JP4265273B2 - アンテナポジショナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナの昇降等に用いるアンテナポジショナに関し、特に電子機器等から発生するEMI(Electro-Magnetic Interference)を測定するときに用いて好適なアンテナポジショナに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、アンテナポジショナとして、床面に対して垂直に配設される縦支柱と、該縦支柱に沿って上,下方向に昇降可能に設けられた昇降台と、該昇降台に設けられたアンテナとによって構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−129301号公報
【0004】
そして、従来技術によるアンテナポジショナを用いてEMI測定を行うときには、ターンテーブル等に被測定物(EUT:Equipment Under Test)を配置すると共に、該被測定物とアンテナとが規格で定められた所定距離だけ離間するようにアンテナポジショナを配設する。この状態で、被測定物と一緒にターンテーブルを回転させて被測定物の向きを変更すると共に、アンテナを昇降させてアンテナの高さ位置を変更し、被測定物から放射される電磁波を全周に亘って測定していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、ログペリオディックアンテナやバイログアンテナのように周波数に応じて給電点の位置が異なる広帯域アンテナを用いてEMI測定を行う場合には、被測定物とアンテナの給電点との距離が周波数によって異なり、この距離と規格で定められた所定距離との間に差異が生じることになる。このとき、EMI測定では、被測定物からの直接波と床面等からの反射波との合成波を計測するから、被測定物とアンテナの給電点との距離の差は空間位置の差となって測定誤差が生じるという問題がある。
【0006】
このため、従来技術では広帯域アンテナをEMI測定には用いることが不向きであることから、測定する周波数帯に応じて使用するアンテナを取り換える必要があった。この結果、アンテナ交換等に伴って作業性が低下し、測定時間が長時間になっていた。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、アンテナを交換することなく広帯域のEMI測定が可能なアンテナポジショナを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明は、被測定物と横方向に離間して配置され上,下方向に延びて設けられた縦支柱と、該縦支柱に沿って上,下方向に昇降可能に設けられた昇降台と、該昇降台に設けられ前記被測定物からの電磁波を受信信号として受信するアンテナとからなるアンテナポジショナに適用される。
【0009】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記昇降台は、前記縦支柱と直交して前記被測定物に向けて横方向に延びる横支柱を支持し、前記アンテナは、該横支柱の先端に設けられ周波数に応じて給電点の位置が前記縦支柱と直交する横方向に変位する広帯域アンテナからなり、前記縦支柱に設けられた歯車と、前記横支柱に設けられ該歯車に噛合することによって横方向に移動するラック部とからなり、前記被測定物と広帯域アンテナの給電点との間の横方向の距離寸法が一定となるように前記受信信号の周波数に応じて前記広帯域アンテナを横方向に移動させる横方向移動手段を設ける構成としたことにある。
【0010】
このように構成したことにより、周波数に応じて広帯域アンテナの給電点の位置が横方向に変位するときでも、給電点の変位を横方向移動手段を用いて修正することができる。この結果、広帯域アンテナの給電点と被測定物との距離を一定に保持することができ、EMI測定の精度を高めることができる。
また、昇降台は横支柱を支持すると共に、広帯域アンテナは該横支柱の先端に設ける構成とした。これにより、横支柱をその長さ方向に変位させることによって、広帯域アンテナを横方向に移動させ、給電点の変位を補うことができる。
さらに、横方向移動手段は、縦支柱に設けられた歯車と、横支柱に設けられ該歯車に噛合するラック部とによって構成した。これにより、縦支柱に設けられた歯車を回転させることによって横支柱に設けられたラック部を横支柱および広帯域アンテナと一緒に横方向に移動させることができ、広帯域アンテナの給電点の変位を修正することができる。
【0011】
