JP4264173B2 - 印刷・情報用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙・板紙統計年報、平成10年版(日本製紙連合会、紙・板紙部、平成11年5月1日発行)の紙の品種分類表における印刷・情報用紙、即ち、電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ、及びそれらの複合機などに使用されるPPC用紙、並びに、PPC用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙などを兼用した用紙などの情報用紙、並びに、オフセット印刷機、グラビア印刷機、電子写真方式のデジタルオンデマンド印刷機などに使用される印刷用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年地球環境問題が表面化し、森林資源保護の重要性が認識され、さまざまな紙製品において古紙利用による木材資源の利用節減が図られている。
また、パルプの漂白には、従来から塩素ガスが使用されてきたが、最近はこの塩素の使用についても環境問題の一環として検討されるようになってきた。
【0003】
塩素漂白によって白色度を高めた上質紙は、その紙中に有機ハロゲンがほんの僅かではあるが検出されるといわれている。最近、この種の化合物を分析する精度が向上したため、従来の測定器では検出できないような極めて少量しか存在しない場合であっても、この種の化合物の含有量を可能な限り減少させる方向で検討されている。
【0004】
これらの動きに関連して紙パルプ中に微量存在する有機ハロゲンをさらに減少させる研究開発が活発に行われ、漂白薬品を使用しないで製造した古紙パルプや、過酸化水素だけで漂白して製造した古紙パルプが使用されている。また、特開平5−239794号公報では、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン量を110ppm以下にした印刷・情報用リサイクル紙が提案されている。
【0005】
また、パルプ製造時の漂白工程で使用されるハロゲン添加量を削減し、全有機ハロゲン量を1000ppm以下にした漂白パルプを原料として使用することにより、紙中のハロゲン量を低減した紙(特開平6−2297号公報)や、紙中の塩素によって定着後のトナー結着樹脂の劣化を防止するために、紙中の全塩素量を200ppm以下にした電子写真用転写紙(特開平7−28269号公報)などが提案されている。なお、ここで全有機ハロゲン量及び全塩素量として検出しているのは、いずれも硝酸カリウム溶液可溶分を除去した後のハロゲン量であり、有機ハロゲン量である。
なお、無塩素漂白したバージンパルプの含有率を50%以下にして、有機塩素化合物の副生を抑制して、重送問題のない電子写真用転写紙も提案されている。(特開平7−120960号公報)
【0006】
ところで、印刷・情報用紙は白色度が80%以上の用紙が好まれる。また、オフセットカラー印刷、デジタルオンデマンドカラー印刷、電子写真方式のカラープリンタなどでカラー画像を作成する場合、特に83%以上の白色度の用紙が好まれる。したがって、高白色を達成しながら、紙中の有機ハロゲン量を低減するために、上記のようにパルプ製造時の漂白工程で塩素漂白剤の使用を中止したり、使用量を削減して漂白したパルプを原料にする提案がなされてきた。
【0007】
しかし、最近になって焼却炉で発生するダイオキシンが社会問題になり、紙の焼却時のダイオキシンの発生の有無について研究されるようになり、公表された研究結果では、紙は塩化ビニル等の塩素含有プラスチックに比べて焼却時のダイオキシン発生量は極めて微量であることが確認されている。また、新聞紙は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の塩素成分を含有しない一般的なプラスチック類と比較しても、焼却時のダイオキシン発生量は同等以下である。しかし、塩素漂白パルプを原料にする白色の上質紙は、これらの塩素成分を含有しない一般的なプラスチック類よりも、焼却時のダイオキシン発生量が多く、その中でも表1に示すように、紙中における有機ハロゲン量が少ない用紙でも焼却時のダイオキシン発生量が塩素成分を含有しないプラスチック類よりも多い用紙があることが確認されている。
【0008】
