以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態を図1乃至図12に基づいて説明する。
(液晶装置の概略構成)
本実施形態は電気光学装置の一例としての液晶装置に本発明を適用したものである。
図1に、第1の実施形態に係る液晶装置の全体概要が示されている。同図に示すように、この液晶装置は、電子機器、例えば液晶プロジェクタのライトバルブとして用いる小型液晶装置であり、液晶パネルブロック10と、タイミング回路ブロック20と、データ処理回路ブロック30とに大別される。
タイミング回路ブロック20は、ドットクロック信号CLK,水平同期信号HSYNC,垂直同期信号VSYNCに基づいて、データ線駆動回路としてのデータ線駆動回路のシフトクロック信号CLX,走査線駆動回路のシフトクロック信号CLY/CLY*,データ線駆動回路のシフトデータ信号DX,Y側シフトデータ信号DY等、所定のタイミング信号を生成・出力するものである。
データ処理回路ブロック30は、液晶表示に適するようにデータの増幅,反転等によりデータを処理する回路ブロックである。そして、前記データ処理回路ブロック30において、外部入力される画像データ信号Dataを、一走査ライン毎に或いはドット毎に極性反転基準電位を基準として極性反転することにより、画像信号VIDを生成している。
液晶パネルブロック10は、一対のガラス等の基板間に液晶が封入され、一方の基板上に、画素電極がマトリクス状に配置された画素領域100と、走査線駆動回路102と、データ線駆動回路104と、サンプリングスイッチ106と、スイッチング手段としてのプリチャージスイッチ172を備え、対向する他方の基板上に共通電極を備えて構成される。一対のパネル基板の外側には偏光板が配置される。なお、これらの駆動回路は、パネル基板とは分離して、外付けICとして構成しても良い。また、画素電極が形成される前記一方の基板を半導体基板としてもよい。
画素領域100上には、例えば、図1の行方向に沿って延びる複数の走査線110と、例えば、列方向に沿って延びる複数のデータ線112とが形成されている。
この各走査線110,各データ線112が交差する各位置には、スイッチング素子114と画素120とが直列に接続されて表示要素が構成されている。各画素120は、一方の基板上に共に形成されるスイッチング素子114と接続される画素電極、及び各画素電極と隣接する走査線又は容量線との間に形成される蓄積容量117と、対向する他方の基板状に形成される共通電極と、両電極の間に挟持される液晶層116とから構成される。
各画素120のスイッチング素子114がオンする期間を選択期間と称し、オフする期間を非選択期間と称する。選択期間にスイッチング素子114を介して画素120に供給された電圧を非選択期間にて蓄積する蓄積容量117が、液晶層116に接続されている。
本実施の形態では、スイッチング素子114を、例えば、3端子型スイッチング素子としており、例えばTFT(薄膜トランジスタ)にて構成している。これに限らず、他の3端子型スイッチング素子であるMOSトランジスタ、あるいは薄膜ダイオードなどの2端子型スイッチング素子等を用いることができる。なお、本実施の形態の画素領域100は、2端子型または3端子型のスイッチング素子を用いたアクティブマトリクス型の液晶パネルに限らず、単純マトリクス型の液晶パネルなど、他の種々の液晶パネルであってもよい。
走査線駆動回路102は、シフトレジスタと論理回路により構成され、シフトレジスタには前記タイミング回路ブロック20にて生成されたY側シフトデータ信号DY及びY側シフトクロック信号CLY、CLY*が入力され、複数の走査線110a,110b,…の中から少なくとも1本の走査線110を順次選択するための選択期間が設定された水平走査信号h1,h2,h3,…を出力するものである(図4参照)。
この走査線駆動回路102のシフトレジスタは、走査線110の本数に相当する段数を有するとともに、各々隣り合うシフトレジスタ段同士が接続されており、Y側シフトデータ信号DYの伝送が順次行われている。
シフトレジスタの各段からは、図4に示すY側シフトレジスタ出力信号Y1,Y2,Y3,…が出力される。そして、Y側シフトレジスタ出力信号Y1,Y2の論理積演算により水平走査信号h1を生成する。同様に、隣合う2つのY側シフトレジスタ段の出力Yn,Yn+1の論理積演算により、水平走査信号h2,h3,…を生成する。
よって、これら水平走査信号h1,h2,h3…は、Y側シフトデータ信号DYが入力された後に出力される。
データ線駆動回路としてのデータ線駆動回路104は、前記タイミング回路ブロック20にて生成されたX側シフトクロック信号CLXとX側シフトデータ信号DXとが入力され、データ処理回路ブロック30の出力線である例えば1本の画像信号線304と、画素領域100のデータ線112a,112b,・・・との間に配置された複数のサンプリングスイッチ106に対して、画素領域100を点順次駆動するためのサンプリング信号SH1,SH2,SH3,…を出力するものである。
このデータ線駆動回路104も走査線駆動回路102と同様に、複数のデータ線の本数分に相当する段数を有するシフトレジスタ含むとともに、各々隣り合うシフトレジスタ段同士が接続されており、前記X側シフトデータ信号DXの伝送が順次行われている。
このデータ線駆動回路104も図4のタイミングチャートと同様に動作し、図1に示すように、シフトデータ信号DXが入力された後に、サンプリング信号SH1,SH2,・・・を生成するものである。
なお、データ処理回路ブロック30が、公知の相展開回路を有する場合には、データ処理回路ブロック30から出力される画像信号線304は、その相展開数と同じ本数となる。従って、データ線駆動回路104は、その複数本の画像信号線に並列に伝搬される画像信号を同時にサンプリングするためのサンプリング信号を出力することになる。ここで、相展開回路とは、シリアルデータとしての画像信号を、基準クロックに基づいて設定されたサンプリング期間に従ってサンプリングし、かつ、一定の画素毎に前記シリアルデータを展開して、1データ出力期間が基準クロックの整数倍に変換された複数の画像信号を、複数本の画像信号線304にパラレル出力するシリアル−パラレル変換回路である。
プリチャージ回路を構成するスイッチング手段としてのプリチャージスイッチ172は、プリチャージ回路駆動信号線173に供給されるゲート信号に基づいて、各スイッチ172a,172b,・・・が所定のタイミングにてオン状態となり、プリチャージ信号線174に供給される正極性あるいは負極性のプリチャージ信号を、各データ線112a,112b・・・に供給して、データ線112をプリチャージするように構成されている。ここでの極性は、共通電極に印加される共通電極電位を基準とするものである。
このプリチャージ信号線174には、図示しないプリチャージ信号供給手段により、走査線110を選択するごと(一水平走査ごと)に極性の切り換えられるプリチャージ信号PVが供給される。
本実施の形態では、1走査ラインごと(一走査線毎)に極性反転駆動しており、これに合うようにプリチャージ信号の極性反転タイミングが定められている。なお、極性反転駆動の方式は、1走査ラインごとに行う方式に限られるものではなく、1ドット(画素)ごとや1データ線ごとに反転させる方式を採用しても良い。この場合には、プリチャージ信号についても1ドットごとや1データ線ごとに極性反転を行う必要があるので、例えば2本のプリチャージ信号線を備え、各々のプリチャージ信号線を奇数番目のデータ線と偶数番目のデータ線に、プリチャージスイッチを介して接続するように構成し、各々のプリチャージ信号線に極性の異なるプリチャージ信号を供給するように構成すれば良い。さらに、各々のプリチャージ信号線に供給するプリチャージ信号の極性は垂直走査期間毎に反転するように構成すれば良い。
本実施の形態の液晶装置では、図2に示すようにサンプリング信号SH1,SH2,SH3,…がハイレベルとなる期間にてサンプリングされる画像信号に基づき画素に印加される電圧の極性と同一極性のプリチャージ信号電圧が、図2に示すブランキング期間(帰線期間)TBに設定されたプリチャージ期間T1内にて、各々のデータ線112に供給され、プリチャージが行われている。
そして、本実施形態におけるプリチャージ信号は、従来のようにプリチャージ期間中において常に一定のプリチャージ電位を維持する信号ではなく、時間と共に連続的あるいは段階的にプリチャージ電位が変化する信号である。本実施形態では、このような波形のプリチャージ信号を用いることにより、電気光学装置である液晶装置における輝度むらあるいは色むらを低減している。
以下、本実施形態におけるプリチャージ信号について詳しく説明するが、その前に、前記輝度むらあるいは色むらが生じる原因について考察する。
(1.プリチャージ信号の信号応答遅延差)
上述のように、負極性のプリチャージ信号(以下、プリチャージ信号PV1とする)と、正極性のプリチャージ信号(以下、プリチャージ信号PV2)が供給されるプリチャージ信号線174には、前記プリチャージスイッチ172が各々接続されている。従ってこれらのプリチャージスイッチ172をTFTで構成した場合には、プリチャージ信号線174にTFTが各々接続されることになり、プリチャージ信号線174に大きな容量成分が付加されることになる。また、液晶パネルサイズの大型化に伴いプリチャージ信号線174の配線抵抗も増加する。更に、水平帰線期間に一度にプリチャージを行う構成の場合には、各データ線112がプリチャージ信号線174とプリチャージスイッチ172を介して同一期間に接続されることになるので、これらのデータ線の容量負荷が同一期間に接続されることになる。プリチャージ信号線174はそもそもアルミニウム、タンタル、クロム、チタン、タングステン、モリブデン、シリコン等のいずれかの金属或いはそれらのうち2以上の金属よりなる合金によって形成されるのであるが、配線長が長いため、プリチャージ信号線174における配線抵抗や寄生容量が大きくなって、負荷となることに起因する配線遅延の問題が生じる。
このような配線遅延が生じると、本実施形態のようにプリチャージ信号線174の一方端側(図1においてはPVの入力端子側)からプリチャージ信号PV1やPV2を供給する構成では、信号入力端子側から離れた位置のデータ線ほどプリチャージ信号の波形が鈍って信号応答が遅くなり、信号レベルが低下する等により、結局プリチャージ期間T1内においてデータ線112に書き込まれる電荷量に差が生じる。
ここで、プリチャージ信号の信号応答遅延とは、プリチャージ信号波形の変化の遅延を意味する。図5に示すように、例えば、任意のm番目の水平走査期間が開始されると、プリチャージ信号線174の入力端子からプリチャージ信号の電位レベルがPV1からPV2へ切り替えて供給開始される。図中、Vcはデータ線に印加される画像信号の電圧振幅の中心値である。これによりPV1にあったプリチャージ信号線174の電位は、一旦はPV2まで変化する。しかし、t1のタイミングでプリチャージ回路駆動信号PCによりプリチャージスイッチ172がオンしたことにより、プリチャージ信号線174に複数のデータ線112が接続され、例えば図3に示すようなスイッチ172のTFTのゲート−ドレイン(データ線側端子)間容量C1,C2,・・・Cxやデータ線112の寄生容量が付加され、これらの寄生容量に電荷供給されるために、プリチャージ信号線174の電位はVbまで一気に低下する。この後、プリチャージ信号の供給が継続されているので、本来のプリチャージ信号PV2の電位に復帰する。プリチャージ信号の信号応答遅延とは、このようなプリチャージ信号応答の遅延を言う。
