つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図5は、後述する実施例の制御を実行可能な車両のパワートレーンの構成例を示す。図5に示された車両Veは、F・R(フロントエンジン・リヤドライブ;エンジン前置き後輪駆動)形式のハイブリッド車(以下、「車両」と略記する)である。図5に示された車両Veは、2種類の動力源を有している。2種類の動力源は、動力の発生原理が異なり、この実施例では、エンジン1およびモータ・ジェネレータ(MG2)2が動力源として搭載されているとともに、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から出力された動力が、共に同じ車輪(後輪)3に伝達されるように、パワートレーンおよび動力伝達経路が構成されている。車両Veの動力源であるエンジン1は、燃料を燃焼させて、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。このエンジン1としては、内燃機関または外燃機関を用いることが可能であるが、この実施例では、エンジン1として内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いる場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ(図示せず)、燃料噴射装置(図示せず)、点火時期制御装置(図示せず)などの出力制御装置を有しており、少なくとも1つの装置を制御することにより、エンジン出力を制御することが可能である。
一方、他の動力源であるモータ・ジェネレータ2はケーシング4の内部に収納されており、モータ・ジェネレータ2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。このモータ・ジェネレータ2は、ロータ5およびステータ6を有しており、ステータ6はケーシング4に固定されている。また、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2から車輪3に至る動力伝達経路には変速機7が設けられているとともに、エンジン1から変速機7に至る動力伝達経路には、動力分配装置8が設けられている。図5に示された動力分配装置8は、シングルピニオン形式の遊星歯車機構を主体として構成されている。すなわち、動力分配装置8は、エンジン1の出力軸9と同軸上に配置されたサンギヤ10と、サンギヤ10と同軸上に配置されたリングギヤ11と、サンギヤ10およびリングギヤ11に噛合する複数のピニオンギヤ12を、自転かつ公転自在に保持したキャリヤ13とを有している。
これらのサンギヤ10およびリングギヤ11およびキャリヤ13は、相互に差動回転可能に構成されている。そして、キャリヤ13と出力軸9とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。また、出力軸9の軸線方向において、エンジン1と動力分配装置8との間には、モータ・ジェネレータ(MG1)14が配置されている。モータ・ジェネレータ14は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備している。このモータ・ジェネレータ14は、ロータ15およびステータ16を有しており、ステータ16はケーシング4に固定されている。そして、ロータ15とサンギヤ10とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。
一方、前記変速機7は、入力回転数を出力回転数で除した値である変速比を変更(制御可能)可能に構成されており、変速機7は有段変速機または無段変速機のいずれであってもよい。この実施例では、変速機7として有段変速機を用いた場合、より具体的には、遊星歯車機構を有する有段変速機を用いた場合について説明する。変速機7は、遊星歯車機構を構成する回転要素同士の動力伝達経路を切り替えたり、回転要素の回転・停止を制御するために、摩擦係合装置、具体的にはクラッチおよびブレーキを有している。ここで、摩擦係合装置としては、油圧制御式または電磁制御式のいずれを用いてもよいが、この実施例では、油圧制御式の摩擦係合装置を用いる場合について説明する。そして、これらの摩擦係合装置の係合・解放を制御することにより、例えば、ドライブポジションでは第1速ないし第6速を選択し、リバースポジションでは固定された変速比を選択可能に構成されている。そして、ドライブポジションが選択された場合は、第1速ないし第6速の変速段を、選択的に、かつ段階的に変更可能である。また、変速段を示す数字が大きくなるほど、変速機7の変速比が小さくなるように構成されている。
そして、変速機7の入力側には入力回転部材29が連結され、変速機7の出力側には出力回転部材30が連結されている。さらに、入力回転部材29と、動力分配装置8のリングギヤ11とが一体回転するように連結され、モータ・ジェネレータ2のロータ5が入力回転部材29に連結されている。前記出力回転部材30は、いわゆるプロペラシャフトであり、この出力回転部材30がデファレンシャル31のドライブピニオンシャフト(図示せず)に連結されている。また、デファレンシャル31のサイドギヤ(図示せず)にはドライブシャフト32が連結されており、ドライブシャフト32に車輪3が連結されている。
さらに、モータ・ジェネレータ2,14との間で電力の授受を行う、すなわち電力の供給・回収を行うことの可能な蓄電装置33が設けられているとともに、モータ・ジェネレータ2と蓄電装置33との間の回路にはインバータ34が設けられている。また、モータ・ジェネレータ14と蓄電装置33との間の回路にはインバータ35が設けられている。この蓄電装置33としては、二次電池、具体的にはバッテリ、キャパシタなどを用いることが可能である。この実施例では、蓄電装置33としてバッテリ33を用いる場合について説明する。また、インバータ34とインバータ35とを接続する電気回路36が設けられており、バッテリ33との間で電力の授受を行うことが可能に構成されているとともに、モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間で、バッテリ33を経由することなく、電力の授受を行うことも可能なように構成されている。
一方、変速機7の制御、例えば、ドライブポジション、リバースポジション、ニュートラルポジションなどのシフトポジションを切り換える制御、ドライブポジションが選択された場合における変速段の自動変速制御などを実行するために、油圧制御装置37が設けられている。この油圧制御装置37は、油圧回路、マニュアルバルブ、ソレノイドバルブ、圧力制御弁などにより構成された公知の構成を有しており、油圧制御装置37により、各シフトポジションの切り換え、前述した摩擦係合装置の係合・解放が制御されるように構成されている。
つぎに、車両Veの制御系統について説明する。まず、電子制御装置(ECU)38が設けられており、電子制御装置38には、シフトポジションセンサの信号、車速センサの信号、加速要求検知センサの信号、制動要求検知センサの信号、エンジン回転数センサの信号、バッテリ33の充電量を検知するセンサの信号、モータ・ジェネレータ2,14の回転数を検知するセンサの信号、モータ・ジェネレータ2,14の温度を検知するセンサの信号、入力回転部材29および出力回転部材30の回転数を検知するセンサの信号、車両Veが走行する道路の勾配を検知するセンサの信号、車両Veの加速度を検知するセンサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置38からは、エンジン1を制御する信号、モータ・ジェネレータ2,14(インバータ34,35)を制御する信号、油圧制御装置37を制御する信号などが出力される。
図5に示す車両Veにおいて、エンジン1が運転されて、エンジントルクが動力分配装置8のキャリヤ13に伝達されると、モータ・ジェネレータ14により反力トルクが受け持たれて、エンジントルクがリングギヤ11に伝達される。そのリングギヤ11に伝達されたトルクが、入力回転部材29および変速機7および出力回転部材30およびデファレンシャル31を経由して車輪3に伝達されて、駆動力が発生する。前記動力分配装置8においては、サンギヤ10とキャリヤ13とリングギヤ11との差動作用により、入力要素であるキャリヤ13と、出力要素であるリングギヤ11との変速比を制御することが可能である。具体的には、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータ14の出力を制御することにより、エンジン回転数を無段階に(連続的に)制御することが可能である。つまり、動力分配装置8は無段変速機としての機能を有している。
