JP4267373B2 - 車両用電動機冷却システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用電動機冷却システムに係り、特に、電動機の内部をオイルで冷却し、温度が上昇したオイルを冷却する車両用電動機冷却システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用電動機の冷却、特に電動機内部の固定子のコイルエンド等を冷却するために潤滑油を用いることが行われる。例えば、特許文献1においては、空冷放熱フィンが外周に設けられたハウジングを備える電動機について、潤滑油を冷媒として電動機の回転軸内部に導入し、回転子の回転により回転軸に設けられた冷媒噴出ノズルから潤滑油を噴出させることが開示される。この場合、冷媒噴出ノズルから噴出された潤滑油は霧状となり、ハウジングの内気にふれて冷却され、固定子を冷却する。
【0003】
また、特許文献2には、モータケースを二重壁としてケース上方の油路室、下方にオイル溜めを設け、オイル溜めの開口部をふさぐようにフィン付プレートとその外側のカバーを取り付け、プレートとカバーの間に水冷室が設けられるモータが開示される。この場合には、オイルポンプによりオイルが油路室からステータコイルに流下しオイル溜めに至り、オイル冷却専用の水冷室により冷却される。オイルの一部は減速装置等にも供給される。
【0004】
特許文献3には、ロータの永久磁石を冷却するとともに永久磁石の発熱により潤滑油を早期昇温させて動力伝達装置のフリクションロスを低減するために、永久磁石に近接してロータヨーク内部に冷却用油路を設け、オイルポンプで動力伝達装置用潤滑油を循環させることが開示される。この場合、モータハウジングに水冷ジャケットが設けられてステータをモータハウジング外部から冷却する構成が示されているが、ロータ冷却用の潤滑油はむしろその昇温が積極的に利用されている。
【0005】
なお、単なる車両用のオイルの冷却手段としては、特許文献4においてオイルパン下面に空冷フィンを設ける構成が、特許文献5においてシリンダブロック冷却用ウオータジャケットの中にオイル循環パイプの外壁の一部を露出させる構成が、特許文献6においてオイルを通す管路と自動車のエアコンディショナの低圧側配管の一部との間で熱交換可能なオイルクーラーの構成が、それぞれ開示されているが、これらは、直接的には電動機の冷却に用いられるものではない。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−288950号公報
【特許文献2】
特開2001−251814号公報
【特許文献3】
特開2001−190047号公報
【特許文献4】
実開昭63−186914号公報
【特許文献5】
実開平1−88009号公報
【特許文献6】
実開平5−8250号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
車両用電動機の冷却に動力伝達装置用のオイルを用いる場合には、冷却用のオイルが少ない場合にはステータあるいはロータからの受熱によりオイル自身の温度が上昇し、冷却性能が低下する恐れがある。また、動力伝達装置が高速回転している場合にはギヤ損失、すなわちギヤ発熱が増大し、オイル温度が上昇して冷却性能がさらに低下する可能性がある。このため車両用電動機の所定の性能を発揮するためには、車両用電動機が大型化し、高速化が妨げられる。
【0008】
そこで、車両用電動機の冷却性能を向上させるために、オイルの十分な冷却が望まれるが、オイルは水に比べ熱伝達率が低く、その冷却を効率よく行う観点からみると、従来技術のオイルの冷却方法又は冷却手段にはなお課題が残されている。例えば特許文献1におけるオイルの冷却は、モータハウジングに設けられた空冷放熱フィンに依存するため冷却性能が十分とはいえず、車両用電動機の小型化、高速化が図れない。また、特許文献2におけるオイルの冷却は専用の水冷室を設けて行われるため、オイル溜めやフィン付プレートとその外側のカバー等のモータごとに個別のモータハウジング構造を要し、コストアップの要因となり、車両用電動機の小型化を阻害する。またこの場合、モータハウジングにも冷却機構があるとすれば、モータに複数の冷却機構を備えることになり、冷却システム全体として効率が必ずしもよくない。
