JP4267942B2 - 遺伝子欠損ラン藻 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリグルカン合成酵素をコードする遺伝子の1種又は2種以上が欠損した遺伝子欠損ラン藻、より詳細にはグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子、分枝酵素(BE)遺伝子、及び/又は枝切り酵素(ISA)遺伝子の欠損したラン藻に関する。また、本発明は、これらの遺伝子の欠損したラン藻に、他の生物由来の該当する遺伝子を導入して、導入遺伝子のα−ポリグルカンの産生に対する作用をスクリーニングする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
デンプンは穀物の主成分として食品や飼料として使用されるだけでなく、デキストリン、オリゴ糖、異性化糖などに加工されて加工食品などにも利用され、また、糊や添加剤などとして工業製品やその原材料としても利用されている。デンプンと一言でいっても、稲のデンプン、じゃがいものデンプン、小麦のデンプン、とうもろこしのデンプンなど、その由来によりデンプンの形、味、糊化したときの物性などが微妙に異なり、我々はその用途に応じて各種の植物由来のデンプンを使い分けてきている。このようなデンプンの性質の違いはデンプンの化学構造による違いから来ていると説明されてきているが、デンプンは主としてアミロースとアミノペクチンからできているものであり、その化学構造の相違は主として枝分かれ構造を有するアミロペクチンに由来するところが大きいとされている。
デンプン(Starch)は高等植物の貯蔵器官に蓄積するα‐ポリグルカンである。デンプンは、2種類のグルコース・ホモポリマーであるアミロペクチン(Amylopectin)とアミロース(Amylose)からなる。アミロースは、グルコース・ユニットがα−1,4グルコシド結合で繋がっており、少量のα‐1,6グルコシド結合の枝を含む線状のらせん状の分子である。一方、アミロペクチンは、グルコース・ユニットがα‐1,4グルコシド結合で伸び、主鎖と平行にα‐1,6グルコシド結合で枝が繋がった構造をとっている。特徴的なこの構造は”クラスター”構造と呼ばれている。 動物やバクテリアの貯蔵物質であるグリコーゲン(Glycogen)もアミロペクチンと同じくグルコース・ホモポリマーで構成されているが、クラスター構造は持っておらず、”tree like”や”bush like”と呼ばれる構造を持っている。グリコーゲンは、全く不規則な枝分かれ構造からなるものである。グリコーゲンはアミロペクチンに比べて分子も小さく、枝も短く、その多くは水溶性の物質である。これに対してアミロペクチンは、枝も長く、かつグルコースが高密度で充填されており、一般に水不溶性の物質である。
【0003】
デンプンの合成の概要は、次の酵素、(1)デンプン合成酵素(Starch synthase(SS))、(2)デンプン分枝酵素(Starch branching enzyme(SBE))、(3)デンプン枝切り酵素(Starch debranching enzyme(DBE))の反応で合成される。SSは、アミロペクチンの非還元末端にADPグルコースをα‐1,4グルコシド結合で繋ぎ、鎖を伸ばす役割をする。SSがアミロペクチンの鎖を伸ばすのに対し、SBEは、アミロペクチンのα‐1,6グルコシド結合を形成する酵素であり、枝分かれ構造の枝分かれ部分を形成させる酵素である。従来、デンプン枝切り酵素(DBE)はクラスターの形成に必要ない酵素であると考えられていた。しかし、この分解酵素が欠損した植物ではアミロペクチンのクラスターを形成することができないことが明らかにされ、DBEがクラスター構造の形成に不可欠であることを示すことが報告されている(非特許文献1〜3参照)。
【0004】
このようにデンプンの成分であるアミロペクチンを生合成するにはDBEの1種であるイソアミラーゼなどの存在が不可欠であるから、デンプンを合成する高等植物は各植物に応じたイソアミラーゼを持っている。デンプンを産生しない生物、例えば動物などは、イソアミラーゼを持っていないが、生物の中にはデンプンを産生しないにもかかわらず、イソアミラーゼをもっているものも存在している。このような生物におけるイソアミラーゼの存在理由については現在のところ明らかではなく、今後の研究が期待されている。
ラン藻の中にはデンプンを産生しないにもかかわらず枝切り酵素のイソアミラーゼ(ISA)を持っているものがある。本発明者らは、このラン藻のイソアミラーゼ(ISA)遺伝子を単離されてきた(特開2002−262877号)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−262877号
【非特許文献1】
M.G.James, et al., Plant Physiol., (1995) 7, 417-429
【非特許文献2】
Y.Nakamura, et al., PlantJ., (1997) 12(1), 143-153
【非特許文献3】
A.Kubo, et al., Plant Phys., (1999) 121, 399-409
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
α−ポリグルカンを合成する各種の酵素はそれぞれ単離されてきたが、それらの相互の関連性についての詳細は解明されていなかった。また、高等植物におけるこれらの酵素の相互の作用は極めて複雑であり、その解明は困難であった。
