本発明は、油圧ショベル等の建設機械の運転室に配置されて、オペレータに建設機械の警告および警報を知らせるための建設機械の表示装置に関するものである。
例えば、油圧ショベル等の建設機械は、エンジンによって油圧ポンプを駆動して、この油圧ポンプから出力される圧油が作動各部に装着した油圧シリンダや油圧モータに供給されるようになっている。このような作動各部は、運転室内にオペレータが搭乗して、操作レバー等の操作手段により操作されて、土砂の掘削等の作業が行われる。
建設機械の運転室には、オペレータに建設機械の作動状況を視認させるために各種の計器類が設けられている。このような計器類により表示されるものとしては、例えば、冷却水の水温計、作動油の油温計、燃料の残量計、エンジンの回転数計等がある。また、その他にも、建設機械を稼動している時間を示すアワーメータ、ゲートロックレバーが正規の位置にあるか否かの情報等も適宜表示することができる。
以上のように、建設機械に関する各種情報は一括して液晶ディスプレイ等のモニタにより表示するようになってきている。ところで、このようなモニタは、オペレータの視界を確保するという観点から、その形状はできるだけコンパクトであることが好ましい。従って、このように限られた表示領域を有するモニタを使用する場合、上述した各種情報を全て表示することはできないため、この領域内で、オペレータが必要な情報を適宜選択して表示する必要がある。特に、近年の建設機械は多機能化の傾向にあるため、それに伴い表示する情報も増加の傾向を辿っているため、これらの情報を限られた表示領域で情報の選択を行い表示する必要がある。そこで、通常時には、少なくとも冷却水の温度、作動油の油温計、燃料の残量計を含む機械状況情報を表示しておき、他の情報を表示するときには、この画面を切り替えて表示するようにする。勿論、他の情報を表示する領域に余裕がある場合には、画面の切り替えを行う必要はなく、同時に表示してもよい。
ところで、上述したようなモニタには、通常時には、冷却水の温度、作動油の油温計、燃料の残量計が表示されているが、例えば建設機械に異常が発生した場合は、その旨を迅速且つ確実にオペレータに通知しなくてはならない。すなわち、建設機械の各部には異常検出手段が設けられ、これら異常検出手段が異常を検出した場合には、速やかに異常が発生した旨をモニタに表示し、オペレータに通知する必要がある。オペレータは、モニタに異常が発生した旨の表示がされたことを確認することにより、適切な措置を速やかに取ることができる。例えば、エンジンがオーバーヒートした場合、オペレータはモニタに表示された情報を確認して、エンジンをアイドリング状態にすることにより機械の故障を未然に防止することができる。このように、建設機械に異常が発生したときに、モニタにその旨を表示するものは従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平11−81393号公報
上述した特許文献1の発明においては、モニタには油温、水温および燃料残量の3種類のバーグラフが表示され、これら3種類のバーグラフが異常状態を示す危険領域に達したときに異常を知らせる警報を表示している。この警報の表示態様は、バーグラフにオーバーラップされているため、上述した特許文献1の発明においては、表示されているバーグラフの種類に対応した数の警報しか表示できない。
しかしながら、建設機械の異常を知らせるものとしては、例えば迅速に対応しなくてはならない警報とある程度までは作業を続行することができる警告とが存在し、これら警報および警告の種類は多種多様に存在する。上述した特許文献1の発明において多種多様な警報および警告を表示する場合、その数に対応したバーグラフを表示しなくてはならないため、限られた表示領域に表示することは事実上不可能である。
また、上述した特許文献1の発明では、油温、水温、燃料残量のいずれかに異常が発生すると、モニタのバーグラフ上に無条件に警報が表示されるが、この警報は表示された方が好ましい場合と好ましくない場合とがある。
例えば、熟練度が高くないオペレータが操作を行っている場合は、バーグラフ上に警報を表示して、警報が起きた旨の注意を喚起した方がよい。特に、熟練度が高くないオペレータには、警報だけではなくて、その対処方法まで表示した方が好ましい場合がある。例えば、エンジンのオーバーヒート警報が出されたときに、エンジンを完全に停止させてしまうと、建設機械はディーゼルエンジンであるためファンも停止してしまい、エンジンの温度が急上昇してしまう。従って、エンジンのオーバーヒートが出された場合は、アイドリング状態にして停止する必要があるが、熟練度が低いオペレータが操作を行っている場合、対処方法がわからないため、エンジンを停止させてしまうことがある。
