JP4261007B2 - 燃料要素および燃料集合体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、沸騰水型原子炉で使用される燃料要素およびこの燃料要素を組み込んで構成した燃料集合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
軽水炉に用いられている燃料要素1は、図5(a)に示すようにウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物またはプルトニウムウラン混合酸化物焼結ペレット(以下、ペレットと記す)2を内部に多数積層内蔵し、上下端を上部端栓3、下部端栓4により溶接密封されたジルカロイ製被覆管(以下、被覆管と記す)5により形成されている。ペレット2の直径寸法は約8〜11mmであり、被覆管5とのギャップは約0.2mm ある。
【0003】
被覆管5内にはギャップガスとして熱伝導率の良いヘリウムガスが封入されており、燃焼初期の核分裂生成ガスのペレット2からの放出を抑制するため、約5〜10気圧に保持している。また、被覆管5内の上部には軸方向各位置でのペレット2から放出される核分裂生成ガスによる燃料要素1内の局所的な圧力上昇を防ぐためにガスプレナム6が設けられている。
【0004】
ガスプレナム6にはスプリング7およびペレット2の上端に隣接する押え板8が配置され、燃料要素1を組み込んで構成した燃料集合体の輸送時等にペレット2が被覆管5内で上下移動しないように押さえ付けている。
【0005】
現在、使用されているペレット2の密度は、ウラン酸化物またはガドリニア混合ウラン酸化物を焼結したペレットで理論密度97%より低く、またプルトニウムウラン混合酸化物を焼結したペレットで理論密度95%より低くなっているが、近年、製造技術の改善により特に添加物などを加えることなく、さらに高密度化することが可能になりつつある。
【0006】
図5(b)は図5(a)の燃料要素1を多数本上下タイプレート9,10に固定して組み込んで構成した燃料集合体11の一例を示している。図5(b)中、符号12はスペーサ、13は外部スプリング、14はハンドル、15はコーナポスト、16はグリップ、17はチャンネルボックスを示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
核燃料の経済性を高める最大の手段は、1体の燃料集合体11に核分裂性物質をできるだけ多く装荷することである。被覆管5の外径は、核熱水力特性などの諸特性からほぼ決まるため、経済性を高めるためには被覆管5内に如何に多くの核分裂性物質を装荷するかが重要となる。
【0008】
具体的には、被覆管5の肉厚を薄くするか、または被覆管5とのギャップを狭めることにより、ペレット2の外径を大きくする。あるいは、ガスプレナム6の長さを短くし、ペレット2の装荷長さ、いわゆる燃料有効長を長くする等、ペレット2の密度を高めるなどが考えられる。しかしながら、これらの核分裂性物質の装荷量を増加することは、燃料要素および燃料集合体の熱機械的健全性を低下させる場合がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、燃料要素および燃料集合体の熱機械的健全性を維持しながら、かつ経済性の高い燃料要素および前記燃料要素を組み込んで構成した燃料集合体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物、またはプルトニウムウラン混合酸化物を焼結して形成した酸化物焼結ペレットをジルカロイ製の被覆管内に封入した燃料要素において、前記ペレットは酸化物結晶粒子とガラス状または結晶性のアルミナシリケート析出相からなり、前記アルミナシリケート析出相が 50wt %より多く 80wt %以下であるSiO 2 と、残部のAl 2 3 とからなる平均組成を有するもので、その量が前記ペレットの全重量を基準として約 10 500ppm であるとともに、前記ペレットの平均密度を理論密度の97% 99 とし、かつ前記ペレットの外径に対する前記被覆管と前記ペレットのギャップ幅の比率(ギャップ/ペレットの外径)を0.018 0.0225とすることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記ペレットの高密度化によるペレットと被覆管の機械的相互作用(PCI)の特性低下をギャップを適切に設定することにより補償し、ウラン燃料の装荷量の増加を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、前記ペレットの平均密度理論密度の98%〜99%とし、かつ、前記ギャップ幅の比率を 0.02 0.0225 とすることを特徴とする。この理論密度を98%から99%に選定した理由は、図4から明らかなように上記範囲から外れると、核分裂性物質装荷量が低下する。
【0014】