本発明は、他の要因の影響を受けにくいα−ポリグルカンの生合成経路に着目し、当該生合成経路における重要な酵素をコードする遺伝子を欠損させた変異株を提供し、もってこれらの合成酵素の機能を解明し、新規なデンプンやグリコーゲンを合成できる生物を創作することを可能とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ラン藻は、蓄積物質としてグリコーゲンを合成しているが、ラン藻の中にはグリコーゲンの合成に必要な(1)グリコーゲン合成酵素(GS)、及び(2)分枝酵素(BE)のほかに(3)枝切り酵素(ISA)を持っているものが有る。本発明者らは、これらの酵素の機能と合成されたグリコーゲンの構造との相関を解明するために、これらの酵素の遺伝子の欠損している変異体を製造することに成功し、デンプンやグリコーゲンの合成におけるこれらの酵素の機能を解明することができた。
【0008】
本発明は、ポリグルカン合成酵素をコードする遺伝子の1種又は2種以上が欠損した遺伝子欠損ラン藻、より詳細には、ポリグルカン合成酵素のグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子、分枝酵素(BE)遺伝子、及び/又は枝切り酵素(ISA)遺伝子の1種又は2種以上が欠損したラン藻に関する。
また、本発明は、これらの遺伝子の欠損したラン藻に、他の生物由来の該当する遺伝子を導入して、導入遺伝子のα−ポリグルカン類の産生に対する作用をスクリーニングする方法に関する。
【0009】
本発明者らは、ラン藻のDNAからグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子、分枝酵素(BE)遺伝子、及び/又は枝切り酵素(ISA)遺伝子をそれぞれ特定し、これらの遺伝子が欠損した変異体を製造した。即ち、ラン藻、例えば、ラン藻(Synechococcus sp. PCC 7942)株を材料に用いて、野生株からゴールデンらの方法(Golden et al.1987)に従って全DNAを抽出し、これを鋳型にPCR法によりこれらの遺伝子を単離し、これらの遺伝子の制限酵素部位に薬剤耐性遺伝子を導入して、これを相同組換え技術によりラン藻のDNAに導入した。
【0010】
グリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子の単離のため、GenBankに登録されていた配列情報(accession no.U30252)に基づいてプライマーの設計を行った。使用したプライマーの配列は以下の通りである。
フオワードプライマー 761B: 5'-CATATGCGGATTCTGTTCGT-3'
リバースプライマー 762B: 5'-ACCAAACGGCCACCTGACTC-3'
PCRによって得られた増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐TEasy(Promega)に連結し、組換えプラスミドを得た。このプラスミドを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。この段階で、増幅されたDNAに、塩基置換、挿入、欠失などの変異が導入されていないことを、配列を決定することにより確認した。単離した遺伝子の配列は、登録されている塩基配列U30252のものと98.6 %相同であったが、完全に同一ではなかった。この塩基配列を配列表の配列番号1に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。
プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたGS遺伝子を含む組換えプラスミドを遺伝子内部のEcoRV部位で切断し、ここに、pHSG396プラスミド(Takara)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)を連結した。これにより、GS遺伝子は分断され、その機能を喪失する。Cm遺伝子の挿入の方向性として、GS遺伝子に対し正方向のもの、逆方向のもの、いずれについても得ることができた。
GS遺伝子のEcoRV部位に、GS遺伝子に対しCm遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号3に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号4に示す。逆に、同じ位置に、GS遺伝子に対しCm遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号5に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号6に示す。
以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図1に示す。図1の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたGS遺伝子及びそのEcoRV部位を示しており、その下段は当該EcoRV部位にクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【0011】
次に、グリコーゲン枝作り酵素(BE)遺伝子の単離のため、既に報告されている配列(Kiel et al.1990)に基づいてプライマーの設計を行った。使用したプライマーの配列は以下の通りである。
フオワードプライマー 712B: 5'-AAGGAGGCCCTATGACTGGTACGAC-3'