図5に示すように、プリチャージ信号線174の電位が一旦Vbまで低下するのは、一走査線に接続された画素毎に極性反転を行ういわゆる1ライン毎のライン反転駆動が行われているためである(ドット反転駆動でも同様)。ここで、図6,図7に、ライン反転駆動をした場合のマトリクス状に配列された各画素の液晶層に印加される電圧の極性を示す。図6はN番目のフィールド、図7は(N+1)番目のフィールドでの電圧極性を示す。このように、プリチャージ信号をデータ線や画素に印加する前には、供給しようとするプリチャージ信号電位とは逆極性の電位がデータ線112に寄生する容量に保持された状態であるため、プリチャージ信号がそのデータ線112の寄生容量の蓄積電荷を相殺するようになるため、プリチャージ信号線に瞬間的に大電流が流れ、その影響を受けて一旦電位が低下するのである。なお、図6,図7において、S1〜S4はデータ線、H1〜H4は走査線、+,−は各画素の極性を表している。
そして、プリチャージ信号線174の電位は、このように電位が低下した状態から、徐々に所定のプリチャージ信号電位まで上昇するように変化する。
しかし、このプリチャージ信号電位までの上昇速度は、プリチャージ信号線の位置によって異なり、配線遅延量の少ない信号入力端子側(図1においてスイッチ172g側)のプリチャージ信号線部分ほど図5に点線aで示すように速くプリチャージ電位まで上昇し、信号応答が早い。一方、配線遅延量の多い信号入力端子側とは離れた位置(図1においてスイッチ172a側の位置)にあるプリチャージ信号線部分については、図5に点線bで示すようにプリチャージ電位まで上昇する時間が遅くなり、信号応答が遅くなる。
従って、例えば、信号入力端子側のデータ線112と、離れた位置のデータ線112とでは、以上のような一定のプリチャージ期間T1内で、プリチャージ信号の波形が異なることによりデータ線112に書き込まれる電荷量に差が生じることになる。その結果、プリチャージ期間T1終了直後の各データ線112の電位はデータ線の配列場所によって異なってしまい、プリチャージ後にデータ線112に同一の電位の画像信号が供給された場合でも、各々のデータ線112の電位に差が生じる。その結果、画面領域の左右において輝度むらが発生し、またカラー画像を表示する場合には色むらが生じるという問題があった。
(2.プリチャージ回路駆動信号波形の差)
また、上述のような配線遅延は、プリチャージ信号線174にのみ生じる現象ではなく、図1に示すようにプリチャージ信号の供給タイミングを決定するプリチャージ回路駆動信号を供給するためのプリチャージ回路駆動信号線173にも同様に発生する。このプリチャージ回路駆動信号線173は、画素領域における走査線110と同一プロセスで形成されるため、多結晶シリコン層からなる。この多結晶シリコン層はプリチャージスイッチ172となるTFTのゲート電極ともなる層である。但し、このプリチャージ用ゲート信号線及び走査線をシリコン層上に高融点金属を積層した構造にしてもよい。
以下図3,図8を用いてこれを説明する。 図3は、図1をより詳細に示した図である。但し、各画素の蓄積容量117は図示していない。また、図8は、水平走査信号hmと、m番目の水平走査期間のプリチャージ回路駆動信号PCと、データ線112に画像信号電位を供給するためのサンプリング用ゲート信号SHと、そのデータ線112の電位を示している。なお、図8ではX側シフトデータ信号DXを省略している。
図8の水平走査信号hmは、図3に示すm本目の走査線110に接続された全ての画素のスイッチング素子114のゲートに印加されて、そのスイッチング素子114をオン,オフさせる信号である。
この水平走査信号hmがあるタイミングでハイレベルに立ち上がった後に、プリチャージ回路駆動信号PCがハイレベルに立ち上がる。しかし、上述したように、このプリチャージ回路駆動信号線173にも上述の配線遅延が生じるので、プリチャージ回路駆動信号PCが全てのプリチャージスイッチ172のゲートに印加される際には、図8の点線で示すように、波形に鈍りが生ずる。
図8に示すように波形に鈍りが生じ電圧低下し、プリチャージ信号の電圧がプリチャージスイッチ172の閾値近傍或いはこれ以下となった場合、このスイッチ172が十分にオンしないことが起こり、スイッチを介してプリチャージ信号が十分にデータ線112に書き込まれない。従って、本来、実線のように変化すべきデータ線112の電位が、この波形の鈍りにより図8の点線に示す通りに低下する。
ここで、プリチャージ前のデータ線112の電位を、画素にて負極性電圧にて黒表示するための電位PV1(=1V)に設定されたものと仮定する。図8に示すように、m番目の水平走査期間にてプリチャージ回路駆動信号PCがオンすることで、データ線112の電位は、PV1(=1V)から正極性のプリチャージ信号の電位PV2(=8V)にプリチャージされる。その後、サンプリング用ゲート信号SHがハイとなり、サンプリングスイッチ106を介して正極性電圧にて中間階調表示するための画像信号電位(7.5V)をデータ線に供給するものと仮定する。
プリチャージ回路駆動信号PCの波形が鈍ってデータ線がプリチャージ不足となることにより、データ線の電位は図8の点線の通り7.5Vより低い値となり、データ線112の電位は図8の点線の通り本来の7.5VよりもΔV1だけ低い電位となる。従って、データ線のプリチャージ不足が生じると、画像信号をデータ線に供給しても、本来の画像信号電圧より低下した電圧になってしまうので、ノーマリーホワイトモード表示では本来の表示階調よりも明るい表示に変動してしまう。
このようなプリチャージ回路駆動信号PCの波形の鈍りは、下記の負荷に基づく時定数に起因して生ずる。その負荷とは、図3のデータ線112に接続されたプリチャージスイッチ172と接続するプリチャージ信号線174の有する配線抵抗Rb,寄生容量Cb(図示せず)及びプリチャージ信号PCを供給するプリチャージ回路駆動信号供給線173の有する配線抵抗Rp,寄生容量Cp(図示せず)である。また、全てのプリチャージスイッチ172は、そのゲートに対してソース・ドレインが容量結合されている。このため、図3に示すように、データ線112aに接続されたプリチャージスイッチ172において寄生容量C1が形成され、この負荷に基づく時定数も影響する。なお他の全てのプリチャージスイッチ、例えば図3に示すx番目のプリチャージスイッチにおいても寄生容量Cxが形成されてしまう。このため、各プリチャージスイッチ172の各ゲートに前記プリチャージ信号PCが入力されると、全てのプリチャージスイッチ172が完全にオンするのに時間を要してしまうので、各プリチャージスイッチ172のゲートに供給されるプリチャージ回路駆動信号PCの信号波形が鈍ってしまう。
一方、上述したようなプリチャージ回路駆動信号PCの鈍りは、ゲート信号PCの入力端子側から離れた箇所ほど大きく、それによりデータ線に書き込まれるプリチャージによる電荷量も上記離れた箇所ほど少なくなる。従って、画面の明るさを示す図9に示すように、信号入力端子から離れた側の領域Bにおいては、ノーマリホワイトの場合には信号入力端子側の領域Aよりも明るい表示となる。
このように、データ線のプリチャージ信号入力端子側とそこから離れた側とでプリチャージによるデータ線への電荷供給量に差が生じ、結果として輝度むら及び色むらが生じていた。
以上のように、従来は、プリチャージ信号線やプリチャージ回路駆動信号線における寄生容量や配線抵抗等は考慮されることなく、プリチャージ期間において一定の電位のプリチャージ信号を供給していたため、プリチャージ期間終了時において各データ線や画素に書き込まれる電荷量、あるいは画像信号の書き込み直前における前記電荷量に差が生じ、これがその後の画像信号電位の低下に繋がっていたため、輝度むらあるいは色むらが発生していた。
本実施形態では、このようなデータ線へのプリチャージの不均一さを補うように、プリチャージ信号の電位をプリチャージ期間内において時間的に変化させ、各データ線へ画像信号を書き込むまでに各データ線や画素へ供給される電荷量をほぼ等しくするようにした。
例えば、図1に示すような構成において、プリチャージ信号入力端子側のデータ線よりも終端側のデータ線の方がプリチャージ信号による供給電荷量が少ない場合には、図10,図12に実線で示すようなプリチャージ信号PV1,PV2を供給する。このプリチャージ信号PV2は、矩形波パルスを微分して形成された微分波形となる信号であり、立ち上がりでピーク値まで上昇した後は、徐々に減衰する。また、逆極性側のプリチャージ信号PV1についても図12に示すように微分波形となる信号で構成する。
このようなプリチャージ信号PV1,PV2を生成するには、例えば図11に示すような微分回路50をプリチャージ信号供給部に備え、元来のパルス状波形であるプリチャージ信号PV1,PV2をこの微分回路50により微分した波形と、元来のプリチャージ信号PV1,PV2とを加算すれば良い。この回路から出力されるプリチャージ信号は、元来のプリチャージ信号の電圧にこれを微分した微分波形を上乗せした波形となる。
このようなプリチャージ信号PV1,PV2の波形のうち、実際にプリチャージに用いられるのは、各プリチャージスイッチ172に一括して供給されるプリチャージ回路駆動信号PCがハイレベルとなっているプリチャージ期間T1に対応する期間の波形である。プリチャージ期間T1になると、このプリチャージ信号PV1,PV2の高電圧のピーク部分が、プリチャージ信号線174に寄生する容量成分や各データ線112に寄生する容量成分とプリチャージ信号線174の配線抵抗を介して充電することになる。この容量と抵抗による時定数の影響を受けて、プリチャージ信号線174における信号供給側から離れた箇所の電位は、プリチャージ信号PV1,PV2の高電圧部分が伝搬途中で鈍って電圧低下するため、図10中に点線で示したように、プリチャージ期間T1の全期間において、より平坦化された電圧波形に近くなる。但し、若干、プリチャージ期間の前半側の電圧が大きい波形となる。
従って、上述のようにプリチャージ信号PV1,PV2が応答遅延してしまう信号入力端子側から離れた箇所でも、結果的にデータ線に書き込まれる電荷量は、信号応答が速いプリチャージ信号入力端側とほぼ等しくすることができる。また、プリチャージスイッチ172のゲートに供給するプリチャージ回路駆動信号PCの応答遅延があるが、図10の点線に示すように、プリチャージ信号の実際の波形がプリチャージ期間T1の後半期間より前半期間の方が大きくなるようにすれば、ゲート信号が鈍ってもその期間のプリチャージ信号電位を大きくできるので、データ線へ電荷供給することができる。
以上のように、本実施形態によれば、画像信号の書き込み直前における各データ線の電位の差を無くし、ほぼ等しくできるので、輝度むらあるいは色むらを補償することができる。
また、先に述べたようにプリチャージ信号によりデータ線がプリチャージされた電位レベルに応じて、その後の画像信号供給後の電位レベルも異なることを利用すると、ノーマリーホワイトモードでの電気光学装置の電圧−輝度(透過率)特性が、プリチャージ信号の供給端子に近い側の画面領域が明るい場合には、プリチャージ信号波形を前半部分で大きくして、データ線へのプリチャージによる電荷供給量をその画素領域に多めに調整することもできる。これは、図10のプリチャージ信号のピーク値をより大きくすることで実施できる。それにより、画面全体の輝度(透過率)を均一化することもできる。
なお、図10,図12に示すプリチャージ信号PV1,PV2のピーク値の設定及び減衰量の設定は、プリチャージ信号PV1,PV2の供給を行う液晶パネルの特性に応じて、プリチャージ信号供給部において調整すればよい。つまり、前記寄生容量または配線抵抗は、トランジスタのサイズあるいはパターン幅あるいはリーク等のトランジスタ特性により変化するものであり、上述したプリチャージ後の各データ線における電位差も各々の液晶パネルにより異なる。従って、各々の液晶パネルに応じた設定が必要となる。
〔第2の実施形態〕
本実施形態は、第1の実施形態におけるプリチャージ信号供給手段から出力されるプリチャージ信号を徐々に電圧レベルの大きくなる波形にするものである。