一方で、バーグラフ上に警報を表示しない方が好ましい場合がある。例えば、モニタにオーバーヒートの警報を表示する場合、この警報がモニタに表示されるのは、実際にオーバーヒートになる直前の段階である。従って、エンジンの回転数に充分に配慮しながら操作を続行すればオーバーヒートになることはない場合は、熟練度が高いオペレータにとっては、バーグラフ上に警報が表示されることは好ましくない。また、周囲環境または作業状態によっては、オーバーヒート寸前の直前の段階においても、建設機械を安全な状態にするために、敢えて作業を続行させなくてはならない場合もある。この場合においては、バーグラフ等の計器類表示は極めて重要なものであるため、計器類はできるだけオペレータが視認しやすい状態で表示されなくてはならない。従って、バーグラフ上に警報が表示されることは好ましくない。
このように、状況によっては異常を検出した場合であっても、バーグラフ上に警報を表示することが好ましくない場合がある。
本発明は、以上のような点に鑑みなされたもので、建設機械に異常が発生したときに、その異常に対応する警報または警告の異常情報を表示し、オペレータの判断により警報または警告についての詳細情報を表示することができる建設機械の表示装置を提供することを目的とする。
本発明の建設機械の表示装置は、建設機械の運転室に備えられ、前記建設機械の計器類を主に表示するための第1の表示領域と、前記建設機械に備えられる複数の機構に異常が発生したか否かを監視する複数の異常検出装置のうちいずれかの異常検出装置が異常を検出したときに、この異常を示す警報または警告に関連付けられた異常情報を表示するための第2の表示領域と、を有する画面部と、複数の操作を行うときに使用されるボタンであって前記第2の表示領域に異常情報が表示されたときに、この表示された異常情報に対応付けられるボタンを複数有するボタン部と、を有するモニタと、前記画面部の表示制御を行う表示制御装置と、を有し、前記異常情報に対応付けられたボタンが押下されることにより、前記ボタンに対応付けられた詳細情報であって、少なくとも前記異常情報の内容を有する前記詳細情報を前記第1の表示領域に表示し、前記第2の表示領域は、前記第1の表示領域よりも小さな領域を有するとともに、複数の異常情報表示位置に区画形成して一列に配置され、前記ボタン部における複数のボタンのそれぞれは、前記区画形成された前記異常情報表示位置のそれぞれと一対一に対応して一列に設けられることを特徴とする。
また、本発明の建設機械の表示方法は、建設機械の運転室に備えられ、前記建設機械の計器類を主に表示するための第1の表示領域と、建設機械に備えられる複数の機構に異常が発生したか否かを監視する複数の異常検出装置のうちいずれかの異常検出装置が異常を検出したときに、この異常を示す警報または警告に関連付けられた異常情報を表示するための第2の表示領域と、を有する画面部と、前記異常情報に対応付けられるためのボタンを複数有するボタン部と、を有するモニタを有する建設機械の表示装置の前記画面部の表示制御を行う建設機械の表示方法であって、前記異常検出装置が異常を検出したときには、前記第2の表示領域に前記異常検出装置が異常を検出したことを示す警報または警告に関連付けられた前記異常情報を表示するステップと、前記複数のボタンのうち前記異常情報に対応するボタンが押下されたときには、前記異常情報の詳細情報であって、少なくとも前記異常情報の内容を有する前記詳細情報を前記第1の表示領域に表示するステップと、を有することを特徴とする。
本発明では、上述した異常情報はロゴや文字で表示されるが、例えば国内および海外で規格が統一されたロゴを用いる方が望ましい。このように国内および海外で規格が統一されたロゴを用いることにより、海外においても容易に適用することができる。すなわち、ロゴの詳細情報を建設機械が使用に供される国の言語で表示するように制御を行うことにより、国内だけでなく海外でも適用することができる。
また、本発明では、異常情報に関連付けられたボタンを押下することにより、表示した異常情報の詳細情報を表示するようにしたが、使用環境が良好な場合には、ボタンではなくタッチパネルを適用してもよい。すなわち、建設機械の使用環境は、砂、埃または油等により必ずしもタッチパネルを使用する使用環境が良好とはいえない。また、オペレータは、通常手袋を嵌めて建設機械の操作を行っているため、静電気を利用するタッチパネルには適用することは難しい。これらの問題がない場合には、タッチパネルを適用することが好ましい。
本発明は、建設機械に異常が発生したときに、オペレータの必要に応じて、警報または警告についての詳細情報を表示することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に適用される建設機械の一例として油圧ショベルを示す図であり、本実施形態の建設機械はクローラ式の下部走行体1と上部旋回体2と掘削作業手段等を備えるフロント作業機3とから概略構成される。また、上部旋回体2にはオペレータが搭乗して、機械の操作を行うための運転室(キャブ)4が設けられ、この運転室4の内部には、下部走行体1による走行、上部旋回体2による旋回、土砂の掘削等といった作業を行うためのフロント作業機3を構成するブーム3a、アーム3b、バケット3cの作動等といった操作を行うための操作レバーを含む操作手段が設けられている。
