JP4268305B2 - 光ディスク基板の成形方法および光ディスク基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録用光ディスクの光ディスク基板、特に、反射層や記録層との接着強度に優れ、読み取りエラーの少ない光ディスクを得ることができる光ディスク基板の成形方法及びこの成形方法で得られる光ディスク基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
光情報記録用光ディスクは、高密度で大容量であることから注目され、これまでにも様々な用途で使用されている。例えば、再生専用の光ディスクとしてはCDやCD−ROMがあり、音楽分野、コンピュータ分野、ゲーム分野などに広く使用されている。また、一回だけ記録可能な光ディスクであるCD−Rは、文書ファイリングシステム、データファイリングシステムなど、特にデータのセキュリティが重要視される分野で利用されている。さらに、記録された情報の消去と再記録ができる書き換え可能型光ディスクでは、光磁気型光ディスク(MO)や相変化型光ディスク(PCR)が実用化されており、光ディスクの用途拡大に貢献するものとして期待されている。
【0003】
現在実用化されている光ディスクでは、透明な光ディスク基板の裏側から半導体レーザ光を照射し、反射膜上あるいは記録膜上にレーザ光を絞り込んで、情報の再生、記録または消去が行われている。この光ディスクは、サブミクロンオーダの凹凸の情報ピットや、グルーブやランドと言われるトラッキングのための案内溝が表側に形成された薄く透明な光ディスク基板の表面上に反射膜や記録膜が設けられたものとなっている。更に、これら反射膜や記録膜は非常に弱いため、さらにその表面を紫外線硬化樹脂等で被膜して保護してたり、DVD(ディジタル・ビデオ・ディスク)では2枚の薄いディスクを反射膜や記録膜側で張り合わせて1枚のディスクとして使用している。
【0004】
ところで、最近では車載型のCDプレーヤーやカーナビゲーションシステム(カーナビ)でCDやDVDが急速に普及してきている。これら車載型のCDプレーヤーやカーナビは搭載スペースの関係で、非常にコンパクトにする必要があり、これらの機器から発生する熱がこもりやすく内部は高温になることが多い。さらに、夏の昼間に窓ガラスを閉め切った車内では70〜80℃以上の高温になることは珍しくない上に、夜間の車内は室温まで下がることとなり、この温度サイクルが繰り返される。
【0005】
また、このようなCDプレーヤーやカーナビで使用されるCDやDVDは、例えば、CDプレーヤーではCDチェンジャーの普及で、また、カーナビは機器の特性上、機器の中に入れられたままになることが多く、これらCDやDVDは、挿入している機器からの発熱や、車内の温度変化に毎日曝されることになり、光ディスク基板と反射膜や記録膜との間の熱収縮率の違いによって、光ディスク基板と反射膜や記録膜との間にはストレスが生じる。
【0006】
そこで、光ディスク基板と反射膜や記録膜との接着力を強固にする必要があるが、CDやDVDは、レーザー光線による信号の読み書きが必要なため、ピット列情報や案内溝と反射膜や記録膜との間に隙間があれば、レーザー光線が散乱したり、反射しなかったりするため、光ディスク基板と反射膜や記録膜との接着に接着剤を使用することは出来ず、光ディスクに直接反射膜や記録膜を形成する必要がある。そのため、光ディスク基板に直接反射膜や記録膜を蒸着する方法が採用されている。
【0007】
しかし、上記のような車載型の機器での使用においては、長期間にわたって高温と低温を繰り返される状態におかれ、光ディスク基板と反射膜や記録膜との接着力が弱いため、光ディスク基板と反射膜や記録膜とがはがれ、読み取りエラーが発生する等のトラブルが発生することがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、反射膜や記録膜との接着力に優れ、データの読み取りエラーが少なく、しかも、温度変化や湿度変化等の環境変化に強い光ディスクを得ることができる光ディスク基板の成形方法及びこの成形方法で得られる光ディスク基板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的のために、本発明者らは、検討の結果、車載型機器で使用されるCDやDVDの読み取りエラーの発生は、CDやDVDが長期間にわたって高温と低温を繰り返される状態におかれ、光ディスク基板と反射膜や記録膜とがはがれることによって発生することをつきとめた。
【0010】
また一方で、二酸化炭素を吸収した熱可塑性樹脂のガラス転移温度が低下するという挙動に着目して、光ディスク基板の成形への導入について鋭意研究を重ねてきた。その結果、金型キャビティに二酸化炭素を導入した後、射出成形することにより、微細な情報ピットや案内溝の転写性が著しく向上することを見い出して既に公表した(特開平10−320848号公報)。