【0009】
なお、特許文献3にはオイルの冷却方法が開示されていず、特許文献4−6に開示されているオイル冷却方法には、電動機の冷却、特に電動機内部のコイルエンド等の冷却との関係が開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、車両用電動機の冷却性能の向上を可能とする車両用電動機冷却システムを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明に係る車両用電動機冷却システムは、ロータ及びステータを有するモータ部と、モータ部を収容するモータケースとを含み、オイルが内部に供給されるモータケースオイル供給口と、内部のオイルを外部に排出するモータケースオイル排出口とがモータケースに設けられる車両用電動機と、回転部分を有する動力伝達要素と、回転する伝達要素を収容する伝達装置ケースとを含み、オイルが内部に供給される伝達装置オイル供給口と、伝達装置ケースの底部のオイル保持部分に対応して設けられ動力伝達要素の回転部分によって掻き揚げられ速度が与えられたオイルをオイル保持部分から外部に排出する伝達装置オイル排出口とが伝達装置ケースに設けられる車両用動力伝達装置と、オイル掻き揚げ部分に対応する車両用動力伝達装置の外周に設けられる熱交換部と、モータケースオイル排出口から出て伝達装置オイル供給口より伝達装置ケース内に入り、伝達装置オイル排出口から出てモータケースオイル供給口よりモータケース内に戻るオイル循環路であって、伝達装置ケース内で掻き揚げられたオイルが熱交換部により冷却され、冷却され速度が与えられたオイルが循環するオイル循環路と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、車両用動力伝達装置内において回転部分により掻き揚げられ速度が与えられたオイルを循環させる。そして、車両用動力伝達装置の外周には、内部のオイル掻き揚げ部分に対応し熱交換部が設けられる。オイルの熱伝達率は水等に比較して低いが、オイル掻き揚げ部分においてはオイルが車両用動力伝達装置のケースの内壁伝いに速度をもって勢い良く流れており、一般に流速が速ければ熱伝達率は高くなるので、オイルと内壁との間の熱伝達率が高い。したがって、この部分に熱交換部を設けることで、効率的なオイル冷却を行うことができ、車両用電動機の冷却性能を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る車両用電動機冷却システムにおいて、熱交換部は、水冷ジャケットであることが好ましい。また、本発明に係る車両用電動機冷却システムにおいて、熱交換部は、空冷フィンであることが好ましい。これにより、循環するオイルを効率的に冷却できる。
【0015】
また、本発明に係る車両用電動機冷却システムは、ロータ及びステータを有するモータ部と、モータ部を収容するモータケースとを含む車両用電動機と、モータケース内においてモータ部を冷却するオイルを、モータケース内とオイルを冷却する熱交換部との間で循環させるオイル循環路と、を備える車両用電動機冷却システムであって、オイル循環路は、オイルポンプにより循環されるオイルをモータケース内に導くオイル循環路であり、熱交換部は、車両用エアコンディショナの圧縮機により加圧された高温高圧の気化冷媒を凝縮機により液化した高圧側液体冷媒を分流して流す容器であって、その内部をオイル循環路の一部が通るオイル冷却器であることを特徴とする。
【0016】
車両用エアコンディショナの冷媒を用いてオイルを冷却する場合、気化して低温(例えば0℃)の低圧側冷媒を用いる考えもあるが、この場合は、再び液化するための圧縮機の負荷が大きくなる。上記構成により、オイルポンプを用いてオイルを循環させ、オイル冷却器においてオイルを冷却する際、オイル冷却器に車両用エアコンディショナの高圧側液体冷媒を通す。すなわち、高圧側液体冷媒はオイル(例えば100℃の温度)を冷却するにはなお十分な温度(例えば30−45℃)であり、圧縮機を通さないので、直接圧縮機に負荷をかけることなく、エアコンディショナの冷媒循環路に冷媒を戻すことができる。したがって、車両用電動機の冷却システム全体として、効率のよいものとできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。なお、以下において車両用電動機は、誘導電動機として説明するが、それ以外の永久磁石を用いたロータを有する車両用電動機であってもよい。車両用電動機は、車両を駆動するために用いるものであってもよく、それ以外の用途のものであってもよい。
