以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用開閉装置を備えた車両を示す説明図であり、図2は図1に示す車両の要部を拡大して示す拡大平面図である。
図1に示すように、この車両11の側部には開閉部材であるスライドドア12が設けられている。このスライドドア12は車両11に固定されたガイドレール13に案内されて図中実線で示す全開位置と一点鎖線で示す全閉位置との間で開閉自在となっており、車室内に設けられたセカンドシート14やサードシート15への乗降や荷物の積み卸し等を行う際には全開位置にまで開けて使用される。
図2に示すように、スライドドア12にはローラアッシー16が取り付けられており、このローラアッシー16がガイドレール13に案内されることによりスライドドア12は車両前後方向に移動可能となっている。また、ガイドレール13の車両前方側には車室内側に湾曲する曲部13aが設けられており、この曲部13aにローラアッシー16が案内されることによりスライドドア12は車両11の側面と同一面に収まるように車両11の内側に引き込まれて閉じられるようになっている。
この車両11にはスライドドア12を自動的に開閉するために車両用開閉装置21(以下、開閉装置21とする。)が設けられている。この開閉装置21はガイドレール13の車両前後方向の略中央部に隣接して車両11に固定されたアクチュエータユニット22とアクチュエータユニット22とスライドドア12とを接続する2本のケーブル23とを備えており、これらのケーブル23はそれぞれ車両前方側と後方側とからローラアッシー16を介してスライドドア12に接続されている。また、ガイドレール13の車両前方側と後方側の端部には反転プーリ24,25が設けられており、ケーブル23はこれらの反転プーリ24,25を介してアクチュエータユニット22に案内されている。そして、いずれか一方のケーブル23をアクチュエータユニット22により引くことでスライドドア12の開閉動作が行われるようになっている。
図3は図2に示す車両用開閉装置の詳細を示す一部切り欠き断面図であり、図4は図3に示すA−A線に沿う断面図である。また、図5は図3に示す車両用開閉装置の分解斜視図である。
図3〜図5に示すように、開閉装置21は駆動源としての電動モータ26と電動モータ26に固定される減速機27とを備えた駆動ユニット28を有しており、スライドドア12を開閉するための駆動力は駆動手段としての駆動ユニット28により発生されるようになっている。電動モータ26は給電線31を介して図示しない制御装置に接続されており、この制御装置により作動制御されるようになっている。この制御装置としては、CPUやメモリ等を備えた所謂マイクロコンピュータが用いられており、図示しないスライドドア開閉スイッチからの指令信号に応じて電動モータ26に所定の方向の直流電流を供給し、電動モータ26を正逆回転させることができるようになっている。
一方、図4に示すように、減速機27は電動モータ26に固定されるギヤケース32aの内部に減速機構33を収容した構造となっており、図示する場合には、減速機構33としては電動モータ26の回転軸の外周に形成されたウォーム34とギヤケース32aの内部に回転自在に収容されたウォームホイル35とを備えたウォームギヤ機構が用いられている。また、ギヤケース32aには駆動ユニット28の出力軸36が突設されており、電動モータ26の回転は減速機構33を介して所定の回転にまで減速されて出力軸36から出力されるようになっている。
なお、図示する場合には、減速機構33としてウォームギヤ機構が用いられているが、これに限らず、たとえば歯数の異なる平歯車を組み合わせたものなど、他の形式の減速機構を用いるようにしてもよい。
また、ギヤケース32aには電磁クラッチ37が設けられており、この電磁クラッチ37により減速機構33と出力軸36との間の動力伝達を断続することができるようになっている。この電磁クラッチ37は所謂摩擦式の電磁クラッチとなっており、駆動ディスク41と従動ディスク42およびクラッチコイル43とを有している。駆動ディスク41は鋼材により円盤状に形成されており、ウォームホイル35に接続されてウォームホイル35と一体的に回転するようになっている。従動ディスク42は鋼材により円盤状に形成されており、出力軸36にスプライン係合されて出力軸36と一体的に回転するとともに出力軸36に対して軸方向に移動自在となっている。