以下、この発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を用いて、この発明を詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における誘導加熱調理器の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この実施の形態1における誘導加熱調理器は、交流電源1に接続されており、交流電源1から供給される電力は直流電源回路2で直流電力に変換される。直流電源回路2は、交流電力を整流する整流ダイオードブリッジ3とリアクトル4および平滑コンデンサ5から構成されている。そして直流電源回路2へ入力される入力電力は、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7によって検出される。直流電源回路2で直流電力に変換された電力はインバータ回路8に供給される。
インバータ回路8は、直流電源回路2の正負母線間に直列に接続された2つのスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子とそれぞれ逆並列に接続されたダイオードによって形成されるアーム2組(以下、2組のアームを、U相アーム9とV相アーム10と呼ぶ。また、各アーム9,10の正母線側スイッチング素子を上スイッチ、負母線側スイッチング素子を下スイッチと呼ぶ。)から形成されている。U相アーム9は上スイッチ11、下スイッチ12、および各スイッチ11,12と逆並列に接続された上ダイオード13、下ダイオード14から構成され、U相アーム出力点(上スイッチと下スイッチの接続点)にスイッチング損失を低減するためのスナバコンデンサ15が接続されている。V相アーム10も同様に、上スイッチ16、下スイッチ17と、各スイッチ16,17と逆並列に接続された上ダイオード18、下ダイオード19から構成され、V相アーム出力点にスナバコンデンサ20が接続されている。
U相アーム9を構成する上スイッチ11と下スイッチ12は、U相アーム駆動回路21から出力される駆動信号によりオンオフ駆動され、V相アーム10を構成する上スイッチ16と下スイッチ17はV相アーム駆動回路22から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。U相アーム駆動回路21はU相アーム9の上スイッチ11をオンさせている間は下スイッチ12をオフに、上スイッチ11をオフさせている間は下スイッチ12をオンすると言うように、交互にオンオフする駆動信号を出力するものであり、V相アーム駆動回路22も同様に、V相アーム10の上スイッチ16と下スイッチ17を交互にオンオフする駆動信号を出力するものである。
インバータ回路8における2つのアーム9,10の出力点間には、負荷回路23が接続され、負荷回路23に流れる電流は負荷回路電流検出手段24により検出される。負荷回路23は加熱コイル25と共振コンデンサ26からなる直列共振回路であり、その共振周波数よりも高い周波数でインバータ回路8は駆動される。火力設定手段27において使用者が設定した火力指示に基づき、インバータ制御手段としての加熱出力制御手段28が入力電流検出手段6、入力電圧検出手段7、負荷回路電流検出手段24からの検出値を使用して、U相アーム駆動回路21およびV相アーム駆動回路22の両方から高周波駆動信号を出力させて、あるいは一方のアームを固定駆動とし、もう一方のアームを高周波駆動させて加熱出力を制御する。
負荷回路23に印加される電圧は、U相アーム出力点に発生する電圧とV相アーム出力点に発生する電圧の差であり、その電圧により負荷回路23の加熱コイル25に交流電流が流れ、加熱コイル25上に載置されて電磁結合した鍋等を誘導加熱する。この実施の形態1は、インバータ回路8の駆動周期を固定(固定周波数)として、U相アーム9とV相アーム10は駆動周期の半周期ずれた状態で駆動されており、アームを構成する上スイッチと下スイッチの通電率を調整(上スイッチ通電率をデッドタイムを除き50%以下の範囲)することにより、U相アーム出力点およびV相アーム出力点に発生する高周波交流電圧を制御するものである(以下、両アームを高周波で通電率制御駆動する動作をフルブリッジ通電率駆動と呼ぶ)。あるいは、一方のアーム(例えばV相アーム10)を固定駆動として出力点電位を固定し、もう一方のアーム(U相アーム9)を高周波駆動で通電率制御することにより、U相アーム出力点とV相アーム出力点間に発生する高周波交流電圧を制御するものである(以下、一方のアームを固定駆動し、もう一方のアームを高周波で通電率制御駆動する動作をハーフブリッジ通電率駆動と呼ぶ)。
誘導加熱出力は一定の周波数で駆動する場合には加熱コイル25に流れる電流の増減により加熱出力の大きさも増減するが、加熱コイル25に流れる高周波負荷電流の大きさは、負荷回路23に印加される高周波電圧実効値の大きさに応じて増減する。図2に、フルブリッジ通電率駆動とハーフブリッジ通電率駆動における負荷回路23への印加電圧波形を示し、それぞれの場合に発生する電圧実効値について説明する。
図2(a)はフルブリッジ通電率駆動における負荷回路への印加電圧波形で、図においてTは高周波駆動周期、Δtは各アームの上スイッチ通電時間(駆動周期当たり)、Eは直流電源回路2の正負母線間電圧である。期間2−(1)(Δt)ではU相アーム上スイッチ11がオン、V相アーム下スイッチ17がオンしている期間で、負荷回路23には電圧Eが印加され、期間2−(3)(Δt)ではU相アーム下スイッチ12がオン、V相アーム上スイッチ16がオンしている期間で、負荷回路23には電圧(−E)が印加されており、期間2−(2)と期間2−(4)はU相アーム9、V相アーム10ともに下スイッチがオンしている期間で、負荷回路23に電圧は印加されていない(負荷回路23の印加電圧はV相アーム出力点電位を基準として、U相アーム出力点電位を示す)。従って負荷回路23に印加されている電圧実効値(Vfb)は次の式(1)となる。
となる。通電率を最大(50%)にすると、Δt=T/2なので次の式(2)となり、フルブリッジでは最大E(正負母線間電圧)の電圧印加が可能である。
図2(b)はハーフブリッジ通電率駆動(U相アーム9を高周波駆動、V相アーム10を固定駆動とする)における負荷回路23への印加電圧波形で、図においてΔTはU相アーム上スイッチ通電時間(駆動周期当たり)、Vavは印加電圧の直流成分である。印加電圧直流成分VavはU相アーム9の通電率(ΔT/T)に比例し、Vav=E・ΔT/Tである。
期間2−(5)(ΔT/T)では、U相アーム上スイッチ11がオン、V相アーム下スイッチ17がオンしている状態で、負荷回路23に印加されている高周波(交流)電圧成分は(E−Vav)=(E・(T−ΔT)/T)であり、期間2−(6)((T−ΔT)/T)では、U相アーム9、V相アーム10ともに下スイッチがオンしている状態で、負荷回路23に印加されている高周波(交流)電圧成分は(−Vav)=(−E・ΔT/T)である。従って負荷回路23に印加されている電圧実効値(Vhb)は、次の式(3)となる。
通電率を最大(50%)にすると、ΔT=T/2なので、次の式(4)となりハーフブリッジでは最大E/2の印加電圧となる。
フルブリッジ通電率駆動の負荷回路印加電圧(Vfb)と、ハーフブリッジ通電率駆動の負荷回路印加電圧(Vhb)が同等になる通電率の関係は、式(1)と式(3)より次の式(5)となる。
ここで、次の(6)式が成り立つため、図3に示すようにフルブリッジ通電率駆動ではフルブリッジ通電率をハーフブリッジ通電率の1/4〜1/2倍にすれば負荷回路23に同等の印加電圧を加えることができる。逆にハーフブリッジ通電率制御は、フルブリッジ通電率制御における通電率の2〜4倍の通電率とすれば負荷回路23に同等の印加電圧を加えることができる。
Δt/ΔT=(1−ΔT/T)/2 … (6)
次に、インバータ回路8の各スイッチング素子のオンオフ状態や、負荷回路23に印加される電圧や負荷回路23に流れる電流について、図を用いて説明する。最初に、図4と図5a、図5bは、フルブリッジ駆動で上スイッチ通電率を略50%とした最大出力の動作状態の例で、図4には各スイッチング素子のオンオフ状態と、負荷回路印加電圧、負荷回路電流のタイムチャートを示しており、図5a、図5bには各スイッチング素子のスイッチングの様子と、インバータ回路8や負荷回路23に流れる電流の様子をモードに分けて示している。
図4に示したように、U相アーム9およびV相アーム10の上下スイッチの駆動状態は、それぞれ略50%の通電率であり、U相アーム9の上スイッチ11とV相アーム10の下スイッチ17はほぼ同時にオンオフ駆動され、U相アーム9の下スイッチ12とV相アーム10の上スイッチ16もほぼ同時にオンオフ駆動される。インバータ回路8の駆動周波数は、負荷回路23の共振周波数よりも高い周波数なので、負荷回路23は誘導性負荷となって負荷電流は負荷回路23に印加される電圧に対して遅れ位相となる。期間4aの状態は、U相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、U相アーム9からV相アーム10の方向に負荷電流が流れている状態で、このとき負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されており、図5aにおいてモード5aの状態である。