【0018】
図1は、車両用電動機冷却システム10の構成を示す図で、この車両用電動機冷却システム10は、車両用電動機20と、冷却用オイルを循環するオイル循環路40と、車両用電動機20に接続される車両用動力伝達装置60と、車両用動力伝達装置60の外周の一部に設けられたオイル冷却用の水冷ジャケット70を含んで構成される。
【0019】
図1において断面図で示される車両用電動機20は、図示されていない制御部により動作が制御されるかご型誘導電動機で、その出力する回転エネルギを車両用動力伝達装置60に供給する機能を有する。車両用電動機20は、円筒形の筐体であるモータケース22と、モータケース22の内部に設けられた軸受24と、軸受24に軸支されモータケース22の一端の開口部から外部に突き出る回転軸26と、回転軸26に固定され回転軸26と一体となって回転するロータ28と、ロータ28の外周と隙間をあけて配置されモータケース22に取り付けられるステータ30とを含む。ステータ30は、ステータコアに設けられたスロットにコイルが配設され、その端部はコイルエンド32としてステータコアの外側に突き出る。モータケース22には、モータケース22内部、特にコイルエンド32を冷却するためのオイルを循環するためのモータケースオイル供給口52とモータケースオイル排出口44とが設けられる。モータケースオイル供給口52は、例えばモータケース22の上方位置に設けて、供給されるオイル54が自然落下によりコイルエンド32を伝って流下するようにすることができる。
【0020】
車両用動力伝達装置60は、歯車等の動力伝達要素を内蔵する装置で、車両用電動機20等から供給された回転エネルギを、車両の走行に適した回転数とトルクに変換する機能を有する。図2は、車両用動力伝達装置60の一部断面図である。ケース62の内部にはギヤ等の回転部分64があり、その潤滑のためにオイル50が用いられる。このオイルは、回転部分64により掻き揚げられて速度が与えられ、ケース62の内側壁伝いに勢いよく流れる。オイルの循環のために、ケース62には、動力伝達装置オイル供給口46と動力伝達装置オイル排出口48を備える。
【0021】
車両用動力伝達装置60のケース62の外側には水冷ジャケット70が取り付けられる。水冷ジャケット70は、熱伝導性のよい材料、例えばアルミで形成され、内部に循環水を通す部材で、循環水により熱を外部に運び出す熱交換部としての機能を有する。水冷ジャケット70は、循環する冷却水を保持する筐体72と、筐体72に設けられ、図示されていない冷却水循環ポンプに接続される冷却水供給口74と冷却水排出口76からなる。筐体72の内部には、図1に一部を示すように、冷却水の接触面積を大きくする複数の冷却フィン又は仕切り壁78が設けられる。その取り付け位置は、ケース62の内側壁においてオイルが掻き揚げられる部分に対応する位置で、筐体72の形状は、ケース62のその部分の外周に倣うように形成される。また、筐体72が取り付けられるケース62の外周面には、筐体72とケース62との密着取り付けのために必要な加工が施される。
【0022】
オイル循環路40は、車両用電動機20の内部と車両用動力伝達装置60の内部を結ぶオイル流路で、内部を車両用電動機20の冷却と車両用動力伝達装置60の潤滑に用いられるオイルを循環させる機能を有する。図1に示すように、オイル循環路40は、「−モータケース22の底部におけるオイル42の保持部分−モータケースオイル排出口44−動力伝達装置オイル供給口46−車両用動力伝達装置60内部の回転部分64を経由してその底部のオイル50の保持部分−動力伝達装置オイル排出口48−モータケースオイル供給口−コイルエンド32等を流下するオイル54−モータケースの底部におけるオイル42の保持部分−」の経路を有する。オイルは、車両用動力伝達装置60の回転部分64により掻き揚げられ速度が与えられるので、オイル循環路40に特別のオイルポンプを設けなくてもよい。もちろん必要に応じオイルポンプを設けることもできる。