クラッチコイル43はギヤケース32aに固定されたコイルホルダ44に収容されて駆動ディスク41の背部つまり従動ディスク42と接する摩擦面とは反対側に配置されており、図示しない制御装置から電力が供給されることにより磁力を生じるようになっている。なお、ギヤケース32aには電磁クラッチ37を覆うようにクラッチカバー32bが取り付けられている。そして、クラッチコイル43に磁力が生じると、従動ディスク42が駆動ディスク41に近づく方向に移動して、それぞれのディスク41,42がその摩擦面において互いに圧着される。これにより、ウォームホイル35と出力軸36との間はそれぞれのディスク41,42を介して固定された動力伝達状態とされ、ウォームホイル35つまり電動モータ26の回転が出力軸36に伝達されることになる。また、クラッチコイル43への給電が停止されると、それぞれのディスク41,42の間の摩擦力が低下して、ウォームホイル35と出力軸36とは動力遮断状態となる。このように、この電磁クラッチ37により電動モータ26と出力軸36との間の動力伝達が断続されるようになっている。
駆動ユニット28にはギヤケース32aに固定されるケース体45とケース体45に固定されるカバー46とを備えた収容ケース47が固定されており、ケース体45に設けられた出力部材収容部48の内部には出力部材51が収容されている。この場合、出力部材51は外周面に2本のケーブル案内溝52が螺旋状に形成された樹脂製のドラム51となっており、出力部材収容部48の内部で回転自在となっている。
出力部材収容部48はドラム51の外径より若干大きな内径を有してドラム51の外周面に対向する円筒部53を有しており、この円筒部53によりドラム51の径方向の外周が覆われるようになっている。また、カバー46はこの出力部材収容部48の開口端を閉塞するようになっており、これによりドラム51は円筒部53とカバー46により外部から隔離されている。
ケース体45には出力部材収容部48に対して略V字状に配置された2つのガイド部54が設けられており、各ケーブル23の一部は、それぞれ対応するガイド部54の端面55に設けられたケーブル挿通孔56からケース体45の内部に挿通されてドラム51に案内されている。つまり、ケーブル23のドラム51側の一部は収容ケース47の内部に移動自在に収容されている。そして、これらのケーブル23は、その端部に設けられたタイコ部23aがドラム51の端面に形成されたケーブル固定溝57に取り付けられるとともに、対応するケーブル案内溝52に互いに逆向きに複数回巻き付けられている。つまり、ドラム51はケーブル23を介してスライドドア12に接続されており、駆動ユニット28の駆動力は駆動ユニット28とスライドドア12との間に設けられるケーブル23によりスライドドア12に伝達されるようになっている。
このとき、ドラム51の外周面と円筒部53との隙間はケーブル23の外径より狭くなっており、ケーブル23がドラム51に対して緩んだ場合であっても、ケーブル23がケーブル案内溝52から外れることがない。また、このケース体45は駆動ユニット28に固定され、ドラム51は駆動ユニット28の出力軸36に固定されるので、ドラム51の外周と円筒部53の内面とをケーブル23の外径より狭い一定の隙間となるように位置合わせするのは容易である。
このように、この開閉装置21では、ギヤケース32aに固定されるケース体45に出力部材収容部48を設け、このケース体45に固定されるカバー46で出力部材収容部48を閉塞するようにしたので、出力部材収容部48に収容されるドラム51と出力部材収容部48との位置合わせを容易にすることができる。したがって、ドラム51の外周面と出力部材収容部48の内面との隙間を狭い一定の間隔に設定することが可能となり、ケーブル23のケーブル案内溝52からの離脱を防止することができる。また、ケーブル23が巻き付けられたドラム51を出力部材収容部48に装着する際においても、ケーブル23のケーブル案内溝52からの離脱が防止されるので、この開閉装置21の組立作業を容易にすることができる。
図6はドラムと出力軸との固定部分の詳細を示す断面図であり、図6に示すように、ドラム51と出力軸36との間には動力伝達部材61が設けられており、ドラム51はこの動力伝達部材61を介して出力軸36に固定されるようになっている。
