JP4263926B2 - 基板洗浄方法及び洗浄装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波が加えられた洗浄液を基板表面に供給することにより、ブラシ等を基板表面に接触させることなく基板洗浄を行なう基板洗浄方法及び洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
基板の表面を洗浄するために、超音波振動が加えられた純水等の洗浄液を基板の表面に供給する物理的洗浄方法が用いられている。この洗浄方法は、キャビテーション現象を利用するものであって、ケミカル洗浄を実施できないような工程、例えば金属配線形成以降の洗浄工程に主として用いられている。
【0003】
電子デバイスの微細化が進むにつれて、より微小な異物の除去又はデバイスに対するダメージのない洗浄を行なうために、数メガヘルツという高い周波数の超音波を洗浄液に印加して洗浄を行なう装置又は洗浄液に印加される超音波のパワー(以下、超音波出力と称する)を数十ワットから数百ワットまでの低パワー範囲で制御できる装置が開発されてきている。
【0004】
図14は、従来の超音波洗浄装置(超音波振動が加えられた洗浄液を供給することにより基板表面を洗浄する装置)の断面構成を模式的に示す図である。
【0005】
図14に示すように、基板101は真空チャック102によって吸引保持されている。真空チャック102はモータ103により回転駆動される。基板101、真空チャック102及びモータ103は、天井部が開口されているカップ104に収納されている。カップ104の外側にはノズルアーム105が設けられている。ノズルアーム105の先端部は、カップ104内の基板101の上側に位置している。また、ノズルアーム105の先端部には、供給される純水等の洗浄液を基板101に向けて吐出する超音波ノズル106が取り付けられている。超音波ノズル106は、高周波発信機107により振動を生じる高周波振動子108を内蔵する。これにより、超音波ノズル106は、純水等の洗浄液に超音波振動を加えて吐出することができる。
【0006】
図15は、図14に示す従来の超音波洗浄装置における超音波ノズル106のスキャン範囲を模式的に示す平面図である。
【0007】
図15に示すように、超音波ノズル106のスキャン範囲109は、ウェハである基板101(真空チャック102によって吸引保持されている)における端部(外周上の一点)110と中心111とを結ぶ半径方向に設定されている。すなわち、超音波ノズル106は、基板101の上側における端部110と中心111との間で往復運動する。
【0008】
図16は、図14に示す従来の超音波洗浄装置を用いた洗浄シーケンスを示す図である。
【0009】
図16に示すように、モータ103により基板101を1000rpmの回転数で回転させながら、洗浄ノズル径4mmの超音波ノズル106から超音波振動が加えられた純水を基板101の表面に供給することにより、超音波洗浄を行なう。このとき、ノズルアーム105を用いて、前述のスキャン範囲109において超音波ノズル106を、基板101の半径方向に40mm/秒の速度で往復運動させる。このようにすると、洗浄螺旋ピッチ(ノズルが描く螺旋状の軌跡(回転する基板から見た軌跡)における、螺旋1回転分の始点と終点との間の距離)は洗浄ノズル径よりも十分に小さくなるので、基板101の表面全体が超音波振動状態の純水によって洗浄される。また、図16に示すように、超音波洗浄の終了後には超音波ノズル106からの純水の供給を停止してモータ103により基板101を4000rpmの回転数で回転させることにより、基板101を乾燥させる。このような洗浄方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平08−318235号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来の基板洗浄方法によると、基板回転数を例えば1000rpmにすることによって、洗浄螺旋ピッチを洗浄ノズル径よりも小さくできるので、洗浄ムラを抑制することはできる。しかしながら、基板上の異物の除去能力には限界があり、十分な異物除去率を達成することができない。それに対して、異物除去率を上げるための方法として、基板上における洗浄ノズルのスキャン回数を多くする方法が提案されているが、この方法には、洗浄時間が長くなってデバイス生産能力が低下してしまうという弊害がある。また、超音波出力を高くすることによって異物除去率を高める方法も提案されているが、この方法にも、デバイスへのダメージが生じるという弊害がある。
【0012】
前記に鑑み、本発明は、洗浄ムラのみに着目した従来の基板洗浄の欠点を克服することによって、生産能力の低下及びデバイスへのダメージを防止でき且つ高い異物除去率を達成できる基板洗浄を実現することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の基板洗浄方法は、基板を回転させながら、基板の上側に設けられたノズルから、超音波が印加された洗浄液を基板に供給することにより、基板を洗浄する基板洗浄方法を前提とし、洗浄中の基板を2600rpm以上で且つ3500rpm以下の回転数で回転させる。
【0014】
第1の基板洗浄方法によると、超音波洗浄中の基板を2600rpm以上で且つ3500rpm以下の回転数で回転させる。具体的には、従来の数百rpm程度の回転数と比べてはるかに大きい回転数で基板を回転させながら、超音波が印加された洗浄液をノズルから基板に供給して洗浄を行なう。このため、次のような効果が得られる。すなわち、ノズルからの洗浄液の供給により、基板主面に対して垂直に加えられた超音波振動を、強大な遠心力の効果によって、基板主面に沿って基板の外側方向に伝搬させることができる。このため、超音波出力を高くしたり又は洗浄ノズルのスキャン回数を多くしたりすることなく、基板上の異物を短時間で基板の外側に洗い流すことができるので、生産能力の低下及びデバイスへのダメージを防止しつつ、高い異物除去率を達成できる。また、従来の基板回転数を用いた場合と比べて、洗浄螺旋ピッチがさらに小さくなるので、洗浄ノズルのスキャン回数をより少なく抑制しながら、つまり洗浄時間をより短縮しながら高い異物除去率を達成できる。さらに、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチの比を最適化することにより、具体的には該比を300分の1程度以下に小さくすることにより、洗浄ムラを最大限に抑制しながら、基板表面全体を超音波振動状態の洗浄液によって洗浄できるので、異物除去能力を最大化できる。
