以下、本発明を具体化した実施形態について、第1実施例および第2実施例を用いて説明する。第1実施例は、第1の印刷面と第2の印刷面とが、基材の裏面、つまりレンズシートとの固着面と反対側の面に形成された印刷媒体の一実施例である。また、第2実施例は、第1の印刷面と第2の印刷面とが、基材の表面、つまりレンズシートとの固着面と同じ側の面に形成された印刷媒体の一実施例である。
(第1実施例)
本発明の第1実施例となる印刷媒体10について、図1を用いて説明する。図1は、印刷媒体10の構成要素を模式的に示した説明図である。印刷媒体10は、複数の円筒状の凸レンズ20が表面(図面上側)に形成された矩形形状を有するレンチキュラーシート10a、基材30、インク吸収層40、インク透過層45、インク吸収層50、接着層61、接着層62から構成されている。
インク吸収層40およびインク透過層45は、レンチキュラーシート10aの裏面範囲に相当する面積領域を単位領域としたとき、基材30の裏面(図面下側)であってこの単位領域を有する第1の印刷面P1として形成されている。従って、第1の印刷面P1はレンチキュラーシート10aと平面的に重なることになる。また、インク吸収層50は、同じく基材30の裏面であって、同じくこの単位領域を有した第2の印刷面P2として形成されている。
接着層61と接着層62は、基材30の表面と裏面にそれぞれ形成され、それぞれが単位領域を有した接着面S1として形成されている。この接着面S1は、基材30における隣接部R1においてレンチキュラーシート10aおよび第1の印刷面P1と、また、同じく基材30における隣接部R2において第2の印刷面P2とそれぞれ隣接している。また接着面S1と第2の印刷面P2は、基材30における延在部10b(後述する)に形成されている。
本実施例では、各凸レンズ20の円筒軸方向は、矩形形状を有するレンチキュラーシート10aの長辺と平行であるものとする。また、説明の簡略化のためレンチキュラーシートは6つの円筒状の凸レンズ20から構成されているものとして以降説明する。もとより、レンチキュラーシート10aは、凸レンズ20のピッチが30〜180LPI(Lens Per Inch)であるものが通常多く用いられ、実際にはこれらに相当する本数の凸レンズが存在したものである。
また、図1に示した印刷媒体10の各構成要素は、説明の都合上相当の厚さを有して図示されているが、実際にはそれぞれ概ね厚さが数十ミクロンから数百ミクロン程度のシート状(薄板状)に形成される。
次に印刷媒体10を構成するこれらの各構成要素について具体的に順次説明する。その後、延在部10bを折り曲げて印刷媒体を葉書として作成する様子について図2を用いて説明する。
レンチキュラーシート10aは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV、PC(ポリカーボネイト)樹脂やPMMA(メタクリル)樹脂など、レンズとして用いることができる透明な樹脂材料から形成され、その裏面(図面下側)部分全体が基材30と固着されている。固着方法は、基材30の材料に応じて、溶着や接着など周知の方法を用いて行われるが、レンチキュラーシート10aと基材30が透明性を保って固着できる方法であれば何でもよい。
基材30は、透明性を有する材料から薄板状に形成され、例えばPETG樹脂などが用いられる。もとより、通常のPET樹脂などを用いてもよく、後述するインク吸収層40に形成される視差画像をレンチキュラーシート10aを介して観賞できるような透明性を有し、同じく後述する折り目から折り曲げが可能な材料であれば何でも良い。
また、基材30は、図1に示したように、レンチキュラーシート10aとの固着部から図面右側方向に延び、矩形形状を有するレンチキュラーシート10aの右側長辺のさらに右側に隣接して存在する延在部10bを形成している。延在部10bは、隣接部R1と隣接部R2を基準にして基材30を折り曲げたとき、レンチキユラーシート10aの裏面範囲全体と重なる形状を有している。つまり、延在部10bはレンチキュラーシート10aと略一致する矩形形状の単位領域を2個分有した面積になっており、従って基材30は、隣接部R1とR2とによって区画された単位領域3個分の面積領域を有している。
レンチキュラーシート10aとの固着側とは反対側となる基材30の裏面(図面下側)に形成されるインク吸収層40は、各凸レンズに対する視差画像が形成される構成要素であり、視差画像がインクの吐出による印刷によって行われたとき、吐出されたインクを吸収し、吐出された位置にインクを固着させるためのものである。このインク吸収層40によって、各凸レンズ20に対応する位置に視差画像を安定して形成することができ、立体画像を適切に形成することができるのである。このインク吸収層40は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子などを材料として形成されている。
インク吸収層40のさらに裏面に形成されるインク透過層45は、吐出されたインクが最初に付着し、その後付着したインクが透過していくように構成されている。つまり、インクを適切にインク吸収層40に移すとともに、インクを残さないようにすることで、インク透過層45が視差画像に対する下地として機能するようにしているのである。このインク透過層45は、例えば、酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)、バインダ樹脂、硫酸バリウム、ガラスファイバ、プラスチックファイバ等を材料として形成され、下地として好適な白色を呈するようになっている。
延在部10bにおいて、基材30の裏面(図面下側)に形成されるインク吸収層50は、例えば、郵便番号や宛先などといった宛名に対応する文字などの形成が、インクの吐出による印刷によって行われたとき、吐出されたインクを吸収し、吐出された位置にインクを固着させるための構成要素である。インク吸収層50は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子などを材料として形成されている。このインク吸収層50によって、宛名を適切に形成することができるのである。もとより、通常宛名を書くための葉書表面の色は、白色又は淡色であればよいことから、インクを透過し淡色を呈する材料であれば、これら以外の材料から構成されるようにしてもよい。
基材30の表面に形成される接着層61は、延在部10bにおいて、インク吸収層50が形成された基材30の単位領域を隣接部R2を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接する接着面S1の単位領域の表面に重ねて接着するためのものである。従って接着層61による接着後は、インク吸収層50に印刷された宛名は、接着面S1の表面側から観賞できることになる。
このため、接着層61は、印刷媒体10を葉書として送付する場合、仕分け作業や郵送などといった葉書としての取り扱いにおいて、第2の印刷面P2が剥がれることのない程度の接着力を有する材料によって形成する。例えば、エポキシ系やアクリル系、あるいはシアノアクリレート系の接着剤などを材料としてもよいし、両面粘着テープを材料としてもよい。もとより、基材30同士が接着できる材料であれば何でもよい。