一方、古紙パルプを配合した印刷・情報用紙においても、白色度70%以上の白色用紙が好まれ、その際に白色度が高い上質紙の古紙が多用されている。上質紙の古紙は、最初のパルプ製造時の漂白工程で塩素漂白がなされているため、そこで発生した有機ハロゲンをそのまま含有している。そのため、白色上質紙の古紙パルプを配合した用紙の製造時には、パルプ製造時における漂白工程で塩素量を削減したバージンパルプを使用したとしても、当該白色上質紙の古紙パルプから有機ハロゲンが混入する。したがって、パルプ製造時の漂白工程で塩素使用量を削減して漂白したパルプのみを原料にした上質紙に比べて、古紙パルプを配合した用紙は紙中における有機ハロゲン化合物の含有量が多くなる。また、有機塩素量が少ない低白色度古紙パルプを配合した用紙でも、新聞紙より白色度が高い場合は、塩素成分を含有しない一般的なプラスチック類より焼却時のダイオキシン発生量が多い用紙もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オフセットカラー印刷、デジタルオンデマンドカラー印刷、電子写真方式のカラープリンタなどのカラー画像を作成するのに適し、かつ紙中のダイオキシン類の含有量、及び焼却時のダイオキシン発生量を極小化した印刷・情報用紙を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、紙中の有機ハロゲン量が少ないにもかかわらず、焼却時のダイオキシン発生量の比較的多いバージン紙とリサイクル紙が存在することに注目して、用紙を焼却するときのダイオキシンの発生について鋭意検討した結果、紙中の有機ハロゲンのみならず、無機ハロゲンなども含めた紙中の全ハロゲン量が、焼却時のダイオキシン発生量と対応していることを見いだした。即ち、紙中の全バロゲン量を280ppm以下にすることにより、焼却時のダイオキシン発生量を新聞紙と同様に一般的なプラスチック類より少なくすることに成功した。
【0011】
また、紙中に含まれる有機ハロゲン以外のハロゲンが、紙中の全ハロゲン量に与える影響を調査した。即ち、パルプと紙中における全ハロゲン量及びエタノール可溶有機ハロゲン量の関係を検討したところ、パルプの段階では全ハロゲン量とエタノール可溶有機ハロゲン量が対応するが、抄紙工程を経て紙となった後は必ずしも対応しないことが確認された。これはパルプ中の全ハロゲン量とエタノール可溶有機ハロゲン量が主に漂白工程におけるハロゲンの使用量に影響を受けるのに対し、紙ではさらにハロゲン含有添加剤が紙中の全ハロゲン量に影響すると推定されるからである。即ち、抄紙工程において添加されるハロゲン含有添加剤が紙中の全ハロゲン量を増加させるため、紙中の有機ハロゲン量が少ないにもかかわらず、焼却時のダイオキシン発生量の多い紙が存在するものと考えられるのである。なお、全ハロゲン量に大きく影響する紙の塩素含有添加剤としては塩化ナトリウムなどが確認されている。
【0012】
また、本発明者等は、紙中のダイオキシンの分析に際して、有機ハロゲン溶解能力を有するエタノールを用い、エタノール可溶な有機ハロゲン量と紙中のダイオキシン類量との間に良好な相関関係があることを確認した。そこで、本発明では、エタノール可溶有機ハロゲン量を35ppm以下にすることにより、紙中のダイオキシン量を、近年検出精度が向上した分析機器の検出限界に近いレベルまで低下させることができることを見いだした。
【0013】
本発明者等は、これらの結果により、古紙パルプを配合する用紙については、70%以上の白色度を、古紙パルプを配合しない用紙については83%以上の白色度を確保しながら、パルプ原料や漂白の手法、添加剤の選択など、下記の構成を採用することにより、紙中のダイオキシン量、及び焼却時のダイオキシン発生量を極小化することに成功した。
【0014】
(1) 白色度が70%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下で、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であり、オゾン漂白処理及び/又は過酸化水素漂白処理を施した古紙パルプを70〜100%の範囲で配合し、かつハロゲンを含まない導電剤を含有することを特徴とする印刷・情報用紙。
【0015】
(2) 漂白工程に酸素漂白工程及び/又は過酸化水素漂白工程を有するバージンパルプからなる印刷・情報用紙において、白色度が83%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下で、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であり、かつ導電剤を含有することを特徴とする印刷・情報用紙。
【0016】
(3) 白色度が70%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下で、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であり、オゾン漂白処理及び/又は過酸化水素漂白処理を施した古紙パルプを70〜100%の範囲で配合し、かつハロゲンを含まない導電剤を含有しており、温度20℃、相対湿度65%Rhにおける表面電気抵抗値が1×109〜1×1011Ωの範囲にあることを特徴とする電子写真用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、又はそれらの2つ以上を兼用した用紙。
【0018】