リバースプライマー 721B: 5'-GAAACCTACAGAGTAGAGGA-3'
PCRによって得られた増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐TEasyに連結し、組換えプラスミドを得た。これを用いて大腸菌JM109株の形質転換を行った。単離した遺伝子の配列を決定したところ、報告されたものと完全に同一であった。この塩基配列を配列表の配列番号7に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号8に示す。
プラスミドベクターpGEM‐T Easyに連結されたBE遺伝子を含む組換えプラスミドを当該遺伝子の内部に2箇所あるBamHI部位で切断し、ここに、pDW9プラスミド(Golden and Wiest, l988)由来のスベクチノマイシン耐性遺伝子(Sp)を連結した。Sp遺伝子の挿入の方向性として、BE遺伝子に対し、正方向のもの、逆方向のもの、いずれについても得ることができた。
BE遺伝子のBamHI部位に、BE遺伝子に対しSp遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号9に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号10に示す。逆に、同じ位置に、BE遺伝子に対しSp遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号11に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号12に示す。
以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図2に示す。図2の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたBE遺伝子及びそのBamHI部位を示しており、その下段は当該BamHI部位にスベクチノマイシン耐性遺伝子(Sp)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【0012】
イソアミラーゼ(ISA)遺伝子の単離のため、中村らの解析した配列(Nakamura, et al., unpublished)に基づいてプライマーの設計を行った。使用したプライマーの配列は以下の通りである。
フオワードプライマー 707B: 5'-TACGTATGACTGTTTCATCCCGT-3'
リバースプライマー 702B: 5'-GATTGCCTAACCGTCGCTCAAT-3'
PCRによって得られた増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐TEasy に連結し、組換えプラスミドを得た。これを用いて大腸菌JM109株の形質転換を行った。このISA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号13に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号14に示す。
ISA遺伝子については、薬剤遺伝子の挿入の組換えDNA操作を効率よく行うため、まず遺伝子を含むプラスミドをNotI部位で切断し、遺伝子の大部分を含む断片を pB1uescriptlI KS+ のNotI部位にクローン化した。これにより作成されたプラスミドをISA 遺伝子内部に存在するNcoI部位で切断し、平滑末端処理を行った後、pUC4Kプラスミド(Pharmacia)由来のカナマイシン耐性遺伝子(Km)と連結した。Km遺伝子の挿入の方向性として、ISA遺伝子に対し、正方向のもの、逆方向のもの、いずれについても得ることができた。
ISA遺伝子の断片のNcoI部位に、ISA遺伝子に対しKm遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号15に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号16に示す。逆に、同じ位置に、ISA遺伝子に対しKm遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号17に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号18に示す。
以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図3に示す。図3の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたISA遺伝子並びにそのNotI部位及びNcoI部位を示しており、その下段はISA遺伝子のNotI部位での切断断片を pB1uescriptlI KS+ のNotI部位にクローン化したものを示し、さらにその下段は当該遺伝子断片のNcoI部位にカナマイシン耐性遺伝子(Km)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【0013】