基材30の裏面に形成される接着層62は、延在部10bにおいて、接着面S1の単位領域を隣接部R1を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接するインク透過層45に重ねて接着するためのものである。従って接着層62による接着後は、接着面S1の単位領域がレンチキュラーシート10aの裏面側に重なることになる。
このため、接着層62は、インク透過層45と基材30とを貼り付けることが可能な接着力を有する材料によって形成する。例えば、エポキシ系やアクリル系、あるいはシアノアクリレート系の接着剤などを材料として形成してもよい。もとより、インク吸収層45と基材30とが接着ができる材料であれば何でもよい。
なお、本実施例では接着層の表面に剥離シートを設けていないが、接着層が汚れるなどによって接着力が劣化することが想定されるような場合は、接着層を保護するための剥離シートを設けるようにしてもよい。もとより、剥離シートは、単位領域同士を接着する際に、接着に先んじて接着層から剥離される。従って、接着層から剥離できる材料であれば、樹脂材料でも紙でも何でもよい。
それでは次に、延在部10bを順次折り曲げてレンチキュラーシート10aの裏面側に重ねて接着する様子を、図2を用いて説明する。図2は、本実施例における印刷媒体10を厚み方向から見た模式図である。なお、基材30やインク吸収層40など印刷媒体10を構成する各構成要素は、前述したように概ね厚さが数十ミクロンから数百ミクロンのシート状(薄板状)に形成されることから、図2では説明の簡略化のため、各構成要素を省略し、基材30のみを一枚のシートとして図示した。
図2(a)に示したように、印刷媒体10には、いずれも基材30の裏面側(図面下側)であって、レンチキュラーシート10aの単位領域に相当する第1の印刷面P1に「視差画像」が印刷され、第2の印刷面P2に「宛名」が印刷されているものとする。このとき、図中太い矢印で示したように、視差画像はレンチキュラーシート10aの表面方向から、宛名はこれとは反対方向となる基材30の裏面方向から視認できる状態となる。また、同じく印刷媒体10の裏面には、隣接部R1に相当する「折り目T1」と、隣接部R2に相当する「折り目T2」とが形成されている。「折り目T1」と「折り目T2」の形成については、後ほど補足説明する。
まず、図2(a)に示したように、折り目T2を基準として、基材30を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に第2の印刷面P2を曲げ込むことで、接着層61によって、接着面S1の単位領域と第2の印刷面P2の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図2(b)に示す。図2(b)にて太い矢印で示したように、宛名は視差画像と同じ方向、つまり基材30の表面方向から視認できる状態となる。
次に、図2(b)に示したように、折り目T1を基準として、基材30を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に接着面S1を曲げ込むことで、接着層62によって接着面S1の単位領域と、第1の印刷面P1の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図2(c)に示す。
図2(c)から明らかなように、折り目T2と折り目T1を基準として折り曲げることによって、延在部10bはレンチキュラーシート10aの裏面範囲に重ねて貼り付けられるのである。さらに、図2(c)にて太い矢印で示したように、印刷媒体10は、レンチキュラーシート10aの表面方向からは視差画像を視認することができ、裏面方向からは宛名を視認することができる状態となる。つまり、印刷媒体10は、視差画像による立体画像を観賞することができる片面と、宛名が確認できる片面とを有する「葉書」の状態となるのである。
図2で説明したように、本実施例における印刷媒体10は、折り目T1およびT2を基準にして基材30を交互に折り曲げることによって、容易にレンチキュラーシート10aの部分と、延在部10bの部分とを貼り合わせることができる。従って、レンチキュラーシートとの位置合わせを行いながら、接着剤を用いて視差画像の上から宛名書き用紙を貼り付けるというような面倒な作業を行うことなく、作成者は、容易に立体画像が観賞できる葉書を作成することが可能となる。
次に、前述した「視差画像」と「宛名」の印刷について図3を用いて説明する。図3(a)は印刷媒体10を厚み方向から見た模式図であり、図3(b)はそれを上面方向から見た模式図である。なお、本実施例では、印刷ヘッドを有するキャリッジを走査し、この印刷ヘッドからインクを吐出して印刷する方式のプリンタによって、視差画像と宛名および折り目を印刷媒体に印刷するものとする。もとより、キャリッジを走査する方式のプリンタであれば感熱方式などのインクを吐出する方式以外のプリンタを用いて印刷するものとしてもよい。
図3(a)に示したように、印刷媒体10の図面上側には、プリンタの印刷ヘッド(図示せず)を備えたキャリッジ90が配置され、図中矢印で示したように、キャリッジ90が図面左右方向に走査されることによって印刷媒体への印刷が行われる。もとより、印刷媒体10は、ローラーなど図示しないプリンタの搬送手段によって図面手前から後ろ方向に搬送され、印刷媒体10の全体領域に印刷が行われるのである。
印刷媒体10のうち、レンチキュラーシート10aの図面下側には発光面99が配置されている。一方キャリッジ90には検出手段91が設けられ、この発光面99から発せられ、各凸レンズ20および基材、インク吸収層、インク透過層を透過した透過光92を検出する。この透過光92は、凸レンズ20の厚みの変化に基づいて光量変化が生じることから、検出手段91は、キャリッジ走査(図中矢印)に合わせて生じる透過光の光量変化を検出してレンチキュラーシート10aにおける各凸レンズ20のピッチを検出する。
検出範囲は、図3(b)の網掛け部分で示したように、レンチキュラーシート10aが存在する範囲全体であり、この範囲について、図3(b)中の矢印で示したように、キャリッジ90の走査に伴ってピッチ検出走査を行う。そして、検出した結果を、所定の処理を行い、例えばプリンタに内蔵された記憶手段に記憶することで、レンチキュラーシート10aの各凸レンズ20のピッチ情報を、視差画像の印刷に先んじて記憶することができる。
そして、キャリッジ90が視差画像印刷範囲を走査するとき、前述したように視差画像の印刷に先んじて記憶されている各凸レンズ20のピッチ情報を読み出し、読み出したピッチ情報に基づいて、各凸レンズ20に対応する所定の位置に、キャリッジ90に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク95を吐出して、インク透過層45の表面にインクを付着させ、所定の視差画像を印刷する。その後、図1で説明したように、付着したインクがインク吸収層に移ることによって、視差画像は各凸レンズ20に対して適切な位置に形成されるのである。
