JP4269139B2 - 加工性と高周波磁気特性にすぐれた軟磁性鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は自動車の小形交流発電機(オルタネータ)やスタータ、二輪車および携帯型発電機等の小型発電機用等に適用される軟磁性鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車内における快適性や利便性の追求は、種々の可動部分の電動化やカーエレクトロニクスの適用を拡大することになり、車両内での電気エネルギーの供給量増加が必至となっている。車両の電気エネルギーの供給は、車両内に搭載された交流発電機(オルターネータ)によるが、この発電機は、限られた空間内に設置する必要があるので大きくはできず、車両重量軽減のため可能な限り軽量化する必要があり、その上で、増大する消費電力に対して発電出力を増加しなければならない。さらに発電機はエンジンの回転により駆動され、その出力の増加は車の燃費の低下をもたらす結果となるので、できるだけ発電効率を高めねばならない。このような自動車の小形交流発電機に対する要求は、自動二輪車や携帯型発電機などに使用される小形発電機においても同様である。
【0003】
自動車のオルタネータのステータには「巻きコア」と呼ばれるコの字形の歯を持つ櫛状の狭幅鋼帯を、歯部を内側にしてソレノイド状に巻いて積層するものが多く採用される。この場合、従来は鋼板の厚さは0.8〜1.0mmで、コストや入手の容易さ、加工性あるいは所要性能などの点から冷延鋼板が適用されてきた。
【0004】
しかしながら、発電機を高出力化し、高効率化するためには、冷延鋼板の適用は必ずしも十分ではなく、とくに磁気特性の保証はないので、安定して高出力、高効率の性能が確保できないおそれがある。
【0005】
一方、このような電気機器用の鉄心に対し、磁気的性能を規定した無方向性電磁鋼板規格(JIS-C−2552)がある。ただしこの場合、打ち抜きのような剪断加工はおこなわれても、曲げ加工については全く配慮されてなく、また、磁気特性も、完全に歪みをなくした焼鈍状態で評価される。
【0006】
その上、オルタネータの場合、エンジンの回転がそのまま発電の動力となるため、取り扱われる電流は、上記規格のような商用周波数の交流ではなく、アイドリング時の100Hz程度から高速走行時には数千Hzに至る高周波数の交流である。
【0007】
このような自動車用オルタネータの性能向上のための、巻きコア鉄心に適用される鋼板について、たとえば特開平9-256119号公報の発明がある。この公報記載の発明の鋼板は、化学組成が質量%にてC:0.005%以下、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.01〜0.50%、sol.Al:0.15〜0.50%で、0.8%以上のスキンパス圧延を施した降伏点230N/mm2以下のものであるが、磁気特性は50Hzの商用周波数の場合しか示されてなく、実際のオルタネータに適用される高周波の場合における性能は明らかではない。
【0008】
また、特開2000-282190号公報には、化学組成が質量%にてSi:0.05〜1.5%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.2%以下、sol.Al:0.005%以下または0.1〜1.0%で[Si+sol.Al]:0.05%以上とし、さらに要すればSb、Snを添加した降伏点が160〜250MPaのオルタネータの鉄心用鋼板の発明が開示されている。この場合、磁束密度0.5Tにおける周波数2KHzの高周波での鉄損にて0.5mm厚の鋼板の磁気特性を評価しているが、磁束密度については必ずしも明らかではない。鉄損の低減はオルターネータの効率向上に有効であるが、出力の向上に対しては磁束密度を高くする必要がある。
【0009】
