JP4259159B2 - 成形金型およびそれを用いた弾性ロールの製法ならびにそれによって得られた弾性ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯材の外周に沿って弾性層を成形するために用いられる成形金型およびそれを用いた弾性ロールの製法ならびにそれによって得られた弾性ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、複写機,プリンター等の電子写真装置には、帯電ロール等の弾性ロールが用いられている。そして、その弾性ロールとして、例えば、芯材(中空または中実の芯金等からなる)の外周に沿ってスポンジ層,中間層,表層がこの順に積層された帯電ロールを作製する場合、つぎのようにして行われる。すなわち、成形型として円筒型を準備し、その円筒型の中空部に、中間層となる円筒状の弾性チューブを挿入した後、スポンジ層用のスポンジ材料をそれ自体の外周面に付着させた芯材を、上記弾性チューブの中空部に挿入し、その状態で、加熱成形してスポンジ材料を発泡させるとともに全体を一体化する。そして、脱型後、表層形成材料をコートし、上記帯電ロールを得ている。
【0003】
ところで、上記成形に用いられる円筒型の内周面には、成形時のエア抜き用の通路を確保するために、低番手ショットブラスト処理が施されている。これにより、上記円筒型の内周面は、算術平均粗さ(Ra)が1.5〜2.5μmの範囲内、最大高さ(Rmax )が15〜25μmの範囲内、十点平均粗さ(Rz)が15〜20μmの範囲内の凹凸部に処理され、その凹凸部により、エア抜き用の通路が確保されるようになっている。すなわち、成形時には、弾性チューブの外周面は、成形時の膨張により、上記成形金型の内周面のうち上記凹凸部のうちの凸部には接触するものの、凹部の内側全体にわたっては侵入せず、凹部開口部で僅かに侵入する程度となる。そして、凹部のうち弾性チューブが侵入していない空間が連なって上記エア抜き用の通路となる。
【0004】
このため、脱型後の弾性チューブ(中間層)の表面では、上記凹部に対応する部分が軽度に転写され、低突出量の突出部となる。そして、上記表層を形成しても、その突出部は表層の表面に現れ、得られた帯電ロールの表面は、僅かな凹凸部に形成されている。この帯電ロールの表面のSEM写真を図4に示す。
【0005】
なお、円筒型の内周面に対するショットブラスト処理については、特許文献1に、転写面(スポンジゴムロールの表面)を凹凸面にすることを目的に施している旨が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−285702号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記低番手ショットブラスト処理された円筒型を用いると、得られた帯電ロールの表面の凹凸部の凸部は、点在した状態になる。このため、感光ドラムとの接触度合が軸方向に沿って不均一となる。そして、カートリッジライフ中半以降、帯電ロールの表面の凹凸部の凹部にトナーが徐々に堆積するようになり、いわば堆積したトナーが点在した状態となって、帯電ロールの表面が不均一に汚れた状態になる。このような帯電ロールの表面の不均一な汚れは、画像に悪影響を及ぼす。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ表面が不均一に汚れ難い弾性ロールを作製するための成形金型およびそれを用いた弾性ロールの製法ならびにそれによって得られた弾性ロールの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、芯材の外周にスポンジ層を介して弾性チューブからなる弾性層を成形するために用いられる円筒状の成形金型であって、上記成形時に上記弾性チューブの外周面が接触する上記円筒状の成形金型の内周面に、軸方向に延びる複数の条溝が周方向に所定のピッチで形成され、その条溝の幅が150〜200μmの範囲内、条溝の深さが5〜80μmの範囲内、条溝の形成ピッチが350〜400μmの範囲内に設定され、上記弾性チューブの外周面と上記条溝の内側面との間の空間が成形時のエア抜き用の通路となる成形金型を第1の要旨とする。
【0010】
また、上記成形金型の中空部に、円筒状の弾性チューブを挿入した後、その弾性チューブの中空部に、それ自体の外周面にスポンジ材料を付着させた芯材を挿入し、その状態で加熱成形してスポンジ材料を発泡させることにより、上記芯材の外周面に上記スポンジ材料からなるスポンジ層を一体形成するとともに、このスポンジ層の外周面に上記弾性チューブからなる弾性層を、成形金型の内周面を型面として一体形成する際に、上記成形金型の内周面に形成された条溝に対応する上記弾性チューブの外周面部分は、上記条溝を埋めることなく条溝の底面との間に空間を残し、その空間をエア抜き用の通路とする弾性ロールの製法を第2の要旨とし、この製法によって得られ、成形金型の内周面に形成された条溝に対応する部分が、軸方向に延びる低突出量の突条となっており、その突条の表面が、平滑になっている弾性ロールを第3の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明の成形金型は、内周面に、軸方向に延びる複数の条溝が周方向に所定のピッチで形成され、その条溝の幅が150〜200μmの範囲内、条溝の深さが5〜80μmの範囲内、条溝の形成ピッチが350〜400μmの範囲内に設定されている。