請求項の発明は、複数本の燃料要素をスペーサを介して整列配置し、その上下両端部を上下部タイプレートで固定し、チャンネルボックス内に組み込んでなる燃料集合体において、前記燃料要素の少なくとも一部に請求項1または2記載の燃料要素を前記上下部タイプレートに固定して組み込んでなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
燃料経済性を高めるためには、燃料要素内の核分裂性物質装荷量をできるだけ多くすることが重要であるが、同時に燃料要素の熱機械的健全性を維持することが要望される。
【0016】
そこで、本発明は、ウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物、またはプルトニウムウラン混合酸化物を焼結した酸化物焼結ペレットをジルカロイ製の被覆管内に封入した燃料要素において、前記ペレットの平均密度を理論密度の97%以上とし、かつ前記ペレットの外径に対する前記被覆管と前記ペレットのギャップ幅の比率(ギャップ/ペレット外径)を0.018 以上にすることによって上記要望を達成することができる。
【0017】
燃料要素内の核分裂性物質装荷量を増加する手段として、(1) 被覆管の肉厚を薄くするか、(2) 被覆管とのギャップを狭めることによりペレット外径を大きくするか、(3) ガスプレナム長さを短くしペレットの装荷長さ、いわゆる燃料有効長を長くするか、または(4) ペレット密度を高めるかするなどが考えられる。
【0018】
このうち、(1) の被覆管の肉厚を薄くした場合、ペレットと被覆管の機械的相互作用が生じた際、被覆管に発生する応力が高くなるため、肉厚は被覆管肉厚/被覆管外径比が従来と同等となるように設定する必要がある。
【0019】
(2) の被覆管とのギャップを狭めた場合、ペレットと被覆管の機械的相互作用が厳しくなり、熱機械的健全性を従来と同等に維持するとは難しい。(3) のガスプレナム長さを短くし燃料有効長を長くした場合、燃料要素の内圧が増加してしまうため、熱機械的健全性を従来と同等に維持することは新規技術の導入が要求される。
【0020】
(4) のペレットの高密度化は、ペレットのスエリング量を増加させ機械的健全性を低下させる。これを緩和するため、被覆管とのギャップを適度に広げる必要がある。しかし、このようにするとギャップの熱伝達率が低下し、燃料要素の内圧の上昇を引き起こす。この内圧上昇を抑制するために、ガスプレナムを増加させると燃料有効長は短くなり、核分裂性物質装荷量は低下する。
【0021】
しかしながら、燃料有効長を短尺化した場合でも、熱機械的健全性を維持しながら、適度なギャップ幅を設定してペレットを高密度化することで、核分裂性物質装荷量を増加することが可能である。具体的には、ペレットの理論密度を97%以上とすることにより、核分裂性物質装荷量を増加することができ、最適なペレットの密度は98%〜99%となる。
【0022】
図1から図4により本発明に係る燃料要素および燃料集合体の具体的な実施例を説明する。
なお、本実施例に係る燃料要素および燃料集合体の構造については、図5(a)および(b)で説明したものと本質的に変わるものでないため、その構造についての説明は省略する。
【0023】
本実施例に係る燃料要素と燃料集合体の構造を図5(a),(b)に対応させて説明する。本実施例に係る燃料要素1ではウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物またはプルトニウムウラン混合酸化物を焼結したペレット2の平均密度を理論密度の97%以上とし、かつペレット2の外径に対するジルカロイ製の被覆管5とペレット2のギャップ幅の比率(ギャップ/ペレット外径)は0.018 以上としている。
【0024】
ペレット2を高密度化した場合、燃焼初期に発生するペレット2の焼きしまりが少なくなり、ペレット2のスエリングによるペレット2と被覆管5のギャップの閉塞が低燃焼度領域で発生するため、ペレット2と被覆管5の機械的相互作用が増大する傾向がある。ペレット2の密度が増大するにつれてペレット2と被覆管5の機械的相互作用が増大し、出力上昇時に被覆管5に発生する応力が増加する。
【0025】
発生応力を従来と同等に維持するためには、図1に示すように高密度化と共にペレットと被覆管とのギャップを増やし、ペレット2と被覆管5の機械的相互作用を緩和する必要がある。図1から明らかなように、機械的健全性の観点からペレット2の密度を97%以上とした場合には、ギャップ/ペレット外径を0.018 以上とする必要があることが分かる。但し、ペレット2と被覆管5のギャップの拡大は、当然核分裂性物質装荷量を低下させることになる。
【0026】
このペレット2と被覆管5とのギャップ増加とペレット2の高密度化による燃料要素1の内圧への影響は、次の2つの効果が相殺し、結果として図2に示すように燃料要素1の内圧は増加することになる。2つの効果とは、熱機械的健全性維持のためのペレット2と被覆管5との間のギャップの増加によるギャップ熱伝達率の低下→ペレット2の温度の上昇→核分裂生成ガス放出量の増加→燃料要素1の内圧の増加の効果、およびペレット2の高密度化によるペレット2の熱伝導度の改善→ペレット2の温度の低下→核分裂生成ガス放出量の低減→燃料要素1の内圧の低下の効果である。