以上の方法によって得られた組換えプラスミドを用いて、ゴールデンらの方法(Golden, et al., (1987))に準じて、ラン藻の野生株(Synechococcus sp. PCC 7942)の形質転換を行った。野生株に薬剤耐性遺伝子を含むプラスミドを導入すると、染色体とプラスミドの相同配列部分(薬剤耐性遺伝子の両端の標的遺伝子部分)において組換えがおこり、破壊された標的遺伝子が、染色体上へ移行する。添加したプラスミドはラン藻において自律増幅はしないので、培養を継続することにより消失する。対応する薬剤を添加して培養を行うと、組換えを起こした形質転換株を選択することができる。3種の標的遺伝子(GS遺伝子、BE遺伝子、及びISA遺伝子)について薬剤遺伝子の挿入方向の違うもの計6種のプラスミドを用い、いずれにおいても形質転換株を得ることができた。BE遺伝子とISA遺伝子については、上記の方法を繰り返すことにより、両者の遺伝子を欠損した二重変異株を得た。
【0014】
得られた形質転換株における、標的遺伝子の欠損の確認を行うため、全DNAを抽出し、PCRによる解析を行った。標的遺伝子をPCRによって増幅すると、欠損株では、野生型遺伝子が消失し、薬剤耐性遺伝子が挿入した分だけ長いDNA断片が得られた。結果を図4に図面に代わる写真で示す。図4の3種類の写真は、左側からGS遺伝子についてのもの、ISA遺伝子及びBE遺伝子についてのもの、並びにISA遺伝子についてのものである。左側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、GS遺伝子変異株1(GS::Cm1)、及びGS遺伝子変異株2(GS::Cm2)をそれぞれ示す。中側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、ISA遺伝子変異株1(ISA::Km1)、野生型(WT)、BE遺伝子変異株1(BE::Sp1)、及びBE遺伝子変異株2(BE::Sp2)をそれぞれ示す。右側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、ISA遺伝子変異株2(ISA::Km2)をそれぞれ示す。この図において各変異株を1及び2という数字で示している。これらは薬剤耐性遺伝子が正方向に導入されたものと逆方向に導入されたものであるが、数字で示した1及び2のいずれが正方向であるかはこの実験からは判別できない。
この結果、いずれの欠損株にも野生型遺伝子の残存が認められないことから、安定な欠損株が確立されたことが明らかになった。
【0015】
以上の方法によりグリコーゲンの合成酵素をコードする遺伝子がノックアウトされたラン藻を製造することができたので、これらを用いてグリコーゲンのポリグルカンの鎖長(グルコースの数)分布を検討した。
野生株、欠損株からアルコール抽出法によりポリグルカンを調製し、イソアミラーゼ処理によってα‐1,6‐結合を切断した後、キャピラリー電気泳動法により分画を行い、鎖長分布を解析した。その結果を図5〜図8に示す。
図5は野生株 (WT) とGS遺伝子の欠損株 (ΔGS) の鎖長分布解析を行った際のキャピラリー電気泳動のシグナルを示したものである。図5の上の段は野生株であり、下の段はGS欠損株のものである。図5の各々の横軸はキャピラリー電気泳動における各鎖長の糖鎖の保持時間を示し、縦軸はラベルされた各糖鎖に由来するシグナルの相対強度を示す。図中の数字は、各糖鎖におけるグルコースの重合度 (DP) を示す。横軸の保持時間25分以前に見られる高いシグナルは、未反応のラベル試薬に由来するノイズである。
GS欠損株について、野生株と同一の条件でポリグルカンを抽出し解析を行ったが、ラベルされた糖鎖に由来するシグナルはほとんど検出されなかった。GS欠損株では、DP=3とDP=4の間に強いシグナルが認められ、低分子のオリゴ糖が生成している可能性が示されたが、この化合物については未同定である。その他の糖鎖に由来するシグナルが著しく低いため、この欠損株について鎖長分布を計算することはできなかった。従って、GS欠損株では、ポリグルカン (グリコーゲン) がほとんど合成されないか、あるいは貯蔵ポリグルカンの物性が大きく異なり、抽出操作時に他の欠損株とは違う挙動をとったものと考えられる。
なお、GS欠損株では、薬剤耐性遺伝子の挿入方向が異なる株について同様な結果が得られた。
【0016】
図6は野生型(WT)とBE遺伝子の欠損株(ΔBE)の鎖長分布(図6左側)と、各鎖長の差(ΔBE−WT)(図6の右側)を示したものである。図7は、同様に、野生型(WT)とISA遺伝子の欠損株(ΔISA)の鎖長分布(図7左側)と、各鎖長の差(ΔISA−WT)(図7の右側)を示したものである。図8は野生型(WT)とISA遺伝子及びBE遺伝子の二重欠損株(ΔISA/ΔBE)の鎖長分布(図8左側)と、各鎖長の差(ΔISA/ΔBE−WT)(図8の右側)を示したものである。
図6〜図8の各左側の鎖長分布の図における横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長の量の全鎖長の合計の量に対する比率(%)を示す。図6〜図8の右側の各鎖長の差分のグラフの横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長における野生型との比率(%)の差を示す。マイナスになっている箇所は野生型のほうが比率が高いことを示している。
【0017】
BE欠損株から得られたポリグルカンでは、野生株のものに比べ鎖長(グルコース重合度(DP))が10以下の短鎖の割合が減少しており、代わってDPが10以上の糖鎖の増加が認められた。この結果、BEの欠損により貯蔵ポリグルカンの鎖長の分布に大きな変化が生じ、ポリグルカンの合成システムに重大な支障がきたされるものと推測される。DPが10以上の鎖長を持つグルカンは、糖鎖の伸長が停止した状態でオリゴ糖が蓄積したものである可能性が考えられる。
