JP4261797B2 - ガス流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス流量計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体の薄膜成形技術を利用したマイクロマシニング技術を用いて、微小なダイアフラム上にヒータや温度センサを作製した熱式のフローセンサが提案されている。特に、特開2001−12988号公報等に開示されているフローセンサでは、1チップのセンサ上に流量センサとガス種やガス密度・組成の判別を行う判別センサとを備えており、流量を計測しながらガス判別を実施することができる。
【0003】
一方、従来のガス流量計には、膜式メータ、フルイディックメータ等があり、また最近では、電子式メータとして超音波式メータが開発されつつある。これらのメータは、計測時の温度や絶対圧力によるガスの膨張収縮により変化するガスの体積を計測する体積計測型のガス流量計である。このため、ガスの計量をするときに発生する南北差や標高差による計量値の違いを、日本の場合、地域ごと、あるいは、季節ごと(夏と冬)に区分けされた課金料で補正する方法が採られている。
【0004】
また、従来のガス計量では、同じ機種のガス流量計でガスの種類が異なる場合や、1つのガス流量計で同じガス種でも組成が変化した場合、それに対応する手段がなく、そのまま体積計量を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のガス流量計でガス計量を行う場合、区分けされた課金システムで補正するだけでは、日々及び昼夜の温度変化や大気圧の変動・近郊の標高差には十分に対応することができない。また、ガスの種類が異なる場合の計量は、予めガス種を把握しておいてから計量を行う以外に対応策がない。さらに、ガス組成が変動し、ガス密度が変動すると、計量誤差が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ガスの物性値あるいはガスの種類に応じた正確な流量の算出、表示、課金料計算等を好適に行なうことができるガス流量計を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、ガスの質量流量及びガスの物性値を検知するセンサを用いたガス流量計であって、上記センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの質量流量を算出する流量算出手段と、上記センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、上記流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて、ガスの種類を判別するガス種判別手段と、計測すべきガスの標準温度、標準絶対圧力及び標準組成を規定して標準状態とし、上記流量算出手段で算出されたガスの質量流量を、上記流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて上記標準状態における標準体積流量に換算する流量換算手段と、上記流量換算手段で換算された標準体積流量値と上記ガス種判別手段で判別されたガス種とに基づいて、課金料を算出する課金料算出手段とを備えたことを特徴とするガス流量計に存する。
【0010】
請求項1記載の発明においては、ガスの質量流量及びガスの物性値を検知するセンサを用いたガス流量計であって、センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの質量流量を算出する流量算出手段と、センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて、ガスの種類を判別するガス種判別手段と、計測すべきガスの標準温度、標準絶対圧力及び標準組成を規定して標準状態とし、流量算出手段で算出されたガスの質量流量を、流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて標準状態における標準体積流量に換算する流量換算手段と、流量換算手段で換算された標準体積流量値とガス種判別手段で判別されたガス種とに基づいて、課金料を算出する課金料算出手段とを備えている。
【0011】
ガス消費量を正しく計量する方法として、特開2000−257859号に提案されているように、ガスの発熱量を計量することがもっともふさわしい。しかし、ガスの種類・組成が異なるとガスの単位体積当たりの熱量が異なる。何らかの方法で消費したガスの体積を標準温度と標準圧力に相当するガスの体積に変換しても、ガスの消費熱量を正しく計量していない。そこで、計量すべきガスの標準組成を決定しておき、計量発熱量がその標準組成のガスであった時のガス体積に変換することを付加することで、より正確なガス計量が可能になる。
【0012】
それにより、温度や気圧の変動に影響されないガス計量をできるだけでなく、流量表示が体積表示であるため、従来のガス計量計と違和感なく計量できる。
【0018】
それにより、予めガス種を把握していなくても、ガス流量計の設置場所の使用ガスを判別でき、ガス使用者や設置者がガス種を判別しなくても適正なガス料金を算出できる。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、前記課金料算出手段で算出された課金料を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス流量計に存する。
【0020】
請求項2記載の発明においては、課金料算出手段で算出された課金料を表示する表示手段を備えている。
【0021】
それにより、適正なガス料金を、煩雑な手続を必要とせずにガス販売業者及びガス利用者に連絡することができる。
【0022】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、前記流量換算手段は、計量すべきガスの標準組成を予め決定しておき、計量発熱量がその標準組成であったときのガス体積に変換することを特徴とする請求項1または2記載のガス流量計に存する。
【0023】
請求項3記載の発明においては、流量換算手段は、計量すべきガスの標準組成を予め決定しておき、計量発熱量がその標準組成であったときのガス体積に変換する。
【0024】
それにより、より正確なガス計量が可能になる。
