JP4264107B2 - 機械的振動子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、機械的振動子及びその製造方法に係り、特に、機械的振動子からなる走査プローブ顕微鏡のプローブ及び質量または力のセンシング部材に関するものである。
従来の走査プローブ顕微鏡用のプローブの構造を図1に示す。
この図に示すように、基部1601から延長したカンチレバー1602を有し、必要に応じて測定対象や測定方法に適した探針1603をカンチレバー1602の先端付近に有する。基部1601の材質はシリコンが一般的であり、寸法は1.6mm×3.4mm程度が標準的である。カンチレバー1602の材質はシリコン、窒化シリコン、またはそれらに金属を蒸着したもの等様々であり、形状は必要に応じて三角形状1604等様々なものがある。カンチレバー1602の一般的な長さは100μmから数100μm程度である。
図2は走査プローブ顕微鏡におけるプローブの代表的な使い方を示す図である。
この図に示すように、基部1701は圧電素子から成る走査装置(図示なし)に取り付けられ、探針1703が測定対象物1704の表面をなぞるように走査される。走査プローブ顕微鏡は、探針1703と測定対象物1704の間に作用する原子間力や磁力等の相互作用によって生じるカンチレバー1702の変形を検出し、コンピュータグラフィックによって測定対象物1704の凹凸や磁化等を可視化する顕微鏡であって、カンチレバー1702の変形を検出する手段は光学的手段によることが多い。
上記の光学的手段として、図2に示すように光てこを使う場合、レーザー光線1705をカンチレバー1702の背面に反射させ、反射光1706の角度をフォトダイオード(図示なし)で検出する。また、図3に示すように光干渉計を使う場合、入射光と出射光は同じ経路1801を通る。いずれの場合もカンチレバーの背面に反射させる光が、基部の端部によって遮られることを防止するため、カンチレバーは基部の外へ突出している。
図4はシリコン製のカンチレバーを有するプローブの一般的な構造を示す断面図である。
この図において、1901は基部、1902は基部前端、1903は埋め込み酸化膜、1904はカンチレバー、1905は埋め込み酸化膜1903の前端、1906は探針を示している。
この図に示すように、シリコン製のカンチレバーを有するプローブの一般的な構造は、SOIウエハのシリコン薄膜を加工してカンチレバー1904に用い、同じSOIウエハの支持基板を加工して基部1901に用いる構造になっており、カンチレバー1904はSOIウエハの構造に由来する埋め込み酸化膜1903を介して基部1901に接合している。
一方、カンチレバーの変形のかわりにカンチレバーの共振周波数の変化を検出することによって試料と探針の間に作用する力の距離依存性を知ることもできる。この方法によって原子間力顕微鏡の分解能は個々の原子が識別できるまでに至っている。また、この方法はカンチレバーに付着した分子の質量を知ることにも利用できる。しかし、この方法によって、より小さい質量または力を検出するためには、カンチレバーの機械的振動のQ値がより高くなければならない。
このような機械的振動子の共振周波数から力や質量を検出する技術は、一般的に力や質量のセンサとして応用できるため、そのようなセンサとプローブ顕微鏡は技術的に近接している。センサに利用する振動子の形状は基部から突出していない両持ち梁であったり、音叉形であってもよい。
図5は図4に示したシリコン製のプローブ顕微鏡のプローブと同様の構造を応用したセンサの振動子の構造を示す断面図である。
この図に示すように、SOIウエハのシリコン薄膜を加工して両持ち梁2002に用い、同じSOIウエハの支持基板を加工して基部2001に用いる構造になっており、両持ち梁2002はSOIウエハの構造に由来する埋め込み酸化膜2003を介して基部2001に接合している。両持ち梁2002は基部2001の開口に張り渡された構造になっていて、両持ち梁2002の観察は両面から行うことができる。なお、図5において、2004は両持ち梁2002の実質的な長さ、2005は基部2001の開口の幅を示している。
また、本願発明者らは、微小3次元構造体からなるカンチレバーなどを下記の特許文献1〜4で既に提案している。
特開2004−058267号公報
特開2001−091441号公報
特開2001−289768号公報
特開2003−114182号公報
しかし、上記した従来のプローブの構造はカンチレバーまたはセンサの振動子が微小化した場合に以下のような問題を生じる。
〔1〕第1の課題(本発明の請求項1〜22に関係)
質量を検出するために使用する機械的振動子は、自らの質量が小さい方が感度が高く、また力を検出するために使用する機械的振動子はばね定数が小さい方が感度が高いため、いずれにしても小さい機械的振動子が求められる。しかし、従来の構造では、カンチレバーと基部の間に存在する埋め込み酸化膜を除去する際のサイドエッチングによって、カンチレバーの実質的な長さが長くなってしまう。たとえば、図4のカンチレバー1904の実質的な起点は基部前端1902ではなく埋め込み酸化膜1903の前端1905である。カンチレバー1904の長さが短い場合には、この誤差は無視できない。
質量を検出するために使用する機械的振動子は、自らの質量が小さい方が感度が高く、また力を検出するために使用する機械的振動子はばね定数が小さい方が感度が高いため、いずれにしても小さい機械的振動子が求められる。しかし、従来の構造では、カンチレバーと基部の間に存在する埋め込み酸化膜を除去する際のサイドエッチングによって、カンチレバーの実質的な長さが長くなってしまう。たとえば、図4のカンチレバー1904の実質的な起点は基部前端1902ではなく埋め込み酸化膜1903の前端1905である。カンチレバー1904の長さが短い場合には、この誤差は無視できない。
〔2〕第2の課題(本発明の請求項23〜26に関係)
また、質量または力のセンサの振動子にも上記〔1〕と同様の問題がある。たとえば、図5において両持ち梁2002の実質的な長さ2004は、埋め込み酸化膜2003を除去する際のサイドエッチングによって基部開口の幅2005よりも長くなる。両持ち梁の長さが短い場合にはこの誤差は無視できない。
また、質量または力のセンサの振動子にも上記〔1〕と同様の問題がある。たとえば、図5において両持ち梁2002の実質的な長さ2004は、埋め込み酸化膜2003を除去する際のサイドエッチングによって基部開口の幅2005よりも長くなる。両持ち梁の長さが短い場合にはこの誤差は無視できない。
〔3〕第3の課題(本発明の請求項11〜20に関係)
従来の製造方法では、走査プローブ顕微鏡のカンチレバーの先端に探針を作り込む工程はカンチレバーが基部から突出した状態になってから行うか、またはカンチレバーおよび探針を作ってから基部を加工する必要があった。しかし、カンチレバーが突出している状態での探針の加工はカンチレバーを損傷する危険性が高く、また探針が完成してから基部を加工する場合は探針の尖端部(tip)を損傷する危険性が高かった。
従来の製造方法では、走査プローブ顕微鏡のカンチレバーの先端に探針を作り込む工程はカンチレバーが基部から突出した状態になってから行うか、またはカンチレバーおよび探針を作ってから基部を加工する必要があった。しかし、カンチレバーが突出している状態での探針の加工はカンチレバーを損傷する危険性が高く、また探針が完成してから基部を加工する場合は探針の尖端部(tip)を損傷する危険性が高かった。
〔4〕第4の課題(本発明の請求項1〜11の部分、及び請求項27〜33に関係)
従来の製造方法では、カンチレバーまたはセンサの振動子の長さはマスクアライナーの位置合わせ精度に依存しており、カンチレバーまたはセンサの振動子が微小化した場合にはマスクアライナーの位置合わせ誤差は無視できない。
従来の製造方法では、カンチレバーまたはセンサの振動子の長さはマスクアライナーの位置合わせ精度に依存しており、カンチレバーまたはセンサの振動子が微小化した場合にはマスクアライナーの位置合わせ誤差は無視できない。
〔5〕第5の課題(本発明の請求項31〜34に関係)
レーザドップラー干渉計と組み合わせて使用するセンサの振動子の場合、両持ち梁の共振周波数が高いほどS/N比が向上する。両持ち梁の共振周波数を高くするには梁の厚さを厚くし長さを短くする方法があるが、それを極端に押し進めると両持ち梁の振動エネルギーが基部へ伝達して損失し、機械的Q値が低下する。さらに、別の方法として、両持ち梁に張力をかけると共振周波数が上昇するが、従来の技術では自由な張力をかけることができなかった。
レーザドップラー干渉計と組み合わせて使用するセンサの振動子の場合、両持ち梁の共振周波数が高いほどS/N比が向上する。両持ち梁の共振周波数を高くするには梁の厚さを厚くし長さを短くする方法があるが、それを極端に押し進めると両持ち梁の振動エネルギーが基部へ伝達して損失し、機械的Q値が低下する。さらに、別の方法として、両持ち梁に張力をかけると共振周波数が上昇するが、従来の技術では自由な張力をかけることができなかった。
本発明は、上記状況に鑑みて、カンチレバーの起点が基部の前端に明確化され、カンチレバーの長さを位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定することができる機械的振動子及びその機械的振動子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために、
〔1〕ウエハを加工して製造される機械的振動子において、SOIウエハの支持基板で形成される基部と、前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され、前記基部の先端から水平に突出したカンチレバーと成るべき構造体とを備え、前記基部と前記カンチレバーと成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記埋め込み酸化膜が除去された前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを具備することを特徴とする。