請求項2の発明では、前記広帯域アンテナは、基端側から先端側に位置するに従って徐々に短くなる複数の素子を備えたログペリオディックアンテナを有し、前記受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って給電点が横方向の基端側から先端側に変位する構成とし、前記横方向移動手段は、前記受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って前記広帯域アンテナを前記被測定物から遠ざける構成としている。
【0012】
これにより、広帯域アンテナの給電点が受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って横方向の基端側から先端側に変位するのに対して、横方向移動手段は、受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って広帯域アンテナを被測定物から遠ざける。この結果、受信信号の周波数に応じて広帯域アンテナの給電点変位するのを補うことができ、広帯域アンテナの給電点と被測定物との距離を一定に保持することができる。
【0013】
請求項3の発明では、前記縦支柱と横方向に離間した位置には他の縦支柱を設け、該他の縦支柱には前記横支柱を支持した状態で当該他の縦支柱に沿って上,下方向に昇降可能な他の昇降台を設ける構成としている。
【0014】
これにより、2本の縦支柱を用いて横支柱を支持することができるから、広帯域アンテナの重量によって横支柱が下方に傾斜するのを低減することができる。このため、指向性の高い広帯域アンテナを用いたときでも、EMI測定を正確に行うことができる。
【0015】
請求項4の発明では、前記縦支柱は、前記広帯域アンテナの移動方向と直交する幅寸法に比べて横方向に延びる長さ寸法を大きな値に設定している。
【0016】
これにより、横方向の長さ寸法が大きな縦支柱を用いて横支柱を支持することができるから、広帯域アンテナの重量によって横支柱が下方に傾斜するのを低減することができる。このため、指向性の高い広帯域アンテナを用いたときでも、EMI測定を正確に行うことができる。また、1本の縦支柱を用いて横支柱を支持するから、複数本の縦支柱を用いた場合に比べて横支柱を容易に着脱することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるアンテナポジショナを添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
まず、図1ないし図5は第1の実施の形態を示し、図において、1は電波暗室で、該電波暗室1は前,後,左,右の壁面および天井面に電波吸収体(図示せず)が設けられると共に、床面2には回転軸O−Oを中心に回転可能な回転テーブル3が設けられている。そして、回転テーブル3には電子機器等の被測定物4(EUT)が載置されている。
【0021】
11は回転テーブル3と離間した位置で電波暗室1内に設けられたアンテナポジショナで、該アンテナポジショナ11は後述のマスト13,20、ホルダ16,21、サブマスト35、広帯域アンテナ38等によって構成されている。
【0022】
12は床面2に設けられた基台で、該基台12には被測定物4と横方向に離間して配置されてマスト13,20が立設されると共に、その内部には、広帯域アンテナ38を昇降する昇降用モータ29、偏波面を切換えるための偏波切換用モータ34等が収容されている。
【0023】
13は床面2に対して垂直に延びた状態で基台12に配設された縦支柱としての第1のマストで、該マスト13は中空な断面略四角形状をなし、床面2から天井に向けて上,下方向に伸長している。また、マスト13内には、サブマスト35を横方向(図2中の矢示A方向)に移動させるための横方向移動用歯車14に設けられている。そして、歯車14は、断面星形状をなして上,下方向に伸長すると共に、サブマスト35と接触可能となるようにその一部がマスト13の前面側に突出した状態で取付けられる。また、歯車14は、マスト13の基端側に設けられた横方向移動用モータ15の出力軸15Aに連結され、該モータ15によって回転する構成となっている。
【0024】
16は第1のマスト13に沿って上,下方向(図2中の矢示B方向)に昇降可能に設けられた昇降台としての第1のホルダで、該ホルダ16はマスト13を取囲む四角形の枠形状をなすと共に、後述のサブマスト35を挿通するために横方向(左,右方向)に向けて延びる円形の挿通穴16Aが形成されている。
【0025】
また、ホルダ16は昇降用ベルト17に接続されると共に、該昇降用ベルト17は、マスト13の縦方向両端側に設けられた歯車18,19に巻回されている。そして、後述の昇降用モータ29を用いてベルト17を上,下方向に駆動することによって、ホルダ16は昇降するものである。
【0026】