【0015】
尚、本明細書で超音波とは、20kHz以上の周波数を持つ音波を意味する。また、本発明で洗浄液に印加する超音波の周波数は前述の範囲内で特に限定されるものではないが、例えば1300kHz以上で且つ1700kHz以下の周波数を持つ超音波を洗浄液に印加してもよい。
【0016】
第1の基板洗浄方法において、洗浄中の基板を2600rpm以上で且つ3000rpm以下の回転数で回転させることが好ましい。
【0017】
このようにすると、大きい基板回転数に起因して洗浄カップ等から異物がはねかえって基板に再付着する事態を防止できる。また、洗浄中の基板が乾燥することも抑制できる。
【0018】
第1の基板洗浄方法において、洗浄液をノズルから基板に供給すると同時に、他の洗浄液を他の固定ノズルから基板の中央部に供給し、それにより洗浄中の基板の中央部が乾燥することを防止することが好ましい。
【0019】
このようにすると、大きい基板回転数に起因して、洗浄中の基板の中央部が乾燥すること、つまり基板中央部の異物除去率が低下することを防止できる。言い換えると、固定ノズルから供給される洗浄液によって、基板全面が常に洗浄液によってリンスされた状態を保持できるため、基板の中央部に付着した異物も確実に除去されるので、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0020】
尚、超音波洗浄用のノズルから供給される洗浄液の種類と、固定ノズルから供給される洗浄液の種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
第1の基板洗浄方法において、洗浄液をノズルから基板に供給する際に、ノズルは、基板の上側において、基板の中心を通って、基板の端部から、基板における中心から所定の距離だけ離れた位置まで往復運動することが好ましい。
【0022】
このようにすると、基板における端部と中心との間で超音波洗浄用のノズルが往復運動する場合と比べて、洗浄中の基板中央部において、該ノズルによる1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板周縁部と比べて回転速度(=回転数×基板中心からの距離)が小さい基板中央部においても、異物の基板外側方向(横方向)への移動効率を高めることができる。すなわち、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0023】
また、この場合、前述の所定の距離(超音波洗浄用ノズルのスキャン範囲における基板中央部のオーバーラップ距離)を、10mm以上で且つ20mm以下(又は基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下)に設定することにより、次のような効果が得られる。すなわち、超音波洗浄用ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0024】
本発明に係る第2の基板洗浄方法は、基板を回転させながら、基板の上側に設けられたノズルから、超音波が印加された洗浄液を基板に供給することにより、基板を洗浄する基板洗浄方法を前提とし、洗浄液をノズルから基板に供給する際に、ノズルは基板の上側で往復運動し、ノズルの直径をD(単位:mm)、ノズルの移動速度をV(単位:mm/秒)としたときに、洗浄中の基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ350×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させる。
【0025】
第2の基板洗浄方法によると、超音波洗浄中の基板を260×V/D(rpm)以上で且つ350×V/D(rpm)以下の回転数で回転させる。ここで、D(単位:mm)は超音波洗浄用ノズルの直径であり、V(単位:mm/秒)は超音波洗浄用ノズルの移動速度である。また、移動速度Vとは、例えば往復運動における平均速度、又は往復運動の折り返し点近傍を除く等速運動部分での速度(主要速度)を意味する。第2の基板洗浄方法における前述の基板回転数範囲は、例えばノズル径Dが4mm、ノズル移動速度Vが40mm/秒の場合に、第1の基板洗浄方法における基板回転数範囲(2600rpm以上で且つ3500rpm以下)と一致するものである。このため、ノズルからの洗浄液の供給により、基板主面に対して垂直に加えられた超音波振動を、強大な遠心力の効果によって、基板主面に沿って基板の外側方向に伝搬させることができる。従って、超音波出力を高くしたり又は洗浄ノズルのスキャン回数を多くしたりすることなく、基板上の異物を短時間で基板の外側に洗い流すことができるので、生産能力の低下及びデバイスへのダメージを防止しつつ、高い異物除去率を達成できる。また、従来の基板回転数を用いた場合と比べて、洗浄螺旋ピッチがさらに小さくなるので、洗浄ノズルのスキャン回数をより少なく抑制しながら、つまり洗浄時間をより短縮しながら高い異物除去率を達成できる。さらに、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチ(=ノズル移動速度V/基板回転数)の比が260分の1以下に小さくなるため、つまり、該比が最適化されるため、洗浄ムラを最大限に抑制しながら、基板表面全体を超音波振動状態の洗浄液によって洗浄できるので、異物除去能力を最大化できる。
【0026】
第2の基板洗浄方法において、洗浄中の基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ300×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させることが好ましい。
【0027】
このようにすると、大きい基板回転数に起因して洗浄カップ等から異物がはねかえって基板に再付着する事態を防止できる。また、洗浄中の基板が乾燥することも抑制できる。
【0028】
第2の基板洗浄方法において、洗浄液をノズルから基板に供給すると同時に、他の洗浄液を他の固定ノズルから基板の中央部に供給し、それにより洗浄中の基板の中央部が乾燥することを防止することが好ましい。
【0029】
このようにすると、大きい基板回転数に起因して、洗浄中の基板の中央部が乾燥すること、つまり基板中央部の異物除去率が低下することを防止できる。言い換えると、固定ノズルから供給される洗浄液によって、基板全面が常に洗浄液によってリンスされた状態を保持できるため、基板の中央部に付着した異物も確実に除去されるので、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0030】