そして、成形時に成形金型の内周面と弾性チューブからなる弾性層の間に存在するエアは、上記条溝を通って抜けるようになる。このため、成形時のエアを抜くための低番手ショットブラスト処理が不要となる。したがって、本発明の成形金型を用いて弾性ロールを作製すると、隣り合う上記条溝と条溝の間の部分に対応する弾性ロールの表面部分は、平滑になる。また、上記条溝に対応する弾性ロールの表面部分は、軸方向に延びる低突出量の突条となり、しかも、その表面は平滑になる。その結果、得られた弾性ロールは、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ、表面が平滑であるため、弾性ロール表面へのトナー付着が均一なものとなる。
【0012】
また、上記成形金型を用いた弾性ロールの製法では、上記成形金型の中空部に、円筒状の弾性チューブを挿入した後、その弾性チューブの中空部に、それ自体の外周面に弾性材料を付着させた芯材を挿入した状態で加熱成形する。このため、弾性チューブの外周面は、成形時の膨張により、上記成形金型の内周面のうち隣り合う上記条溝と条溝の間の部分には接触するものの、条溝内全体にわたっては侵入せず、条溝開口部で僅かに侵入する程度となる。そして、条溝のうち弾性チューブが侵入していない空間がエア抜き用の通路となる。したがって、上述したように、得られた弾性ロールは、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ弾性ロール表面へのトナー付着が均一なものとなる。
【0013】
そして、上記製法によって得られた弾性ロールは、上述したように、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ弾性ロール表面へのトナー付着が均一なものとなっている。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の成形金型の一実施の形態を示している。この成形金型Aは、芯材4(図2参照)の外周に沿って弾性層を成形するために用いられる円筒状の成形金型Aであり、その成形金型Aの内周面には、成形時に成形金型Aの内周面と弾性層の間に存在するエアを抜くために、軸方向に延びる複数の条溝1が周方向に所定のピッチで形成されている。そして、上記条溝1は、幅が150〜200μmの範囲内、深さが5〜80μmの範囲内、ピッチが350〜400μmの範囲内に設定されている。また、上記条溝1の断面形状は、特に限定されるものではないが、通常、V字状またはU字状である(図では、V字状)。なお、図1では、理解を助けるために、上記条溝1を大きく図示するとともに、条溝1の全体の本数を少なく図示している。
【0016】
より詳しく説明すると、上記成形金型Aの形成材料としては、通常使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、S55C等の炭素鋼材,SACM645等のアルミニウムクロムモリブデン鋼材,A5056等のアルミニウム合金,アルミニウム等があげられる。
【0017】
上記成形金型Aの作製は、例えば、円柱材またはパイプ材を適切な長さに切断し、内周中空部を形成するためのドリルによる穿孔や旋盤による切削、内周面の平滑性を確保するための研磨やホーニング等の機械加工を施した後、上記条溝1の形成のために、ブローチ加工することが行われる。必要に応じて、耐摩耗性を高めるための焼入れ、離型性向上のために施すクロムめっき等のめっき加工等を施してもよい。
【0018】
このように、上記成形金型Aの内周面は、機械加工により形成され、粗面化処理が施されないため、その内周面の表面粗さは、小さくなっており、算術平均粗さ(Ra)が、0.5〜0.9μmの範囲内、最大高さ(Rmax )が、5〜9μmの範囲内、十点平均粗さ(Rz)が、4〜8μmの範囲内となっている。ここで、上記算術平均粗さ(Ra),最大高さ(Rmax )および十点平均粗さ(Rz)は、1982年JIS B 0601によるものである。
【0019】
そして、上記成形金型Aは、従来と同様にして、弾性ロールを成形する際に用いられる。すなわち、前記従来の技術で説明したように、例えば、弾性ロールとして、芯材4(図2参照)の外周に沿ってスポンジ層,中間層,表層がこの順に積層された帯電ロールを作製する場合には、図2に示すように、上記成形金型Aの中空部に、中間層となる円筒状の弾性チューブ2を挿入した後、スポンジ層のスポンジ材料3を外周に付着させた芯材4を、上記弾性チューブ2の中空部に挿入し、その状態で、加熱成形してスポンジ材料3を発泡させる。これにより、芯材4の外周面にスポンジ層が一体形成され、このスポンジ層の外周面に中間層(弾性チューブ2)が一体形成される。そして、脱型後、脱型したロール体の中間層(弾性チューブ2)の表面に表層形成材料をコートし、上記帯電ロールを得る。
