JP4264973B2 - 車両用回転センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用回転センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2000−337920号公報
【特許文献2】
特開2001−165951号公報
【0003】
回転センサには、よく知られた光学式回転センサのほか、自動車等の車両用には、汚れ付着や外乱光の影響を受けにくく、かつ安価に構成可能な磁気式の回転センサも多く使用されている(特許文献1)。ところで、回転センサの用途としては、回転速度検出や回転角度位置検出が主であるが、目的によっては回転方向の検出が必要となる場合がある。車両用回転センサが車速検知の目的で使用される場合、車輪の正転/逆転(つまり、車両の前進/後退)の情報を得るために、回転方向検知の機能が要求される。回転センサにおいて回転方向検知を行なうには、例えば、同一回転体から、波形進行方向に関して非対称な位相差を有する二系統の検出波形を発生させ(正弦波や等間隔パルスなどの周期波形を出力するタイプの回転センサであれば、この位相差は1/4波長に設定されることが多い)、位相先行する検出波形が回転方向に応じて逆転することを利用して、正転/逆転の識別を行なう方法が一般的である(特許文献2)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車用の車速制御に用いる回転センサは、図12に示すように、進行方向右側の車輪(右車輪)と左側の車輪(左車輪)との回転速度を独立に検出するために、両車輪に個別に設けられることが多い。回転センサ100は、車輪よりも内側の車体内スペースを利用して取り付けることになるが、図からも明らかなように、回転センサ100の取付スペースと車輪との位置関係は、右車輪と左車輪とで通常逆となる。この場合、同じ仕様の回転センサ100を左右の車輪に取り付けた場合、検知用回転体140の回転軸線の向きが逆転するため、車両AMの前進/後退により左右の車輪は同方向に回転するにもかかわらず、回転センサ100の回転方向は互いに逆となり、そのままでは右車輪と左車輪との間で、正転信号と逆転信号との関係が反転するので、ECU等での信号処理が非常に面倒となる。
【0005】
この場合、図12に破線で示すように、車体の外側に回転センサを取り付けるようなことはもちろんできないから、現状では、同一系統の正転/逆転信号を発生可能な右車輪用回転センサと左車輪用回転センサとを個別に用意して取り付けることが行なわれている。しかし、この方法は、右用と左用とで回転方向信号の発生回路仕様を変更しなければならず、部品種類の増加によるコストアップにつながる他、左右の組付け間違いを起すといった問題も生じうる。
【0006】
本発明の課題は、右車輪用と左車輪用との間で共用化が可能な車両用回転センサを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用回転センサは、
車輪の回転軸とともに回転する検知用回転体の回転方向に基づいて車輪の正転/逆転を検知するとともに、検知用回転体の回転軸線の向きを互いに反転させる形で、車両の進行方向右側の車輪と同じく左側の車輪とのいずれにも取付可能とされ、かつ、左側車輪へ取り付ける左モードと右側車輪へ取り付ける右モードとの間で互いに反転する検知用回転体の回転方向の情報を、該左モードと右モードとのいずれにおいても、車輪の正転/逆転の識別が可能となる車輪回転方向情報に変換して出力する回転情報変更回路部を有してなることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の車両用回転センサによると、左モードと右モードとの間で互いに反転する検知用回転体の回転方向の情報を、該左モードと右モードとのいずれにおいても、車輪の正転/逆転の識別が可能となる車輪回転方向情報に変換して出力する回転情報変更回路部を設けた。これにより、右車輪用と左車輪用とで検知用回転体の回転軸線の向きが反転するにもかかわらず、該左モードと右モードとのいずれにおいても前記車輪の正転/逆転の特定が可能な車輪回転方向情報が得られるので、右車輪用と左車輪用との間で共用化が可能となり、部品種類の増加によるコストアップや左右の組付け間違いといった問題も回避できる。
【0009】
回転情報変更回路部は、車輪回転方向情報を左モードと右モードとで共通となるように出力するものとすることができる。左モード及び右モードとは無関係に、同一内容の正転/逆転信号が出力されることで、ECU側での正転/逆転信号を用いた制御プログラムをより簡略化することができる。
【0010】