20は第1のマスト13と横方向に離間して設けられた他の縦支柱としての第2のマストで、該マスト20は、例えばマスト13よりも被測定物4に近い位置に配置されると共に、床面2に対して垂直に延びた状態で基台12に取付けられている。そして、第2のマスト20は、第1のマスト13とほぼ同様に中空な断面略四角形状をなし、床面2から天井に向けて上,下方向に伸長している。
【0027】
21は第2のマスト20に沿って上,下方向に昇降可能に設けられた他の昇降台としての第2のホルダで、該ホルダ21は、ホルダ16とほぼ同様にマスト20を取囲む四角形の枠形状をなすと共に、後述のサブマスト35を挿通するために横方向に向けて延びる円形の挿通穴21Aが形成されている。
【0028】
また、ホルダ21の横方向一端側には昇降用ベルト22に接続されると共に、該昇降用ベルト22は、マスト20の縦方向両端側に設けられた歯車23,24に巻回されている。そして、後述の昇降用モータ29を用いてベルト22を上,下方向に駆動することによって、ホルダ21は昇降するものである。
【0029】
また、ホルダ21の横方向他端側には、偏波切換用ラック25を挿通するために縦方向に向けて延びる他の挿通穴21Bが設けられ、該挿通穴21Bは挿通穴21Aに連通している。そして、挿通穴21B内には偏波切換用ベルト26に接続された偏波切換用ラック25が挿通されると共に、偏波切換用ベルト26は、マスト20の縦方向両端側に設けられた歯車27,28に巻回されている。そして、後述の偏波切換用モータ34を用いてベルト26を上,下方向に駆動することによって、ラック25は昇降するものである。
【0030】
29は基台12内に収容された昇降用モータで、該昇降用モータ29は歯車30,31を通じて連結軸32を回転駆動すると共に、該連結軸32には歯車19,24が連結されている。これにより、昇降用モータ29は、昇降用ベルト17,22を上,下方向に駆動させ、ホルダ16,21を一緒に昇降させるものである。また、連結軸32は電磁クラッチ33を介して偏波切換用の歯車28に連結されている。そして、電磁クラッチ33は、ホルダ16,21を昇降するときには接続され、広帯域アンテナ38の偏波面を切換えるときには切断されるものである。
【0031】
34は基台12内に位置して歯車28に連結された偏波切換用モータで、該偏波切換用モータ34は、偏波切換用ベルト26を通じてラック25をホルダ21に対して上,下方向に移動させ、広帯域アンテナ38の偏波面を例えば垂直偏波と水平偏波との間で切換えるものである。
【0032】
35はホルダ16,21の挿通穴16A,21Aに挿通された横支柱としてのサブマストで、該サブマスト35は、断面円形の棒状をなし、その先端側が被測定物4に向けて延びると共に、その長さ方向の途中部位がホルダ16,21を用いてマスト13,20に支持されている。
【0033】
また、サブマスト35の基端側には円周方向に沿って設けられた複数の円弧溝36Aからなるラック部36が設けられ、該ラック部36はホルダ16内に位置して横方向移動用歯車14に噛合している。さらに、サブマスト35の長さ方向(横方向)の途中位置には横方向に延びる複数の水平溝37Aからなる歯車37が設けられ、該歯車37はホルダ21内に位置して偏波切換用ラック25に噛合している。
【0034】
38はサブマスト35の先端側に取付けられた広帯域アンテナで、該広帯域アンテナ38は、例えば長さが異なる複数の素子39Aを備えたログペリオディックアンテナ39と該ログペリオディックアンテナ39の基端側に配設されたバイコニカルアンテナ40とを組合せたバイログアンテナによって構成され、ログペリオディックアンテナ39の素子39Aは広帯域アンテナ38の基端側から先端側(被測定物4側)に位置するに従って徐々に短くなっている。
【0035】
そして、ログペリオディックアンテナ39は例えば100MHzから1GHzまでの電磁波が受信信号として受信可能となり、バイコニカルアンテナ40は30MHzから100MHzまでの電磁波が受信信号として受信可能となっている。これにより、広帯域アンテナ38は、30MHzから1GHzまでの周波数帯域の受信信号が受信可能となると共に、受信信号が低周波から高周波になるに従って、広帯域アンテナ38の給電点が横方向の基端側から先端側に変位するものである。
【0036】
また、広帯域アンテナ38は、ケーブル、プリアンプ等を介してEMIレシーバ(いずれも図示せず)に接続されている。そして、EMIレシーバは、広帯域アンテナ38によって受信された最大電界強度を例えば30MHz、100MHz、200MHz、300MHz、500MHz、700MHz、1GHzの各周波数毎に測定し、記録する。
【0037】