期間4bの状態は、U相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がターンオフした各アームにおけるデッドタイムの状態で、図5におけるモード5bの状態である。負荷回路23に流れる電流は、U相アーム9のスナバコンデンサ15およびV相アーム10のスナバコンデンサ20を経由して流れ、ターンオフするスイッチング素子11および17に印加される電圧の急増を抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。さらに負荷電流によりU相アーム9のスナバコンデンサ15が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位と同電位以下になると下ダイオード14が導通し、V相アームスナバコンデンサ20が充電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位と同電位以上になると上ダイオード18が導通する(図5aのモード5b1)。
次に期間4cは、U相アーム下スイッチ12とV相アーム上スイッチ16をターンオンした状態で、図5aのモード5cの状態である。ターンオンするスイッチング素子は、それぞれ逆並列に接続されたダイオードが導通している状態でターンオンするので零電圧スイッチングとなり、損失が小さい。期間4dの状態は、負荷電流が転流してV相アーム10からU相アーム9の方向に負荷電流が流れている状態で、図5bのモード5dの状態である。この状態からU相アーム下スイッチ12とV相アーム上スイッチ16がターンオフしたデッドタイムの状態が期間4eであり、図5bのモード5eの状態である。この状態ではモード5bの状態と同様に負荷電流はスナバコンデンサ15、20を経由して流れ、スイッチング素子ターンオフ時の電圧変化を緩和してターンオフ損失を低減している。
スナバコンデンサ15の充電によりU相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に到達するとU相アーム上ダイオード13が導通する。そして、スナバコンデンサ20が放電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達するとV相アーム下ダイオード19が導通する(図5bのモード5e1)が、この状態からU相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17をターンオンすると、期間4fの状態となり、図5bのモード5fの状態となる。この場合のスイッチング素子11、17のターンオンも零電圧スイッチングとなり低損失である。
次に加熱出力を抑制した場合のフルブリッジ通電率駆動の動作について図6aと図7a〜7fを用いて説明する。図6aは各スイッチング素子のオンオフ状態と、負荷回路印加電圧、負荷回路電流のタイムチャートであり、図7a〜7fには各スイッチング素子のスイッチングの様子と、インバータ回路8や負荷回路23に流れる電流の様子をモードに分けて示している。各アームの上スイッチ通電率を50%より小さくして加熱出力を抑制している。
図6aの期間6aおよび図7a〜7fのモード7aの状態は、U相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、U相アーム9からV相アーム10の方向に負荷電流が流れている状態(図7aのモード7a)で、このとき負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されている。その状態から、U相アーム上スイッチ11がターンオフしたのが図6aの期間6bおよび図7a〜7fのモード7bの状態で、負荷回路23に流れる電流は、U相アーム9のスナバコンデンサ15およびV相アーム10の下スイッチ17を経由して流れ、ターンオフするスイッチング素子11に印加される電圧の急増をスナバコンデンサにより抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。さらに負荷電流によりU相アームスナバコンデンサ15が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達するとU相アーム下ダイオード14が導通して、U相アーム出力電位は負母線電位に固定される。このとき、U相アーム出力点もV相アーム出力点も直流電源回路2の負母線電位となり、負荷回路23に印加される電圧は0となっている。
次いでU相アーム下スイッチ12がターンオンすると、図6aの期間6cおよび図7aのモード7cの状態となる。スイッチのターンオンはダイオード14が導通していれば零電圧スイッチングとなって、損失が小さい。この状態からV相アーム下スイッチ17がターンオフすると、図6aの期間6dおよび図7bのモード7dの状態となる。このとき、負荷電流はU相アーム下ダイオード14とV相スナバコンデンサ20を経由して流れ、スナバコンデンサ20の充電によりV相アーム出力点の電位が直流電源回路2の正母線電位に到達すれば、V相アーム上ダイオード18が導通して、V相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に固定される(モード7d1)。この状態でV相アーム上スイッチ16がターンオンすると、零電圧スイッチングとなって低損失で図6aの期間6eおよび図7cのモード7eの状態に移行する。この状態では、負荷回路23への印加電圧はV相側から直流電源電圧が印加されており、負荷電流が転流してV相アーム10からU相アーム9の方向に電流が流れるようになる(期間6f、モード7f)。
次にV相アーム上スイッチ16がターンオフしたのが図6aの期間6gおよび図7dのモード7gの状態で、負荷回路23に流れる電流は、V相アーム10のスナバコンデンサ20およびU相アーム9の下スイッチ12を経由して流れ、ターンオフするスイッチング素子16に印加される電圧の急増をスナバコンデンサ20により抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。さらに負荷電流によりV相アームスナバコンデンサ20が放電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達するとV相アーム下ダイオード19が導通して、V相アーム出力電位は負母線電位に固定される。このとき、U相アーム出力点もV相アーム出力点も直流電源回路2の負母線電位となり、負荷回路23に印加される電圧は0となっている。
次に、V相アーム下スイッチ17がターンオンすると、図6の期間6hおよび図7dのモード7hの状態となる。このときのスイッチのターンオンはダイオード19が導通しているので零電圧スイッチングとなって、損失が小さい。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、図6aの期間6iおよび図7eのモード7iの状態となる。このとき、負荷電流はV相アーム下ダイオード19とU相スナバコンデンサ15を経由して流れ、スナバコンデンサ15の充電によりU相アーム9出力点の電位が直流電源回路2の正母線電位に到達すれば、U相アーム上ダイオード13が導通して、U相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に固定される(モード7i1)。この状態でU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、零電圧スイッチングとなって低損失で図6aの期間6jおよび図7fのモード7jの状態に移行する。この状態では、負荷回路23への印加電圧はU相側から直流電源電圧が印加されており、負荷電流が転流して期間6a、モード7aの状態に戻る。
加熱出力を抑制するために各アームの上スイッチ通電率を小さくした場合のインバータ回路8の各スイッチング素子のオンオフ状態や、負荷回路23に印加される電圧や負荷回路23に流れる電流を、図6bに示した。図6bの期間6d(モード7d)において負荷回路23に流れる電流が小さくなり、スナバコンデンサ20の充電電位が直流電源回路2の正母線電圧に到達する前に(モード7d1に移行せずに)V相アーム上スイッチ16がターンオンすることになる。その場合、モード7e1に示すように、スナバコンデンサ20を充電する突入電流がV相アーム上スイッチ16を介して流れる。V相アーム上スイッチ16がターンオンする際には、スナバコンデンサ15の充電電位と直流電源回路2の正母線電位との差の電圧がV相アーム上スイッチ16に印加されているので、大きなターンオン損失が発生することになる。また、期間6i(モード7i)においても負荷回路23に流れる電流が小さくなり、スナバコンデンサ15の充電電位が直流電源回路2の正母線電圧に到達する前に(モード7i1に移行せずに)U相アーム上スイッチ11がターンオンすることになる。その場合、モード7j1に示すように、スナバコンデンサ15を充電する突入電流がU相アーム上スイッチ11を介して流れ、大きなターンオン損失が発生することになる。