すなわち、プリチャージ信号PCの波形は、図10,図12に示したもの限られず、図13に示すように、矩形波のプリチャージ信号PV1,PV2を積分する積分回路を用いて生成した波形としても良い。このプリチャージ信号波形の場合も、実際に、データ線112に供給される信号はプリチャージ回路駆動信号PCがハイレベルの期間T1での電圧波形である。
本実施形態における作用効果は、第1の実施形態とは異なっている。
このように、プリチャージ信号供給手段から供給されるプリチャージ信号PV1,PV2を、信号電圧レベルが除々に大きくなる信号波形とすれば、プリチャージ信号線174の入力端子側から離れた箇所では、徐々に信号が立ち上がり、最終的にピーク値に至る波形のプリチャージ信号が得られることになる。従って、プリチャージ信号の入力端子から離れた側のデータ線ほど、書き込まれるプリチャージ信号の電荷量が大きくなる。
つまり、プリチャージ信号によりプリチャージされたデータ線の電位レベルに応じて、その後の画像信号供給後の電位レベルも異なるので、液晶パネルの電圧−輝度(透過率)特性が、データ線配列方向(走査方向)の左右で異なる場合には、このようにプリチャージ信号波形を除々に増大させてデータ線へのプリチャージによる電荷供給量を調整することができる。例えば、ノーマリーホワイトモードの液晶パネルにおいて、プリチャージ信号の供給側から離れた位置のデータ線112aに接続された画素での電圧−輝度(透過率)特性が、供給側に近い画素よりも劣る場合は、画面の明るさを示す図9に示すように、信号入力端子から離れた側の領域Bが信号入力端子側の領域Aよりも明るい表示(ノーマリホワイト)となる。すなわち、同一電圧を画素に印加しても、透過率の変化が少ないのである。従って、画素領域Bにおける画素(データ線)への電圧供給量を多くするように、プリチャージ信号PV1,PV2をプリチャージ期間の後半側で大きくするように調整することで、入力端子から離れたデータ線112aへの電荷供給量を多くするように、プリチャージ信号波形を変化させる。この場合は、プリチャージ信号の電圧レベルが除々に大きくなるようにすれば、入力端子側から遠いデータ線112aへ近い側より多くの電荷が供給でき、それにより透過率が均一化できる。
なお、図13に示すプリチャージ信号PV1,PV2のピーク値の設定及び減衰量の設定は、プリチャージ信号PV1,PV2の供給を行う液晶パネルの特性に応じて、プリチャージ信号供給部において調整すればよい。つまり、前記寄生容量または配線抵抗は、トランジスタのサイズあるいはパターン幅あるいはリーク等のトランジスタ特性により変化するものであり、上述したプリチャージ後の各データ線における電位差も各々の液晶パネルにより異なる。従って、各々の液晶パネルに応じた設定が必要となる。
ところで、プリチャージ信号の電圧波形が、本実施形態のように徐々に電圧値を増大させる波形である場合は、その波形が方形である場合に比して、プリチャージに伴って発生する充放電電流を時間的に分散させて、そのピーク値を下げることができる。従って、本実施形態によれば、プリチャージの実行に伴って、対向電極の電位、容量電極の電位、或いはGND電位に発生する変動を抑制することができると共に、ノイズ放射を抑制して、装置の誤動作を回避することができる。
〔第3の実施形態〕
本実施形態は、第1の実施形態におけるプリチャージ信号供給手段から出力されるプリチャージ信号を、プリチャージ期間内でパルス波形を有する波形にしたものである。
すなわち、プリチャージ信号PCの波形は、図10,図12,図13に示したもの限られず、図14(a)(b)に示すように、プリチャージ期間T1内で2段階の電圧レベルを有するパルス状波形を有するプリチャージ信号PV1,PV2を生成した波形としても良い。
図14(a)に示すプリチャージ信号は、正極性側においては、T2の期間の電位がVhで、T3の期間の電位Vgよりも高く設定されており、また、負極性側においては、T4の期間の電位VeがT5の期間の電位Vfよりも低く設定されている。このようなパルス波形をプリチャージ信号入力端子から入力することにより、第1の実施形態にて説明したプリチャージ信号波形と同様な作用効果を得ることができる。つまり、パルス波形の電圧の高い部分(T2,T4の部分)は、プリチャージ信号線174に寄生する容量成分や抵抗成分により波形が鈍り、この部分が寄生容量と配線抵抗による時定数を相殺するようになるので、信号線174の信号入力端子から離れた箇所では、図10に点線で示したような電圧変化を得ることができる。
また、このような波形を供給することにより、プリチャージ回路駆動信号PCがその信号入力端子より離れた箇所において配線抵抗や寄生容量により応答遅延しても、第1の実施形態と同様にそれを補償することができる。
以上のように、本実施形態によれば、画像信号の書き込み直前における各データ線の電位の差を無くし、ほぼ等しくできるので、輝度むらあるいは色むらを補償することができる。また、先に述べたようにプリチャージ信号によりデータ線がプリチャージされた電位レベルに応じて、その後の画像信号供給後の電位レベルも異なることを利用すると、ノーマリーホワイトモードでの電気光学装置の電圧−輝度(透過率)特性が、プリチャージ信号の供給端子に近い側の画面領域が明るい場合には、プリチャージ信号波形を前半部分で大きくして、データ線へのプリチャージによる電荷供給量をその画素領域に多めに調整することもできる。これは図14(a)におけるパルス部分での電圧を大きくすることで容易に実施できる。それにより、画面全体の輝度(透過率)を均一化することもできる。
また、図14(b)に示すプリチャージ信号は、正極性側においては、T2の期間の電位がVg、T3の期間の電位がVhとなり、プリチャージ期間T1の後半側の電位が高く設定されており、また、負極性側においては、T4の期間の電位がVf、T5の期間の電位がVeとなり、期間T1の後半がより低く設定されている。このようなパルス波形をプリチャージ信号入力端子から入力することにより、第2の実施形態にて説明したプリチャージ信号波形と同様な作用効果を得ることができる。
このように、プリチャージ信号供給手段から供給されるプリチャージ信号PV1,PV2を、期間T1の後半に電圧レベルの大きい信号波形とすれば、そのパルス波形部分は信号線174の配線抵抗や寄生容量によって鈍り、信号電圧レベルが除々に大きくなる信号波形となる。従って、プリチャージ信号線の入力端子側から離れた箇所では、徐々に信号が立ち上がり、後半にピーク値に至る波形のプリチャージ信号が得られることになる。これにより、プリチャージ信号の入力端子から離れた側のデータ線ほど、書き込まれるプリチャージ信号の電荷量が大きくなる。
例えば、ノーマリーホワイトモードの液晶パネルにおいて、プリチャージ信号の供給側から離れた位置のデータ線112aに接続された画素での電圧−輝度(透過率)特性が、供給側に近い画素よりも劣る場合は、画面の明るさを示す図9に示すように、信号入力端子から離れた側の領域Bが信号入力端子側の領域Aよりも明るい表示(ノーマリホワイト)となる。すなわち、同一電圧を画素に印加しても、透過率の変化が少ないのである。従って、画素領域Bにおける画素(データ線)への電圧供給量を多くするように、プリチャージ信号PV1,PV2をプリチャージ期間の後半側で大きくするように調整することで、入力端子から離れたデータ線112aへの電荷供給量を多くするように、プリチャージ信号波形を変化させる。この場合は、プリチャージ信号の電圧レベルを除々に大きくなるようにすれば、入力端子側から遠いデータ線112aへ近い側より多くの電荷が供給でき、それにより透過率が均一化できる。
更に、プリチャージ信号の電圧波形が、図14(b)に示す如くプリチャージ期間の後半でその電圧値を増大させる波形である場合は、プリチャージに伴って発生する充放電電流を時間的に分散させて、そのピーク値を下げることができる。従って、本実施形態によれば、プリチャージの実行に伴って、対向電極の電位、容量電極の電位、或いはGND電位に発生する変動を抑制することができると共に、ノイズ放射を抑制して、装置の誤動作を回避することができる。
以上のように、プリチャージ信号にパルス幅形状の波形を供給する構成は、例えば、パルス幅変調回路等のパルス幅を可変に制御できるデジタル回路をプリチャージ信号供給部に備えることにより実現することができ、液晶装置に容易に組み込むことができるという利点を有する。特に、前記寄生容量または配線抵抗は、トランジスタのサイズあるいはパターン幅あるいはリーク等のトランジスタ特性により変化するものであり、上述したプリチャージ後の各データ線における電位差も各々の液晶パネルにより異なる。従って、各々の液晶パネルに応じた設定が必要となるので、パルス幅を変化させてデジタル的に調整できる本実施形態の構成は調整を簡単にすることができる。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態を図15に基づいて説明する。なお、第1の実施形態との共通箇所には同一符号を付して説明を省略する。また、特に説明しない限り、図15における構成は、図1において説明した構成と同一である。
上述した液晶パネルの実施形態は、図1に示すように、プリチャージ信号PV1,PV2及びプリチャージ回路駆動信号PCを、プリチャージ信号線174及びプリチャージ回路駆動信号線173の片側から入力するように構成したものであったが、本実施形態は、図15に示すように、プリチャージ信号線174及びプリチャージ回路駆動信号線173を、データ線112が設けられた画面領域の両側から引き回し、プリチャージスイッチ172に対してデータ線112の配列方向の両側から各々の信号を供給するように構成したものである。
このような構成によれば、プリチャージ信号線174及びプリチャージ回路駆動信号線173の配線抵抗及び寄生容量等による、データ線に対する書き込み電荷量の差を無くすことができ、輝度むら及び色むらをより一層低減することができる。つまり、このような構成によれば、画面領域の左右両側にプリチャージ信号の供給部が設けられた形となり、信号線173や174の配線抵抗及び寄生容量は、信号線の両端の入力端子から見るとほぼ2分の1とすることができる。従って、両側の入力端子から供給されたプリチャージ信号及びプリチャージ回路駆動信号の波形の鈍りは図1の構成に比べて大幅に少なくなる。
また、このように構成した場合でも、両側の信号供給部と中央部とを比べれば、伝搬される信号波形の応答遅延量が異なるため、本実施形態においても、第1の実施形態や第3の実施形態のようにプリチャージ信号波形を変形させる。すなわち、図10,図12,図14(a)に示すように、プリチャージ期間T1の前半にピークを有する波形を、信号線の両端の信号入力端子から供給すると、信号配線の中央部分では信号線の配線抵抗や寄生容量によりピーク部分が鈍って、ほぼ均一レベルの電圧変化が得られることになる。
図15のような構成では、図9で言うところの画面100の中央部領域Cにおいて、データ線へのプリチャージ不足が発生しているが、これを低減し、各データ線にほぼ等しいプリチャージ電位を供給することができる。それによって、輝度(透過率)むらを低減することができ、第1の実施形態の場合よりも一層輝度むら及び色むらを低減して、高品位な画像を表示させることができる。
なお、図15のような構成においても、第2の実施形態や第3の実施形態にて説明した、図13,図14(b)の波形をプリチャージ信号線の両端の入力端子から入力して、液晶装置が持っていた輝度(透過率)むらを補償することができる。すなわち、図9の中央部領域Cにおいて、液晶装置の電圧−透過率特性が他の領域より劣っていた場合、中央部領域Cの画素やデータ線により電荷供給量を増やすために、プリチャージ信号PV1,PV2を後半にピークを有する波形とし、これを信号線174の両端側から入力することにより、中央部領域Cのデータ線112に多めの電荷量を供給するようにして、透過率特性の悪さを補償する。これにより、画面全体において、ほぼ均一な輝度(透過率)を得ることができる。