〔1〕ウエハを加工して製造される機械的振動子において、SOIウエハの支持基板で形成される基部と、前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され、前記基部の先端から水平に突出したカンチレバーと成るべき構造体とを備え、前記基部と前記カンチレバーと成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記埋め込み酸化膜が除去された前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを具備することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の機械的振動子において、前記カンチレバーが走査プローブ顕微鏡のプローブであることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の機械的振動子において、この機械的振動子は前記カンチレバーを単一で具備することを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の機械的振動子において、この機械的振動子は前記カンチレバー複数本からなるカンチレバーアレイを具備することを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載の機械的振動子において、前記カンチレバーアレイは直線上に配置されることを特徴とする。
〔6〕上記〔4〕記載の機械的振動子において、前記カンチレバーアレイは円周上に配置されることを特徴とする。
〔7〕ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、SOIウエハの支持基板で基部を形成し、前記基部に固定される埋め込み酸化膜の一部を除去し、残された埋め込み酸化膜に支持されるカンチレバーと成るべき構造体を形成し、前記カンチレバーと成るべき構造体の先端は予め前記基部の先端より突出させておき、その状態で前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを形成することを特徴とする。
〔8〕上記〔7〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記直接接合の強化のために熱処理を行うことを特徴とする。
〔9〕上記〔7〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする。
〔10〕上記〔7〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする。
〔11〕ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、SOIウエハの支持基板で基部を形成し、前記基部に固定される埋め込み酸化膜の一部を除去し、残された埋め込み酸化膜に支持されるカンチレバーと成るべき構造体を形成し、前記カンチレバーと成るべき構造体の先端を最初は前記基部から突出していない状態で加工し、次いで、前記カンチレバーと成るべき構造体の先端を移動手段により前記基部の先端より突出させ、その状態で前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーを直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを形成することを特徴とする。
〔12〕上記〔11〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記移動手段にストッパーを付加することを特徴とする。
〔13〕上記〔12〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記ストッパーが表面張力によるストッパーであることを特徴とする。
〔14〕上記〔11〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする。
〔15〕上記〔11〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする。
〔16〕上記〔11〕又は〔12〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、この構造体と同一のシリコン薄膜から形成された水平方向に可撓性を有する機構に連結しており、前記移動手段は、前記カンチレバーと成るべき構造体を外力によって移動させることを特徴とする。
〔17〕上記〔11〕又は〔12〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、この構造体と同一のシリコン薄膜から形成された水平方向に可撓性を有する機構に連結しており、前記移動手段は、前記カンチレバーと成るべき構造体を表面張力によって移動させることを特徴とする。
〔18〕上記〔16〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が遠心力によって水平方向に移動することを特徴とする。
〔19〕上記〔18〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーを円盤状の基板の円周方向に配置して、この基板の回転により遠心力の付与を行うことを特徴とする。
〔20〕上記〔16〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、この構造体と同一のシリコン薄膜から製作された静電マイクロアクチュエータに結合されており、この静電マイクロアクチュエータの駆動により前記カンチレバーと成るべき構造体が水平方向に変形することを特徴とする。
〔21〕上記〔1〕又は〔2〕記載の機械的振動子において、前記カンチレバーが2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状の細線よりなり、前記カンチレバーの先端が別のシリコン(111)面で終端していることを特徴とする。
〔22〕上記〔21〕記載の機械的振動子の製造方法において、SOIウエハのシリコン薄膜を加工して2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状の形状を有する細線を形成し、前記細線の下にある支持基板および埋め込み酸化膜の一部を支持基板側から除去し、この除去された部分からエッチング液を供給することによって前記細線を異方性エッチングすることによってカンチレバー先端と成るべきシリコン(111)面を形成し、しかる後にカンチレバーを前記支持基板および埋め込み酸化膜が除去された部分から突出するまで移動手段によって移動した上で液体の表面張力によって基部に付着させることを特徴とする。
〔23〕ウエハを加工して製造される機械的振動子において、SOIウエハの支持基板から形成される基部と、前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され前記基部の開口部に張り渡された両持ち梁と成るべき構造体を有し、前記基部と前記両持ち梁と成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記両持ち梁と成るべき構造体の一部を、前記基部の先端を含む少なくとも一部に直接接合させ、前記基部の開口の縁を起点とした両持ち梁を具備することを特徴とする。
〔24〕上記〔23〕記載の機械的振動子において、前記両持ち梁が質量または力を計測するセンサの振動子であることを特徴とする。
〔25〕上記〔23〕又は〔24〕記載の機械的振動子において、この機械的振動子は前記両持ち梁を単一で具備することを特徴とする。
〔26〕上記〔23〕又は〔24〕記載の機械的振動子において、この機械的振動子は前記両持ち梁複数本からなる両持ち梁アレイを具備することを特徴とする。
〔27〕ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、SOIウエハの支持基板から形成される基部を形成し、前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され前記基部の開口部に張り渡された両持ち梁と成るべき構造体を形成し、前記基部と前記両持ち梁と成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記両持ち梁と成るべき構造体の一部を、前記基部の先端を含む少なくとも一部に直接接合させ、前記基部の開口の縁を起点とした両持ち梁を形成することを特徴とする。
〔28〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記直接接合の強化のために、熱処理を行うことを特徴とする。
〔29〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする。
〔30〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする。
〔31〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体に張力を付与しながら前記基部に接合することを特徴とする。
〔32〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、外部から引っ張り力を加えることによって前記両持ち梁と成るべき構造に張力を残留させることを特徴とする。