【0064】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、前記センサは、計測すべきガスを加熱するヒータ、計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから上流側及び下流側それぞれに該ヒータから一定距離離間して配置された第1及び第2の温度センサ、及び計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから垂直な方向に該ヒータから一定距離離間して配置された第3の温度センサを有するフローセンサであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス流量計に存する。
【0065】
請求項4記載の発明においては、センサは、計測すべきガスを加熱するヒータ、計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから上流側及び下流側それぞれに該ヒータから一定距離離間して配置された第1及び第2の温度センサ、及び計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから垂直な方向に該ヒータから一定距離離間して配置された第3の温度センサを有するフローセンサである。
【0066】
それにより、フローセンサを用いて、ガス流量計を容易に、安価にかつ小型に提供することができる。
【0103】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るガス流量計の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明によるガス流量計の実施の形態を示す構成ブロック図である。本発明のガス流量計1は、マイクロフローセンサ14、減算部33、加算部35、A/Dコンバータ37及び39、マイクロコンピュータ40(以下、マイコンと略記する)、表示手段としての表示部51、警報手段としての警報音発生部52、遮断手段としての遮断弁53及び通報手段としての通報部54を備えている。
【0104】
ガス流量計1は、図2に示すようなLPガス供給設備に適用されるように構成されている。図2において、ガス流量計1は、LPガス容器2に収容されている高圧のLPガスを圧力調整器3により供給圧力に減圧調整してガス風呂釜4やコンロ5などの燃焼器具に供給するガス供給路中の配管6に設置されており、燃焼器具において消費されるガスの使用量を計量する。なお、ガスコンロ5などに至る配管には、閉止弁7が設けられている。
【0105】
マイクロフローセンサ14は、図3に示すようにガス流量計1内のガス流路16の内壁に配設され、Si基板102上にそれぞれ形成された、ヒータとしてのマイクロヒータ104と、マイクロヒータ104の下流側に配置された第2の温度センサとしての下流側サーモパイル105と、マイクロヒータ104の上流側に配置された第1の温度センサとしての上流側サーモパイル108と、マイクロヒータ104の両側にガス流路16中のガスの流れ方向(X方向)と略直交方向にそれぞれ配置された第3の温度センサとしての右側および左側サーモパイル111,113とを備えている。
【0106】
そして、下文で詳述するように、下流側サーモパイル105および上流側サーモパイル108は、ガスの質量流量の検出に役立ち、右側サーモパイル111および左側サーモパイル113は、ガスの密度やガスの種類の検出に役立つものであり、マイクロフローセンサ14は、ガスの質量流量、ガスの種類及びガスの密度を検知するセンサとして働く。
【0107】
図4および図5は、図3のマイクロフローセンサ14の構成を示す平面図および断面図である。図4において、マイクロフローセンサ14は、Si基板102、ダイアフラム103、ダイアフラム103上に形成された白金等からなるマイクロヒータ104、マイクロヒータ104の下流側でダイアフラム103上に形成された下流側サーモパイル105、マイクロヒータ104に図示しない電源から駆動電流を供給する電源端子106A,106B、マイクロヒータ104の上流側でダイアフラム103上に形成された上流側サーモパイル108、上流側サーモパイル108から出力される第1温度検出信号を出力する第1出力端子109A,109B、下流側サーモパイル105から出力される第2温度検出信号を出力する第2出力端子107A,107Bを備えている。
【0108】
また、マイクロフローセンサ14は、マイクロヒータ104に対してガスの流れ方向(図3及び図4における矢印Xの方向)と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、右側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する右側サーモパイル111と、この右側サーモパイル111から出力される右側温度検出信号を出力する第3出力端子12A,12Bと、マイクロヒータ104に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置され、ガスの物性値を検出し、左側温度検出信号(第3温度検出信号に対応)を出力する左側サーモパイル113と、この左側サーモパイル113から出力される左側温度検出信号を出力する第4出力端子14A,14Bと、ガス温度を得るための抵抗15,16と、この抵抗15,16からのガス温度信号を出力する出力端子17A,17Bとを備えている。
【0109】
上流側サーモパイル108、下流側サーモパイル105、右側サーモパイル111および左側サーモパイル113は、熱電対から構成されている。この熱電対は、p++−SiおよびAlにより構成され、冷接点と温接点とを有し、熱を検出し、冷接点と温接点との温度差から熱起電力が発生することにより、温度検出信号を出力するようになっている。
【0110】
また、図5に示すように、Si基板102には、ダイアフラム103が形成されており、このダイアフラム103には、マイクロヒータ104、上流側サーモパイル108、下流側サーモパイル105、右側サーモパイル111および左側サーモパイル113のそれぞれの温接点が形成されている。
【0111】
このように構成されたマイクロフローセンサ14によれば、マイクロヒータ104が、外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104から発生した熱は、ガスを媒体として、下流側サーモパイル105と上流側サーモパイル108のそれぞれの温接点に伝達される。それぞれのサーモパイルの冷接点は、Si基体(Si基板)102上にあるので、基体温度になっており、それぞれの温接点は、ダイアフラム105上にあるので、伝達された熱により加熱され、Si基体温度より温度が上昇する。そして、それぞれのサーモパイルは、温接点と冷接点の温度差より熱起電カを発生し、温度検出信号を出力する。
【0112】