また、プリチャージ信号の電圧波形を、図13または図14(b)に示す如くプリチャージ期間の後半にピークを有する波形とすると、実施の形態2および3の場合と同様に、プリチャージの実行に伴う各種の電位変動の抑制、ノイズ放射の抑制、および装置の誤動作の回避等が可能となる。
〔第5の実施形態〕
(液晶装置の概略構成)
次に、本発明の第5の実施形態を図16,図17,図18を用いて説明する。なお、特に説明しない限り、図16,図17における構成は、図1,図15において説明した構成と同一であり、図1,図15と共通する構成には同一の符号を付した。
電気光学装置の一例として液晶装置の全体構成について、図16を参照して説明する。図16は、液晶装置200におけるTFTアレイ基板1上に設けられた各種配線、周辺回路等の構成を示すブロック図である。
図16において、液晶装置200は、例えば石英基板、ハードガラス等からなるTFTアレイ基板1を備えている。TFTアレイ基板1上には、マトリクス状に設けられた複数の画素電極11と、X方向に複数配列されており夫々がY方向に沿って伸びるデータ線112と、Y方向に複数配列されており夫々がX方向に沿って伸びる走査線110と、各データ線112と画素電極11との間に夫々介在すると共に該間における導通状態及び非導通状態を、走査線110を介して夫々供給される走査信号に応じて夫々制御するスイッチング素子の一例としての複数のスイッチング素子114とが形成されている。また、図示を省略しているが、TFTアレイ基板1上には、蓄積容量のための配線である容量線を走査線110に沿ってほぼ平行に配設しても良いし、前段の走査線下を利用して蓄積容量を形成しても良い。
TFTアレイ基板1上には更に、複数のデータ線112に所定電圧レベルのプリチャージ信号PCを画像信号に先行して夫々供給するプリチャージスイッチ172と、画像信号をサンプリングして複数のデータ線112に夫々供給するサンプリングスイッチ106と、データ線駆動回路ブロック101と、走査線駆動回路102とが形成されている。
走査線駆動回路102は、外部制御回路(図示せず)から供給される電源、基準クロック信号CLY及び反転信号CLY*、並びにシフトデータ信号DY等に基づいて、所定タイミングで走査線110に走査信号をパルス的に線順次で印加する。
データ線駆動回路ブロック101は、プリチャージ信号用駆動回路401とデータ線駆動回路104とから構成されており、このうちデータ線駆動回路104は、外部制御回路(図示せず)から供給される電源、基準クロック信号CLX及び反転信号CLX*、シフトデータ信号DX、及び画像信号VID等に基づいて、走査線駆動回路102が走査信号を印加するタイミングに合わせて、画像信号としての画像信号VIDをサンプリングするために、データ線112毎にサンプリング信号をサンプリングスイッチ106にサンプリング信号線306を介して供給する。
一方、プリチャージ信号用駆動回路401は、外部制御回路(図示せず)から供給される電源、前記データ線駆動回路104と共通の基準クロック信号CLX及び反転信号CLX*、プリチャージ期間設定パルス信号NRG等に基づいて、走査線駆動回路102による1水平走査期間の走査線110に対する走査信号の供給が終了し、1水平帰線期間において画像信号の極性の反転(画像信号の信号位相の反転)が終了した後に、プリチャージ信号PCをサンプリングするために、プリチャージ回路駆動信号線206を介してデータ線112毎にプリチャージ回路駆動信号をプリチャージスイッチ172に供給する。
プリチャージスイッチ172は、TFTから構成されるスイッチング素子NR1〜NRnを各データ線112毎に備えている。スイッチング素子NR1〜NRnのソース電極には、プリチャージ信号線174が接続されており、スイッチング素子NR1〜NRnのゲート電極には、プリチャージ回路駆動信号線206が接続されている。このプリチャージ信号線174はアルミニウム、タンタル、クロム、チタン、タングステン、モリブデン、シリコン等のいずれかの金属或いはそれらのうち2以上の金属よりなる合金によって形成されるものである。そして、外部制御回路(図示せず)からプリチャージ信号線174を介して所定電圧のプリチャージ信号が供給され、各データ線112について以下に説明するような画像信号の書き込みに先行するタイミングで、プリチャージ信号用駆動回路401からプリチャージ回路駆動信号線206を介してプリチャージ回路駆動信号が供給されることにより、スイッチング素子NR1〜NRnが導通状態となり、前記プリチャージ信号が各データ線112に書き込まれることになる。尚、プリチャージスイッチ172に供給されるプリチャージ信号は、画像信号と同一の極性(同一の信号位相の反転)で中間階調レベルの画素データに相当する信号(画像補助信号)であることが好ましい。
サンプリングスイッチ106は、TFTから構成されるスイッチング素子SH1〜SHnを各データ線112毎に備えている。スイッチング素子SH1〜SHnのソース電極には、画像信号線304が接続されており、スイッチング素子SH1〜SHnのゲート電極には、サンプリング信号線306が接続されている。従って、データ線駆動回路104からサンプリング信号線306を介してサンプリング信号が入力されると、外部制御回路(図示せず)から画像信号線304を介して供給される画像信号VIDがサンプリングされ、データ線112に順次供給される。
尚、図1においては、画像信号線304は簡略化のために1本のみ記載しているが、画像信号のドット周波数が速い場合には周波数を低減するために画像信号VIDを何相かに相展開しても良い。画像信号の相展開数には制約がないが、ビデオ表示させる場合にはRGB各々に信号線が必要なことから3の倍数で構成すると外部制御回路が比較的容易に構成できる。また、少なくとも画像信号の相展開数分だけ画像信号線304が必要なことは言うまでもない。
尚、プリチャージスイッチ172のスイッチング素子NR1〜NRnと、サンプリングスイッチ106のスイッチング素子SH1〜SHnのドレイン電極は共にデータ線112に並列に接続されており、プリチャージ信号用駆動回路401とデータ線駆動回路104により、スイッチング素子NR1〜NRnとスイッチング素子SH1〜SHnの導通状態を所定のタイミングで切り換え、データ線112に対してプリチャージ信号を画像信号に先行して供給させている。
なお、図16におけるTFTアレイ基板1も、図1での説明と同様に、石英やガラス等の基板からなり、ガラス等の透明な対向基板とシール材により接着され、その間隙に液晶を封入して構成されるため、各画素の構成は図1での説明と同様になる。また、各画素の液晶層に印加する電圧の極性は、図1と同様に、ライン毎に極性を反転させるライン反転駆動、あるいはドット(画素)毎に極性を反転させるドット反転駆動が採用される。
次に、駆動回路の構成について図17,図18を参照して説明する。図17は、データ線駆動回路をより詳細に示した図、図18は図17のデータ線駆動回路における各種信号のタイミングチャートを示す図である。
図17に示すように、データ線駆動回路ブロック101を構成するデータ線駆動回路104及びプリチャージ信号用駆動回路401は、夫々第1のシフトレジスタとしてのシフトレジスタ502及びAND回路等の波形制御回路を含むバッファー回路503と、前記シフトレジスタ402と同様の構成の第2のシフトレジスタとしてのシフトレジスタ402及びバッファー回路403とを含んで構成される。
本実施の形態では、データ線駆動手段の一例としてのデータ線駆動回路101を構成するデータ線駆動回路104及びプリチャージ信号用駆動回路401は、図16に示すX方向(P1、P2、P3、…、Pn及びX1、X2、X3、…、Xnの順で走査する方向)に対応する転送方向で、シフトレジスタ502,402の各段から夫々第1駆動信号としてのサンプリング信号及び第2駆動信号としてのプリチャージ回路駆動信号を順次出力し、バッファー回路503,403を介してサンプリングスイッチ106及びプリチャージスイッチ172に供給する。
なお、データ線駆動回路104においては、奇数列のバッファ回路503と偶数列のバッファ回路503とに外部から別個にイネーブル信号が供給される。奇数列のバッファ回路503および偶数列のバッファ回路503は、それらのイネーブル信号により、オン状態の期間が重複しないように駆動される。バッファ回路503は、それぞれ、上記の如く駆動されることによりサンプリング信号を生成し、その信号を順次サンプリングスイッチ106に供給する。これにより、前後のサンプリングスイッチ106に書き込む信号を取り込むことがなくなるので、ゴースト等による表示品位の劣化を防ぐことができる。
データ線駆動回路104のシフトレジスタ502には、サンプリング信号の転送をスタートさせるための第1転送開始信号としてのシフトデータ信号DXが、A方向から入力される。そして、図18のタイミングチャートに示すタイミングで、シフトデータ信号DX、クロック信号CLX及びその反転信号CLX*が入力されると、データ線駆動回路104は、信号DXのパルス幅よりも狭い幅のサンプリング信号SHを、順次クロック信号CLXの半周期分遅らせて、サンプリングスイッチ106に供給するように構成されている。
一方、プリチャージ信号用駆動回路401のシフトレジスタ402には、プリチャージの期間を設定するための第2転送開始信号としてのプリチャージ期間設定パルス信号NRGがA方向から入力されるように構成されている。必ず、同じ1水平帰線期間内では、常にプリチャージ期間設定パルス信号NRGが、データ線駆動回路104のシフトデータ信号DXよりも先に入力されるように設定する。そして、図18のタイミングチャートに示すタイミングで、このプリチャージ期間設定パルス信号NRG、クロック信号CLX及びその反転信号CLX*が入力されると、プリチャージ信号用駆動回路401は、プリチャージ期間設定パルス信号NRGのパルス幅と等しい幅のプリチャージ回路駆動信号を、順次クロック信号の半周期分遅らせてプリチャージスイッチ172に供給する。プリチャージ信号用駆動回路401のバッファー回路403は、上記の如く信号増幅と波形成形とが行われるように、多段カスケード接続されたインバータにより構成されている。ここで、バッファー回路403を、データ線駆動回路104のバッファー回路503と同様に、AND回路等の波形制御回路を備える構成としてもよい。このような構成を採れば、液晶パネルの外部に接続される表示情報処理回路等からのイネーブル信号により、プリチャージ回路駆動信号のパルス幅をプリチャージ期間設定パルス信号NRGのパルス幅の期間において自由に制御できる利点が得られる。
尚、走査線駆動回路102については図示を省略するが、データ線駆動回路104と同様なシフトレジスタ及びバッファー回路を備えて構成されている。
以上のような回路をシフトレジスタ402,502の各段に備えることにより、図18に示すように、クロック信号CLXの半周期ずつずれたパルス信号が、プリチャージ回路駆動信号として、プリチャージ回路NR1〜NRnに供給されることになる。また、シフトデータ信号DXを転送するデータ線駆動回路104のシフトレジスタ502から出力される信号も、シフトデータ信号DXと同じ幅を持つパルス信号であるが、当該パルス信号は、データ線駆動回路104のバッファー回路503に備えられたAND回路等の波形制御回路により、各段毎に図18に示すようなイネーブル信号ENB1またはENB2との間で論理積がとられる。このイネーブル信号ENB1またはENB2のパルス幅は、クロック信号CLXの半周期と同じか或いは狭いパルス幅を有しているため、サンプリング信号として、図18に示すようなハイレベルの期間が重複しないパルス信号が、スイッチング素子SH1〜SHnに供給されることになる。このように、画像信号をサンプリングさせる際には、各データ線112間で同時に画像信号が画素領域のスイッチング素子114に供給されることが無いように構成し、ゴースト等の発生を低減している。