〔33〕上記〔27〕記載の機械的振動子の製造方法において、熱膨張によって両持ち梁と成るべき構造体の長さを一時的に増加させ、前記基部に接合させた後に常温に戻すことによって、前記両持ち梁と成るべき構造に張力を残留させることを特徴とする。
〔34〕上記〔23〕記載の機械的振動子において、前記両持ち梁は2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状であることを特徴とする。
本発明のウエハを加工して製造される機械的振動子において、SOIウエハの支持基板で形成される基部と、前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され、前記基部の先端から水平に突出したカンチレバーと成るべき構造体とを備え、前記基部と前記カンチレバーと成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記埋め込み酸化膜が除去された前記基部の先端を含む少なくとも一部に、前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを具備する。よって、カンチレバーの起点が基部の前端に明確化され、カンチレバーの長さを位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図6は本発明の第1実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブの構造を示す断面図である(請求項1〜6の発明に対応)。
図6において、基部101とカンチレバーと成るべき構造体102はそれぞれSOIウエハの支持基板およびシリコン薄膜から成る。これらの間には当初SOIウエハに由来する埋め込み酸化膜103が介在している。
ここでは、埋め込み酸化膜103を部分的に除去し、そのカンチレバーと成るべき構造体102を基部101に直接接合させたカンチレバー104を得るようにしている。従って、このカンチレバー104は、基部101の先端105との接合点がカンチレバー104の起点となっており、この例では、カンチレバー104の先端に探針106を形成している。
なお、ここでは、単一のカンチレバー104を示したが、複数のカンチレバーから成るカンチレバーアレイを有する走査プローブ顕微鏡のプローブを構成する場合も、個々のカンチレバーに注目すると、上記の実施例と同じ構造とする。
例えば、図7に示すように、長方形状の基板111の直線方向に複数のカンチレバー112を配置してカンチレバーアレイとしたり(請求項5の発明に対応)、図8に示すように、円状の基板121の円周方向に複数のカンチレバー122を配置してカンチレバーアレイとすることができる(請求項6の発明に対応)。
図9は本発明の第1実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのウエハを加工して製造される工程を示す断面図である(請求項7の発明に対応)。
まず、図9(A)に示すように、基部101とカンチレバーと成るべき構造体102の間には当初SOIウエハに由来する埋め込み酸化膜103が介在している。つまり、カンチレバーと成るべき構造体102はSOIウエハに由来する埋め込み酸化膜103を介して基部101に接合している。
次に、図9(B)に示すように、基部101とカンチレバーと成るべき構造体102の間にある埋め込み酸化膜103の一部を除去し、オーバーハング状のカンチレバー104′を得る。
次に、図9(C)に示すように、その埋め込み酸化膜103が除去された基部101の先端105を含む少なくとも一部にそのオーバーハング状のカンチレバー104′を直接接合したカンチレバー104を形成する。
上記した第1実施例のプローブの製造過程において、カンチレバーと成るべき構造体102と基部101の間にある埋め込み酸化膜103の一部を除去する際、フッ化水素酸溶液等でエッチングし、その後、水で洗浄してから乾燥させる工程が必要である。得られたカンチレバー104′の厚さが十分に薄ければ、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力によりカンチレバー104′を基部101に付着させて、本発明のカンチレバー104を得ることができる(請求項9の発明に対応)。その後、カンチレバー104と基部101の接合強度を強化するため、熱処理を行うと好都合である。その場合には、温度は700℃〜1300℃、特に、1100℃が良好である。また、カンチレバー104′を基部101に付着させる前にシリコン表面を活性化させるための薬品処理を追加する場合もある。
また、上記実施例では、単一のカンチレバー104を示したが、複数のカンチレバーから成るカンチレバーアレイを有する走査プローブ顕微鏡のプローブの場合も、個々のカンチレバーに注目すると、上記と同様に製造することができる。
なお、マイクロマシニング技術においては、通常、上記したような洗浄水の表面張力による付着は避けるべき現象であるが、本発明では、それを敢えて用いることで、カンチレバー104′を基部101に付着させるようにしている(請求項9の発明に対応)。
また、洗浄工程とは別に、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させて、直接接合を行うようにしてもよい(請求項10の発明に対応)。
図10は本発明の第2実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程を示す模式図であり、カンチレバー側から見た概略平面図である(請求項11の発明に対応)。
まず、図10(A)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体202を基部201の先端204から突出していない状態で加工する。カンチレバーと成るべき構造体202の先端には探針を形成する場合もある。カンチレバーと成るべき構造体202は、それを水平方向に移動させる移動手段203に連結しており、埋め込み酸化膜の一部を除去した後、この移動手段203によってカンチレバーと成るべき構造体202を左方向に移動させ、図10(B)に示すように、基部の先端204から突出させた状態で基部201と接合する。なお、カンチレバー202と移動手段203の位置関係は、図10に示す位置関係に限定されるものではない。
図11は本発明の第2実施例を示すストッパー付きの走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程を示す模式図であり、カンチレバーの裏側から見た概略平面図である(請求項13の発明に対応)。
まず、図11(A)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体212を基部211の先端215から突出していない状態で加工する。カンチレバーと成るべき構造体212の先端には探針を形成する場合もある。この実施例では、カンチレバーと成るべき構造体212の先端部にシリコン薄膜の一部を移動軸に対して直角に張り出したものをストッパーとして設ける。このストッパーは、後述する図12に示すような固定部に当たって停止するものとは違って、基部の左側との表面張力によって停止するようにしたものである。なお、図11(A)におけるD1はカンチレバーと成るべき構造体212の先端と基部211の先端215との間の距離である初期ギャップを、図11(B)におけるD2はカンチレバーと成るべき構造体212の先端部の基部211先端215からの突出距離をそれぞれ示している。移動機構213が発生できる移動距離がD1 +D2より大きければ、初期ギャップの大きさがばらついても突出距離を一定に保つことができる。カンチレバーと成るべき構造体212は、それを水平方向に移動させる移動機構213に連結しており、埋め込み酸化膜の一部を除去した後、この移動手段213によってカンチレバーと成るべき構造体212を左方向に移動させ、図11(B)に示すように、基部の先端215から突出させた状態で基部211と接合する。なお、図11(A)におけるD1はカンチレバーと成るべき構造体212の先端と基部211の先端215との間の距離である初期ギャップを、図11(B)におけるD2はカンチレバーと成るべき構造体212の先端部の突出距離をそれぞれ示している。また、カンチレバー212と移動機構213の位置関係は、図11に示す位置関係に限定されるものではない。
図12は本発明の第3実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図12(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図12(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である。図13は図12(A)のA−A線断面図である(請求項16の発明に対応)。
図12において、基部301以外の番号を付した部分はすべてSOIのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体302は、可撓性のある支持梁304を介して固定部303につながっている。
カンチレバーと成るべき構造体302の先端には探針が形成されている場合もある。固定部303と基部301の間には埋め込み酸化膜307(図13参照)が残っているが、その他部分の埋め込み酸化膜は除去されている。
外部からマニュアルプローバー等によって、外力印加部305に左向きの力を加えると、カンチレバーと成るべき構造体302が左に変位して、カンチレバーと成るべき構造体302の先端は基部301の先端から突出する(請求項16の発明に対応)。
これを個々のカンチレバーについて光学顕微鏡を使用してその突出距離を測定しながら行うことによって、0.2μm程度の誤差でカンチレバーの長さを決定することができる。