以上のような建設機械には、通常、その駆動はエンジンにより油圧ポンプを作動させて、油圧モータや油圧シリンダといった油圧アクチュエータを駆動させる油圧駆動式となっている。また、この他にも、作動油や空気の不純物質等を除去するために各所に設けられるフィルタ、フロント作業機3の各部を連結する連結ピンのための自動給脂等様々な機構が設けられる。本実施形態の建設機械には、これら各部を常に監視するための異常検出装置Sが設けられており、異常検出装置Sが異常を検出したときには迅速にオペレータに通知する。例えば、エンジンの冷却水の温度を監視している異常検出装置Sがオーバーヒートを検出したときには、迅速にオペレータに通知する。また同じ冷却水においても、冷却水レベルが異常になった場合においても、異常検出装置Sが異常を検出し、迅速にオペレータに通知する。さらにフィルタに目詰まりが発生したときにおいても、異常検出装置Sが目詰まりを検出し、迅速にオペレータに通知する。
運転室4の内部には、図2に示したように、モニタ13が設置されており、このモニタ13に各種の情報を表示することにより、オペレータに各種情報を認識させることができるようになっている。オペレータは作業を行いながらモニタ13を視認することができるようにしなくてはならないため、モニタ13は比較的小型の形状である必要がある。本実施形態では、このモニタ13は、図2に示されるように、例えばピラー7に取り付けられているものとする。
次に、モニタ13について説明する。本実施形態におけるモニタ13は液晶画面等で構成され、図3に示されるように、各種情報を表示する画面部13Aとオペレータが押下することができるボタン部13Bとを有して構成される。そして、画面部13Aは第1の表示領域13Iと第2の表示領域13Lとに分割され、第1の表示領域13Iには通常は計器類が表示され、第2の表示領域13Lには異常情報が表示される。ここで、異常情報とは、建設機械に異常が発生したときにオペレータに知らせるための警報または警告を示すためのものであり、例えばロゴ(ロゴタイプ)や文字情報等が含まれる。本実施形態では、異常情報はロゴであるものとする。
本実施形態では、上述したように、モニタ13は画面部13Aとボタン部13Bとに分割され、モニタ部13Aは第1の表示領域13Iと第2の表示領域13Lとに分割されるが、第2の表示領域13Lは画面部13Aの下部に細い帯状の領域として形成され、この細い帯状の領域は複数の区画に分割されている。そして、この細い帯状の領域である第2の表示領域13L以外の画面部13Aの領域は第1の表示領域13Iに割り当てられている。
モニタ13には後述する表示制御装置20が設けられ、上述した各部に設けられる異常検出装置Sと表示制御装置20が接続される。異常検出装置Sが異常を検出したときには、異常情報を画面部13Aに表示することにより、オペレータは建設機械に異常が発生したことを認識することができる。ここで、本実施形態において、警報とは緊急に対処が必要な異常が発生したことをいい、警告とはある程度までは作業を続行できる程度の異常が発生したことをいう。
図3に示されるように、本実施形態では、第1の表示領域13Iには、冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3が並列して、特性、文字、記号等のキャラクタ表示がされている。これら冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3はオペレータが容易に視認することができるようにするために、第1の表示領域13Iは大きな領域を有して構成される。そして、第2の表示領域13Lには、油圧ショベルに備えられる異常検出装置Sのいずれかが異常を検出したときに、例えば図4に示されるように、発生した異常に対する警報または警告の種類に関連付けられた異常情報を表示するための領域である。
ここで、本実施形態では、これらの表示はアナログ表示であり、そのデータは水温計、油温計および燃料残量計から取得する。そして、異常検出は、これらの計測装置とは別個のスイッチで構成するか、または計測データとリミット値とを比較することにより行われる。
上述したように、細い帯状の形状をした第2の表示領域13Lは複数の区画に分割されるが、本実施形態では、第2の表示領域13Lは7個の区画に分割されるものとし、これら7個に分割された区画を異常情報表示位置L1乃至L7として、これら異常情報表示位置L1乃至L7に7個の異常情報が同時に表示することができるように構成される。例えば、図4において、異常情報表示位置L1には冷却水の温度がオーバーヒートしている警報の異常情報が表示されている。このような異常情報は、警告および警報の種類に対応して存在する。なお、本実施形態では、7個の異常情報を同時に表示することができるように構成したが、これに限られず、任意の数の異常情報を表示してもよい。ただし、第2の表示領域13Lの領域は限られているため、多くの異常情報を同時に表示させることはあまり好ましくない。従って、本実施形態では、7個の異常情報を同時に表示できるように構成した。