また、図18に示すように、プリチャージ期間設定パルス信号NRGは、シフトデータ信号DXよりも所定期間だけ早く出力されるように構成されているため、画像信号がサンプリングされるタイミングに先行して、プリチャージスイッチ172が導通状態となり、プリチャージ信号線174を介して供給されるプリチャージ信号PVが、各データ線112に供給される。プリチャージ信号は、適宜の電位レベルに設定された信号であり、このようなプリチャージ信号が画像信号のデータ線112への供給に先行して当該データ線112に書き込まれることにより、画像信号を当該データ線112に書き込む際に必要な電荷量を顕著に少なくすることができる。また、画像信号が高いレートでデータ線112に供給される場合でも、各データ線112の電位レベルを安定させ、表示画面上のラインむらの低減、コントラスト比の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、液晶を交流駆動するために、1水平走査期間(1フレーム)あるいは1フィールド(例えば2フレーム)といった所定周期毎に、画像信号の電圧極性を反転させるが、上述のように、各画像信号がスイッチング素子114に供給される前に、各データ線112には、好ましくは中間階調レベルの画像信号に相当し、該画像信号と同一極性のプリチャージ信号が供給されているので、画像信号を書き込む際の負荷は軽減されており、データ線112の電位レベルは、前回に印加された電位レベルによらずに安定している。このため、今回の画像信号を各データ線112に安定した電位により供給することができる。
特に、本実施形態では、第1の実施形態で説明した図1の構成に比べ、上述したようにデータ線112に対してプリチャージ信号を順次書き込むため、高速表示モードで液晶パネルの駆動を行う場合に有効である。例えばXGAあるいはEWSといった表示モードでは、水平帰線期間が4.1μsecあるいは3.8μsec程度と短く、プリチャージ期間としてはXGAモードにあっては約1.6μsec、EWSモードにあっては約1.3μsecと極端に短く、図1のような一括したプリチャージ方式では十分なプリチャージを行うことはできなかった。 特に、EWSモードにあっては、水平方向の画素数が1280個であるため、少なくとも1280段分のプリチャージを一括して行う必要があるが、プリチャージ回路のTFTの駆動能力及びデータ線の時定数を考え合わせると、1.0μsec以上のプリチャージ期間が必要であり、プリチャージを十分に行うことはできなかった。
これに対し、本実施形態においては、上述したようにデータ線に対して順次プリチャージを行うため、プリチャージ時における負荷は、データ線1本分であり、仮に数本まとめてプリチャージを行ったとしても、負荷となるデータ線の容量は従来に比べて著しく少ない。従って、 本実施形態では、表示モードとしてEWSモードのような高速表示モードを採用した場合でも十分なプリチャージを行うことができる。
(プリチャージ信号波形)
第1〜第4の実施形態においてはプリチャージ信号を水平帰線期間に一括して供給する構成であったが、本実施形態においては、上述の説明のように、サンプリングスイッチ106にて画像信号VIDをサンプリング信号SHにより順次サンプリングする前に、データ線112を各々のタイミング(NR1,NR2,NR3・・・がハイレベルの期間)でプリチャージするものである。
図18のタイミングチャートに示すように、画像信号の書き込みと同様にプリチャージ信号の書き込みをデータ線の線順次に行うように構成する。図16において、プリチャージ期間設定パルス信号NRGがシフトレジスタに供給されると、各データ線に対するプリチャージ回路駆動信号NR1,NR2,NR3,NR4…が、X側シフトクロック信号CLX,CLX*に同期して順次シフトされて各データ線に対応するプリチャージスイッチ172に供給される。また、 X側シフトデータ信号DXがプリチャージ期間設定パルス信号NRGから所定の間隔をおいてシフトレジスタに出力されると、このX側シフトデータ信号DXと同じ幅の信号がX側シフトクロック信号CLX,CLX*に同期して順次各段にシフトされ、イネーブル信号ENB1,ENB2により隣接する段の信号の重なり合いを防ぐ幅に成形されて、サンプリング信号SH1,SH2,SH3,SH4…が、サンプリングスイッチ106に供給される。
そして、本実施形態におけるプリチャージ信号の波形は、図18のPV1,PV2として示すように、全てのデータ線に対するプリチャージ信号の順次供給される期間(一水平走査期間)の全域にわたって徐々に電位が変化させたものを用いる。図に示した波形は、第1の実施形態と同様な微分回路を用いて形成したものであるが、他にも上述した実施形態のように、積分回路、あるいはパルス幅制御回路を用いて時間と共に連続的または段階的に変化するプリチャージ信号を用いることができる。すなわち、図10,図12,図13,図14(a)(b)にて示したプリチャージ期間T1内のプリチャージ信号の波形変化を、一水平走査期間に引き伸ばしたような波形を用いることになる。これにより得られる作用効果は、第1〜第4の実施形態にて説明したものと同様である。
図18に示すようにデータ線の線順次にプリチャージ信号を供給する構成においては、上述したような一括してプリチャージ信号を供給する場合に比べてプリチャージ信号線等に寄生する容量は少なくなる。しかしながら、プリチャージ信号線自体の寄生容量等は存在するため、本実施形態のように時間と共に変化すプリチャージ信号波形を用いれば、輝度(透過率)むら及び色むらをより一層低減することができ、より一層高品位な画像を表示させることができる。
〔第6の実施形態〕
次に、本発明による電気光学装置の一例として、アクティブマトリクス型液晶装置を用いた第6の実施形態を、図19を用いて説明する。
図19は、本実施形態のアクティブマトリクス型液晶装置の液晶パネルブロック10を示す。
本実施形態の液晶装置は、行状の走査線Y1、Y2、…、Ymと列状のデータ線X1、X2、…、Xnと両者の各交差部に配された行列状の液晶画素LC11、LC12、…、LCmnを備えている。本実施形態では電気光学物質として液晶を利用した画素を備えているが、本発明はこれに限られるものではなく他の電気光学物質を用いても良い。
個々の液晶画素LCには、画素を行単位で順次選択的にスイッチングするスイッチング素子が、液晶と電気的直列接続して設けられている。図19ではその一例としての薄膜トランジスタT11、T12、…、Tmnが設けられている。この薄膜トランジスタTのゲート電極は対応する走査線Yに接続され、ソース電極は対応するデータ線Xに接続され、ドレイン電極は対応する液晶画素LCに接続されている。なお、各液晶画素LCは、スイッチング素子T11、T12、…、Tmnに接続された画素電極と、画素電極と液晶を挟んで対向し電位VCが印加される対向電極と、必要に応じて、画素電極に印加された電圧を保持するための蓄積容量(画素電極と前段走査線又は容量電極線とが絶縁膜を挟んで対向して構成される)とからなる。
また、走査線Yの各端部には走査線駆動回路102が設けられており、この走査線駆動回路102は各走査線Yを線順次走査し一水平走査期間毎に一行分の液晶画素LCを選択する。具体的には、走査線駆動回路102は、シフトレジスタの機能を有し、Y側シフトクロック信号CLYに同期してY側シフトデータ信号DYをシフトレジスタにより順次転送し、転送に応じて高電位のY側シフトレジスタ出力信号を各走査線Yに出力する。
Y側シフトレジスタ出力信号をゲート電極に受けた薄膜トランジスタTは導通し、導通した薄膜トランジスタTを介してデータ線Xから画像信号が液晶画素LCに供給される。その行を選択する水平走査期間が終了すると、走査線駆動回路102からは非選択電位が走査線Yに出力され、これにより薄膜トランジスタTが非導通となって、液晶画素LC及び/又は上記蓄積容量に保持された電圧が画素の液晶に印加される続ける。なお、走査線Yは一本ずつ選択されるのが通常であるが、複数行分の液晶画素LCに同一画像信号を書き込む場合は、それらの走査線Yは同時に選択することができる。
また、各データ線Xの端部にはデータ線駆動回路104を備えており、このデータ線駆動回路104は、一水平走査期間内で画像信号VIDを順次サンプリングし各データ線Xに供給する。走査線駆動回路102により選択された一行分の液晶画素LCに、サンプリング供給された画像信号VIDが点順次で書き込まれる。具体的には、各データ線Xの一端にはVIDをサンプリングするためのサンプリングスイッチTS1、TS2、…、TSnが設けられており、画像信号VIDの供給を受ける。
シフトレジスタ603は所定のX側シフトクロック信号CLXに同期してX側シフトデータ信号DXを順次転送し、転送に応じてサンプリング信号S1、S2、…、Snを出力する。これらのサンプリング信号は対応するサンプリングスイッチTS1、TS2、…、TSnのゲート電極に供給され、サンプリングスイッチを導通させる。導通したサンプリングスイッチTSを介して個々のデータ線Xに画像信号VIDをサンプリングしホールドする。
なお、図19においては、画像信号VIDの伝送線を一本とし、サンプリング用のサンプリングスイッチTSXは一本ずつ順次導通されて、データ線Xの一本ずつに順次画像信号が供給されているが、これに限定されるものではない。すなわち、シリアルの画像信号VIDをいわゆる直並列変換して複数本(例えば、3本、6本、12本、24本・・・等)の画像信号VIDに相展開して、複数の伝送線に互いに異なる画素に印加すべき画像信号を並列的に伝送し、伝送線の本数と等しい数の複数個(例えば3個、6個、12個、24個・・・等)のサンプリングスイッチTSを同時に導通させて、対応する複数本のデータ線Xに同時に画像信号VIDを供給するようにしてもよい。この場合は、同時に導通制御されるサンプリングスイッチTSの数を単位として、順次サンプリング制御が行われ、水平走査期間内において一行分の液晶画素LCにはこの単位数毎に点順次で書き込まれることになる。
更に、各データ線Xに対する画像信号VIDの順次サンプリングに先行して、水平走査期間(走査線Yが選択走査される)毎に電圧源604からの出力を各データ線Xに同時に供給するプリチャージ動作を行い、画像信号VIDのサンプリング時に生じる各データ線Xへの充放電電流を抑制する。具体的には、個々のデータ線Xの端部に接続したプリチャージスイッチTP1、TP2,…、TPnをプリチャージ回路駆動信号PCによって開閉制御する。すなわち、サンプリングスイッチTSによる画像信号VIDのサンプリングが開始される前に、プリチャージ回路駆動信号PCによってプリチャージスイッチTPを導通させ、プリチャージ信号を電圧源604からデータ線Xに供給している。
次に、図20及び図21のタイムチャートを参照して図19に示したアクティブマトリクス表示装置の駆動方法を詳細に説明する。
走査線駆動回路102は、Y側シフトデータ信号DYが入力されると、Y側シフトクロック信号CLYに同期して、パルス幅が1HのY側シフトレジスタ出力信号を順次走査線に出力する。尚、図20では、任意の行である走査線Yi-1、Yi 、Yi+1にY側シフトレジスタ出力信号が順次出力された状態を示している。
Y側シフトレジスタ出力信号が出力され、行方向の各薄膜トランジスタTが導通状態になると、まず、プリチャージ回路駆動信号PCが出力されてプリチャージスイッチTP1、TP2、…、TPnが導通し、電圧源604の出力が各データ線Xおよび各液晶画素LCに書き込まれる。