さらに加熱出力を小さくするために上スイッチの通電率をより小さくした場合のインバータ回路8各スイッチング素子のオンオフ状態や、負荷回路23に印加される電圧や負荷回路23に流れる電流を、図6cに示した。負荷電流が小さいため、図6cの期間6cに移行する時点では、スナバコンデンサ15の電荷が抜けきっておらず、U相アーム下スイッチ12がターンオンするとその放電電流が流れるため、大きなターンオン損失が発生する(モード7c1)。その後、U相アーム9からV相アーム10の方向に電流が流れる(モード7c)の状態から、負荷電流の再転流が発生してV相アーム10からU相アーム9の方向に電流が流れる状態となる(モード7c2)と、負荷電流はU相アーム下スイッチ12とV相アーム下ダイオード19を経由して流れる。この状態からV相アーム下スイッチ17がターンオフすると、モード7d2の状態に移行する。このとき、ターンオフするV相アーム下スイッチ17には電圧も印加されておらず、また負荷電流も流れていないのでターンオフ損失は発生しない。
次いで、V相アーム上スイッチ16がターンオンすると(期間6f)、V相アーム上スイッチ16には負荷電流が流れるとともに、スナバコンデンサ20を充電する突入電流も流れる(図7のモード7f2)。V相アームターンオン時には、V相アーム下ダイオード19が導通しており、V相アーム上スイッチ16には直流電源電圧が印加されているため、非常に大きなターンオン損失が発生する。その後、モード7fに示す負荷電流状態となる。V相アーム上スイッチ16がターンオフすると(期間6g)、負荷電流はV相スナバコンデンサ20とU相したスイッチ12を経由して流れるが、負荷電流が小さいためにV相アーム下スイッチ17がターンオンする時点ではV相スナバコンデンサ20の電荷が抜けきっていない。このため、V相アーム下スイッチ17がターンオンする際にその放電電流が流れ、大きなターンオン損失が発生する(図7dのモード7h1)。
その後、V相アーム10からU相アーム9の方向に電流が流れる(図7dのモード7h)状態から、負荷電流の再転流が発生してU相アーム9からV相アーム10の方向に電流が流れる状態となる(図7eのモード7h2)と、負荷電流はV相アーム下スイッチ17とU相アーム下ダイオード14を経由して流れる。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、モード7i2の状態に移行する。このとき、ターンオフするU相アーム下スイッチ12には負荷電流は流れておらず、また、電圧も印加されていないのでターンオフ損失は発生しない。しかし、この状態からU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、U相アーム上スイッチ11には負荷電流に加えてスナバコンデンサ15を充電する突入電流も流れることになり(図7aのモード7a1)、非常に大きなターンオン損失が発生する。
次に、図8にインバータ回路8をハーフブリッジ通電率駆動した場合の各スイッチング素子のオンオフ状態と負荷回路23への印加電圧、負荷回路23に流れる負荷電流の発生例を示し、図9にはハーフブリッジ通電率駆動におけるインバータ回路8の各アーム上下スイッチのオンオフ状態とインバータ回路8および負荷回路23に流れる電流の様子をモードに分けて示している。図8に示したように、U相アーム9を高周波駆動、V相アーム10を固定駆動(V相アーム上スイッチ16をオフ、下スイッチ17をオン)とする。
図8aの期間8a(図9aのモード9a)では、U相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、U相アーム9からV相アーム10の方向に負荷電流が流れている状態で、このとき負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されている。期間8b(図9aのモード9b)の状態では、U相アーム上スイッチ11がターンオフしたデッドタイムの状態で、負荷回路23に流れる電流は、U相アーム9のスナバコンデンサ15およびV相アーム下スイッチ17を経由して流れ、U相アーム出力点電位はスナバコンデンサ15により低下するのが遅れるので、U相アーム上スイッチ11のターンオフ時のスイッチング損失が抑制されている。
さらに負荷電流によりU相アームスナバコンデンサ15が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位まで低下すると、U相アーム下ダイオード14が導通して、U相アーム出力電位は負母線電位に固定される。このとき、U相アーム出力点もV相アーム出力点も直流電源回路2の負母線電位となり、負荷回路23に印加される電圧は0となっている。次いでU相アーム下スイッチ12がターンオンすると、図8aの期間8c(図9aのモード9c)の状態となる。U相アーム下スイッチ12のターンオンは下ダイオード14が導通しておれば零電圧スイッチングとなって、損失は小さい。この状態から負荷電流の方向がV相アーム10からU相アーム9の方向に反転すると期間8d(図9のモード9d)の状態となり、負荷電流はU相アーム下スイッチ12とV相アーム下ダイオード19を経由して流れる。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、図8の期間8e(図9のモード9e)の状態となる。このとき、負荷電流はU相スナバコンデンサ15とV相アーム下ダイオード19を経由して流れ、スナバコンデンサ15の充電によりU相アーム出力点の電位が直流電源回路2の正母線電位に到達すれば、U相アーム上ダイオード13が導通して、U相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に固定される(図9のモード9e1)。この状態でU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、零電圧スイッチングとなって低損失で期間8f(図9のモード9f)の状態に移行する。その後、負荷電流がU相アーム9からV相アーム10の方向に転流すれば、期間8a(図9のモード9a)の状態に戻る。
次に、ハーフブリッジ通電率駆動において、加熱出力を抑制した場合の各スイッチング素子のオンオフ状態と負荷回路23への印加電圧、負荷回路23に流れる負荷電流について、図8b、図8cを用いて説明する。図8bは図8aより少しU相上スイッチの通電率を小さくした動作状態で、期間8a〜8dはU相上下スイッチ、V相上下スイッチのオン・オフ状態と負荷電流の方向は図8aで説明したのと、ほぼ同様の状態である。期間8dの状態(U相上スイッチ:オフ、U相下スイッチ:オン、V相上スイッチ:オフ、V相下スイッチ:オン、負荷電流はV相アーム10からU相アーム9)から、U相下アームがターンオフすると、図8bの期間8e(図9のモード9e)の状態となり、負荷電流はU相スナバコンデンサ15とV相アーム下ダイオード19を経由して流れ、スナバコンデンサ15を充電する。しかし、負荷電流が小さいためにスナバコンデンサ15の電圧(U相アーム出力点の電位)が直流電源回路2の正母線電位に到達せず、この状態でU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、スナバコンデンサ15への突入充電電流が流れて、大きな損失が発生する(期間8a1、動作モード9f1)。
さらに、U相上スイッチの通電率を小さくした動作状態(図8c)では、U相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、U相アーム9からV相アーム10の方向に負荷電流が流れている状態(期間8a、モード9a)から、U相アーム上スイッチ11がターンオフして、負荷回路23に流れる電流がU相アーム9のスナバコンデンサ15およびV相アーム下スイッチ17を経由して流れる期間8b(図9aのモード9b)の状態に移行するか、負荷電流が小さいためにスナバコンデンサ15が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位まで低下する前に、U相アーム下スイッチ12がターンオンすると、スナバコンデンサ15に残っていた電荷を放電電流が流れ(図9aのモード9c1)、U相アーム下スイッチ12にターンオン損失が発生する。その後、期間8c(図9aのモード9c)を経由して負荷電流が転流した期間8d(図9bのモード9d)の状態になるが、さらに負荷電流の転流した状態(モード9d1)となる。ここで、U相アーム下スイッチ12がターンオフするが、このとき下スイッチには電流が流れていないのでターンオフ損失は発生しない(図9cのモード9e2)が、次いでU相アーム上スイッチ11がターンオンするとスナバコンデンサ15への突入電流および負荷電流がスイッチに流れ、大きなスイッチング損失が発生(図9cのモード9f1)した後、モード9aの状態に戻る。
上記のように低加熱出力にするための低通電率動作では、フルブリッジ駆動、ハーフブリッジ駆動の何れにおいても、スイッチターンオン時におけるスナバコンデンサの充放電電流により、スイッチング損失が増大して効率が悪化したり、スイッチング素子にダメージを与える問題が生じるので、通電率の最低限度を設けて制御する必要がある。この場合、フルブリッジ駆動で出力可能な最小火力は、標準的な20cm径の鍋において約200〜300Wとなる。一方、ハーフブリッジ駆動では、フルブリッジ駆動と同じ通電率で1/4〜1/2の加熱出力となるので、最小加熱出力を100W程度以下とすることができ、連続通電での保温加熱、とろ火加熱を可能とすることができる。