【0020】
上記加熱成形時には、弾性チューブ2の外周面は、成形時の膨張により、上記成形金型Aの内周面のうち隣り合う上記条溝1と条溝1の間の部分1a(図2では、下半分に図示)には接触するものの、その弾性チューブ2は、液体のように流動性が高いものではないため、条溝1(図2では、上半分に図示)の内側全体にわたっては侵入せず、条溝1の開口部で僅かに侵入する程度となる。そして、条溝1のうち弾性チューブ2が侵入していない空間がエア抜き用の通路となる。
【0021】
このため、上記脱型後は、中間層(弾性チューブ2)の表面では、上記条溝1に対応する部分が軽度に転写され、低突出量の突条となっている。そして、上記表層を形成しても、その突条は表層の表面に現れ、得られた帯電ロールの表面には、軸方向に延びる複数の突条が周方向に、上記条溝1と同様のピッチで形成されている。また、上記中間層(弾性チューブ2)の表面に形成された低突出量の突条の表面は、上記成形金型Aの内周面の条溝1の内側面に接触していないため、平滑になっている。このため、その表面に形成される表層の表面も、平滑になっている。
【0022】
さらに、上記加熱成形時に弾性チューブ2の外周面が接触する、成形金型Aの内周面のうち隣り合う上記条溝1と条溝1の間の部分1aは、表面が粗面化されていないため、平滑になっている。そして、その条溝1と条溝1の間の平滑部分は、脱型後の中間層(弾性チューブ2)の表面において、隣り合う上記突条と突条の間となるため、その突条間の部分も平滑になっている。このため、その表面に形成される表層の表面も、平滑になっている。
【0023】
このように、得られた帯電ロールの表面には、上記低突出量の突条が軸方向に延びて形成され、しかも、その表面が平滑になっている。さらに、隣り合う上記突条と突条の間も平滑になっている。この帯電ロールの表面のSEM写真を図3に示す。このため、感光ドラムとの接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ、表面が平滑であるため、帯電ロール表面へのトナー等の付着が均一なものとなる。
【0024】
また、本発明の成形金型の他の実施の形態として、上記実施の形態における成形金型Aの内周面に、高番手ショットブラスト処理を施してもよい。この場合、用いるショットの平均粒径は、0.105〜0.210mm(80〜120番手)とする。これにより、成形金型Aの内周面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)が、0.9〜1.3μmの範囲内、最大高さ(Rmax )が、9〜13μmの範囲内、十点平均粗さ(Rz)が、8〜13μmの範囲内となっている。
【0025】
この成形金型Aを用いると、内周面の隣り合う上記条溝1と条溝1の間の部分1aが、高番手ショットブラスト処理により、粗面化されるため、成形時のエア抜けが向上し、また、脱型性も向上する。しかしながら、得られる弾性ロールの表面の耐汚れ性は、少し劣化する。
【0026】
なお、上記各実施の形態において、弾性ロールとして帯電ロールを作製する場合、各層の形成材料は、通常用いられているものであれば、特に限定されるものではない。すなわち、スポンジ層の形成材料としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)やウレタンゴム等があげられる。また、中間層(弾性チューブ2)の形成材料としては、例えば、スポンジ層の形成材料が上記EPDMの場合には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が用いられたり、スポンジ層の形成材料が上記ウレタンゴムの場合には、ヒドリンゴムが用いられたりする。さらに、表層の形成材料としては、例えば、フッ素樹脂,アクリル樹脂,ナイロン樹脂,ウレタン樹脂等があげられる。
【0027】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0028】
【実施例1】
円筒状の成形金型の内周面に、軸方向に延びる複数の条溝を形成した。その成形金型の材料は、SACM645とした。成形金型の大きさは、外径を20mm、内径を12mm、長さを230mmとした。条溝の大きさは、幅を150μm、深さを5μm、ピッチを350μmに設定した。隣り合う条溝と条溝の間の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を0.50μm、最大高さ(Rmax )を5.00μm、十点平均粗さ(Rz)を4.00μmにした。
【0029】
【実施例2】