このように、モータ・ジェネレータ14で反力トルクを受け持つ場合、各種の条件に基づいて、モータ・ジェネレータ14の回転方向が、正回転、停止、逆回転などに選択的に切り換えられる。例えば、モータ・ジェネレータ14が正回転して反力トルクを受け持つ場合、モータ・ジェネレータ14は回生制御され、モータ・ジェネレータ14で発生した電力を、バッテリ33に充電したり、インバータ35,34を経由させてモータ・ジェネレータ2に供給し、モータ・ジェネレータ2を力行制御することが可能である。すなわち、モータ・ジェネレータ2が電動機として駆動され、そのトルクが入力回転部材29、変速機7、デファレンシャル31を経由して車輪3に伝達される。これに対して、モータ・ジェネレータ14が逆回転して反力トルクを受け持つ場合、モータ・ジェネレータ14は力行制御される。モータ・ジェネレータ14に供給する電力は、バッテリ33またはモータ・ジェネレータ2から供給することが可能である。すなわち、モータ・ジェネレータ2を回生制御させて、その電力を、インバータ34,35を経由させてモータ・ジェネレータ14に供給することも可能である。
ここで、動力分配装置8の変速比を制御する概念について説明すると、エンジン1の燃費を向上させることを目的として、エンジン1の運転状態と、動力分配装置8の変速比とを協調制御するものである。例えば、加速要求(アクセル開度)および車速に基づいて、車両Veにおける要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジン1の要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力する目標エンジン回転数が、マップを使用して求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、モータ・ジェネレータ14の出力(トルク×回転数)が制御される。この制御と並行して、実エンジン出力を目標エンジン出力に近づけるように、エンジン1の電子スロットルバルブの開度などが制御される。このように、動力分配装置8の変速比を制御することにより、エンジン1の運転状態を最適燃費線に沿って制御することが可能である。
また、前述したように、モータ・ジェネレータ2を電動機として駆動させ、モータ・ジェネレータ2のトルクを、変速機7を経由させて車輪3に伝達する制御を実行可能である。つまり、車輪3にトルクを伝達して駆動力を発生させる場合、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2の少なくとも一方のトルクを車輪3に伝達可能であり、いずれの動力源のトルクまたは両方の動力源のトルクを伝達するかが、電子制御装置38に入力される信号およびデータに基づいて判断される。
これに対して、車両Veが惰力走行する場合は、車両Veの運動エネルギが変速機7および動力分配装置8を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。また、車両Veの惰力走行時に入力回転部材29に伝達された運動エネルギの一部をモータ・ジェネレータ2に伝達し、このモータ・ジェネレータ2で回生制動力を発生させ、発生した電力をバッテリ33に充電することも可能である。
(第1の実施例)
つぎに、図5に示された車両Veにおいて実行可能な制御の一例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。図1のフローチャートは、例えば、車両Veにおける負荷が高い使用条件となる場合に実行されるものである。車両Veの負荷が高い場合には、車両Veがトラックであり、かつ、トラックがトレーラーを牽引して走行する(積載貨物重量が大重量である)場合、車両Veが急坂路を登坂する場合などが含まれる。
図1のフローチャートにおいて、先ず、電子制御装置38に入力される信号、および電子制御装置38に記憶されているデータに基づいて、車両Veにおける負荷が計算される(ステップS101)。このステップS101の制御では、アクセル開度、車速、道路勾配、車両Veの加速度などの信号が用いられる。このステップS101についで、車両Veにおける要求駆動力Fが所定駆動力以上、もしくはモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2が所定トルク以上であるか否か、言い換えれば、車両Veが高負荷状態で運転されているか否かが判定される(ステップS102)。このステップS102の制御は、例えば、モータ・ジェネレータ2の温度に基づいて判断可能である。
なお、このステップS102で用いる「所定トルク」は、例えばモータ・ジェネレータ2の定格トルクなどを基に設定された値を意味する。つまり、モータ・ジェネレータ2,14は、回生制御または力行制御のいずれが実行される場合においても、高トルクであるほど大電流となり、温度が上昇しやすくなるという特性を有している。図1の制御は基本的にはモータ・ジェネレータ2の負荷増大、言い換えれば、温度上昇を抑制するための制御であり、したがって、ステップS102では、モータ・ジェネレータ2のトルクが、連続運転可能なトルクを越えているか否かを判断している。ここで、「連続運転可能なトルク」とは、モータ・ジェネレータの過熱を招くことなく、所定時間以上、そのモータ・ジェネレータを運転可能なトルクである。
車両Veの要求駆動力Fが所定駆動力より小さく、かつモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2が所定トルクより小さいこと、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態でないと判断されたことによって、このステップS102で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わずに、このルーチンを一旦終了する。
一方、車両Veの要求駆動力Fが所定駆動力以上、もしくはモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2が所定トルク以上であること、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態であると判断されたことによって、ステップS102で肯定的に判断された場合には、ステップS103へ進み、ドライバ要求出力が算出される。上記のステップS101と同様に、このステップS103の制御では、アクセル開度、車速、道路勾配、車両Veの加速度などの信号が用いられる。
続いて、ステップS103で求められたドライバ要求出力に基づいて、補正前のエンジン動作点E0が算出される(ステップS104)。ドライバ要求出力が求められると、その要求出力を最適の燃料消費率で出力するための目標エンジン回転数が求められる。これは、前述したように、エンジン1のいわゆる最適燃費線が考慮されたマップに基づいて求めることができ、このマップ上において、求められたエンジン回転数Neに対応するエンジン1の出力トルクTeが併せて求められる。したがって、これらエンジン回転数Neと出力トルクTeとは、前記のマップ上において、最適燃費線上にある点として示される。そして、これらエンジン回転数Neと出力トルクTeとによって、その時点におけるエンジン1の運転状態を表すことができる。すなわちエンジン回転数Neと出力トルクTeとよってマップ上の点E0として示される。このエンジン1の運転状態を表す点E0が、ここで言うところのいわゆるエンジン動作点E0である。
補正前のエンジン動作点E0が求められると、Low側限界変速点i_lowと、その点における電気エネルギ伝達効率η_lowが求められ(ステップS105)、併せて、High側限界変速点i_highと、その点における電気エネルギ伝達効率η_highが求められる(ステップS106)。これら限界変速点i_low,i_high、電気エネルギ伝達効率η_low,η_highの算出方法を、図6,図7(図7A)を用いて説明する。