ボタン部13Bはオペレータにより押下されるボタンであり、本実施形態では9個のボタンF1乃至F9を有して構成される。これらのうち、ボタンF8は画面の配置設定を行うための設定画面を立ち上げるためのボタンであり、ボタンF9は建設機械の後方の視野を確保するために設けられる映像を映すためのボタンである。また、ボタンF1乃至F7は、オペレータが操作を行うときに使用されるボタンである。ここで、本実施形態では、オペレータが操作を行うためのボタンとして7個のボタンF1乃至F7を有して構成されているが、7個に限られず任意の数だけボタンを設けてもよい。ただし、オペレータは通常手袋をして建設機械の操作を行っているため、小型のモニタ13に多くのボタンを設けると誤って意図しないボタンを押下することがあるため、あまり多くのボタンを設けることは好ましくない。本実施形態では、このような観点からオペレータが操作を行うためのボタンの数は7個にしたが、これに限られるものではない。
本実施形態では、第2の表示領域13Lの異常情報表示位置L1乃至L7に表示される異常情報とボタンF1乃至F7とは1対1の関係となるように構成し、異常情報表示位置L1乃至L7の何れかに表示された異常情報についての詳細情報を表示したい場合には、対応するボタンF1乃至F7を押下することにより、詳細情報を表示するようにする。ここで、本実施形態では、詳細情報とは、少なくとも警報または警告の内容を有するものであって、さらに対処方法を有するものであるとする。
すなわち、図3に示されるように、ボタン部13Bの直上に第2の表示領域13Lが設けられ、ボタン部13Bに一列に配置されるボタンF1乃至F7は、その直上にある第2の表示領域13Lに表示される異常情報表示位置L1乃至L7に対応する位置関係となるように構成される。すなわち、異常情報表示位置L1の直下にはボタンF1が配置され、異常情報位置L2の直下にはボタンF2が配置される。このように配置することにより、第2の表示領域13Lに表示される異常情報に対応するボタンを、オペレータは容易に把握することができ、表示された異常情報の詳細情報を容易に読み取ることができる。従って、本実施形態では、第2の表示領域13Lの異常情報表示位置の数はボタンの数と同じ数でなくてはならない。
そして、本実施形態のモニタ13には、画面部13Aの表示制御を行うための表示制御装置20が設けられる。図5に示されるように、本実施形態の表示制御装置20は、ROM(Read Only Memory)21とCPU(Central Processing Unit)22とRAM(Random Access Memory)23と異常検出装置入力部24とボタン入力制御部25と画面部出力制御部26と車体通信部27と異常情報表示位置記憶部28と詳細情報記憶装置29とがバス30を介して接続されている。
ROM21は本実施形態の表示制御を行うためのプログラムを格納するための記憶装置であり、CPU22はROM21に格納されているプログラムの実行を行うための処理装置であり、RAM23はプログラムの実行時にワークエリアとして使用される記憶装置である。異常検出装置入力部24は、建設機械の各所に設けられている異常検出装置Sと接続され、異常検出装置Sが異常を検出したときには、複数の異常検出装置Sのうち、どの異常検出装置Sが異常を検出したかを示す異常情報をCPU22に出力する入力部である。ボタン入力制御部25は、ボタンF1乃至F7が押下されたときには、その旨をCPU22に出力する制御部である。画面部出力制御部26は画面部13Aに表示される画面の制御を行うための制御部である。車体通信部27は、車体ネットワーク60を介して、エンジンや油圧機構等の状態を記録するための情報記録装置51、エンジンの回転数等の制御を行うためのエンジン制御装置52および油圧機構の制御を行うための油圧制御装置53と表示制御装置20との間で行われる情報の授受を制御するための通信部である。異常情報表示位置記憶部28は、異常情報表示位置L1乃至L7の夫々に、現在表示している異常情報の警報または警告の種類を記憶するための記憶部である。詳細情報記憶部29は、異常情報に対応する詳細情報を記憶するための記憶部である。また、バス30には、冷却水温計41、作動油温計42および燃料残量系43が接続されており、これら冷却水温計41、作動油温計42および燃料残量系43が検出している冷却水温、作動油温および燃料残量はデジタルデータに変換されて表示制御装置20に常時送られている。
次に、本実施形態の表示制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。画面部13Aには、通常の作業時、画面部出力制御部24が冷却水温計41、作動油温計42および燃料残量計43が計測する各値を、第1の表示領域13Iに冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3としてキャラクタ表示する。