条溝の大きさは、幅を175μm、深さを45μm、ピッチを375μmに設定した。隣り合う条溝と条溝の間の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を0.70μm、最大高さ(Rmax )を7.00μm、十点平均粗さ(Rz)を6.00μmにした。それ以外は、実施例1と同様とした。
【0030】
【実施例3】
条溝の大きさは、幅を200μm、深さを80μm、ピッチを400μmに設定した。隣り合う条溝と条溝の間の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を0.90μm、最大高さ(Rmax )を9.00μm、十点平均粗さ(Rz)を8.00μmにした。それ以外は、実施例1と同様とした。
【0031】
【実施例4】
上記実施例3の成形金型の内周面に高番手ショットブラスト処理を施した。この処理に用いたショットは120番手(平均粒径0.115mm)であった。隣り合う条溝と条溝の間の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を1.30μm、最大高さ(Rmax )を13.00μm、十点平均粗さ(Rz)を13.00μmにした。それ以外は、実施例3と同様とした。
【0032】
【比較例1】
円筒状の成形金型の内周面に、低番手ショットブラスト処理を施した。この処理に用いたショットは24番手(平均粒径0.775mm)であった。内周面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を1.99μm、最大高さ(Rmax )を23.69μm、十点平均粗さ(Rz)を15.00μmにした。なお、成形金型の材料および大きさは、上記各実施例と同様とした。
【0033】
【比較例2】
円筒状の成形金型の内周面に、高番手ショットブラスト処理を施した。この処理に用いたショットは120番手(平均粒径0.115mm)であった。内周面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を0.80μm、最大高さ(Rmax )を7.50μm、十点平均粗さ(Rz)を5.94μmにした。それ以外は、比較例1と同様とした。
【0034】
〔成形〕
このようにして得られた実施例1〜4および比較例1,2の各成形金型を用い、上記実施の形態と同様にして、帯電ロールを作製した。スポンジ層のスポンジ材料としてEPDMを用い、中間層となる弾性チューブの形成材料としてNBRを用いた。成形は、オーブンにて、180℃×35分行った。また、脱型後にコートする表層形成材料としてフッ素系アクリル樹脂を用いた。
【0035】
そして、得られた各帯電ロールについて、下記のようにして、成形性,耐久汚れをそれぞれ評価した。そして、これらの結果を、下記の表1に併せて示した。なお、比較例2の成形金型(高番手ショットブラスト処理)については、成形時のエア抜けが不完全となり、作製された帯電ロールが品質基準を満たすものではなかったため、上記耐久汚れについては評価していない。
【0036】
〔成形性〕
成形時におけるエア抜けの程度を評価した。この評価は、脱型後の弾性チューブ(中間層)の表面におけるエア溜まりの跡の有無により評価した。すなわち、成形時におけるエア抜けが完全に行われ、エア溜まりの跡が全くないものを◎、成形時にエア抜けが略完全に行われ、エア溜まりの跡が僅かに存在するが、実用上、問題がないものを○、成形時のエア抜けが不完全であり、エア溜まりの跡が多数存在し、実用できないものを×として評価した。
【0037】
〔耐久汚れ〕
得られた各帯電ロールをレーザービームプリンタ(キャノン社製、LJ4050)に組み込み、トナーがなくなるまで(10000枚)画像出しを行った。その後、各帯電ロールを上記複写機から取り出し、その表面のトナーによる汚れを、目視により判定した。その結果、トナーの不均一な堆積が確認できないものを◎、トナーの不均一な堆積が僅かに確認できるが、画像に濃度むらがなかったものを○、トナーの堆積部分が点在し、画像に僅かの濃度むらが認められるものを△として評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
この表1の結果から、実施例1〜4の成形金型(条溝形成)を用いると、作製される帯電ロールは、表面が不均一に汚れ難く、画像の濃度むらを防止できることがわかる。また、実施例4(条溝形成+高番手ショットブラスト処理)と比較例2(高番手ショットブラスト処理)とを比較すると、高番手ショットブラスト処理のみでは、エア抜けが不完全となるため、成形金型として使用できなかったが、条溝形成と組み合わせると、エア抜けが完全となり、高番手ショットブラスト処理しても成形金型として使用できることがわかる。さらに、実施例1〜3(条溝形成)と実施例4(条溝形成+高番手ショットブラスト処理)とを比較すると、高番手ショットブラスト処理を組み合わせることにより、エア抜けが向上することがわかる。また、この場合、脱型性も向上した。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明の成形金型によれば、内周面に形成した、軸方向に延びる複数の条溝により、成形時のエアが抜けるため、そのエアを抜くための低番手ショットブラスト処理が不要となる。このため、本発明の成形金型を用いて弾性ロールを作製すると、隣り合う上記条溝と条溝の間の部分に対応する弾性ロールの表面部分は、平滑になる。また、上記条溝に対応する弾性ロールの表面部分は、軸方向に延びる低突出量の突条となり、しかも、その表面は平滑になる。その結果、得られた弾性ロールは、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ表面が不均一に汚れ難いものとなる。