尚、超音波洗浄用のノズルから供給される洗浄液の種類と、固定ノズルから供給される洗浄液の種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
第2の基板洗浄方法において、ノズルは、基板の上側において、基板の中心を通って、基板の端部から、基板における中心から所定の距離だけ離れた位置まで往復運動することが好ましい。
【0032】
このようにすると、基板における端部と中心との間で超音波洗浄用のノズルが往復運動する場合と比べて、洗浄中の基板中央部において、該ノズルによる1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板周縁部と比べて回転速度が小さい基板中央部においても、異物の横方向への移動効率を高めることができる。すなわち、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0033】
また、この場合、前述の所定の距離を10mm以上で且つ20mm以下(又は基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下)に設定することにより、次のような効果が得られる。すなわち、超音波洗浄用ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0034】
本発明に係る第3の基板洗浄方法は、基板を回転させながら、基板の上側に設けられたノズルから、超音波が印加された洗浄液を基板に供給することにより、基板を洗浄する基板洗浄方法を前提とし、洗浄液をノズルから基板に供給する際に、ノズルは、基板の上側において、基板の中心を通って、基板の端部から、基板における中心から所定の距離だけ離れた位置まで往復運動する。
【0035】
第3の基板洗浄方法によると、基板における端部と中心との間で超音波洗浄用のノズルが往復運動する場合と比べて、洗浄中の基板中央部において、該ノズルによる1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板周縁部と比べて回転速度が小さい基板中央部においても、異物の横方向への移動効率を高めることができる。すなわち、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0036】
第3の基板洗浄方法において、所定の距離は10mm以上で且つ20mm以下であることが好ましい。
【0037】
このようにすると、超音波洗浄用ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0038】
第3の基板洗浄方法において、所定の距離は、基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下であることが好ましい。
【0039】
このようにすると、超音波洗浄用ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0040】
本発明に係る洗浄装置は、基板を保持する保持部と、保持部を回転させるモータと、保持部に保持された基板に洗浄液を、該洗浄液に超音波を印加しながら供給すると共に基板の上側で往復運動するノズルとを備え、ノズルの直径をD(単位:mm)、ノズルの移動速度をV(単位:mm/秒)としたときに、モータは、洗浄中の基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ350×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させる。
【0041】
すなわち、本発明の洗浄装置によると、第2の基板洗浄方法を実施できるので、該方法による効果が得られる。
【0042】
本発明の洗浄装置において、保持部に保持された基板の中央部に他の洗浄液を供給する他の固定ノズルをさらに備えていることが好ましい。
【0043】
このようにすると、大きい基板回転数に起因して、洗浄中の基板の中央部が乾燥すること、つまり基板中央部の異物除去率が低下することを防止できる。言い換えると、固定ノズルから供給される洗浄液によって、基板全面が常に洗浄液によってリンスされた状態を保持できるため、基板の中央部に付着した異物も確実に除去されるので、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0044】
尚、超音波洗浄用のノズルから供給される洗浄液の種類と、固定ノズルから供給される洗浄液の種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
本発明の洗浄装置において、ノズルは、基板の上側において、基板の中心を通って、基板の端部から、基板における中心から所定の距離だけ離れた位置まで往復運動することが好ましい。
【0046】
このようにすると、基板における端部と中心との間で超音波洗浄用のノズルが往復運動する場合と比べて、洗浄中の基板中央部において、該ノズルによる1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板周縁部と比べて回転速度が小さい基板中央部においても、異物の横方向への移動効率を高めることができる。すなわち、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0047】
また、この場合、前述の所定の距離を10mm以上で且つ20mm以下(又は基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下)に設定することにより、次のような効果が得られる。すなわち、超音波洗浄用ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0048】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る基板洗浄方法及び洗浄装置について図面を参照しながら説明する。
【0049】
図1は、第1の実施形態に係る洗浄装置、具体的には、超音波振動が加えられた洗浄液を供給することにより基板表面を洗浄する超音波洗浄装置の断面構成を模式的に示す図である。
【0050】