また、カンチレバーとなるべき構造体302と同じシリコン薄膜から成るストッパー306を設け、そのストッパー306が固定部303に接触することによってカンチレバーの突出距離を、外力の強さそのもので決定されるのではなく、ストッパー306と固定部303の初期距離によって決定されるようにすることもできる(請求項12の発明に対応)。
図12(B)に、ストッパー306によってカンチレバーとなるべき構造体302の移動距離が制限されている状態を示している(請求項12の発明に対応)。
なお、カンチレバーと成るべき構造体302と外力印加部305の位置関係は、図12に示す位置関係に限定されるものではない。
図14は本発明の第4実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図14(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図14(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項17の発明に対応)。
図14は本発明の第4実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図14(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図14(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項17の発明に対応)。
これらの図において、基部401と液滴407以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から作られている。カンチレバーと成るべき構造体402は、可撓性のある支持梁404を介して固定部403につながっている。カンチレバーと成るべき構造体402の先端には探針が形成されている場合もある。固定部403と基部401の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。カンチレバーと成るべき構造体402には突起405が付いている。一方、固定部403にもこれらの突起405の前方で水平方向に対面する位置に突起406が付いている。このプローブを水などの液体で濡らした後、その液体を蒸発その他の方法によって徐々に除去すると、突起405と突起406の間に残った液滴407の表面張力によって、図14(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体402は先端が基部401の先端から突出するまで変位させられ、しかる後に基部401に接合される。
図15は本発明の第5実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図15(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図15(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項17の発明に対応)。
これらの図において、基部411と液滴417以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から作られている。カンチレバーと成るべき構造体412は、可撓性のある支持梁414を介して固定部413につながっている。カンチレバーと成るべき構造体412の先端には探針が形成されている場合もある。固定部413と基部411の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。固定部413には、支持梁414との対向面に曲面415を有する突起416が付いている。
このプローブを水などの液体で濡らした後、その液体を蒸発その他の方法によって徐々に除去すると、突起416と支持梁414の間に残った液滴417の表面張力によって、図15(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体412は先端が基部411の先端から突出するまで変位させられ、しかる後に基部411に接合する。
このように突起416に曲面415を形成したので、突起416に付着した液滴417により突起416の曲面415に沿ってカンチレバーと成るべき構造体412を円滑に前方に変位させることができる。
また、図16は本発明の第6実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図16(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図16(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項17の発明に対応)。
これらの図において、基部501と液滴507以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体502は、可撓性のある支持梁504を介して固定部503につながっている。カンチレバーと成るべき構造体502の先端には探針が形成されている場合もある。固定部503と基部501の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。カンチレバーと成るべき構造体502には突起505が付いている。一方、固定部503にはこれらの突起505の上下方向で対面し、カンチレバーと成るべき構造体502の移動方向に少しずれた位置に突起506が付いている。このプローブを水などの液体で濡らした後、その液体を蒸発その他の方法によって徐々に除去すると、突起505と突起506の間に残った液滴507の表面張力によって、図16(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体502は先端が基部501の先端から突出するまで変位させられ、しかる後に基部501に接合される。
また、図17は本発明の第7実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図17(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図17(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項17の発明に対応)。
これらの図において、基部601と液滴607以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体602は、可撓性のあるベローズ状の支持梁604を介して固定部603につながっている。カンチレバーと成るべき構造体602の先端には探針が形成されている場合もある。固定部603と基部601の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。このプローブを水などの液体で濡らした後、その液体を蒸発その他の方法によって徐々に除去するとき、可撓性のあるベローズ状の支持梁604の折り返しの隙間に残った液滴607の表面張力によって、図17(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体602は先端が基部601の先端から突出するまで変位させられ、しかる後に基部に接合される。
図18は本発明の第8実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図18(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図18(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項19の発明に対応)。
これらの図において、基部611と液滴619以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体612の前方と後方にはそれぞれ可撓性のある支持梁614,616と、これらの支持梁614と616の間に、固定部側に形成される第1の櫛歯形状部材617とカンチレバーとなる構造体側に形成される第2の櫛歯形状部材618とを噛み合わせた櫛歯形状装置615が配置される。すなわち、固定部613側に第1の櫛歯形状部材617が、カンチレバーと成るべき構造体612側には第2の櫛歯形状部材618が互い違いに噛み合わせて対向するように構成されている。また、カンチレバーと成るべき構造体612の先端には探針が形成されている場合もある。固定部613と基部611の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。このプローブを水などの液体619で濡らした後、その液体619を蒸発その他の方法によって徐々に除去するとき、可撓性のある櫛歯形状機構615の隙間に残った液滴の表面張力によって、図18(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体612は先端が基部611の先端から突出するまで変位させられ、しかる後に基部に接合される。
図19は本発明の第9実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図である。図19(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図19(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項18の発明に対応)。
これらの図に示すように、基部701以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体702は、可撓性のある支持梁704を介して固定部703につながっている。カンチレバーと成るべき構造体702の先端には探針が形成されている場合もある。固定部703と基部701の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。錘(慣性体:マス)705に開いている穴705Aは埋め込み酸化膜を除去するのにかかる時間を短縮するためのものであり、必ずしも設けなければならないものではない。