出力軸36のギヤケース32aから突出した部分は、ギヤケース32aの内部における軸径と略同一の軸径に形成された主軸部62を有しており、この主軸部62の先端には主軸部62より小径の小径軸部63が突設されている。また、主軸部62の外周面には係合部としてのセレーション部64が形成されており、小径軸部63の先端部には締結部としての雄ねじ部65が形成されている。
一方、動力伝達部材61は、主軸部62に対応するように内側面にセレーション溝が刻設された係合孔66を備えた円環状の回り止め部67と、小径軸部63に対応した内径の小径孔68を備えた円環状の位置決め部69とを有しており、これらが鋼材により一体に形成された構造となっている。係合孔66は主軸部62が挿通されることによりセレーション部64に係合するようになっており、また、小径孔68には小径軸部63が挿通されるようになっている。また、雄ねじ部65には締結部材としてのナット71がねじ結合されており、位置決め部69はナット71と主軸部62の先端部との間に挟み込まれるようになっている。なお、このナット71としては緩み止め機能を備えた所謂緩み止めナットが用いられている。
つまり、動力伝達部材61は、回り止め部67が係合孔66においてセレーション部64に係合することにより主軸部62に対して回り止めされるとともに、位置決め部69が主軸部62の先端部との間でナット71に締結されることにより軸方向の位置決めが成されている。これにより、動力伝達部材61は出力軸36に固定されて、出力軸36と一体的に回転するようになっている。
このように、この開閉装置21では、動力伝達部材61は位置決め部69が主軸部62の先端部とナット71との間に挟み込まれることにより出力軸36に対する位置決めが成されるので、動力伝達部材61を回り止めするセレーション部64が設けられる主軸部62をギヤケース32aの内部における軸径と略同一の軸径に形成することができる。したがって、出力軸36の材質を強度の高い高価な材料で形成する必要が無く、この開閉装置21のコストを低減させることができる。
動力伝達部材61のギヤケース32aと対向する側の軸方向端部には、回り止め部67の外周から径方向に突出する円環状の係止部72が設けられ、ナット71と動力伝達部材61との間には位置決め部69より大径の大径部としてのワッシャ73が設けられており、ドラム51は係止部72とワッシャ73との間に挟み込まれて動力伝達部材61に固定されている。このとき、ドラム51のワッシャ73と対向する側の端面は動力伝達部材61のワッシャ73と対向する側の端面と略同一面にあるので、ナット71の締結力は主に鋼材により形成された動力伝達部材61により支持されて樹脂により形成されたドラム51に大きな締結力が加えられることがない。なお、図示する場合には、大径部はナット71とは別体に形成されたワッシャ73とされているが、これに限らず、たとえばナット71と一体に形成されたナット71のフランジとしてもよい。
このように、この開閉装置21では、ドラム1を動力伝達部材61に設けられた係止部72とワッシャ73との間に挟み込んで固定するようにしたので、ナット71の締結力は主に動力伝達部材61に加わることになり、ドラム51がナット71の締結力により変形することを防止することができる。
動力伝達部材61の外周には径方向に突出する3つの凸部74が設けられており、これらの凸部74がドラム51に形成された凹部75に係合することによりドラム51は動力伝達部材61に対して回り止めされている。
このような構造により、ドラム51は動力伝達部材61を介して出力軸36に固定され、駆動ユニット28により回転駆動されることになる。そして、ドラム51が駆動ユニット28により回転駆動されると、いずれか一方のケーブル23がドラム51に巻き取られるとともにいずれか他方のケーブル23がドラム51から送り出されてスライドドア12の開閉動作が行われることになる。また、電動モータ26つまりドラム51の回転方向を反転させることによりスライドドア12の移動方向を変えることができる。このように、駆動ユニット28の動力はドラム51によってスライドドア12に出力され、スライドドア12が駆動されるようになっている。
このような開閉装置21では、ケーブル23の一部は車両11の外部に露出することになるので、ケーブル23を介して出力部材収容部48の内部に雨水や埃等が侵入し、これらが電動モータ26や減速機27に付着して駆動ユニット28の作動を阻害する恐れがある。そこで、この開閉装置21では、ケース体45にドラム51とギヤケース32aとの間に延びる隔壁76を設け、この隔壁76により出力部材収容部48の内部に侵入した雨水や埃等の異物が駆動ユニット28に付着するのを防止するようにしている。