図1に示すように、基板1は保持部(具体的には真空チャック)2によって吸引保持されている。真空チャック2はモータ3により回転駆動される。基板1、真空チャック2及びモータ3は、天井部が開口されているカップ(カバー)4に収納されている。カップ4の外側にはノズルアーム5が設けられている。ノズルアーム5の先端部は、カップ4内の基板1の上側に位置している。また、ノズルアーム5の先端部には、供給される純水等の洗浄液を基板1に向けて吐出する超音波ノズル6が取り付けられている。超音波ノズル6には、高周波発信機7により振動を生じる高周波振動子8が取り付けられている。これにより、超音波ノズル6は、純水等の洗浄液に超音波振動を加えて吐出することができる。
【0051】
図2は、図1に示す本実施形態の超音波洗浄装置における超音波ノズル6のスキャン範囲を模式的に示す平面図である。
【0052】
図2に示すように、超音波ノズル6のスキャン範囲9は、ウェハである基板1(真空チャック2によって吸引保持されている)における端部(外周上の一点)10と中心11とを結ぶ半径方向に設定されている。すなわち、超音波ノズル6は、基板1の上側における端部10と中心11との間で往復運動する。
【0053】
本実施形態の超音波洗浄装置の特徴は、モータ3が、洗浄中の基板1を2600rpm以上の回転数で回転させることである。
【0054】
図3は、図1に示す本実施形態の超音波洗浄装置を用いた洗浄シーケンスの一例を示す図である。
【0055】
図3に示すように、モータ3により基板1を例えば3000rpmの回転数で回転させながら、例えば4mmの洗浄ノズル径を持つ超音波ノズル6から超音波振動が加えられた洗浄液、例えば純水を基板1の表面に供給することにより、超音波洗浄を行なう。このとき、ノズルアーム5を用いて、前述のスキャン範囲9において超音波ノズル6を、基板1の半径方向に例えば40mm/秒の速度で往復運動させる。このようにすると、洗浄螺旋ピッチ(=ノズル移動速度/基板回転数)は洗浄ノズル径よりも十分に小さくなるので、具体的には、洗浄螺旋ピッチが洗浄ノズル径の300分の1になるので、基板1の表面全体が超音波振動状態の純水によって確実に洗浄される。また、従来の基板回転数、例えば1000rpmの回転数を用いた場合と比べて、洗浄螺旋ピッチが3分の1の大きさになるので、異物除去率を従来と同等以上に保ちつつ、超音波ノズル6のスキャン回数を少なくでき、それにより洗浄時間を短縮することができる。
【0056】
また、図3に示すように、超音波洗浄の終了後には超音波ノズル6からの純水の供給を停止してモータ3により基板1を例えば4000rpmの回転数で回転させることにより、基板1を乾燥させる。
【0057】
尚、超音波ノズル6の移動速度とは、例えば超音波ノズル6の往復運動における平均速度、又は該往復運動の折り返し点近傍を除く等速運動部分での速度(主要速度)を意味する。また、超音波ノズル6は、基板1の上側における端部10と中心11との間で、例えば直線状の軌跡を描きながら往復運動してもよいし(図2参照)、又は円弧状の軌跡を描きながら往復運動してもよい。
【0058】
以下、図1に示す洗浄装置を用いた本実施形態の基板洗浄の妥当性を確認するために、4つのパラメータ(洗浄液流量、ノズルと基板(ウェハ)との間の距離、高周波発信機の出力電流値、基板回転数)をそれぞれ変化させた場合における、異物除去効果(異物除去率)に生じる影響を評価した結果について説明する。尚、高周波発信機7の出力周波数及び出力電圧値はそれぞれ例えば1.5MHz及び50Vに固定されている一方、高周波発信機7の出力電流値は0.4〜1.0Aの範囲で可変である。また、異物除去率の評価は、洗浄前の基板1上に例えば4000〜5000個程度のシリコン微粒子を付着させておき、洗浄後に基板1上に残存するシリコン微粒子の数を測定して該微粒子の除去率(単位:%)を算出することにより行なった。
【0059】
図4は、洗浄液流量、つまり超音波ノズル6から基板1に供給される純水の流量を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。洗浄液流量以外の他のパラメータについては、高周波発信機7の出力電流値が0.8Aに、超音波ノズル6と基板1との間の距離が15mmに、基板回転数が3000rpmに固定されている。図4に示すように、超音波ノズル6からの純水流量が増大するに従って異物除去率が高くなり、0.7〜1.0L/minの純水流量で異物除去率がほぼピークに達する。
【0060】
図5は、超音波ノズル6と基板1との間の距離を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。超音波ノズル6と基板1との間の距離以外の他のパラメータについては、高周波発信機7の出力電流値が0.8Aに、超音波ノズル6からの純水流量が0.8L/minに、基板回転数が3000rpmに固定されている。図5に示すように、超音波ノズル6と基板1との間の距離が離れるに従って異物除去率が若干減少する傾向があるものの、該距離に対する異物除去率の依存性はさほど大きくない。
【0061】
図6は、高周波発信機7の出力電流値を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。ここで、高周波発信機7の出力電圧値が固定されているので、高周波発信機7の出力電流値が増大すると、高周波発信機7の出力パワーが増大する。また、高周波発信機7の出力電流値以外の他のパラメータについては、超音波ノズル6からの純水流量が0.8L/minに、超音波ノズル6と基板1との間の距離が15mmに、基板回転数が3000rpmに固定されている。図6に示すように、高周波発信機7の出力電圧値が増大するに従って異物除去率が高くなり、該出力電圧値が0.8Aに達したところで異物除去率がほぼピークに達する。
【0062】
以上の図4〜図6に示す実験データによると、図1に示す本実施形態の洗浄装置においては、基板回転数以外のパラメータの条件として、超音波ノズル6からの純水流量を0.7〜1.0L/min程度に、超音波ノズル6と基板1との間の距離を10〜20mm程度に、高周波発信機7の出力電流値を0.8A程度に設定することが好ましい。
【0063】
図7は、基板回転数、つまりモータ3による基板1の回転数を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。基板回転数以外の他のパラメータについては、超音波ノズル6からの純水流量が0.8L/minに、超音波ノズル6と基板1との間の距離が15mmに、高周波発信機7の出力電流値が0.8Aに固定されている。図7に示すように、基板回転数が増大するに従って異物除去率が高くなり、基板回転数が2600rpm以上になると異物除去率がほぼ飽和する。すなわち、これが、本実施形態で2600rpm以上の基板回転数を用いる理由である。