【0023】
上記のように、オイル循環路40において、車両用伝達装置60のケース62に、その内部のオイル掻き揚げ部分に対応して水冷ジャケット70が設けられるので、そこでオイルと冷却水との間で熱交換が行われ、オイルが冷却される。オイルの熱伝達率は水の約1/10と小さいが、図2に示すように、オイルは回転部分64により掻き揚げられて速度が与えられ、ケース62伝いに勢いよく流れるので、その部分に熱交換部を設けることで、オイルを効率よく冷却することができる。熱交換部としては水冷ジャケット以外のものでもよい。例えば、水冷ジャケットの代わりに空冷フィン80をケース62の外側に設けた様子を図3に示す。
【0024】
車両用電動機がモータケース冷却用の水冷ジャケット等を備えている場合には、その水冷ジャケット等の熱交換部を効果的に用いてオイルを冷却することができる。図4は、水冷ジャケットを備える車両用電動機についての車両用電動機冷却システム110を示す図である。図1と同様の要素については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。車両用電動機20は、図1に説明したものと同様のモータであって、モータケース22の上方位置にモータケースオイル供給口52が設けられ、その底部にモータケースオイル排出口44とが設けられる。
【0025】
モータケース22には、モータケース22を冷却するための水冷ジャケット170が備えられる。水冷ジャケット170は、熱伝導性のよい材料、例えばアルミで形成され、内部に循環水を通す部材で、循環水により熱を外部に運び出す熱交換部としての機能を有する。水冷ジャケット170は、循環する冷却水を保持する筐体172と、筐体172に設けられ、図示されていない冷却水循環ポンプに接続される冷却水供給口174と冷却水排出口176からなる。
【0026】
車両用電動機20を冷却するためのオイルを循環させるオイル循環路140には、オイルを循環させるためのオイルポンプ180が設けられる。車両用電動機を冷却するためのオイルは、車両用機器に用いられる潤滑オイルの全体あるいはその一部を用いることができる。オイル循環路140は、図4に示すように、「−モータケース22の底部におけるオイル42の保持部分−モータケースオイル排出口44−オイルポンプ180−モータケースオイル供給口−コイルエンド32等を流下するオイル54−モータケース22の底部におけるオイル42の保持部分−」の経路を有する。
【0027】
オイル循環路140は、その一部が水冷ジャケット170の内部を通る。図5及び図6は、水冷ジャケット170の側面断面図と平面断面図である。水冷ジャケット170の内部は、冷却水と筐体172との接触面積を増大させるための水冷フィンあるいは仕切り壁178が例えば5mm程度の間隔で平行に設けられ、冷却水は、この仕切り壁178により案内されて筐体172内を蛇行して流れる。オイル循環路140は、この仕切り壁178の間の冷却水流路179、上記の例では5mmの幅を有する流路の中に配置される。より詳しくは、図5に示すように、オイル循環路140は、冷却入口142から筐体172の内部に入り、2方向に分岐した冷却部分循環路144が筐体172内部の冷却水流路179を通り、冷却出口144において筐体172の外部に出て、2箇所のモータケースオイル供給口52に至る。冷却部分循環路144の分岐数は、モータケースオイル供給口52の数に応じて増減することができる。
【0028】
冷却部分循環路144には、熱交換表面積を増やす仕切りを有するフィンチューブが用いられる。フィンチューブは、車両の例えばラジエータに用いられている扁平フィンチューブを用いることができる。図6に示すように、扁平フィンチューブは、あたかも複数本の扁平パイプを積み重ねた構成を有するので、その内側を流れるオイルとの接触面積、及びその外側を流れる冷却水との接触面積を増大させ、熱伝達率の低いオイルを効率的に冷却することができる。このように、モータケースの冷却と、オイルの冷却とを、1つの水冷ジャケットにより構成できるので、車両用電動機の冷却システムを効率よくコンパクトにすることができる。