(4) 漂白工程に酸素漂白工程及び/又は過酸化水素漂白工程を有するバージンパルプからなる電子写真用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、又はそれらの2つ以上を兼用した用紙において、白色度が83%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であって、かつ導電剤を含有しており、温度20℃、相対湿度65%Rhにおける表面電気抵抗値が1×109〜1×1011Ωであることを特徴とする電子写真用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、又はそれらの2つ以上を兼用した用紙。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明では、古紙パルプ配合用紙については白色度を70%以上、より好ましくは80%以上とし、古紙パルプを配合しない用紙については白色度を83%以上、好ましくは85%以上とした。その理由は次の二つにある。第一に、カラー画像の印刷物やプリントでは、人は白い物をより忠実に再現することを要求して忠実な白さを望んでいるからである。第二に、白黒画像の印刷物のコピーでも、それをオリジナル原稿として電子写真方式の複写機で再度コピーを取る場合や、スキャナーを介してプリンタでプリントを作成する場合、用紙の白色度が低い場合はコピーにかぶり(バックグランド部分の汚れ)が発生するため、このような画像の汚れを防止する必要があるからである。
【0020】
一方、紙中にわずかながら存在するダイオキシンの懸念を解決する方策としては、漂白していない白色度の低い紙を使用する方法がある。しかし、この方法によって得た白色度の低い紙では、用紙に対する上記の要求を充たすことはできない。そこで、本発明では、紙中のダイオキシン類、及び焼却時のダイオキシン発生量を極小化しつつ、紙の白さに対する人の自然な要求に応え、また、コピー時におけるバックグランド部分の汚れといった障害を抑制し、充分な白さを有する用紙を提供しようとするものである。
【0021】
本発明は、紙中のエタノール可溶有機ハロゲンの特定や、従来注目されてこなかった全ハロゲン量についても注目し、エタノール可溶有機ハロゲン量を35ppm以下で、かつ全ハロゲン量を280ppm以下、好ましくはエタノール可溶有機ハロゲン量を25ppm以下で、かつ全ハロゲン量を200ppm以下に抑えることにより、用紙の使用時や焼却時にダイオキシンの放出を、紙類の中で最も放出量の少ない新聞紙に近いレベルまで低くし、一般的なプラスチック類より少なくすることに成功した。なお、一般の新聞紙のエタノール可溶有機ハロゲン量は20ppmで、全ハロゲン量はおよそ140ppm、紙中のダイオキシン量は0.01ppt、焼却時に発生するダイオキシン量は5ppt程度である。
【0022】
本発明の用紙では、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材、綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプなどを使用できる。また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。
【0023】
特に、バージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず、二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free :ECF)や塩素化合物を一切使用せずに、オゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)で漂白されたものであることが好ましい。
【0024】
ECF漂白に関しては、塩素ガスの代替として二酸化塩素を使用する方法が推奨されているが、塩素漂白分を全て高価な二酸化塩素に置換すると、生産コストを押し上げることになるため、二酸化塩素の添加率削減方法が検討されている。この方法としては、例えば二酸化塩素の気相処理方法が開発されている。気相処理漂白の場合、通常の液相二酸化塩素漂白の場合に比べて、二酸化塩素消費量が少なく、かつ廃液及びパルプ中に残留するAOX(Absorbable Organic Halogen)量を半分以下にする効果がある。
【0025】
また、二酸化塩素と過酸化水素を併用した漂白方法も検討されている。この方法はDPcat法と呼ばれ、二酸化塩素と過酸化水素を対パルプ0.2〜0.4wt%、触媒としてモリブデン酸ナトリウムを0.05wt%程度添加し、pH2〜5の酸性下において70〜90℃で0.5〜3時間処理すると、二酸化塩素単独で漂白する方法と比べて、同一白色度まで処理するのに二酸化塩素の使用量を半減することができる。
【0026】
さらに、オゾン漂白との併用も二酸化塩素添加率を減少させるのに有効であるとされている。過酸化水素単体も塩素系有機化合物を排出しない漂白薬品として積極的に利用されている。アルカリ抽出工程後、過酸化水素を添加するEp工程、これに酸素を添加するEop工程、さらにこれを高圧にした加圧Eop工程などが適用される。
【0027】