【0064】
また、図7に示すように、従来の洗浄方法で用いられる1000rpm程度の基板回転数では、異物除去率のデータのばらつきが大きく、洗浄ムラが生じていると推測される。すなわち、洗浄螺旋ピッチを洗浄ノズル径より小さくするだけでは洗浄ムラを十分には抑制できない。
【0065】
一方、図7に示すように、本実施形態で用いられ2600rpm以上の基板回転数では、異物除去率のデータのばらつきが小さく、従来の洗浄方法と比べて洗浄ムラが抑制されている。すなわち、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチの比を300分の1程度以下に設定することにより、異物除去能力を最大化できる。正確には、図1に示す本実施形態の洗浄装置の場合、洗浄ノズル径が4mmであり、ノズル移動速度が40mm/秒であるので、洗浄螺旋ピッチ=ノズル移動速度/基板回転数の関係を考慮すると、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチの比を260分の1以下に設定することにより、異物除去能力を最大化できる。
【0066】
以上に説明したように、第1の実施形態によると、超音波洗浄中の基板1を2600rpm以上の回転数で回転させる。具体的には、従来の数百rpm程度の回転数と比べてはるかに大きい回転数で基板1を回転させながら、超音波が印加された洗浄液(具体的には純水)を超音波ノズル6から基板1に供給して洗浄を行なう。このため、次のような効果が得られる。すなわち、超音波ノズル6からの洗浄液の供給により、基板1の主面に対して垂直に加えられた超音波振動を、強大な遠心力の効果によって、基板1の主面に沿って基板1の外側方向に伝搬させることができる。このため、超音波出力を高くしたり又は超音波ノズル6のスキャン回数を多くしたりすることなく、基板1上の異物を短時間で基板1の外側に洗い流すことができるので、生産能力の低下及びデバイスへのダメージを防止しつつ、高い異物除去率を達成できる。また、従来の基板回転数を用いた場合と比べて、洗浄螺旋ピッチがさらに小さくなるので、超音波ノズル6のスキャン回数をより少なく抑制しながら、つまり洗浄時間をより短縮しながら高い異物除去率を達成できる。さらに、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチの比を最適化することにより、具体的には該比を260分の1以下に小さくすることにより、洗浄ムラを最大限に抑制しながら、基板1の表面全体を超音波振動状態の洗浄液によって洗浄できるので、異物除去能力を最大化できる。
【0067】
尚、第1の実施形態において、基板回転数、つまりモータ3による基板1の回転数の上限は、基本的には洗浄装置の性能面から制約されるものであるが、大きい基板回転数に起因してカップ4等から異物がはねかえって基板1に再付着する事態を防止する観点からは、基板回転数は3500rpm以下、好ましくは3000rpm以下であることが好ましい。このように基板回転数に上限を設けることによって、洗浄中の基板1が乾燥することも抑制できる。
【0068】
また、第1の実施形態において、2600rpm以上の基板回転数を用いたが、この大きな基板回転数による効果は、ノズル径及びノズル移動速度等の他の洗浄装置パラメータによって変化するものである。すなわち、該パラメータを考慮した場合、例えば260×V/D(単位:rpm)以上の基板回転数を用いることによって、本実施形態と同様の効果が得られる。以下、その理由について説明する。尚、前式において、D(単位:mm)は超音波ノズルの直径であり、V(単位:mm/秒)は超音波ノズルの移動速度である。
【0069】
図8は、本実施形態の超音波洗浄装置を用いて基板1を洗浄している際に超音波ノズル6が描く螺旋状の軌跡(回転する基板1から見た軌跡)を模式的に示す図である。超音波ノズル6が、基板1の上側における端部10と中心11との間で往復運動する場合(図2参照)、図8に示すように、超音波ノズル6(正確には基板1上における超音波ノズル6の中心の正射影点)は、中心11を始点(又は終点)とする螺旋状の軌跡12を描く。ここで、洗浄螺旋ピッチPは、螺旋1回転分の始点(又は終点)13と終点(又は始点)14との間の距離である。前述のように、基板回転数を増大させることによって洗浄螺旋ピッチPを小さくし、それによって洗浄ノズル径Dに対する洗浄螺旋ピッチPの比を260分の1以下に設定した場合に異物除去能力の最大化効果が得られる。すなわち、洗浄螺旋ピッチP=ノズル移動速度V/基板回転数であるので、基板回転数を260×V/D以上に設定することにより、洗浄ノズル径Dに対する洗浄螺旋ピッチPの比を260分の1以下に設定でき、それにより異物除去能力の最大化効果が得られる。尚、基板1の洗浄中における、カップ4等からの異物のはねかえり及び基板1の乾燥等を防止する観点からは、基板回転数は350×V/D以下、好ましくは300×V/D以下であることが好ましい。
【0070】
また、第1の実施形態において、超音波ノズル6から基板1に供給する洗浄液として純水を用いたが、これに代えて、例えば水素水又はオゾン水等を用いた場合にも、同様の効果が得られる。また、超音波ノズル6により洗浄液に印加する超音波の周波数は、特に限定されるものではないが、例えば1300kHz以上で且つ1700kHz以下の周波数を持つ超音波を洗浄液に印加してもよい。
【0071】
また、第1の実施形態において、超音波洗浄後の基板1を乾燥させるために4000rpmの基板回転数を用いたが、該基板回転数は乾燥効果が得られる範囲であれば特に限定されるものではない。例えば、本実施形態の超音波洗浄時に用いた2600rpmの基板回転数であっても十分な乾燥効果が得られる。また、生産能力及び洗浄装置の設計強度の両方を満足できる基板回転数として、例えば3000rpm以上で且つ5000rpm以下の回転数を用いて基板1を乾燥させてもよい。
【0072】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る基板洗浄方法及び洗浄装置について図面を参照しながら説明する。
【0073】
図9は、第2の実施形態に係る洗浄装置、具体的には、超音波振動が加えられた洗浄液を供給することにより基板表面を洗浄する超音波洗浄装置の断面構成を模式的に示す図である。尚、図9において、図1に示す第1の実施形態に係る洗浄装置と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0074】