このような状態において、建設機械の各所に設けられている異常検出装置Sは、異常が発生していないかを監視し(ステップS1)、異常が発生していない場合は監視を続行する。ここで、建設機械の各所に設けられている異常検出装置Sのうちいずれかが異常を検出したときには、異常を検出した異常検出装置Sは異常が発生した旨の信号を異常検出装置入力部24に出力し、異常検出装置入力部24は、異常が発生した旨の情報をCPU22に出力する。この情報をCPU22が受信すると、CPU22は、発生した異常に対応する警報または警告の異常情報を第2の表示領域13Lの異常情報表示位置L1に表示するように画面部出力制御部24を制御する(ステップS2)。このとき、異常情報表示位置記憶部28は、異常情報表示位置L1に表示した異常情報の警報または警告の種類を記憶する。
ここで、第2の表示領域13Lに異常情報が表示されると、オペレータが詳細情報を表示したい場合には、異常情報表示位置L1に対応するボタンF1を押下する(ステップS3)。このボタンF1が押下されると、ボタンF1が押下された旨の信号をボタン入力制御部25がCPU22に出力し、CPU22は、押下されたボタンに対応する異常情報(異常情報表示位置L1に表示されている異常情報)がどのような警報または警告の異常情報であるかを異常情報表示位置記憶部28から読み出し、読み出された警報または警告の異常情報に対応する詳細情報を詳細情報記憶部29から読み出して、図7に示されるように、異常情報の詳細情報を第1の表示領域13Iに表示するように画面部出力制御部26を制御する(ステップS4)。
次に、CPU22は詳細情報が表示されてから一定時間経過したか否かを判定し(ステップS5)、一定時間経過したときには、第1の表示領域13Iに表示された詳細情報を消去して、もともと表示されていた冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3に切り替わるように制御する(ステップS6)。
一方、ステップS3において、オペレータが異常表示位置L1に対応するボタンF1を押下しなければ、第1の表示領域13Iに詳細情報は表示されず、引き続き第1の表示領域13Iには計器類が表示される。
ここで、ステップS5において、一定時間が経過すると、第1の表示領域13Iは詳細情報から計器類を表示する画面に切り替わるが、第2の表示領域13Lに表示されている異常情報は、その異常が解消するまで引き続き表示する。すなわち、第2の表示領域13Lに引き続き異常情報が表示されることにより、オペレータはまだ異常が解消されていないことを把握することができる。オペレータが発生した異常に対して処置を行うことにより、異常が解消されたときに初めて、表示している異常情報は非表示状態になる。
以上のように本実施形態では、オペレータが詳細情報を表示させたい場合には、表示された異常情報に対応するボタンを押下することにより詳細情報を表示させたが、詳細情報を表示させる必要がない場合は、詳細情報を表示させない。例えば、熟練度の高いオペレータであって、異常情報が表示されていることを承知の上で敢えて作業を続行する必要があるときには、第1の表示領域13Iに詳細情報を表示させると、計器類の視認を妨げるため、詳細情報は表示させない。また、同様に熟練度の高いオペレータであって、異常情報が表示されていることのみで、異常情報の内容および対処方法を分かっているときには、詳細情報を表示させる必要がないため、第1の表示領域13Iに詳細情報を表示させない。
一方、第2の表示領域13Lに異常情報が表示されたとしても、異常情報の内容が分からないような熟練度が高くないオペレータの場合、または内容が分かっていたとしても対処方法が分からないような熟練度が高くないオペレータの場合は、異常情報に対応するボタンを押下することにより、第1の表示領域13Iに詳細情報を表示させ、発生した異常に対して適切な処置行う。
ここで、本実施形態では、第2の表示領域13Lに異常情報が表示されたときに、表示した異常情報に対応するボタンを押下することにより詳細情報が表示されるが、この詳細情報は警報または警告の内容および対処方法である。このとき、熟練度が高くないオペレータは、表示された内容および対処方法からのみでは、適切な対処を取ることができない場合がある。このような場合、第2の表示領域13Lの異常情報表示位置L1乃至L7の何れかのうち、使用されていない箇所に発生した異常についてのさらなる詳しい情報を表示させるための文字情報やロゴ等を用意し、この箇所に対応するボタンを押下することにより、さらなる詳しい対処方法等を表示するようにすることもできる。
以上のように、本実施形態では、建設機械の発生した異常について異常情報を表示し、オペレータの選択によって、内容およびその対処方法を知りたいときには対応するボタンを押下することにより、内容およびその対処方法を把握することができる。
実施例1について説明する。本実施例では、図3に示されるように、通常時において、冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3が第1の表示領域13Iに表示され、第2の表示領域13Lには異常情報が表示されていないものとする。
この状態で、建設機械に備えられている異常検出装置Sのうち、エアフィルタの目詰まりを監視している異常検出装置Sが目詰まりを検出したときには、図8に示されるように、エアフィルタに目詰まりが発生した警告を示す異常情報を異常情報表示位置L1に表示する。オペレータはこの異常情報の表示を確認することにより、エアフィルタに目詰まりが発生したことを認識することができる。