また、二酸化塩素はリグニンと選択的に反応するため、セルロースに損傷を与えずにパルプの白色度を高めることができるので、従来の塩素ガスを用いた漂白工程よりもさらに白色度の高いパルプを得ることができる。漂白によって発生する紙中の残留有機ハロゲン化合物は主に塩素漂白工程に由来する物であり、塩素ガスの使用を止めることのみによっても、この残留有機ハロゲン化合物をある程度まで低減することは可能である。
【0028】
また前記のTCF法は、塩素系漂白剤を一切使用せずに漂白する方法であるが、塩素と二酸化塩素、特に二酸化塩素は木材中のリグニンと選択的に反応するため、従来高い白色度と強度を必要とする漂白クラフトパルプを製造するために必要不可欠な薬品であった。TCF法では塩素系漂白剤の代わりに酸素やオゾン、過酸化水素を用いるが、酸素やオゾンはリグニンに対する選択性が低くセルロースをも分解するので使用量が限られ、また、過酸化水素は漂白のメカニズムが異なり、脱リグニン効率が低いのでいずれも高い白色度を得ることは困難である。
【0029】
このため、TCF法では、低カッパー蒸解と酸素脱リグニン処理を行って、漂白前の残留リグニン度を十分に低くし漂白負荷を軽減することが行われている。また、TCF法の最終段に高濃度・高温・酸素加圧のキレート剤添加過酸化水素・酸素漂白工程(O−PO工程)を付加して、少ない過酸化水素消費量でECF漂白に近い段階まで引き上げることができる。
【0030】
さらに、オゾンにさまざまな薬品を添加することによって、対リグニン選択性を向上させる方法も開発されている。特にオゾンにメタノールを添加して漂白する方法は、オゾン消費量も低減できる。
以上のように高白色度を要求される情報用紙の原料は、現在のところTCFパルプよりもECFパルプの方が適している。
【0031】
本発明の用紙では、古紙原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙等の上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙などを配合することができる。
【0032】
本発明の用紙において使用される古紙パルプは、上記古紙原料をオゾン漂白処理及び/又は過酸化水素漂白処理して得られた物が望ましい。また、本発明の目的を十分に達成するためには、かかる漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50〜100%の範囲にすることが望ましい。さらに、資源の再利用という観点からは、当該古紙パルプの配合率を70〜100%の範囲にすることがより望ましい。オゾン処理は上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、過酸化水素処理は脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。特に、この二つを組み合わせた処理は、古紙の脱墨を容易にするだけでなく、パルプの白色度も向上することが知られている。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物量を低減するときに多大の効果を持つ。
【0033】
本発明の用紙では、不透明度、白さ及び表面性を調整するため、填料を添加してもよい。本発明では、用紙中のハロゲン量を低減するために、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク等の炭酸カルシウム;カオリン、焼成クレー、パイオロフィライト、セリサイト、タルク等のケイ酸類;サボナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイトなどの無機填料;及び、尿素樹脂、澱粉繊維等の有機填料を挙げることができる。また、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
【0034】
本発明の用紙には、内添サイズ剤を配合してもよい。ここでも用紙中のハロゲン量を低減するために、ハロゲンを含まない内添サイズ剤や定着剤を使用することが望ましい。具体的には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などを使用することができ、さらに、硫酸バンド、カチオン化澱粉等、サイズ剤と繊維との定着剤を組み合わせて使用してもよい。また、用紙保存性を向上させる観点から中性サイズ剤を使用することが望ましい。
【0035】
また、本発明の用紙を電子写真用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、及びそれらを兼用する用紙などに適用するときに、導電剤を配合して用紙の表面電気抵抗値を調整してもよい。ここでも用紙中のハロゲン量を低減するために、ハロゲンを含まない導電剤を使用することが望ましい。このような導電剤としては、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の無機電解質;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩等のアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビット等の非イオン性界面活性剤;及び両性界面活性剤、高分子電解質などの導電剤を使用することができる。