【0011】
その後、更に高収率に光ディスク基板を得る為に、鋭意研究を重ねてきた結果、フェノール性末端基の比率が全末端数の15%以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、また、離型剤の量を抑え、かつ、金型キャビティに二酸化炭素を導入した後、射出成形することを組み合わせにることにより、反射膜や記録膜との接着力に優れる光ディスク基板が得られることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、光ディスク用転写情報をもつスタンパーを備えた金型キャビティ内に、二酸化炭素を導入し、ついでフェノール性末端基の比率が全末端数の15%以上である重量平均分子量(Mw)10,000〜18,000の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び500ppm以下の離型剤を充填して、スタンパーの光ディスク用転写情報を転写することを特徴とする光ディスク基板の成形方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂が、二酸化炭素が該樹脂の固化温度下で当該樹脂に0.5重量%以上溶解する圧力で金型キャビティ内に存在する状態で、金型キャビティ内へ充填されること、
芳香族ポリカーボネート樹脂が、金型キャビティへの充填前に予め二酸化炭素が0.1〜3重量%溶解されたものであること、
をその好ましい態様として含むものである。
【0014】
さらに本発明は、上記いずれかの方法で成形された光ディスク基板を提供するものでもある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、光ディスク基板の射出成形にあたり、原料樹脂にフェノール性末端基の比率が全末端数の15%以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を使用して、かつ、金型キャビティ内の空気を特定のガスで置換しておく点の組み合わせに着目したものである。
【0017】
すなわち、フェノール性末端基の比率が全末端数の15%以上である芳香族ポリカーボネート樹脂を使用して射出成形する場合、金型キャビティ内に特定のガスとして二酸化炭素を封入しておくことで、得られた光ディスク基板と反射膜や記録膜との接着強度が優れる。
【0018】
さらに、溶融樹脂が充填されて二酸化炭素が高温下で圧縮されても、樹脂への溶解性が高いために該樹脂中へ溶け込む。従って、特にスタンパーの光ディスク用転写情報を構成する微細な凹凸部への樹脂充填を阻害することが無く、酸化劣化を引き起こすこともない。また、二酸化炭素は、金型キャビティへ充填された溶融樹脂の表面付近で当該樹脂中へ溶解することで、樹脂の可塑剤として働き、溶融した樹脂の固化温度(ガラス転移温度)を下げ、スタンパー表面での樹脂の急激な粘度上昇を押さえるため、スタンパー表面の光ディスク用転写情報を構成する凸凹形状の細部にまで樹脂が流動して密着し、転写性が向上する。
【0019】
ここで、スタンパーとは、光ディスクに、光ディスク用転写情報を転写させるフィルム状の型であり、スタンパーを金型に取り付けることにより、例えば、音楽CDであれば、異なった曲のCDを製造することが可能である。尚、光ディスク用転写情報とは、転写されることによってサブミクロンオーダの凹凸のピット列情報や、グルーブやランドと言われるトラッキングの為の案内溝を形成するための凹凸情報をいう。
【0020】
また、二酸化炭素の可塑化作用によって、溶解した樹脂の固化温度が下がることにより、金型内部での樹脂の流動性が良くなり、低い射出圧力での成形が可能となる。このため、成形される光ディスク基板の残留歪みを低減させることができる。
【0021】
本発明で金型キャビティに封入されるガスの種類は、溶融樹脂に対する溶解度が大きく、また使用する樹脂を劣化させないこと、金型や成形する環境に対し危険性がないこと、安価であることなどの制約から、二酸化炭素が使用される。二酸化炭素は、必要な可塑化作用が得やすくなるよう、使用する樹脂の固化温度下で、平衡状態で0.5重量%以上溶ける圧力で金型キャビティに封入されることが好ましい。使用する二酸化炭素の純度は特に限定されないが、95%以上であることが好まし。また、樹脂に対する溶解度が大きい二酸化炭素以外のガスとの混合物であってもよい。
【0022】
金型キャビティに封入する二酸化炭素の圧力は、1ショット毎に使用する二酸化炭素の量を最小限に押さえ、金型のシールやガス供給装置の構造を簡単にするために低い方が好ましく、10MPa以下が実用的である。10MPaを超えると金型を開こうとする力が無視できなくなったり、金型のシールが難しくなりやすい。好ましくは0.1MPa以上10MPa以下、より好ましくは1MPa以上10MPa以下である。