図6は、縦軸にエンジントルク、横軸にエンジン回転数を示すものであり、前述のステップS104で求められた補正前(現在)のエンジン動作点E0が最適燃費線上に示されている。そのエンジン動作点E0を、等出力線上でエンジン回転数Neが低下する方向に移動させた場合に、最大トルク線と交わる点E_high、すなわちHigh側(エンジン1から車輪3に至る動力伝達経路における変速比が小さくなる側)のエンジン動作点E_highにおけるエンジン回転数が、High側のエンジン回転数の限界Ne_highである。これに対して、エンジン動作点E0を、等出力線上でエンジン回転数Neが上昇する方向に移動させた場合に、その場合にエンジン回転数が増大することにより運転者が違和感を感じるエンジン1の吹け上がり感が生じない範囲の上限の回転数として予め設定されたのが、エンジン回転数がLow側(エンジン1から車輪3に至る動力伝達経路における変速比が大きくなる側)のエンジン回転数の限界Ne_lowである。そして、このLow側のエンジン回転数の限界Ne_lowと最大トルク線とが交わる点E_lowが、Low側のエンジン動作点E_lowである。
High側およびLow側のエンジン動作点E_high,E_lowが求められると、図7に示すようにして、High側およびLow側の限界変速点i_low,i_high、電気エネルギ伝達効率η_low,η_highが求められる。図7は、電気回路36における電力流通量と、エンジン回転数Neと出力回転数Noとの比iとの関係を示すものであり、図5に示された車両Veにおいて、モータ・ジェネレータ2とモータ・ジェネレータ14との間における電気エネルギの伝達効率の一例を示す図である。図7においては、縦軸には電気エネルギ伝達効率ηが示され、横軸には「回転数の比i」が示されている。ここで、「回転数の比i」とは、エンジン回転数Neを、変速機の出力回転数Noで除した値である。また、モータ・ジェネレータ14が停止された場合を、電気エネルギ伝達効率ηが1.0として表している。電気エネルギ伝達効率ηが1.0未満になるということは、電気回路36における電気流通量が増加すること、つまり、車両Veにおける全体としての電気依存度が大きく(高く)なることを意味する。
また、図7の線図には、変速機7の各変速段に対応する特性線が示されている。各変速段に対応する特性線は、上向きに突出された山形の特性を備えている。各変速段に対応する特性線の頂点で、いずれも、電気エネルギ伝達効率ηが1.0となっている。また、各変速段に対応する特性線の頂点を境として、左側の領域がモータ・ジェネレータ14が逆回転し、かつ、力行制御されることを示し、右側領域がモータ・ジェネレータ14が正回転し、かつ、回生制御されることを示している。
図7Aは、図7におけるA部を拡大して示した図であって、上記のようにして求められた現在のエンジン動作点E0(変速点i_0)、High側のエンジン動作点E_high(変速点i_high)、Low側のエンジン動作点E_low(変速点i_low)が、図7A(図7)の特性線上の対応する位置にそれぞれ示されている。それら各エンジン動作点E0,E_high,E_lowの位置で示される電気エネルギ伝達効率ηが、それぞ現在のエンジン動作点E0での電気エネルギ伝達効率η_0、High側のエンジン動作点E_highでの電気エネルギ伝達効率η_high、Low側のエンジン動作点E_lowでの電気エネルギ伝達効率η_lowである。
図7A(図7)では、電気エネルギ伝達効率η_0に対して、電気エネルギ伝達効率η_highの方が電気エネルギ伝達効率が高くなっていて、さらに電気エネルギ伝達効率η_highに対して、電気エネルギ伝達効率η_lowの方が伝達効率が高くなっている例を示している。したがって、この例においては、現在のエンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動させることによって、電気エネルギ伝達効率を向上させることができる。なお、図7Aに示すエンジン動作点E_convは、この発明の制御例を適用しない従来技術の例を示したものである。従来技術では、エンジン動作点E0が最適燃費線上を移動するように制御されるため、上記のように現在のエンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動させる場合、エンジン動作点E0からエンジン動作点動作点E_highを経由し、さらにエンジン動作点E_convを経由してエンジン動作点E_lowに移動することになり、その分エネルギ伝達効率が低下してしまう例を示している。
Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_low、およびHigh側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_highが求められると、それら電気エネルギ伝達効率η_lowと電気エネルギ伝達効率η_highとの大小が比較される。すなわち、電気エネルギ伝達効率η_lowが電気エネルギ伝達効率η_highよりも大きいか否かが判断される(ステップS107)。電気エネルギ伝達効率η_lowが電気エネルギ伝達効率η_highよりも大きいこと、すなわち、現在のエンジン動作点E0の移動先として、High側のエンジン動作点E_highよりもLow側のエンジン動作点E_lowを設定した方が電気エネルギの伝達効率が良いと判断されたことによって、このステップS107で肯定的に判断された場合は、ステップS108へ進み、現在のエンジン動作点E0の移動先の目標値である目標エンジン動作点が、Low側のエンジン動作点E_lowに設定される。
続いて、エンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動して設定するため、モータ・ジェネレータ14の回転状態を制御する動作点ずらし制御と、変速機7の変速比を変更する変速制御とが実行される(ステップS109)。例えば、図7(図7A)に示すように、現在のエンジン動作点E0の状態が第2速にあり、目標エンジン動作点が第1速にあるLow側のエンジン動作点E_lowに設定され、エンジン動作点が移動される場合は、上記の動作点ずらし制御が実行されるとともに、変速機7の変速比が第2速から第1速に変更される変速制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
一方、電気エネルギ伝達効率η_lowが電気エネルギ伝達効率η_high以下であること、すなわち、現在のエンジン動作点E0の移動先として、Low側のエンジン動作点E_lowよりもHigh側のエンジン動作点E_highを設定した方が電気エネルギの伝達効率が良いと判断されることによって、ステップS107で否定的に判断された場合には、ステップS110へ進み、目標エンジン動作点が、High側のエンジン動作点E_highに設定される。
続いて、エンジン動作点E0をHigh側のエンジン動作点E_highに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される(ステップS111)。例えば、図7(図7A)に示すように、現在のエンジン動作点E0の状態が第2速にあり、目標エンジン動作点が同じく第2速にあるHigh側のエンジン動作点E_highに設定され、エンジン動作点が移動される場合は、上記の動作点ずらし制御のみが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
このように、第1の実施例に示したこの発明の制御装置によれば、車両Veにおける要求駆動力Fとモータ・ジェネレータ(MG2)2の出力トルクTm2とが検出され、要求駆動力Fが予め定めた所定駆動力以上であること、もしくはモータ・ジェネレータ2が予め定めた所定トルク以上であることが判断されると、エンジン1から車輪3へのエネルギ伝達効率が最高となるように、モータ・ジェネレータ14の回転状態とモータ・ジェネレータ2の回転状態とエンジン1の運転状態との少なくともいずれか一つ、および変速機7の変速比が制御されて、エンジン1の運転状態(エンジン動作点)が設定される。そのため、要求駆動力Fが予め定めた所定駆動力以上、もしくはモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2が予め定めた所定トルク以上となるような高負荷状態で車両Veが運転された場合に、エネルギ伝達効率が最も良くなるように、エンジン1の運転状態、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態を制御することができる。その結果、モータ・ジェネレータ2,14にかかる負荷を低減し、それらモータ・ジェネレータ2,14のモータ温度の上昇を抑制することができる。