ガスを媒体として伝達される熱は、ガスの熱拡散効果とPからQに向かって流れるガスの流速との相乗効果によって、それぞれのサーモパイルに伝達される。すなわち、流速がない場合には、熱拡散によって上流側サーモパイル108と下流側サーモパイル105に均等に伝達され、上流側サーモパイル108からの第1温度検出信号と下流側サーモパイル105からの第2温度検出信号の差信号は、零になる。
【0113】
一方、ガスに流速が発生すると、流速によって上流側サーモパイル108の温接点に伝達される熱量が多くなり、前記第2温度検出信号と前記第1温度検出信号との差信号は流速に応じた正値になる。
【0114】
これに対して、マイクロヒータ104が外部からの駆動電流により加熱を開始すると、マイクロヒータ104から発生した熱は、ガスの流速の影響を受けずにガスの熱拡散効果のみによって、マイクロヒータ104に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置された右側サーモパイル111に伝達される。また、マイクロヒータ104に対してガスの流れ方向と略直交方向に配置された左側サーモパイル113にも、同様な熱が伝達される。このため、右側サーモパイル111の起電力により第3出力端子112A,112Bから出力される右側温度検出信号、および/または左側サーモパイル113の起電力により第4出力端子114A,114Bから出力される左側温度検出信号に基づき、熱伝導と熱拡散、比熱等によって決定される熱拡散定数、密度等のガスの物性値を算出することができるようになる。
【0115】
そこで図1に戻ると、減算部33は差動アンプ等からなり、マイクロフローセンサ14内の下流側サーモパイル105からの第2温度検出信号と、上流側サーモパイル108からの第1温度検出信号との差信号を増幅して出力し、加算部35は、右側サーモパイル111からの右側温度検出信号と、左側サーモパイル113からの左側温度検出信号とを加算した加算信号を増幅して出力し、差信号および加算信号は、それぞれ、A/Dコンバータ37,39でデジタル信号に変換されてマイコン40に入力される。
【0116】
マイコン40は、CPU40Aと、記憶手段としてのROM40B及びRAM40Cを有している。CPU40Aは、A/Dコンバータ37からの差信号のデジタル値をA/Dコンバータ39からの加算信号のデジタル値で除算する除算部41と、除算部41からの除算値に基づきガスの質量流量を算出する流量算出手段としての流量算出部42と、A/Dコンバータ39からの加算信号のデジタル値と、流量算出部42からの流量値とに基づきガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等の物性値を算出する流体物性値算出手段としての流体物性値算出部43と、流体物性値算出部43からの物性値に基づいてガス種を判別するガス種判別手段としてのガス種判別部44と、流量算出部42からの質量流量値を、流体物性値算出部43からの物性値やガス種判別部44からのガス種判別信号に基づいて標準体積流量に換算する流量換算手段としての流量換算部45と、ガス種判別部44からのガス種判別信号と流量流量換算部45から標準体積流量とに基づいてガス使用料金を算出する課金料算出手段としての課金料算出部46と、ガス種判別部44で判別されたガス種の異常の有無を判定する判定手段としての判定部47とを有している。
【0117】
ROM40Bには、CPU40Aが各種処理動作、たとえば流量計測及びガス種判別処理、課金料算出処理、ガス種異常判定処理、ガス置換処理等、を行なうための制御プログラムと、各種処理動作時に使用されるデータテーブル、例えばガス物性値判別テーブル、ガス種判別テーブル及びガス種単価データテーブル等、とが格納されてている。また、RAM40Cには、各種処理動作に伴う各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有しており、データエリアには、各種処理動作時に読み出し/書き込みされる積算流量データ及び使用料金データ等が格納されている。
【0118】
次に、本発明のガス流量計で実行される各種処理動作について説明する。図6は、本発明のガス流量計で実行される流量計測及びガス種判別処理を示すフローチャートである。
【0119】
まず、外部からのパルス信号による駆動電流によりマイクロヒータ104を加熱すると(ステップS11)、下流側サーモパイル105から第2温度検出信号が出力され、上流側サーモパイル108から第1温度検出信号が出力される(ステップS13)。図7は、第1温度検出信号および第2温度検出信号のパルス信号に対する応答を示す。
【0120】
次に、減算部33は、下流側サーモパイル105から出力された第2温度検出信号と上流側サーモパイル108から出力された第1温度検出信号との差信号を増幅する(ステップS15)。
【0121】
そして、加算部35は、右側サーモパイル11から出力される右側温度検出信号と左側サーモパイル13から出力される左側温度検出信号とを加算して増幅した加算信号を出力する(ステップS17)。図9は、右側温度検出信号、左側温度検出信号および加算信号のタイミングチャートを示す。
【0122】
次に、除算部41は、A/Dコンバータ37でA/D変換された減算部33からの差信号のデジタル値をA/Dコンバータ39でA/D変換された加算部35からの加算信号のデジタル値で除算して除算信号を得る(ステップS19)。
【0123】
続いて、流量算出部42は、除算部41からの除算信号に基づき、ガスの質量流量(ミリグラム/秒)を算出する(ステップS21)。さらに、流体物性値算出部43は、A/Dコンバータ39でA/D変換された加算部35からの加算信号のデジタル値と、流量算出部42からの質量流量とに基づき、ROM40Bに格納されているガス物性値判別テーブルを参照してガスの熱伝導率や比熱、粘性、密度等のガスの物性値を算出する(ステップS23)。
【0124】
続いて、ガス種判別部43は、流体物性値算出部43からの物性値に基づいてROM40Bに格納されているガス種判別テーブルを参照してガスの種類を判別する(ステップS25)。さらに、流量換算部45は、流量算出部42からの質量流量値を、流体物性値算出部43からの物性値またはガス種判別部44からのガス種判別信号に基づいて、標準温度、標準絶対圧力及び標準組成を規定した標準状態における標準体積流量に換算する(ステップS27)。
【0125】
上述の流量計測及びガス種判別処理において、流量算出部42で算出されたガスの質量流量は、以前に積算されていた積算質量流量に加算されて現在の積算質量流量として、また、流量換算部45で換算された標準体積流量は、以前に積算されていた積算標準体積流量に加算されて現在の積算標準体積流量として表示部51で切り替え表示または同時表示される。また、流体物性値算出部43で算出された物性値、例えば計測したガスの密度と、ガス種判別部44で判別されたガス種も、表示部51で流量表示と同時表示または切り替え表示される。