【0023】
本発明において、樹脂の充填に先立って金型キャビティに封入される二酸化炭素は、溶融樹脂表面に溶解しても、該樹脂が固化してしまえば発泡現象を引き起こすことはない。また、金型キャビティ中で樹脂表面に溶け込んだ二酸化炭素は、光ディスク基板を金型から取り出した後、徐々に大気中に放散すると考えられるため危険性はない。成形時に必要とされるガス圧の条件は、樹脂、金型温度等から決まる。金型温度を高く設定すれば低い二酸化炭素圧力で十分な転写性向上効果が得られる。
【0024】
また、通常の成形では、樹脂の充填速度により、スタンパーの光ディスク用転写情報の転写状態は大きく変わる。しかし、本発明の方法では、金型キャビティ中における樹脂表面の固化が二酸化炭素の可塑化作用によって遅延されるため、充填速度の影響は少なく、成形条件範囲が広がる。
【0025】
本発明では、充填(射出)前の樹脂に予め二酸化炭素を可塑剤として溶解させておき、溶融粘度を低下させることで、金型キャビティへの充填を容易にすることができる。
【0026】
充填前の樹脂に予め二酸化炭素を溶解させておく場合、その溶解量は0.1〜3重量%、特に0.2〜2重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では十分な流動性の向上が得にくい。また、二酸化炭素の溶解量をむやみに増しても、二酸化炭素の溶解量の増加に対する樹脂の流動性向上量が少なくなることや、二酸化炭素の気化により樹脂が発泡しやすくなる。これを防止するために、カウンタプレッシャ成形法により成形品表面の発泡模様発生を防止するとしても、必要な金型キャビティ内のガス圧力が著しく高くなる。
【0027】
予め樹脂に0.1〜3重量%の二酸化炭素を溶解させる方法としては次の2つの方法が好ましい。
【0028】
1つは、粒状や粉状の樹脂を二酸化炭素雰囲気中に置き、二酸化炭素を吸収させてから成形機に供給する方法で、二酸化炭素雰囲気の圧力や温度、この雰囲気下に樹脂を置く時間により吸収量が決まる。この方法では、可塑化時に樹脂中の二酸化炭素の一部が揮散するため、溶融樹脂中の二酸化炭素量は予め吸収させた量よりも少なくなる。このため、成形機のホッパなど、樹脂の供給経路も二酸化炭素雰囲気にすることが望ましい。
【0029】
もう1つの方法は、成形機のシリンダー内で樹脂を可塑化するとき、または可塑化した樹脂に二酸化炭素を溶融させる方法で、成形機のホッパ付近を二酸化炭素雰囲気にしたり、スクリュー先端やシリンダーから可塑化樹脂に二酸化炭素を注入することで行うことができる。樹脂中に二酸化炭素を均一に分散させるため、その後、スタティックミキサなどを通すことで樹脂中に二酸化炭素を分散させることもできる。
【0030】
樹脂中に予め溶解された二酸化炭素は、成形後に得られた光ディスク基板を大気中に放置すれば徐々に大気中に放散する。この放散により光ディスク基板に気泡を生じることはなく、放散後の光ディスク基板の性能は本来の樹脂が有するものと変わらない。
【0031】
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、2価フェノールとホスゲンまたは、炭酸ジエステルの反応により製造される。
【0032】
2価フェノールとしては、ビスフェノール類が好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと記す)が好ましい。また、ビスフェノールAの一部または、全部を他の2価フェノール化合物で置換してもよい。ビスフェノールA以外の2価フェノール化合物は、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどの化合物である。これらの2価フェノールのホモポリマー、または、2種以上のコポリマーあるいは、これらのブレンド品であってもよい。
【0033】
具体的には、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0034】
【化1】
【0035】
(式中、Arは、二価のC5〜C200芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレンやピリジレンであり、それらは非置換又は置換されていてもよく、あるいはまた、下記式で表されるものが挙げられる。)
【0036】
【化2】
【0037】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリーレン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、それらは非置換又は置換されていてもよく、Yは下記式で表されるアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0038】