データ線駆動回路104は、X側シフトデータ信号DXが入力されると、X側シフトクロック信号CLXに同期してサンプリング信号S1、S2、…,Snを順次出力し、サンプリングスイッチTS1、T2、…、Tnを順次導通状態とし、画像信号VIDをデータ線X1、X2、…、Xnへ順次接続し、データ線Xに供給された画像信号VIDは各画素の薄膜トランジスタTを介して各液晶画素LCへ書き込まれる。
なお、本実施形態においては、液晶パネルは一走査ラインごとに画像信号の極性が反転される例、すなわち、ライン反転駆動される例を示しており、図20の画像信号VIDの振幅の中心電位(一点鎖線)を基準として正極性の画像信号線が液晶画素行に書き込まれると、次の液晶画素行には負極性の画像信号が書き込まれ、これが繰り返される。さらに、次の垂直走査期間(フレーム)には、正極性の画像信号が書き込まれた液晶画素には負極性画像信号、負極性の画像信号が書き込まれた液晶画素には正極性画像信号が、各々書き込まれる。
次に、電圧源604の出力波形例を示す図21を参照する。
電圧源604は、水平走査期間の間に液晶画素LCに正極性または負極性の画像信号を書き込む(液晶画素での極性は画素電極と対向する対向電極電位VCとの間に生じる電界の極性を意味し、データ線に供給される画像信号の極性はその振幅の中心電位或いは対向電極電位VCを基準とした極性を意味する)。液晶画素LCに正極性の画像信号を書き込む場合、電圧源604は、プリチャージ回路駆動信号PCが出力されるP1期間内に、電圧レベルV2およびV1をデータ線X及び液晶画素LCに順次出力する。この電圧レベルV2、V1は対向電極電位VCから見て正極性の電位にある。この電圧レベルが印加された後に、正極性の画像信号がデータ線駆動回路104のサンプリング信号S1〜Snにより順次サンプリングされ、データ線X、薄膜トランジスタTを介して液晶画素LCに書き込まれる。
すなわち、液晶画素LCに正極性の画像信号を書き込む場合、データ線Xはその前の水平走査期間において負極性の画像信号の電位状態にあり、液晶画素LCには垂直走査期間(一フレーム)前に書き込まれた負極性の画像信号の電位保持状態にある。従って、これとは逆極性の正極性画像信号を印加する前に、データ線X及び液晶画素LCを電圧源604からの正極性の電位レベルによりプリチャージすることにより、画像信号の印加時にはデータ線及び液晶画素の充放電が終了しているので、画像信号を十分に書き込むことができる。
一方、負極性の画像信号を書き込む水平走査期間においては、プリチャージ回路駆動信号PCが出力されるP1期間内に、電圧源604は、電圧レベルV3およびV4をデータ線X及び液晶画素LCに順次出力する。この電圧レベルV3、V4は対向電極電位VCから見て負極性の電位にある。この電圧レベルが印加された後に、負極性の画像信号がデータ線駆動回路104のサンプリング信号S1〜Snにより順次サンプリングされ、データ線X、薄膜トランジスタTを介して液晶画素LCに書き込まれる。
すなわち、液晶画素LCに負極性の画像信号を書き込む場合、データ線Xはその前の水平走査期間において正極性の画像信号の電位状態にあり、液晶画素LCには垂直走査期間(一フレーム)前に書き込まれた正極性の画像信号の電位保持状態にある。従って、これとは逆極性の負極性画像信号を印加する前に、データ線X及び液晶画素LCを電圧源604からの負極性の電位レベルによりプリチャージすることにより、画像信号の印加時にはデータ線及び液晶画素の充放電が終了しているので、画像信号を十分に書き込むことができる。
尚、画像信号及び電圧レベルの正極性、負極性とは、それらが液晶画素LCに印加された際(画素電極に印加された電位)の対向電極電圧VCを基準とした極性である。本発明において、V2、V3は、プリチャージ期間P1の中で、上述した充放電電流を分散させる機能を持つ。具体的には、V1、V4の2値のみでプリチャージを行っていた従来例では、P1期間の始まりの部分に充放電電流が集中していたのに対し、本実施形態ではV2、V3を追加することで、充放電電流が集中する期間がP1期間の始まり部分と、V2からV1への切り替わり後、V3からV4への切り替わり後に分散されるとともに、プリチャージ直前には逆極性の電位状態にあるデータ線X及び液晶画素LCの電位から段階的に電位を変化させ極性を反転させるように最初のプリチャージの電位レベルを低く設定し且つ充放電を分散させたたので各々のピーク値が低減される。このV2、V3の最適な印加時間、電圧レベルは、個々の液晶パネル及び駆動回路の特性によって決定される。
このように、従来、充放電電流により電位変動していた対向電極電位或いは容量電極電位、さらには電圧源604と共にGND電位を共有している回路のGND線の電位の変動量は、データ線及び液晶画素の充放電が分散され、且つその変動ピークが小さくなったことに応じて減少し、それによりノイズが抑えられ、回路誤動作の危険性も大きく減少させることができる。
尚、電圧源604は、V2とV3を同一電圧にして3値の電圧を出力したり、別の電圧値を加えて5値もしくはそれ以上の電圧値を出力するようにしても良い。電位レベルを奇数個にする場合には、その中間位置に相当する電位は、画素電極に印加された際に対向電極電位VCと同一電位になるようにして、液晶パネルの駆動に必要な電源電位、さらには電源電位の液晶パネルへの供給端子を共有化することが好ましい。また、プリチャージ回路駆動信号PCがLowレベルの期間、すなわちプリチャージを行わない期間は、電圧源604の出力がどのような電圧値であっても構わない。
また、以上の実施形態においては、液晶画素をライン反転駆動する場合を前提にして説明したが、画素単位反転駆動であっても構わない。その場合、一水平走査期間においてデータ線に供給される画像信号はデータ線毎に極性が交互に反転している。従って、一液晶画素行に書き込まれる画像信号も、画素毎に極性が反転している。このため、プリチャージする電位レベルも、直後に印加される画像信号の極性と同一となるように、データ線毎にその極性が反転され、さらに垂直走査期間毎に電圧レベルの極性も各々反転されることになる。例えば、データ線X1に電圧レベルV1、V2が順次印加される場合は、データ線X2には電圧レベルV3、V4が順次印加される。また次の垂直走査期間ではデータ線X1にはV3、V4が順次印加され、データ線X2にはV1、V2が順次印加される。
更に、上記の実施形態では、プリチャージの際に、GND電位の変動抑制を主目的として電圧源604の出力波形を制御しているが、電圧源604の出力波形を制御することによれば、実施の形態1乃至5の場合と同様に、信号の遅延に起因するプリチャージのバラツキ、すなわち、プリチャージによって各画素に供給される電荷量のバラツキを抑制することができる。従って、本実施形態の液晶装置によれば、電圧源604の出力波形を適当に設定することにより、輝度(透過率)むらおよび色むらの少ない高品位な画像を表示することが可能となる。
尚、本発明においては、電圧源604から出力される以上に説明した電圧レベルをプリチャージ信号として呼称することとする。
〔第7の実施形態〕
本発明による電気光学装置の一例として、アクティブマトリクス型液晶装置を用いた第7の実施形態を、図22を用いて説明する。
図22は、本実施形態のアクティブマトリクス型液晶装置の液晶パネルブロック10を示す。
尚、本実施形態において、走査線駆動回路102、データ線駆動回路104、行列状の液晶画素LC11、LC12、…、LCmn、薄膜トランジスタT11、T12、…、Tm、及びプリチャージ用のプリチャージスイッチTP1、TP2,…、TPnの構成及び動作は、第6の実施形態で説明した通りである。尚、電圧源604は本実施形態ではランプ波形発生回路605に置き換わっている。本実施形態のプリチャージ回路駆動信号PCとプリチャージ信号の出力波形は、図23のタイムチャートに示す通りである。
ランプ波形発生回路605は、図23に示すように液晶画素LCに正極性の画像信号VIDを書き込む水平走査期間の場合には、画像信号がデータ線にサンプリング供給される前であってプリチャージ回路駆動信号PCにおけるP1期間内に、電圧レベルがVLからVHに変化するランプ波形を出力する。同様に、負極性の画像信号を書き込む水平走査期間の場合には、ランプ波形発生回路605は水平走査期間のP1期間内に電圧レベルがVHからVLに変化するランプ波形を出力する。
すなわち、液晶画素LCに正極性の画像信号を書き込む場合、データ線Xはその前の水平走査期間において負極性の画像信号の電位状態にあり、液晶画素LCには垂直走査期間(一フレーム)前に書き込まれた負極性の画像信号の電位保持状態にある。従って、これとは逆極性の正極性画像信号を印加する前に、データ線X及び液晶画素LCをランプ波形発生回路605からの負極性から正極性に変化するランプ波形によりプリチャージすることにより、画像信号の印加時にはデータ線及び液晶画素の充放電が終了しているので、画像信号を十分に書き込むことができる。
一方、液晶画素LCに負極性の画像信号を書き込む場合、データ線Xはその前の水平走査期間において正極性の画像信号の電位状態にあり、液晶画素LCには垂直走査期間(一フレーム)前に書き込まれた正極性の画像信号の電位保持状態にある。従って、これとは逆極性の負極性画像信号を印加する前に、データ線X及び液晶画素LCをランプ波形発生回路605からの正極性から負極性に変化するランプ波形によりプリチャージすることにより、画像信号の印加時にはデータ線及び液晶画素の充放電が終了しているので、画像信号を十分に書き込むことができる。
尚、画像信号及び電圧レベルの正極性、負極性とは、それらが液晶画素LCに印加された際(画素電極に印加された電位)の対向電極電圧VCを基準とした極性である。ここで、ランプ波形はプリチャージ期間P1の中で、上述した充放電電流を平均化させる機能を持つ。
このように、従来、充放電電流により電位変動していた対向電極電位或いは容量電極電位、さらにプリチャージ電圧の出力回路と共にGND電位を共有している回路のGND線の電位の変動量は、データ線及び液晶画素の充放電が平均的に分散されたことに応じて減少し、ぞれによりノイズが抑えられ、回路誤動作の危険性も大きく減少させることができる。
尚、ランプ波形発生回路605が出力するランプ波形は、P1期間の途中で電圧レベルVHに達し、その後は、VHを維持する台形状であっても良い。また、プリチャージ回路駆動信号PCがLowレベルの期間、すなわちプリチャージを行わない期間は、ランプ波形発生回路605の出力がどのような電圧値であっても構わない。
また、以上の実施形態においては、液晶画素をライン反転駆動する場合を前提にして説明したが、画素単位反転駆動であっても構わない。その場合、一水平走査期間においてデータ線に供給される画像信号はデータ線毎に極性が交互に反転している。従って、一液晶画素行に書き込まれる画像信号も、画素毎に極性が反転している。このため、プリチャージする電位レベルも、直後に印加される画像信号の極性と同一となるように、データ線毎にその極性が反転され、さらに垂直走査期間毎に電圧レベルの極性も各々反転されることになる。例えば、データ線X1に電圧レベルがVLからVHに変化するランプ波形が印加される場合は、データ線X2には電圧レベルがVHからVLに変化するランプ波形が印加される。また次の垂直走査期間ではデータ線X1に電圧レベルがVHからVLに変化するランプ波形が印加され、データ線X2にはVLからVHが印加される。
更に、上記の実施形態において、ランプ波形発生回路605の出力波形を適当に制御すると、実施の形態1乃至5の場合と同様に、信号の遅延に起因するプリチャージのバラツキを抑制することができる。従って、本実施形態の液晶装置によれば、ランプ波形発生回路605の出力波形を適当に設定することにより、輝度(透過率)むらおよび色むらの少ない高品位な画像を表示することが可能となる。
尚、本発明においては、ランプ波形発生回路605から出力される以上に説明したランプ波形の信号をプリチャージ信号として呼称することとする。
〔第8の実施形態〕