【0126】
このように、マイクロフローセンサ14を用いることで、質量流量や標準体積流量を計測できるガス流量計を実現できるだけでなく、ガスの種類あるいは密度を判別できるガス流量計を実現できる。ここでは、マイクロフローセンサ14を用いたガス流量計に限って説明しているが、質量流量を計測し、ガスの種類或いは密度を判別できるものであれば、どのような構成でも良いことはもちろんである。
【0127】
次に、上述の処理において、質量流量を標準体積流量に換算する方法の一例を、天然ガス13Aの場合で説明する。なお、標準状態として、例えば、標準温度を15゜C、標準絶対圧力を1023ヘクトパスカル(hPa)と規定する。この標準温度及び標準絶対圧力状態での天然ガス13Aの標準組成での密度は0.784グラム/リットル(g/l)であることを確認した。例えば、マイクロフローセンサ14で計量したガスの質量流量が10.0ミリグラム/秒(mg/sec)であった場合、10.0(mg/sec)/0.784(mg/ml)=12.8(ml/sec)となり、換算された標準体積流量は、12.8ミリリットル/秒(ml/sec)となる。また、マイクロフローセンサ14で計量した積算質量流量が、例えば10.0グラム(g)であった場合、同様な換算方法により、対応する標準体積積算流量は12.8リットル(l)になる。
【0128】
上述の質量流量を標準体積流量に換算する方法の一例では、標準組成の密度と標準絶対圧力・標準温度とにより、標準状態変換している。これは、天然ガス成分の範囲では、ガス密度とガスの単位体積当たり発熱量がほぼ比例関係にあることから、このような簡易的な方法でも、十分標準状態変換が可能であるという見識が得られていることによる。すなわち、組成変化がガス密度とガスの単位体積当たり発熱量の比例関係からずれる場合には、それに相当する補正が必要になる。例えば、ガスの組成が10%ずれたとき、上述の比例関係が2%ずれるという物理法則があったときは、10%の組成ずれで2%標準密度を補正すると良い。
【0129】
なお、上述した内容は、先に質量流量を求め、後で標準体積流量を求めたが、センサ出力から直接、標準体積流量を求めることも可能である。例えば、マイクロフローセンサ14の出力(すなわち、除算部41からの除算値が200で質量流量10mg/secであったとすると、標準体積流量としてマイクロフローセンサ14の出力が200となったなら、流量算出部42から直接12.8ml/secを出力するようにすればよい。
【0130】
このようなガス流量計を利用することにより、温度や気圧による計測誤差を無くすことができ、異種ガスの計測を判断できるようになり、ガス置換を効率よく判断できるようになる。また、従来の体積表示に対し違和感のないガス流量計を提供できる。さらに、容易に、安価に、小型に、ガス流量計を提供することができる。
【0131】
次に、図9は、本発明のガス流量計で実行される課金料算出処理を示すフローチャートである。
【0132】
まず、ガスの質量流量とガスの種類を計測し(ステップS31)、次いで、計測したガスの種類からその標準状態での密度で計測した質量流量を除算し、標準体積流量を算出する(ステップS32)。このステップS31〜S32は、上述の流量計測及びガス種判別方法におけるステップS11〜S27と同一の処理である。
【0133】
次いで、RAM40Cに格納されている該当ガス種の標準体積流量の積算データを読み出す(ステップS33)。図10は、RAM40Cに格納されている標準体積流量の積算流量データの一例であり、このデータテーブルには、ガス種(例えば、ガス種A,ガス種B,...)データと、ガス種毎の積算流量(リットル)データ及び積算流量に対するガス使用料金(円)データが含まれている。この積算流量データテーブルの中から、ステップS31で判別された該当ガス種(例えば、ガス種Aとする)に対応する積算流量xxxを読み出す。
【0134】
次いで、読み出された該当ガス種Aの標準体積流量の積算データxxxに、ステップS31で計測した標準体積流量xxを積算し、新たな積算データxxxとする(ステップS34)。
【0135】
次いで、ROM40Bに格納されているガス単価データテーブルを参照して当該ガス種Aに応じた単価(円/リットル)を読み出す(ステップS35)。図10は、RAM40Cに格納されているガス単価データの一例であり、このデータテーブルには、ガス種(例えば、ガス種A,ガス種B,...)データと、ガス種毎の単価(円/リットル)データが含まれている。このガス種単価データテーブルの中から、該当ガス種Aに対応する単価aa(円/リットル)を読み出し、課金料算出部46で、ステップS34で積算された積算データxxxに対して該当ガス種Aの単価aaを乗じ、課金データ、すなわちガス使用料金sssを算出する(ステップS36)。
【0136】
次いで、ステップS34で算出された該当ガス種Aの標準体積流量の積算データ及びステップS36で算出された課金データを、RAM40Cに格納されている該当ガス種Aの標準体積流量の積算データ及び課金データのエリアに書き換えて、保存する(ステップS37)。次いで、計算された課金データ、すなわちガス使用料金を、判別されたガス種A及び該当ガス種Aの標準体積流量の積算データと共に表示部51に表示して、ガス利用者が認識できるようにし、また通報部53を介して外部、例えば管理センターへ通報してガス販売業者に連絡する(ステップS38)。
【0137】
したがって、このようなガス流量計を利用することにより、適正なガス料金を煩雑な手続を必要とせずにガス販売業者及びガス利用者に連絡することができる。
【0138】
次に、図12は、本発明のガス流量計で実行されるガス種異常判定処理を示すフローチャートである。
【0139】
まず、計測すべきガスの種類、例えばガス種A、をRAM40Cに入力し、記憶させる(ステップS41)。このステップS51は、ガス流量計の製造時とは限らず、該ガス流量計の設置時等において設置業者が指定し記憶させても良い。
【0140】
次いで、ガスの質量流量とガスの種類を計測する(ステップS42)。このステップS42は、上述の流量計測及びガス種判別方法におけるステップS11〜S25と同一の処理である。
【0141】
次いで、計測したガス種Xが、予め記憶していた計測すべきガス種Aと一致しているか否かを判定部47で判定する(ステップS43)。両者が一致している(X=A)場合は、以下通常のガス流量計量(積算等を含む)の処理を行う(ステップS44)。
【0142】
