JP2006034128A - イネ由来デンプン合成酵素SSIIaを発現させたシアノバクテリアの形質転換体、これを用いたSSIIaの機能解析法、並びに同形質転換体によって生産される多糖 - Google Patents

イネ由来デンプン合成酵素SSIIaを発現させたシアノバクテリアの形質転換体、これを用いたSSIIaの機能解析法、並びに同形質転換体によって生産される多糖 Download PDF

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Abstract

【課題】 イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子をシアノバクテリアに導入することにより得られたシアノバクテリアの形質転換体、これを用いたSSIIaの機能解析法、並びに同形質転換体によって生産される多糖を提供すること。
【解決手段】 前駆体型SSIIa発現用のプラスミド、および、成熟型SSIIa発現用のプラスミドをそれぞれ構築して、シアノバクテリアのグリコーゲン合成酵素欠損株の形質転換を行った。そして、形質転換株における貯蔵多糖の構造を解析したところ、前駆体型、成熟型いずれのSSIIaを発現させた場合にも、グルコース重合機能が失われた形質転換株においてグルカン糖鎖が検出された。このことから、シアノバクテリアに導入された前駆体型および成熟型のSSIIaは、宿主内において糖鎖合成の機能を発揮していることが明らかになった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入することによってSSIIaを発現させたシアノバクテリアの形質転換体、これを用いたSSIIaの機能解析法、並びに同形質転換体によって生産される多糖に関する。
デンプンは植物のエネルギー貯蔵庫であり、α―ポリグルコースからなる多糖類の1種で、アミロースとアミロペクチンからなっている。グリコーゲンもデンプンと同様にα―ポリグルコースからなる多糖類であるが、これは主として動物のエネルギー貯蔵物質として利用されている。
デンプンは穀物の主成分として食品や飼料として使用されるだけでなく、デキストリン、オリゴ糖、異性化糖などに加工されて加工食品などにも利用され、また、糊や添加剤などとして工業製品やその原材料としても利用されている。
デンプンと一言でいっても、イネのデンプン、じゃがいものデンプン、小麦のデンプン、とうもろこしのデンプンなど、その由来によりデンプンの形、味、糊化したときの物性などが微妙に異なり、我々はその用途に応じて各種の植物由来のデンプンを使い分けてきている。このようなデンプンの性質の違いはデンプンの化学構造による違いから来ていると説明されてきている。
デンプンは主としてアミロースとアミロペクチンからできているものであり、その化学構造の相違は主として枝分かれ構造を有するアミロペクチンに由来するところが大きいとされている。
デンプン(Starch)は高等植物の貯蔵器官に蓄積するα―ポリグルカンである。その貯蔵組織中でデンプン粒は「アミロプラスト」と呼ばれるプラスチドの中に含まれている。デンプンとは2種類のグルコース・ホモポリマー、アミロペクチン(Amylopectin)とアミロース(Amylose)の混合物である。アミロースは、貯蔵デンプン中の20−30%を占めているが、デンプン粒の形成には必要ではない。グルコース・ユニットがα―1,4グルコシド結合で繋がっており、少量のα―1,6グルコシド結合の枝を含む線状のらせん状の分子である。一方、アミロペクチンはデンプン粒中の70−80%を占め、グルコース・ユニットがα―1,4グルコシド結合で伸び、主鎖と平行にα―1,6グルコシド結合の枝で繋がった構造をとっている。特徴的なこの構造は「クラスター」構造と呼ばれている。
動物やバクテリアの貯蔵炭素源であるグリコーゲン(Glycogen)もアミロペクチンと同じくグルコース・ホモポリマーで構成されているが、クラスター構造は持っていない。グリコーゲンは「tree like」や「bush like」構造を持つと報告されている。
図1にアミロース、アミロペクチン、及びグリコーゲンの構造を示す。図1に示される線はα―グルコースの連鎖であり、アミロース(図1の(C))は枝分かれがほとんど無くα―1,4グルコースのほぼ1本鎖の構造をしている。アミロペクチン(図1の(B))は規則正しい枝分かれ構造を有し、α―1,4グルコースの連鎖とα―1,6グルコースの枝分かれ構造(クラスター)を一定の間隔で規則正しく有している。また、動物などのエネルギー貯蔵物質であるグリコーゲン(図1の(A))は、まったく不規則な枝分かれ構造からなるものである。グリコーゲンはアミロペクチンに比べて分子も小さく、枝も短く、その多くは水溶性の物質である。これに対してアミロペクチンは、枝も長く、かつグルコースが高密度で充填されており、一般に水不溶性の物質である。
このようなアミロペクチンのクラスター構造は、結晶構造を造る際に有利であり、結晶構造によるデンプン粒が形成される。アミロペクチンのクラスター構造は、ほぼ9nmの規則正しい繰り返し構造であり、この9nmのサイズは組織や種が異なっても余りばらつきが見られない。
アミロペクチンの構造をさらに詳細にみてゆくと、A〜C鎖の3タイプのα―1,4グルコシド鎖を持っている(図2参照)。A鎖は最も外側の鎖で鎖の中に分岐結合を持たない鎖である。B鎖は一つの鎖あたり1つ以上の鎖が分岐結合している鎖であり、B鎖はさらに、1つのクラスターにとどまるB1鎖、2つのクラスターに及んでいるB2鎖、3つのクラスターに及ぶB3鎖などがある。C鎖は還元末端を持っている鎖であり、アミロペクチン1分子あたり1つのC鎖を持っている。