41は広帯域アンテナ38を上,下方向(縦方向)に昇降させる昇降機構で、該昇降機構41は昇降用ベルト17,22、昇降用モータ29等によって構成されている。そして、昇降機構41は、昇降用モータ29を正方向または逆方向に回転駆動することによって、ベルト17,22を一緒に正方向または逆方向に送り出し、ホルダ16,21に取付けられたサブマスト35と広帯域アンテナ38を昇降している。
【0038】
42は広帯域アンテナ38の偏波面を水平偏波と垂直偏波とで切換える偏波切換機構で、該偏波切換機構42は偏波切換用ラック25、偏波切換用ベルト26、偏波切換用モータ34等によって構成されている。そして、偏波切換機構42は、偏波切換用モータ34を正方向または逆方向に回転駆動することによって、ラック25を上,下方向に移動させてサブマスト35を周方向(図2中の矢示C方向)に90度回転させ、広帯域アンテナ38の偏波面を切換えている。
【0039】
43は広帯域アンテナ38を左,右方向(横方向)に移動させる横方向移動機構(横方向移動手段)で、該横方向移動機構43は、マスト13に設けられた横方向移動用歯車14、横方向移動用モータ15とサブマスト35に設けられ歯車14と噛合するラック部36とによって構成されている。そして、横方向移動機構43は、横方向移動用モータ15を正方向または逆方向に回転駆動することによって、サブマスト35のラック部36を左,右方向に移動させ、広帯域アンテナ38を被測定物4に向けて進退させている。
【0040】
本実施の形態によるアンテナポジショナは上述のように構成されるものであり、次にその作動について説明する。
【0041】
被測定物4のEMI測定を行うときには、まず回転テーブル3に被測定物4を載置すると共に、回転軸O−Oと広帯域アンテナ38の例えば基端側の給電点(バイコニカルアンテナ40の給電点)との距離寸法L0を規格で定められた値(3mまたは10m)に設定する。
【0042】
次に、電磁クラッチ33を切断した状態で偏波切換機構42(偏波切換用モータ34)を駆動し、広帯域アンテナ38の偏波面を水平偏波または垂直偏波のいずれか(例えば水平偏波)に固定する。その後、電磁クラッチ33を接続した状態で昇降機構41(昇降用モータ29)を駆動し、広帯域アンテナ38を床面2から1m程度の高さに移動して固定する。この状態で、広帯域アンテナ38に接続されたEMIレシーバを用いて30MHzから100MHzまでの最大電界強度を測定する。
【0043】
次に、横方向移動機構43(横方向移動用モータ15)を駆動し、被測定物4から遠ざかるように広帯域アンテナ38を横方向に移動させる。そして、ログペリオディックアンテナ39の200MHzに対する給電点と回転軸O−Oとの距離寸法L0が規格値と一致した位置で広帯域アンテナ38を固定する。この状態で、EMIレシーバを用いて200MHzでの最大電界強度を測定する。その後、同様な手順で広帯域アンテナ38を被測定物4から徐々に遠ざけて、200MHz、300MHz、500MHz、700MHz、1GHzの信号に対する測定を行う。
【0044】
このようにして、1つの高さ位置で30MHzから1GHzまでの信号に対する測定が終了したら、昇降機構41を用いて広帯域アンテナ38の高さ寸法を1mから4mまで徐々に高くし、高さ寸法の異なる複数の位置で30MHzから1GHzまでの信号に対する測定を同様に行う。そして、最も高い位置(4m)での測定が終了したら、回転テーブル3を回転させて、被測定物4と広帯域アンテナ38との向きを変更し、再度1mから4mまでの高さ寸法に対してEMI測定を行う。なお、垂直偏波に対する測定も同様の手順で行うことができる。
【0045】
かくして、本実施の形態では、広帯域アンテナ38を横方向に移動させる横方向移動機構43を設けたから、受信信号の周波数に応じて広帯域アンテナ38の給電点が横方向に変位するときでも、この変位に応じて広帯域アンテナ38を横方向に移動させることができ、被測定物4(回転軸O−O)と広帯域アンテナ38との距離寸法L0を周波数に拘わらず一定値に保持することができる。このため、横方向移動機構43を用いて広帯域アンテナ38の給電点の位置ずれを補償することができるから、EMI測定の精度を高めることができる。
【0046】
一例として、各周波数に応じた半波長ダイポールアンテナを用いて測定した場合に比べて、広帯域アンテナ38の水平位置を固定した場合には、最大で3.7dBの偏差が生じていた。これに対し、本実施の形態では、周波数毎に定まる給電点位置を移動させて、被測定物4と広帯域アンテナ38との距離寸法L0を一定値に保持したから、半波長ダイポールアンテナを用いた場合との偏差が最大でも0.7dB以下に低減することができ、測定精度が向上したことが確認できた。
【0047】