この隔壁76は円筒部53のギヤケース32a側の端部から出力軸36に向けて径方向内側に伸びる円盤状に形成されており、その軸心には出力軸36や動力伝達部材61が貫通する貫通孔77が設けられている。また、この隔壁76の内周端部にはドラム51に向けて折り曲げられたシール部78が設けられており、このシール部78はドラム51の端面に形成された円環溝79の内部に位置するようになっている。つまり、隔壁76のシール部78はドラム51の円環溝79とによりラビリンスシールを形成しており、これにより、出力部材収容部48からギヤケース32a側への雨水等の漏れに対する防水性が高められるようになっている。
このように、この開閉装置21では、ギヤケース32aとドラム51との間に隔壁76を設けたので、出力部材収容部48に侵入した雨水や埃等の異物の駆動ユニット28への付着を防止することができる。また、この隔壁76によりギヤケース32aが生じる騒音を遮蔽して、この開閉装置21が設けられる車両11の車室内の騒音を低減することができる。
また、この開閉装置21では、隔壁76はドラム51とによりラビリンスシールを形成するので、出力部材収容部48からギヤケース32a側への雨水等の漏れに対する防水性を高めることができる。
さらに、この場合、アクチュエータユニット22は減速機27の出力軸36が車両11に対して水平に配置されるように車両11に固定されているので、出力部材収容部48に侵入した雨水等はドラム51の下方側に溜まることになる。そのため、この開閉装置21では、出力部材収容部48にドラム51の下方側に位置して排出孔81に連なる傾斜面82を設け、出力部材収容部48の内部に侵入した雨水等をこの傾斜面82を介して排出孔81から排出させるようにしている。これにより、出力部材収容部48の排水性が高められ、この開閉装置21の防水性を高めることができる。
このように、この開閉装置21では、出力部材収容部48に排出孔81に連なる傾斜面82を設けたので、出力部材収容部48の排水性を高めて、この開閉装置21の防水性を高めることができる。
この開閉装置21には、ドラム51とギヤケース32aとの間に配置されてドラム51とともに回転するマグネット83と、マグネット83と対向して配置されてマグネット83が発生する磁界の変化からドラム51の回転を検出する2つの磁気センサ84とが設けられており、前述の制御装置はこれらの磁気センサ84からの検出信号に基づいて電動モータ26の作動制御を行うようになっている。
マグネット83は円環状に形成されており、その周方向に多数の磁極が並べて着磁された所謂多極着磁マグネットとなっている。また、動力伝達部材61にはリベット85により円盤部材86が固定されており、マグネット83はこの円盤部材86の外周端に固定されている。つまり、マグネット83と円盤部材86は動力伝達部材61を介してドラム51に固定されており、ドラム51とギヤケース32aとの間に配置されてドラム51とともに回転するようになっている。したがって、マグネット83はギヤケース32aの外側でドラム51とともに回転することになるので、マグネット83が発生する磁界はギヤケース32aの内部に収容される電磁クラッチ37のクラッチコイル43が生じる磁界により乱されることが無く、また、各ディスク41,42が発生する磁気を帯びた摩耗粉等がマグネット83に付着することがない。
なお、円盤部材86は金属板により形成されており、それ自体は磁界を発生しないようになっている。
このように、この開閉装置21では、マグネット83はドラム51とギヤケース32aとの間に配置されているので、ギヤケース32aの内部に収容される電磁クラッチ37のクラッチコイル43が生じる磁界によりマグネット83の磁界が乱されることが無く、また、各ディスク41,42が発生する磁気を帯びた摩耗粉等がマグネット83に付着することが防止される。したがって、マグネット83が発生する磁界の外乱が防止され、磁気センサ84によるドラム51の回転の検出精度を高めることができる。また、マグネット83はドラム51よりギヤケース32a側に配置されるので、出力軸36の軸振れによる影響が低減され、磁気センサ84の検出精度を更に高めることができる。さらに、磁気センサ84はマグネット83とともにギヤケース32aの外部に配置されるので、電動モータ26が生じる熱等により高温となるギヤケース32aの内部のような高温環境下に置かれることが無く、この磁気センサ84の検出精度を高めることができる。