次に、図3(a)において破線で示したように、視差画像印刷範囲から宛名印刷範囲にキャリッジ90の走査位置が移動すると、葉書として送付する相手の名前や住所などの宛名を印刷する。例えば、図3(b)の右側網掛け部に示したように、名前領域81や住所領域82に所定の文字を印刷する。この他にも、「郵便はがき」という文字など、葉書として満たすべき記載要件に応じて必要な文字を印刷する。具体的には、キャリッジ90に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク95aを吐出してインク吸収層50の表面にインクを付着させることで、宛名を印刷するのである。ちなみに、図3(a)(b)において破線で示したキャリッジ90の走査位置では、名前領域81へ名前が印刷されている状態を示している。
ところで、視差画像は通常カラー画像であることからインク95はカラーインクが用いられる。また、幅の狭い凸レンズの1ピッチ内に右目用と左目用の視差画像を印刷するため、吐出されるインク滴は小さいサイズのものが適当である。一方、宛名書きは一般に郵便番号や宛名などの文字であることから、インク95aは通常黒インクが用いられる。また、文字の太さも視認性の関係から太目の文字が使われることが多いため、吐出されるインク滴は大きいサイズのものが適当である。
本実施例では、キャリッジ90に備えた印刷ヘッドから、このような視差画像と宛名にそれぞれ好適なインク95およびインク95aを吐出可能であるものとする。そして、視差画像印刷範囲ではインク95を、宛名印刷範囲ではインク95aをそれぞれ用いる。こうすることによって、視差画像と宛名の両方を、キャリッジ90の走査によって同時に印刷することが可能となる。
また、視差画像に比べて通常宛名は大きな文字で構成されることから、キャリッジ90の走査における送りピッチを、宛名印刷範囲では視差画像印刷範囲に対して大きくしてもよい。こうすれば、宛名印刷に要する時間を短縮することができる。もとより、インク95aはカラーインクを用いてもよいし、インク滴の大きさを同じにしてもよい。また、キャリッジの送りピッチを同じにしてもよい。
次に、「折り目T1」および「折り目T2」の形成について補足説明する。本実施例では、図3(b)に示したように、キャリッジ90の視差画像の印刷走査において、視差画像印刷範囲の右端、つまり図1において説明した隣接部R1に対応する位置に折り目T1を印刷する。また宛名印刷範囲の左端、つまり図1において説明した隣接部R2に対応する位置に折り目T2をそれぞれ印刷することで折り目を形成する。従って、それぞれの位置において、キャリッジ90の印刷ヘッドからインクを吐出することによって、インク透過層45およびインク吸収層50の表面にインクを付着させ、折り目T1およびT2を印刷する。
このとき、折り目T1としてインク透過層45に付着されたインクは、視差画像を印刷したインクと同様、その後透過してインク吸収層40にて定着されることになる。従って、作成者は、印刷された折り目T1を、インク透過層45が介在する状態で確認することになることから、折り目T1を印刷するインクに、黒色など視認性が高い色のインクを用いるとよい。
また、図3(b)では、印刷された折り目T1およびT2を、一例として上下それぞれ1個のドットで示したが、もとより、作成者が視認できる程度の太さを有する破線や実線としてもよい。また隣接部R1の全体に印刷することとしてもよいし、一部のみ印刷することとしてもよい。なお、図2の説明から明らかなように、隣接部R1と隣接部R2とでは、基材30を折り曲げる方向が異なることから、折り目T1は谷折線(破線)、折り目T2は山折線(一点鎖線)としてもよい。こうすれば、折り目の位置に加えて曲げ方向についても視認性を高めることができる。
以上説明したように、第1実施例に示した印刷媒体10によれば、基材30について、いずれもレンチキュラーシート10aとの固着側と反対側に設けられた第1の印刷面P1に「視差画像」を、第2の印刷面P2に「宛名」をそれぞれ印刷することができる。従って、印刷媒体を裏返すことなく、一つの面に対する印刷つまり片面印刷によって視差画像と宛名を同時に印刷することが可能となる。
また、凸レンズ20のピッチ情報を、視差画像の印刷に先んじて検出し、検出したピッチ情報に基づいて視差画像を第1の印刷面P1に印刷するので、各凸レンズ20位置に合わせた位置に視差画像を印刷することができる。
また、第1の印刷面P1と第2の印刷面P2との間に接着面S1を介在させ、折り目T2およびT1を基準として基材を順次折り曲げることで、宛名が印刷された延在部10bをレンチキュラーシート10aの裏面側に容易に貼り合わせることが可能となる。従って、作成者は、別途接着剤を用いて延在部10bをレンチキュラーシート10aの裏面側に貼り付けるといった面倒な作業を行うことなく葉書などにして他の人に送付することができる。
(第2実施例)
次に、第1の印刷面と第2の印刷面とが、基材の表面、つまりレンズシートとの固着面と同じ側の面に形成された印刷媒体の一実施例となる印刷媒体100について、図4を用いて説明する。図4は、印刷媒体100の構成要素を模式的に示した説明図である。印刷媒体100は、複数の円筒状の凸レンズ200が表面(図面上側)に形成された矩形形状を有するレンチキュラーシート100a、基材300、インク吸収層400、インク吸収層500、インク透過層550、接着層610、接着層620、接着層630、接着層640から構成されている。
インク吸収層400およびインク吸収層500は、レンチキュラーシート100aの裏面範囲に相当する面積領域を単位領域としたとき、基材300の表面(図面上側)であってこの単位領域を有する第1の印刷面P10および第2の印刷面P20としてそれぞれ形成されている。
接着層630と接着層640は、基材300の表面と裏面にそれぞれ形成され、それぞれが単位領域を有した接着面S10として形成されている。この接着面S10は、基材300における隣接部R11においてレンチキュラーシート100aと、また、同じく基材300における隣接部R12において第1の印刷面P10とそれぞれ隣接している。
また同様に、接着層610と接着層620は、基材300の表面と裏面にそれぞれ形成され、それぞれが単位領域を有した接着面S20として形成されている。この接着面S20は、基材300における隣接部R13において第1の印刷面P10と、また、同じく基材300における隣接部R14において第2の印刷面P20とそれぞれ隣接している。
従って、接着面S10、第1の印刷面P10、接着面S20、および第2の印刷面P20は、後述する延在部100bに形成されることになる。