一方、計測したガス種Xが、予め記憶していた計測すべきガス種Aと一致していない(X≠A)場合には、ガス種異常と判断し(ステップS45)、ガス種異常、を表示部51に表示しかつ異常警報を警報音発生部53から発生させて、ガス利用者に認識させると共に、通報部53を介して外部、例えば管理センターへ通報してガス販売業者や保安責任者に連絡する(ステップS46)。
【0143】
次いで、ガス種の異常を一定時間経過した後も連続して所定回数判断したか否かを判定し(ステップS47)、その答がイエスならば、遮断弁53を弁閉制御してガスを遮断すると共に、異常警報と異なる形態の遮断警報を警報音発生部52から発生させる(ステップS48)。また、その答がノーならば、ステップS42に戻る。
【0144】
このようなガス流量計を利用することにより、適正なガスがガス利用者に提供されているか否かを容易に確認することができる。
【0145】
次に、図13は、本発明のガス流量計で実行されるガス置換処理を示すフローチャートである。
【0146】
すなわち、未使用状態または保管状態のガス流量計を起動する手順について説明する。一般に、ガス流量計は、保管時や未使用時において、消費電力節約のため通常の動作より機能を落としている。そこで、本発明のガス流量計においても、遮断弁53を閉じてガスが流れない状態にし、マイクロフローセンサ1の機能を停止して、流量計測及びガス種判別の機能を停止しておく。その他の付加的な機能、例えば表示部51等についても停止しておく。
【0147】
起動の手順としては、まず、計測すべきガスの種類、例えばガス種A、をRAM40Cに入力し、記憶させる(ステップS51)。このステップS51は、ガス流量計の製造時とは限らず、該ガス流量計の設置時等において設置業者が指定し記憶させても良い。
【0148】
ガス流量計が設置場所に設置されていない場合は、設置し(ステップS52)、次いでステップS53の起動作業に進む。なお、既にガス流量計が設置場所に設置されていれば、ステップS51から直接ステップS53に進む。
【0149】
この起動作業の詳細は次の通りである。未使用状態や保管状態からガス流量計を起動する場合、まず、表示部51等の付加機能を復帰させる(ステップS53−1)。次に、マイクロフローセンサ1のガス種判別を定期的に、例えば1秒に1回実施する(ステップS53−2)。この時、ガス種判別の初期状態の結果が空気であることを確認する。その後、遮断弁53を弁開制御し、ガス流路を開放する(ステップS53−3)。
【0150】
上述のガス流量計の起動作業により、遮断弁53が開くと、続いて、ガス流量計におけるガス置換作業(ステップS54)と、ガス流量計設置作業者による配管漏洩確認作業(ステップS55)が同時並行的に行われる。
【0151】
ガス流量計におけるガス置換作業(ステップS54)の詳細は次の通りである。すなわち、遮断弁53が開くと、ガス流量計はまず、目的のガスへのガス置換の程度を判別する。ガス置換の程度は、ガス種判別部44でガス種を判別し(ステップS54−1)、判別した結果、ガス種判別出力値が、目的のガス(すなわち、RAM40Cに記憶されているガス種A)に対応する値と空気に対応する値のどちらに近い値になっているかを判断することによりガス置換が終了したか否かを判定する(ステップS54−2)。例えば、20:1で目的のガスに対応する値に近ければ、十分ガス置換できたとみなしてガス置換終了と判定し、次のステップS54−3に進む。一方、ガス置換終了でなければ、ステップS54−1に戻り、ガス置換作業を継続する。
【0152】
次いで、ガス置換が十分された(すなわち、ガス置換終了)と判断した場合、ステップS55への割り込みAとして、ガス置換終了を示す情報を表示部51に表示しかつ警報音発生部52よりガス置換終了を認識させるための警報を発生し、作業者に認識せしめる。なお、ガス置換終了を示す情報を出力する手段としては、上述の表示部51の表示及び警報音発生部52の警報のほかに、通信、音声メッセージ、LEDの点灯か点滅、紙への印刷・プロットなどを使用または併用しても良い。
【0153】
その後、ガス流量計はガス流量を計測し始めるが、この時点ではまだ、流量の積算は実施しない。
【0154】
一方、ガス流量計設置作業者による配管漏洩確認作業(ステップS55)においては、遮断弁53が開くと、作業者はまず、ガス流量計より下流の配管における漏洩の有無の確認作業を行い(ステップS55−1)、漏洩がないか否かを判断する(ステップS55−2)。
【0155】
次いで、配管漏洩のチェック作業終了後、すなわち、作業者は、割り込みCとして配管漏洩確認作業終了をガス流量計側に知らせる操作を行う。この操作は、例えば、ガス流量計に設けられている操作ボタン(図示しない)を押すことにより行われる。
【0156】
次いで、表示部51の表示や警報音発生部52よりの警報の有無割り込みAの有無、を判断する(ステップS55−3)。そして、割り込みAがなかった場合、すなわち、ガス置換終了を示す情報が表示部51に表示されずかつ警報音発生部52よりガス置換終了を認識させるための警報が発生していなかった場合は、作業者は、ガスを下流へ流し続ける(ステップS55−4)。一方、配管漏洩のチェック作業終了後、ガス流量計からの割り込みAがあった場合、すなわち、ガス置換終了を示す情報が表示部51に表示されかつ警報音発生部52よりガス置換終了を認識させるための警報が発生した場合は、作業者は、ガス流量計におけるガス置換作業終了を認識して、ガス流量計の下流側の弁を閉じ、ガスが大気へ放出しないようにする(ステップS55−5)。
【0157】
ガス流量計は、ステップS54−2においてガス置換終了と判定した後、この割り込みCがあったか否かを判定し(ステップS54−3)、割り込みCがあれば、この状態で、流量ゼロと判断する。そして、流量ゼロと判断した後、内蔵している遮断弁53(または、図示しないがガス流量計よりやや上流に設置された遮断装置)を弁閉制御してガス流路を遮断する(ステップS54−4)。
【0158】
次いで、ガス流量計は、再びガス種判別を行い(ステップS54−5)、次いで再びガス置換終了か否かの判定を行なう(ステップS54−6)。次いで、所定のサンプリング計測により、ステップS54−6における答がイエス(すなわち、ガス置換終了という判定結果)と流量ゼロの計測結果が所定回数連続して得られたか否かを判定し(ステップS54−7)、その答がイエスならば、流量ゼロと十分なガス置換を一定時間保持しているとみなして、遮断弁53を弁開制御し、ガス流路の遮断を解除し(ステップS54−8)、次いで、通常のガス流量計量を行う(ステップS56)。
【0159】