ところで、エアフィルタの目詰まりは迅速に対処しなくてはならないものではなく、ある程度までは作業を続行することができる。本実施例では、エアフィルタに目詰まりが発生した警告を示す異常情報が表示した場合でも、作業を続行するものとする。
エアフィルタに目詰まりが発生した警告を示す異常情報が表示されたときに、この異常情報の警告の内容および対処方法を知っているオペレータは、迅速に対処する必要がないことを知っているため、ボタンF1を押下することなく、引き続き作業を続行する。一方、表示した異常情報の内容および対処方法を知らないオペレータ、または内容は知っているが対処方法を知らないオペレータは、異常情報表示位置L1に対応するボタンF1を押下する。
ボタンF1が押下されると、第1の表示領域13Iに、例えば図9に示すように、エアフィルタに目詰まりが発生している警告の内容である「エアフィルタ目詰まり」と、対処方法である「エアフィルタに目詰まりが発生しました。交換してください。」との詳細情報を表示する。これにより、オペレータは表示した異常情報の警告の内容および対処方法を認識することができ、オペレータは迅速に対処する必要がないことを認識でき、作業を続行することができる。そして、この詳細情報は一定時間表示された後に第1の表示領域13Iから消去され、もともと表示されていた冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3に切り替わるように制御される。
このように異常情報表示位置L1にエアフィルタに目詰まりが発生している警告を示す異常情報が表示されている状態で、さらにエンジンの冷却水の温度を監視している異常検出装置Sがオーバーヒートを検出したときには、図10に示されるように、異常情報表示位置L2にオーバーヒートの警報を示す異常情報を表示させる。ここで、本実施例では、異常情報表示位置L1には既にエアフィルタの目詰まりの傾向を示す異常情報が表示されているため、オーバーヒートの警報を示す異常情報は異常情報表示位置L1の横に並列して表示する。そして、表示制御装置20は、異常情報表示位置L1にはエアフィルタの目詰まりが発生している警告を示す異常情報が、異常情報表示位置L2にはオーバーヒートが発生した警報を示す異常情報が表示されていることを記憶する。
オペレータがオーバーヒートの異常情報の表示を確認したときに、熟練度が高いオペレータであれば、詳細情報を表示させることなく、第1の表示領域13Iに表示されている計器類を確認しながら、エンジンの回転数の制御を行って、上昇傾向にあるエンジンを冷却することにより作業を続行することができる。また、同様に、熟練度が高いオペレータであれば、オーバーヒートの警報が発生した場合でも、ある程度の余裕があることを認識しているため、詳細情報を表示させることなく、第1の表示領域13Iに表示されている計器類を確認しながら、建設機械を安全な状態になるまで作動させることができる。そして、建設機械が安全な状態になると、速やかに建設機械をアイドリング状態にしてエンジンの冷却を行うことができる。
一方、表示した異常情報がオーバーヒートを示す警報であることを知らないオペレータ、またはオーバーヒートであることは知っているが対処方法を知らないオペレータ等のために、異常情報表示位置L2に表示している異常情報に対応するボタンF2を押下すると、詳細情報を第1の表示領域13Iに表示させる。
ボタンF2が押下されると、第1の表示領域13Iに、エンジンがオーバーヒートした旨の内容を示す警報である「オーバーヒート発生」と、その対処方法である「エンジンコントロールダイヤルをアイドリング位置にして、作業を中止してください」という詳細情報を表示する。これにより、オペレータは異常情報表示位置L2に表示している異常情報の警報の内容および対処方法を認識することができ、オペレータは建設機械をアイドリング状態にしてエンジンを冷却する処置を行うことができる。そして、この詳細情報は一定時間表示された後に第1の表示領域13Iから消去され、もともと表示されていた冷却水温表示I1、作動油温表示I2および燃料残量表示I3に切り替わるように制御される。このとき、第2の表示領域13Lには、異常が解消されるまで、引き続き異常情報が表示されているものとする。
この異常情報表示位置L2に表示している異常情報は、エンジンが冷却されオーバーヒートが解消されると非表示状態になる。
以上のように、本実施例では、複数の異常情報が画面上に並列に表示されたときにおいても、オペレータが警報または警告の内容および対処方法を知りたいときには、対応するボタンを押下することにより、表示された異常情報の警報または警告の内容および対処方法を把握することができる。
なお、本実施例では、第2の表示領域13Lに複数の異常情報を並列に表示しているが、警報または警告の数が8個以上になった場合は、第2の表示領域13Lに異常情報を表示することができないため、異常情報表示位置L1乃至L6に異常情報を表示し、異常情報表示位置L7の位置に「次へ」という文字で形成された異常情報を表示する。異常情報7に対応するボタンF7を押下すると、7個目以降の異常情報が表示するように制御を行えば、多数の異常情報を表示することができる。