上記本発明の回転センサは、左モードと右モードとのいずれかを基準として、検知用回転体の第一回転方向と、これと反対の第二回転方向とを定め、検知用回転体がそれら第一回転方向と第二回転方向とのいずれに回転しているかを検知するセンサ回転方向検知部と、左モードと右モードとのいずれにて検知用回転体の取付けがなされるかに対応して、検出状態を左モード検出状態と右モード検出状態との間で変化させる取付検出部と、取付検出部の検出状態が左モード検出状態となっている場合と、右モード検出状態となっている場合との間で、センサ回転方向検知部が検知する第一回転方向及び第二回転方向と車輪の正転及び逆転との対応関係を反転させた形で、車輪の正転と逆転とが一義的に識別可能となる車輪回転方向信号を車輪回転方向情報として出力する車輪回転方向信号出力部と、を備えたものとして構成することができる。取付検出部を設けたことで、左モード検出状態と右モード検出状態との識別を確実に把握することができ、その検出状態の相違に基づいて、センサ回転方向検知部による第一回転方向と第二回転方向への、正転信号と逆転信号の対応関係を互いに反転させることにより、左右車輪それぞれに有効な車輪回転方向信号(正転/逆転信号)を合理的かつ簡便に設定することが可能となる。
【0011】
車輪回転方向信号出力部は、信号電源の電源線の端子接続極性が左モードと右モードとで反転するようになっており、取付検出部は該電源線の端子接続極性に基づいて左モード検出状態と右モード検出状態とが切り替わる極性検出回路を有するものとして構成することができる。この構成によると、センサへの信号電源の接続極性を左車輪側と右車輪側とで反転させることにより、左右いずれの車輪へのセンサ取付であるかを、極性検出回路による電源線の端子接続極性の検出結果に基づいて容易にかつ確実に把握することができる。
【0012】
この場合、車輪回転方向信号出力部の回路構成が、右取付及び左取付によらず、回路電源端子への電源接続極性が同一であることが要請される場合は、電源線の端子接続極性の反転により車輪回転方向信号出力部の回路電源端子への電源接続極性が反転しないように、次のような構成にしておくことが望ましい。すなわち、車輪回転方向信号出力部の回路電源端子と信号出力端子とは別に、一方が電源線接続端子となり他方が信号出力線接続端子となる第一外部接続端子及び第二外部接続端子を設けておく。そして、第一外部接続端子に信号電源を接続し第二外部接続端子に信号出力線を接続する左モード接続状態と、第一外部接続端子に信号出力線を接続し第二外部接続端子に信号電源を接続する右モード接続状態と、とのいずれにおいても、回路電源端子に信号電源からの電源電圧が入力され、かつ、信号出力端子からの車輪回転方向信号が信号出力線に出力されるように、第一外部接続端子及び第二外部接続端子と回路電源端子及び信号出力端子との接続を制御する端子接続制御部を設ける。
【0013】
これにより、第一外部接続端子及び第二外部接続端子の間で電源線接続と信号出力線接続とが反転しても、端子接続制御部の機能により回路電源端子への電源接続極性を同一に維持することができ、ひいては接続ミス等による回路動作不良や破損等を効果的に防止できる。この場合、極性検出回路は、第一外部接続端子及び第二外部接続端子への電源線の接続極性を検出するものとしておけばよい。該構成は、特に、車輪回転方向信号出力部が車輪回転方向信号を、出力方向(つまり極性)が一定の電流信号として出力する場合に有効である。
【0014】
上記端子接続制御部は、例えば手動スイッチ等による切り替え方式を用いてもよいが、スイッチ切り替えの設定を誤る可能性もあるので、左モード接続状態と右モード接続状態との切り替えに対し、電源電圧が常に回路電源端子に入力される極性を維持するためのブリッジ整流回路を含むものとして構成すると便利である。すなわち、第一外部接続端子及び第二外部接続端子の間で電源線接続と信号出力線接続とが反転しても、ブリッジ整流部の作用により回路電源端子への電源接続極性を自動的に同じに設定することができる。
【0015】
センサ回転方向検知部が、検知用回転体の回転方向が第一回転方向であるか第二回転方向であるかを示すセンサ回転方向信号を出力し、取付検出部が、左モード検出状態と右モード検出状態とを識別するための取付検出信号を出力する場合、車輪回転方向信号出力部は、具体的には次のように構成できる。すなわち、取付検出信号が左モード検出状態を示している場合は、センサ回転方向信号が第一回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく第二回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力する一方、取付検出信号が右モード検出状態を示している場合は、センサ回転方向信号が第二回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく第一回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力する。