一方、ステップS54−7の答がノーならば、流量ゼロと十分なガス置換が一定時間保持されなかったとみなして、割り込みBとして割り込みAを解除し(すなわち、ガス置換終了を示す表示部51の表示及び警報音発生部52の警報を解除し)(ステップS54−9)、次いで、遮断弁53を弁開制御してガス遮断を解除し(ステップS54−10)、ステップS54−1に戻り、ガス置換作業をやり直す。次いで、作業者は、割り込みAの解除に基づき、ガス流量計の下流側で弁開を行い、ガス放出を開始する。
【0160】
以上のようなガス流量計におけるガス置換作業と、設置作業者による配管漏洩確認作業により、必要以上のガスの消費をせずにガス置換作業を十分に実施できる。
【0161】
次に、図14は、図1のガス流量計を使用したガス供給システムの概略構成図である。図14においては、たとえばマンションなどの集合住宅に設置されたガス供給システムについて説明する。
【0162】
マンションやアパートなどの集合住宅、一戸建住宅街の集中ガス供給システム等では、それぞれに必要なガスの配管が建物内や地下に張り巡らされている。また、化学プラント、半導体工場などの大型工場では、さらに複数のガス配管が張り巡らされている。そのような所で、定期点検や配管増設工事などで、いったんガスを抜き再度ガスを注入する際の作業は非常に手間がかかる。また、ガス漏洩確認作業は、確認する配管を閉塞状態し、長時間(長いときで1日)圧力降下がないかどうかを確認しなければならない。一方、個別のガス流量計でも、新築家庭や家主が変わったときなどに、漏洩検知とガス置換作業を作業員が行なう必要があり、作業に1〜2時間程度かかり、作業性の向上が望まれている。
【0163】
そこで、集合住宅等の大型設備におけるガス供給システムにおいて、下記に説明するように、本発明のガス流量計を使用することによって、ガス置換・漏洩検知の作業性の向上を図ることができる。
【0164】
図14におけるガス供給システムにおいて、集合住宅150の適所に配置されたガス供給源151から、中間バルブとしての供給元バルブ154、建物(棟)別バルブ155,166及び階別バルブ156,157,167,168と、末端バルブとしての部屋別バルブ158〜165,169〜176等のいくつかのバルブを経て、供給ガスが各家庭に供給されている。
【0165】
ガス供給源151からのガスは、ガス供給配管152、供給元バルブ154、ガス供給配管153を介し、ガス供給配管153A,153Bに分岐し、それぞれ、棟別バルブ155,166を介して1号棟及び2号棟の各階1−1F,1―2F及び2−1F,2−2Fに供給される。
【0166】
棟別バルブ155から分岐する一方のガス供給配管153A1は、1階1−1Fにおいて、階別バルブ156を介して、さらにガス供給配管153A1−1,153A1−2,153A1−3,153A1−4に分岐し、それぞれ、部屋別バルブ158,159,160,161に接続される。
【0167】
同様に、階別バルブ155から分岐する他方のガス供給配管153A2は、2階1−2Fにおいて、階別バルブ157を介して、さらにガス供給配管153A2−1,153A2−2,153A2−3,153A2−4に分岐し、それぞれ、部屋別バルブ162,163,164,165に接続される。
【0168】
一方、棟別バルブ166から分岐する一方のガス供給配管153B1は、1階2−1Fにおいて、階別バルブ167を介して、さらにガス供給配管153B1−1,153AB−2,153B1−3,153B1−4に分岐し、それぞれ、部屋別バルブ169,170,171,172に接続される。
【0169】
同様に、棟別バルブ166から分岐する他方のガス供給配管153B2は、2階2−2Fにおいて、階別バルブ168を介して、さらにガス供給配管153B2−1,153B2−2,153B2−3,153B2−4に分岐し、それぞれ、部屋別バルブ173,174,175,176に接続される。
【0170】
また、図14においては、上述の構成に加えて、図1に示すガスの流量及び種類を検知可能なセンサを有するガス流量計1と同一構成を有するガス流量計177〜194,200がガス供給配管の適所に設置されている。すなわち、ガス流量計177,178は、それぞれ、棟別バルブ155,166の上流のガス供給配管153A,153B部分に設置され、ガス流量計179〜194は、それぞれ、部屋別バルブ158〜165及び169〜176の上流のガス供給配管153A1−1〜153A1−4,153A2−1〜153A2−4,153B1−1〜153B1−4,153B2−1〜153B2−4部分に設置されている。また、ガス流量計200は、ガス供給配管152部分に設置されている。
【0171】
ガス流量計177〜194,200は、各部屋別バルブから供給されるべき各種ガス(LPガス、都市ガス等)の種類をRAM(図示しないが、図1のガス流量計のRAM40Cと同等部分)に予め記憶している。また、ガス流量計177〜194,200は、それぞれのガス流量計が配置されたガス供給配管中を流れるガスの流量および種類を計測することができる。
【0172】
さらに、ガス流量計177の下流側かつ棟別バルブ155の上流側には、開放バルブ195が設けられ、ガス流量計178の下流側かつ棟別バルブ166の上流側には、開放バルブ196が設けられている。
【0173】
次に上述の構成のガス供給装置におけるガス置換・漏洩検知について説明する。
【0174】
ガス置換作業は、まず、作業者により、全てのバルブが閉になっていることを確認され、次いで供給元バルブ154が全開にされる。次いで、開放バルブ195が全開とされ、ガス流量計177のガスの種類検知機能により、ガス供給配管152,153,153Aにおいてガス供給源151から供給される目的のガスに置換されるまで待つ。
【0175】
ガス置換の程度は、ガス流量計177のガス種判別部(図示しないが、図1のガス流量計1のガス種判別部44と同等の部分)でガス種で判別され、判別した結果、ガス種判別出力値が、目的のガス(すなわち、RAMに記憶されているガス種)に対応する値と空気に対応する値のどちらに近い値になっているかが判定される。例えば、ガス種判別出力値が、20:1で目的のガスに対応する値に近ければ、十分ガス置換できたとみなしてガス置換終了と判定される。
【0176】
次いで、ガス流量計177において、ガス供給配管152,153,153Aにおけるガス置換が十分行なわれた(すなわち、ガス置換終了)と判断された場合、ガス置換終了を示す情報が、ガス流量計177の表示部(図示しないが、図1のガス流量計1の表示部51と同等の部分)に表示され、かつ警報音発生部(図示しないが、図1のガス流量計1の警報音発生部52と同等の部分)よりガス置換終了を示す警報が発生し、作業者に知らされる。次いで、ガス流量計1によるガス置換終了の表示や警報音により、開放バルブ195が閉められる。
【0177】