このように、アミロペクチンの構造はほぼ一定ではあるが、植物の種類によりアミロペクチン構造も微妙に異なってきている。最近の研究によれば、ねっとりとしたデンプンを有するインディカの稲のアミロペクチンの構造上の相違が報告されている。図3の上段(図3の(a))はジャポニカ米のアミロペクチン、図3の下段(図3の(b))はインディカ米のアミロペクチンの構造を模式的に示したものである。クラスターの枝の長さを比べるとインディカ米の方が比較的長く、その密度も比較的密になっている。このためにインディカ米のデンプンの方が糊化が難しくなっていると考えられている。
このようなアミロペクチンの微細な構造上の相違は、アミロペクチンを合成する際の合成方法の相違により生起してくると考えられている。
アミロペクチンは次の4種類の酵素の連続反応で合成されると考えられている。
(1)ADPグルコースピロホスホリラ−ゼ(ADPglucose pyrophosphorylase(AGPase))
(2)水溶性デンプン合成酵素(Starch synthase(SS))
(3)デンプン枝作り酵素(Starch branching enzyme(BE))
(4)デンプン枝切り酵素(Starch debranching enzyme(DBE))
である。
AGPaseは、デンプン・ポリマーの原材料であるADPグルコースを合成する酵素である。SSは、アミロペクチンの非還元末端にADPグルコースをα―1,4グルコシド結合で繋ぎ、鎖を伸ばす役割をする。最近の研究により、デンプン合成酵素(SS)には、I型(SSI)、II型(SSII)、III型(SSIII)、さらにIV型(SSIV)の少なくとも4タイプ存在することがわかってきた。また、II型、III型、IV型には IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IVa、IVb などのサブタイプが存在することが見出されている。
SSがアミロペクチンの鎖を伸ばすのに対し、BEは、アミロペクチンのα―1,6グルコシド結合を形成する酵素であり、枝分かれ構造の枝分かれ部分を形成させる酵素である。
従来、SSとBEがアミロペクチンの枝の頻度を決め、クラスター構造を形成するのに重要な役割を果たしているのではないかと考えられてきた。即ち、前記(4)のデンプン枝切り酵素(DBE)はクラスターの形成に必要のない酵素であると考えられていた。しかし、この分解酵素が欠損した植物ではアミロペクチンのクラスターを形成することができないことが明らかにされ、DBEがクラスター構造の形成に不可欠であることを示すことが報告されている(下記の非特許文献1〜3参照)。
DBEについてのこれらの報告から、アミロペクチンにおけるクラスター構造の形成は、SSとBEによる新たな結合の形成だけでなく、BEにより余分に形成された枝分かれを、DBEにより分解してクラスター構造が規則正しく維持されることが分かってきた。
α―1,6グルコシド結合の枝を分解するDBEは、基質の違いから2種類のものが知られている。そのひとつはイソアミラーゼ(Isoamylase)であり、他のひとつがプルラナーゼ(Pullulanase(また、R-enzymeやlimit dextrinaseと呼ばれることもある))である。これら2種類のDBEのうちイソアミラーゼは、グリコーゲンやグリコーゲンよりもやや規則性をもつフィトグリコーゲン(phytoglycogen)のα―1,6グルコシド結合の枝を分解することが出来るが、プルラン(pullulan)には作用しない。一方、プルラナーゼはプルランには作用するが、グリコーゲンやフィトグリコーゲンには作用しない。
図4にアミロース、アミロペクチン、及びグリコーゲンの合成過程をまとめた。図4の左側のグリコーゲンの合成は主として動物や細菌類の場合であり、UGPaseはグリコーゲンの材料となるリン酸化グルコースの合成酵素であり、GSはグリコーゲン合成酵素であり、GBEはグリコーゲン枝作り酵素である。
図4の中側は、高等植物の場合のアミロペクチンの合成過程を示すものであり、図中のSSSは水溶性SS、SBEは starch BEのことである。図4の右側は高等植物におけるアミロースの合成過程を示すものであり、GBSSは粒結合デンプン合成酵素(granule-bound starch synthase)のことである。
このように、高等植物においては、前記した4種類の酵素群(デンプン合成関連酵素)により植物の種類に応じたアミロペクチンを産生している。そして、植物の種類によるアミロペクチンの構造の相違は、これらの酵素の種類の違いによるところが大きいと考えられる。同一品種間の場合を例に挙げると、イネデンプン合成酵素SSIIaは、イネデンプンの特異的な構造の形成に深く関与し、特に、ジャポニカ、インディカ品種におけるデンプン物性に差異が生じる主要な原因とされている(下記の非特許文献4参照)。
一方、遺伝子操作手法は、既存のデンプンにはない特徴を持つ新素材を作出できる可能性を持っている。デンプン合成に関連する酵素の形質転換体を用いた研究が多くのグループで進められている。形質転換技術によるデンプン形質の改変は主にジャガイモで試みられており、サフォードら(Safford,et al.,(1998))はジャガイモのBE(イネBEIに対応)をアンチセンスに導入することにより糊化特性の異なるデンプンを蓄積するジャガイモを作出し、ジョブリングら(Jobling, et al.,(1998))はBEA(イネのBEIIに対応)のアンチセンス形質転換体を作成し、側鎖長の長くなったアミロペクチンが蓄積することを明らかにした。また、エドワードら(Edwards, et al.,(1999))はSSII、SSIII、SSIIとSSIIIのキメラアンチセンスRNAを導入し、デンプン合成活性の低下した形質転換体を作成した。デンプン粒のサイズは小さくなり、側鎖長分布には大きな変化が見られた。また、本発明者らは、イソアミラーゼの機能ついて解析を行ってきた(特許文献1参照)。