ISA欠損株のポリグルカンにおいては、DPが2〜4の超短鎖の比率が増大した。このことから、ラン藻において本来ISAは、ポリグルカン分子内の短い側鎖に働きかけて、これを切除することにあると考えられるが、欠損株では、この活性が消失したことにより、多糖内に短い鎖が残存している可能性が示された。
BE/ISA二重欠損株のポリグルカンにおいては、野生株と比較してDPが2〜3の短鎖が増加し、また、DPが10以上の糖鎖の増大が認められた。これは、2つの遺伝子を欠損した影響が相加的に現れたものとして解釈できる。同種の遺伝子欠損株においては、薬剤耐性遺伝子の挿入方向にかかわらず、同じ結果が得られた。
【0018】
以上のように、ラン藻のポリグルカン代謝酵素の欠損により、多様な構造を持つポリグルカンが蓄積することが明らかとなった。また、遺伝子の変異を組み合わせ、多重遺伝子欠損株を作製することにより、さらに新規な構造を持つポリグルカンを創生できる可能性が示された。本発明で得られた遺伝子欠損株は、このような新規ポリグルカン構造を提供するものとして、その応用が期待される。
【0019】
本発明の遺伝子欠損株は、本明細書に開示したポリグルカン合成酵素をコードする遺伝子の塩基配列に基づいて、公知のジーンターゲッティング法などにより製造することができる。標的の遺伝子をノックアウトする手段としては、前述してきたような薬品耐性遺伝子を導入してもよいが、これに限定されるわけではなく、他の任意の遺伝子を使用することができる。また、ノックアウトする部位も前述してきた制限酵素の部位に限定されるものではなく、他の制限酵素に部位や相同組換えを容易に生起できる部位であれば任意に選定できる。
また、ノックアウトのための遺伝子の導入手段も、前記してきたプラスミドによる方法に限定されるものではなく、ファージを使用する方法など各種の手段を採用することができる。
本発明においては、ノックアウトの部位や手段が本発明において重要ではなく、遺伝子の機能を欠損させることが重要であることは前述してきたとおりであり、本発明の遺伝子欠損ラン藻は、標的となるポリグルカンの合成酵素をコードする遺伝子の機能が欠損しているものであれば、如何なる手段により製造されたものも包含するものである。
【0020】
本発明のラン藻としては、ラン藻類(Synechococcus)であれば特に制限は無いが、ポリグルカンの合成酵素の機能を解明する目的からはイソアミラーゼ(ISA)を持っているラン藻が好ましく、好ましい例としてはシネココッカスPCC7942(Synechococcus sp. PCC 7942)株が挙げられる。
本発明の遺伝子欠損ラン藻は、各遺伝子の欠損により独特の鎖長を有するポリグリカンを産生することは前述してきたとおりである。本発明の遺伝子欠損ラン藻は、ポリグルカンの合成酵素の1種又は2種以上の活性を欠くものであるから、欠損している酵素に代えて他の生物の酵素をコードする遺伝子を導入することにより、当該導入酵素のポリグルカンの合成における機能をスクリーニングすることが可能となる。特に2種の合成酵素を欠損したラン藻において、これらの各々の酵素をコードする遺伝子を導入することにより、これらの酵素の組み合わせによる機能を同時に解析することができ、新規な鎖長を有するポリグルカンの製造に寄与することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1 (シネココッカスのグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子の単離)
シネココッカスPCC7942(Synechococcus sp. PCC 7942)株の野生株からゴールデンらの方法(Golden et al.1987)に従って全DNAを抽出した。
GenBankに登録されていたグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子についての配列情報(accession no. U30252)に基づいてPCR用のプライマー761B及び762Bを以下のように設計した。
フオワードプライマー 761B: 5'-CATATGCGGATTCTGTTCGT-3'
リバースプライマー 762B: 5'-ACCAAACGGCCACCTGACTC-3'
これらのプライマーを用いて全DNAからPCRを行った。PCRは、塩化マグネシウム濃度が1mMで、94℃で45秒、50℃で30秒、72℃で60秒のサイクルを30回繰り返した。
得られたPCRよる増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結し、組換えプラスミドを得た。このプラスミドを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。この段階で、増幅されたDNAに、塩基置換、挿入、欠失などの変異が導入されていないことを、配列を決定することにより確認した。
得られたDNAの塩基配列を配列表の配列番号1に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。
【0023】
実施例2 (シネココッカスの分枝酵素(BE)遺伝子の単離)
既に報告されているグリコーゲン枝作り酵素(BE)遺伝子の配列(Kiel et al.1990)に基づいてPCR用のプライマー712及び721Bを以下のように設計した。
フオワードプライマー 712B: 5'-AAGGAGGCCCTATGACTGGTACGAC-3'