このように、オルタネータの性能向上のためには、鉄心用の鋼板として高周波域における鉄損、磁束密度などの磁気特性がすぐれていることの他、曲げ加工性、歯部加工のための剪断加工性等が要求されるが、これらの要望に対し、十分満足できる鋼板が得られているとは言い難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、自動車のオルタネータ用などの巻きコアの製造に適した加工性を有し、しかも高効率かつ高出力とすることのできるすぐれた磁気特性、すなわち高周波における鉄損が低く、磁束密度の高い特性を有する軟磁性鋼板およびその製造方法の提供にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、自動車用オルタネータのステータとする巻きコアに用いる軟磁性鋼板について、その性能を向上させるべく種々検討をおこなった。鋼板は巻きコアに積層成形するために加工性がよくなければならない。そして、商用周波数より高い100Hzから数千Hzの高周波域で使用されるので、損失の少ない高効率のオルタネータのためには高周波域での鉄損はできるだけ低く、かつ高出力を得るためには、磁束密度が高いという磁気特性を有している必要がある。
【0012】
対象となる巻きコアの成形は、板面内での平面曲げ加工であり、中立点から周辺の最大20%近くまで、変形の大きさが連続的に変化している。したがって降伏点伸びのような不均一変形が生じると積層後の形状不良を来すので、降伏点伸びを消すために調質圧延が施される。この曲げ加工の後の積層形状が良好なものとなるためには、座屈やスプリングバックを生じにくい範囲の適度の降伏強度にする必要がある。降伏強度に対しては当然のことながら、鋼の化学組成や調質圧延が大きく影響する。
【0013】
さらに巻きコアに成形する前は、コの字形の歯を持つ櫛状の狭幅鋼帯であり、この歯がそのままステータの歯部になるが、ロータに近接するステータの歯の成形精度は、オルタネータの性能に大きく影響するので、鋼板の特性としては、歯部を形成させるときの剪断加工性にもすぐれたものでなければならない。
【0014】
一方、高周波域での鉄損低減には、Si、Al、Mnなどの電気抵抗を増す合金元素を増す必要があるが、これらの元素の増加は、磁束密度を低下させるばかりでなく、鋼を硬くし加工性を劣化させる。
【0015】
上述のような観点から、組成と製造条件との組み合わせと得られる鋼板の特性とについて種々検討の結果、大略次のような知見を得ることができた。この場合、磁気特性はJIS-C-2550に基づく50Hzにおける鉄損W15/50と磁束密度B50を測定し、高周波特性については1000Hzにおける鉄損W10/1000および磁束密度B50を測定してその性能を判断した。
【0016】
実際のオルタネータの鉄心は、鋼板にさらに曲げ加工を加えた加工歪みが加わった状態で使用される。これに関しては、降伏点伸びを消去するため0.5〜1.0%の調質圧延をおこなった状態にて測定した磁気特性の、W15/50およびW10/1000は低いほど損失が小さく高効率のオルタネータが得られ、B50は高いほど出力の大きいオルタネータが得られることが確認された。すなわち、調質圧延後に測定した磁気特性にてオルタネータとしたときの適否が判断できる。
【0017】
まず、高周波域での鉄損改善に対し、鋼組成にて合金元素を増すことには磁束密度の低下や加工性の低下から限界があり、板厚を低減せざるを得ないと考えられた。従来、巻きコアには厚さ0.8〜1.0mmの冷延鋼板が使用されていたが、巻きコア性能向上のため0.5mmが提案されている。これに対しさらに薄く0.5mm未満とするのである。薄くするほど高周波域の鉄損は低減できるが、板厚を薄くすることにより生産性は低下し、製造上のトラブルが増大してくる。したがって極度に薄くすることはできない。
【0018】
この板厚を薄くすることを前提に、鋼の組成と加工性および磁気特性との関係を検討していくと、とくにSiの影響を十分配慮しなければならないことが明らかになってきた。Siは、電気抵抗を増し変態温度を変え高温焼鈍を可能にすることから、電磁鋼板には好んで添加される元素である。しかしながら、巻きコアの場合、鉄損低下の効果はあるが、加工性を悪くし磁束密度を低下させるなど好ましくない影響が大きく、できるだけ低くする方がよい。
【0019】
ただし焼鈍方法が連続焼鈍ではなく、箱焼鈍のような相対的に低い温度で長時間保持されるとき、このようなSiの好ましくない影響が緩和される。この理由はよくわからないが、微細析出物の形態変化が影響しているのではないかと思われる。
【0020】
Siを低下させると、電気抵抗の減少や、極低炭素であるための強度の低下が懸念されたが、電気抵抗に対してはAlの含有量を増すこと、強度の低下に対してはPを添加することにより対処できることがわかった。極低炭素化しSiを低減すると、健全な鋳塊を得るための脱酸元素として、Alの添加が必須となる。しかし脱酸を十分おこなうことだけが目的の含有量では、AlN析出物が微細に分散し磁気特性を悪くするので、電気抵抗の増加も合わせ、より多く添加してAlN析出物を粗大化させ、これを無害化するのがよいようであった。Pは少量の含有で強度上昇の効果があるが、Pによる強度の上昇は、鋼板の剪断性を向上させ、巻きコアの歯部の寸法精度の向上にも役立っていると考えられる。