このように、植物のデンプン合成は、デンプン合成酵素、枝作り酵素、枝切り酵素のそれぞれ複数のアイソザイムが関与する複雑なシステムであり、これらの酵素の関わりにより、植物毎に味や物性が微妙に異なるデンプンが産生されていると考えられているが、これらの個々の酵素が植物によりどのように相違しており、またこれらの個々の酵素がデンプンの微細構造にどのように関わっているのかということは未だ解決されていない。これらの個々の酵素の機能を解明することができれば、希望する味や物性を有するデンプンを自由に産生できることになる。
したがって、これらの個々の酵素のデンプンの産生における機能の解明が望まれているが、高等植物におけるデンプン合成の過程は極めて複雑であり、かつ高等植物を用いた実験では、植物の生育に時間がかかり個々の酵素の機能を解明することは極めて困難であった。しかしながら、デンプンの合成は高等植物における植物細胞内の色素体(葉では葉緑体、貯蔵組織ではアミロプラスト)において合成されるために、高等植物での実験が必要とされていた。
特開2003−79367号公報 M.G.James, et al., Plant Physiol., (1995) 7,417-429; Y.Nakamura, et al., Plant J., (1997) 12(1),143-153; A.Kubo, et al., Plant Phys., (1999) 121,399-409; Umemoto et al. (2002) Theor. Appl. Genet. 104: 1-8
これまでイネデンプン合成酵素(SS)として、SSI, SSIIa, SSIIb, SSIIc, SSIIIa, SSIIIb, SSIVa, SSIVb, GBSSI, GBSSIbの10種類のアイソザイムが同定されている。このうちデンプン合成酵素SSIIa型は、上述のように、イネデンプンの特異的な構造の形成に深く関与し、特に、ジャポニカ、インディカ品種におけるデンプン物性に差異が生じる主要な原因とされているが、その機能解明は未だ十分には進んでいない。
そこで本発明は、イネ由来デンプン合成酵素SSIIa型をシアノバクテリアにおいて発現させ、その酵素活性を解析する系を構築・提供することを、その課題とする。即ち、本発明の目的は、イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子をシアノバクテリアに導入することにより得られたシアノバクテリアの形質転換体、及びこれを用いたSSIIaの機能解析法、さらには同形質転換体によって生産される多糖を提供することにある。
デンプンの合成は高等植物における植物細胞内の色素体(葉では葉緑体、貯蔵組織ではアミロプラスト)において合成される。現在の地球上の植物の色素体は、植物の進化の歴史において、シアノバクテリアの祖先が細胞内共生を起こすことにより成立したと考えられている。即ち、シアノバクテリアとの共生により、色素体が形成され、デンプンの合成が始まったと考えられている。このことから、シアノバクテリアは最も原始的なデンプンの合成機構を有している生物であると考えられている。
本発明者らは、イネデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する上で、より簡素なポリグルカン代謝系を持つシアノバクテリアを宿主とした遺伝子発現系によりデンプン合成の再構成を検討した。このために、シアノバクテリアにおいて前駆体型または成熟型のイネデンプン合成酵素SSIIaを発現させるためのベクターを構築して、シアノバクテリアのグリコーゲン合成酵素欠損株の形質転換を行った。そして、形質転換株における貯蔵多糖の構造を解析したところ、前駆体型、成熟型いずれのSSIIaを発現させた場合にも、グルコース重合機能が失われた形質転換株においてグルカン糖鎖が検出されること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、産業上有用な下記A)〜O)の発明を含むものである。
A) シアノバクテリアにイネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリアの形質転換体。
B) イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が、前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子である上記A)記載の形質転換体。
C) 配列番号1に示される塩基配列が挿入されたプラスミドを使用してシアノバクテリアの形質転換を行い、これにより、前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入した上記B)記載の形質転換体。