ここで、図1に示す第1の実施例と、この発明(請求項1の発明)との関係を簡単に説明すると、上述したステップS101,S102の機能的手段が、この発明の高負荷状態判断手段に相当し、また、ステップS103ないしS106の機能的手段が、この発明の伝達効率算出手段に相当し、そして、ステップS107ないしS111の機能的手段が、この発明の運転状態制御手段に相当する。
(第2の実施例)
つぎに、図5に示された車両Veにおいて実行可能な第2の実施例を図2のフローチャートに基づいて説明する。この図2に示す第2の実施例は、モータ・ジェネレータ(MG2)2のインバータ34の負荷低減、つまり、インバータ34の温度を低減させることを目的として、モータ・ジェネレータ(MG1)14の回転状態および変速機7の変速比を制御する構成となっている。前述の第1の実施例では、車両Veにおける要求駆動力Fもしくはモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2に基づいて、車両Veにおける負荷が判断される例を示したが、この第2の実施例では、モータ・ジェネレータ2に用いられるインバータ34の温度に基づいて車両Veにおける負荷が判断される。なお、この図2のフローチャートに示す第2の実施例は、前述の図1のフローチャートに示す第1の実施例を一部変更したものであって、図1のフローチャートに示す第1の実施例と同じ制御内容のステップについては、図1と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図2のフローチャートにおいて、先ず、電子制御装置38に入力される信号、および電子制御装置38に記憶されているデータに基づいて、車両Veにおける負荷が求められる。すなわち、ここではインバータ34の温度Diが検出される(ステップS201)。
続いて、ステップS103ないしS106において、補正前のエンジン動作点E0、High側のエンジン動作点E_high、Low側のエンジン動作点E_low、High側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_high、Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_lowが求められると、ステップS201で検出されたインバータ34の温度Diが、車両Veが高負荷状態で運転されていることを判断するための閾値として予め定められた所定温度以上であるか否か、言い換えれば、車両Veが高負荷状態で運転されているか否かが判定される(ステップS202)。
インバータ34の温度Diが所定温度より低いこと、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態でないと判断されたことによって、このステップS202で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わずに、このルーチンを一旦終了する。一方、インバータ34の温度Diが所定温度以上であること、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態であると判断されたことによって、ステップS202で肯定的に判断された場合には、ステップS203へ進み、High側のエンジン1の出力トルクTeに対するモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2の割合を表す、High側のトルク比Tm2/Te_highと、Low側のエンジン1の出力トルクTeに対するモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2の割合を表す、Low側のトルク比Tm2/Te_lowとが求められる。
これらHigh側のトルク比Tm2/Te_highとLow側のトルク比Tm2/Te_lowとの算出方法を、図7B,図8を用いて説明する。前述の第1の実施例の場合と同様にして(図7B)、現在のエンジン動作点E0(変速点i_0)、High側のエンジン動作点E_high、Low側のエンジン動作点E_low、High側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_high、Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_lowが求められると、図8において、High側限界変速点i_highでのHigh側のトルク比Tm2/Te_high、およびLow側限界変速点i_lowでのLow側のトルク比Tm2/Te_lowが求められる。
図8は、トルク比Tm/Teと、エンジン回転数Neと出力回転数Noとの比iとの関係を示すものであり、実線がモータ・ジェネレータ14のトルク比Tm1/Teを示し、破線がモータ・ジェネレータ2のトルク比Tm2/Teを示している。図8において、現在の変速点i_0、High側限界変速点i_high、Low側限界変速点i_lowが設定され、それらの点に対応するトルク比Tm/Te、すなわち現在のトルク比Tm/Te_0、High側のトルク比Tm/Te_high、Low側のトルク比Tm/Te_lowがそれぞれ求められる。
図8では、現在のトルク比Tm/Te_0に対して、High側のトルク比Tm/Te_highの方がトルク比が小さくなっていて、さらにトルク比Tm/Te_highに対して、Low側のトルク比Tm/Te_lowの方がトルク比が小さくなっている例を示している。インバータ34が所定温度以上となるような高負荷状態において、インバータ34の温度Diを低下させるためには、モータ・ジェネレータ2の電流を減少させる、すなわちモータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2を低下させればよい。したがって、インバータ34の温度Diが高く、エンジン動作点E0,E_high,E_low、およびそれに対応するトルク比Tm/Te_0,Tm/Te_high,Tm/Te_lowより、出力トルクTm_low,Tm_highを求め、図8に示すような状態の場合は、エンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動させることで、出力トルクを小さくし、モータ・ジェネレータ2の出力トルクTm2を低下させてインバータ34の温度Diを低下させることができる。
High側およびLow側の出力トルクTm_high,Tm_lowが求められると、それらHigh側の出力トルクTm_highとLow側の出力トルクTm_lowとの大小が比較される。すなわち、Low側の出力トルクTm_lowがHigh側の出力トルクTm_highよりも小さいか否かが判断される(ステップS204)。Low側の出力トルクTm_lowがHigh側の出力トルクTm_highよりも小さいによって、このステップS204で肯定的に判断された場合は、ステップS108,S109へ進み、目標エンジン動作点が、Low側のエンジン動作点E_lowに設定され、エンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
一方、Low側の出力トルクTm_lowがHigh側の出力トルクTm_high以上であることによって、ステップS204で否定的に判断された場合には、ステップS110,S111へ進み、目標エンジン動作点が、High側のエンジン動作点E_highに設定され、エンジン動作点E0をHigh側のエンジン動作点E_highに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