本発明による電気光学装置の一例として、アクティブマトリクス型液晶装置を用いた第8の実施形態を、図24を用いて説明する。
図24は、本実施形態のアクティブマトリクス型液晶装置の液晶パネルブロック10を示す。
本実施形態の液晶装置において、走査線駆動回路102、データ線駆動回路104、行列状の液晶画素LC11、LC12、…、LCmn、薄膜トランジスタT11、T12、…、Tm、及びプリチャージ用のプリチャージスイッチTP1、TP2,…、TPnの構成及び動作は第6及び第7の実施形態で説明した通りである。第6の実施形態の電圧源604、第7の実施形態のランプ波形発生回路605は、本実施形態では電圧源607に置き換わっている。電圧源607は、上記電圧源604又は上記ランプ波形発生回路605と同じ構成を有し、それらと同様に動作することにより、それらが出力するプリチャージ信号と同様の信号を出力することができる。尚、電圧源607は、従来技術の場合のように、プリチャージ信号として正極性の一定電位(例えば、図21のV1、図23のVH)と負極性の一定電位(例えば、図21のV4、図23のVL)を出力するものであっても構わない。
本実施形態において特徴となるのは電流制限回路6を付加したことにある。
電流制限回路6は、水平走査期間内のプリチャージ回路駆動信号PCが出力されるP1期間には、電圧源607からのプリチャージ信号が出力された場合の出力電流を所定の値以下に制限するもので、プリチャージ期間内における過度な充放電電流によるノイズの発生、誤動作を防止する。尚、制限電流値は、充電電流と放電電流でその絶対値を異なる値にしても良い。また、プリチャージ期間内で制限電流値を変化させてもよい。
尚、以上の各実施形態では、画素の蓄積容量を画素電極と容量電極により形成しているが、前段の走査線を容量電極として走査線と画素電極との間で形成しても構わない。その場合、本発明にて課題としている充放電電流による電位変動は、前段の走査線において発生する。その電位変動量が大きければ、前段のTFTが導通し、既に書き込んだ画像信号がリークしてしまう恐れがある。
〔第9の実施形態〕
次に第9の実施形態を説明する。
本実施形態では、以上の各実施形態にて説明したデータ線駆動回路104(図1、図15、図16、図19、図22および図24)が備えるシフトレジスタ及び/又はプリチャージ信号用駆動回路401(図16)が備えるシフトレジスタとして、双方向のシフトレジスタが用いられる。本実施形態のように双方向シフトレジスタを備えると、右側から左側へ画像信号を書き込むモードと、左側から右側へ画像信号を書き込むモードとを選択的に実行することが可能となる。
このような構成によれば、例えば8ミリビデオのモニター部に液晶パネルを用いた場合には、画像を左右反転させたり、更には上下左右を反転させる表示が可能である。また、カラー液晶プロジェクタには特に有効であり、後述するような3枚のライトバルブとしての液晶パネルを組合わせてカラー液晶プロジェクタを構成することができる。詳しくは後述する。
また、本実施形態の液晶装置は、画像信号の書き込み方向に応じて、プリチャージ信号の波形が適当に変化するように構成されている。双方向シフトレジスタにより、データ線への画像信号の供給方向が画面上で反転すると、表示画面には、画像信号の供給方向に応じた輝度(透過率)むらが生じることがある。本実施形態の液晶装置は、双方向シフトレジスタの走査方向に応じて、以上の各実施形態において説明した方法により、液晶装置の透過率分布のむらが消滅するようにプリチャージ信号の波形を変形させる。従って、本実施形態の液晶装置によれば、画面の反転に伴う輝度(透過率)むらを有効に低減することができる。
〔液晶装置の構成説明〕
以上に説明した各実施形態における電気光学装置の一例としての液晶装置の構成図を、図25〜図32に基づいて説明する。
図25は、本実施形態の液晶装置200が備える薄膜トランジスタアレイ基板(以下TFTアレイ基板と言う)上に設けられた各種配線、周辺回路等の構成を示すブロック図である。図25において、液晶装置200は、例えば石英基板、ハードガラス等からなるTFTアレイ基板Aを備えている。TFTアレイ基板A上には、マトリクス状に設けられた複数の画素電極202と、X方向に複数配列されており各々がY方向に沿って伸びるデータ線X1〜Xnと、Y方向に複数配列されており各々がX方向に沿って伸びる走査線Y1〜Ymと、各データ線Xと画素電極202との間に各々介在すると共に該間における導通状態及び非導通状態を、走査線Yを介して各々供給される走査信号に応じて各々制御するスイッチング素子の一例としての複数のTFT(T11〜Tmn)とが形成されている。またTFTアレイ基板A上には、後述の蓄積容量のための配線である容量線204(容量電極)が、走査線Yと平行に形成されている。
尚、本実施形態では、画素の蓄積容量を画素電極と容量電極により形成しているが、前段の走査線を容量電極として走査線と画素電極との間で形成しても構わない。その場合、プリチャージに伴って発生する充放電電流に起因する電位変動は、前段の走査線において発生する。その電位変動量が大きければ、前段のTFTが導通し、既に書き込んだ画像信号がリークしてしまう恐れがある。
TFTアレイ基板A上には更に、複数のデータ線Xに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ信号制御回路206(図1、図15および図16におけるプリチャージスイッチ172、および図19、図22および図24におけるプリチャージスイッチTP1〜TPnに相当)と、画像信号をサンプリングして複数のデータ線Xに各々供給するサンプリング回路208(図1、図15および図16におけるサンプリングスイッチ106、および、図19、図22および図24におけるサンプリングスイッチTS1〜TSnに相当)と、走査線駆動回路102と、シフトレジスタ603(及びその出力に基づきサンプリング信号Sを形成する論理回路を含む)とが形成されている。尚、本構成図では、上記実施形態でのデータ線駆動回路104からサンプリング回路208を分離して説明する。
走査線駆動回路102は、外部制御回路から供給される電源、基準クロック等に基づいて、所定タイミングで走査線XにY側シフトレジスタ出力信号をパルス的に線順次で印加する。
シフトレジスタ603は、外部制御回路から供給される電源、基準クロック等に基づいて、走査線駆動回路102がY側シフトレジスタ出力信号を印加するタイミングに合わせて、例えば6本の画像入力信号線VID1〜VID6各々について、データ線毎にサンプリング信号S1〜Snをサンプリング回路208にサンプリング回路駆動信号線210を介して供給する。
プリチャージ信号制御回路206は、TFT211を各データ線毎に備えている。TFT211のソース電極にはプリチャージ信号線212が接続されている。また、TFT211のゲート電極にはプリチャージ制御信号線214が接続されている。TFT211には、プリチャージ信号線212を介して、外部電源回路(図19、図22および図24における電圧源604,607およびランプ波形発生回路605等)からプリチャージ信号が供給されると共に、プリチャージ信号を書き込むために必要なプリチャージ回路駆動信号PCが、外部制御回路からプリチャージ制御信号線214を介して供給される。TFT211は、それらの信号に基づいて、各データ線に対して、画像信号に先行するタイミングでプリチャージ信号を書き込む。
サンプリング回路208は、TFT216を各データ線毎に備えている。TFT216のソース電極には画像入力信号線VSIG1〜6が接続されている。また、TFT216のゲート電極にはサンプリング回路駆動信号線210が接続されている。TFT216は、画像入力信号線VSIG1〜6を介して6つのパラレルな画像信号VID1〜6が入力されると、これらの画像信号VID1〜6をサンプリングする。また、TFT216は、サンプリング回路駆動信号線210を介して、シフトレジスタ603からサンプリング信号Sが入力されると、6本の画像入力信号線VSIG1〜6各々についてサンプリングされた画像信号VID1〜6を、6本の隣接するデータ線に同時に印加し、更にこのような画像信号VID1〜6の印加を6本のデータ線からなるグループ毎に順次行う。即ち、シフトレジスタ603とサンプリング回路208とは、6相展開されて画像入力信号線VSIG1〜6から入力された6つのパラレルな画像信号VID1〜6を、データ線Xに供給するように構成されている。
次に、液晶装置のパネル構成を説明する。図26は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。また、図27は、対向基板を含む液晶装置を図26に示すH−H’直線に沿って切断することで得られる断面図である。
本実施の形態では、特に、プリチャージ信号制御回路206及びサンプリング回路208は、図25中に斜線領域で示すように、且つ、図26及び図27に示すように、対向基板220に形成された遮光性の周辺見切り222に対向する位置においてTFTアレイ基板A上に設けられている。一方、走査線駆動回路102及びシフトレジスタ603は、液晶層224に面しないTFTアレイ基板Aの狭く細長い周辺部分上に設けられている。
図26及び図27において、TFTアレイ基板Aの上にはシール材226が画面表示領域に沿って設けられている。シール材226は、複数の画素電極202により規定される画面表示領域(即ち、実際に液晶層224の配向状態変化により画像が表示される液晶パネルの領域)の周囲において両基板を貼り合わせて、液晶層224を包囲している。シール材226は、シール部材の一例としての光硬化性樹脂で構成されている。対向基板220上における画面表示領域とシール材226との間には、遮光性の周辺見切り722が設けられている。周辺見切り222は、後に画面表示領域に対応して開口部が設けられた遮光性のケースにTFTアレイ基板Aが入れられた場合に、当該画面表示領域が製造誤差等により当該ケースの開口の縁に隠れてしまわないように、即ち、例えばTFTアレイ基板Aのケースに対する数百μm程度のずれを許容するように、画面表示領域の周囲に500μm以上の幅を持つ帯状の遮光性材料から形成されたものである。
シール材226の外側の領域には、画面表示領域の下辺に沿ってシフトレジスタ603及び実装端子228が設けられていると共に、画面表示領域の左右の2辺に沿って走査線駆動回路102が画面表示領域の両側に設けられている。更に画面表示領域の上辺には、複数の配線230が設けられている。また、対向基板220のコーナー部の少なくとも1ヶ所で、TFTアレイ基板Aと対向基板220との間で電気的導通をとるための導通剤からなる銀点232が設けられている。そして、シール材226とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板220が当該シール材226によりTFTアレイ基板Aに固着されている。
〔電子機器〕
次に、以上詳細に説明した液晶装置200を備えた電子機器の実施の形態について図28から図32を参照して説明する。
図28に示す電子機器は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、上述した走査線駆動回路102及びデータ線駆動回路104を含む駆動回路1004、液晶パネルブロック10、クロック発生回路1008並びに電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置などのメモリ、同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロックに基いて、所定フォーマットのビデオ信号などの表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。