このプローブを回転する治具(図示なし)に取り付ける等の方法によって、図19(A)のプローブに左方向に遠心力を作用させると、錘705に作用する力により、図19(B)に示すように、カンチレバーと成るべき構造体702が左に移動し、その先端が基部701の先端より突出する。なお、カンチレバーと成るべき構造体702と錘705の位置関係は、図19に示す位置関係に限定されるものではない。
上記したように、カンチレバーの突出距離を遠心力の強さによって調節することもできる。また、カンチレバーとなるべき構造702と同じシリコン薄膜から成るストッパー706を設け、それが固定部703に接触することによって、カンチレバーの突出距離を、外力の強さそのもので決定されるのではなく、ストッパー706と固定部703の初期距離によって決定されるようにすることもできる。図19(B)はストッパー706によって移動距離が制限されている状態を示している。
図20は本発明の第10実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバーアレイの配置を示す平面図である(請求項19記載の発明に対応)。
この実施例においては、図20(A)に示すように、円盤711は中央に回転軸712を有しており、その円盤711の円周上に図19に示したものと同様の基部701を有する、錘705付きのカンチレバーと成るべき構造体702を形成するようにしている。
そこで、図20(B)に示すように、回転軸712の駆動により、一斉にカンチレバーと成るべき構造体702を円盤711の円周部から突出させて固定するようにしている。
図21は本発明の第11実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー側から見た平面図であり、図21(A)はカンチレバーの移動前の状態を示す図、図21(B)はカンチレバーの移動後の状態を示す図である(請求項20の発明に対応)。
これらの図において、基部801以外の番号を付した部分はすべてSOIウエハのシリコン薄膜から形成されている。カンチレバーと成るべき構造体802は、可撓性のある支持梁804を介して固定部803につながっている。カンチレバーと成るべき構造体802の先端には探針が形成されている場合もある。固定部803および後述する静電アクチュエータの固定電極805bと基部801の間には埋め込み酸化膜(図示なし)が残っているが、その他の部分の埋め込み酸化膜は除去されている。カンチレバーと成るべき構造体802は静電アクチュエータの可動電極805aにつながっており、それに対向して固定電極805bが設置されている。
静電アクチュエータの可動電極805aと固定電極805bの間に電圧を印加すると、可動電極805aに左向きの力が作用し、カンチレバーと成るべき構造体802が左側に移動し、図21(B)に示すように、その先端が基部801の先端より突出する。静電アクチュエータによる移動は空気中、真空中または絶縁性の液体の中で行うことが可能である。
これを個々のカンチレバーについて光学顕微鏡を使用してその突出距離を測定しながら行うことによって、0.2μm程度の誤差でカンチレバーの長さを決定することができる。
また、カンチレバーとなるべき構造体802と同じシリコン薄膜から成るストッパー806を設け、そのストッパー806が固定部803に接触することによってカンチレバーの突出距離を、静電アクチュエータの電極805aと805b間に印加される電圧そのもので決定されるのではなく、ストッパー806と固定部803の初期距離によって決定されるようにすることもできる。図21(B)は、そのストッパー806によって移動距離が制限されている状態を示している。
なお、ここでは、櫛歯型の静電アクチュエータを示しているが、他の形式の静電アクチュエータを使用するようにしてもよい。
図22は本発明の第12実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブの構造を示す図であり、図22(A)はそのカンチレバーの側面断面図、図22(B)は図22(A)のB−B線断面図である(請求項21の発明に対応)。
これらの図において、SOIウエハのシリコン薄膜から製作されたカンチレバーと成るべき構造体902と、同じSOIウエハの支持基板から製作された基部901の間には一部に埋め込み酸化膜903が残されているが、一部では埋め込み酸化膜は除去されており、その部分でカンチレバーと成るべき構造体902が基部901に直接接合されることによって、カンチレバー904となっている。なお、905は基部901の先端に接合されたカンチレバーの起点を示している。
カンチレバー904は一つのシリコン(100)面〔図22(B)の面9a〕と二つのシリコン(111)面〔図22(B)の面9bと9c〕を持つ三角柱状の形状になっている。このような形状は、表面にシリコン(100)面を呈しているSOIウエハを出発材料に使用し、水酸化カリウム水溶液等による異方性エッチングを利用して形成することができる。カンチレバー904の先端はシリコン(111)面〔図22(A)の面9d〕になっている。
このように構成することにより、機械的振動子のカンチレバーのシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果としてこのカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、力に対する共振周波数の変化が鋭敏になり、より力の検出感度の高い走査プローブ顕微鏡が実現できる。
図23は本発明の第13実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブのカンチレバー部分の斜視図である。
図22で形成された、図23(A)に示す面9a,9b,9c,9dを有する三角柱状のカンチレバー904を、950℃程度の比較的低い温度で熱酸化し、酸化された部分をフッ化水素酸で除去する。すると三角柱形状の尖った部分がさらに尖鋭化されて、図23(B)に示すような形状になり、そのカンチレバー910の先端部を探針911として使用することができる。
図24は本発明の第14実施例を示す走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程(その1)を示す図、図25はその走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程(その2)を示す図、図26はその走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程(その3)を示す図、図27はその走査プローブ顕微鏡のプローブの製造工程(その4)を示す図である(請求項23の発明に対応)。
〔1〕まず、SOIウエハの両面に窒化シリコン膜1004,1005を形成する。図24(A−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図24(A−2)は図24(A−1)中のC−C線の断面図である。シリコン薄膜1001は(100)面を表面に呈しているものとする。なお、1001はシリコン薄膜、1002は支持基板、1003は埋め込み酸化膜である。
〔2〕次に、シリコン薄膜1001側の窒化シリコン膜1004の一部を除去する。図24(B−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図24(B−2)は図24(B−1)中のD−D線の断面図である。窒化シリコン膜1004を除去するパターンはシリコン薄膜1001の(111)面に平行になるようにする。
〔3〕次に、水酸化カリウム水溶液等で異方性エッチングを行うと、窒化シリコン膜1004が除去された部分のシリコン薄膜1001は除去されるが、シリコン(111)面でできた斜面1008が残る。図24(C−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図24(C−2)は図24(C−1)中のE−E線の断面図である。
〔4〕次に、この斜面1008を熱酸化する。図24(D−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図24(D−2)は図24(D−1)中のF−F線の断面図である。1009は熱酸化された部分を示している。
〔5〕次に、残っているシリコン薄膜1001側の窒化シリコン膜1004の一部を除去する。図25(E−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図25(E−2)は図25(E−1)中のG−G線の断面図である。窒化シリコン膜1004を除去するパターンはシリコン薄膜1001の(111)面に平行になるようにする。
〔6〕次に、水酸化カリウム水溶液等で異方性エッチングを行うと、窒化シリコン膜1004が除去された部分のシリコン薄膜1001は除去されるが、シリコン(111)面でできた斜面1012が残る。図25(F−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図25(F−2)は図25(F−1)中のH−H線の断面図である。
〔7〕次に、シリコン薄膜1001側の窒化シリコン膜1004と熱酸化膜1009を全部除去すると、一つのシリコン(100)面と二つのシリコン(111)面で囲まれた三角形断面を有する細線1013が完成する。図25(G−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図25(G−2)は図25(G−1)中のI−I線の断面図である。