また、この開閉装置21では、マグネット83はドラム51とともに回転する円盤部材86の外周端に固定されているので、減速機構33が生じる騒音はこの円盤部材86により遮音されることになり、この開閉装置21が設けられる車両11の車室内における騒音を低減することができる。
さらに、この開閉装置21では、円盤部材86を動力伝達部材61に固定することによりマグネット83の位置決めが成されるので、マグネット83の位置決めを容易にすることができる。
前述の隔壁76はドラム51と円盤部材86との間に延びており、円盤部材86ともラビリンスシールを形成するようになっている。この場合、円盤部材86の径方向の略中央部にはドラム51の側に向けて凹む段差部87が設けられており、この段差部87により隔壁76と円盤部材86の間隔が若干狭められてラビリンスシールが形成されている。
このように、この開閉装置21では、隔壁76は円盤部材86とによりラビリンスシールを形成するので、この隔壁76により開閉装置21の防水性を高めることができる。
一方、2つの磁気センサ84としてはホール素子が用いられており、これらの磁気センサ84はセンサ基板88に搭載されて、このセンサ基板88とともにケース体45に設けられたセンサ収容部91に収容されている。このとき、センサ基板88はセンサ収容部91においてケース体45に保持されるようになっている。つまり、各磁気センサ84はセンサ基板88を介してセンサ収容部91においてケース体45に保持されており、これによりマグネット83に対向するように位置決めされている。また、カバー46にはセンサ収容部91を閉塞する抜け止め部92が設けられており、カバー46がケース体45に取り付けられたときには、センサ収容部91は抜け止め部92により閉塞されるようになっている。これにより、センサ基板88つまり磁気センサ84は抜け止め部92によりセンサ収容部91からの脱落が防止されるようになっている。
このように、この開閉装置21では、磁気センサ84はケース体45に設けられたセンサ収容部91においてケース体45に保持されて位置決めされるので、磁気センサ84のマグネット83に対する位置決めを容易にすることができる。
また、この開閉装置21では、磁気センサ84はカバー46に設けられた抜け止め部92によりケース体45からの脱落が防止されるので、磁気センサ84の取付けを容易にすることができる。
センサ収容部91に収容された各磁気センサ84は、互いにマグネット83に対して所定の角度だけ周方向にずれて配置されており、同一の磁極により生じる検出信号の位相が90°ずれるようになっている。このような構成により、駆動ユニット28が作動してマグネット83がドラム51とともに回転すると、磁気センサ84は対向するマグネット83の磁極の変化に反応してドラム51の回転に応じた周期の検出信号つまりパルス信号を出力することになる。つまり、磁気センサ84はマグネット83の磁界の変化からドラム51の回転を検出するようになっている。
これらの磁気センサ84の検出信号はセンサ線93を介して制御装置に入力され、制御装置は各磁気センサ84が出力するパルス信号を、たとえばスライドドア12が全閉位置にある時を起点として積算することによりスライドドア12の開閉位置を認識し、また、各磁気センサ84のパルス信号の周期からドラム51つまりはスライドドア12の移動速度を認識することができるようになっている。また、各磁気センサ84のパルス信号の出現順序からドラム51の回転方向つまりスライドドア12の移動方向を認識することができるようになっている。
そして、制御装置は、スライドドア12の開閉位置や移動速度に基づいて、電動モータ26の作動制御を行うことになる。このような制御としては、たとえば、全閉位置の近傍におけるスライドドア12の移動速度を低下させる所謂スローストップ制御や、パルス信号の周期の延びが所定値以上となったとき、つまりスライドドア12の移動速度が所定値以下に低下したときに挟み込みを検出し、スライドドア12の移動を停止したり反転させる所謂挟み込み防止制御等が含まれる。
図7はアウターケーシングの端部を示す断面図であり、反転プーリ24,25とケース体45との間におけるケーブル23は樹脂材料により形成される張力付与部材としてのアウターケーシング94に挿通されている。このアウターケーシング94はチューブ状に形成されたアウターチューブ95とこれの端部に装着されるスライドキャップ96とを有しており、その一端は反転プーリ24,25に固定され、他端はガイド部54のケーブル挿通孔56からガイド部54の内部に挿通されている。そして、アウターケーシング94の一端は、スライドキャップ96がそのフランジ部97においてガイド部54に支持された状態となって、ガイド部54の内部に軸方向に移動自在に収容されている。