つまり、センサ回転方向信号と取付検出信号との組み合わせに基づいて、左右いずれのモードにおいても正転/逆転を一義的に把握できる車輪回転方向信号を簡単に生成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の回転センサの一例を概略構成にて示すブロック図である。該回転センサ1は、自動車等の車両の車速を、車輪回転方向とともに検知するためのものであり、車速電流回路2と極性検出回路3とを有する。車速電流回路2は、車輪回転方向信号出力部と回転速度検出出力部とを兼用するものであり、車輪回転方向信号として、車輪正転信号と車輪逆転信号とを互いに電流レベルの異なる電流信号として出力するものである。回転センサにより得られる種々の情報を電流信号として出力することにより、車両上での信号配線の数を減ずることができる。ここで、車速電流回路2の信号用の回路電源端子(+)には、常に同一極性の電源電圧(本実施形態では、自動車に搭載されるバッテリー電圧(正極側)である)が供給される。
【0017】
回転センサ1の検知部分は周知のものであり、図4に一例を示している。この構成では、検知部分を磁気式ロータリーエンコーダで構成している。具体的には、車輪の回転軸とともに回転する検知用回転体140を、周方向に異極性着磁領域が交互に配列したマグネットロータにて構成し、そのマグネットロータの回転に伴う各着磁領域の移動を、MR素子からなる磁界検出部38,39にて検出するようにしている。MR素子は、Fe/Cr人工格子膜やCo/Cu人工格子膜など、強磁性相と非磁性相との人工格子的な交互積層構造膜における巨大磁気抵抗効果を利用する磁気検知素子のことであり、磁界強度の変化を素子の大きな抵抗変化として検出することができるので、磁気センサの磁界検出部として近年多用されている。本実施形態において磁界検出部38,39は、それぞれ、一定電圧が両端に印加される2つのMR素子38a,38b及び39a,39bのブリッジからなり、マグネットロータの着磁領域の通過に伴い、MR素子38a,38b(39a,39b)間の抵抗変動に基づくブリッジ分圧点の電圧変動を回転検出波形として出力する。
【0018】
磁界検出部38,39は、検知用回転体140の回転接線方向において、交互に形成された着磁領域の1/4周期だけずれた位置に配置され、図5に示すように、位相が1/4波長だけずれた略等価な回転検出波形A及びBをそれぞれ独立に出力する。そして、回転検出波形A及びBのうち、位相先行する波形がいずれであるかを識別することにより、検知用回転体140の回転方向を検出することができる。また、回転検出波形A及びBは、シュミットトリガ等で構成される波形処理部40,41にて二値パルス化することにより、回転速度を反映した回転速度パルス信号として用いることができる。
【0019】
なお、回転センサの検知部は、磁気エンコーダを用いる場合においても周知の種々の方式を採用でき、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、検知用回転体は、マグネットロータに代えて、外部磁界発生用のバイアス磁石と組み合わされる軟磁性材料歯車で構成してもよいし、磁気検知素子はMR素子以外にも、ホール素子やピックアップコイルあるいは磁気ヘッドなどを使用することも可能である。また、磁気エンコーダに代えて光学式エンコーダを用いてもよいし、誘導式近接スイッチにより回転検出するものを使用してもよい。
【0020】
図3は、車速電流回路2の内部構造を示す回路図であり、磁界検出部38,39からの検出波形信号の比較により検知用回転体140の回転方向を検出するとともに、その回転方向に基づいて車輪の正転/逆転の判定を信号処理部11により行い、該信号処理部11から正転判定信号又は逆転判定信号を出力する。そして、最終的にECUに出力する車輪正転信号と車輪逆転信号とを、これら正転判定信号又は逆転判定信号に従い、回路電源端子(+)から供給されるバッテリー電圧を用いて、互いに電流レベルの異なる電流信号として発生させる。具体的には図3に示すように、車輪正転信号及び車輪逆転信号を生成するための複数の定電流信号源12,13と、それら定電流信号源12,13の信号出力端子(−)への接続・切り離しを個別に切り替える複数のスイッチ14,15とが設けられている。そして、信号処理部11からの正転判定信号と逆転判定信号(「正転/逆転判定信号」と総称することができる)とを用いて、スイッチ14,15のオン/オフ切り替えを行なうことにより、接続選択する定電流信号源12,13を変更し、互いに電流レベルの異なる車輪正転信号と車輪逆転信号とを発生させる。
【0021】
