スプリンクラヘッド20が動作した場合と同様の状態を作っている。
このような場合、従来のスプリンクラ消火設備では各階ごとに末端試験弁が設けられていたため、試験者は各階に移動して試験弁を開放しなければならなかった。しかし、本発明においては、各防護区画の最上階に試験弁24が複数設けられているため、試験にあたっては当該階に行って試験弁24を開放するだけでよく、各階の移動が不要となるので、きわめて容易かつ短時間に試験を行うことができる。
【0022】
ところで、従来のスプリンクラ消火設備を高層マンション等に設置する場合においては、消火用水の揚程が高いため、貯水槽の近傍に設けた主ポンプだけでは高い階に必要な圧力で消火用水を供給することができなかった。
【0023】
そこで、高層マンション等を上下方向に貫通して設けられた主給水管の途中に、例えば10階ごとに補助ポンプを設け、この補助ポンプにより低下した水圧を消火に必要な水圧に高めて、さらに上層の階に供給するようにしている。
そして、高層階で火災が発生し、スプリンクラヘッドが動作して開栓すると、まず、主ポンプが動作して貯水槽内の消火用水を主給水管に供給し、この消火用水が初段の補助ポンプに到達した時点で初段の補助ポンプを動作させ、ついで、この消火用水が次段の補助ポンプに到達した時点で次段の補助ポンプを動作させ、補助ポンプの空転を防止しながら開栓したスプリンクラヘッドに給水するようにしている。
本発明における縦本管11に設けたブースタポンプ12もこのような補助ポンプに相当するものである。
【0024】
上記の説明では、縦本管11を建築物1の外壁2と隔壁6の間の上下方向に設置した場合を示したが、パイプスペース5のいずれか1つの中に設置してもよい。
また、流水検知装置15の下流側に常時消火用水を充水している湿式のスプリンクラ消火設備について説明したが、本発明は流水検知装置の下流側に常時は消火用水を充水しない乾式のスプリンクラ消火設備にも実施することができる。この場合は、火災感知器からの火災信号により流水検知装置(制御弁)を開放してその下流側に消火用水を送水すると共に送水ポンプを駆動し、スプリンクラヘッドが動作して開栓したときに消火用水を放水するようにする。
【0025】
以上の説明から明らかなように、本発明は、スプリンクラ消火設備用の縦給水管14を、生活用の給排水管8,9と一緒にパイプスペース5内に収容し、天井と床スラブとの間に設置する横引き配管をなくしたので、スペースを有効利用できると共に、配管作業を簡略化することができる。
【0026】
また、火災の発生によるスプリンクラヘッドの放水により、建築物の縦方向に区画されたどの住戸単位A〜Dで放水が行われたかを検知することができる。これにより、建築物のどの方角(例えば、東向きの住戸等)で火災が発生したかわかるので、消防署に通報して消防車を呼ぶ際に便利である。
【0027】
さらに、本発明においては、流水検知装置15を各防護区画の最下層において住戸単位A〜Dごとに設けるようにしたので、従来のように各住戸ごとに流水検知装置を設ける場合に比べて、流水検知装置を大幅に減らすことができ、これによりコストを低減することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、複数階からなり、一つの階に複数の住戸が設けられた共同住宅のスプリンクラ消火設備において、上下の階の住戸にわたる縦給水管を設け、各住戸に縦給水管から分岐した住戸配管を設けてこの住戸配管にスプリンクラヘッドを接続し、
また、上記の縦給水管を生活用の給排水管が配管されたパイプスペース内に設置するようにしたので、スペースを有効利用できると共に、配管作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るスプリンクラ消火設備の模式的説明図である。
【図2】 図1の下階と上階の一部拡大図である。
【符号の説明】
1 建築物(マンション)、2 外壁、3 床スラブ、4 仕切り壁、5a〜5c パイプスペース、6 隔壁、7 天井、8 生活用の給水管、9 生活用の排水管、11 縦本管、12 ブースタポンプ、13a,13b 横給水管、14a,14b 縦給水管、15 流水検知装置、16 住戸配管、20 スプリンクラヘッド、22 火災感知器、23 排水管、24 試験弁、25 住宅情報盤、26 住棟受信機、A,B,C,D 住戸単位。

Claims (2)

  1. 複数階からなり、一つの階にそれぞれ複数の住戸が設けられた共同住宅のスプリンクラ消火設備において、
    複数階ごとに防護区画を形成し、前記共同住宅の上下方向に設置された縦本管から分岐して前記各防護区画の最下層の各住戸にわたって設置された横給水管のそれぞれに、該横給水管が設置された前記防護区画内において、上下方向に位置する各階の住戸にわたる縦給水管を接続してその最下部にそれぞれ流水検知装置を設け、
    記縦給水管から各住戸ごとにそれぞれ住戸配管を分岐して該住戸配管にスプリンクラヘッドを接続し、
    記各住戸に、自己の住戸に設置された前記縦給水管に設けた前記流水検知装置との間で信号の授受を行う住宅情報盤を設け、
    前記流水検知装置が、前記スプリンクラヘッドの放水による流水信号を、該流水検知装置を有する縦給水管が設置された各住戸の住宅情報盤に送信することを特徴とするスプリンクラ消火設備。
  2. 前記縦給水管は複数の住戸にわたって設けられ、その最上階部分の縦給水管と排水管とを連結する常閉の試験弁を設けたことを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
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