【0021】
鋼板の製造工程として最終板厚に冷間圧延後焼鈍し、調質圧延しなければならない。この焼鈍は冷延鋼板や電磁鋼板の連続焼鈍設備を用いればよい。しかし電磁鋼板の連続焼鈍設備には、通常、調質圧延機が設置されていないため、その場合は別途調質圧延をおこなう必要がある。鋼板は調質圧延をおこなうので、箱焼鈍法も利用できる。
【0022】
箱焼鈍を適用すると、鉄損、磁束密度とも連続焼鈍の場合よりすぐれたものになる傾向がある。これは、鋼中の析出物の形態が変化し無害化されるためと推測される。しかし、一般に用いられる窒素を主とし水素を混ぜた雰囲気による焼鈍では、鋼板のAl含有量が高いため、焼鈍中に窒素を吸収して鋼板中に微細なAlN析出物が多量に発生し、磁気特性を著しく劣化させる。これに対し炉内雰囲気をほとんど水素に置換して焼鈍できる、いわゆる100%水素炉を用いて箱焼鈍をおこなえば、より磁気特性にすぐれた巻きコア用軟磁性鋼板とすることができる。
【0023】
以上のような検討結果に基づき、さらに化学組成や製造条件の限界を確認して、発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【0024】
(1)質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.05%未満、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなり、板厚が0.1mm以上0.5mm未満、降伏点が150〜250MPaであることを特徴とする軟磁性鋼板。
【0025】
(2)質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.05%未満、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなるスラブを、熱間圧延および冷間圧延をおこなって板厚を0.1mm以上0.5mm未満とし、焼鈍後、0.1〜5%の調質圧延を施すことを特徴とする軟磁性鋼板の製造方法。
【0026】
(3)質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.15%以下、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなるスラブを、熱間圧延および冷間圧延して板厚を0.1mm以上0.5mm未満とし、100%水素雰囲気の箱焼鈍炉にて600〜830℃、0.5〜10時間の焼鈍をおこなった後、0.1〜5%の調質圧延を施すことを特徴とする軟磁性鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の鋼板および製造方法において、各化学成分の含有範囲を規制した理由は以下のとおりである。なお含有比率はいずれも質量%である。
【0028】
Cの含有量は0.01%以下とする。Cの含有は鋼の磁気特性を大きく劣化させるので、少なければ少ないほどよい。その含有量が大きな影響を及ぼさない限界として0.01%以下であり、好ましくは0.005%以下にする。
【0029】
Siは0.05%未満、ただし箱焼鈍法の場合は0.15%以下とする。Siは、鋼板の加工性を悪くし磁束密度を低下させる傾向があるので、少ないほどよい。顕著な影響が現れない範囲として0.05未満とする。ただし、焼鈍に水素100%の雰囲気とした箱焼鈍法を適用する場合、このような影響は緩和されるので、0.15%まで許容できる。
【0030】
Mnは0.05〜0.5%とする。Mnは熱間圧延時の疵発生抑止のため0.05%以上含有させる。また、鉄損低減の効果もある。しかし多くなると強度の上昇、加工性の低下、磁束密度の低下など悪影響が現れるので、0.5%までとする。より好ましいのは0.05〜0.3%である。
【0031】
Pは0.02〜0.15%とする。Pは少量の含有で鋼板の強度を向上させ、剪断性を改善するため、Si含有量を制限したことの代替効果もあって、0.02%以上含有させる。しかし多く含有させすぎると、降伏点が高くなりすぎ加工性を悪くするので0.15%までとする。好ましいのは0.03〜0.10%の範囲である。