【0029】
オイルの冷却を、車両用エアコンディショナ用の冷媒を用いて行うこともできる。図7は、車両用エアコンディショナの冷媒循環サイクルから冷媒の一部を分流し、その冷媒をオイル冷却に用いる車両用電動機冷却システム210を示す図である。図1と同様の要素については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。車両用電動機20は、図1に説明したものと同様のモータであって、モータケース22の上方位置にモータケースオイル供給口52が設けられ、その底部にモータケースオイル排出口44とが設けられる。
【0030】
車両用電動機20を冷却するためのオイルを循環させるオイル循環路240には、オイルを循環させるためのオイルポンプ280と、オイルを冷却するためのオイル冷却器270が設けられる。車両用電動機を冷却するためのオイルは、車両用機器に用いられる潤滑オイルの全体あるいはその一部を用いることができる。オイル循環路240は、図7に示すように、「−モータケース22の底部におけるオイル42の保持部分−モータケースオイル排出口44−オイルポンプ280−オイル冷却器270−モータケースオイル供給口−コイルエンド32等を流下するオイル54−モータケース22の底部におけるオイル42の保持部分−」の経路を有する。
【0031】
オイル冷却器270は、車両用エアコンディショナの冷媒を内部に流す容器であって、その内部にオイル循環路240の一部を通すことで、冷媒によりオイルの熱を外部に運び出す熱交換部としての機能を有する。オイル冷却器270は、車両用エアコンディショナの冷媒循環サイクルから分流した冷媒を保持する冷却ケース272と、冷却ケース272に設けられる冷媒供給口274と冷媒排出口276からなる。オイル循環路240の一部で、オイル冷却器270の中を通る冷却部分循環路244は、図7に示す蛇行配置により、冷媒との接触面積を大きくする。
【0032】
図7において、車両用エアコンディショナの冷媒循環サイクルは、液体冷媒を収容するレシーバ220と、電磁弁222、膨張弁224、蒸発器226等からなる冷媒気化部と、気化冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機228と、高温高圧の気化冷媒を液化する凝縮器230を含む。凝縮器230には、冷却用のファン232が備えられる。冷媒は、冷媒循環路234によりこれらの機器の間を循環し、液化冷媒が電磁弁222及び膨張弁224の開放により一部気化し、蒸発器226によってほぼ100%気化して約0℃の気化冷媒となる。これを用いて車両の各部のエアコンディショニングを行うことができる。低温の気化冷媒は、圧縮機により高温高圧の気体とされ、凝縮器230において再び液体に戻され、約30−45℃の液化冷媒となってレシーバ220に収容される。
【0033】
オイルの冷却のために、冷媒循環路234が分流され、オイル冷却路235としてオイル冷却器270の中を流れ、その後再び冷媒循環路234に戻されて合流する。この冷媒循環路234からのオイル冷却路235の分岐は、レシーバ220と電磁弁222の間の冷媒循環路234で行われ、オイル冷却路235の合流は、圧縮機228と凝縮器230との間の冷媒循環路234でなされる。すなわち、オイル冷却路235に分流される冷媒は、上記の例では約30−45℃の温度を有する。オイル冷却路235には、液化冷媒を流すために小容量の液ポンプ236と、逆流防止弁238が設けられる。
【0034】
このように、オイル冷却器に車両用エアコンディショナの高圧側液体冷媒を通すことで次のような利点がある。すなわち、高圧側液体冷媒はオイル(例えば100℃の温度)を冷却するにはなお十分な温度(例えば30−45℃)を有しており、沸騰熱伝達なので熱伝達率が高い。オイル冷却路235の気化された冷媒は、車両用エアコンディショナの圧縮機に入らないので、直接的に負荷をかけないですむ。仮に、車両用エアコンディショナの低圧側の冷媒(膨張弁を通して冷えた冷媒)を用いると、その分圧縮機の負荷が大きくなり、より大型の圧縮機が必要となる。例えば、液ポンプの仕事は、オイル冷却路の配管の圧力損失程度の数Wの仕事で済むのに対し、液化するための圧縮機の仕事は、およそ数100Wを要する。このように、車両用エアコンディショナに対してあまり負荷をかけることなく、オイルを効果的に冷却でき、車両用電動機の冷却システム全体として、効率のよいものとできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明に係る車両用電動機冷却システムによれば、車両用電動機を冷却するオイルを効率よく冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施の形態における車両用電動機冷却システムの構成を示す図である。