リバースプライマー 721B: 5'-GAAACCTACAGAGTAGAGGA-3'
これらのプライマーを用いて実施例1で製造した全DNAからPCRを行った。PCRは、塩化マグネシウム濃度が1mMで、94℃で45秒、55℃で30秒、72℃で60秒のサイクルを30回繰り返した。
得られたPCRよる増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐T Easyに連結し、組換えプラスミドを得た。これを用いて大腸菌JM109株の形質転換を行った。単離した遺伝子の配列を決定したところ、報告されたものと完全に同一であった。
この塩基配列を配列表の配列番号7に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号8に示す。
【0024】
実施例3 (シネココッカスの枝切り酵素(ISA)遺伝子の単離)
中村らの解析したイソアミラーゼ(ISA)遺伝子の配列(Nakamura, et al., unpublished)に基づいてPCR用のプライマー707及び702Bを以下のように設計した。
フオワードプライマー 707B: 5'-TACGTATGACTGTTTCATCCCGT-3'
リバースプライマー 702B: 5'-GATTGCCTAACCGTCGCTCAAT-3'
これらのプライマーを用いて実施例1で製造した全DNAからPCRを行った。PCRは、塩化マグネシウム濃度が2mMで、94℃で45秒、60℃で30秒、72℃で60秒のサイクルを30回繰り返した。
得られたPCRよる増幅DNA断片を、プラスミドベクターpGEM‐T Easy に連結し、組換えプラスミドを得た。これを用いて大腸菌JM109株の形質転換を行った。
このISA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号13に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号14に示す。
【0025】
実施例4 (グリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子の欠損したラン藻の製造)
実施例1で製造したプラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたGS遺伝子を含む組換えプラスミドを遺伝子内部のEcoRV部位で切断し、ここに、pHSG396プラスミド(Takara)由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)を連結した。Cm遺伝子の挿入の方向性として、GS遺伝子に対し正方向のもの、逆方向のもののいずれについても得ることができた。
GS遺伝子のEcoRV部位に、GS遺伝子に対しCm遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号3に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号4に示す。逆に、同じ位置に、GS遺伝子に対しCm遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号5に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号6に示す。以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図1に示す。
得られた組換えプラスミドを用いて、ゴールデンらの方法(Golden, et al., (1987))に準じて、ラン藻の野生株(Synechococcus sp. PCC 7942)の形質転換を行った。
得られた形質転換体をクロラムフェニコールを含有する培地で培養して、遺伝子欠損株を選別した。クロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)が同じ方向に導入された欠損株と、逆方向に導入された欠損株の2種類の欠損株を得た。これらの欠損株を、GS::Cm1及びGS::Cm2と命名した。
【0026】
実施例5 (分枝酵素(BE)遺伝子の欠損したラン藻の製造)
実施例2で製造されたプラスミドベクターpGEM‐T Easyに連結されたBE遺伝子を含む組換えプラスミドを当該遺伝子の内部に2箇所あるBamHI部位で切断し、ここに、pDW9プラスミド(Golden and Wiest, l988)由来のスベクチノマイシン耐性遺伝子(Sp)を連結した。Sp遺伝子の挿入の方向性として、BE遺伝子に対し、正方向のもの、逆方向のもの、いずれについても得ることができた。
BE遺伝子のBamHI部位に、BE遺伝子に対しSp遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号9に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号10に示す。逆に、同じ位置に、BE遺伝子に対しSp遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号11に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号12に示す。以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図2に示す。
得られた組換えプラスミドを用いて、ゴールデンらの方法(Golden, et al., (1987))に準じて、ラン藻の野生株(Synechococcus sp. PCC 7942)の形質転換を行った。