【0036】
本発明における紙中の全ハロゲン量(TX)の測定には、塩素・硫黄測定装置/全有機ハロゲン量測定装置(TSX−10型:三菱化学社製)を用いた。まず、用紙試料10mgを電気炉に挿入し、酸素気流中で850℃で燃焼してハロゲン化水素を発生させ、85重量%の酢酸水溶液からなる電解質溶液でハロゲン化水素を捕捉する。なお、この装置のハロゲン検出能は1〜1000ppmの範囲であるため、試料の種類によっては試料挿入量を変更する必要がある。そして、該電解液中に銀発生電極、銀検出電極及び比較電極からなる電流滴定回路を形成して、ハロゲンイオンによってAg+ が消費されるときの銀電解電流量を測定し、この電流量に対応するハロゲン量を算出して全ハロゲン量(TX)とした。
【0037】
次に、本発明の紙中のエタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)の測定は、用紙試料5gをエタノールで還流抽出し、抽出液をろ過した後、水で希釈する。この溶液を活性炭カラムに通して有機ハロゲン分を吸着させる。その後、硝酸カリウム溶液をカラムに通して無機ハロゲン分を除去する。この活性炭を試料として焼却炉に挿入し、紙中の全ハロゲン量(TX)の測定と同様にして電流量を測定してエタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)とした。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。結果は表2及び3に示した。
〔参考例1〕
広葉樹クラフトパルプを酸素漂白工程、アルカリ抽出工程、気相二酸化塩素処理工程からなるECF多段漂白法で漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、パルプ100重量部に対してベントナイト填料3重量部、軽質炭酸カルシウム填料を3重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉を0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行い電子写真用紙を得た。なお、印刷・情報用紙を作成するときには導電剤の塗工は必要としない。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=250ppm、EOX=30ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=1×1010Ωであった。
【0039】
〔参考例2〕
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法で漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、パルプ100重量部に対してカオリン填料を3重量部、軽質炭酸カルシウム填料を6重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2、及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度、及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=50ppm、EOX=10ppm、白色度=85%、表面電気抵抗値=1×1010Ωであった。
【0040】
〔参考例3〕
針葉樹機械パルプをハイドロサルファイトで漂白処理し、濾水度450mlになるように叩解調整し、パルプ100重量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を8重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=140ppm、EOX=32ppm、白色度=60%、表面電気抵抗値=1×1010Ωであった。
【0041】
〔参考例4〕
広葉樹クラフトパルプを参考例2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整した後、パルプ100重量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を3重量部、サポナイト填料を3重量部、中性ロジンサイズ剤を2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤としてポリエチレングリコール(PEG)2.0g/m2及び導電剤として炭酸ナトリウム1.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=246ppm、EOX=25ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=2×109Ωであった。