次に、開放バルブ196が全開とされ、ガス流量計178のガスの種類検知機能により上述の手順と同様の手順で、ガス供給配管153Bにおいて目的のガス置換が実施され、ガス置換終了後、開放バルブ196が閉められる。
【0178】
次に、棟別バルブ155,166と、階別バルブ156,157,167,168が全開とされる。この時点で、ガス流量計177またはガス流量計178で計測されるガス流量がゼロか否かが、表示部の表示により確認され、ゼロでなければ、そのガス流量計の下流で漏洩有りと判断することができる。
【0179】
棟別バルブ155の下流で漏洩がある場合、階別バルブ156,157を閉じて、ガス流量計177の表示部の流量表示を確認すれば、階別バルブ156,157の上流における漏洩か、下流における漏洩かを判断することができる。そして、漏洩有りと判断された場合は、漏洩を止める処置が行なわれる。
【0180】
同様に、棟別バルブ166の下流で漏洩がある場合、階別バルブ167,168を閉じて、ガス流量計178の表示部の流量表示を確認すれば、階別バルブ167,168の上流における漏洩か、下流における漏洩かを判断することができる。そして、漏洩有りと判断された場合は、漏洩を止める処置が行なわれる。
【0181】
また、ガス供給源151からガス流量計177,178までのガス供給配管における漏洩は、ガス流量計200の表示部の流量表示により判断することができ、漏洩有りと判断された場合は、漏洩を止める処置が行なわれる。
【0182】
一方、ガス流量計200,177,178においてガスの流量がゼロであれば、これらのガス流量計の下流で漏洩なしと判断され、次に、部屋別バルブ158〜165,169〜176が全開とされ、ガス流量計179〜194のガスの種類検知機能により上述の手順と同様の手順で、ガス供給配管153A1,153A1−1,153A1−2,153A1−3,153A1−4,153A2,153A2−1,153A2−2,153A2−3,153A2−4,153B1,153B1−1,153AB−2,153B1−3,153B1−4,153B2,153B2−1,153B2−2,153B2−3,153B2−4において目的のガス置換が実施され、ガス置換終了後、部屋別バルブ158〜165,169〜176が閉じられる。
【0183】
このように、ガス供給システムにおけるガス供給配管におけるガス置換・漏洩検知は、各バルブを全開にしても安全かつ短時間に作業できる。また、目的のガスを無駄に大気放出することが少なく、確実なガス置換および漏洩検知ができる。
【0184】
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0185】
たとえば、上述の実施の形態では、ガスの質量流量を検知するセンサとしてフローセンサを用いているが、これに代えて、超音波式流量計やコリオリ式質量流量計を用いても良い。
【0186】
また、上述の実施の形態では、質量流量及び標準体積流量を算出して表示しているが、これらと同時にまたはこれらに代えて、熱量流量を算出して同時または切り換え表示する構成としても良い。
【0187】
図15は、他の実施例として、本発明のガス流量計で実行される熱量流量算出処理を示すフローチャートである。まず、ガスの質量流量とガスの種類を計測する(ステップS61)。このステップS61は、上述の流量計測及びガス種判別処理におけるステップS11〜S25と同一の処理である。
【0188】
次いで、ROM40Bに予め格納されているガス種熱量流量データテーブルから、ステップS61で判別されたガス種、例えばガス種Aの単位質量当たりの熱量(キロカロリー/グラム)データを読み出す(ステップS62)。
【0189】
図16は、ROM40Bに格納されているガス種熱量流量データテーブルの一例であり、このデータテーブルには、ガス種(例えば、ガス種A,ガス種B,...)データと、ガス種毎の単位質量当たりの熱量(キロカロリー/グラム)データが含まれている。
【0190】
次いで、流量換算部45で、読み出された該当ガス種Aの単位質量当たりの熱量mm(kcal/g)に、計測した質量流量xx(g/sec)を乗じて熱量流量ss(kcal/sec)を算出する(ステップS63)。次いで、RAM40Cに格納されている該当ガス種の熱量流量の積算データxxx(kcal)を読み出す(ステップS64)。
【0191】
図17は、RAM40Cに格納されているガス種の熱量流量の積算データの一例であり、このデータテーブルには、ガス種毎(例えば、ガス種A,ガス種B,...)の積算熱量流量(キロカロリー)データが含まれている。
【0192】
次いで、読み出された該当ガス種の熱量流量の積算データxxx(kcal)に、計測した熱量流量ss(kcal)を積算し、新たな積算データとする(ステップS65)。
【0193】
次いで、積算後の新たな積算データをRAM40Cの該当ガス種Aの積算熱量流量データエリアに保存する(ステップS66)。次いで、判別されたガス種Aと熱量流量の積算データとを、表示部51に表示してガス利用者が認識できるようにすると共に、通報部53を介して外部、例えば管理センターへ通報してガス販売業者に連絡する(ステップS67)。
【0194】
このようなガス流量計を利用することにより、ガス利用者が利用する熱量でガスの取引が可能になり、より適正なガス取引を行なうことができる。また、温度や気圧、ガスの種類による計測誤差を無くすことができ、容易に、安価に、小型に、ガス流量計を提供することができる。
【0195】
また、上述の実施の形態では、ガス種の異常判定処理を行なっているが、ガスの密度の異常を判定するように構成しても良い。この場合には、図12のフローチャートにおいて、ステップS41に代わるステップS41′として、計測すべきガスの密度、例えばガス密度Da、をRAM40Cに入力し、記憶させる。次いで、ステップS42に代わるステップS42′として、ガスの質量流量とガスの密度を計測する。このステップS42′は、上述の流量計測及びガス種判別方法におけるステップS11〜S23と同一の処理である。
【0196】
次いで、ステップS43に代わるステップS43′として、計測したガスの密度Dxが、予め記憶していた計測すべきガスの密度Daと一致しているか否かを判定部47で判定する。両者が一致している(Dx=Da)場合は、以下通常のガス流量計量(積算等を含む)の処理を行う(ステップS44)。
【0197】
一方、計測したガスの密度Dxが、予め記憶していた計測すべきガスの密度Daと一致していない(Dx≠Da)場合には、ステップS45に代わるステップS45′として、ガスの密度の異常と判断し、次いで、ステップS46に代わるステップS46′として、ガスの密度の異常、を表示部51に表示しかつ異常警報を警報音発生部53から発生させて、ガス利用者に認識させると共に、通報部53を介して外部、例えば管理センターへ通報してガス販売業者や保安責任者に連絡する。