本実施例では、各凸レンズ200の円筒軸方向は、矩形形状を有するレンチキュラーシート100aの長辺と平行であるものとする。また、説明の簡略化のためレンチキュラーシートは6つの円筒状の凸レンズ200から構成されているものとして以降説明する。もとより、レンチキュラーシート100aは、凸レンズ200のピッチが30〜180LPI(Lens Per Inch)であるものが通常多く用いられ、実際にはこれらに相当する本数の凸レンズが存在したものである。
また、図4に示した印刷媒体100の各構成要素は、説明の都合上相当の厚さを有して図示されているが、実際にはそれぞれ概ね厚さが数十ミクロンから数百ミクロン程度のシート状(薄板状)に形成される。
次に印刷媒体100を構成するこれらの各構成要素について具体的に順次説明する。その後、延在部100bを折り曲げて印刷媒体を葉書として作成する様子について図5を用いて説明する。
レンチキュラーシート100aは、第1実施例と同様な透明な樹脂材料から形成され、その裏面(図面下側)部分全体が基材300と固着されている。固着方法は、基材300の材料に応じて、溶着や接着など周知の方法を用いて行われるが、レンチキュラーシート100aと基材300が透明性を保って固着できる方法であれば何でもよい。
基材300は、第1実施例と同様な透明性を有する材料から薄板状に形成される。もとより、インク吸収層400に形成される「視差画像」をレンチキュラーシート100aを介して観賞でき、また、インク吸収層500に形成される「宛名」を視認できる程度の透明性を有し、さらに各隣接部に形成される「折り目」から折り曲げが可能な材料であれば何でも良い。この「視差画像」「宛名」「折り目」の形成については後述する。
また、基材300は、図4に示したように、レンチキュラーシート100aとの固着部から図面右側方向に延び、矩形形状を有するレンチキュラーシート100aの右側長辺のさらに右側に隣接して存在する延在部100bを形成している。そして、レンチキュラーシート100aの右側長辺に位置する隣接部R11に対応した折り目と、第1の印刷面P10の左右両側に位置する隣接部R12およびR13に対応した折り目と、第2の印刷面P20の左側に位置する隣接部R14に対応した折り目とに従って基材300を折り曲げたとき、延在部100bはレンチキュラーシート100aの裏面全体と重なる形状を有している。つまり、延在部100bはレンチキュラーシート100aと略一致する矩形形状の単位領域を4個分有した面積になっており、従って基材300は、隣接部R11からR14によって区画された単位領域5個分の面積領域を有している。
レンチキュラーシート100aとの固着側と同じ側となる基材300の表面(図面上側)に形成されるインク吸収層400は、各凸レンズ200に対する視差画像が形成される構成要素であり、視差画像がインクの吐出による印刷によって行われたとき、吐出されたインクを吸収し、吐出された位置にインクを固着させるためのものである。このインク吸収層400によって、各凸レンズ200に対応する位置に視差画像を安定して形成することができ、立体画像を適切に形成することができるのである。このインク吸収層400は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子などを材料として形成されている。
延在部100bにおいて、同じく基材300の表面に形成されるインク吸収層500は、例えば、郵便番号や宛先などといった宛名に対応する文字の形成が、インクの吐出による印刷によって行われたとき、吐出されたインクを吸収し、吐出された位置にインクを固着させるための構成要素である。インク吸収層500は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子などを材料として形成されている。このインク吸収層500によって、印刷された宛名を適切に形成することができるのである。
インク吸収層500の表面に形成されるインク透過層550は、吐出されたインクが最初に付着し、その後付着したインクが透過していくように構成されている。つまり、インクを適切にインク吸収層500に移すとともに、インクを残さないようにすることで、インク透過層550が宛名に対する下地として機能するようにしているのである。このインク透過層550は、例えば、酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)、バインダ樹脂、硫酸バリウム、ガラスファイバ、プラスチックファイバ等を材料として形成され、下地として好適な白色を呈するようになっている。もとより、通常宛名を書くための葉書表面の色は、白色又は淡色であればよいことから、インクを透過し淡色を呈する材料であれば、これら以外の材料から構成されるようにしてもよい。
基材300の表面に形成される接着層610は、延在部100bにおいて、インク吸収層500が形成された基材300の単位領域を隣接部R14を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接する接着面S20の単位領域の表面に重ねて接着するためのものである。従って接着層610による接着後は、インク吸収層500に印刷された宛名は、接着面S20の表面側から観賞できることになる。
基材300の裏面に形成される接着層620は、延在部100bにおいて、接着面S20の単位領域を隣接部R13を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接する第1の印刷面P10の裏面側に重ねて接着するためのものである。従って接着層620による接着後は、接着面S20の単位領域が第1の印刷面P10の裏面側に重なることになる。
また、基材300の表面に形成される接着層630は、延在部100bにおいて、インク吸収層400が形成された基材300の単位領域を、隣接部R12を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接する接着面S10の単位領域の表面に重ねて接着するためのものである。従って接着層630による接着後は、インク吸収層400に印刷された視差画像は、接着面S10の裏面側から観賞できることになる。
基材300の裏面に形成される接着層640は、延在部100bにおいて、接着面S10の単位領域を隣接部R11を基準にして折り曲げ、図面左側に隣接するレンチキュラーシート100aの裏面側に重ねて接着するためのものである。従って接着層640による接着後は、接着面S20の単位領域がレンチキュラーシート100aの裏面側に重なることになる。
なお、接着層630および接着層640は、レンチキュラーシート100aと視差画像が印刷されたインク吸収層400との間に介在することになることから、レンチキュラーシート100aの表面方向から視差画像が視認できる程度に透明な材料から形成される。
また、各接着層610〜640は、印刷媒体100を葉書として送付する場合、仕分け作業や郵送などといった葉書としての取り扱いにおいて、第1の印刷面P10や第2の印刷面P20などの各単位領域が各接着面において剥がれることのない程度の接着力を有する材料によって形成される。例えば、エポキシ系やアクリル系、あるいはシアノアクリレート系の接着剤などを材料としたり、両面粘着テープを材料としたりして形成される。