【化3】
【0039】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、C1〜C6低級アルキル基、C5〜C10シクロアルキル基、C6〜C30アリール基、C7〜C31アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、C1〜C10アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に水素原子、またはC1〜C6低級アルキル基、C6〜C30アリール基であって、場合によりハロゲン原子、C1〜C10アルコキシ基で置換されていてもよく、Xは炭素原子を表す。)
【0040】
また、下記式で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有していても良い。
【0041】
【化4】
【0042】
(式中、Ar1、Ar2は前記と同じ。Zは単結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は前記と同じ)等の二価の基である。)
【0043】
これら二価の芳香族残基の具体例としては、下記式で表されるもの等が挙げられる。
【0044】
【化5】
【0045】
【化6】
【0046】
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C5〜C10シクロアルキル基またはC6〜C30アリール基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R8はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
【0047】
なかでも、下記式で表される二価の芳香族残基が好ましい一例である。
【0048】
【化7】
【0049】
また、上記の式で表されるものをArとする繰り返しユニットを85モル%以上(ポリカーボネート中の全モノマーユニットを基準として)含むポリカーボネートが特に好ましい。
【0050】
また、本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、三価以上のC6〜C300芳香族残基を共重合成分として含有していても良い。
【0051】
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール性末端基(ヒドロキシル基)、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、下記式で表される。
【0052】
【化8】
【0053】
(式中、Ar3は一価のC6〜C30芳香族残基であり、芳香環は置換されていても良い。)
【0054】
アリールカーボネート末端基の具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【0055】
【化9】
【0056】
アルキルカーボネート末端基は下記式で表される。
【0057】
【化10】
【0058】
(式中、R9は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
【0059】
アルキルカーボネート末端基の具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【0060】
【化11】
【0061】
これらの末端基の中で、フェノール性末端基(ヒドロキシル基)、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート基等が好ましく用いられる。
【0062】
本発明において、フェノール性末端と他の末端との比率は、1種類以上のポリカーボネートにおいて、フェノール性末端基の比率が全末端基数の15%以上である必要があり、15〜80%の範囲あることが好ましい。フェノール性末端基の比率が全末端基数の15%より低いと、密着強度が低下する。また、80%を越えるものは、製造が困難である。
【0063】
フェノール性末端基の比率の測定方法としては、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法が知られている。本発明においては、NMR法で求めた。
【0064】
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は10,000〜18,000の範囲にある。Mwが10,000より小さいと強度が不足し、Mwが18,000より大きいと成形が行いにくくなる。
【0065】