また、ガイド部54の内部には張力付与用弾性部材としての張力スプリング98が設けられている。この張力スプリング98はケーブル23と同軸となって配置されており、ケーブル23はこの張力スプリング98の軸心を貫通している。また、張力スプリング98のドラム51側の端部には他の部分より大径に形成された大径固定部98aが所定の範囲で形成されており、この大径固定部98aがガイド部54のドラム51側の端部に設けられた溝部54aに係合されるようになっている。これにより、張力スプリング98の一端はケース体45に固定されている。したがって、ケース体45に張力スプリング98の端部が接する受け部を設ける必要がなく、ケーブル23がドラム51のケーブル案内溝52に案内されて出力軸36の軸方向に移動されて張力スプリング98やケース体45の受け部に接触するのを防止することができる。
このように、この開閉装置21では、張力スプリング98はその大径固定部98aがケース体45の溝部54aに係合することによりケース体45に支持されるので、ケーブル23がドラム51のケーブル案内溝52に案内されて出力軸36の軸方向に移動されても、ケーブル23が張力スプリング98やケース体45に接触するのを防止することができる。
一方、張力スプリング98の他端はスライドキャップ96のフランジ部97に当接しており、これにより、スライドキャップ96は張力スプリング98によりケース体45から押し出される方向に付勢されている。したがって、アウターケーシング94はバネ部材である張力スプリング98のバネ力により反転プーリ24,25とアクチュエータユニット22との間で湾曲されることになり、これに合わせて反転プーリ24,25とアクチュエータユニット22との間におけるケーブル23も湾曲する。つまり、反転プーリ24,25とアクチュエータユニット22との間におけるケーブル23の経路は、アウターケーシング94により迂回され、これによりケーブル23に張力が付与されることになる。
図8(a)〜(c)は、それぞれストッパの詳細を示す正面図、側面図および斜視図であり、図9(a)〜(c)は、それぞれストッパの操作過程を示す説明図である。また、図10(a),(b)は、それぞれストッパの操作過程を示す断面図である。
このような開閉装置21では、ケーブル23をスライドドア12に接続する際には、ケーブル23に所定の緩みが必要である。そのため、この開閉装置21には張力スプリング98を圧縮状態に仮保持してケーブル23の張力を解除させるストッパ101が設けられている。
図8に示すように、ストッパ101は略直方体状の基部102を備えており、この基部102には、それぞれ基部102を短手方向に貫通するように、フランジ通過孔103とケーブル通過孔104とが並べて形成されている。これらの通過孔103,104は一部が互いに重なって一体型の貫通孔となっている。また、ケーブル通過孔104のドラム51側の開口端には仮保持面105が形成され、ケーブル通過孔104のケーブル挿通孔56側の開口端には規制面106が形成されており、さらに、基部102の軸方向端部には軸方向に延びるスプリングガイド部107が設けられている。なお、図示するストッパ101はドラム51から車両後方側に延びるケーブル23に対応するものを示しているが、ドラム51から車両前方側に延びるケーブル23に対応するストッパ101にも仮保持面105と規制面106の機能が逆になるように同一形状のものが配置されている。
一方、図9に示すように、ケース体45にはストッパ収容部108が設けられており、ストッパ101はこのストッパ収容部108に軸方向に移動自在に収容されている。ストッパ収容部108の軸方向はガイド部54の軸方向に対して直角となっており、ストッパ101に形成された各通過孔103,104はガイド部54の軸方向と平行になっている。そして、ストッパ101はストッパ収容部108の内部において、ケーブル通過孔104がケーブル23と同心となる第1の位置と、フランジ通過孔103がケーブル23と同心となる第2の位置との間で軸方向に移動自在となっている。また、スプリングガイド部107はストッパ収容部108の端部108aに設けられた貫通孔108bから外部に突出している。なお、カバー46にはガイド閉塞部111が一体に設けられており、このストッパ収容部108とガイド部54は、このガイド閉塞部111により閉塞されるようになっている。