次に、加熱出力制御手段28がフルブリッジ通電率制御とハーフブリッジ通電率制御を切り替えて行う加熱出力制御処理の一例を、図10のフローチャートを用いて説明する。図10において、まずフルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ1)、フルブリッジモードであった場合には負荷回路電流検出手段24で検出した負荷電流が過大電流か否か(渦電流閾値を超えるか否か)を判断し(ステップ2)、過大電流でなければ火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ3)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ4)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ5)。
ステップ2で負荷電流が過大電流であると判断した場合、および、ステップ3で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、上スイッチ通電率が下限値より大きいか否か判断する(ステップ6)。この上スイッチ通電率の下限値は、上記で説明したスナバコンデンサ15、20への突入電流等によりスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。上スイッチ通電率が下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ7)。上スイッチ通電率が下限値に到達していた場合には、動作モードをハーフブリッジモードに切り替え(ステップ8)、上スイッチ通電率を2倍(但し、通電率の上限は50%)にする(ステップ9)。
ステップ1でハーフブリッジモードあった場合にも、負荷回路電流検出手段24で検出した負荷電流が過大電流か否か(渦電流閾値を超えるか否か)を判断し(ステップ10)、過大電流でなければ火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ11)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ12)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ13)。上スイッチ通電率が上限値に到達していた場合には、動作モードをフルブリッジモードに切り替え(ステップ14)、上スイッチ通電率を1/4倍にする(ステップ15)。
ステップ11で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、上スイッチ通電率が下限値より大きいか否か判断する(ステップ16)。この上スイッチ通電率の下限値は、上記で図8、図9を用いて説明したU相スナバコンデンサ15への突入電流等による損失でスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。上スイッチ通電率が下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ17)。また、ステップ10で負荷電流が過大電流であると判断した場合、上スイッチ通電率が下限値より大きいか否か判断を行い(ステップ18)、上スイッチ通電率が下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させ(ステップ19)、上スイッチ通電率が下限値に到達していた場合には不適正な負荷として加熱動作を停止する(インバータ停止)(ステップ20)。
以上のように、スイッチング損失が大きくなり加熱効率が低下する低加熱出力(低通電率)をハーフブリッジ駆動に切り替えることによりスイッチング損失を低減し、より小さい加熱出力まで高効率で動作させることができる。
次に図11のフローチャートを用いて、設定火力に応じてフルブリッジ駆動とハーフブリッジ駆動を切り替える加熱出力制御処理の例を説明する。図11において、負荷回路電流検出手段24で検出した負荷電流が過大電流か否か(渦電流閾値を超えるか否か)を判断し(ステップ1)、過大電流であった場合には火力設定手段27で設定された設定火力を、より低い設定火力に補正する(ステップ2)。次に、フルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ3)、フルブリッジ駆動であった場合には設定火力(ステップ2で補正された場合には補正後設定火力、以下同じ)とハーフブリッジ駆動への切り替え火力を比較する(ステップ4)。
設定火力が切り替え火力以下の場合には、動作モードをハーフブリッジ駆動に切り替え(ステップ5)、上スイッチ通電率をA倍(但し、A倍後の上スイッチ通電率は50%以下とする)とする(ステップ6)。Aは2〜4の数で、式(6)の関係をおおよそ満たす値としてもよいし、また、固定の数値としてもよい。ステップ3でハーフブリッジ駆動と判定された場合には、設定火力とフルブリッジ切り替え火力を比較し(ステップ7)、設定火力が切り替え火力以上であれば、動作モードをフルブリッジ駆動に切り替え(ステップ8)、上スイッチ通電率をB倍とする(ステップ9)。Bは1/4〜1/2の数で、式(6)の関係をおおよそ満たす値としてもよいし、また、固定の数値としてもよい。
以上のステップで動作モードが確定すると、設定火力と入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ10)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ11)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ12)。ステップ10で設定火力より入力電力の方が大きい場合には、上スイッチ通電率を下限値と比較して(ステップ13)、下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ14)。
以上のように、スイッチング損失が大きくなり加熱効率が低下する低加熱出力(低通電率)をハーフブリッジ駆動に切り替えることによりスイッチング損失を低減し、より小さい加熱出力まで高効率で動作させることができる。
次に、出力電流やスイッチ通電率に応じてフルブリッジ駆動とハーフブリッジ駆動を切り替える加熱出力制御処理の例を図12のフローチャートを用いて説明する。図12において、負荷回路電流検出手段24で検出した負荷電流が過大電流か否か(渦電流閾値を超えるか否か)を判断し(ステップ1)、過大電流であった場合には火力設定手段27で設定された設定火力を、より低い設定火力に補正する(ステップ2)。次に、フルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ3)、フルブリッジ駆動であった場合には、負荷回路電流検出手段24で検出された出力電流が所定値(出力制限閾値1)以下か否か判断し(ステップ4)、出力電流が所定値(出力制限閾値1)以下である場合には上スイッチの通電率が所定値(ハーフブリッジ切替通電率)以下か判断し(ステップ5)、通電率が小さければハーフブリッジ駆動モードに切り替え(ステップ6)、上スイッチ通電率をA(2〜4)倍にする(ステップ7)。但し、上スイッチ通電率の上限は50%とする。一方、ステップ4で出力電流が所定値(出力制限閾値1)より大きい場合や、ステップ5で上スイッチの通電率がハーフブリッジ切替通電率以上の場合には、駆動モードの切替を行わない。
ステップ3で動作モードがハーフブリッジ駆動モードであった場合には、上スイッチ通電率が上限(50%)以上になっているか判断し(ステップ8)、通電率が上限以上であれば出力電流がフルブリッジ駆動に切替可能な電流レベル(出力制限閾値2)未満か判断し(ステップ9)、フルブリッジに切替可能な電流未満であればフルブリッジ駆動モードに切り替える(ステップ10)とともに、上スイッチ通電率を所定値(1/4〜1/2)倍とする(ステップ11)。ステップ8で上スイッチ通電率が上限に達していない場合や、ステップ9で出力電流が所定値(出力制限閾値2)以上であった場合には駆動モードの切替を行わず、火力調整のステップに移行する。
上記のステップ3〜11で動作モードが確定すると、火力設定手段27で設定された火力と、入力電流検出手段6と入力電圧検出手段7による検出値から算出された入力電力を比較し(ステップ12)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限か判断し(ステップ13)、上限でなければ通電率を増加させる(ステップ14)。また、ステップ12で入力電力が設定火力より大きい場合には、上スイッチ通電率を予め設定してある通電率の下限値と比較し(ステップ15)、下限値より大きければ通電率を減少させる(ステップ16)。
以上のように制御することにより、低加熱出力時にスナバコンデンサへの充放電電流等によりスイッチング損失が大きくなり、加熱効率が低下するのをハーフブリッジ駆動に切り替えることにより回避して、より小さい加熱出力まで高効率で動作させることができる。
なお、上記説明では、出力電流とスイッチ通電率の両方の条件によりフルブリッジ駆動とハーフブリッジ駆動を切り替えるように制御した例を示したが、出力電流、あるいはスイッチ通電率の一方の条件からフルブリッジ駆動とハーフブリッジ駆動を切り替えるようにしてもよい。また、出力電流やスイッチ通電率だけでなく、設定火力や入力電力、入力電流についても出力電流やスイッチ通電率と相関があるので、それらの何れか一つ、あるいはその複数の組み合わせにより判断して切り替えるようにしてもよい。
実施の形態2.