このように、第2の実施例に示したこの発明の制御装置によれば、モータ・ジェネレータ(MG2)2を制御する際に交流・直流電流の変換を行うインバータ34の温度Diが検出され、そのインバータ34の温度Diが予め定めた所定温度以上であることが判断されると、モータ・ジェネレータ2の出力トルクが最小となるように、モータ・ジェネレータ14の回転状態とモータ・ジェネレータ2の回転状態とエンジン1の運転状態との少なくともいずれか一つ、および変速機7の変速比が制御されて、エンジン1の運転状態(エンジン動作点)が設定される。そのため、インバータ34の温度Diが予め定めた所定温度以上となるような高負荷状態で車両Veが運転された場合に、エネルギ伝達効率が最も良くなるように、エンジン1の運転状態、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態を制御することができる。その結果、モータ・ジェネレータ2に用いられるインバータ34にかかる負荷を低減し、そのインバータ34の温度Diの上昇を抑制することができる。
ここで、図2に示す第2の実施例と、この発明(請求項2の発明)との関係を簡単に説明すると、上述したステップS201,S202の機能的手段が、この発明の高負荷状態判断手段に相当し、また、ステップS203の機能的手段が、この発明のモータトルク算出手段に相当し、そして、ステップS204およびステップS108ないしS111の機能的手段が、この発明の運転状態制御手段に相当する。
(第3の実施例)
つぎに、図5に示された車両Veにおいて実行可能な第3の実施例を図3のフローチャートに基づいて説明する。この図3に示す第3の実施例は、モータ・ジェネレータ(MG2,MG1)2,14の負荷低減、つまり、モータ・ジェネレータ2,14のモータ温度を低減させることを目的として、モータ・ジェネレータ(MG1)14の回転状態および変速機7の変速比を制御する構成となっている。したがって、この第3の実施例では、モータ・ジェネレータ2,14のモータ温度に基づいて車両Veにおける負荷が判断される。なお、この図3のフローチャートに示す第3の実施例は、前述の図1のフローチャートに示す第1の実施例を一部変更したものであって、図1のフローチャートに示す実施例と同じ制御内容のステップについては、図1と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図3のフローチャートにおいて、先ず、電子制御装置38に入力される信号、および電子制御装置38に記憶されているデータに基づいて、車両Veにおける負荷が求められる。すなわち、ここではモータ・ジェネレータ(MG1)14のモータ温度Dm1、およびモータ・ジェネレータ(MG2)2のモータ温度Dm2が検出される(ステップS301)。
続いて、ステップS103ないしS106において、補正前のエンジン動作点E0、High側のエンジン動作点E_high、Low側のエンジン動作点E_low、High側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_high、Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_lowが求められると、ステップS301で検出されたモータ・ジェネレータ2のモータ温度Dm2が、車両Veが高負荷状態で運転されていることを判断するための閾値として予め定められた所定温度以上であるか否か、言い換えれば、車両Veが高負荷状態で運転されているか否かが判定される(ステップS302)。
モータ温度Dm2が所定温度より低いことによって、このステップS302で否定的に判断された場合は、ステップS303へ進み、ステップS301で検出されたモータ・ジェネレータ14のモータ温度Dm1が、車両Veが高負荷状態で運転されていることを判断するための閾値として予め定められた所定温度以上であるか否か、言い換えれば、車両Veが高負荷状態で運転されているか否かが判定される。モータ温度Dm1が所定温度より低いことによって、このステップS303で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わずに、このルーチンを一旦終了する。
一方、モータ温度Dm2が所定温度以上であること、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態であると判断されたことによって、前述のステップS302で肯定的に判断された場合には、ステップS304へ進み、High側のモータ・ジェネレータ2のモータ動作点M2_highと、Low側のモータ・ジェネレータ2のモータ動作点M2_lowとが求められる。モータ動作点とは、モータ・ジェネレータの運転状態を表すものであって、モータ回転数NmとモータトルクTmとによって示される点である。続いて、High側のモータ・ジェネレータ2のモータ損失L2_highと、Low側のモータ・ジェネレータ2のモータ損失L2_lowとが求められる(ステップS305)。
これらHigh側のモータ動作点M1_high,M2_high、Low側のモータ動作点M1_low,M2_low、およびHigh側のモータ損失L1_high,L2_high、Low側のモータ損失L1_low,L2_lowの算出方法を、図7C,図9,図10等を用いて説明する。前述の第1の実施例の場合と同様にして(図7C)、現在のエンジン動作点E0(変速点i_0)、High側のエンジン動作点E_high、Low側のエンジン動作点E_low、High側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_high、Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_lowが求められると、図9および図10において、High側限界変速点i_highでのHigh側のトルク比Tm/Te_high、Low側限界変速点i_lowでのLow側のトルク比Tm/Te_low、およびHigh側限界変速点i_highでのHigh側の回転数比Nm/Ne_high、Low側限界変速点i_lowでのLow側の回転数比Nm1/Ne_lowが求められ、その結果に基づいて、High側限界変速点i_highでのHigh側のモータ損失L_high、Low側限界変速点i_lowでのLow側のモータ損失L_lowが求められる。
図9は、前述の図8と同様に、トルク比Tm/Teと、エンジン回転数Neと出力回転数Noとの比iとの関係を示すものであり、実線がモータ・ジェネレータ14のトルク比Tm1/Teを示し、破線がモータ・ジェネレータ2のトルク比Tm2/Teを示している。図9において、現在の変速点i_0、High側限界変速点i_high、Low側限界変速点i_lowが設定され、それらの点に対応するトルク比Tm1/Te,Tm2/Te 、すなわち現在のトルク比Tm1/Te_0,Tm2/Te_0、High側のトルク比Tm1/Te_high,Tm2/Te_high、Low側のトルク比Tm1/Te_low,Tm2/Te_lowがそれぞれ求められる。
また、図10は、エンジン1のエンジン回転数Neに対するモータ・ジェネレータのモータ回転数Nmの割合を表す回転数比Nm/Neと、エンジン回転数Neと出力回転数Noとの比iとの関係を示すものであり、実線がモータ・ジェネレータ14の回転数比Nm1/Neを示し、破線がモータ・ジェネレータ2の回転数比Nm2/Neを示している。図10において、同様に、図9において、現在の変速点i_0、High側限界変速点i_high、Low側限界変速点i_lowが設定され、それらの点に対応する回転数比Nm1/Ne,Nm2/Ne、すなわち現在の回転数比Nm1/Ne_0,Nm2/Ne_0、High側の回転数比Nm1/Ne_high,Nm2/Ne_high、Low側の回転数比Nm1/Ne_low,Nm2/Ne_lowがそれぞれ求められる。
High側のトルク比Tm1/Te_high,Tm2/Te_high、Low側のトルク比Tm1/Te_low,Tm2/Te_low、およびHigh側の回転数比Nm1/Ne_high,Nm2/Ne_high、Low側の回転数比Nm1/Ne_low,Nm2/Ne_lowが求められると、それらの値を基に、High側のモータ動作点M1_high,M2_high、Low側のモータ動作点M1_low,M2_lowを求めることができる。そして、それらの各モータ動作点が求められると、モータ・ジェネレータ2のHigh側のモータ損失L2_highおよびLow側のモータ損失L2_low、モータ・ジェネレータ14のHigh側のモータ損失L1_highおよびLow側のモータ損失L1_lowを求めることができる。例えば、後述する図14ないし16に示すようなマップに基づいて、推定して求めることができる。