【0041】
特に、上記円筒状の成形金型の内周面が、高番手ショットブラスト処理されている場合には、成形時のエア抜けが向上し、また、脱型性も向上する。
【0042】
そして、隣り合う上記条溝と条溝の間の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)0.50〜1.30μmの範囲内、最大高さ(Rmax )5.00〜13.00μmの範囲内、十点平均粗さ(Rz)4.00〜13.00μmの範囲内に設定されている場合には、その部分に対応する弾性ロールの表面部分が平滑になる。
【0043】
また、上記成形金型を用いた弾性ロールの製法では、上記成形金型の中空部に、円筒状の弾性チューブを挿入した後、その弾性チューブの中空部に、それ自体の外周面にスポンジ材料を付着させた芯材を挿入した状態で加熱成形する。このため、弾性チューブの外周面は、成形時の膨張により、上記成形金型の内周面のうち隣り合う上記条溝と条溝の間の部分には接触するものの、条溝内全体にわたっては侵入せず、条溝開口部で僅かに侵入する程度となる。そして、条溝のうち弾性チューブが侵入していない空間がエア抜き用の通路となる。したがって、上述したように、得られた弾性ロールは、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ表面が不均一に汚れ難いものとなる。
【0044】
そして、上記製法によって得られた弾性ロールは、上述したように、感光ドラム等の被接触体との接触度合が軸方向に沿って均一になり、かつ表面が不均一に汚れ難いものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形金型の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】上記成形金型を用いた弾性ロール製法を示す説明図である。
【図3】上記製法により得られた弾性ロールの表面を示すSEM写真である。
【図4】従来の成形金型を用いて得られた弾性ロールの表面を示すSEM写真である。
【符号の説明】
A 成形金型
1 条溝
Claims (5)
- 芯材の外周にスポンジ層を介して弾性チューブからなる弾性層を成形するために用いられる円筒状の成形金型であって、上記成形時に上記弾性チューブの外周面が接触する上記円筒状の成形金型の内周面に、軸方向に延びる複数の条溝が周方向に所定のピッチで形成され、その条溝の幅が150〜200μmの範囲内、条溝の深さが5〜80μmの範囲内、条溝の形成ピッチが350〜400μmの範囲内に設定され、上記弾性チューブの外周面と上記条溝の内側面との間の空間が成形時のエア抜き用の通路となることを特徴とする成形金型。
- 上記円筒状の成形金型の内周面が、高番手ショットブラスト処理(用いるショットの平均粒径が0.105〜0.210mm)されている請求項1記載の成形金型。
- 隣り合う上記条溝と条溝の間の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)0.50〜1.30μmの範囲内、最大高さ(Rmax )5.00〜13.00μmの範囲内、十点平均粗さ(Rz)4.00〜13.00μmの範囲内に設定されている請求項1または2記載の成形金型。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形金型の中空部に、円筒状の弾性チューブを挿入した後、その弾性チューブの中空部に、それ自体の外周面にスポンジ材料を付着させた芯材を挿入し、その状態で加熱成形してスポンジ材料を発泡させることにより、上記芯材の外周面に上記スポンジ材料からなるスポンジ層を一体形成するとともに、このスポンジ層の外周面に上記弾性チューブからなる弾性層を、成形金型の内周面を型面として一体形成する際に、上記成形金型の内周面に形成された条溝に対応する上記弾性チューブの外周面部分は、上記条溝を埋めることなく条溝の底面との間に空間を残し、その空間をエア抜き用の通路とすることを特徴とする弾性ロールの製法。
- 請求項4に記載の製法によって得られ、成形金型の内周面に形成された条溝に対応する部分が、軸方向に延びる低突出量の突条となっており、その突条の表面が、平滑になっていることを特徴とする弾性ロール。
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