図13は、この発明を実施するための実施の形態2における誘導加熱調理器の構成を示すブロック図であり、図14は実施の形態2の加熱出力制御処理を説明するためのフローチャート、図15はハーフブリッジ駆動時のインバータ回路の各スイッチング素子のスイッチングの様子と、インバータ回路および負荷回路に流れる電流の様子をモードに分けて示した図である。
図13において、実施の形態1の図1と同一または相当部分については同じ記号を付し、説明を省略する。この実施の形態2では、フルブリッジ駆動の動作は実施の形態1と同様に動作する。ハーフブリッジ駆動動作では、インバータ回路8のV相アーム10を固定駆動し、U相アーム9を高周波駆動するが、ハーフブリッジ動作で高周波駆動されるU相アーム出力点に接続されたスナバコンデンサ15を切り離すスナバコンデンサ切り替え手段29を備えている。
次に、図14のフローチャートに基づき、この実施の形態2の加熱出力制御処理の一例について説明する。まず最初に、負荷回路電流検出手段24で検出した負荷電流が過大電流か否か判断し(ステップ1)、過大電流であった場合には火力設定手段27で設定された設定火力を、より低い設定火力に補正する(ステップ2)。次に、フルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ3)、フルブリッジ駆動であった場合には設定火力(ステップ2で補正された場合には補正後設定火力、以下同じ)とハーフブリッジ駆動への切り替え火力を比較する(ステップ4)。設定火力が切り替え火力以下の場合には、動作モードをハーフブリッジ駆動に切り替え(ステップ5)、上スイッチ通電率を2倍とする(ステップ6)。ステップ3でハーフブリッジ駆動であった場合には、設定火力とフルブリッジ切り替え火力を比較し(ステップ7)、設定火力が切り替え火力以上であれば、動作モードをフルブリッジ駆動に切り替え(ステップ8)、上スイッチ通電率を1/4倍とし(ステップ9)、スナバコンデンサ切り替え手段29によりU相スナバコンデンサ15を接続する(ステップ10)。
ステップ10の後、および、ステップ4で設定火力がハーフブリッジ切り替え火力より大きかった場合には、フルブリッジ駆動モードとして設定火力と入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ11)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ12)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ13)。ステップ11で設定火力より入力電力の方が大きい場合には、上スイッチ通電率を下限値と比較して(ステップ14)、下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ15)。
また、ステップ6の後、および、ステップ7で設定火力がフルブリッジ切り替え火力より小さかった場合には、ハーフブリッジ駆動モードとして負荷回路電流検出手段24で検出した負荷回路23に流れる出力電流とスナバコンデンサ切離し閾値を比較して(ステップ16)、出力電流が閾値よりも小さい場合にはスナバコンデンサ切り替え手段29を制御してスナバコンデンサ15を切り離し(ステップ17)、負荷電流が閾値以上であればスナバコンデンサ切り替え手段29を制御してスナバコンデンサ15を接続する(ステップ18)。次いで、設定火力と入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ19)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ20)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ21)。また、ステップ19で設定火力より入力電力の方が大きい場合には、上スイッチ通電率を下限値と比較して(ステップ22)、下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ23)。
以上のように、ハーフブリッジ駆動状態において、スナバコンデンサ15を接続、切り離しを行うが、インバータ回路8の各スイッチング素子のスイッチングの様子と、インバータ回路8および負荷回路23に流れる電流の様子を、図15a〜15dに従い、スナバコンデンサ15が接続されている場合と、切り離した場合とに分けて説明する。図15a〜15dのそれぞれにおいて、左側の(a)は、スナバコンデンサ15が接続されている場合を示しており、右側の(b)はスナバコンデンサ15を切り離した場合を示している。これらの図において、U相アームスナバコンデンサ15を切り離した(b)では、スナバコンデンサ15を図示しない。なお、フルブリッジ駆動状態については実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
図15aの(a)モード15aは、U相アーム上スイッチ11がオン、V相アーム下スイッチ17がオンした状態で、負荷回路23には直流電源回路の正負母線電圧(E)が印加され、U相アーム9からV相アーム10の方向へ負荷回路23に出力電流が流れている状態である。U相アーム上スイッチ11がターンオフすると、モード15b0の状態となり、負荷回路23に流れる電流は、U相アーム9のスナバコンデンサ15およびV相アーム下スイッチ17を経由して流れ、U相アーム出力点電位はスナバコンデンサ15により低下するのが遅れるので、U相アーム上スイッチ11のターンオフ時のスイッチング損失が抑制されている。
一方、スナバコンデンサ15を切り離した図15aの(b)モード15a’の場合には、U相アーム上スイッチ11がターンオフすると、負荷電流は、U相アーム下ダイオード14およびV相アーム下スイッチ17を経由して流れ、U相アーム出力点電位はU相アームターンオフ時に急激な電圧低下が発生し、スナバコンデンサ15が接続されている(a)の場合と比較して大きなターンオフ損失がU相アーム上スイッチ11に発生するとともに、図15b(b)のモード15b’の状態となる。しかし、上スイッチ通電率が小さく、負荷回路23に流れる電流(出力電流)が小さい場合には、ターンオフ損失は大きいものにならない。
スナバコンデンサ15が接続されている(a)の場合においても負荷電流によりスナバコンデンサ15の放電が行われ、U相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位まで低下すると、U相アーム下ダイオード14が導通して図15bの(a)モード15bの状態に移行するが、出力電流が小さい場合には、出力電流によるスナバコンデンサ15の放電が十分に行われず、U相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達する前にU相アーム下スイッチ12がターンオンすると、U相アーム下スイッチ12を介してスナバコンデンサ15の残電荷を放電する電流が流れ、大きなターンオン損失が発生する(モード15c1)が、(b)にはスナバコンデンサ15が無いため、出力電流が小さい場合でもU相アーム下ダイオード14が導通した状態(モード15b’)でU相アーム下スイッチ12がターンオンする(モード15c’)ので、このようなターンオン損失は発生しない。
次いで、負荷電流が転流してV相アーム10からU相アーム9の方向へ、U相アーム下スイッチ12とV相アーム下ダイオードを経由して流れる(モード15d)。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、スナバコンデンサ15が接続された(a)では、図15cに示すように負荷回路23に流れる出力電流はU相スナバコンデンサ15およびV相下ダイオード19を経由して流れ(モード15e)、U相アーム出力点電位はゆっくり上昇するので、U相アーム下スイッチ12のターンオフ損失は小さくなる。
一方、スナバコンデンサ15が切離された(b)では、負荷回路23に流れる出力電流はU相アーム下スイッチ12がターンオフすると同時にU相アーム上ダイオード13が導通することになり(モード15e1’)、U相アーム出力点電位は速く上昇するので、U相アーム下スイッチ12のターンオフ損失は(a)の場合と比べて大きくはなるが、出力電流が小さい場合には大きなものとはならない。(a)において出力電流によりスナバコンデンサ15が充電して直流電源回路2の正母線電位に到達すると、U相アーム上ダイオード13が導通して、モード15e1(図15d)の状態になる。この状態から、U相アーム上スイッチ11がターンオンすればモード15f(図15d)となり、負荷回路23に流れる出力電流が転流すればモード15a(図15a)となる。
なお、低加熱出力にするために上スイッチの通電率を小さくしている場合には、U相アーム下スイッチ12の通電時間が長くなるので、モード15dの状態からさらに出力電流が転流して、負荷回路23に流れる電流がU相下ダイオード14とV相下スイッチ17を経由して流れるモード15d1の状態になる場合がある。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、スイッチには電流が流れていない状態でターンオフすることになるので(a)(b)何れもターンオフ損失は発生することなくモード15e2の状態に移行する。この状態からU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、スナバコンデンサ15を接続した(a)ではスナバコンデンサ15への充電電流と出力電流がU相上スイッチ11に流れ(モード15a0)、大きなターンオン損失が発生するが、(b)ではU相アーム上スイッチ11がターンオン時に流れる電流は負荷回路23に流れる出力電流のみなので、出力電流が小さい場合には大きなターンオン損失は発生しない。
以上のように、低加熱出力とするために上スイッチ11を小さくして負荷回路23に流れる出力電流を抑制している場合には、U相アーム上スイッチ11のターンオンスイッチング時にスナバコンデンサ15を充電する突入電流が流れるため、大きなターンオン損失が発生する。また、出力電流が小さいためにU相アーム下スイッチ12のターンオン時にスナバコンデンサ15に残留電荷があり、その放電電流が下アームスイッチに流れて大きなターンオン損失が発生する問題点があったが、出力電流が小さい場合にはスナバコンデンサ15を切離すことにより、スイッチの損失を低減し、スイッチング素子へのダメージを防止している。
なお、上記実施の形態2では、ハーフブリッジ動作において出力電流によりスナバコンデンサ15を切離すように制御する例を示したが、設定火力や通電率に応じてスナバコンデンサ15を切離すようにしたり、ハーフブリッジ動作はフルブリッジ動作と比較して出力電流が小さくなるので、ハーフブリッジ動作ではスナバコンデンサ15を必ず切離して動作させる構成としてもよい。
実施の形態3.