【0032】
Sは0.01%以下とする。Sは磁気特性を大きく劣化させるので、少なければ少ないほどよい。顕著な影響が現れない限界として0.01%以下とするが、望ましいのは0.005%以下である。
【0033】
sol.Al(酸可溶Al)は0.1〜0.4%とする。Alは脱酸作用があり、強度を大幅に増すことなく電気抵抗を高くでき、鉄損の低下に有効である。このため本発明ではAl含有の効果を積極的に利用する。その量が少ない場合、生じたAlN析出物が微細に分散し、磁気特性を悪くするので0.1%以上の含有が必要である。しかし多くしすぎると、降伏点が上昇し加工性も悪くなってくるので0.4%までとする。
【0034】
Nは0.005%以下とする。NはAlと結合して微細なAlN析出物となり、鋼板の磁気特性を悪くするので、少なければ少ないほどよい。sol.Alが0.1%以上含有されている場合、Nの含有量は多すぎなければ析出物は粗大化して無害な状態になるので、0.005%以下とする。
【0035】
鋼板の板厚を0.1mm以上0.5mm未満とする。軟磁性鋼板の板厚は薄いほど高周波域での鉄損を低下させることができる。
【0036】
C:0.001%、Si:0.03%、Mn:0.2%、P:0.02、S:0.001%、sol.Al:0.3%、N:0.001%の鋼(後出表1記号Bの鋼)を用い、冷間圧延後にて板厚を0.13〜1.0mmとし、水素100%雰囲気の箱焼鈍で720℃、5時間の焼鈍をおこない、0.5%の調質圧延を施した鋼板を作製し、鉄損W10/1000を測定した。これらの鋼板の板厚と鉄損値測定結果との関係を図1に示す。この図から明らかなように、同じ鋼組成でも、板厚が薄いほど高周波での鉄損は低くなるが、とくに0.5mm未満とすることにより、大きく鉄損を低下させることができる。
【0037】
本発明の鋼板では、もう一つの重要な磁気特性である磁束密度向上のため、Siなどの成分含有量を低くするが、それによる鉄損増加を、このように板厚が0.5mm未満と薄くすることにより補う。しかし、板厚を薄くすることは、板の圧延など生産性を低下させコスト上昇を来すだけでなく、巻きコア製造時にも工数が増し、巻きコア成形の平面曲げが困難となり、その上積層時の占積率低下を来すので、0.1mmまでとする。望ましいのは0.30〜0.45mmである。
【0038】
鋼板の降伏点は150〜250MPaとする。降伏点の範囲をこのように限定するのは、巻きコアに成形するときの平面曲げ加工において、降伏点が低すぎると座屈を生じやすく、高すぎるとスプリングバック量が増し、いずれの場合も積層時の巻きコア形状が悪くなるからである。
【0039】
鋼板の製造は、上記成分以外の組成は不純物およびFeである鋼のスラブを用い、通常の冷延鋼板または無方向性電磁鋼板の製造と同様な条件にて、熱間圧延および冷間圧延をおこなって所要板厚に仕上げる。
【0040】
たとえば、スラブ加熱温度を1000〜1150℃として熱間圧延して、1.8〜3.2mm厚の熱延鋼板とし、脱スケール後冷間圧延して所要板厚に仕上げる。この場合、熱延鋼板に対し箱焼鈍法または連続焼鈍法にて650〜900℃の焼鈍を冷間圧延前に施せば、磁気特性のさらなる向上が期待できる。冷間圧延は一度におこなってもよいし、圧延途中で中間焼鈍をおこない二度に分けておこなってもよい。
【0041】
冷間圧延後の焼鈍は、連続焼鈍法の場合は加熱温度700〜950℃の範囲でおこない、箱焼鈍法の場合は600〜830℃の範囲でおこなう。連続焼鈍法では加熱時間が数秒から数分までと短いので、700℃未満では再結晶が完了せず磁気特性に有害な歪みが多く残るおそれがある。また950℃を超える温度では結晶粒が粗大化し、曲げ加工で割れの発生が懸念される。
【0042】
箱焼鈍の場合、焼鈍雰囲気は水素100%とする必要がある。現実には多少の不純物ガスの混入は避けられないが、可能な限り水素のみとした雰囲気(95%以上)とする。これは、加熱時間が長いので、たとえば窒素ガスが存在すると吸窒を生じ、COやメタンなどCを含むガスが混入すると浸炭が生じて、いずれも磁気特性の劣化を来すからである。コイル全体の温度上昇を考えれば均熱は30分以上必要であるが、長すぎても特性改善効果は得られないので、20時間までである。この温度を600〜830℃とするのは600℃未満では再結晶が完了しないおそれがあり、830℃を超える温度では、焼き付きを発生し健全な鋼板が得られなくなるからである。