さらに、基部102のガイド閉塞部111の側には位置決め爪112が設けられており、この位置決め爪112は基部102の内側に向けて弾性変形自在の板ばね部112aと板ばね部112aの先端に形成された爪部112bとを有している。これに対して、収容ケース47を構成するガイド閉塞部111にはストッパ101の軸方向に向く位置決め溝113が形成されており、この位置決め溝113の端部には爪部112bに係合可能な位置決め部113aが設けられている。そして、ストッパ101が第1の位置にあるときには、爪部112bが位置決め部113aに係合してストッパ101はその移動が規制されて第1の位置に保持されるようになっている。
さらに、収容ケース47にはストッパ101とストッパ収容部108の端部108aとの間に配置されるストッパ付勢用弾性部材としてのバックアップスプリング114が設けられている。このバックアップスプリング114は圧縮コイルバネとなっており、ストッパ101はこのバックアップスプリング114のバネ力により第2の位置から第1の位置に向く方向に付勢されている。
以下に、図9、図10に基づいてストッパ101の操作過程について説明する。
まず、ケーブル23をスライドドア12に接続する前には、図9(a)に示すように、ストッパ101は第1の位置とされ、スライドキャップ96のフランジ部97は仮保持面105に当接した状態とされている。これにより、張力スプリング98は圧縮された状態とされ、ケーブル23にはスライドドア12との接続に必要な十分な緩みが生じることになる。つまり、この場合、第1の位置は張力スプリング98を弾性変形状態つまり圧縮状態に仮保持する仮保持位置となっている。なお、ケーブル通過孔104の内径はフランジ部97の外径より小径に形成されており、フランジ部97は仮保持面105に確実に接触するようになっている。
このように、張力スプリング98を圧縮状態に仮保持すると、アウターケーシング94はケース体45から押し出されることが無く、ケーブル23はケース体45と反転プーリ24,25との間で直線的に配置されて緩みを生じることになる。したがって、ケーブル23のスライドドア12への接続が容易になり、この開閉装置21の取付け作業性が向上する。
また、図10(a)に示すように、ストッパ101が第1の位置つまり仮保持位置にあるときには、位置決め爪112の爪部112bは位置決め部113aに係合しているので、この開閉装置21に衝撃が加えられたり、ストッパ101に誤って押し力が加えられた場合であっても、ストッパ101は仮保持位置に保持され、張力スプリング98の圧縮状態が解除されることが防止される。
このように、この開閉装置21では、ストッパ101に収容ケース47に設けられた位置決め部113aに係合する爪部112bを備えた位置決め爪112を設けたので、ストッパ101を仮保持位置に保持して、その誤作動を防止することができる。
次いで、それぞれのケーブル23がスライドドア12に接続された後には、図9(b)に示すように、ストッパ101は作業者により操作されて第2の位置へ移動される。このとき、爪部112bは作業者により操作されて基部102の内側に押し込まれて位置決め部113aとの係合が解除される。そして、ストッパ101が移動されると、図10(b)に示すように、爪部112bはガイド閉塞部111の内面に沿って摺動する。そして、ストッパ101が第2の位置まで移動されると、フランジ通過孔103とフランジ部97の軸中心が重なるため、フランジ部97はフランジ通過孔103を通り抜け、張力スプリング98の仮保持つまり圧縮状態は開放される。つまり、この場合、第2の位置は張力スプリング98の圧縮状態を開放させる開放位置となっている。これにより、アウターケーシング94は張力スプリング98のバネ力によりケース体45から押し出される方向に付勢され、ケーブル23に所定の張力が付与される。
次いで、ストッパ101が開放位置となって張力スプリング98の圧縮が開放されると、図9(c)に示すように、ストッパ101はバックアップスプリング114に押されて自動的に第1の位置へ移動することになる。つまり、図9(b)に示すように、ストッパ101が第2の位置となると、バックアップスプリング114はストッパ101とストッパ収容部108の端部108aとの間で圧縮されてストッパ101にバネ力を加えることになり、ストッパ101はこのバネ力により付勢されて第1の位置にまで移動される。そして、ストッパが第1の位置にまで戻されると、位置決め爪112の爪部112bが再度位置決め部113aに係合してストッパ101の移動が規制される。