また、本実施例では接着層の表面に剥離シートを設けていないが、接着層が汚れるなどによって接着力が劣化することが想定されるような場合は、接着層を保護するための剥離シートを設けるようにしてもよい。もとより、剥離シートは、単位領域同士を接着する際に、接着に先んじて接着層から剥離される。従って、接着層から剥離できる材料であれば、樹脂材料でも紙でも何でもよい。
それでは次に、延在部100bを順次折り曲げてレンチキュラーシート100aの裏面側に重ねて接着する様子を、図5を用いて説明する。
図5は、本実施例における印刷媒体100を厚み方向から見た模式図である。なお、基材300やインク吸収層400など印刷媒体100を構成する各構成要素は、前述したように概ね厚さが数十ミクロンから数百ミクロンのシート状(薄板状)に形成されているが、図5では説明に対する理解を容易にするため、一部構成要素を省略し、基材300と第1の印刷面P10と第2の印刷面P20とを図示した。
図5(a)に示したように、印刷媒体100には、いずれも基材300の表面側(図面上側)であって、第1の印刷面P10に「視差画像」が印刷され、第2の印刷面P20に「宛名」が印刷されているものとする。このとき、図中太い矢印で示したように、視差画像は第1の印刷面P10の表面方向つまり基材300の表面方向から、宛名はこれとは反対方向となる基材300の裏面方向からそれぞれ視認できる状態となる。また、同じく印刷媒体100には、各隣接部R11〜R14にそれぞれ対応した「折り目T11〜T14」が形成されている。この「視差画像」「宛名」の印刷と、「折り目T11〜T14」の形成については後述する。
まず、図5(a)に示したように、折り目T14を基準として、基材300を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に第2の印刷面P20を曲げ込むことで、接着層610によって接着面S20の単位領域と、第2の印刷面P20の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図5(b)に示す。図5(b)にて太い矢印で示したように、宛名は視差画像と同じ方向、つまり基材300の表面方向から視認できる状態となる。
次に、図5(b)に示したように、折り目T13を基準として、基材300を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に接着面S20を曲げ込むことで、接着層620によって接着面S20の単位領域と、第1の印刷面P10の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図5(c)に示す。図5(c)にて太い矢印で示したように、宛名は視差画像に対して背面側、つまり基材300の裏面方向から視認できる状態となる。
続いて、図5(c)に示したように、折り目T12を基準として、基材300を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に第1の印刷面P10を曲げ込むことで、接着層630によって接着面S10の単位領域と、第1の印刷面P10の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図5(d)に示す。図5(d)にて太い矢印で示したように、宛名は基材300の表面方向から視認できる状態となり、一方視差画像は基材300の裏面方向から視認できる状態となる。
次に、図5(d)に示したように、折り目T11を基準として、基材300を折り曲げる。つまり、図中矢印で示した折り曲げ方向に接着面S10を曲げ込むことで、接着層640によって接着面S10の単位領域と、レンチキュラーシート100aの裏面範囲の単位領域とを貼り合わせる。貼り合わせ後の状態を図5(e)に示す。
図5(e)から明らかなように、基材300を、折り目T11〜T14を基準として順次折り曲げることによって、延在部100bはレンチキュラーシート100aの裏面範囲に重ねて貼り付けられるのである。さらに、図5(e)にて太い矢印で示したように、印刷媒体100は、レンチキュラーシート100aの表面方向からは視差画像を視認することができ、裏面方向からは宛名が視認できる状態となる。つまり、印刷媒体10は、視差画像による立体画像を観賞することができる片面と、宛名が確認できる片面とを有する「葉書」の状態となるのである。
また、図5で説明したように、本実施例における印刷媒体100は、折り目T14からT11を順次基準にして延在部100b折り曲げることによって、容易にレンチキュラーシート100aの部分と、延在部100bの部分とを貼り合わせることができる。また折り目を基準にして交互に折り曲げることで、各単位領域は互いの位置ズレが抑制された状態で貼り合わせることができる。従って、レンチキュラーシートとの位置合わせを行いながら、接着剤を用いて視差画像の上から宛名が書かれた用紙を貼り付けるというような面倒な作業を行うことなく、作成者は、容易に立体画像が観賞できる葉書を作成することが可能となる。また、図4、図5の説明から明らかなように、第1の印刷面P10と第2の印刷面P20には接着層を形成しないため、視差画像や宛名を汚したりして損傷させることも抑制できる。
それでは、前述した「視差画像」と「宛名」の印刷について、図6を用いて説明する。図6(a)は印刷媒体100を厚み方向から見た模式図であり、図6(b)はそれを上面方向から見た模式図である。なお、本実施例では、印刷ヘッドを有するキャリッジを走査し、この印刷ヘッドからインクを吐出して印刷する方式のプリンタによって、視差画像と宛名および折り目を印刷媒体に印刷するものとする。もとより、キャリッジを走査する方式のプリンタであればインクを吐出する方式以外のプリンタを用いて印刷するものとしてもよい。
図6(a)に示したように、印刷媒体100の図面上側には、プリンタの印刷ヘッド(図示せず)を備えたキャリッジ900が配置され、図面中矢印で示したように、キャリッジ900が図面左右方向に走査されることによって印刷媒体への印刷が行われる。もとより、印刷媒体100は、ローラーなど図示しないプリンタの搬送手段によって図面手前から後ろ方向に搬送され、印刷媒体100の全体領域に対して印刷が行われるのである。
さて、図6(a)に示したように、キャリッジ900には、反射光930を利用して各凸レンズ200のピッチを検出するための検出装置910が備えられ、キャリッジ走査(図中矢印)に合わせて凸レンズ200のピッチを検出する。ピッチ検出範囲は、レンチキュラーシート100aが存在する範囲であり、この範囲において、図6(b)の左側に矢印で示したように、キャリッジ900の走査に伴ってピッチ検出走査を行う。そして、検出した結果を、所定の処理を行い、例えばプリンタに内蔵された記憶手段に記憶することで、レンチキュラーシート100aにおける各凸レンズ200のピッチ情報を記憶する。