図9に示すように、本実施形態の洗浄装置が、図1に示す第1の実施形態に係る洗浄装置と異なっている点は、カップ4の外側に、超音波ノズル6とは別に、基板1の中央部に洗浄液を供給するための固定ノズル20を備えていることである。すなわち、固定ノズル20の方向は、基板1の中心に洗浄液を吐出できるように定められている。
【0075】
尚、本実施形態の洗浄装置における超音波ノズル6のスキャン範囲は、図2に示す第1の実施形態における超音波ノズル6のスキャン範囲と同様である。
【0076】
図10は、図9に示す本実施形態の超音波洗浄装置を用いた洗浄シーケンスの一例を示す図である。
【0077】
図10に示すように、本実施形態の洗浄シーケンスが、図3に示す第1の実施形態における洗浄シーケンスと異なっている点は、超音波ノズル6を用いて超音波洗浄を行なうと同時に、固定ノズル20から例えば純水等の洗浄液を例えば流量0.8L/minで基板1の中央部に供給することである。すなわち、本実施形態の洗浄シーケンスにおいては、モータ3により基板1を例えば3000rpmの回転数で回転させながら、第1の実施形態の超音波洗浄に加えて、固定ノズル20を用いたリンス処理を行なう。
【0078】
ところで、第1の実施形態の基板洗浄によると、異物除去率は最大で90%程度である(図4〜図7参照)。このとき、除去されずに基板上に残った異物は、基板中央部に集中している。
【0079】
それに対して、本実施形態では、超音波ノズル6を用いて超音波洗浄を行なうと同時に、固定ノズル20から洗浄液を基板1の中央部に供給するため、第1の実施形態の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、2600rpm以上の大きい基板回転数に起因して、洗浄中の基板1の中央部が乾燥すること、つまり基板1の中央部における異物除去率が低下することを防止できる。言い換えると、固定ノズル20から供給される洗浄液によって基板1の全面が常に洗浄液によってリンスされた状態を保持できるため、基板1の中央部に付着した異物も確実に除去される。従って、基板1の中央部における異物除去率の低下を防止して、基板1の全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0080】
以下、図9に示す洗浄装置を用いた本実施形態の基板洗浄の妥当性を確認するために、固定ノズル20のない第1の実施形態の洗浄装置(図1参照)を用いた場合との間で異物除去率を比較した結果について、図11を参照しながら説明する。尚、異物除去率の評価は、洗浄前の基板1上に例えば4000〜5000個程度のシリコン微粒子を付着させておき、洗浄後に基板1上に残存するシリコン微粒子の数を測定して該微粒子の除去率(単位:%)を算出することにより行なった。また、いずれの結果も以下のような条件下で得られたものである。すなわち、高周波発信機7の出力周波数、出力電圧値及び出力電流値はそれぞれ1.5MHz、50V及び0.8Aであり、超音波ノズル6からの純水流量は0.8L/minであり、超音波ノズル6と基板1との間の距離は15mmであり、基板回転数は3000rpmである。図11に示すように、固定ノズル20を用いた本実施形態の基板洗浄によると、固定ノズル20を用いない場合と比べて、異物除去率が5%程度向上する。
【0081】
尚、第2の実施形態において、固定ノズル20から基板1の中央部に供給する洗浄液として純水を用いたが、これに代えて、例えば水素水又はオゾン水等を用いた場合にも、同様の効果が得られる。また、超音波ノズル6から供給される洗浄液の種類と、固定ノズル20から供給される洗浄液の種類とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0082】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る基板洗浄方法及び洗浄装置について図面を参照しながら説明する。
【0083】
尚、本実施形態の洗浄装置の基本構成及び洗浄シーケンスは、第1の実施形態に係る洗浄装置の基本構成(図1参照)及び洗浄シーケンス(図3参照)と同様であるので、説明を省略する。
【0084】
図12は、本実施形態の超音波洗浄装置における超音波ノズル6のスキャン範囲(以下、ノズルスキャン範囲と称する)を模式的に示す平面図である。
【0085】
図12に示すように、本実施形態のノズルスキャン範囲が、図2に示す第1の実施形態のノズルスキャン範囲と異なっている点は、次の通りである。すなわち、図2に示すように、第1の実施形態のノズルスキャン範囲9は、ウェハである基板1における端部10と中心11とを結ぶ半径方向に設定されている。すなわち、超音波ノズル6は、基板1の上側における端部10と中心11との間で往復運動する。それに対して、図12に示すように、第3の実施形態のノズルスキャン範囲(超音波ノズル6の可動範囲)30は、基板1の上側において、端部10と、中心11を所定の距離(例えば10〜20mm程度)だけ通り過ぎた位置31とを結ぶ半径方向に設定されている。言い換えると、第3の実施形態において、超音波ノズル6は、基板1の上側において、基板1の中心11を通って、基板の端部10から、基板における中心11から所定の距離(以下、オーバーラップ距離と称する)だけ離れた位置31まで往復運動する。
【0086】
尚、超音波ノズル6は、基板1の上側における端部10と位置31との間で、例えば直線状の軌跡を描きながら往復運動してもよいし(図12参照)、又は円弧状の軌跡を描きながら往復運動してもよい。
【0087】
ところで、第1の実施形態の基板洗浄によると、異物除去率は最大で90%程度である(図4〜図7参照)。このとき、除去されずに基板上に残った異物は、基板中央部に集中している。
【0088】
それに対して、本実施形態では、超音波ノズル6のスキャン範囲30を、基板1の中央部で10〜20mm程度オーバーラップさせているため、第1の実施形態の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、洗浄中の基板1の中央部(基板1の中心から10〜20mm程度の領域)において、超音波ノズル6による1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板1の周縁部と比べて回転速度(=回転数×基板中心からの距離)が小さい基板1の中央部においても、異物の基板外側方向(横方向)への移動効率を高めることができる。すなわち、基板1の中央部における異物除去率の低下を防止して、基板1の全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。