【図2】 本発明に係る実施の形態の車両用電動機冷却システムにおける車両用動力伝達装置の一部断面図である。
【図3】 図2の水冷ジャケットの代わりに空冷フィンを用いる例を示す図である。
【図4】 他の実施の形態に係る車両用電動機冷却システムの構成を示す図である。
【図5】 他の実施の形態に係る車両用電動機冷却システムにおける水冷ジャケットの側面断面図である。
【図6】 他の実施の形態に係る車両用電動機冷却システムにおける水冷ジャケットの平面断面図である。
【図7】 さらなる他の実施の形態に係る車両用電動機冷却システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
10,110,210 車両用電動機冷却システム、20 車両用電動機、22 モータケース、28 ロータ、30 ステータ、32 コイルエンド、40,140,240 オイル循環路、42,50,54 オイル、60 車両用動力伝達装置、62 ケース、64 回転部分、70,170 水冷ジャケット、80 空冷フィン、144,244 冷却部分循環路、180,280 オイルポンプ、226 蒸発器、228 圧縮機、230 凝縮器、234 冷媒循環路、235 オイル冷却路、270 オイル冷却器。

Claims (4)

  1. ロータ及びステータを有するモータ部と、モータ部を収容するモータケースとを含み、オイルが内部に供給されるモータケースオイル供給口と、内部のオイルを外部に排出するモータケースオイル排出口とがモータケースに設けられる車両用電動機と、
    回転部分を有する動力伝達要素と、回転する伝達要素を収容する伝達装置ケースとを含み、オイルが内部に供給される伝達装置オイル供給口と、伝達装置ケースの底部のオイル保持部分に対応して設けられ動力伝達要素の回転部分によって掻き揚げられ速度が与えられたオイルをオイル保持部分から外部に排出する伝達装置オイル排出口とが伝達装置ケースに設けられる車両用動力伝達装置と、
    オイル掻き揚げ部分に対応する車両用動力伝達装置の外周に設けられる熱交換部と、
    モータケースオイル排出口から出て伝達装置オイル供給口より伝達装置ケース内に入り、伝達装置オイル排出口から出てモータケースオイル供給口よりモータケース内に戻るオイル循環路であって、伝達装置ケース内で掻き揚げられたオイルが熱交換部により冷却され、冷却され速度が与えられたオイルが循環するオイル循環路と、
    を備えることを特徴とする車両用電動機冷却システム。
  2. 請求項1に記載の車両用電動機冷却システムにおいて、熱交換部は、水冷ジャケットであることを特徴とする車両用電動機冷却システム。
  3. 請求項1に記載の車両用電動機冷却システムにおいて、熱交換部は、空冷フィンであることを特徴とする車両用電動機冷却システム。
  4. ロータ及びステータを有するモータ部と、モータ部を収容するモータケースとを含む車両用電動機と、
    モータケース内においてモータ部を冷却するオイルを、モータケース内とオイルを冷却する熱交換部との間で循環させるオイル循環路と、
    を備える車両用電動機冷却システムであって、
    オイル循環路は、オイルポンプにより循環されるオイルをモータケース内に導くオイル循環路であり、
    熱交換部は、車両用エアコンディショナの圧縮機により加圧された高温高圧の気化冷媒を凝縮機により液化した高圧側液体冷媒を分流して流す容器であって、その内部をオイル循環路の一部が通るオイル冷却器であることを特徴とする車両用電動機冷却システム。
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