表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、相展開回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロックに基いて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロックCLKと共に駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、走査線駆動回路102及びデータ線駆動回路104によって前述の駆動方法により液晶パネルブロック10を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。液晶装置200において、駆動回路1004は、上記の如く液晶パネルブロック10を構成するTFTアレイ基板の上に搭載される。TFTアレイ基板上には、駆動回路1004に加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
次に図29から図32を用いて、このように構成された電子機器の具体例を各々示す。
(3板式液晶プロジェクタ)
図29において、電子機器の一例たる液晶プロジェクタ1100は、投射型の液晶プロジェクタであり、光源1110と、ダイクロイックミラー1113,1114と、反射ミラー1115,1116,1117と、入射レンズ1118,リレーレンズ1119,出射レンズ1120と、液晶ライトバルブ1122,1123,1124と、クロスダイクロイックプリズム1125と、投射レンズ1126とを備えて構成されている。液晶ライトバルブ1122、1123,1124は、上述した液晶装置200を3個用意し、各々液晶ライトバルブとして用いたものである。また、光源1110はメタルハライド等のランプ1111とランプ1111の光を反射するリフレクタ1112とからなる。
以上のように構成される液晶プロジェクタ1110においては、青色光・緑色光反射のダイクロイックミラー1113は、光源1110からの白色光束のうちの赤色光を透過させると共に、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー1117で反射されて、赤色光用液晶ライトバルブ1122に入射される。一方、ダイクロイックミラー1113で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー1114によって反射され、緑色光用液晶ライトバルブ1123に入射される。また、青色光は第2のダイクロイックミラー1114も透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ1118、リレーレンズ1119、出射レンズ1120を含むリレーレンズ系からなる導光手段1121が設けられ、これを介して青色光が青色光用液晶ライトバルブ1124に入射される。各ライトバルブにより変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム1125に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とか十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1126によってスクリーン1127上に投射され、画像が拡大されて表示される。
本発明の液晶装置を適用したライトバルブの各々は、上述したように輝度むらが無いため、このようなカラー液晶プロジェクタに用いた場合に特にその利点が生かされ、色むらのない良好な画像を表示することができる。以下、本発明の液晶装置をカラー液晶プロジェクタに用いた場合の利点について説明する。
図29に示すカラー液晶プロジェクタは、3枚式の液晶プロジェクタであり、カラーフィルターが形成されていない色無しの液晶装置をライトバルブとして用い、ライトバルブ1122,1123,1124をRGB別に3枚用いている。各々のライトバルブには、図29に示すように、R,G,Bの3色の光が照射される。そして、3枚のライトバルブ1122,1123,1124により別々に光変調された3色光は、ダイクロイックミラーあるいはプリズム1125により一つの投射光として合成された後、スクリーン1127上に投射される。
このように、プリズム1125を用いて合成すると、変調後のR光及びB光と比べると、G光は、プリズム1125で反射されないため、光の反転回数が一回だけG光について少なくなる。この現象は、もちろんG光の代わりに、 R光及びB光がプリズム502で反射されないように光学系を構成しても同じであり、更にダイクロイックミラー等を用いて3色光を合成した場合にも同様に起こる。従って、このような場合には、G光についての画像信号を何等かの形で左右ひっくり返す必要が生じる。
例えば第9の実施形態の液晶装置、即ち双方向シフトレジスタを備えた液晶装置を用いることにより、図30に示すようにG光について画像信号を左右ひっくり返すことができる。つまり、上記の液晶装置を用いることによれば、図30(b)に示すように、G光の照射されるライトバルブ1123については、データ線駆動回路104の走査方向を左から右へシフトするように構成し、他のライトバルブ1122,1124については図30(a),(c)に示すように、走査方向が右から左へシフトするように構成することができる。
上記の構造によれば、G光の照射されるライトバルブ1123についてのみ、プリチャージ信号の書き込み方向が異なることになる。しかしながら、上述した第9の実施形態の液晶装置を用いれば、何れの走査方向が用いられる場合にも輝度むら及び色むらの発生を防止することができる。従って、上記の構造を有する液晶プロジェクタによれば、合成画像において色むらが生ずるのを有効に防止することができる。
上述の如く、実施の形態1乃至9の何れかの構造を有する液晶装置200は、プリチャージ信号を時間の経過と共に連続的あるいは段階的に変化させることにより、プリチャージ信号線や、プリチャージ用ゲート線の寄生容量が存在する場合でも、表示画面における左右の輝度むらを十分に抑制することができる。従って、各実施形態の液晶装置200を図29に示す3板式カラー液晶プロジェクタのライトバルブに適用すると、全てのライトバルブ1122,1123,1124において輝度むらの発生を防止して、図30(a),(b),(c)に示す全ての画像から、文字部分「F」と帯状部分との輝度差や色むらを排除することができる。従って、ライトバルブ1123の表示画像のみを反転させて3色を合成した場合でも、合成画像には全く色むらが発生せず、極めて良好なカラー画像を表示することができる。
カラー液晶プロジェクタの画像はスクリーン上に大きく投影され、また、人間の視覚は色むらに敏感な特質を有しているので、このような形態の液晶プロジェクタに上述した各実施形態の液晶装置を適用することは特に有効である。
また、XGAモードあるいはEWSモードのように、高速表示モードを採用した場合には、データ線の本数は従来の表示モードの場合に比べて約2倍程度増える。従って、この場合は、プリチャージ信号を伝送する配線に、データ線に起因して付加される寄生容量も約2倍程度に増大する。しかし、上述した各実施形態の液晶装置は、プリチャージ信号を時間の経過と共に連続的または段階的に変化させると共に画像信号の転送方向に応じてプリチャージ信号の波形を制御できるので、常に輝度むら及び色むらの発生を低減して、高精細で良好な画像表示を行うことが可能である。
(2板式液晶プロジェクタ)
次に、図31に本発明の液晶装置を適用した2板式液晶プロジェクタの一例を示す。図31に示す液晶プロジェクタ300においては、光源ランプ301からの光は反射ミラー302を介して白色平行光束Wとなって、偏光ビームスプリッタ303に入射する。そして、この偏光ビームスプリッタ303で分離されたP偏光光束は、入射側偏光板352を透過して、RGBのカラーフィルタ層を備えた第1の液晶ライトバルブ362に入射する。この第1の液晶ライトバルブ362は、出射側偏光板372が光学的に密着した状態で貼り付けられた構成となっており、与えられた画像に基づき、入射したP偏光光束に対して変調を施す。
一方、S偏光光束は、ミラー304を介して入射側偏光板351を透過し、RGBとは補色関係にあるCMYのカラーフィルタ層をを備えた第2の液晶ライトバルブ361に入射する。この第2の液晶ライトバルブ361は、その出射面に出射側偏光板371が光学的に密着した状態に貼り付けられた構成となっており、与えられた画像情報に基づき、入射したP偏光光束に対して変調を施す。
以上のようにして各液晶ライトバルブ361,362を介して形成された出射した変調光束は、偏光ビームスプリッタ309で1つの変調光束に合成されて合成画像を形成する。この合成画像は、投射レンズ310を介してスクリーン等の投射面313上に拡大投射される。
この液晶プロジェクタにおいては、2枚の液晶ライトバルブ361,362を用いて、投射画像の輝度を確保すると共に、色再現性を確保しているので、従来の2板式液晶プロジェクタに比べて、色純度が高く、しかも明るい投射画像を得ることができる。しかも、液晶ライトバルブ361,362の各々において輝度むら及び色むらが無いため、合成画像においても色むらが無く、高品位の画像の表示が可能である。
このように、上述した各実施形態の液晶装置は、3板式の液晶プロジェクタに限られず、2板式の液晶プロジェクタについても適用可能であり、いずれの方式の液晶プロジェクタに適用した場合でも、輝度むら及び色むらの無い高品質の画像表示を可能にする。
(ラップトップ型パーソナルコンピュータ)
図32において、電子機器の他の例たるラップトップ型のパーソナルコンピュータ1200は、上述した液晶パネルブロック10がトップカバーケース内に備えられており、更にCPU、メモリ、モデム等を収容すると共にキーボード1202が組み込まれた本体1204を備えている。
本発明の液晶装置をこのようなラップトップ型のパーソナルコンピュータ1200に用いると、輝度むら及び色むらの無い高品質の画像表示が可能であり、CRT等を用いたデスクトップ型パーソナルコンピュータと比べて遜色のない使用環境を提供することができる。
以上図29から図32を参照して説明した電子機器の他にも、ヘッドマウントディスプレイ、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、携帯電話、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが図28に示した電子機器の例として挙げられる。
以上説明したように、本発明によれば、輝度むら及び色むらの無い高品位の画像表示が可能な液晶装置200を備えた各種の電子機器を実現できる。
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態においては、各画素に配置されるスイッチング素子や駆動回路等の周辺回路を構成する能動素子を薄膜トランジスタ(TFT)で構成していたが、基板を半導体基板とし、各スイッチング素子や能動素子を半導体基板表面に形成されたMOSトランジスタにより構成してもよい。この場合、画素電極は反射電極となり反射型液晶装置として構成されることとなる。
また、本発明は上述の各種の液晶装置に適用されるものに限らず、基板上に複数のデータ線を配置して各画素に画像信号を供給し、それにより画像表示させる各種表示デバイスに対して用いることができる。例えば、自発光型デバイスとしてエレクトロルミネッセンス(EL)、プラズマディスプレー装置(PDP)、フィールドエミッションデバイス(FED)などのデータ線に対しても適用可能である。更に、基板上に配置されたデータ線を介して各画素のメモリに画像信号を記憶し、その画像信号に応じて画素のマイクロミラーの角度を変更するミラーデバイス(例えばDMD)のデータ線に対しても適用可能である。