得られた形質転換体をスベクチノマイシンを含有する培地で培養して、遺伝子欠損株を選別した。スベクチノマイシン耐性遺伝子(Sp)が同じ方向に導入された欠損株と、逆方向に導入された欠損株の2種類の欠損株を得た。これらの欠損株を、BE::Sp1及びBE::Sp2と命名した。
【0027】
実施例6 (枝切り酵素(ISA)遺伝子の欠損したラン藻の製造)
実施例3で製造したISA遺伝子を含むプラスミドをNotI部位で切断し、遺伝子の大部分を含む断片を pB1uescriptlI KS+ のNotI部位にクローン化した。これにより作成されたプラスミドをISA 遺伝子内部に存在するNcoI部位で切断し、平滑末端処理を行った後、pUC4Kプラスミド(Pharmacia)由来のカナマイシン耐性遺伝子(Km)と連結した。Km遺伝子の挿入の方向性として、ISA遺伝子に対し、正方向のもの、逆方向のもの、いずれについても得ることができた。
ISA遺伝子の断片のNcoI部位に、ISA遺伝子に対しKm遺伝子が正方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号15に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号16に示す。逆に、同じ位置に、ISA遺伝子に対しKm遺伝子が逆方向に導入された遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号17に示し、それによってコードされているアミノ酸配列を配列表の配列番号18に示す。以上の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図3に示す。
得られた組換えプラスミドを用いて、ゴールデンらの方法(Golden, et al., (1987))に準じて、ラン藻の野生株(Synechococcus sp. PCC 7942)の形質転換を行った。
得られた形質転換体をカナマイシンを含有する培地で培養して、遺伝子欠損株を選別した。カナマイシン耐性遺伝子(Km)が同じ方向に導入された欠損株と、逆方向に導入された欠損株の2種類の欠損株を得た。これらの欠損株を、ISA::Km1及びISA::Km2と命名した。
【0028】
実施例7 (BE遺伝子及びISA遺伝子の欠損した二重変異株の製造)
実施例6で製造した組換えプラスミドを用いて、ゴールデンらの方法(Golden, et al., (1987))に準じて、実施例5に記載の方法により製造されたBE遺伝子の欠損した変異株の形質転換を行った。
得られた形質転換体をカナマイシンを含有する培地で培養して、遺伝子欠損株を選別することにより、BE遺伝子及びISA遺伝子の欠損した二重変異株を製造した。
【0029】
実施例8 (遺伝子欠損株の全DNAのPCRによる解析)
実施例4〜実施例7で得られた形質転換株における、標的遺伝子の欠損の確認を行うため、全DNAを抽出し、PCRによる解析を行った。
各々の標的遺伝子をPCRによって増幅した。PCRは、塩化マグネシウム濃度が1mMで、94℃で45秒、50℃で30秒、72℃で60秒のサイクルを30回繰り返した。
結果を図4に図面に代わる写真で示す。図4において各変異株を1及び2という数字で示している。これらは薬剤耐性遺伝子が正方向に導入されたものと逆方向に導入されたものであるが、数字で示した1及び2のいずれが正方向であるかはこの実験からは判別できない。
この結果、いずれの欠損株にも野生型遺伝子の残存が認められないことから、安定な欠損株が確立されたことが明らかになった。
【0030】
実施例9 (各変異体と野生型とのポリグルカンの鎖長の解析)
野生株、及び各欠損株からアルコール抽出法によりポリグルカンを調製し、イソアミラーゼ処理によってα‐1,6‐結合を切断した後、キャピラリー電気泳動法により分画を行い、鎖長分布を解析した。
その結果を図5〜図8に示す。
図5は野生型(図5の上段)とGS欠損株(図5の下段)のキャピラリー電気泳動の結果を示す。図6〜図8は、キャピラリー電気泳動の結果をグラフ化したものである。図6は野生型(WT)とBE遺伝子の欠損株(ΔBE)の鎖長分布(図6左側)と、各鎖長の差(ΔBE−WT)(図6の右側)を示したものである。図7は、同様に、野生型(WT)とISA遺伝子の欠損株(ΔISA)の鎖長分布(図7左側)と、各鎖長の差(ΔISA−WT)(図7の右側)を示したものである。図8は野生型(WT)とISA遺伝子及びBE遺伝子の二重欠損株(ΔISA/ΔBE)の鎖長分布(図8左側)と、各鎖長の差(ΔISA/ΔBE−WT)(図8の右側)を示したものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明の遺伝子欠損ラン藻は、グリコーゲンの産生に必要な各酵素をコードする遺伝子が欠損しているものであり、これらの酵素の欠損によるα−ポリグルカンに与える作用を解明することができる。
また、これらの遺伝子の欠損したラン藻に、他の生物由来の該当する遺伝子を導入して、導入遺伝子のα−ポリグルカンの産生に対する作用を解析することが可能となり、解析された各酵素の作用を利用することにより新しい形態のデンプンやグリコーゲンの生産が可能となり、本発明はこれらの開発に極めて有用である。