【0027】
この燃料要素1の内圧の増加を抑制するための最も効果的な方法は、ガスプレナム6の長さを長くし、ペレット2の装荷長さ、いわゆる燃料有効長を短くすることである。しかしながら、燃料有効長の短尺化も、核分裂性物質の装荷量を低下させる方向である。
【0028】
すなわち、ペレット2の高密度化は核分裂性物質の装荷量を増加させるが、熱機械的健全性を維持するためのギャップの拡大や燃料有効長の短尺化は核分裂性物質の装荷量を低下させることになる。これらの核分裂性物質装荷量への影響について、ペレット2の密度に対する核分裂性物質装荷量変化率を図3に示す。
【0029】
高密度化自体による核分裂性物質装荷量の増加、発生応力を低減するためのギャップ増加による核分裂性物質装荷量の低下、内圧抑制のための燃料有効長の短尺化による核分裂性物質装荷量の低下を総合し、ペレット2の密度に対する核分裂性物質装荷量を図4に示す。
【0030】
図4に示すように核分裂性物質装荷量は、ペレット2の密度98%〜99%付近で最大となり、97%以上とすることにより従来に比べて核分裂性物質装荷量を増やすことができ、経済性を高めることができる。
【0031】
また、ペレット2を製造するための酸化物粉末に、50wt%より多く80wt%以下であるSiO2 と、残部のAl2 3 とからなる焼結剤を混合し、その含有割合を酸化物粉末と焼結剤との合計量を基準として約10〜500ppmとすることにより、結晶粒径を大きくし、FPガス放出量を低減できる。
【0032】
さらに、前記高密度化したペレットに本発明を用いることにより、燃料要素1の内圧の低減が図れるため、燃料有効長の短尺化を緩和でき、かつ焼結剤の含有割合を500ppm以下とすることで核分裂性物質装荷量を有意に低減することがないため、より経済性の高い燃料要素を提供することができる。
【0033】
上記実施の形態で得られた燃料要素を、例えば図5(b)に示した燃料集合体11における燃料要素1の全部または一部に組み込み上下部タイプレート9,10で固定して燃料集合体を構成する。これにより燃料要素の熱機械的健全性を維持しながら経済性の高い燃料集合体を提供することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、ウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物またはプルトニウムウラン混合酸化物を焼結したペレットの理論密度を97%以上とし、かつギャップ/ペレットの外径を0.018 以上とすることによって燃料要素の健全性を維持しつつ、かつ最も経済性の高い燃料要素および燃料集合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料要素におけるペレットと被覆管のギャップに対するペレット密度との関係を説明するための線図。
【図2】同じく、燃料要素の内圧とペレット密度との関係を示す線図。
【図3】同じく、核分裂性物質装荷量変化率とペレット密度との関係を示す線図。
【図4】同じく、核分裂性物質装荷量とペレット密度との関係を示す曲線図。
【図5】(a)は従来例と本発明に係る燃料要素を説明するための一部切欠いて示す斜視図、(b)は従来例と本発明に係る燃料集合体を説明するための一部欠いて示す斜視図。
【符号の説明】
1…燃料要素、2…ペレット、3…上部端栓、4…下部端栓、5…被覆管、6…ガスプレナム、7…スプリング、8…押え板、9…上部タイプレート、10…下部タイプレート、11…燃料集合体、12…スペーサ、13…外部スプリング、14…ハンドル、15…コーナポスト、16…グリップ、17…チャンネルボックス。

Claims (3)

  1. ウラン酸化物、ガドリニア混合ウラン酸化物、またはプルトニウムウラン混合酸化物を焼結して形成した酸化物焼結ペレットをジルカロイ製の被覆管内に封入した燃料要素において、
    前記ペレットは酸化物結晶粒子とガラス状または結晶性のアルミナシリケート析出相からなり、前記アルミナシリケート析出相が 50wt %より多く 80wt %以下であるSiO 2 と、残部のAl 2 3 とからなる平均組成を有するもので、その量が前記ペレットの全重量を基準として約 10 500ppm であるとともに、前記ペレットの平均密度を理論密度の97% 99 とし、かつ前記ペレットの外径に対する前記被覆管と前記ペレットのギャップ幅の比率(ギャップ/ペレットの外径)を0.018 0.0225とすることを特徴とする燃料要素。
  2. 前記ペレットの平均密度理論密度の98%〜99%とし、かつ、前記ギャップ幅の比率を 0.02 0.0225 とすることを特徴とする請求項1記載の燃料要素。
  3. 複数本の燃料要素をスペーサを介して整列配置し、その上下両端部を上下部タイプレートで固定し、チャンネルボックス内に組み込んでなる燃料集合体において、前記燃料要素の少なくとも一部に請求項1または2記載の燃料要素を前記上下部タイプレートに固定して組み込んでなることを特徴とする燃料集合体。
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