〔8〕次に、シリコン薄膜1001を加工して移動手段となる構造体1014を作る。図25(H−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図25(H−2)は図25(H−1)中のJ−J線の断面図である。なお、請求項16〜請求項20に関する実施例が移動手段1014の具体的な構造の例である。
〔9〕次に、シリコン薄膜1001側全面を窒化シリコン膜1015で保護する。図26(I−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図26(I−2)は図26(I−1)中のK−K線の断面図である。なお、窒化シリコン膜1015のかわりに酸化膜を使用する場合もある。
〔10〕次に、支持基板1002側の窒化シリコン膜1005の一部を除去し、水酸化カリウム水溶液等で異方性エッチングを行う。図26(J−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図26(J−2)は図26(J−1)中のL−L線の断面図である。異方性エッチングの結果、窒化シリコン膜1005が除去された部分の支持基板1002が除去されて、シリコン(111)面から成る斜面1016が形成される。
〔11〕次に、支持基板1002を除去した部分に残っている埋め込み酸化膜1003を除去し、続いて三角形断面を有する細線1013を水酸化カリウム水溶液等で異方性エッチングを行うと、その先端にシリコン(111)面1017が形成される。図26(K−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図26(K−2)は図26(K−1)中のM−M線の断面図である。
〔12〕次に、全ての窒化シリコン膜1005,1015を除去する。さらに、三角形断面を有する細線1013の下の埋め込み酸化膜1003の一部を除去する。図26(L−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図26(L−2)は図26(L−1)中のN−N線の断面図である。この後、支持基板1002を加工してプローブの基部を形成するが、その工程の説明は省略する。また、その工程をここで説明しているカンチレバーの製作工程の他の部分に挿入するようにしてもよい。
〔13〕次に、移動手段1014を用いて三角形断面を有する細線1013を左側に移動させ、その先端を支持基板の先端1019(プローブの基部の先端でもある)から突出させる。図27(M−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図27(M−2)は図27(M−1)中のO−O線の断面図である。
〔14〕最後に、三角形断面を有する細線1013を変形させて支持基板1002(プローブの基部)に直接接合させ、カンチレバー1020が完成する。図27(N−1)はこの状態をSOIの薄膜側から見た平面図であり、図27(N−2)は図27(N−1)中のP−P線の断面図である。ここでの直接接合は、液体の表面張力により行うことができる。
図28は本発明の第15実施例を示すセンサとしての両持ち梁を示す断面図である(請求項23〜26の発明に対応)。
この図において、SOIウエハの支持基板から製作された基部1101に穿たれた開口1104に、前記と同一のSOIウエハのシリコン薄膜から製作された両持ち梁と成るべき構造体1102が張り渡されている。両持ち梁と成るべき構造体1102の加工後、基部1101の周辺にあるSOIウエハに由来する埋め込み酸化膜1103は除去され、両持ち梁と成るべき構造体1102と基部1101が直接接合されている。なお、ここでは、単一の両持ち梁を示しているが、両持ち梁アレイを持つセンサの振動子の場合も、個々の両持ち梁については上記と同じ構造である。
図29は本発明の第16実施例を示すセンサとしての両持ち梁の製造工程断面図(請求項27〜30の発明に対応)である。
図29に示すように、両持ち梁と成るべき構造体1202と基部1201の間にある埋め込み酸化膜1203の一部をフッ化水素酸溶液等でエッチングし、その後、水で洗浄してから乾燥させる工程が必要である。両持ち梁と成るべき構造体1202の厚さが十分に薄ければ、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により、両持ち梁と成るべき構造体1202が基部1201に付着する(請求項29の発明に対応)。その後、両持ち梁と成るべき構造体1202と基部1201の接合強度を強化するため、熱処理を行う場合もある。その後、カンチレバーと基部の接合強度を強化するため、熱処理を行うと好都合である。その場合には、温度700℃〜1300℃、特に、1100℃が良好である。また、付着させる前にシリコン表面を活性化させるための薬品処理を追加する場合もある。
マイクロマシニング技術においては、通常、上記したような洗浄水の表面張力による付着は避けるべき現象であるが、本発明では、それを敢えて用いることで、両持ち梁と成るべき構造体1202の基部1201への付着を行うようにする。
なお、洗浄工程とは別に、表面張力の強い液体を介在させて付着させるようにしてもよい(請求項30の発明に対応)。
より詳細に説明すると、
図29(A)に示すように、SOIウエハのシリコン薄膜から製作される両持ち梁と成るべき構造体1202は、基部1201には直接接合していない。これらを接合させる工程において、基部1201の開口1204の周囲において埋め込み酸化膜1203の一部を除去し、両持ち梁と成るべき構造体1202に力1205をかけて基部1201の方向へ変形させることで、図29(B)に示すように、両持ち梁と成るべき構造体1202を基部1201に接合させ、その結果として両持ち梁1206が得られる。この過程で、両持ち梁と成るべき構造1202には張力が与えられる。
図29(A)に示すように、SOIウエハのシリコン薄膜から製作される両持ち梁と成るべき構造体1202は、基部1201には直接接合していない。これらを接合させる工程において、基部1201の開口1204の周囲において埋め込み酸化膜1203の一部を除去し、両持ち梁と成るべき構造体1202に力1205をかけて基部1201の方向へ変形させることで、図29(B)に示すように、両持ち梁と成るべき構造体1202を基部1201に接合させ、その結果として両持ち梁1206が得られる。この過程で、両持ち梁と成るべき構造1202には張力が与えられる。
また、張力を付与するために特別に用意された構造体を使用する場合もある。
また、接合を行う際に両持ち梁となるべき構造体を加熱して膨張させ、その状態で基部と接合することによって、張力を持った両持ち梁を得ることもできる。
また、張力を付与するための構造を使用する場合もある。
図30は本発明の第17実施例を示す両持ち梁に張力を付与するための構造の例を示す斜視図である(請求項31〜32の発明に対応)。
この図において、SOIウエハのシリコン薄膜から製作される両持ち梁と成るべき構造1302が、同じSOIウエハの支持基板から製作された基部1301に穿たれた開口1305を跨ぐように配置されており、その一端は固定部1304に接続しており、他端は力を印加するための構造体1306に接続している。固定部1304は基部1301との間にある埋め込み酸化膜1303を介して基部1301に固定されており、両持ち梁と成るべき構造体1302と力を印加するための構造体1306は基部1301に固定されていない。力を印加するための構造体1306に力1307をかけながら、両持ち梁と成るべき構造1302を基部1301に接合することによって、張力がかかった状態の両持ち梁が得られる。
図31は本発明の第18実施例を示す両持ち梁に張力を付与するための構造の例を示す斜視図である(請求項33の発明に対応)。
この図において、SOIウエハのシリコン薄膜から製作される両持ち梁と成るべき構造体1402が同じSOIウエハの支持基板から製作された基部1401に穿たれた開口1405を跨ぐように配置されており、両端が固定部1404aおよび1404bに接続している。固定部1404aおよび1404bは基部1401との間にある埋め込み酸化膜1403を介して基部1401に固定されており、両持ち梁と成るべき構造体1402は基部1401に固定されていない。固定部1404aと固定部1404bの間に電圧を印加すると両持ち梁と成るべき構造体1402に電流が流れ、発熱が起こり、両持ち梁と成るべき構造体1402が膨張する。この状態で両持ち梁と成るべき構造体1402を基部1401に接合すると、張力がかかった両持ち梁が得られる。
図32は本発明の第19実施例を示す両持ち梁の構造を示す図であり、図32(A)はその断面図、図32(B)は図32(A)のQ−Q線断面図である(請求項34の発明に対応)。
これらの図に示すように、SOIウエハのシリコン薄膜から製作された両持ち梁1502が同じSOIウエハから製作された基部1501の開口に張り渡された形で接合されている。1503は埋め込み酸化膜である。両持ち梁1502は、図32(B)に示すように一つのシリコン(100)面15aと二つのシリコン(111)面15bおよび15cで構成される三角柱の形状を呈している。シリコン(100)面15aはSOIウエハのシリコン薄膜がもともと表面に示している方位であり、シリコン(111)面15bおよび15cは水酸化カリウム水溶液などを使った異方性エッチングによって得られた面である。
このように構成することにより、両持ち梁のシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果としてこのカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、外力や質量の付着による共振周波数の変化がより鋭敏になり、より検出感度の高いセンサの振動子が実現できる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(A)カンチレバーの起点が基部の先端に明確化され、カンチレバーの長さを位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定することができる。これによって第1の課題を解決することができる(請求項1〜22参照)。