【0042】
〔参考例5〕
広葉樹クラフトパルプを酸素処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF漂白を行い、叩解調整した後、パルプ100重量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を8重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として燐酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=43ppm、EOX=4ppm、白色度=85%、表面電気抵抗値=3×109Ωであった。
【0043】
〔参考例6〕
広葉樹クラフトパルプを参考例4と同様にTCF漂白を行い、叩解調整した後、パルプ100重量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を5重量部、ベントナイト填料3重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として塩化ナトリウム0.1g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=1500ppm、EOX=10ppm、白色度=85%、表面電気抵抗値=5×109Ωであった。
【0044】
〔参考例7〕
針葉樹機械パルプを参考例3と同様にハイドロサルファイトで漂白処理し、叩解調整した後、パルプ100重量部に対してカオリン填料を3重量部、サポナイト填料を5重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として塩化ナトリウム0.1g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=1600ppm、EOX=32ppm、白色度=65%、表面電気抵抗値=5×109Ωであった。
【0045】
〔参考例8〕
広葉樹クラフトパルプを塩素ガス漂白工程、二酸化塩素漂白工程、酸素漂白工程、アルカリ抽出工程からなる塩素系多段漂白法で漂白処理した後叩解調整し、パルプ100重量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を5重量部、ベントナイト填料3重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として塩化ナトリウム0.1g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=2600ppm、EOX=50ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=1×1010Ωであった。
【0046】
〔実施例1〕
上質古紙を離解し、脱墨剤(DI−767:花王(株)製)を添加した後オゾン漂白処理を行い、さらに、アルカリ処理を行った。その後熟成処理を行い、フローテーション処理を行って剥離した印刷インキやトナーなどをパルプ系から除去した。最後に洗浄器で十分に洗浄して古紙パルプを調整した。この古紙パルプ100重量部に対してカオリン填料を5重量部、ベントナイト填料を5重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=250ppm、EOX=25ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=3×109Ωであった。
【0047】
〔実施例2〕
上質古紙を離解し、脱墨剤(DI−767:花王(株)製)を添加した後、過酸化水素漂白処理を行い、さらにアルカリ処理を行った。その後、熟成処理を行い、フローテーション処理を行って剥離した印刷インキやトナーなどをパルプ系から除去した。最後に洗浄器で十分に洗浄して古紙パルプを調製した。この古紙パルプ70重量部に、実施例1でECF多段漂白して調製したバージンの広葉樹クラフトパルプ30重量部を配合し、これに対して軽質炭酸カルシウム填料を5重量部、サポナイト填料を3重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=200ppm、EOX=10ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=2×1010Ωであった。
【0048】
〔実施例3〕
新聞古紙を離解し、実施例1と同様に脱墨剤(DI−767:花王(株)製)を添加した後オゾン漂白処理を行い、さらにアルカリ処理を行った。その後熟成処理を行い、フローテーション処理を行って剥離した印刷インキやトナーなどをパルプ系から除去した。最後に洗浄器で十分に洗浄して古紙パルプを調製した。この古紙パルプ70重量部に、参考例2で調製したバージンのTCF広葉樹クラフトパルプ30重量部を配合し、これに対して軽質炭酸カルシウム填料を3重量部、酸化亜鉛填料を2重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=200ppm、EOX=15ppm、白色度=75%、表面電気抵抗値=5×1010Ωであった。