本発明において、ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定はGPCを用いて行い、測定条件は下記の通りである。即ち、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの較正曲線から下式を用いる計算によって得られた換算分子量較正曲線を用いて求めた。
【0066】
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
【0067】
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)等を反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法又は溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033号公報、特開平1−271426号公報、特開平3−68627号公報等)等の方法により製造されたものが用いられる。
【0068】
また、光ディスク基板に広く使用されている芳香族ポリカーボネート樹脂は、二酸化炭素の溶解度が高いだけでなく、熱分解した場合に二酸化炭素を生ずることから、溶融状態において二酸化炭素が含まれると分解反応の平衡がずれ、分解反応速度が遅くなる利点もあり、本発明に最適である。
【0069】
本発明に使用する離型剤は、一般に知られているものであれば問題なく使用できる。離型剤の配合量が500ppmを越えると、光ディスク基板と記録層や反射層との密着強度が低下し、記録層や反射層のはがれの原因となり、好ましくない。
【0070】
【実施例】
以下に実施例、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例における測定項目は以下の通りである。
【0071】
(1)平均ブロックエラーレート(BLER)
CD−CATS(Audio Development製)を使用して、光ディスクのブロックエラーレート(BLER)を測定し、全てのブロックのBLERの平均を平均BLERとして示す。BLERとは、1ブロックあたりのエラー率を示し、例えばCD−ROMの1ブロックとは2352バイトである。値が小さいほどエラーが少ないことを表す。
【0072】
(2)密着性(クロスカットテスト)
光ディスクの保護層の上から、2mm間隔で格子状にカッターナイフで切れ込みを入れ、その上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼り、そのテープをはがして光ディスク基板上に残った格子の数を%で示す。この測定を5回行い、その平均値を示す。値が大きいほど、密着強度が強いことを表す。
【0073】
(3)熱ショック試験
光ディスクを100℃中に1時間置き、ついで23℃に1時間置くことを100回繰り返した後、平均ブロックエラーレート(BLER)と密着性を測定した。
【0074】
(4)湿熱試験
光ディスクを80℃、90%RHの条件で、168時間置いた後、平均ブロックエラーレート(BLER)と密着性を測定した。
【0075】
また、実施例および比較例で用いた芳香族ポリカーボネート樹脂、離型剤は以下の通りである。
【0076】
(PC−1)
溶融エステル交換法で製造されたビスフェノールA系ポリカーボネート(Mw=15,600、フェノール性末端基比率=33%)
(PC−2)
ホスゲン法で製造されたビスフェノールA系ポリカーボネート(Mw=15,500、フェノール性末端基比率=2%)
(離型剤)
ユニスター H−476(日本油脂製)、構造:C(CH2OOC17C35)4
【0077】
<実施例1、比較例1、6>
図1に本実施例に使用した金型構造を示す。
【0078】
1は固定側金型本体、2は可動側金型本体、3はスプルーである。4は成形される光ディスク基板にグルーブ・プレピットを転写するための原盤であるスタンパー、5はスタンパーの内周部を保持する内周ホルダー、6は成形された光ディスク基板をスタンパー4から剥離するエジェクター、7は光ディスク基板とスプルー3を分離するカッター、8はスタンパー4の外周部を保持し、光ディスク基板外径を形成する外周リングを示している。また、9は外周リング8内に設けたガス供給・排出孔であり、ここからスタンパー4と外周リング8の隙間を通してキャビティへ二酸化炭素を導入する。10,11は光ディスク基板剥離のためのエアーエジェクト孔であるが、切換弁を使い、ここからも二酸化炭素を金型キャビティ内へ導入できる。また、金型キャビティ内の気密性を確保するため、金型外周部と内周部にOリング12,13を設けた。
【0079】
この金型を成形機(住友重機械製「DISK−5MIII」)に取り付け、表1に示す芳香族ポリカーボネート樹脂と離型剤を使用して、光ディスク基板の射出成形を行った。
【0080】
スタンパーには、コンパクトディスク(CD)規格に準拠し、EFM変調されたピットで情報が記録されたものを取り付けた。成形条件は、可塑化温度300℃、金型温度105℃、型締め力300KN、充填時間0.5秒、冷却時間2.5秒で行なった。