(B)表面張力を利用すると、自動的に接合が行われるので工程が簡易になり、歩留まりも向上する(請求項9,10,14,15,17,22,29,30参照)。
(C)探針を基部の上で加工し、最後に基部の外へ押し出すので、製造工程で探針を損傷する危険が少なくなる(請求項11〜20参照)。
(D)外力を利用すると強い移動力が得られるので、カンチレバーの突出距離が大きい場合に便利である(請求項16参照)。
(E)顕微鏡を使ってカンチレバーの突出距離を制御できる(請求項11〜20参照)。
(F)顕微鏡を使って突出距離を制御する場合、同一の構造からカンチレバーの突出距離の異なる機械的振動子を製造することができる(請求項11〜20参照)。
(G)ストッパーが付いている場合、外力を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(H)表面張力を利用するので自動的にカンチレバーの移動が行われ、工程が簡易になり歩留まりも向上する。カンチレバーの突出距離が構造によって制御できる。また、カンチレバーと基板の接合をも表面張力によって行う場合には、二つの工程を同時に進行させることができるので、さらに工程が簡易になる(請求項14,15参照)。
(I)遠心力を利用すると強い移動力が得られるので、カンチレバーの突出距離が大きい場合に便利である。また、遠心力の強弱によって突出距離が制御できる(請求項18参照)。
(J)ストッパーが付いている場合、遠心力を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(K)カンチレバーと基板の接合を表面張力によって行う場合には、液体の除去を遠心分離の原理で行えば、遠心力による移動と同一の工程にまとめることができ、製造工程が簡単になる(請求項18参照)。
(L)静電引力を利用すると、電圧によってカンチレバーの突出距離が制御できる(請求項20参照)。
(M)ストッパーが付いている場合、電圧を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(N)機械的振動子のカンチレバーのシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果として本発明のカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、力に対する共振周波数の変化が鋭敏になり、より力の検出感度の高い走査プローブ顕微鏡が実現できる(請求項21,22参照)。
(O)また、容易に探針を形成することができ、原理的にその位置が中心軸上に来るので、走査プローブ顕微鏡のプローブとして理想的な形状が提供できる(請求項21,22参照)。
(P)カンチレバーの長さは原理的に移動手段による移動距離だけで決定され、マスクアライナーの精度やエッチングの過不足の影響を受けない(請求項11〜20参照)。
(Q)両持ち梁の起点が明確化され、両持ち梁の長さが位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定される(請求項23〜32参照)。
(R)両持ち梁の設定において、表面張力を利用すると、自動的に接合が行われるので工程が簡易になり、歩留まりも向上することが期待できる(請求項29,30参照)。
(S)両持ち梁に張力をかけることによってQ値の低下を抑えながら共振周波数を向上させられる(請求項31〜33参照)。
(T)両持ち梁に張力をかけるための力を調節することによって所望の共振周波数を持つ両持ち梁を得ることができる(請求項31〜33参照)。
(U)材料の自発的な熱膨張は外力による引延しよりも容易に大きい膨張量を得ることができるので、非常に強い張力を持つ両持ち梁も作ることができる(請求項33参照)。
(V)両持ち梁のシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果としてこのカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、外力や質量の付着による共振周波数の変化がより鋭敏になり、より検出感度の高いセンサの振動子が実現できる(請求項34参照)。
(A)カンチレバーの起点が基部の先端に明確化され、カンチレバーの長さを位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定することができる。これによって第1の課題を解決することができる(請求項1〜22参照)。
(B)表面張力を利用すると、自動的に接合が行われるので工程が簡易になり、歩留まりも向上する(請求項9,10,14,15,17,22,29,30参照)。
(C)探針を基部の上で加工し、最後に基部の外へ押し出すので、製造工程で探針を損傷する危険が少なくなる(請求項11〜20参照)。
(D)外力を利用すると強い移動力が得られるので、カンチレバーの突出距離が大きい場合に便利である(請求項16参照)。
(E)顕微鏡を使ってカンチレバーの突出距離を制御できる(請求項11〜20参照)。
(F)顕微鏡を使って突出距離を制御する場合、同一の構造からカンチレバーの突出距離の異なる機械的振動子を製造することができる(請求項11〜20参照)。
(G)ストッパーが付いている場合、外力を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(H)表面張力を利用するので自動的にカンチレバーの移動が行われ、工程が簡易になり歩留まりも向上する。カンチレバーの突出距離が構造によって制御できる。また、カンチレバーと基板の接合をも表面張力によって行う場合には、二つの工程を同時に進行させることができるので、さらに工程が簡易になる(請求項14,15参照)。
(I)遠心力を利用すると強い移動力が得られるので、カンチレバーの突出距離が大きい場合に便利である。また、遠心力の強弱によって突出距離が制御できる(請求項18参照)。
(J)ストッパーが付いている場合、遠心力を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(K)カンチレバーと基板の接合を表面張力によって行う場合には、液体の除去を遠心分離の原理で行えば、遠心力による移動と同一の工程にまとめることができ、製造工程が簡単になる(請求項18参照)。
(L)静電引力を利用すると、電圧によってカンチレバーの突出距離が制御できる(請求項20参照)。
(M)ストッパーが付いている場合、電圧を精密に制御しなくても突出距離が制御できる(請求項12参照)。
(N)機械的振動子のカンチレバーのシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果として本発明のカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、力に対する共振周波数の変化が鋭敏になり、より力の検出感度の高い走査プローブ顕微鏡が実現できる(請求項21,22参照)。
(O)また、容易に探針を形成することができ、原理的にその位置が中心軸上に来るので、走査プローブ顕微鏡のプローブとして理想的な形状が提供できる(請求項21,22参照)。
(P)カンチレバーの長さは原理的に移動手段による移動距離だけで決定され、マスクアライナーの精度やエッチングの過不足の影響を受けない(請求項11〜20参照)。
(Q)両持ち梁の起点が明確化され、両持ち梁の長さが位置合わせ精度やエッチング量に依存せずに決定される(請求項23〜32参照)。
(R)両持ち梁の設定において、表面張力を利用すると、自動的に接合が行われるので工程が簡易になり、歩留まりも向上することが期待できる(請求項29,30参照)。
(S)両持ち梁に張力をかけることによってQ値の低下を抑えながら共振周波数を向上させられる(請求項31〜33参照)。
(T)両持ち梁に張力をかけるための力を調節することによって所望の共振周波数を持つ両持ち梁を得ることができる(請求項31〜33参照)。
(U)材料の自発的な熱膨張は外力による引延しよりも容易に大きい膨張量を得ることができるので、非常に強い張力を持つ両持ち梁も作ることができる(請求項33参照)。
(V)両持ち梁のシリコン(111)面はエッチング速度が非常に遅いために現れる面なので面粗さが低く、シリコン(100)面はSOIウエハのシリコン薄膜に由来するので非常に平滑に仕上げられており、結果としてこのカンチレバーは表面粗さが低く抑えられる。微小なカンチレバーにおいては、表面粗さが機械振動のQ値を下げる主要な原因となるので、このプローブのカンチレバーは高いQ値を持つ。その結果、外力や質量の付着による共振周波数の変化がより鋭敏になり、より検出感度の高いセンサの振動子が実現できる(請求項34参照)。
本発明の機械的振動子及びその製造方法は、走査プローブ顕微鏡のプローブ又は質量または力を計測するセンサの振動子として利用可能である。
Claims (34)
- ウエハを加工して製造される機械的振動子において、
(a)SOIウエハの支持基板で形成される基部と、
(b)前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され、前記基部の先端から水平に突出したカンチレバーと成るべき構造体とを備え、
(c)前記基部と前記カンチレバーと成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記埋め込み酸化膜が除去された前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを具備することを特徴とする機械的振動子。 - 請求項1記載の機械的振動子において、前記カンチレバーが走査プローブ顕微鏡のプローブであることを特徴とする機械的振動子。