そして、図6(a)の中央に示したように、キャリッジ900が視差画像印刷範囲を走査するとき、前述したように視差画像の印刷に先んじて記憶されている各凸レンズ200のピッチ情報を読み出し、読み出したピッチ情報に基づいて、各凸レンズ200に対応する所定の位置に、キャリッジ900に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク950を吐出して、インク吸収層400にインクを付着させ、所定の視差画像を印刷する。視差画像は、図6(b)の中央網掛け部に示した視差画像印刷範囲全体に印刷される。このように、各凸レンズ200のピッチ情報に基づいて、右目用と左目用の視差画像を形成することによって、視差画像はレンチキュラーシート100aの各凸レンズ200に対して適切な位置に形成される。その後、前述したように第1の印刷面P10がレンチキュラーシート100aの裏面側の適切な位置に貼り付けられることによって、立体画像を観賞することができるのである。
ところで、各凸レンズ200のピッチ情報に基づいて形成された視差画像は、図5の説明から明らかなように接着面S10に形成された接着層630と640とによって、2度左右が反転して折り曲げられ、レンチキュラーシート100aの裏面側に貼り付けられる。このため、図6(b)において、各凸レンズの位置と、その凸レンズに対応する視差画像の位置とは、左右反転することなく同じ位置関係になる。従って、記憶された各凸レンズのピッチ情報を左右反転などの付加処理を行うことなく、記憶されたピッチ情報をそのまま読み出して用いることができる。このように、レンチキュラーシート100aと第1の印刷面との間に、接着面S10を介在させることで、レンチキュラーシート100aが固着された面と同じ側に第1の印刷面P10を形成できる。また、凸レンズ200のピッチ情報を付加処理することなく用いることも可能になる。
続いて、図6(a)の右側に示したように、視差画像印刷範囲から宛名印刷範囲にキャリッジ900の走査位置が移動すると、葉書として送付する相手の名前や住所を印刷する。例えば、図6(b)の右側網掛け部に示したように、名前領域810や住所領域820に所定の文字を印刷する。この他にも、「郵便はがき」という文字など、葉書として満たすべき記載要件に応じて必要な文字を印刷する。具体的には、キャリッジ900に備えられた印刷ヘッド(図示せず)からインク950aを吐出してインク透過層550の表面にインクを付着させることで、宛名を印刷するのである。ちなみに、図6(a)(b)においてインク950bは、名前領域810へ名前を印刷している状態を示している。
また、本実施例では、印刷される宛名は、図6(b)において、図面正面方向から見たとき左右が反転した裏文字状態で印刷されている。これは、図5にて説明したように、第2の印刷面P20を接着面S20に重ねると、印刷された宛名は左右反転した文字となるからである。従って、この状態で、正しく文字が読めるように、予め左右反転した裏文字で印刷しておくのである。
ところで、視差画像は通常カラー画像であることからインク950はカラーインクが用いられる。また、幅の狭い凸レンズの1ピッチ内に右目用と左目用の視差画像を印刷するため、吐出されるインク滴は小さいサイズのものが適当である。一方、宛名書きは一般に郵便番号や宛名などの文字であることから、インク950aは通常黒インクが用いられる。また、文字の太さも視認性の関係から太目の文字が使われることが多いため、吐出されるインク滴は大きいサイズのものが適当である。
本実施例では、キャリッジ900に備えた印刷ヘッドから、このような視差画像と宛名にそれぞれ好適なインク950およびインク950aを吐出可能であるものとする。そして、視差画像印刷範囲ではインク950を、宛名印刷範囲ではインク950aをそれぞれ用いる。こうすることによって、視差画像と宛名の両方を、キャリッジ900の走査によって同時に印刷することが可能となる。
また、視差画像に比べて通常宛名は大きな文字で構成されることから、キャリッジ900の走査における送りピッチを、宛名印刷範囲では視差画像印刷範囲に対して大きくしてもよい。こうすれば、宛名印刷に要する時間を短縮することができる。もとより、インク950aはカラーインクを用いてもよいし、インク滴の大きさを同じにしてもよい。また、キャリッジの送りピッチを同じにしてもよい。
次に、「折り目T11〜T14」の形成について説明する。本実施例では、図6(b)に示したように、キャリッジ900の走査において、視差画像印刷範囲の左右両端、つまり図4において説明した隣接部R12およびR13に対応する位置に折り目T12およびT13をそれぞれ印刷して形成する。また宛名印刷範囲の左端、つまり図4において説明した隣接部R14に対応する位置に折り目T14をそれぞれ印刷して形成する。従って、それぞれの位置において、キャリッジ900の印刷ヘッドからインクを吐出することによって、インク吸収層400およびインク透過層550の表面にインクを付着させ、折り目T12〜T14の印刷を行う。
このとき、折り目T14としてインク透過層550に付着されたインクは、宛名を印刷したインクと同様、その後透過してインク吸収層500にて定着されることになる。従って、作成者は、印刷された折り目T14の位置を、インク透過層550が介在する状態で確認することになることから、折り目T14を印刷するインクに、黒色など視認性が高い色のインクを用いるとよい。
また、図6(b)では、印刷された折り目T12〜T14を、一例として上下それぞれ1個のドットで示したが、これ以外にも、作成者が視認できる程度の太さを有する破線や実線としてもよい。また各隣接部の全域に印刷することとしてもよいし、一部のみ印刷することとしてもよい。なお、図5の説明から明らかなように、折り目T12とT14に対して折り目T13では、基材を折り曲げる方向が異なることから、折り目をT12とT14は谷折線(破線)、折り目T13は山折線(一点鎖線)としてもよい。こうすれば、折り目の位置に加え、折り曲げ方向についての視認性を高めることができる。
なお、本実施例では、隣接部R11に相当する位置に形成する折り目T11は、当該部分に印刷面が形成されていないことから、レンチキュラーシート100aの右側長辺におけるシート端部を折り目T11として用いることとする。
以上説明したように、第2実施例に示した印刷媒体100によれば、基材300について、どちらもレンチキュラーシート100aとの固着側と同じ側に設けられている第1の印刷面P10に「視差画像」を、第2の印刷面P20に「宛名」をそれぞれ印刷することができる。従って、印刷媒体を裏返すことなく、一つの面に対する印刷つまり片面印刷によって視差画像と宛名を同時に印刷することが可能となる。
また、視差画像の印刷時に凸レンズ200のピッチ情報をレンズの反射光を用いることで精度よく読み取ることができ、また読み取ったピッチ情報をそのまま用いて第1の印刷面P10に視差画像を印刷することができるので、各凸レンズ200に対して位置精度のよい視差画像を印刷することが可能となる。