D) 配列番号1に示される塩基配列が挿入されたプラスミドは、配列番号7に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、この増幅された遺伝子前半部分を前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結して得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製されたものである、上記C)記載の形質転換体。
E) イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子である上記A)記載の形質転換体。
F) 配列番号4に示される塩基配列が挿入されたプラスミドを使用してシアノバクテリアの形質転換を行い、これにより、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入した上記E)記載の形質転換体。
G) 配列番号4に示される塩基配列が挿入されたプラスミドは、配列番号8に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、この増幅された遺伝子前半部分を前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結して得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製されたものである、上記F)記載の形質転換体。
H) シアノバクテリアが、シネココッカス(Synechococcus)属のシアノバクテリアである上記A)〜G)のいずれか1項に記載の形質転換体。
I) シアノバクテリアが、シネココッカスPCC7942(Synechococcus sp. PCC 7942)株である上記H)記載の形質転換体。
J) シアノバクテリアが、内在性のグリコーゲン合成酵素(GS)をコードする遺伝子の欠損株である上記H)又はI)記載の形質転換体。
K) シアノバクテリアにイネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入して、当該シアノバクテリアから抽出した貯蔵多糖を解析することによりデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する方法。
L) 前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリア、および、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリアを作製し、両者から抽出した貯蔵多糖を解析し比較することによりデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する方法。
M) 貯蔵多糖の解析が、貯蔵多糖を枝切り処理して得られたグルカン鎖の鎖長分布解析である、上記K)又はL)記載のデンプン合成酵素SSIIaの機能解析法。
N) キャピラリー電気泳動により鎖長分布解析を行うことを特徴とする、上記M)記載のデンプン合成酵素SSIIaの機能解析法。
O) 上記A)〜J)のいずれかに記載の形質転換体により生産された多糖。
本発明は、イネデンプンの特異的な構造の形成に深く関与し、特に、ジャポニカ、インディカ品種におけるデンプン物性に差異が生じる主要な原因とされている、イネデンプン合成酵素SSIIaの機能解明において非常に有効な研究材料を提供するものである。また、本発明は、イネデンプン合成酵素SSIIaの活性や機能を極めて短時間かつ簡便な手法で解析することができる新規な実験系及びそのための形質転換体を提供するものである。
本発明は、デンプン合成酵素SSIIa型の機能解析のみならず、広くイネデンプン合成機構の研究に有用であり、さらに、デンプン合成技術に利用可能である。例えば、イネSSIIaの機能上の特徴を生かしたデンプンの構造をデザインし、それを宿主に産生させることも可能となり、新規なクラスター構造を有するデンプンの開発が可能となる。
また、本発明の多糖、即ち本発明の形質転換体によって生産される多糖は、イネ SSIIa 遺伝子の導入により、遺伝子導入前のシアノバクテリアにおいては生産されなかった新規構造の多糖である。例えば、シアノバクテリアのグリコーゲン合成酵素欠損株にイネ SSIIa 遺伝子を導入した形質転換株においては多糖が生成され、この多糖は、鎖長分析の結果、図5のグラフに示されるような特有の鎖長パターンを有するものであった。このように、本発明の多糖は、新規の構造・性質を有する多糖として、研究材料のみならず、工業および食品各分野での利用が期待される。
以下、本発明の具体的態様、技術的範囲等について詳しく説明する。
本発明に係るシアノバクテリアの形質転換体には、イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が導入される。本明細書において、「デンプン合成酵素SSIIa」とは、デンプン合成酵素(スターチシンターゼ)SSII群に属するアイソザイムの1つを意味する。配列番号1には、インディカ品種由来SSIIaのcDNA配列を含む塩基配列が示される。配列番号2に示すように、同塩基配列中、13−2445番目が前駆体型SSIIaをコードする領域に相当する。
イネにおいて、SSIIaは細胞質での翻訳によりまず前駆体が合成される。その後、前駆体は色素体内に輸送されて、その際、N末端のシグナルペプチド領域が切断され、成熟型酵素に変換する。したがって、イネ等の高等植物の細胞を宿主に用い、細胞核への形質転換を行う場合には、前駆体型SSIIaをコードする遺伝子の導入が必要とされる。