なお、本実施形態では、車輪正転信号及び車輪逆転信号用に、出力電流値(Ib,Ic)が互いに異なる定電流信号源12,13を使用しており、スイッチ14,15によりいずれか一方の定電流信号源12,13を選択的に接続するようにしている。そして、回転方向信号用の定電流電源12,13との各電流出力は、いずれも電流出力経路20に統合され、最終的に信号出力端子(−)から出力される回路構成になっている。また、信号処理部11の定電圧電源10に電流供給するための電源19が別途設けてあるが、該電源19からの電流も、車輪正転信号用及び車輪逆転信号用の各電流Ia,Ibに重畳される。従って、信号電流の基準点が信号処理部11内の負荷レベルによって変動しないよう、上記の電源19も定電流電源として構成してある。これにより、図5に示すように、車輪正転信号及び車輪逆転信号の各電流レベルはIa+Ib及びIa+Icとして与えられる。
【0022】
このようにして生成される車輪回転方向信号(車輪正転信号及び車輪逆転信号)は、図6に示すように、車速電流回路2の信号出力端子(−)から信号出力線21を経て、ECU側に出力され、該ECU内で電流検出抵抗Rを用いて電圧信号に変換され、制御信号として供される。
【0023】
図12を援用して示すように、回転センサ1は、検知用回転体140の回転軸線の向きを互いに反転させる形で、車両の進行方向右側の車輪と同じく左側の車輪とのいずれにも取付可能とされている。この場合、左側車輪へ取り付ける左モードと右側車輪へ取り付ける右モードとの間で、検知用回転体140の回転方向は互いに反転することになる。検知用回転体140は、左モードと右モードとのいずれかを基準として第一回転方向と、これと反対の第二回転方向とを定めたとき、左モードと右モードとの第一回転方向同士(及び第二回転方向同士)は、回転軸線の向きが反転するから互いに逆となる。検知用回転体140は、それら第一回転方向と第二回転方向とのいずれに回転しているかを検知するセンサ回転方向検知部としての役割を果たす。しかし、最終的に必要なのは車輪の正転方向と逆転方向との識別であり、左モード及び右モードとは無関係に、車両の進行方向を基準として正転方向と逆転方向とを考えなければならない。具体的には、左モードの第一回転方向が車輪の正転方向なら、右モードでは第二回転方向を車輪の正転方向として定める必要がある。
【0024】
そこで、回転センサ1においては、検知用回転体140の回転方向情報を、該左モードと右モードとのいずれにおいても車輪の正転/逆転の特定が可能となる車輪回転方向情報に変換して出力する回転情報変更回路部を、車速電流回路2内に組み込んである。以下、詳しく説明する。まず、図1において、取付検出部の役割を果たす極性検出回路3が設けられている。取付検出部は、図12において、検知用回転体140が、左モードと右モードとのいずれで取り付けらるかに対応して、検出状態を左モード検出状態と右モード検出状態との間で変化させるものである。本実施形態では、車輪回転方向信号出力部をなす車速電流回路2が、信号電源の電源線の端子接続極性が左モードと右モードとで反転するようになっており、取付検出部として採用される極性検出回路3は、該電源線の端子接続極性に基づいて左モード検出状態と右モード検出状態とが切り替わるものである。
【0025】
具体的には、車速電流回路2の回路電源端子(+)と信号出力端子(−)とは別に、一方が電源線接続端子となり他方が信号出力線接続端子となる第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnが設けられている。図8に示すように、左モードで使用される左モード接続状態では、第一外部接続端子Vpに信号電源であるバッテリーを電源線22により接続し、第二外部接続端子Vnに信号出力線21を接続する。他方、右モードで使用される右モード接続状態では、第一外部接続端子Vpに信号出力線21を接続し、第二外部接続端子Vpに電源線22を接続する。
【0026】
また、車速電流回路2の回路電源端子(+)には常に同じ極性の電源電圧、つまりバッテリー電圧が接続されなければならないので、回路電源端子(+)及び信号出力端子(−)と、第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnとの間には端子接続制御部4が設けられている。端子接続制御部4は、左モード右モードとのいずれにおいても、回路電源端子(+)に信号電源であるバッテリー電圧が入力され、かつ、信号出力端子(−)からの車輪回転方向信号が信号出力線に出力されるように、第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnと回路電源端子(+)及び信号出力端子(−)との接続を制御する。
【0027】