この結果、広帯域アンテナ38を用いて高精度なEMI測定が可能となるから、被測定物4は規格値に対してマージンの少ないEMI対策が可能となる。また、広帯域アンテナ38だけを用いて30MHzから1GHzに亘る周波数範囲のEMI測定を行うことができるから、周波数帯域に応じてアンテナを取り換える必要がなくなり、測定作業の負担を軽減できると共に、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0048】
また、2本のマスト13,20を用いて広帯域アンテナ38が取付けられたサブマスト35を支持するから、広帯域アンテナ38の重量によってサブマスト35の先端側が下方に傾斜するのを低減することができる。このため、指向性を持つバイログアンテナからなる広帯域アンテナ38を用いたときでも、EMI測定を正確に行うことができる。
【0049】
特に、従来技術では、広帯域アンテナを用いてEMI測定するときには、広帯域アンテナが下方に傾斜するのを防止するために、マストを越えてサブマストの基端側(広帯域アンテナとは反対側)を大きく伸長させ、広帯域アンテナとサブマスト基端側との重量バランスをとっていた。このため、サブマスト35が不必要に長くなり、小さい電波暗室1では使用し難いという問題があった。
【0050】
これに対し、本実施の形態では、2本のマスト13,20を用いて広帯域アンテナ38を支持するから、マスト13を越えて伸長したサブマスト35の基端側の長さ寸法を短くすることができる。この結果、小さな電波暗室1内であっても広帯域アンテナ38とマスト13,20との距離を長く保つことができるから、マスト13,20からの反射波を低減することができ、測定精度を高めることができる。
【0051】
さらに、2本のマスト13,20を用いて広帯域アンテナ38を支持するから、マスト13,20全体の剛性が高まる。このため、各マスト13,20はそれぞれの径寸法(幅寸法)を小さくすることができるから、被測定物4から見たマスト13,20の断面積を小さくすることができ、マスト13,20から広帯域アンテナ38への反射波が低減され、正確な測定が可能となる。
【0052】
次に、図6および図7は第2の実施の形態によるアンテナポジショナを示し、本実施の形態の特徴は、幅寸法に比べて横方向の長さ寸法が大きい単一のマストを用いて広帯域アンテナを支持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
51は床面2に対して垂直に延びた状態で基台12に配設された縦支柱としてのマストで、該マスト51は、図7に示すように中空な断面略四角形状をなし、被測定物4と横方向に離間して配置されると共に、広帯域アンテナ38の進退方向となる横方向の長さ寸法Lが該横方向と直交する幅寸法Wよりも大きい値に設定されている。また、マスト51内には、サブマスト35を横方向に移動させるための横方向移動用歯車52に設けられ、該歯車52は、第1の実施の形態による歯車14とほぼ同様にマスト51の前面側に突出した状態で取付け、サブマスト35のラック部36に噛合している。また、歯車52は、図6に示すようにマスト51の基端側に設けられた横方向移動用モータ53の出力軸53Aに連結され、該モータ53によって回転する構成となっている。
【0054】
54はマスト51に沿って上,下方向に移動可能に設けられた昇降台としてのホルダで、該ホルダ54は、マスト51を取囲む四角形の枠形状をなすと共に、サブマスト35を挿通するために横方向に向けて延びる円形の挿通穴54Aが形成されている。
【0055】
また、ホルダ54の横方向一端側には昇降用ベルト55に接続されると共に、該昇降用ベルト55は、マスト51の縦方向両端側に設けられた歯車56,57に巻回されている。一方、ホルダ54の横方向他端側には、偏波切換用ラック58を挿通するために縦方向に向けて延びる他の挿通穴54Bが設けられ、該挿通穴54Bは挿通穴54Aに連通している。そして、挿通穴54B内には偏波切換用ベルト59に接続された偏波切換用ラック58が挿通されると共に、偏波切換用ベルト59は、マスト51の縦方向両端側に設けられた歯車60,61に巻回されている。
【0056】
62は基台12内に収容された昇降用モータで、該昇降用モータ62は、歯車63,64を通じて連結軸65を回転駆動すると共に、該連結軸65には歯車57が連結されている。これにより、昇降用モータ62は、昇降用ベルト55を上,下方向に駆動させ、ホルダ54を昇降させるものである。また、連結軸65は電磁クラッチ66を介して偏波切換用の歯車61に連結されている。そして、電磁クラッチ66は、ホルダ54を昇降するときには接続され、広帯域アンテナ38の偏波面を切換えるときには切断されるものである。
【0057】
67は基台12内に位置して歯車61に連結された偏波切換用モータで、該偏波切換用モータ67は、偏波切換用ベルト59を通じてラック58をホルダ54に対して上,下方向に移動させ、広帯域アンテナ38の偏波面を例えば垂直偏波と水平偏波との間で切換えるものである。