これに対して、本発明における遺伝子発現宿主、シアノバクテリアは原核生物なので、オルガネラへの輸送過程を持たず、シグナルペプチドはなくてもかまわない。したがって、本発明においては、前駆体型SSIIaをコードする遺伝子のみならず、成熟型SSIIaをコードする遺伝子をシアノバクテリアに導入することにしてもよい。
後述の実施例に示すように、本発明者らは、前駆体型SSIIaを宿主に発現させるためのプラスミド、および、成熟型SSIIaを宿主に発現させるためのプラスミドの2種類のプラスミドを構築した。より具体的に、前駆体型SSIIa発現用のプラスミドには、配列番号1に示される塩基配列が挿入され、これにより、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる前駆体型SSIIaを宿主シアノバクテリアに発現させた。他方、成熟型SSIIa発現用のプラスミドには、配列番号4に示される塩基配列が挿入され、これにより、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる成熟型SSIIaを宿主シアノバクテリアに発現させた。なお、この成熟型SSIIaは、酵素タンパク質の合成が、成熟タンパク質のN末端から開始されるよう、本来の成熟型SSIIaのN末端の直前にメチオニンが付加されたものである。
また、前駆体型SSIIa発現用のプラスミドは、(1)配列番号7に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、(2)この増幅された遺伝子前半部分を、前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結し、(3)得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製された(後述の実施例参照)。この方法は、増幅領域を限定することによりPCRの効率を高め、また人為的な変異導入の可能性を極力抑えるために有効である。
同様に、成熟型SSIIa発現用のプラスミドは、(1)配列番号8に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、(2)この増幅された遺伝子前半部分を、前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結し、(3)得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製された(後述の実施例参照)。
もちろん、宿主シアノバクテリアに導入されるイネSSIIa遺伝子は、上記配列のものに限定されない。同じインディカ品種由来のSSIIa遺伝子を導入する場合であっても、SNP等により上記配列と一部配列が異なる天然に存在するイネSSIIa遺伝子、あるいは、遺伝子工学的手法により人為的に遺伝子配列を一部改変したイネSSIIa遺伝子を宿主に導入することにしてもよい。また、ジャポニカ品種由来のSSIIa遺伝子、もしくはその改変遺伝子を宿主に導入することにしてもよい。
宿主における遺伝子発現を確保するため、イネSSIIa遺伝子は、リボソーム結合配列などの他の配列と共に導入されることが好ましい。また、イネSSIIa遺伝子は、イネデンプン合成酵素SSIIaをコードするものであって、当該酵素の機能を損なわない範囲であれば必ずしも全長をコードする遺伝子でなくてもよいし、適当な部分長の遺伝子を用いて、当該酵素の活性の有無を検討することにより、活性発現に必須の部分を本発明により解析することも可能である。
なお、イネSSIIaの遺伝子配列は、DDBJ/EMBL/GenBank databases:アクセッション番号「AF419099」にも掲載されており、また、文献H. Jiang, et al., Planta, (2004) 218, 1062-1070においても同遺伝子に関する説明が記載されている。
本発明におけるシアノバクテリアとしては、デンプン又はデンプン様のグリコーゲンを産生できるものであればよく、好ましいシアノバクテリアとしては、シネココッカス(Synechococcus)属のシアノバクテリアが挙げられる。このようなシアノバクテリアとしては、例えば、Synechococcus sp. PCC 7942株が挙げられる。本発明において宿主として使用されるシアノバクテリアは野生型のものをそのまま使用することもできるが、内在性のグリコーゲン合成酵素(GS)をコードする遺伝子の欠損株など、デンプン合成関連酵素をコードする遺伝子を欠損した株を使用することが、外来遺伝子の導入による機能相補の効果を検討するためにも好ましい。このような遺伝子の欠損株を得る方法としては、ジーンターゲッティング法などの公知の手法を用いることができる。
遺伝子の発現用のプロモーターとしては、シアノバクテリアにおいて発現可能なものであれば特に制限はなく、シアノバクテリアのプロモーター領域を使用してもよいし、シアノバクテリアで発現可能であれば外来遺伝子のものをそのまま使用してもよいし、lac プロモーターのようなものを使用してもよい。
宿主のシアノバクテリアへの遺伝子の導入方法としては、プラスミドベクターを使用する方法、ウイルスを使用する方法、パーティクルガンによる方法などの公知の各種の手法を使用することができる。
このようにして外来遺伝子が導入されたシアノバクテリアは、抗生物質による培地を用いた公知の手法により選別することができる。そして、外来遺伝子が導入されたことや、シアノバクテリアにおいて発現していることを、ネイティブPAGEや各種のブロッティング法などの公知の手法により確認することができる。