具体的には、端子接続制御部4はブリッジ整流回路にて構成されている。本実施形態においては、該ブリッジ整流回路を、全波整流回路等において汎用されているダイオードブリッジにて構成している。該ダイオードブリッジは、2つのダイオード4a,4bのアノード側が共通結線された第一のハーフブリッジと、2つのダイオード4d,4cのカソード側が共通結線された第二のハーフブリッジとの両端同士をそれぞれ共通結線したものであり、ハーフブリッジ同士の共通結線点C,D間に電圧極性が反転する入力を与えても、各ハーフブリッジ中点A,Bには、常にダイオードのカソード結線側の中点Aが必ず正極性となるように整流出力が現れる。そこで、図1では、上記共通結線点C,Dに第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnをそれぞれ接続し、他方、各ハーフブリッジ中点A,Bに回路電源端子(+)及び信号出力端子(−)をそれぞれ接続することにより第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnのバッテリー電圧の印加極性が反転しても、車速電流回路2の回路電源端子(+)には常にバッテリー電圧が印加されるようになる。
【0028】
次に、極性検出回路3は、第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnへの電源線22(図8:バッテリー)の接続極性を検出する。本実施形態では、第一外部接続端子Vpと信号出力端子(−)とを直結する形で極性検出経路23を設け、ここに、図2に示すように、極性検出経路23上にて第一外部接続端子Vp側のダイオード5と、信号出力端子(−)側の抵抗6とを直列接続する形で配置し、接続点の電圧を極性検出信号として出力する。具体的には、極性検出信号は、バッテリーが第一外部接続端子Vpに接続されたとき(図8では左モード)は高電圧レベル(以下、「H」と略記する)となり、第二外部接続端子Vnに接続されたとき(図8では右モード)は低電圧レベル(以下、「L」と略記する)となる。なお、極性検出経路23は電流出力経路20につながっているので、車速電流回路2の出力に影響を与えないように、抵抗6の抵抗値を(適当に大きく)定めておく必要がある。
【0029】
車速電流回路(車輪回転方向信号出力部)2は、極性検出信号が左モード検出状態を示している場合(つまり「H」のとき)は、センサ回転方向信号が第一回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく第二回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力するように動作する。また極性検出信号が右モード検出状態を示している場合(つまり「L」のとき)は、センサ回転方向信号が第二回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく第一回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力するように動作する。
【0030】
このロジックを、本実施形態では次のように実現している。図7に示すように、信号処理部11は、波形処理部40,41、D型フリップフロップ(以下、D−FFと記する)42及び排他的論理和演算部43等からなる。まず、磁界検出部38と磁界検出部39からの波形A,Bを、それぞれシュミットトリガなどで構成された波形処理部40,41にて二値パルス化するとともに、これらをそれぞれD−FF42のD端子とクロック(CK)端子に入力する。磁界検出部38と磁界検出部39からの各波形は、図5に示すごとく1/4波長だけ位相がずれており、これらを方形波化してD−FF42のD端子とCK端子とに入力した場合、D端子への二値パルス入力とCK端子への二値パルス入力も1/4波長、つまり半パルス分だけずれて入力される。センサ回転方向が第一回転方向となっている場合と第二回転方向となっている場合とでは、各波形の位相先行関係が逆転するので、CK端子の立ち上がり時にラッチ保持されているD端子入力レベルは、第一回転方向の場合は常に「H」となり、第二回転方向の場合は常に「L」となる。D−FF42では、このラッチ保持レベルに対応した出力が、CK端子立ち下がり時に出力端子Q(あるいはその反転出力端子)に現れるので、これをセンサ回転方向信号(判定信号)Kとして利用できる。本実施形態では、第一回転方向時の出力端子Qの出力を「H」とし、第二回転方時の出力端子Qの出力を「L」とする(もちろん逆であってもよい)。
【0031】