また、第2の印刷面P20と第1の印刷面P10との間に接着面S20を介在させ、さらに第1の印刷面P10とレンチキュラーシート100aとの間に接着面S10を介在させることで、視差画像や宛名の印刷面に接着層を形成することなく、折り目T14からT11を基準として基材300を順次折り曲げ、延在部100bの全体をレンチキュラーシート10aの裏面側に折り重ねて貼り合わせることが可能となる。従って、作成者は、別途接着剤を用いて延在部100bをレンチキュラーシート100aの裏面側に貼り付けるといった面倒な作業を行うことなく、また視差画像や宛名を損傷することなく葉書などにして他の人に送付することができる。また、延在部100bを、折り目を基準にして交互に折り曲げることから、凸レンズ200に対する視差画像の位置ズレを抑制してレンチキュラーシート100aの裏面側に貼り付けることができる。
以上、第1実施例と第2実施例について説明したが、これまでの説明から明らかなように、第1の印刷面と第2印刷面との間に接着面を介在させることによって、第1の印刷面と第2の印刷面とを基材の一方の面に形成することができる。またレンチキュラーシートと第1の印刷面との間に接着面を介在させることによって、第1の印刷面および第2の印刷面をレンチキュラーシートが固着された面と同じ基材の表面側としたり、視差画像の視認方向を印刷面側としたりすることができる。言い換えれば、接着層の設け方によって、作成者が所望する印刷方法に好適な印刷媒体を形成することができることになる。
例えば、作成者が用いるプリンタが、凸レンズのピッチを反射光を用いて検出するプリンタであった場合は、第2実施例のように、レンチキュラーシートと第1の印刷面に接着層を介在させる。あるいは、視差画像を写真用紙に印刷したい場合は、印刷面に対して裏面側からは視差画像が視認できないので、視差画像が印刷面側から視認できる第2の実施例のように接着層を介在させればよい。このように、接着層の介在位置および介在数を設定することによって、視差画像および宛名の印刷面の形成位置が調整でき、この結果、作成者の所望する印刷媒体を形成することができるのである。
以上、本発明を具体化した実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
(第1変形例)
上記第1実施例および第2実施例では、図2および図5の説明から明らかなように、視差画像は基材の表面(図面上側)方向から正しく見え、宛名は基材の裏面(図面下側)方向から正しく見える。このように、視差画像を視認する方向と、宛名を視認する方向とは逆の方向になっている。このため、第1の印刷面と第2の印刷面とを形成する材料はそれぞれ異なるものになっていた。
そこで、第1変形例では、第1の印刷面と第2の印刷面との間にさらに接着面を介在させることとしてもよい。こうすれば、視差画像を視認する方向と、宛名を視認する方向とを同じ方向にすることができ、第1の印刷面と第2の印刷面とを同じ材料で形成することが可能となる。
第1変形例を図7を用いて説明する。図7(a)は、第1実施例の印刷媒体10を示し、図7(b)は、第1実施例についての第1変形例を示した模式図である。また、図7(c)は、第2実施例の印刷媒体100を示し、図7(d)は、第2実施例についての第1変形例を示した模式図である。
図7(a)にて太い矢印で示したように、第1実施例の印刷媒体10では、視差画像が図面上側方向から、宛名が図面下側方向から視認できる状態となっていた。そこで、図7(b)に示したように、単位領域を有する接着面S2を、更に接着面S1に隣接して図面右側に設ける。そして、設けた接着面S2の裏面に接着層を形成するのである。こうすることで、図7(b)にて太い矢印で示したように宛名の視認方向は視差画像の視認方向と同じ方向になる。なお、宛名は図示した方向に折り曲げられると左右が反転することから、第1変形例では宛名を裏文字にて印刷することになる。
また、図7(c)にて太い矢印で示したように、第2実施例の印刷媒体100では、同じく視差画像が図面上側方向から、宛名が図面下側方向から視認できる状態となっていた。そこで、図7(d)に示したように、単位領域を有する接着面S21を、更に接着面S20に隣接して図面右側に設ける。そして、接着面S21の裏面に接着層を形成するのである。こうすることで、図7(d)にて太い矢印で示したように宛名の視認方向は視差画像の視認方向と同じ方向になる。このとき、第2実施例では宛名を裏文字で印刷したが、図示した方向に折り曲げられると左右が反転することから、第1変形例では宛名を左右反転しない表文字にて印刷することになる。
このように、図7に示したように、接着面を更に介在追加することで、第1の印刷面を形成する材料と第2の印刷面を形成する材料とを同じにすることができる。例えば、図7(b)に示した印刷媒体では、両方の印刷面をインク吸収層とインク透過層とによって形成してもよい。こうすれば、第1の印刷面と第2の印刷面とを同じ材料で形成できるため印刷面の形成作業が容易となる。
また、図7(d)に示した印刷媒体では、第1の印刷面と第2の印刷面とをインク吸収層にて形成することとしてもよい。あるいは、両方の印刷面をインクジェット紙や写真用紙などの印刷用紙を用いて形成することとしてもよい。こうすれば、第1の印刷面と第2の印刷面とを同じ材料で形成できるため印刷面の形成作業が容易となる。特に、印刷用紙に写真用紙を用いた場合は、視差画像の印刷品質を向上させることが可能になる。
また、各印刷面の形成において各層または印刷用紙の厚さを同じにするとよい。こうすれば、印刷面の厚さが同じになることから、印刷面の形成作業が更に容易になる。
(第2変形例)
上記第1および第2実施例では、例えば図1に示したように、レンチキュラーシート10aの表面に形成された円筒形状の各凸レンズ20の円筒軸方向は、矩形形状を有するレンチキュラーシート10aの長辺と平行であることとした。そこで、本変形例では、凸レンズの円筒軸方向はレンチキュラーシート10aの長辺と平行でないこととしてもよい。
第2変形例を、図8を用いて説明する。図8(a)は、上記第1実施例での印刷媒体10を示す模式図で、図8(b)は本変形例の印刷媒体を示す模式図である。上記第1実施例では、図8(a)に示したように、レンチキュラーシート10aは図面上下方向となる縦方向に円筒軸を持つ凸レンズが並んだレンチキュラーシートが形成されており、その右端部に位置する長辺10kから右側方向に延在部10bが存在する。従って、図8(a)では、矢印で示したキャリッジ走査によって、凸レンズのピッチ情報の検出と視差画像および宛名の印刷とを同時に行うことができた。
これと比較して、図8(b)に示した本変形例での印刷媒体11は、凸レンズの円筒軸21が図面左右方向となる横方向になった状態のレンチキュラーシート11aと、図面下方向に形成された延在部11bとから構成されている。図8(b)に示した印刷媒体11の場合、図8(a)にて矢印で示したキャリッジ走査方向によって各凸レンズのピッチを検出すると、検出される凸レンズ20のピッチ数は少なくなったり、全く検出されなくなったりしてしまう。これに起因して、検出されたピッチ情報の精度が落ちたり、ピッチ情報が存在しなくなったりしてしまうことになるため、適切な位置に視差画像を印刷することが出来なくなってしまう。