本発明のデンプン合成酵素SSIIaの機能解析法は、イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が導入されたシアノバクテリアを用いて、当該シアノバクテリアから抽出した貯蔵多糖を解析することからなるものである。例えば、後述の実施例に示すように、前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリア、および、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリアを作製し、両者から抽出した貯蔵多糖を解析し比較することによりデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する方法は、好ましい一態様である。
また、本発明の機能解析法における貯蔵多糖を解析する手法としては、特に制限はないが、貯蔵多糖を枝切り処理し、得られたグルカン鎖を鎖長分布解析に供する方法が例示される。この鎖長分布解析は、例えば、シアノバクテリア形質転換株からアルコール抽出した多糖についてα―1,6結合切断後、キャピラリー電気泳動法により分画を行って、クラスター中の糖鎖の重合度(糖の数)を測定する方法が好ましい。測定された重合度は、同じ重合度の糖鎖を有するものをそれぞれ定量し、糖鎖の全量に対する各重合度の糖鎖の比率(%)を計算して糖鎖の重合度の分布を示すグラフにすることができる。これにより、当該デンプンを形成しているクラスター中の糖鎖の重合度の分布がわかり、デンプンの構造的な特徴を把握することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明者らは、下記実施例において、イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子をシアノバクテリアSynechococcus sp. PCC 7942株に導入し、遺伝子発現の効果を解析した結果、SSIIaが宿主シアノバクテリアにおいて糖鎖合成の機能を発揮していることを明らかにした。
〔実施例1:イネデンプン合成酵素(SSIIa)遺伝子発現のためのプラスミドの構築〕
イネ・インディカ品種IR36由来のSSIIa cDNA配列を含むプラスミドを出発材料として用いた。このプラスミド中には、配列番号2に示されるSSIIa遺伝子のコード領域2,433残基、およびその上流20残基と下流16残基が含まれる。このプラスミドDNAを鋳型としてPCRを行い、SSIIa遺伝子の前半部分を増幅した。
PCRのプライマーとしては、以下の配列のものを用いた。
フォワードプライマー1:5’- AAGGAGGCGA CCATGTCGTC GGCCGTC -3’(配列番号7)
フォワードプライマー2:5’- AAGGAGGTGC GCATGGCGGA TGATGGGGAG AAC -3’(配列番号8)
リバースプライマー:5’- GAAGATCTAG TCGCCTTTGG -3’(配列番号9)
フォワードプライマーには2種類使用したが、これらは異なる部位に対合するもので、共通のリバースプライマーと組み合わせて用いた。
フォワードプライマー1は、開始コドン(3’側に示される下線部分「ATG」)から始まる前駆体タンパク質の上流にリボソーム結合配列(5’側に示される下線部分)が付加されるよう設計した。一方、フォワードプライマー2は、成熟タンパク質N末端の直前に開始コドン(3’側に示される下線部分「ATG」)を付加し、更にその前にリボソーム結合配列(5’側に示される下線部分)が付加されるよう設計した。フォワードプライマー2の鋳型に対合する部位は、フォワードプライマー1と比較して207塩基下流である。
2種のフォワードプライマー1・2を用いたのは、以下の理由による。すなわち、イネにおいて、SSIIa遺伝子は細胞核にて転写され、細胞質での翻訳により前駆体が合成された後、色素体内に輸送されて、その際、N末端のシグナルペプチド領域が切断され、成熟型酵素に変換する。これに対し、本発明における遺伝子発現宿主、シアノバクテリアは原核生物なので、オルガネラへの輸送過程を持たず、シグナルペプチドはなくてもよい。そこでこのシグナルペプチド部分を残した場合(前駆体型)と、あらかじめ取り除いた場合(成熟型)での効果が比較できるよう、前駆体型および成熟型の2種の遺伝子を作成した。
さらに、シアノバクテリアでは翻訳開始のためにコード領域上流のリボソーム結合配列が必要となるため、これもフォワードプライマー中に組み入れた。
リバースプライマーは、イネSSIIa遺伝子の途中、すなわち前駆体タンパク質開始コドンの下流763−782残基に対合する相補配列とした。この配列中には下線で示す BglII 切断部位が存在する。
これらのプライマーの組み合わせで遺伝子増幅を行った場合、遺伝子の前半部分のみが得られることになるが、これは、増幅領域を限定することによりPCRの効率を高め、また人為的な変異導入の可能性を極力抑えるための措置である。そして遺伝子増幅後にリバースプライマー中の制限酵素 BglII 部位を利用して、遺伝子の後半部分と繋ぎ合わせることにした。