そして、第一回転方向と第二回転方向との車輪正転/逆転との対応付けは、左モードと右モードとで逆転させる必要があるので、左右のモードを反映した信号である極性検出信号Pとセンサ回転方向信号Kとの排他的論理和を、排他的論理和演算部43(本実施形態ではEx−ORゲートを用いている)にて演算すれば、その出力Jを、左モード/右モードとは無関係に車輪の正転/逆転を一義的に反映した車輪回転方向信号として使用できる。本実施形態では、該排他的論理和の電圧出力Jを直接車輪回転方向信号として用いるのではなく、これを正転信号電流又は逆転信号電流に変換するスイッチ14,15を選択的に駆動するための正転/逆転判定信号として用いている。排他的論理和演算部43は、検知用回転体140の回転方向の情報であるセンサ回転方向信号Kを、左モードと右モードとのいずれにおいても車輪の正転/逆転の識別が可能となる、車輪回転方向情報としての排他的論理和の電圧出力Jに変換しているから、回転情報変更回路部の役割を果たしていることは明らかである。
【0032】
なお、本実施形態では、二値化後の回転検出波形A(又はB)を用いて、正転信号電流又は逆転信号電流をスイッチングすることにより、その電流パルスのレベルが表す回転方向の情報とともに、電流パルスのスイッチング間隔により回転速度の情報を同時に読み取ることができるようにしている(例えば、ECU側でこの電流パルスをカウントし、その単位時間当たりのカウント数から回転速度の情報を得ることができる)。具体的には、論理和ゲート45又は46により、正転/逆転判定信号Jと回転検出波形A(又はB)との論理和を取り、その出力でスイッチ14,15をスイッチング駆動することで、上記の機能を実現している。なお、回転方向を表す正転/逆転判定信号Jの内容に応じてスイッチ14,15を選択的に駆動するために、スイッチ14,15に分配される正転/逆転判定信号Jの一方を、インバータ44によりレベル反転させている。
【0033】
このようにして、図8に示すように、同じ回転センサ1を、左車輪と右車輪とで、第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnへの電源線22及び信号出力線21の接続極性を反転させてそれぞれ接続すれば、各信号出力線21,21には、同じ形態の正転/逆転信号からなる車輪回転方向信号を、それぞれ左車輪用及び右車輪用として出力することができる。
【0034】
なお、図1の端子接続制御部4に用いるブリッジ整流回路は、ダイオード以外の整流素子を用いて構成することもできる。図9はその一例であり、寄生ダイオード構造を有したFET、具体的にはMOSFET14a,14b,14c,14dにより、図1のダイオード4a,4b,4c,4dを置き換える形でブリッジ整流回路を構成している。また、図10に示すように、極性検出回路3に使用するダイオードも寄生ダイオード構造を有したFET15に置き換えることが可能である。ただし、この場合、FET15のゲート駆動電圧を分圧調整して作るために、2つの抵抗6,16を設けている。
【0035】
また、端子接続制御部は、ブリッジ整流回路に代えて、図11に示すようなスイッチ50にて置き換えることもできる。スイッチ50は、第一外部接続端子Vp及び第二外部接続端子Vnに対する、車速電流回路2の電源端子(+)及び信号出力端子(−)への接続を、一括して反転切替するもので、車両への組付け時に、右モードとなる左モードとなるかに応じて、予めスイッチ50の向きが設定される。極性検出回路3は図2と全く同様に構成されている。
【0036】
このスイッチ50の設定方向は、回転センサを自動車に組み付けるに先立って手動により切り替えてもよいが、組付け間違いなどを確実に防止するには、自動車への組付け時に右モードであるか左モードであるかを検出して、その検出結果に応じてスイッチ50の設定方向を自動切換えできるようにしておくことが有効である。本実施形態では、右モードと左モードとの間で端子Vp,Vnへの電源接続極性が切り替わることを利用し、極性検出回路3による極性検出信号により、スイッチ50の切り替え駆動部50a(例えばリレー接点スイッチを用いる場合はソレノイド、トランジスタを用いる場合はスイッチ駆動用のベースあるいはゲートである)を駆動制御して、上記のスイッチ切り替えを行なうようにしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転センサの第一実施形態を概略的に示す回路図。
【図2】極性検出回路の第一例を示す回路図。
【図3】図1の車速電流回路の詳細を示す回路図。
【図4】回転センサの検知部の一例を示す模式図。
【図5】磁界検出部38,39の出力波形と、回転センサの出力電流波形を示す図。
【図6】回転センサの出力電流波形の使用形態を例示して示す回路図。
【図7】車速電流回路の信号処理部の構成例を示す回路図。
【図8】本発明の回転センサの車両上での結線状態を説明する模式図。
【図9】本発明の回転センサの第二実施形態を概略的に示す回路図。
【図10】極性検出回路の第二例を示す回路図。
【図11】本発明の回転センサの第三実施形態を概略的に示す回路図。
【図12】従来の回転センサの課題説明図。