- 請求項1又は2記載の機械的振動子において、該機械的振動子は前記カンチレバーを単一で具備することを特徴とする機械的振動子。
- 請求項1又は2記載の機械的振動子において、該機械的振動子は前記カンチレバー複数本からなるカンチレバーアレイを具備することを特徴とする機械的振動子。
- 請求項4記載の機械的振動子において、前記カンチレバーアレイは直線上に配置されることを特徴とする機械的振動子。
- 請求項4記載の機械的振動子において、前記カンチレバーアレイは円周上に配置されることを特徴とする機械的振動子。
- ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、
(a)SOIウエハの支持基板で基部を形成し、
(b)前記基部に固定される埋め込み酸化膜の一部を除去し、残された埋め込み酸化膜に支持されるカンチレバーと成るべき構造体を形成し、
(c)前記カンチレバーと成るべき構造体の先端は予め前記基部の先端より突出させておき、その状態で前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーと成るべき構造体を直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを形成することを特徴とする機械的振動子の製造方法。 - 請求項7記載の機械的振動子の製造方法において、前記直接接合の強化のために、熱処理を行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項7記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項7記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、
(a)SOIウエハの支持基板で基部を形成し、
(b)前記基部に固定される埋め込み酸化膜の一部を除去し、残された埋め込み酸化膜に支持されるカンチレバーと成るべき構造体を形成し、
(c)前記カンチレバーと成るべき構造体の先端を最初は前記基部から突出していない状態で加工し、次いで、前記カンチレバーと成るべき構造体の先端を移動手段により前記基部の先端より突出させ、その状態で前記基部の先端を含む少なくとも一部に前記カンチレバーを直接接合させ、前記基部の先端を起点としたカンチレバーを形成することを特徴とする機械的振動子の製造方法。 - 請求項11記載の機械的振動子の製造方法において、前記移動手段にストッパーを付加することを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項12記載の機械的振動子の製造方法において、前記ストッパーが表面張力によるストッパーであることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項11記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項11記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記カンチレバーと成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項11又は12記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、該構造体と同一のシリコン薄膜から形成された水平方向に可撓性を有する機構に連結しており、前記移動手段は、前記カンチレバーと成るべき構造体を外力によって移動させることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項11又は12記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、該構造体と同一のシリコン薄膜から形成された水平方向に可撓性を有する機構に連結しており、前記移動手段は、前記カンチレバーと成るべき構造体を表面張力によって移動させることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項16記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が遠心力によって水平方向に移動することを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項18記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーを円盤状の基板の円周方向に配置して、該基板の回転により遠心力の付与を行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項16記載の機械的振動子の製造方法において、前記カンチレバーと成るべき構造体が、該構造体と同一のシリコン薄膜から製作された静電マイクロアクチュエータに結合されており、該静電マイクロアクチュエータの駆動により前記カンチレバーと成るべき構造体が水平方向に変形することを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項1又は2記載の機械的振動子において、前記カンチレバーが2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状の細線よりなり、前記カンチレバーの先端が別のシリコン(111)面で終端していることを特徴とする機械的振動子。
- 請求項21記載の機械的振動子の製造方法において、SOIウエハのシリコン薄膜を加工して2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状の形状を有する細線を形成し、前記細線の下にある支持基板および埋め込み酸化膜の一部を支持基板側から除去し、この除去された部分からエッチング液を供給することによって前記細線を異方性エッチングすることによってカンチレバー先端と成るべきシリコン(111)面を形成し、しかる後にカンチレバーを前記支持基板および埋め込み酸化膜が除去された部分から突出するまで移動手段によって移動した上で液体の表面張力によって基部に付着させることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- ウエハを加工して製造される機械的振動子において、
(a)SOIウエハの支持基板から形成される基部と、
(b)前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され前記基部の開口部に張り渡された両持ち梁と成るべき構造体を有し、
(c)前記基部と前記両持ち梁と成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記両持ち梁と成るべき構造体の一部を、前記基部の先端を含む少なくとも一部に直接接合させ、前記基部の開口の縁を起点とした両持ち梁を具備することを特徴とする機械的振動子。 - 請求項23記載の機械的振動子において、前記両持ち梁が質量または力を計測するセンサの振動子であることを特徴とする機械的振動子。
- 請求項23又は24記載の機械的振動子において、該機械的振動子は前記両持ち梁を単一で具備することを特徴とする機械的振動子。
- 請求項23又は24記載の機械的振動子において、該機械的振動子は前記両持ち梁複数本からなる両持ち梁アレイを具備することを特徴とする機械的振動子。
- ウエハを加工して製造される機械的振動子の製造方法において、
(a)SOIウエハの支持基板から形成される基部を形成し、
(b)前記SOIウエハのシリコン薄膜から形成され前記基部の開口部に張り渡された両持ち梁と成るべき構造体を形成し、
(c)前記基部と前記両持ち梁と成るべき構造体の間にある埋め込み酸化膜の一部を除去し、前記両持ち梁と成るべき構造体の一部を、前記基部の先端を含む少なくとも一部に直接接合させ、前記基部の開口の縁を起点とした両持ち梁を形成することを特徴とする機械的振動子の製造方法。 - 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、前記直接接合の強化のために、熱処理を行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との直接接合は、洗浄水を乾燥させる過程で洗浄水の表面張力により行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との直接接合は、前記両持ち梁と成るべき構造体と前記基部との間に表面張力の強い液体を介在させることにより行うことを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、前記両持ち梁と成るべき構造体に張力を付与しながら前記基部に接合することを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、外部から引っ張り力を加えることによって前記両持ち梁と成るべき構造に張力を残留させることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項27記載の機械的振動子の製造方法において、熱膨張によって両持ち梁と成るべき構造体の長さを一時的に増加させ、前記基部に接合させた後に常温に戻すことによって、前記両持ち梁と成るべき構造に張力を残留させることを特徴とする機械的振動子の製造方法。
- 請求項23記載の機械的振動子において、前記両持ち梁は2つのシリコン(111)面と1つのシリコン(100)面で構成される三角柱状であることを特徴とする機械的振動子。
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