PCRによって遺伝子前半部分を増幅するとともに加工(リボソーム結合配列の付加)を施した後、プラスミドベクター pGEM-T Easy (Promega) にクローン化した。次に、遺伝子後半部分との連結を行い終止コドンまでを含む遺伝子を得た。ここで、遺伝子後半部分は、イネSSIIa cDNAの全長を含み、PCRの鋳型として用いたプラスミド由来のDNA断片を使用した。組換えプラスミドから遺伝子を切り出し、シャトルプラスミド pECAN8(Lau and Straus 1985)へのクローン化を行った。このシャトルプラスミドには Synechococcusにおける複製開始に必要な配列が存在するので、シアノバクテリア細胞中で遺伝子を自律増殖させることができる。遺伝子をプラスミドに連結する際に、プラスミド中の lac プロモーターと遺伝子が順方向に配置したクローンを選抜し、SSIIa遺伝子が lac プロモーターに依存して転写されるようにした。
最終的に、挿入断片全長の配列を決定することにより、遺伝子組換え操作中に変異が起こっていないことを確認した。また、本実施例にて作成した2種のプラスミドを用いて宿主において発現させるSSIIaタンパク質のうち、前駆体タンパク質を「SSIIa_pre」、成熟タンパク質を「SSIIa_mat」と呼ぶことにした。
〔実施例2:Synechococcus形質転換株の作成〕
以上に述べた組換えプラスミドを使用して、Golden et al.(1987)の方法に準じSynechococcus sp. PCC 7942株の形質転換を行い、イネSSIIa遺伝子をシアノバクテリア細胞内に導入した。具体的には、液体培地により対数増殖期まで生育した培養液50mlを遠心し、沈殿に集めた細胞を少量(500μl)の液体培地に懸濁した後、DNA溶液1μlを加え、遮光して30℃、20時間振盪を行った。この処理の後、細胞懸濁液をアンピシリン2μg/mlを含む寒天培地上にひろげ、30℃、連続光照射下、形質転換コロニーが現れるまで培養を行った。アンピシリン耐性を指標として、外来遺伝子を含む形質転換株を選抜した。形質転換株の宿主として、内在のグリコーゲン合成酵素を欠損した株(ΔGS)を用いた。この欠損株においては、シアノバクテリアにおけるデンプンに相当するグリコーゲンの蓄積がほとんど起こらない。内在遺伝子欠損株を宿主として用いたのは、外来遺伝子の導入による機能相補の効果をより明確に検討するためである。
〔実施例3:形質転換株における貯蔵多糖の構造解析〕
外来遺伝子を含む形質転換株を選抜後、アンピシリン20μg/mlを含む50mlの液体培地で形質転換株を培養し、得られた細胞からアルコール抽出により貯蔵多糖を調製した。そして、市販のイソアミラーゼによって枝切り処理を行った後、キャピラリー電気泳動にかけてグルカン鎖の鎖長分布を調べた。
図5は、キャピラリー電気泳動により形質転換株(「SSIIa_pre」、「SSIIa_mat」をそぞれ発現させた株)および親株(ΔGS)において検出された枝切り処理後の糖鎖のパターンを示すグラフである。グラフの横軸は、キャピラリー電気泳動における各種糖鎖の保持時間(分:minutes)を示し、縦軸は、各糖鎖の相対量(RFU)を示す。またグラフ中の各ピークに付された数字はグルコース重合度を示す。
同図に示すように、遺伝子導入の親株として用いたグリコーゲン合成酵素欠損株(ΔGS)においては、貯蔵多糖に由来するオリゴ糖鎖がほとんど検出されなかった。すなわちグリコーゲン合成酵素活性を欠損したことにより、グルコースを重合する機能が失われたものと考えられた。
これに対し、2種の形質転換株においてはいずれもグルカン糖鎖が検出された。糖鎖の量比としてはいずれもグルコース重合度6をピークとしたものであった。親株においては糖鎖がほとんど認められなかったことから、形質転換株に見出された糖鎖は、もっぱら導入したSSIIa遺伝子産物によるものと考えられる。
以上の実験結果から、シアノバクテリアに導入されたイネデンプン合成酵素SSIIaは、生体内において糖鎖合成の機能を発揮していることが示された。本発明の形質転換体は、イネ遺伝子産物により生成した多糖が、本来シアノバクテリアが蓄積する多糖と比較して、どのような構造的特徴を有するか、また、前駆体型、成熟型2種の遺伝子導入株について今回同様な鎖長分布が認められたが、イネ遺伝子の産物がシアノバクテリアにおいてプロセシングを受けているかどうか、等といった種々の問題を検討する上で、有益な研究材料として利用できるものである。
以上のように、本発明は、イネデンプンの特異的な構造の形成に深く関与し、特に、ジャポニカ、インディカ品種におけるデンプン物性に差異が生じる主要な原因とされている、イネデンプン合成酵素SSIIaの機能解明において非常に有効な研究材料を提供するものである。
また、本発明は、デンプン合成技術に利用可能である。例えば、イネSSIIaの機能上の特徴を生かしたデンプンの構造をデザインし、それを宿主に産生させることも可能となり、新規なクラスター構造を有するデンプンの開発が可能となる。
イネはデンプン源として貴重な植物であり、本発明は、デンプンが利用される食品工業や紙工業、生分解性プラスチック工業など各種の産業分野に広く利用できるものである。
(A)〜(C)は、生物における貯蔵性ポリグルカンの構造を示す概念図である。 アミロペクチンのクラスター構造を示す図である。 (a)・(b)は、イネ胚乳におけるジャポニカとインディカとのアミロペクチンのクラスター構造の相違を示す図である。 生物における貯蔵性ポリグルカンである、アミロース、アミロペクチン、及びグリコーゲンの生合成経路の概要を示す図である。 本発明の一実施例に係る実験結果であり、Synechococcusグリコーゲン合成酵素欠損株(ΔGS)、およびイネ SSIIa 遺伝子を導入した形質転換株(「SSIIa_pre」は前駆体型、「SSIIa_mat」は成熟型)から抽出した貯蔵多糖の枝切り処理後のキャピラリー電気泳動による鎖長分析結果を示すグラフである。グラフ中の各ピークに付された数字はグルコース重合度を示す。