上記のようにして、High側のモータ損失L2_highおよびLow側のモータ損失L2_low、あるいはHigh側のモータ損失L1_highおよびLow側のモータ損失L1_lowが求められると、それらHigh側のモータ損失とLow側のモータ損失との大小が比較される。すなわち、Low側のモータ損失L2_high(もしくはL1_low)が、High側のモータ損失L2_high(もしくはL1_high)より小さいか否かが判断される(ステップS308)。Low側のモータ損失L2_high(もしくはL1_low)がHigh側のモータ損失L2_high(もしくはL1_high)よりも小さいによって、このステップS308で肯定的に判断された場合は、ステップS108,S109へ進み、目標エンジン動作点が、Low側のエンジン動作点E_lowに設定され、エンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
一方、Low側のモータ損失L2_high(もしくはL1_low)がHigh側のモータ損失L2_high(もしくはL1_high)以上であることによって、ステップS308で否定的に判断された場合には、ステップS110,S111へ進み、目標エンジン動作点が、High側のエンジン動作点E_highに設定され、エンジン動作点E0をHigh側のエンジン動作点E_highに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
このように、第3の実施例に示したこの発明の制御装置によれば、モータ・ジェネレータ(MG2,MG1)2,14のモータ温度Dm2,Dm1が検出され、そのモータ温度Dm2が予め定めた所定温度以上であること、もしくはモータ温度Dm1が予め定めた所定温度以上であることが判断されると、モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失が最少となるように、モータ・ジェネレータ14の回転状態とモータ・ジェネレータ2の回転状態とエンジン1の運転状態との少なくともいずれか一つ、および変速機7の変速比が制御されて、エンジン1の運転状態(エンジン動作点)、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態(モータ動作点)が設定される。そのため、モータ温度Dm2もしくはモータ温度Dm1が予め定めた所定温度以上となるような高負荷状態で車両Veが運転された場合に、エネルギ伝達効率が最も良くなるように、エンジン1の運転状態、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態を制御することができる。その結果、モータ・ジェネレータ2,14にかかる負荷を低減し、モータ温度Dm2,Dm1の上昇を抑制することができる。
ここで、図3に示す第3の実施例と、この発明(請求項3の発明)との関係を簡単に説明すると、上述したステップS301ないしS303の機能的手段が、この発明の高負荷状態判断手段に相当し、また、ステップS304ないしS307の機能的手段が、この発明のモータ損失算出手段に相当し、そして、ステップS308およびステップS108ないしS111の機能的手段が、この発明の運転状態制御手段に相当する。
(第4の実施例)
つぎに、図5に示された車両Veにおいて実行可能な第4の実施例を図4のフローチャートに基づいて説明する。この図4に示す第4の実施例は、モータ・ジェネレータ(MG2,MG1)2,14との間で、電力の供給・回収を行うバッテリ33の負荷低減、つまり、バッテリ33の充放電量を低減させることを目的として、モータ・ジェネレータ(MG1)14の回転状態および変速機7の変速比を制御する構成となっている。したがって、この第4の実施例では、バッテリ33の充放電量に基づいて車両Veにおける負荷が判断される。なお、この図4のフローチャートに示す第4の実施例は、前述の図1のフローチャートに示す第1の実施例を一部変更したものであって、図1のフローチャートに示す実施例と同じ制御内容のステップについては、図1と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図4のフローチャートにおいて、先ず、電子制御装置38に入力される信号、および電子制御装置38に記憶されているデータに基づいて、車両Veにおける負荷が求められる。すなわち、ここではバッテリ33のバッテリ温度Dbが検出される(ステップS401)。
続いて、ステップS103ないしS106において、補正前のエンジン動作点E0、High側のエンジン動作点E_high、Low側のエンジン動作点E_low、High側限界変速点i_high、電気エネルギ伝達効率η_high、Low側限界変速点i_low、電気エネルギ伝達効率η_lowが求められると、ステップS401で検出されたバッテリ温度Dbが、車両Veが高負荷状態で運転されていることを判断するための閾値として予め定められた所定温度以上であるか否か、言い換えれば、車両Veが高負荷状態で運転されているか否かが判定される(ステップS402)。バッテリ温度Dbが所定温度より低いことによって、このステップS402で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わずに、このルーチンを一旦終了する。
一方、バッテリ温度Dbが所定温度以上であること、すなわち車両Veの運転状態が高負荷状態であると判断されたことによって、ステップS402で肯定的に判断された場合には、ステップS403へ進み、High側のモータ・ジェネレータ2,14のモータ動作点M2_high,M1_highと、Low側のモータ・ジェネレータ2,14のモータ動作点M2_low,M1_lowとが求められ、High側のモータ・ジェネレータ2,14のモータ出力P2_high,P1_highと、Low側のモータ・ジェネレータ2,14のモータ出力P2_low,P1_lowとが求められる(ステップS404)。続いて、High側のバッテリ33の充放電量C_highと、Low側のバッテリ33の充放電量C_lowとが求められる(ステップS405)。
各モータ動作点M2_high,M1_high,M2_low,M1_lowの算出は、前述の図3に示す第3の実施例におけるステップS304あるいはステップS306での制御内容と同様であって、先ず、High側のトルク比Tm1/Te_high,Tm2/Te_high、Low側のトルク比Tm1/Te_low,Tm2/Te_low、およびHigh側の回転数比Nm1/Ne_high,Nm2/Ne_high、Low側の回転数比Nm1/Ne_low,Nm2/Ne_lowが求められ、それらの値を基に、High側のモータ動作点M1_high,M2_high、Low側のモータ動作点M1_low,M2_lowが求められる。それらの各モータ動作点が求められると、モータ・ジェネレータ2のHigh側のモータ出力P2_highおよびLow側のモータ出力P2_low、モータ・ジェネレータ14のHigh側のモータ出力P1_highおよびLow側のモータ出力P1_lowを求めることができる。例えば、マップ(図示せず)などに基づいて推定して、あるいは理論式に基づいて演算して求めることができる。そして、それらのモータ出力が求められると、High側のバッテリ33の充放電量C_highと、Low側のバッテリ33の充放電量C_lowとを求めることができる。例えば、マップ(図示せず)などに基づいて推定して、あるいは理論式に基づいて演算して求めることができる。
上記のようにして、High側の充放電量C_highおよびLow側の充放電量C_lowが求められると、それらHigh側の充放電量C_highとLow側の充放電量C_lowとの大小が比較される。すなわち、Low側の充放電量C_lowが、High側の充放電量C_highより小さいか否かが判断される(ステップS406)。Low側の充放電量C_lowがHigh側の充放電量C_highよりも小さいによって、このステップS406で肯定的に判断された場合は、ステップS108,S109へ進み、目標エンジン動作点が、Low側のエンジン動作点E_lowに設定され、エンジン動作点E0をLow側のエンジン動作点E_lowに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