【0032】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、GS遺伝子の組換えプラスミド作成の工程を模式的に示したものである。図1の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたGS遺伝子及びそのEcoRV部位を示しており、その下段は当該EcoRV部位にクロラムフェニコール耐性遺伝子(Cm)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【図2】図2は、BE遺伝子の組換えプラスミド作成の工程を模式的に示したものである。図2の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたBE遺伝子及びそのBamHI部位を示しており、その下段は当該BamHI部位にスベクチノマイシン耐性遺伝子(Sp)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【図3】図3は、ISA遺伝子の組換えプラスミド作成の工程を模式的に図3に示す。図3の上段は、プラスミドベクターpGEM‐T Easy(Promega)に連結されたISA遺伝子並びにそのNotI部位及びNcoI部位を示しており、その下段はISA遺伝子のNotI部位での切断断片を pB1uescriptlI KS+ のNotI部位にクローン化したものを示し、さらにその下段は当該遺伝子断片のNcoI部位にカナマイシン耐性遺伝子(Km)が、正方向及び逆方向にそれぞれ導入された状況を示している。
【図4】図4は、本発明により得られた各変異株における各々の遺伝子について、全DNAに基づくPCRによる解析の結果を示す図面に代わる写真である。図4の3種類の写真は、左側からGS遺伝子についてのもの、ISA遺伝子及びBE遺伝子についてのもの、並びにISA遺伝子についてのものである。左側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、GS遺伝子変異株1(GS::Cm1)、及びGS遺伝子変異株2(GS::Cm2)をそれぞれ示す。中側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、ISA遺伝子変異株1(ISA::Km1)、野生型(WT)、BE遺伝子変異株1(BE::Sp1)、及びBE遺伝子変異株2(BE::Sp2)をそれぞれ示す。右側の写真の各レーンは、左側からマーカー(Marker)、野生型(WT)、ISA遺伝子変異株2(ISA::Km2)をそれぞれ示す。
【図5】図5は、野生株 (WT) とGS遺伝子の欠損株 (ΔGS) の鎖長分布解析を行った際のキャピラリー電気泳動のシグナルを示したものである。図5の上段は野生株を示し、下段はGS欠損株を示す。図5の各々の横軸はキャピラリー電気泳動における各鎖長の糖鎖の保持時間を示し、縦軸はラベルされた各糖鎖に由来するシグナルの相対強度を示す。図中の数字は、各糖鎖におけるグルコースの重合度 (DP) を示す。
【図6】図6は、野生型(WT)とBE遺伝子の欠損株(ΔBE)のポリグルカンの鎖長分布(図6左側)と、各鎖長の差(ΔBE−WT)(図6の右側)を示したものである。図6の各左側の鎖長分布の図における横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長の量の全鎖長の合計の量に対する比率(%)を示す。図6の右側の各鎖長の差分のグラフの横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長における野生型との比率(%)の差を示す。
【図7】図7は、野生型(WT)とISA遺伝子の欠損株(ΔISA)のポリグルカンの鎖長分布(図7左側)と、各鎖長の差(ΔISA−WT)(図7の右側)を示したものである。図7の各左側の鎖長分布の図における横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長の量の全鎖長の合計の量に対する比率(%)を示す。図7の右側の各鎖長の差分のグラフの横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長における野生型との比率(%)の差を示す。
【図8】図8は、野生型(WT)とISA遺伝子及びBE遺伝子の二重欠損株(ΔISA/ΔBE)のポリグルカンの鎖長分布(図8左側)と、各鎖長の差(ΔISA/ΔBE−WT)(図8の右側)を示したものである。図8の各左側の鎖長分布の図における横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長の量の全鎖長の合計の量に対する比率(%)を示す。図8の右側の各鎖長の差分のグラフの横軸は鎖長(グルコースの数)を示し、縦軸は各鎖長における野生型との比率(%)の差を示す。
Claims (4)
- ポリグルカン合成酵素をコードする遺伝子のうち少なくともグリコーゲン合成酵素(GS)遺伝子が欠損した遺伝子欠損ラン藻株。
- さらに分枝酵素(BE)遺伝子及び/又は枝切り酵素(ISA)遺伝子が欠損した請求項1に記載の遺伝子欠損ラン藻株。
- ラン藻が、シネココッカスPCC7942(Synechococcus sp. PCC 7942)株である請求項1又は2に記載の遺伝子欠損ラン藻株。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子欠損ラン藻株に、他の生物由来の該当する遺伝子を導入して、導入遺伝子のα−ポリグルカンの産生に対する作用をスクリーニングする方法。
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