【0058】
68は広帯域アンテナ38を上,下方向(縦方向)に昇降させる昇降機構で、該昇降機構68は昇降用ベルト55、昇降用モータ62等によって構成されている。そして、昇降機構68は、昇降用モータ62を回転駆動することによって、ホルダ54、サブマスト35および広帯域アンテナ38を昇降している。
【0059】
69は広帯域アンテナ38の偏波面を水平偏波と垂直偏波とで切換える偏波切換機構で、該偏波切換機構69は偏波切換用ラック58、偏波切換用ベルト59、偏波切換用モータ67等によって構成されている。そして、偏波切換機構69は、偏波切換用モータ67を回転駆動することによって、サブマスト35を周方向に90度回転させ、広帯域アンテナ38の偏波面を切換えている。
【0060】
70は広帯域アンテナ38を左,右方向(横方向)に移動させる横方向移動機構(横方向移動手段)で、該横方向移動機構70は、マスト51に設けられた横方向移動用歯車52、横方向移動用モータ53とサブマスト35に設けられ歯車52と噛合するラック部36とによって構成されている。そして、横方向移動機構70は、横方向移動用モータ53を正方向または逆方向に回転駆動することによって、サブマスト35のラック部36を左,右方向に移動させ、広帯域アンテナ38を被測定物4に対して進退させている。
【0061】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、幅寸法Wに比べて長さ寸法Lが大きいマスト51を用いて広帯域アンテナ38(サブマスト35)を支持したから、1本のマスト51を用いた場合であっても、長さ寸法Lを大きくすることによって広帯域アンテナ38が下方に傾斜するのを防ぐことができる。
【0062】
また、本実施の形態では、1本のマスト51を用いてサブマスト35を支持するから、例えば長さ寸法の異なるサブマスト35を使用するためにサブマスト35を交換する場合であっても、サブマスト35の脱着性を高めることができ、作業効率を向上することができる。
【0063】
なお、前記各実施の形態では、横方向移動機構43,70は歯車14,52とサブマスト35のラック部36とを噛合させる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図8に示す変形例のように、回転可能な溝付ベルト81をラック部36に噛合させることによって横方向移動機構82を構成してもよい。この場合、歯車14,52を用いた場合に比べて、溝付ベルト81とラック部36とが噛合する面積が増加するから、サブマスト35の位置合わせ精度を向上させることができる。この結果、広帯域アンテナ38の給電点を精密に位置制御することができ、EMI測定の精度を高めることができる。
【0064】
また、前記各実施の形態では、広帯域アンテナ38としてログペリオディックアンテナ39とバイコニカルアンテナ40とからなるバイログアンテナを用いるものとしたが、広帯域アンテナとしてログペリオディックアンテナ単体を用いるものとしてもよい。
【0065】
さらに、前記各実施の形態では、マスト13,20,51を断面四角形状に形成するものとしたが、断面円形状、断面楕円形状等に形成してもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、縦支柱と広帯域アンテナとの間には該広帯域アンテナを横方向に移動させる横方向移動手段を設ける構成としたから、周波数に応じて広帯域アンテナの給電点の位置が横方向に変位するときでも、給電点の変位を横方向移動手段を用いて修正することができる。この結果、広帯域アンテナの給電点と被測定物との距離を一定に保持することができ、EMI測定の精度を高めることができる。また、広帯域のEMI測定を単一の広帯域アンテナを用いて行うことができるから、帯域に応じてアンテナを交換する必要がなく、作業効率を向上できると共に、測定時間を短縮することができる。
また、昇降台は横支柱を支持すると共に、広帯域アンテナを横支柱の先端に設ける構成としたから、横支柱をその長さ方向に変位させることによって、広帯域アンテナを長さ方向に移動させ、給電点の変位を補うことができる。
さらに、横方向移動手段は、縦支柱に設けられ歯車と、横支柱に設けられ該歯車に噛合するラック部とによって構成したから、縦支柱に設けられた歯車を回転させることによって横支柱に設けられたラック部を横支柱および広帯域アンテナと一緒に横方向に移動させることができ、広帯域アンテナの給電点の変位を修正することができる。
【0067】