一方、Low側の充放電量C_lowがHigh側の充放電量C_high以上であることによって、ステップS406で否定的に判断された場合には、ステップS110,S111へ進み、目標エンジン動作点が、High側のエンジン動作点E_highに設定され、エンジン動作点E0をHigh側のエンジン動作点E_highに移動して設定する動作点ずらし制御と変速制御とが実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
このように、第4の実施例に示したこの発明の制御装置によれば、モータ・ジェネレータ(MG2,MG1)2,14に対して電力の供給・回収を行うバッテリ33のバッテリ温度Dbが検出され、そのバッテリ温度Dbが予め定めた所定温度以上であることが判断されると、バッテリ33の充放電収支が最少となるように、モータ・ジェネレータ14の回転状態とモータ・ジェネレータ2の回転状態とエンジン1の運転状態との少なくともいずれか一つ、および変速機7の変速比が制御されて、エンジン1の運転状態(エンジン動作点)、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態(モータ動作点)が設定される。そのため、バッテリ温度Dbが予め定めた所定温度以上となるような高負荷状態で車両Veが運転された場合に、エネルギ伝達効率が最も良くなるように、エンジン1の運転状態、およびモータ・ジェネレータ2,14の運転状態を制御することができる。その結果、バッテリ33にかかる負荷を低減し、バッテリ33過充放電状態になることを回避もしくは抑制することができる。
ここで、図4に示す第4の実施例と、この発明(請求項4の発明)との関係を簡単に説明すると、上述したステップS401,S402の機能的手段が、この発明の高負荷状態判断手段に相当し、また、ステップS403ないしS405の機能的手段が、この発明の充放電量算出手段に相当し、そして、ステップS406およびステップS108ないしS111の機能的手段が、この発明の運転状態制御手段に相当する。
(その他の実施例)
この発明におけるその他の実施例を図11ないし図13のフローチャートに基づいて説明する。これら図11ないし図13のフローチャートに示す実施例は、エンジン1の始動性が低下し、なおかつバッテリ33の出力が制限されるような極低温環境の下でのエンジン1の始動を効率よく行うことを目的としている。そのために、先ず、図11のフローチャートに示す実施例では、モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失ができるだけ少ないモータ動作点でエンジン1の始動、すなわちエンジン1のクランキングを行うように制御する構成となっている。
図11のフローチャートにおいて、先ず、バッテリ33の出力が制限されているか否かが判断される(ステップS501)。これは、例えばバッテリ33の充電量に応じて判断することができる。バッテリ33が、所定の出力が得られる状態であることによって、バッテリ33の出力が制限されていないと判断され、このステップS501で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わず、このルーチンを一旦終了する。一方、バッテリ33の出力が制限されていると判断されたことによって、ステップS501で肯定的に判断された場合には、ステップS502へ進み、車両Veのおかれている温度環境が「極低温」であるか否かが判断される。この場合の「極低温」とは、低温のためバッテリ33の性能が低下して、その出力が制限される状態、および低温のため例えばエンジンオイルなどの粘性が増大して、エンジン1の始動性が低下する状態となるような低温状態における温度として、予め定められた所定温度である。
温度環境が「極低温」でないことによって、このステップS502で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わず、このルーチンを一旦終了する。一方、温度環境が「極低温」であることによって、ステップS502で肯定的に判断された場合には、ステップS503へ進み、エンジン1を始動させる、すなわちエンジン1をクランキング(モータリング)させるのに最適なモータ動作点M1_crk,M2_crkが求められる。エンジン1をクランキングさせるのに最適なモータ動作点とは、エンジン1をクランキングさせる際に各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkが最少となるモータ・ジェネレータの運転状態のことである。
この場合の各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkは、各モータ・ジェネレータ2,14のモータ回転数Nm2,Nm1と、モータトルクTm2,Tm1とにより推定して求めることができる。具体的には、エンジン1の冷却水温、潤滑油温、吸気温等が検出され、それらの検出値に基づいて、目標クランキングエンジン回転数が算出される。そしてその目標クランキングエンジン回転数でエンジン1をクランキングさせる場合に、各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkが最少となるモータ動作点M1_crk,M2_crkが、例えば図14に示すマップに基づいて求められる。図14(後述の図15,図16)に示すマップは、縦軸にモータ・ジェネレータのモータトルクTmを示し、横軸にモータ・ジェネレータのモータ回転数Nmを示したもので、モータ損失Lが等損失線として表されている。なお、図14の(a)(図15の(a),図16の(a))がモータ・ジェネレータ(MG1)14のモータ損失マップであり、図14の(b)(図15の(b),図16の(b))がモータ・ジェネレータ(MG2)2のモータ損失マップである。また、図14(図15,図16)に示すマップにおいて、点M_convで示されるモータ動作点は、この実施例を適用しない場合の従来例である。
上記のようにして、エンジン1のクランキング時の最適モータ動作点M1_crk,M2_crkが求められると、それらのモータ動作点M1_crk,M2_crkにおいて各モータ・ジェネレータ2,14の回転が制御され、エンジン1がクランキングされる(ステップS504)。このステップS504の制御によるエンジン1および各モータ・ジェネレータ2,14の回転状態を、図17の共線図に示してある。図17の共線図においては、モータ・ジェネレータ14とモータ・ジェネレータ2との間にエンジン1が配置されている。そして、「正」は正回転を示し、「逆」は逆回転を示し、「零」は停止を意味している。また、正回転とは、エンジン1の回転方向と同じ回転方向を意味している。この図17の共線図に示すように、ステップS504での制御では、各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkが最少となるモータ動作点M1_crk,M2_crkで、エンジン1がクランキングされるため、エンジン1の始動時における効率を向上することができる。
エンジン1のクランキングが開始されると、エンジン1が完爆状態であるか否か、すなわちエンジン1が自立回転する状態になったか否かが判断される(ステップS505)。未だエンジン1が完爆状態でないことによって、このステップS505で否定的に判断された場合は、クランキングを継続させるため、前述のステップS503へ戻り、以降の制御が引き続き実行される。これに対して、エンジン1が完爆状態となったことによって、ステップS505で肯定的に判断された場合には、このルーチンを一旦終了する。