【0043】
焼鈍後の鋼板は、降伏点伸びを消し、所要降伏点とするために0.1〜5%の調質圧延を施す。降伏点伸びは、圧延率(または圧延による伸び率)が小さい場合は消去できないので、焼鈍を箱焼鈍法とした場合は伸び率0.1%以上の調質圧延をおこなう。焼鈍が連続焼鈍法の場合は、降伏点伸びが消滅しにくいので伸び率は0.5%以上とするのが好ましい。調質圧延の伸び率は、大きくすれば降伏点が高くなるので、目標の150〜250MPaとするために、伸び率を適宜調整するとよい。しかし、圧延率を高くしすぎると降伏点が高くなりすぎるばかりでなく、曲げ加工性も劣化してくるので、いずれの焼鈍法による鋼板においても、最大5%までとする。
【0044】
【実施例】
表1に示した化学組成のスラブを用い、加熱温度を1080℃として熱間圧延をおこなって2.0mmの熱延鋼板とし、酸洗後冷間圧延して、0.15〜1.0mmの鋼板とした。冷間圧延後の鋼板は、連続焼鈍または水素100%雰囲気の箱焼鈍をおこなった後、0.25〜8%の調質圧延を施した。各鋼板の板厚、焼鈍方法、および調質圧延率を表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
得られた鋼板から、圧延方向に平行にJIS5号引張試験片を採取し、降伏点を測定した。磁気特性はJIS-C-2550に規定の磁気特性測定方法に準じて25cmエプスタイン枠を用い、商用周波数における鉄損W15/50を測定した。高周波域については、高周波用エプスタイン枠(補償コイルなし)にて1000Hz、1.0Tにおける鉄損W10/1000および1000Hzでの磁束密度B50を測定した。これらの結果を表2に合わせて示す。
【0048】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明にて定める範囲の組成とし、焼鈍条件および調質圧延の所定の範囲内とし、板厚を0.5mm未満とした試験番号1〜3、5〜8、 11 および 15の鋼板は、いずれも降伏点が161〜245MPaの範囲にあり、降伏点伸びが0.2%以下の実質0%で、しかも高周波域における鉄損W 10/1000が225W/kg以下と低く、かつ磁束密度が1.69以上のすぐれた磁気特性を示している。
【0049】
【発明の効果】
本発明の鋼板は、とくに自動車のオルタネータ用などの巻きコアの製造に適した加工性を有し、しかもオルタネータを高効率かつ高出力とすることのできる、すぐれた磁気特性、すなわち高周波における鉄損が低く、磁束密度の高い特性を有する軟磁性鋼板である。この鋼板を用いて自動車のオルタネータを作製することにより、同じ重量のオルタネータでも発電の損失が少なく、かつ出力の増大が図れるので自動車の燃費改善に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の板厚と、高周波域での鉄損W10/1000の測定結果との関係を示す図である。
Claims (3)
- 質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.05%未満、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなり、板厚が0.1mm以上0.5mm未満、降伏点が150〜250MPaであることを特徴とする軟磁性鋼板。
- 質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.05%未満、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなるスラブを、熱間圧延および冷間圧延して板厚を0.1mm以上0.5mm未満とし、焼鈍後、0.1〜5%の調質圧延を施すことを特徴とする軟磁性鋼板の製造方法。
- 質量%にて、C:0.01%以下、Si:0.15%以下、Mn:0.05〜0.5%、P:0.02〜0.15%、S:0.01%以下、sol.Al:0.1〜0.4%、N:0.005%以下で、残部はFeおよび不純物からなるスラブを、熱間圧延および冷間圧延して板厚を0.1mm以上0.5mm未満とし、100%水素雰囲気の箱焼鈍炉にて600〜830℃、0.5〜10時間の焼鈍をおこなった後、0.1〜5%の調質圧延を施すことを特徴とする軟磁性鋼板の製造方法。
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