図16は、この発明を実施するための実施の形態3における誘導加熱調理器の構成を示すブロック図であり、図において、実施の形態1の図1と同一または相当部分については同じ記号を付し、説明を省略する。上記実施の形態1は、インバータ回路8の各相アームに接続されたスナバコンデンサ15、20を同等容量としていたのに対し、この実施の形態3は、2つアームで異なる容量のスナバコンデンサを接続するようにしたものである。ここでは、具体的には図1のスナバコンデンサ15を、V相スナバコンデンサ20の容量より小さいスナバコンデンサ30に代えたものとして以下の説明を行う。
この実施の形態3におけるインバータ回路8の加熱出力動作は、高加熱出力時にはインバータ回路8の2つのアームを高周波駆動するフルブリッジ駆動を行うとともに、低加熱出力時には一方のアームを固定駆動するとともに、もう一方のアームを高周波駆動するハーフブリッジ駆動を行うが、フルブリッジ駆動ではU相アーム9およびV相アーム10の上下スイッチを略50%の通電率で駆動するとともに、U相アーム9・V相アーム10間の駆動タイミングの位相差(時間差)を変えることにより、負荷回路23に印加する電圧を調整して加熱出力を制御する。一方、ハーフブリッジ駆動では、高周波駆動するアームは実施の形態1と同様に上スイッチの通電率を調整して加熱出力制御を行う。
次に、インバータ回路8の各スイッチング素子のオンオフ状態や、負荷回路23に印加される電圧や負荷回路23に流れる出力電流について、図17と図18a〜18gを用いて説明する。ハーフブリッジ動作モードは実施の形態1と同様なので説明を省略し、フルブリッジ動作モードについて説明する。図17はインバータ回路8各スイッチング素子のオンオフ状態と、負荷回路印加電圧、負荷回路電流のタイムチャートを示しており、図17(a)は、U相アーム9とV相アーム10の出力電圧の位相差が180度に開いた最大出力動作状態で、図17(b)は、位相差が80度程度に狭まった状態の動作例である。また、図18a〜18gには各スイッチング素子のスイッチングの様子と、インバータ回路8や負荷回路23に流れる電流の様子をモードに分けて示している。
まず、最大出力の図17(a)において、期間aの状態はU相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されており、負荷回路電流はU相アーム9からV相アーム10の方向に流れている(図18aのモード18a1)。この状態からU相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がターンオフする(図17(a)期間bd)と、図18fのモード18bd1に示すように負荷回路電流はU相アームスナバコンデンサ30およびV相アームスナバコンデンサ20を経由して流れ、ターンオフするスイッチング素子11および17に印加される電圧の急増をスナバコンデンサ30により抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。
さらに負荷電流によりU相アームスナバコンデンサ30が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達するとU相下ダイオード14が導通してU相アーム出力電位は負母線電位に固定され、V相アームスナバコンデンサ20が充電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に到達するとV相上ダイオード18が導通してV相アーム出力電位は正母線電位に固定される(図18fのモード18bd2)。この状態では負荷回路23には直流電源電圧がV相側から印加されている。
次いでU相アーム下スイッチ12およびV相アーム上スイッチ16がターンオンすると、図17(a)期間e0および図18cのモード18e0の状態となる。各スイッチのターンオンはそれぞれ逆並列に接続されたU相アーム下ダイオード14およびV相アーム上ダイオード18が導通しているので零電圧スイッチングとなって、損失が小さい。
次いで負荷回路電流が転流したのが図17(a)期間e1および図18cのモード18e1の状態であり、負荷回路電流はV相上スイッチ16およびU相下スイッチ12を経由して流れる。その状態からU相アーム下スイッチ12とV相アーム上スイッチ16がターンオフする(図17(a)期間hf)と、図18gのモード18fh1に示すように負荷回路電流はU相アームスナバコンデンサ30およびV相アームスナバコンデンサ20を経由して流れ、ターンオフするU相アーム下スイッチ12およびV相アーム上スイッチ16に印加される電圧の急増をスナバコンデンサ30により抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。
さらに負荷電流によりU相アームスナバコンデンサ30が充電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に到達するとU相上ダイオード13が導通してU相アーム出力電位は正母線電位に固定され、V相アームスナバコンデンサ20が放電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達するとV相下ダイオード19が導通してV相アーム出力電位は負母線電位に固定され(図18gのモード18fh2)、負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されている。この状態からU相アーム上スイッチ11およびV相アーム下スイッチ17がターンオンしたのが図17(a)期間a0および図18eのモード18a0の状態で、各スイッチのターンオンはそれぞれ逆並列に接続されたU相アーム上ダイオード13およびV相アーム下ダイオード19が導通している零電圧スイッチングとなり、損失が小さい。次いで負荷回路電流が転流すると図17(a)期間a1および図18aのモード18a1の状態に戻る。
次に、加熱出力を制限した図17(b)について説明する。期間aの状態はU相アーム上スイッチ11とV相アーム下スイッチ17がオン状態で、負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されており、負荷回路電流はU相アーム9からV相アーム10の方向に流れている(図18aのモード18a1)。この状態からV相アーム下スイッチ17がターンオフする(図17(b)期間b)と、図18aのモード18b1に示すように負荷回路電流はU相アーム上スイッチ11およびV相アームスナバコンデンサ20を経由して流れ、ターンオフするV相下スイッチ17に印加される電圧の急増をスナバコンデンサ30により抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。
負荷電流によりV相アームスナバコンデンサ20が充電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に到達すると、V相上ダイオード18が導通してV相アーム出力電位は正母線電位に固定される(図18aのモード18b2)。この状態ではU相アーム出力点電圧、V相アーム出力点電圧がともに直流電源電圧正母線電位となるので、負荷回路23には電圧が印加されていない。V相アーム上スイッチ16がターンオンすると、図17(b)期間cおよび図18aのモード18c1の状態となるが、V相アーム上スイッチ16のターンオンは逆並列に接続されたV相アーム上ダイオード18が導通しているので零電圧スイッチングとなって、損失が小さい。この状態からU相アーム上スイッチ11がターンオフすると、図17(b)期間dおよび図18bのモード18d1の状態となり、負荷回路電流はU相アームスナバコンデンサ30およびV相アーム上ダイオード18を経由して流れる。
負荷回路電流によりU相アームスナバコンデンサ30が放電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達すると、U相下ダイオード14が導通して(図18モードd2)U相アーム出力電位は負母線電位に固定され、負荷回路23には直流電源電圧がV相側から印加されている。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオンすると図17(b)期間e0および図18cのモード18e0の状態となる。この場合もU相アーム下スイッチ12と逆並列に接続されたU相アーム下ダイオード14が導通しているので零電圧スイッチングとなり、損失が小さい。次いで負荷回路電流が転流すると図17(b)期間e1および図18cのモード18e1の状態になる。
この状態からV相アーム上スイッチ16がターンオフする(図17(b)期間f)と、図18dのモード18f1に示すように負荷回路電流はU相アーム下スイッチ12およびV相アームスナバコンデンサ20を経由して流れ、ターンオフするV相上スイッチ16に印加される電圧の急増をスナバコンデンサ30により抑えて、ターンオフ時のスイッチング損失を抑制している。負荷電流によりV相アームスナバコンデンサ20が放電してV相アーム出力点電位が直流電源回路2の負母線電位に到達すると、V相下ダイオード19が導通してV相アーム出力電位は負母線電位に固定される(図18dのモード18f2)。この状態ではU相アーム出力点電圧、V相アーム出力点電圧がともに直流電源電圧負母線電位となるので、負荷回路23には電圧が印加されていない。
ここでV相アーム下スイッチ17がターンオンすると、図17(b)期間gおよび図18dのモード18g1の状態となるが、V相アーム下スイッチ17のターンオンは逆並列に接続されたV相アーム下ダイオード19が導通しているので零電圧スイッチングとなって、損失が小さい。この状態からU相アーム下スイッチ12がターンオフすると、図17(b)期間hおよび図18eのモード18h1の状態となり、負荷回路電流はU相アームスナバコンデンサ30およびV相アーム下ダイオード19を経由して流れる。
負荷回路電流によりU相アームスナバコンデンサ30が充電してU相アーム出力点電位が直流電源回路2の正母線電位に到達すると、U相上ダイオード13が導通して(図18eのモード18h2)U相アーム出力電位は正母線電位に固定され、負荷回路23には直流電源電圧がU相側から印加されている。この状態からU相アーム上スイッチ11がターンオンすると図17(b)期間a0および図18eのモード18a0の状態となる。この場合もU相アーム上スイッチ11と逆並列に接続されたU相アーム上ダイオード13が導通しているので零電圧スイッチングとなり、損失が小さい。次いで負荷回路電流が転流すると図17(b)期間a1および図18aのモード18a1の状態に戻る。
この実施の形態3では、以上のようにインバータ回路8のU相アーム上下スイッチ、および、V相アーム上下スイッチを駆動する。負荷回路23を構成する加熱コイル25と共振コンデンサ26の共振周波数よりも高い周波数でインバータ回路8を駆動することにより、負荷回路23は誘導性負荷となっており、負荷回路23に印加される電圧よりも負荷回路23に流れる電流位相は遅れている。従って、U相アーム9・V相アーム10間の位相差を180度とした図17(a)の状態では、各アームの上下スイッチをスイッチングした後に負荷回路23に流れる出力電流の転流が発生しており、各スイッチのターンオフ時にはスナバコンデンサによりターンオフするスイッチへの印加電圧の急増を抑制するとともに、各スイッチのターンオン時には、各スイッチとそれぞれ逆並列に接続されたダイオードが導通しているゼロ電圧スイッチングが成立して、低損失となっている。
図17(b)のように加熱出力を調整するために、U相アーム9とV相アーム10の各スイッチを駆動する位相差を180度より小さくした場合、負荷回路23に流れる出力電流に対して、U相アーム9とV相アーム10で異なるタイミングでスイッチングを行うことになる。図17(b)の動作状態では、出力点電圧の変動がV相アーム10より先行するU相アーム9のスイッチングタイミングは、アーム間位相差が180度(図17(a))の場合と比べて遅れ、出力電流の転流までの時間差が小さくなっている。