【符号の説明】
2 車速電流回路(車輪回転方向信号出力部)
3 極性検出回路(取付検出部)
4 整流ブリッジ回路(端子接続制御部)
140 検知用回転体
43 排他的論理和演算部(回転情報変更回路部)
50 スイッチ(端子接続制御部)
Vp 第一外部接続端子
Vn 第二外部接続端子

Claims (5)

  1. 車輪の回転軸とともに回転する検知用回転体の回転方向に基づいて前記車輪の正転/逆転を検知するとともに、前記検知用回転体の回転軸線の向きを互いに反転させる形で、車両の進行方向右側の車輪と同じく左側の車輪とのいずれにも取付可能とされ、かつ、左側車輪へ取り付ける左モードと右側車輪へ取り付ける右モードとの間で互いに反転する前記検知用回転体の回転方向の情報を、該左モードと右モードとのいずれにおいても前記車輪の正転/逆転の特定が可能となる車輪回転方向情報に変換して出力する回転情報変更回路部を有し、さらに、
    前記左モードと前記右モードとのいずれかを基準として、前記検知用回転体の第一回転方向と、これと反対の第二回転方向とを定め、前記検知用回転体がそれら第一回転方向と第二回転方向とのいずれに回転しているかを検知するセンサ回転方向検知部と、
    前記左モードと前記右モードとのいずれにて前記検知用回転体の取付けがなされるかに対応して、検出状態を左モード検出状態と右モード検出状態との間で変化させる取付検出部と、
    前記取付検出部の検出状態が前記左モード検出状態となっている場合と前記右モード検出状態となっている場合との間で、前記センサ回転方向検知部が検知する前記第一回転方向及び前記第二回転方向と車輪の正転及び逆転との対応関係を反転させた形で、前記車輪の正転と逆転とが一義的に識別可能となる車輪回転方向信号を前記車輪回転方向情報として出力する車輪回転方向信号出力部と、
    を備え、
    前記車輪回転方向信号出力部は、信号電源の電源線の端子接続極性が前記左モードと前記右モードとで反転するようになっており、前記取付検出部は該電源線の端子接続極性に基づいて前記左モード検出状態と前記右モード検出状態とが切り替わる極性検出回路を有することを特徴とする車両用回転センサ。
  2. 前記回転情報変更回路部は、前記車輪回転方向情報を前記左モードと前記右モードとで共通となるように出力するものである請求項1記載の車両用回転センサ。
  3. 前記車輪回転方向信号出力部の回路電源端子と信号出力端子とは別に、一方が電源線接続端子となり他方が信号出力線接続端子となる第一外部接続端子及び第二外部接続端子を設け、
    第一外部接続端子に前記信号電源を接続し前記第二外部接続端子に信号出力線を接続する左モード接続状態と、第一外部接続端子に前記信号出力線を接続し前記第二外部接続端子に信号電源を接続する右モード接続状態とのいずれにおいても、前記回路電源端子に前記信号電源からの電源電圧が入力され、かつ、前記信号出力端子からの前記車輪回転方向信号が前記信号出力線に出力されるように、前記第一外部接続端子及び前記第二外部接続端子と前記回路電源端子及び前記信号出力端子との接続を制御する端子接続制御部とを備え、
    前記極性検出回路は、前記第一外部接続端子及び前記第二外部接続端子への前記電源線の接続極性を検出するものである請求項1又は請求項2に記載の車両用回転センサ。
  4. 前記端子接続制御部は、前記左モード接続状態と前記右モード接続状態との切り替えに対し、前記電源電圧が常に前記回路電源端子に入力される極性を維持するためのブリッジ整流回路を含むものである請求項3記載の車両用回転センサ。
  5. 前記センサ回転方向検知部は、前記検知用回転体の回転方向が前記第一回転方向であるか前記第二回転方向であるかを示すセンサ回転方向信号を出力するものであり、
    前記取付検出部は、前記左モード検出状態と前記右モード検出状態とを識別するための取付検出信号を出力するものであり、
    前記車輪回転方向信号出力部は、前記取付検出信号が前記左モード検出状態を示している場合は、前記センサ回転方向信号が前記第一回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく前記第二回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力する一方、前記取付検出信号が前記右モード検出状態を示している場合は、前記センサ回転方向信号が前記第二回転方向となっている場合に車輪正転信号を出力し、同じく前記第一回転方向となっている場合に車輪逆転信号を出力する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用回転センサ。
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