つぎに、図12のフローチャートに示す実施例では、図5Aに示すように、エンジン1のクランキング時にモータ・ジェネレータ(MG1)14の回転を規制するMG1ロック機構40を設けることによって、モータ・ジェネレータ14のモータ損失をなくし、モータ損失ができるだけ少ないモータ動作点でエンジン1の始動、すなわちエンジン1のクランキングを行うように制御する構成となっている。なお、この図12のフローチャートに示す実施例は、前述の図11のフローチャートに示す実施例を一部変更したものであって、図11のフローチャートに示す実施例と同じ制御内容のステップについては、図11と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図12のフローチャートにおいて、バッテリ33の出力が制限されていると判断され、かつ温度環境が「極低温」であると判断されると、ステップS601へ進み、エンジン1をクランキング(モータリング)させるの際に、モータ・ジェネレータ(MG1)14の回転を規制(ロック)するために、MG1ロック機構40における必要なトルク容量が求められる。続いて、MG1ロック機構40にモータ・ジェネレータ14の回転をロックする指令が出力され(ステップS602)、その後にモータ・ジェネレータ(MG2)2の回転が制御され、エンジン1がクランキングされる(ステップS603)。
この場合の各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkを、図15のモータ損失マップに示してある。また、エンジン1および各モータ・ジェネレータ2,14の回転状態を、図18の共線図に示してある。このステップS603の制御によるエンジン1のクランキング時では、エンジン1の反力をMG1ロック機構40で受け持たせることができるため、クランキング時にモータ・ジェネレータ14は駆動されず、したがってモータ損失も発生しない(モータ損失L1_crk=0)。そのため、エンジン1の始動時における効率を向上することができる。
そして、エンジン1が完爆状態になるまでクランキングが行われ、エンジン1が完爆状態になると(ステップS505)、その後、このルーチンを一旦終了する。
つぎに、図13のフローチャートに示す実施例では、図5Bに示すように、モータ・ジェネレータ2から車輪3に至る動力伝達経路に設けられた変速機7の出力側に、出力部材30の回転を規制(ロック)するパーキング機構41が設けられた車両Veを対象として、エンジン1の始動時のエンジン反力をパーキング機構41で受け持たすことによって、モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失ができるだけ少ないモータ動作点でエンジン1のクランキングを行うように制御する構成となっている。なお、この図13のフローチャートに示す実施例は、前述の図11のフローチャートに示す実施例を一部変更したものであって、図11のフローチャートに示す実施例と同じ制御内容のステップについては、図11と同様の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図13のフローチャートにおいて、バッテリ33の出力が制限されていると判断され、かつ温度環境が「極低温」であると判断されると、ステップS701へ進み、パーキング機構41がロックされたか否か、すなわちパーキング機構41によって出力部材30の回転が規制された状態であるか否かが判断される。このパーキング機構41は、各種構成の装置・機構を採用することができ、例えば、出力部材30と一体回転するように設けられたパーキングギヤにパーキングポールを噛み合わすことで、出力部材30の回転を固定して、車両Veの停止状態を維持する公知の構成のパーキング機構を適用することができる。
パーキング機構41がロックされていないことによって、このステップS701で否定的に判断された場合は、以降の制御は行わず、このルーチンを一旦終了する。一方、パーキング機構41がロックされたことによって、ステップS701で肯定的に判断された場合には、ステップS702へ進み、パーキング機構41をロックしてエンジン1をクランキングした場合のエンジントルク変動が推定されて求められる。エンジン1をクランキングさせる際に、パーキング機構41をロックさせて、そのパーキング機構41でエンジン反力を受け持たせた場合、例えば前述のパーキングギヤとパーキングポールとの噛み合い部分のクリアランスなどの影響によって、エンジン1のトルクが脈動するように変動したり、ギヤのがた打ち音が発生したりする。そこで、そのクランキング時のエンジントルク変動を、予め実験等により経験的に求めて、マップ化するなどしておくことにより、このステップS702における、クランキング時のエンジントルク変動を推定して求めることができる。
続いて、モータ・ジェネレータ(MG2)2の押し付けトルクが算出される(ステップS703)。モータ・ジェネレータ2の押し付けトルクとは、モータ・ジェネレータ2で出力する、上記のエンジントルク変動を打ち消す方向のトルクである。そして、モータ・ジェネレータ2に、上記の押し付けトルクを出力する指令が出力され(ステップS704)、その後に各モータ・ジェネレータ2,14の回転が制御され、エンジン1がクランキングされる(ステップS705)。
この場合の各モータ・ジェネレータ2,14のモータ損失L2_crk,L1_crkを、図16のモータ損失マップに示してある。また、エンジン1および各モータ・ジェネレータ2,14の回転状態を、図19の共線図に示してある。このステップS705の制御によるエンジン1のクランキング時では、エンジン反力をパーキング機構41で受け持たせることができ、その場合の生じるエンジントルク変動分だけ、その変動分を打ち消す方向のトルクをモータ・ジェネレータ2で出力すればよい。そのため、クランキング時に発生するモータ・ジェネレータ2のモータ損失L2_crkは僅かである。そのため、エンジン1の始動時における効率を向上することができる。
そして、エンジン1が完爆状態になるまでクランキングが行われ、エンジン1が完爆状態になると、その後、このルーチンを一旦終了する。
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、各構成例においては、動力分配装置がシングルピニオン型の遊星歯車機構を主体として構成されている例を示しているが、動力分配装置がダブルピニオン型の遊星歯車機構を主体とした構成であってもよい。
また、回転要素が4個以上設けられた動力分配装置を有する車両においても、この実施例を適用可能である。つまり、この発明において、第1の要素ないし第3の要素とは、複数個ある回転要素のうち、第1の要素ないし第3の要素を、原動機および2個のモータ・ジェネレータに連結する構成となっており、4要素ある回転要素と、原動機および2個のモータ・ジェネレータとの連結関係を変更可能な動力分配装置であってもよい。また、この発明において、動力分配装置を構成する回転要素には、ギヤ、キャリヤ、回転メンバ、回転軸、コネクティングドラム、ハブなどが含まれる。
また、有段変速機の前進段で設定可能な変速段は、6速未満であってもよい。さらに有段変速機としては、選択歯車式変速機を用いることも可能である。また、この実施例において、変速機として無段変速機を用いる場合は、トロイダル式無段変速機またはベルト式無段変速機のいずれを用いてもよい。この場合は、入力回転数と出力回転数との比である変速比を、無段階に制御および変更可能である。また、有段変速機または無段変速機は、その変速比が自動的に切り替えられる変速機、または手動操作により切り換えられる変速機のいずれでもよい。
さらに、バッテリ33に代えて、燃料電池を用いた車両においても、この発明の制御を実行可能である。さらにまた、蓄電装置および燃料電池の両方を有する車両において、この発明の制御例を実行することも可能である。
さらに、動力源としてのエンジンおよびモータ・ジェネレータの動力が、後輪(車輪)に伝達されるように構成された車両、つまり、後輪駆動車の他に、動力源としてのエンジンおよびモータ・ジェネレータの動力が、前輪(車輪)に伝達されるように構成された前輪駆動車にも、この実施例を適用可能である。さらに、動力源としてのエンジンおよびモータ・ジェネレータの動力が、トランスファ(図示せず)を経由して前輪(車輪)および後輪(車輪)に分配されるように構成された四輪駆動車にも、この実施例を適用可能である。
1…エンジン、 2,14…モータ・ジェネレータ、 3…車輪、 7…変速機、 8…動力分配装置、 10…サンギヤ、 11…リングギヤ、 13…キャリヤ、 33…蓄電装置(バッテリ)、 34,35…インバータ、 36…電気回路、38…電子制御装置(ECU)、 Ve…車両。