さらに加熱出力を小さくするためにアーム間位相差を小さくしていくと、U相アームデッドタイム中の転流(図18bのモード18d3、モード18h0)や、U相アームスイッチング前の転流(図18bのモード18c2、図18dのモード18g2)が発生し、U相アーム上スイッチ11のターンオン時にU相アームスナバコンデンサ30への充電電流が流れて大きなスイッチング損失が発生し(図18eのモード18f01)、あるいはU相アーム下スイッチ12のターンオン時にU相アームスナバコンデンサ30の放電電流が流れて大きなスイッチング損失が発生する(図18cのモード18e01)。
また、負荷回路23に流れる出力電流が小さくなるため、デッドタイム中にスナバコンデンサ30の放電が終了せず、図18bのモード18d1の状態からU相アーム下スイッチ12がターンオンする場合も、U相アーム下スイッチ12にはスナバコンデンサ30の放電電流が流れ(図18cのモード18e01)、大きなターンオン損失が発生する。デッドタイム中にスナバコンデンサ30の充電が終了しない場合も同様で、図18モードh1の状態からU相アーム上スイッチ11がターンオンすると、U相アーム上スイッチ11にはスナバコンデンサ30への充電電流が流れ(図18fのモード18a01)、大きなターンオン損失が発生する。
一方、V相アーム10のスイッチングタイミングは、位相差180度(図17(a))の場合と比較して進み、スイッチングに流れている出力電流もU相アームスイッチング時より大きくなっている。従って、V相アーム10ではU相アーム9よりターンオフ時の損失が大きくなる一方、U相アーム9では加熱出力を抑制するためにアーム間位相差を小さくした場合に、スイッチングタイミングより早く出力電流の転流が発生したり、スイッチングターンオン時にスナバコンデンサ20の充電電流あるいは放電電流が流れて大きなスイッチング損失が発生する可能性がある。
そこで、先行駆動するU相アーム9には小容量のスナバコンデンサ30を接続してスイッチターンオン時にスナバコンデンサ30への充放電電流が発生した場合のターンオン損失を小さくするとともに、U相アーム9の出力電圧に追従するV相アーム10にはU相アーム9より大きい容量のスナバコンデンサ20を接続することによりスイッチターンオフ時のスイッチ印加電圧の上昇を遅らせて、ターンオフ損失を抑制している。アーム間位相差制御の場合、各アームの上下スイッチ間で通電時間、および、通電電流がほぼ同じであり、負荷電流の位相とスイッチングタイミングの関係が上下スイッチング素子間でほぼ同じであるので、アーム毎にスナバコンデンサ30,20を最適な値に調整することにより、損失を低減させることができる。
次に、この実施の形態3における加熱出力制御手段28が行う加熱出力制御処理の一例を、図19のフローチャートを用いて説明する。図19において、まずフルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ1)、フルブリッジモードであった場合には火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ2)、入力電力が小さい場合にはアーム間位相差が上限(180度(半周期))未満か否か判断し(ステップ3)、アーム間位相差が上限未満であれば位相差を拡大させる(ステップ4)。
ステップ2で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、アーム間位相差が下限値より大きいか否か判断する(ステップ5)。このアーム間位相差の下限値は、上記で説明したスナバコンデンサ30、20への突入電流等によりスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。アーム間位相差が下限値より大きい場合には、アーム間位相差を縮小させる(ステップ6)。アーム間位相差が下限値に到達していた場合には、動作モードをハーフブリッジモードに切り替えてV相アーム上スイッチ16をオフ、下スイッチ17をオン状態に固定し(ステップ7)、U相アーム上スイッチ通電率をアーム間位相差の2倍(但し、通電率の上限は50%)にする(ステップ8)。
ステップ1でハーフブリッジモードあった場合にも、火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ9)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ10)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ11)。上スイッチ通電率が上限値に到達していた場合には、動作モードをフルブリッジモードに切り替え(ステップ12)、アーム間位相差を上スイッチ通電率の1/4倍にする(ステップ13)。
ステップ9で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、上スイッチ通電率が下限値より大きいか否か判断する(ステップ14)。この上スイッチ通電率の下限値は、アーム間位相差の下限値と同様にU相スナバコンデンサ30への充放電電流等による損失でスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。上スイッチ通電率が下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ15)。
以上のように、スナバコンデンサへの充放電電流によりスイッチング損失が大きくなり加熱効率が低下する低加熱出力をハーフブリッジ駆動に切り替えることにより、スイッチング損失を低減し、より小さい加熱出力まで高効率で動作させることができる。低加熱出力時は負荷回路23に流れる出力電流が小さいため、ハーフブリッジ動作モードでは小容量のスナバコンデンサが接続されているアームを駆動することにより、スナバコンデンサへの充放電電流による損失を低減することができる。また、フルブリッジ動作においてアーム間位相差を制御すること加熱出力を制御するようにしたので、加熱出力を抑制するために駆動周波数を高周波化してスイッチング損失を増大させることが無い。
図20は、実施の形態3における加熱出力制御手段28が行う加熱出力制御処理の別の例を示すフローチャートである。図20において、図19と同一又は相当処理については同一符号を付している。まずフルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ1)、フルブリッジモードであった場合には火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ2)、入力電力が小さい場合にはアーム間位相差が上限(180度(半周期))未満か否か判断し(ステップ3)、アーム間位相差が上限未満であれば位相差を拡大させる(ステップ4)。
ステップ2で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、アーム間位相差が下限値より大きいか否か判断する(ステップ5)。このアーム間位相差の下限値は、上記で説明したスナバコンデンサ30、20への突入電流等によりスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。アーム間位相差が下限値より大きい場合には、アーム間位相差を縮小させる(ステップ6)。アーム間位相差が下限値に到達していた場合には、動作モードをハーフブリッジモードに切り替える(ステップ7)。但し、このステップではV相アーム上スイッチ16をオフ、下スイッチ17をオン状態に固定はしない。次いで、上スイッチ通電率をアーム間位相差の2倍(但し、通電率の上限は50%)にする(ステップ8)。
ステップ1でハーフブリッジモードあった場合には、負荷回路電流検出手段24で検出された出力電流(負荷電流)と駆動アーム切替閾値を比較し(ステップA1)、出力電流が閾値より大きい場合には小容量のスナバコンデンサが接続されているU相アーム9を固定駆動とし、V相アーム10を高周波駆動する(ステップA2)。逆に出力電流が閾値以下の場合には、容量の大きいスナバコンデンサが接続されていくV相アーム10を固定し、U相アーム9を高周波駆動する(ステップA3)。負荷回路23に流れる出力電流が大きい場合には、スナバコンデンサを充放電する時間が短くなるのでスイッチング素子ターンオン時にスイッチング素子にスナバコンデンサの充放電電流は流れない。
一方、スイッチング素子ターンオフ時にスイッチング素子に印加される電圧上昇が速くなるので、スナバコンデンサは出力電流が小さい場合より大きい容量のものを使用して印加電圧上昇を遅らせた方がターンオフ損失を抑制できる。負荷電流が小さい場合は、スナバコンデンサを充放電する時間が長くなるので、スイッチング素子ターンオン時にスイッチング素子にスナバコンデンサの充放電電流は流れる場合が生じる。また、ターンオフ損失は電流が小さいため小さく、小容量のスナバコンデンサを使用したほうがスイッチング素子に大きな損失を発生させる可能性を小さくできる。また、スイッチ通電率が小さい場合には、ターンオン時に既に出力電流の転流が生じていたり、スナバコンデンサの充電電流または放電電流が流れる可能性が高くなるためスナバコンデンサの容量は小さい方がよい。なお、この実施の形態3では出力電流により駆動アームを切り替えているが、上スイッチ通電率により駆動アームを切り替えるようにしてもよい。
次に、火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ9)、入力電力が小さい場合には上スイッチの通電率が上限(50%)未満か否か判断し(ステップ10)、通電率が上限未満であれば上スイッチ通電率を増加させる(ステップ11)。上スイッチ通電率が上限値に到達していた場合には、動作モードをフルブリッジモードに切り替え(ステップ12)、アーム間位相差を上スイッチ通電率の1/4倍にする(ステップ13)。ステップ9で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、上スイッチ通電率が下限値より大きいか否か判断する(ステップ14)。この上スイッチ通電率の下限値は、アーム間位相差の下限値と同様にU相スナバコンデンサ30への充放電電流等による損失でスイッチング素子が破壊してしまわないレベルに設定するものとする。上スイッチ通電率が下限値より大きい場合には、上スイッチ通電率を減少させる(ステップ15)。
以上のように、スナバコンデンサへの充放電電流によりスイッチング損失が大きくなり加熱効率が低下する低加熱出力をハーフブリッジ駆動に切り替えることにより、スイッチング損失を低減し、より小さい加熱出力まで高効率で動作させることができる。さらに、ハーフブリッジ動作モードにおいて、出力電流の大きい場合や上スイッチ通電率が大きい場合には、ターンオフ損失を低減するように容量の大きい方のスナバコンデンサを接続したアームを高周波駆動し、出力電流の小さい場合や上スイッチ通電率の小さい場合には、小容量のスナバコンデンサを接続したアームを高周波駆動することによって、スイッチターンオン時のスナバコンデンサへの充放電電流による損失を小さくすることができ、効率がよくなる。
なお、上記実施の形態3では、先行アーム(U相アーム9)スナバコンデンサの容量を、追従アーム(V相アーム10)スナバコンデンサの容量より小さくした例を示したが、先行アーム側のスナバコンデンサを接続しない構成としたり、あるいは、先行アームスナバコンデンサと追従アームスナバコンデンサの容量を略同等とする構成も可能である。
実施の形態4.