次に、実施例2について説明する。本実施例では、第2の表示領域13Lに複数の異常情報が並列に表示される場合、緊急度の順に表示するように制御する。すなわち、第2の表示領域13Lに既に1個以上の異常情報が表示しているときに新たに警報または警告が発生した場合、新たに発生した警報または警告が既に第2の表示領域13Lに表示している異常情報の警報または警告との比較を行い、緊急度が高い順番に異常情報を並べ替える。なお、本実施例では、第2の表示領域13Lに表示される異常情報は、最も緊急度が高いものが一番左の異常情報表示位置L1に表示し、以降は左から順番に表示される。また、本実施例でいう緊急度とは、発生した異常に対して迅速に処置を行う必要性の度合いを示すものである。
例えば、第2の表示領域13Lに異常情報が表示されていないときに、作動油フィルタに目詰まりが発生していることを異常検出装置Sが検出すると、表示制御装置20は、作動油フィルタに目詰まりが発生している警告を示す異常情報を異常情報表示位置L1に表示する。
そして、この状態で、さらにエンジンの冷却水の温度を監視している異常検出装置Sがオーバーヒートを検出すると、表示制御装置20は、既に異常情報表示位置L1に表示している作動油フィルタの目詰まりの警告と新たに発生したオーバーヒートの警報とを比較する。このとき、オーバーヒートの警報に対しては迅速に対処をしなければならないが、作動油フィルタの目詰まりの警告に対してはある程度まで作業を続行することができる。従って、オーバーヒートの警報は作動油フィルタの目詰まりの警告よりも緊急度が高いため、異常情報表示位置L1にオーバーヒートの警報を示す異常情報を表示し、異常情報表示位置L2に作動油フィルタの目詰まりの警告を示す異常情報を表示する。
また、第2の表示領域13Lに既に複数の異常情報が表示されているときに、新たな警報または警告が発生した場合、新たに発生した警報または警告と既に第2の表示領域13Lに表示されている複数の異常情報の警報または警告とを比較して、緊急度が高い順番に並び替えて表示する。このとき、緊急度による並び替えは、警報であるか警告であるかのみを基準とせず、警報または警告の夫々の中でも緊急度があるため、その緊急度を基準として並び替えを行って、異常情報表示位置L1から順番に緊急度が高い順番に表示を行う。
なお、本実施例では、緊急度が高い異常情報を左から順番に並び替えて表示するようにしたが、これに限られず、右から順番に並び替えて表示するようにしてもよい。すなわち、緊急度が高いものから順番に表示する場所を予め決めておき、その場所から順番に緊急度が高い異常情報を表示するように制御すればよい。
以上説明しように、本実施例では、既に第2の表示領域13Lに異常情報が表示しているときに、新たな警報または警告が発生した場合、新たに発生した警報または警告と既に第2の表示領域13Lに表示している異常情報の警報または警告とを比較して、緊急度が高い順番に異常情報を並び替えて表示することにより、オペレータは第2の表示領域13Lに表示されている複数の異常情報が示す警報または警告のうち迅速に対応しなくてはならない警報または警告を容易に把握することができる。
次に、実施例3について説明する。本実施例では、警報または警告が発生したときに、詳細情報として、発生した警報または警告の内容および対処方法だけではなく、異常が発生した場所を画像表示するように制御する。
例えば、建設機械の各所に備えられる異常検出装置Sのうち作動油フィルタの目詰まりを検出する異常検出装置Sが異常を検出すると、第2の表示領域13Lに作動油フィルタの目詰まりが発生した警告を示す異常情報が表示する。オペレータは、この異常情報に対応するボタンを押下することにより、警報の内容および対処方法を把握することができる。
このとき、本実施例では、図11に示したように、異常情報表示位置L7に、「画像」という文字で形成される文字情報を表示する。オペレータがこの「画像」の文字情報に対応するボタンF7を押下すると、警報および対処方法が表示されていた第1の表示領域13Iが、図12に示されるような建設機械の平面図の画像に切り替えるように制御する。この画像には、異常が発生した場所が例えば斜線等で示されており、建設機械のどの場所に異常が発生したかを容易に把握することができる。このときの詳細情報は、警報または警告についての内容は有しているが、対処方法ではなく画像を有している。
さらに本実施例では、図12の異常情報表示位置L1に「拡大」という文字で形成される文字情報を表示し、この「拡大」という文字情報に対応するボタンF1を押下すると、図13に示されるように、図12の斜線で示された場所の画像がズーミングして表示される。そして、図13の異常情報表示位置L1に「縮小」という文字で形成される文字情報を表示し、この「縮小」という文字情報に対応するボタンF1を押下すると、図12の建設機械の平面図の画像に切り替わるように制御する。