【0081】
二酸化炭素の導入は、溶融樹脂の射出前に行なった。二酸化炭素の充填は、成形機と連動した切換弁を用い、型締め完了から2秒間行い、その後ポリカーボネートを射出するタイムサイクルとした。また、二酸化炭素の充填圧力は、5MPaで純度99%以上のものを使用した。
【0082】
こうして作製した光ディスク基板上に、Al合金薄膜からなる反射層をスパッタリング法により成膜し、さらに反射層の表面を紫外線硬化樹脂で被覆して光ディスクを作製した。
【0083】
このようにして得られた光ディスクで特性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0084】
<比較例2、3>
二酸化炭素を導入しなかった以外は、実施例1と同様に射出成形を行い、評価用光ディスクを得た。PC種と離型剤量は表1に示す。
【0085】
このようにして得られた光ディスクで特性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0086】
<実施例2、比較例4>
スタンパーに、相変化光ディスク「PD」フォーマット(ECMA−PD規格)に準拠したスタンパーを取り付け、成形条件は、可塑化温度330℃、金型温度115℃、型締め力300KN、充填時間0.4秒で行った以外は、実施例1と同様に射出成形を行い、評価用光ディスク基板を得た。PC種と離型剤量は表1に示す。
【0087】
こうして作製した光ディスク基板上に、ZnS−SiO2薄膜からなる下層保護層、SbTeGe合金薄膜からなる記録層、次いでZnS−SiO2薄膜からなる上層保護層、さらにAl合金薄膜からなる反射層を順次スパッタリング法により成膜して積層し、さらに反射層の表面を紫外線硬化樹脂で被覆して相変化型の光ディスクを作製した。
【0088】
このようにして得られた光ディスクで特性試験を行った。測定結果を表1に示す。
【0089】
<比較例5>
二酸化炭素を導入しなかった以外は、実施例2と同様に射出成形を行い、評価用光ディスクを得た。
【0090】
このようにして得られた光ディスクで特性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
<比較例7>
市販されている音楽CDで特性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
<比較例8>
市販されているCD−R(TDK製CD−R)で特性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、反射膜や記録膜との接着力に優れ、データの読み取りエラーが少なく、しかも、温度変化や湿度変化等の環境変化に強い光ディスクを得ることができる光ディスク基板を成形することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に使用した金型の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1 固定側金型本体
2 可動側金型本体
3 スプルー
4 スタンパー
5 スタンパー内周ホルダー
6 エジェクター
7 カッター
8 外周リング
9 ガス供給・排出孔
10 エアーエジェクト孔
11 エアーエジェクト孔
12 Oリング
13 Oリング
Claims (4)
- 光ディスク用転写情報をもつスタンパーを備えた金型キャビティ内に、二酸化炭素を導入し、ついでフェノール性末端基の比率が全末端数の15%以上である重量平均分子量(Mw)10,000〜18,000の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び500ppm以下の離型剤を充填して、スタンパーの光ディスク用転写情報を転写することを特徴とする光ディスク基板の成形方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂が、二酸化炭素が該樹脂の固化温度下で当該樹脂に0.5重量%以上溶解する圧力で金型キャビティ内に存在する状態で、金型キャビティ内へ充填されることを特徴とする請求項1記載の光ディスク基板の成形方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂が、金型キャビティへの充填前に予め二酸化炭素が0.1〜3重量%溶解されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の光ディスク基板の成形方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で成形された光ディスク基板。
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