そこで、延在部11bを、矩形形状を有するレンチキュラーシートの長辺11kに隣接して形成するのではなく、短辺11hに隣接した下側に形成するのである。こうすることによって、視差画像および宛名印刷時におけるキャリッジ走査方向が、図中矢印で示した上下方向になるように印刷媒体11をプリンタにセットして印刷することができる。この結果、検出される凸レンズのピッチ数は多くなり、ピッチ情報の精度は高くなる。もとより、延在部12bを下側でなく上側に形成してもよい。
なお、各凸レンズの円筒軸方向が、長辺あるいは短辺に対して斜めになっている場合は、円筒軸の方向に対して平行に近い方の辺から延在部を形成するとよい。こうすれば、検出される凸レンズのピッチ数は多くなり、ピッチ情報の精度は高くなる。
(第3変形例)
上記第1実施例および第2実施例では、図1および図4に示したように、延在部は、各単位領域の長辺を互いの隣接部として、レンチキュラーシートの右側方向に連続して複数の単位領域を有することとした。こうすることで、キャリッジの走査において、凸レンズのピッチを検出すると同時に視差画像の印刷および宛名の印刷を可能とすることができた。しかし、印刷媒体の横幅が、キャリッジ走査幅より広い場合や、印刷装置が備える搬送手段が搬送可能な横幅よりも広い場合が存在し得る。このような場合、第3変形例として、所定の単位領域間において、単位領域の短辺を互いの隣接部とすることとしても良い。こうすれば、印刷媒体の横幅を変更することができ、印刷装置によって視差画像および宛名の印刷が可能となる。本変形例について、図9を用いて説明する。
図9(a)は、第2実施例の印刷媒体100をレンチキュラーシート100aの表面方向から見た図であり、図9(b)は、本変形例の一実施例を示した印刷媒体101を、同じくレンチキュラーシート100aの表面方向から見た図である。第2実施例では、図9(a)に示したように、接着面S10、第1の印刷面P10、接着面S20、第2の印刷面P20の各単位領域が、山折線又は谷折線で示した長辺をそれぞれ隣接部として隣接形成されている。一方、図9(b)では、第1の印刷面P10と接着面S20とを所定の単位領域とし、これらの単位領域間においては、山折線で示した短辺を隣接部として隣接形成され、その他は、谷折線で示した長辺を隣接部として各単位領域が隣接形成されている。なお、接着面S10と第2の印刷面P20とは、切れ目によって分離されている。
この結果、第2実施例では、印刷媒体100は単位領域が5個分横に隣接した横幅を有する印刷媒体であったが、本変形例の印刷媒体101では、単位領域が3個分横に隣接した横幅を有する印刷媒体とすることができる。このように、所定の単位領域においては、短辺を隣接部とすることによって、印刷媒体の横幅を変更することが可能となり、印刷装置によって視差画像および宛名を印刷することが可能となるのである。
もとより、第1の印刷面P10と接着面S20以外にも、接着面S10と第1の印刷面P10、あるいは接着面S20と第2の印刷面P20などを所定の単位領域としてもよい。このように適宜所定の単位領域を設定することによって、印刷媒体の横幅を調節することが可能となる。なお、この場合、各単位領域における隣接部の位置に応じて視差画像または宛名の印刷方向を変更する場合が生じる。たとえば、図9に示した例では、印刷媒体100の第2の印刷面P20に対して、印刷媒体101の第2の印刷面P20は180度回転した方向となっている。このような場合、印刷方向を変更して印刷すればよい。
(第4変形例)
また、上記第1および第2実施例では、図3および図6にて説明したように、折り目を印刷面に印刷することで形成することとしたが、基材に形成されることとしてもよい。
基材に折り目を形成する場合は、上述した印刷によって折り目を形成するのではなく、所定の間隔で切れ目(スリット)やミシン目を設けることによって、折り目を形成することとしてもよい。こうすれば、基材はスリットやミシン目の位置から容易に折れ曲がることになるため、作成者は折り目位置を注意深く見極めることなく延在部を折り曲げることが可能となる。
あるいは、基材に折り目を形成する場合、予め基材を折り曲げることによって形成した折り曲げ形状を折り目として形成することとしても良い。こうすれば、作成者は、予め折り曲げられた折り目によって容易に延在部を折り曲げ、レンチキュラーシートの裏面に視差画像を張り合わせることができる。
(第5変形例)
さらに、上記第1および第2実施例では、図3および図6にて説明したように、宛名をプリンタの印刷にて行うこととしたが、宛名を作成者が手書きで行うこととしてもよい。この場合、宛名印刷以外の印刷、例えば郵便番号を記載する郵便枠を印刷するなど、葉書として必要な体裁に関する印刷を行うようにしてもよい。
(その他の変形例)
また、上記第1および第2実施例では、各接着層は、印刷媒体を葉書として送付する場合、仕分け作業や郵送などといった葉書としての取り扱いにおいて、第1の印刷面や第2の印刷面などの各単位領域が各接着面において剥がれることのない程度の接着力を有する材料によって形成されることとした。ところで、葉書を受け取った受取人が、この立体画像が観賞できる面のみを要望する場合、宛名面は不要となる。そこで、各接着層のうち、宛名が印刷された第2の印刷面を貼り付けるための接着層については、受取人が第2の印刷面を剥がすことが可能な接着力とするとよい。
例えば、図1に示した第1実施例では接着層61の接着力を、図4に示した第2実施例では接着層610または接着層620の接着力を、受取人がそれぞれ第2の印刷面P2あるいはP20を剥がすことが可能な接着力とするとよい。
また、本実施例では、レンズシートのレンズとしてレンチキュラーレンズを用いることとしたが、これに限らず、蝿の目レンズや蜂の巣状のレンズなど、本発明の趣旨である視差画像の変化を楽しむことができるレンズであれば、他のレンズを用いることができることは勿論である。
10…印刷媒体、10a…レンチキュラーシート、10b…延在部、10k…長辺、11…印刷媒体、11a…レンチキュラーシート、11b…延在部、11h…短辺、11k…長辺、20…凸レンズ、21…円筒軸、30…基材、40…インク吸収層、45…インク透過層、50…インク吸収層、61…接着層、62…接着層、81…名前領域、82…住所領域、90…キャリッジ、91…検出手段、92…透過光、95…インク、95a…インク、99…発光面、100…印刷媒体、100a…レンチキュラーシート、100b…延在部、101…印刷媒体、200…凸レンズ、300…基材、400…インク吸収層、500…インク吸収層、550…インク透過層、610〜640…接着層、810…名前領域、820…住所領域、900…キャリッジ、910…検出装置、930…反射光、950…インク、950a…インク、950b…インク、T1〜T2…折り目、T11〜T14…折り目、S1〜S2…接着面、S10、S20、S21…接着面、P1、P10…第1の印刷面、P2、P20…第2の印刷面、R1〜R2…隣接部、R11〜R14…隣接部。