【0089】
以下、図12に示すノズルスキャン範囲(具体的には基板の端から中心を20mm通過した位置まで)30を用いた本実施形態の基板洗浄の妥当性を確認するために、図2に示すノズルスキャン範囲(具体的には基板の端から中心まで)9を用いた第1の実施形態の基板洗浄との間で異物除去率を比較した結果について、図13を参照しながら説明する。尚、異物除去率の評価は、洗浄前の基板1上に例えば4000〜5000個程度のシリコン微粒子を付着させておき、洗浄後に基板1上に残存するシリコン微粒子の数を測定して該微粒子の除去率(単位:%)を算出することにより行なった。また、いずれの結果も以下のような条件下で得られたものである。すなわち、高周波発信機7の出力周波数、出力電圧値及び出力電流値はそれぞれ1.5MHz、50V及び0.8Aであり、超音波ノズル6からの純水流量は0.8L/minであり、超音波ノズル6と基板1との間の距離は15mmであり、基板回転数は3000rpmである。図13に示すように、超音波ノズル6のスキャン範囲30を、基板1の端部10から中心11を20mm通過した位置31までの範囲とすることにより、基板1の中央部でノズルスキャン範囲をオーバーラップさせない場合と比べて、異物除去率が5%程度向上する。
【0090】
尚、第3の実施形態において、基板1の中央部における超音波ノズル6のオーバーラップ距離は、特に限定されるものでないが、該オーバーラップ距離を、10mm以上で且つ20mm以下(又は基板1となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下)に設定することにより、次のような効果が得られる。すなわち、超音波ノズル6のスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大すること、つまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【0091】
また、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の洗浄装置及び洗浄シーケンスを用いた。言い換えると、超音波洗浄中の基板1を2600rpm以上の回転数で回転させた。しかし、超音波洗浄中の基板1を2600rpmを下回る回転数で回転させた場合にも、本実施形態の前述の効果(基板中央部の異物除去率の低下防止及びデバイス生産能力の低下抑制)は、基板1の中央部でノズルスキャン範囲をオーバーラップさせない場合と比べて生じるものである。
【0092】
また、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の洗浄装置に代えて、第2の実施形態と同様の洗浄装置(図9参照)を用いてもよい。言い換えると、超音波ノズル6とは別に、基板1の中央部に洗浄液を供給するための固定ノズル20を設けて、超音波ノズル6を用いて超音波洗浄を行なうと同時に固定ノズル20から洗浄液を基板1の中央部に供給してもよい。このようにすると、2600rpm以上の大きい基板回転数を用いた場合にも、洗浄中の基板1の中央部が乾燥すること、つまり基板1の中央部における異物除去率が低下することをより確実に防止できる。
【0093】
【発明の効果】
本発明によると、従来の数百rpm程度の回転数と比べてはるかに大きい回転数で基板を回転させながら超音波洗浄を行なうため、基板主面に対して垂直に加えられた超音波振動を、強大な遠心力の効果によって、基板主面に沿って基板の外側方向に伝搬させることができる。このため、超音波出力を高くしたり又は洗浄ノズルのスキャン回数を多くしたりすることなく、基板上の異物を短時間で基板の外側に洗い流すことができるので、生産能力の低下及びデバイスへのダメージを防止しつつ、高い異物除去率を達成できる。また、従来の基板回転数を用いた場合と比べて、洗浄螺旋ピッチがさらに小さくなるので、洗浄ノズルのスキャン回数をより少なく抑制しながら、つまり洗浄時間をより短縮しながら高い異物除去率を達成できる。さらに、洗浄ノズル径に対する洗浄螺旋ピッチの比を最適化することにより、洗浄ムラを最大限に抑制しながら、基板表面全体を超音波振動状態の洗浄液によって洗浄できるので、異物除去能力を最大化できる。
【0094】
また、本発明によると、超音波洗浄を行なう際にノズルスキャン範囲を基板中央部でオーバーラップさせているため、ノズルスキャン範囲を基板中央部でオーバーラップさせない場合と比べて、ノズルによる1スキャンあたりの洗浄時間が長くなる。このため、基板周縁部と比べて回転速度が小さい基板中央部においても、異物の横方向への移動効率を高めることができるので、基板中央部における異物除去率の低下を防止して、基板全面に亘ってムラのない洗浄効果を実現できる。また、洗浄ノズルのスキャン回数を増やして異物除去率を向上させた場合と比べて、洗浄時間が増大することつまりデバイス生産能力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置における超音波ノズルのスキャン範囲を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いた洗浄シーケンスの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いた基板洗浄において超音波ノズルから供給される純水の流量を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いた基板洗浄において超音波ノズルと基板との間の距離を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いた基板洗浄において高周波発信機の出力電流値を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いた基板洗浄において基板回転数を変化させた場合における異物除去率を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置を用いて基板を洗浄している際に超音波ノズルが描く螺旋状の軌跡(回転する基板から見た軌跡)を模式的に示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置を用いた洗浄シーケンスの一例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置を用いた基板洗浄の妥当性を確認するために、固定ノズルのない洗浄装置を用いた場合との間で異物除去率を比較した結果を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る洗浄装置における超音波ノズルのスキャン範囲を模式的に示す平面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る洗浄装置における超音波ノズルのスキャン範囲を用いた基板洗浄の妥当性を確認するために、基板中央部でノズルスキャン範囲をオーバーラップさせない場合との間で異物除去率を比較した結果を示す図である。