ストッパ101が第1の位置まで戻されると、ケーブル通過孔104とフランジ部97の軸中心が重なるため、フランジ部97の移動範囲はガイド部54の端面55と規制面106との間に規制されることになる。つまり、ケーブル通過孔104の内径より大きいフランジ部97はストッパ101を越えて移動することができないので、ドラム51側に大きく移動したときには規制面106に接してその移動が規制される。このように、この場合、第1の位置は仮保持位置であるとともに規制位置ともなっている。そして、フランジ部97つまりスライドキャップ96の移動範囲が規制されることにより、張力スプリング98の変位量もフランジ部97の移動範囲に応じた所定の範囲内に規制されることになる。これにより、ケーブル23に十分な緩みを生じさせ得る程度の変位量を有する張力スプリング98を用いた場合であっても、この開閉装置21の作動持に張力スプリング98が必要以上に圧縮されることが防止され、ケーブル23に適正な範囲の張力を付与することができる。
このように、この開閉装置21では、ストッパ101を用いて張力スプリング98を圧縮状態に仮保持してケーブル23に緩みを生じさせることができるので、スライドドア12へのケーブル23の接続を容易にすることができる。
また、この開閉装置21では、張力スプリング98の圧縮状態を開放した後には、ストッパ101により張力スプリング98の変位量は所定の範囲内に規制されるので、ケーブル23に十分な緩みを生じさせ得る程度の変位量を有する張力スプリング98を用いた場合であっても、作動持にケーブル23に不要な緩みを生じさせることが無い。したがって、作動持におけるケーブル23に適正な張力を生じさせることができ、スライドドア12の開閉動作を滑らかにすることができる。
さらに、この開閉装置21では、ストッパ101とケース体45との間にパックアップスプリング114を設けたので、開放位置にまで押し込まれたストッパ101はバックアップスプリング114のバネ力により自動的に規制位置へ戻されるので、このストッパ101の操作を容易にすることができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前記実施の形態においては、開閉部材はスライドドア12となっているが、これに限らず、バックドアやサンルーフなど、他の開閉部材としてもよい。
また、前期実施の形態においては、張力付与用弾性部材としては張力スプリング98が用いられているが、これに限らず、アウターケーシング94を付勢することができるものであれば、他の弾性部材を用いてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、張力付与用弾性部材である張力スプリング98によりケーブル23を被覆する張力付与部材であるアウターケーシング94を湾曲させてケーブル23に張力を生じさせているが、これに限らず、張力付与部材としてケーブル23が掛け渡されるテンションプーリを用い、このテンションプーリを張力付与用弾性部材によりケーブル23の経路長が増加する方向に付勢するようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、出力部材としてはドラム51が用いられ、このドラム51をケーブル23を介して開閉部材に接続するようにしているが、これに限らず、たとえば、出力部材として出力軸36に固定されるアームを用い、このアームを開閉部材に連結するようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、磁気センサ84としてホール素子が用いられているが、これに限らず、ドラム51の回転に伴うマグネット83の磁界の変化を検出することができるものであれば、他の磁気センサを用いてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、マグネット83は円盤部材86を介して動力伝達部材61に固定されているが、これに限らず、円盤部材86を出力軸36やドラム51に固定したり、円盤部材86を用いずにマグネット83を直接出力軸36やドラム51等に固定するようにしてもよい。