【0198】
次いで、ステップS47に代わるステップS47′として、ガスの密度の異常を一定時間経過した後も連続して所定回数判断したか否かを判定し、その答がイエスならば、遮断弁53を弁閉制御してガスを遮断すると共に、異常警報と異なる形態の遮断警報を警報音発生部52から発生させる(ステップS48)。また、その答がノーならば、ステップS42′に戻る。
【0199】
このようなガス流量計を利用することにより、ガス密度の判定に基づいて、適正なガスがガス利用者に提供されているか否かを容易に確認することができる。
【0200】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、温度や気圧の変動に影響されないガス計量をできるだけでなく、予めガス種を把握していなくても、ガス流量計の設置場所の使用ガスを判別でき、ガス使用者や設置者がガス種を判別しなくても適正なガス料金を算出できる。
【0202】
請求項2記載の発明によれば、予めガス種を把握していなくても、ガス流量計の設置場所の使用ガスを判別でき、ガス使用者や設置者がガス種を判別しなくても適正なガス料金を算出できる。
【0203】
請求項2記載の発明によれば、適正なガス料金を、煩雑な手続を必要とせずにガス販売業者及びガス利用者に連絡することができる。
【0204】
請求項3記載の発明によれば、より正確なガス計量が可能になる。
【0218】
請求項4記載の発明によれば、フローセンサを用いて、ガス流量計を容易に、安価にかつ小型に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガス流量計の実施の形態を示す構成ブロック図である。
【図2】本発明によるガス流量計が適用されるガス供給設備を示す図である。
【図3】図1のガス流量計で使用されるマイクロフローセンサの概略構成を説明する略図である。
【図4】図3のマイクロフローセンサの構成を示す平面図である。
【図5】図3のマイクロフローセンサの構成を示す断面図である。
【図6】図1のガス流量計で実行される流量計測及びガス種判別処理を示すフローチャートである。
【図7】第1温度検出信号および第2温度検出信号を示す図である。
【図8】右側温度検出信号および左側温度検出信号を示す図である。
【図9】図1のガス流量計で実行される課金料算出処理を示すフローチャートである。
【図10】標準体積流量の積算流量データの一例を示す図である。
【図11】ガス種単価データテーブルの一例を示す図である。
【図12】図1のガス流量計で実行されるガス異常判定処理を示すフローチャートである。
【図13】図1のガス流量計で実行されるガス置換処理を示すフローチャートである。
【図14】図1のガス流量計を使用したガス供給システムの概略構成図である。
【図15】他の実施例として図1のガス流量計で実行される熱量流量処理を示すフローチャートである。
【図16】ガス種熱量流量データテーブルの一例を示す図である。
【図17】ガス種の熱量流量の積算データの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 ガス流量計
14 マイクロフローセンサ(フローセンサ)
33 減算部
35 加算部
40 マイコン
40A CPU
40B ROM
40C RAM(記憶手段)
41 除算部
42 流量算出部(流量算出手段)
43 流体物性値算出部(流体物性値算出手段)
44 ガス種判別部(ガス種判別手段)
45 流量換算部(流量換算手段)
46 課金料算出部(課金料算出手段)
47 判定部(判定手段)
51 表示部(表示手段)
52 警報音発生部(警報手段)
53 遮断弁(遮断手段)
54 通報部(通報手段)
104 マイクロヒータ(ヒータ)
105 下流側サーモパイル(第2の温度センサ)
108 上流側サーモパイル(第1の温度センサ)
111 右側サーモパイル(第3の温度センサ)
113 左側サーモパイル(第3の温度センサ)
151 ガス供給源
152,153,153A,153A1,153A1−1,153A1−2,153A1−3,153A1−4,153A2,153A2−1,153A2−2,153A2−3,153A2−4,153B,153B1,153B1−1,153B1−2,153B1−3,153B1−4,153B2,153B2−1,153B2−2,153B2−3,153B2−4 ガス供給配管
154 供給元バルブ
155〜157,166〜168 中間バルブ
158〜165,169〜176 末端バルブ
177〜194,200 ガス流量計
195,196 開放バルブ
Claims (4)
- ガスの質量流量及びガスの物性値を検知するセンサを用いたガス流量計であって、
上記センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの質量流量を算出する流量算出手段と、
上記センサで検知された検知信号に基づいて、ガスの物性値を算出する流体物性値算出手段と、
上記流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて、ガスの種類を判別するガス種判別手段と、
計測すべきガスの標準温度、標準絶対圧力及び標準組成を規定して標準状態とし、上記流量算出手段で算出されたガスの質量流量を、上記流体物性値算出手段で算出された物性値に基づいて上記標準状態における標準体積流量に換算する流量換算手段と、
上記流量換算手段で換算された標準体積流量値と上記ガス種判別手段で判別されたガス種とに基づいて、課金料を算出する課金料算出手段とを備えたことを特徴とするガス流量計。 - 上記課金料算出手段で算出された課金料を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス流量計。
- 前記流量換算手段は、計量すべきガスの標準組成を予め決定しておき、計量発熱量がその標準組成であったときのガス体積に変換することを特徴とする請求項1または2記載のガス流量計。
- 前記センサは、計測すべきガスを加熱するヒータ、計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから上流側及び下流側それぞれに該ヒータから一定距離離間して配置された第1及び第2の温度センサ、及び計測すべきガスの流れ方向に対して該ヒータから垂直な方向に該ヒータから一定距離離間して配置された第3の温度センサを有するフローセンサであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス流量計。
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