この実施の形態4は、加熱出力制御をインバータ回路8の周波数制御により行う誘導加熱調理器である。回路構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。インバータ回路8における損失は、スイッチ導通時におけるオン損失と、ターンオン・ターンオフ時に発生するスイッチング損失があるが、駆動周波数が高い場合にはスイッチング回数が増加するためスイッチング損失が増大して効率が悪化する。加熱出力制御手段28がフルブリッジ動作とハーフブリッジ動作を切替ながら周波数制御により加熱出力制御処理の例を、図21のフローチャートを用いて説明する。
図21において、まずフルブリッジ駆動かハーフブリッジ駆動か動作モードを判定し(ステップ1)、フルブリッジモードであった場合には負荷回路電流検出手段24で検出した出力電流が過大電流か否か判断し(ステップ2)、過大電流でなければ火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ3)、入力電力が小さい場合にはインバータ駆動周波数が下限駆動周波数より高周波数か否か判断し(ステップ4)、高周波数であれば駆動周波数を低くする(ステップ5)。
ステップ2で負荷電流が過大電流であると判断した場合、および、ステップ3で設定火力より入力電力の方が大きいと判断した場合には、駆動周波数が上限駆動周波数より低いか否か判断する(ステップ6)。インバータ回路8の駆動周波数は、高周波化するとスイッチング損失が増え効率が低下するため、上限値を設定している。駆動周波数が上限駆動周波数より低い場合には、駆動周波数を高周波化する(ステップ7)。駆動周波数が上限周波数に到達していた場合には、動作モードをハーフブリッジモードに切り替える(ステップ8)。
ステップ1でハーフブリッジモードあった場合にも、負荷回路電流検出手段24で検出した出力電流が過大電流か否か判断し(ステップ9)、過大電流でなければ火力設定手段27で使用者に設定された設定火力と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力と比較して(ステップ10)、入力電力が小さい場合には駆動周波数が下限駆動周波数より高周波数か否かを判断し(ステップ11)、下限周波数より高周波数であれば駆動周波数を低周波化する(ステップ12)。駆動周波数が下限周波数に到達していた場合には、負荷電流検出手段で検出した出力電流が過電流閾値の1/2より大きいか否かを判断し(ステップ13)、出力電流が過電流閾値の1/2より大きければ1/2以下になるまで駆動周波数を高くする(ステップ14)。ステップ13で、出力電流が過電流閾値の1/2以下であればフルブリッジ動作モードに切り替える(ステップ15)。
ステップ9で出力電流が過大電流であった場合や、ステップ10で入力電力が設定火力より大きかった場合には、駆動周波数が上限駆動周波数より低周波数か否か判断して(ステップ16)、低周波数であれば駆動周波数を高周波化し(ステップ17)、駆動周波数が上限周波数以上であれば不適正な負荷として加熱動作を停止する(ステップ18)。
以上のように、周波数制御により加熱出力制御を行う場合において、低加熱出力時にハーフブリッジ動作に切り替えることにより、フルブリッジ駆動と比較して負荷回路23への印加電圧を1/2にすることができるので、低い駆動周波数で加熱出力制御を行うことができ、スイッチング損失を低減した誘導加熱調理器を得ることができる。
実施の形態5.
この実施の形態5は、フルブリッジインバータ回路を有し、高加熱出力時にはフルブリッジインバータ回路8を形成する二つのアームをそれぞれ高周波で駆動するとともに、低加熱出力時には一方のアームを高周波駆動するとともに、もう一方のアームを低周波駆動するものであり、また、高周波駆動するアームと低周波駆動するアームを交互に切り替えるものである。回路の構成については、実施の形態1と同様として説明を省略する。また、加熱出力制御手段28の加熱出力制御処理については、実施の形態1で説明した通電率制御方式、実施の形態3で説明したアーム間位相差制御方式、実施の形態4で説明した周波数制御方式の何れでも良い。
図22は、この実施の形態5のU相アーム上下スイッチおよびV相アーム上下スイッチの駆動状態を示す。(a)はフルブリッジインバータ回路を形成する二つのアームをそれぞれ高周波で駆動している状態であり、高加熱出力状態である。(b)はU相アーム9を高周波駆動するとともに、V相アーム10を低周波駆動している状態で、負荷回路23に印加する高周波交流電圧を半減して低加熱出力とするとともに、V相アーム10の導通スイッチも切り替えることによりV相アーム上下スイッチ間で生じるオンロスのアンバランスを解消している。(c)は高周波駆動するアームと低周波駆動するアームを交互に切り替える例であり、この高周波駆動するアームを切り替えることにより、低加熱出力時の上下スイッチ間の損失バランスだけでなく、アーム間で生じるスイッチング損失のアンバランスも解消できる。また、(d)はハーフブリッジ動作で高周波駆動するアームを切り替える動作例であり、このように動作させてもアーム間のスイッチング損失のアンバランスを解消することができる。スイッチング素子で発生する損失のアンバランスにより、特定の素子に損失が集中するとその素子が熱破壊を起こし故障しやすいので、スイッチング素子間で発生する損失のバランスをとることで、安定した動作をする装置を得られる効果がある。
以上のように、この実施の形態5では、低加熱出力時にインバータ回路8の一方のアームを高周波駆動するとともに、もう一方のアームを低周波で駆動することにより、各アームの上下スイッチにおける導通時間をバランスさせて、下スイッチあるいは上スイッチに損失が集中せず、また、低周波加熱時にインバータ回路8の高周波駆動するアームと、固定あるいは低周波駆動するアームを交互に切り替え制御することにより、特定のアームに損失が集中せず、安定した動作をするしない装置を得ることができる。
2 直流電源回路、8 インバータ回路、9 U相アーム、10 V相アーム、11,12,16,17 スイッチ(スイッチング素子)、15 スナバコンデンサ、20 スナバコンデンサ、23 負荷回路、25 加熱コイル、26 共振コンデンサ、28 加熱出力制御手段(インバータ制御手段)。