【0049】
〔比較例1〕
主に上質古紙からなるオフィス古紙を離解した後、脱墨剤(DI−767:花王(株)製)を添加してアルカリ処理を行った。その後熟成処理を行い、フローテーション処理を行って剥離した印刷インキやトナーなどをパルプ系から除去した。最後に洗浄器で十分に洗浄して古紙パルプを調製した。この古紙パルプ80重量部に、参考例2で調製したバージンのTCF広葉樹クラフトパルプ20重量部を配合し、これに対してベントナイト填料を3重量部、サポナイト填料を5重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=350ppm、EOX=35ppm、白色度=80%、表面電気抵抗値=5×1010Ωであった。
【0050】
〔実施例4〕
実施例3でオゾン漂白処理を施して調製した新聞古紙パルプ70重量部に、参考例2で調製したバージンのTCF広葉樹クラフトパルプ30重量部を配合し、これに対し軽質炭酸カルシウム填料を8重量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.2重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤としてトリポリリン酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=200ppm、EOX=12ppm、白色度=75%、表面電気抵抗値=5×109Ωであった。
【0051】
〔実施例5〕
主に上質古紙からなるオフィス古紙を離解した後、実施例1同様にしてオゾン漂白処理を施した古紙パルプ70重量部に、参考例1で調製したバージンのECF広葉樹クラフトパルプ30重量部を配合し、これに対して軽質炭酸カルシウム填料を6重量部、二酸化チタン填料を2重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=200ppm、EOX=10ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=5×1010Ωであった。
【0052】
〔比較例2〕
実施例3でオゾン漂白処理を施して調製した新聞古紙パルプ30重量部に、参考例8で塩素系多段漂白処理を施して調製したバージンの広葉樹クラフトパルプ70重量部を配合し、これに対して軽質炭酸カルシウム填料を8重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤としてポリエチレングリコール(PEG)2.0g/m2及び導電剤として塩化ナトリウム0.2g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=1800ppm、EOX=105ppm、白色度=90%、表面電気抵抗値=5×1010Ωであった。
【0053】
〔比較例3〕
比較例1で調製したオフィス古紙パルプ80重量部に、参考例2で調製したバージンのTCF広葉樹クラフトパルプ20重量部を配合し、これに対して軽質炭酸カルシウム填料を8重量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1重量部を配合して抄紙した。さらに、表面サイズ剤として澱粉0.2g/m2及び導電剤として硫酸ナトリウム2.0g/m2となるように塗工液を調製してサイズプレスを行って電子写真用紙を得た。
この電子写真用紙の全ハロゲン量(TX)、エタノール可溶有機ハロゲン量(EOX)、白色度及び表面電気抵抗値を測定したところ、TX=290ppm、EOX=52ppm、白色度=65%、表面電気抵抗値=5×109Ωであった。
【0054】
(評価)
参考例1〜8、実施例1〜5及び比較例1〜3の電子写真用紙中に含まれるダイオキシン量を次の方法で測定し、結果を表2〜5に記載した。
用紙サンプル20gをトルエンによりソックスレー抽出して濃縮した後、n−ヘキサンに移し、硫酸、水、炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水して再度濃縮した。この濃縮液をn−ヘキサンでシリカゲルカラムクロマトグラフで処理し、さらに、n−ヘキサンとジクロロメタンの混合液を用いてアルミナカラムクロマトグラフで処理して濃縮し、分析試料とした。この試料をVGAnalytical社製のガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で12種のダイオキシン類を定量して米国EPAの毒性等価換算係数を用いて2,3,7,8−TCDD(テトラクロロジベンゼン−p−ダイオキシン)当量濃度を計算した。12種のダイオキシン類とは、2,3,7,8−TCDD、1,2,3,7,8−PCDD、1,2,3,4,7,8−HCDD、1,2,3,6,7,8−HCDD、1,2,3,7,8,9−HCDD、2,3,7,8−TCDF、1,2,3,7,8−PCDF、2,3,4,7,8−PCDF、1,2,3,4,7,8−HCDF、1,2,3,6,7,8−HCDF、1,2,3,7,8,9−HCDF、2,3,4,6,7,8−HCDFである。