【図14】従来の超音波洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
【図15】従来の超音波洗浄装置における超音波ノズルのスキャン範囲を模式的に示す平面図である。
【図16】従来の超音波洗浄装置を用いた洗浄シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 真空チャック
3 モータ
4 カップ
5 ノズルアーム
6 超音波ノズル
7 高周波発信機
8 高周波振動子
9 超音波ノズルのスキャン範囲
10 基板の端部
11 基板の中心
12 超音波ノズルの螺旋状軌跡
13 超音波ノズルの螺旋状軌跡における螺旋1回転分の始点
14 超音波ノズルの螺旋状軌跡における螺旋1回転分の終点
20 固定ノズル
30 超音波ノズルのスキャン範囲
31 基板における中心から所定の距離だけ離れた位置
P 洗浄螺旋ピッチ

Claims (13)

  1. 基板を回転させながら、前記基板の上側に設けられた単一のノズルから、超音波が印加された洗浄液を前記基板に供給することにより、前記基板を洗浄する基板洗浄方法であって、
    前記洗浄液を前記ノズルから前記基板に供給する際に、前記ノズルを、前記基板の上側において、前記基板の中心を通って、前記基板の端部から、前記基板中心から所定の距離だけ離れ且つ前記基板の中心と前記基板の他端部との間に存在する位置までの間を往復運動させることを特徴とする基板洗浄方法。
  2. 洗浄中の前記基板の回転数を2600rpm以上で且つ3500rpm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
  3. 洗浄中の前記基板の回転数を2600rpm以上で且つ3000rpm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
  4. 前記洗浄液を前記ノズルから前記基板に供給すると同時に、他の洗浄液を他の固定ノズルから前記基板の中央部に供給し、それにより洗浄中の前記基板の中央部が乾燥することを防止することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
  5. 前記所定の距離は10mm以上で且つ20mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板洗浄方法。
  6. 前記所定の距離は、前記基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板洗浄方法。
  7. 基板を回転させながら、前記基板の上側に設けられた単一のノズルから、超音波が印加された洗浄液を前記基板に供給することにより、前記基板を洗浄する基板洗浄方法であって、
    前記洗浄液を前記ノズルから前記基板に供給する際に、前記ノズルを、前記基板の上側において、前記基板の中心を通って、前記基板の端部から、前記基板中心から所定の距離だけ離れ且つ前記基板の中心と前記基板の他端部との間に存在する位置までの間を往復運動させ、
    前記ノズルの直径をD(単位:mm)、前記ノズルの移動速度をV(単位:mm/秒)としたときに、洗浄中の前記基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ350×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させることを特徴とする基板洗浄方法。
  8. 洗浄中の前記基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ300×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させることを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄方法。
  9. 前記洗浄液を前記ノズルから前記基板に供給すると同時に、他の洗浄液を他の固定ノズルから前記基板の中央部に供給し、それにより洗浄中の前記基板の中央部が乾燥することを防止することを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄方法。
  10. 前記所定の距離は10mm以上で且つ20mm以下であることを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄方法。
  11. 前記所定の距離は、前記基板となるウェハの半径の10%以上で且つ20%以下であることを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄方法。
  12. 基板を保持する保持部と、
    前記保持部を回転させるモータと、
    前記保持部に保持された前記基板に洗浄液を、該洗浄液に超音波を印加しながら供給すると共に前記基板の上側で往復運動する単一のノズルとを備え、
    前記ノズルの直径をD(単位:mm)、前記ノズルの移動速度をV(単位:mm/秒)としたときに、前記モータは、洗浄中の前記基板を260×V/D(単位:rpm)以上で且つ350×V/D(単位:rpm)以下の回転数で回転させ、
    前記ノズルは、前記基板の上側において、前記基板の中心を通って、前記基板の端部から、前記基板中心から所定の距離だけ離れ且つ前記基板の中心と前記基板の他端部との間に存在する位置までの間を往復運動するように設定されていることを特徴とする洗浄装置。
  13. 前記保持部に保持された前記基板の中央部に他の洗浄液を供給する他の固定ノズルをさらに備えていることを特徴とする請求項12に記載の洗浄装置。
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