なお、図12および13において、異常情報表示位置L7に「内容」という文字で形成される文字情報を表示し、対応するボタンF7を押下すると、図11に示されるような警報または警告の内容および対処方法が表示されるように制御する。また、本実施例では、「拡大」という文字情報および「縮小」という文字情報を夫々異常情報表示位置L1の位置に、「内容」という文字情報を異常情報表示位置L7の位置に表示したが、これに限られず、任意の位置に表示してよい。
以上説明したように、本実施例では、警報または警告が発生したときに、その内容および対処方法が表示されている画面から異常が発生している場所を示す建設機械の画像を表示することにより、異常が発生している場所を容易に把握することができる。また、本実施例では、異常が発生している場所をさらに拡大して表示できるように制御しているため、異常が発生した場所が入り組んでいる場合、拡大表示することにより異常が発生している場所を詳細に把握することができる。
また、本実施例では、「拡大」と「縮小」は2段階の階層構造として表示されるが、これに限られず、複数段の階層構造としてもよい。すなわち、本実施例では、建設機械の平面図から、異常が発生した場所の拡大図を表示することができるが、その場所が入り組んでいる場合には、さらにその場所を拡大した図を表示してもよい。このように「拡大」と「縮小」を複数段の階層構造とすることにより、より詳細な画像情報を把握することができる。
本実施例のように、異常が発生した場所を画像表示すると、例えば上述した作動油フィルタやエアフィルタ等のように部品を交換することにより異常が解消するようなときに効果を奏する。一般に、建設機械の部品を交換するときには、建設機械を管理する管理会社にオペレータが連絡して、管理会社のサービスマンが現地に赴いて部品の交換作業を行うが、このときオペレータが異常を示す異常情報の種類の情報と、交換する部品が建設機械のどの場所にあるかを示す画像の情報とをサービスマンに連絡すると、サービスマンの指示により、わざわざサービスマンが現地に赴かなくても、オペレータ自身が対処できることがある。また、熟練度の高いオペレータであれば、異常情報の種類の情報と、交換する部品が建設機械のどの場所にあるかを示す画像の情報とに基づいて、サービスマンに連絡してなくても、自身で解決できることがある。
また、上述したようにオペレータがサービスマンに連絡をするときには、例えば電話等の口頭による伝達であるが、さらに、近年の建設機械には衛星通信を用いた通信手段が搭載されており、遠隔地にある建設機械の管理会社のコンピュータと通信が可能なものがある。このように、建設機械に通信手段が搭載されている場合、上述した警報または警告の異常情報の種類の情報と、交換する部品が建設機械のどの場所にあるかを示す画像の情報との情報を、通信手段で管理会社のコンピュータに送信することにより、管理会社のサービスマンはより詳細に異常の情報を把握することができ、より的確な指示をオペレータに出すことができる。
次に、実施例4について説明する。本実施例では、警報または警告のうち、例えば実施例3で述べたような、作動油フィルタやエアフィルタ等のように部品を交換することにより異常を解消することができる警報または警告が発生した場合、その内容および対処方法だけでなく、図14に示されるように、詳細情報として交換する部品の種類を表示するように制御する。このとき、交換する部品の種類としては、例えば部品番号が挙げられる。
本実施例では、このように交換する部品の種類を表示することにより、部品の交換を行うサービスマンが予め所持すべき部品を把握することができる。すなわち、建設機械に交換部品が搭載されていない場合、オペレータは部品の交換を行うことができないため、サービスマンが交換部品を所持して現地に赴くが、このとき、表示された交換部品の種類の情報を予めサービスマンに知らせておくことにより、サービスマンは複数の交換部品を所持する必要はなく、必要な交換部品のみを所持して現地に赴くことができる。
また、本実施例においても、建設機械の通信手段を用いて、部品の種類の情報を建設機械の管理会社のコンピュータに送信するようにしてもよい。
建設機械の全体構成図である。
運転室の内部の概略構成図である。
モニタの構成図である。
オーバーヒートが発生したときのモニタの構成図である。
表示制御装置の概略構成図である。
表示制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。
オーバーヒートの詳細情報を表示した構成図である。
エアフィルタに目詰まりが発生したときの構成図である。
エアフィルタの目詰まりの詳細情報を表示した構成図である。
エアフィルタの目詰まりおよびオーバーヒートが発生したときの構成図である。
作動油フィルタに目詰まりが発生したときの構成図である。
異常が発生した場所を示す画像の構成図である
異常が発生した場所の拡大した画像の構成図である。
詳細情報に部品の種類の情報を付加した構成図である。
符号の説明
13 モニタ 13A 画面部
13B ボタン部 13I 第1の表示領域
13L 第2の表示領域