【0055】
また、上記の用紙を燃焼するときの排ガス及び燃焼灰中のダイオキシン含有量は次の方法で測定した。
750℃と300℃にそれぞれ加熱した管状炉を連結し、各温度帯に1個の円筒ろ紙を装填した石英管(25φi.d.×1000mmL)をセットし、予め予備加熱した後、石英管出口に採取ユニット及びポンプをセットした。石英ボートを用意して50mg程度の大きさに調整した資料を載せて750℃に設定した石英管内に入れて燃焼させた。これ以後はピンセットで試料片を1枚ずつ石英ボート上に加える操作を繰り返した。試料はサンプル4.1〜4.7gを燃焼した。燃焼ガスは上流側から、トルエンと蒸留水の混合液、トルエン、ジエチレングリコール、アンバーライトXAD−2樹脂(登録商標、アンバーライト社製)吸着管で捕集した。このXAD−2樹脂吸着管と燃焼残渣をトルエンによりソックスレー抽出し、濃縮した後n−ヘキサンに移し、硝酸銀/シリカゲル、硫酸/シリカゲル、水酸化カリウム/シリカゲルからなる多層シリカゲルカラムを通して脱水し、再度濃縮した。さらに、n−ヘキサンに転溶してアルミナゲルカラムを通して脱水/濃縮、n−ヘキサンとジクロロメタンの混合液に転溶してHPLC活性炭カラムを通して脱水/濃縮、トルエンに転溶して濃縮し、分析試料とした。この試料をSHIMADZU/KRATOS社製ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)で前記12種類のダイオキシンを定量して米国EPAの毒性等価換算係数を用いて2,3,7,8−TCDD(テトラクロロジベンゼン−p−ダイオキシン)当量濃度を計算した。なお、750℃の管状炉で試料を燃焼させた後、300℃の管状炉でサンプルを捕集したのは、実際の焼却炉では煙道で排気ガスの温度が300℃程度に下がるときにダイオキシンが発生すると言われているため、それをシミュレートしたものである。
【0056】
評価は、新聞紙、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルと比較して次のようにレベル分けした。本発明ではA及びBのレベルを許容範囲とした。なお、結果は表2〜5に記載した。
A:焼却時発生の2,3,7,8−TCDD当量濃度(TEQ)が新聞紙以下である
B:焼却時発生の2,3,7,8−TCDD当量濃度(TEQ)が新聞紙より高く、ポリプロピレン以下である
C:焼却時発生の2,3,7,8−TCDD当量濃度(TEQ)がポリプロピレンより高く、差が50ppm以下である
D:焼却時発生の2,3,7,8−TCDD当量濃度(TEQ)がポリプロピレンより高く、差が50ppmを超えて100ppm以下である
E:焼却時発生の2,3,7,8−TCDD当量濃度(TEQ)がポリプロピレンより高く、差が100ppmより大きい
【0057】
さらに、上記の用紙を富士ゼロックス社製複写機(Able3310)に適用し、文字原稿を用いて複写試験を行い、白紙背景部分の汚れの有無を調べた。結果を表2〜5に記載した。この汚れは原稿の段階では無地であった部分に発生したトナーかぶりを意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成を採用し、古紙を利用した用紙については白色度を70%以上、古紙を用いないバージンパルプのみからなる用紙については白色度を83%以上に保持しながら、エタノール可溶有機ハロゲン量及び全ハロゲン量を一定値以下に抑えることにより、安全に使用することができ、かつ焼却時に発生するダイオキシン量を紙類の中で最も低い新聞紙と同程度かそれより低く抑えることができるようになった。
Claims (2)
- 白色度が70%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下で、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であり、オゾン漂白処理及び/又は過酸化水素漂白処理を施した古紙パルプを70〜100%の範囲で配合し、かつハロゲンを含まない導電剤を含有することを特徴とする印刷・情報用紙。
- 白色度が70%以上、紙中のエタノール可溶有機ハロゲン含有量(EOX)が35ppm以下で、かつ紙中の全ハロゲン量(TX)が280ppm以下であり、オゾン漂白処理及び/又は過酸化水素漂白処理を施した古紙パルプを70〜100%の範囲で配合し、かつハロゲンを含まない導電剤を含有しており、温度20℃、相対湿度65%Rhにおける表面電気抵抗値が1×109〜1×1011Ωの範囲にあることを特徴とする電子写真用紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、又はそれらの2つ以上を兼用した用紙。
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