請求項2の発明によれば、広帯域アンテナの給電点が受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って横方向の基端側から先端側に変位するのに対して、横方向移動手段は、受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って広帯域アンテナを被測定物から遠ざける構成とした。これにより、受信信号の周波数に応じて広帯域アンテナの給電点変位するのを補うことができ、広帯域アンテナの給電点と被測定物との距離を一定に保持することができる。
【0068】
請求項3の発明によれば、2本の縦支柱を用いて横支柱を支持する構成としたから、広帯域アンテナの重量によって横支柱が下方に傾斜するのを低減することができる。このため、指向性の高い広帯域アンテナを用いたときでも、EMI測定を正確に行うことができる。
【0069】
請求項4の発明によれば、縦支柱は幅寸法に比べて横方向に延びる長さ寸法を大きな値に設定したから、長さ寸法の大きな縦支柱を用いて横支柱を支持することができ、広帯域アンテナの重量によって横支柱が下方に傾斜するのを低減することができる。このため、指向性の高い広帯域アンテナを用いたときでも、EMI測定を正確に行うことができる。また、1本の縦支柱を用いて横支柱を支持するから、複数本の縦支柱を用いた場合に比べて横支柱を容易に着脱することができる。このため、長さ寸法の異なる横支柱を用いてEMI測定を行うときでも、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるアンテナポジショナを電波暗室内に配置した状態を示す正面図である。
【図2】図1中のアンテナポジショナを単体で示す正面図である。
【図3】図2中の矢示III−III方向からみたマスト、ホルダ等を示す断面図である。
【図4】図3中の矢示IV−IV方向からみたサブマストのラック部を示す断面図である。
【図5】図3中の矢示V−V方向からみたマスト、ホルダ、ラック等を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態によるアンテナポジショナを示す正面図である。
【図7】図6中の矢示VII−VII方向からみたマスト、ホルダ等を示す断面図である。
【図8】本発明の変形例による横方向移動機構等を示す図3と同様位置の断面図である。
【符号の説明】
11 アンテナポジショナ
13 第1のマスト(縦支柱)
14,52 横方向移動用歯車
15,53 横方向移動用モータ
16 第1のホルダ(昇降台)
20 第2のマスト(縦支柱)
21 第2のホルダ(昇降台)
35 サブマスト(横支柱)
36 ラック部
38 広帯域アンテナ
43,70,82 横方向移動機構(横方向移動手段)
51 マスト(縦支柱)
54 ホルダ(昇降台)
81 溝付ベルト

Claims (4)

  1. 被測定物と横方向に離間して配置され上,下方向に延びて設けられた縦支柱と、該縦支柱に沿って上,下方向に昇降可能に設けられた昇降台と、該昇降台に設けられ前記被測定物からの電磁波を受信信号として受信するアンテナとからなるアンテナポジショナにおいて、
    前記昇降台は、前記縦支柱と直交して前記被測定物に向けて横方向に延びる横支柱を支持し、
    前記アンテナは、該横支柱の先端に設けられ周波数に応じて給電点の位置が前記縦支柱と直交する横方向に変位する広帯域アンテナからなり、
    前記縦支柱に設けられた歯車と、前記横支柱に設けられ該歯車に噛合することによって横方向に移動するラック部とからなり、前記被測定物と広帯域アンテナの給電点との間の横方向の距離寸法が一定となるように前記受信信号の周波数に応じて前記広帯域アンテナを横方向に移動させる横方向移動手段を設ける構成としたことを特徴とするアンテナポジショナ。
  2. 前記広帯域アンテナは、基端側から先端側に位置するに従って徐々に短くなる複数の素子を備えたログペリオディックアンテナを有し、前記受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って給電点が横方向の基端側から先端側に変位する構成とし、
    前記横方向移動手段は、前記受信信号の周波数が低周波から高周波になるに従って前記広帯域アンテナを前記被測定物から遠ざける構成としてなる請求項1に記載のアンテナポジショナ。
  3. 前記縦支柱と横方向に離間した位置には他の縦支柱を設け、該他の縦支柱には前記横支柱を支持した状態で当該他の縦支柱に沿って上,下方向に昇降可能な他の昇降台を設けてなる請求項1または2に記載のアンテナポジショナ。
  4. 前記縦支柱は、前記広帯域アンテナの移動方向と直交する幅寸法に比べて横方向に延びる長さ寸法を大きな値に設定してなる請求項1または2に記載のアンテナポジショナ。
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