配列番号1:シアノバクテリアにおいて発現する前駆体型イネデンプン合成酵素(SSIIa_pre)遺伝子の配列
配列番号2:シアノバクテリアにおいて発現する前駆体型イネデンプン合成酵素(SSIIa_pre)の遺伝子配列およびアミノ酸配列
配列番号3:シアノバクテリアにおいて発現する前駆体型イネデンプン合成酵素(SSIIa_pre)のアミノ酸配列
配列番号4:シアノバクテリアにおいて発現する成熟型イネデンプン合成酵素(SSIIa_mat)遺伝子の配列
配列番号5:シアノバクテリアにおいて発現する成熟型イネデンプン合成酵素(SSIIa_mat)の遺伝子配列およびアミノ酸配列
配列番号6:シアノバクテリアにおいて発現する成熟型イネデンプン合成酵素(SSIIa_mat)のアミノ酸配列
配列番号7:前駆体型イネデンプン合成酵素SSIIa遺伝子前半部増幅用のフォワードプライマー
配列番号8:成熟型イネデンプン合成酵素SSIIa遺伝子前半部増幅用のフォワードプライマー
配列番号9:前駆体型(および成熟型)イネデンプン合成酵素SSIIa遺伝子前半部増幅用のリバースプライマー

Claims (15)

  1. シアノバクテリアにイネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリアの形質転換体。
  2. イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が、前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子である請求項1記載の形質転換体。
  3. 配列番号1に示される塩基配列が挿入されたプラスミドを使用してシアノバクテリアの形質転換を行い、これにより、前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入した請求項2記載の形質転換体。
  4. 配列番号1に示される塩基配列が挿入されたプラスミドは、配列番号7に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、この増幅された遺伝子前半部分を前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結して得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製されたものである、請求項3記載の形質転換体。
  5. イネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子が、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子である請求項1記載の形質転換体。
  6. 配列番号4に示される塩基配列が挿入されたプラスミドを使用してシアノバクテリアの形質転換を行い、これにより、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入した請求項5記載の形質転換体。
  7. 配列番号4に示される塩基配列が挿入されたプラスミドは、配列番号8に示される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号9に示される塩基配列からなるリバースプライマーを使用したPCRによってSSIIa遺伝子の前半部分を増幅し、この増幅された遺伝子前半部分を前記リバースプライマー中の制限酵素BglII切断部位を利用して遺伝子後半部分と連結して得られた遺伝子配列をプラスミドに挿入することにより調製されたものである、請求項6記載の形質転換体。
  8. シアノバクテリアが、シネココッカス(Synechococcus)属のシアノバクテリアである請求項1〜7のいずれか1項に記載の形質転換体。
  9. シアノバクテリアが、シネココッカスPCC7942(Synechococcus sp. PCC 7942)株である請求項8記載の形質転換体。
  10. シアノバクテリアが、内在性のグリコーゲン合成酵素(GS)をコードする遺伝子の欠損株である請求項8又は9記載の形質転換体。
  11. シアノバクテリアにイネ由来デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入して、当該シアノバクテリアから抽出した貯蔵多糖を解析することによりデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する方法。
  12. 前駆体型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリア、および、成熟型デンプン合成酵素SSIIaをコードする遺伝子を導入したシアノバクテリアを作製し、両者から抽出した貯蔵多糖を解析し比較することによりデンプン合成酵素SSIIaの機能を解析する方法。
  13. 貯蔵多糖の解析が、貯蔵多糖を枝切り処理して得られたグルカン鎖の鎖長分布解析である、請求項11又は12記載のデンプン合成酵素SSIIaの機能解析法。
  14. キャピラリー電気泳動により鎖長分布解析を行うことを特徴とする、請求項13記載のデンプン合成酵素SSIIaの機能解析法。
  15. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の形質転換体により生産された多糖。

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