JP4256113B2 - 衛生薄葉紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、パルプを用いて抄造されたクレープを有する衛生薄葉紙の製造方法に関する。詳しくは、柔軟性とふんわり感のある、トイレットペーパー、ティシューペーパー、キッチンペーパー、ちり紙、フェイシャルティシュー、ペーパーナプキン、ペーパータオルなどの衛生薄葉紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、衛生薄葉紙の柔軟性を向上させる方法として、各種の叩解機によって、叩解を施すことなく原料パルプを繊維状にほぐしただけの状態、いわゆる未叩解状態あるいは、極く軽度に叩解を施すことによって、柔軟な衛生薄葉紙を得る方法がある。
【0003】
また、柔軟性を向上させる別の方法としては、繊維粗度が低く長いパルプを使用して衛生薄葉紙を抄造する方法がある。
【0004】
さらに、衛生薄葉紙の柔軟性を向上させる方法として、紙用柔軟剤を添加する方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、叩解の程度を減少させる方法だけでシートの柔軟性を向上させようとしても十分な効果が得られないといった問題があった。
【0006】
また、繊維粗度が低く長いパルプを使用して抄造する方法では、繊維の長いパルプを調達しなければならず、原料となるパルプの種類が制限されて調達コストが増加し、安価な衛生薄葉紙を提供できないといった問題があった。
【0007】
さらに、紙用柔軟剤を添加する方法では、柔軟剤のコストが高く、安価な衛生薄葉紙を提供できないといった問題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、柔軟性のある衛生薄葉紙を安価に提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1に記載の発明に係る衛生薄葉紙の製造方法は、
摺擦部材を回転部材として、衛生薄葉紙素材である原反の流れ方向に直角に回転軸を有する、外周径が30cmの4つのローラをそなえ、
これら4つのローラの外周面には、突起物である長さ3mmの針が、直径方向に多数そなえられて、密度が78本/cm2とされ、
原反が搬送ローラによって搬送され、
その搬送される原反の表面を前記4つのローラの針で擦ることによって、原反の表面に露出している繊維を部分的に切断して剥離し、かつ、部分的には切断することなく剥離して、前記衛生薄葉紙素材の表面の繊維を起毛させる、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の衛生薄葉紙の製造方法において、前記4つのローラのうちの2つは原反の下側の表面に当接するように配置され、残りの2つは原反の上側の表面に当接するように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の衛生薄葉紙の製造方法において、原反の同じ側に配置される2つのローラは、互いに逆向きに回転していることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態につき説明する。
図1には、この発明により製造した衛生薄葉紙の一例としてのトイレットペーパーの一部を示す。
【0018】
なお、この発明によるトイレットペーパー1は、周知のとおり、例えば、幅が113mmで、長さが60000mmであり、長さ224mmごとにミシン目を設けている。そして、直径38mmの筒状の紙管に巻き付けて、直径112mmほどのロール状とした、一枚使い(シングル)のものである。
【0019】
図1に示すように、この発明のパルプを用いて抄造された幅方向にクレープを有するトイレットペーパー1は、表面の繊維3が、物理的方法により部分的に切断して剥離し、かつ、部分的に切断されることなく剥離することによって起毛している。すなわち、トイレットペーパー1を構成しているパルプの繊維のなかで、トイレットペーパーの表面に露出している複数の繊維のうち、一部分の繊維は切断され剥離して起毛して、一部分は、切断されることなく剥離して起毛している。
【0020】
次に、トイレットペーパー1の製造工程の概略について説明する。図2に示すように、トイレットペーパー1の製造工程は、上工程から順に、抄紙工程11、ログ製造工程12、切断工程13、包装工程14、梱包工程15を有する。
【0021】
抄紙工程11は、抄紙機において、溶解したパルプを金網の上に一定の厚さに広げ、水分をしぼった後、乾燥させ、クレープを形成して、原反(衛生薄葉紙素材)2を抄造する。そして、これを巻き取り、原反ロール4とする。すなわち、原反2は、パルプを用いて抄造され、クレープを有する。
【0022】
ログ製造工程12は、抄紙工程11の抄紙機から搬出された上記原反ロール4から原反2を繰り出しながら、流れ方向に224mm間隔でミシン目を付与し、直径38mmの紙管に長さ60m毎に巻き取って、長筒状のログ5を製造する。
【0023】
切断工程13は、ログ工程12において製造された複数のログ5を軸心をコンベアの流れ方向に置いて、2本ずつ並べてコンベア17で搬送しながら、カッター18において、コンベア17の流れ方向に113mm間隔でログ5を2本同時に切断して、2つで1組のロール状のトイレットペーパー1(以下、トイレットロール6という。)とした後、1組ごとに間隔をあけて送り出す。その後、上下2段構造のコンベア19に乗り移り、トイレットロール6を搬送する。
【0024】
すなわち、衛生薄葉紙素材である原反2を加工することによって衛生薄葉紙であるトイレットペーパー1となるので、原反2とトイレットペーパー1とは実質的に同一の素材からなる。
【0025】
包装工程14は、上述の切断工程13から上下2段のコンベア19で搬送したトイレットロール6を、上下のコンベア19でそれぞれ1組ずつ、予め開口して待ち受けていた包装袋7に詰め込む。この動作を繰り返して合計12個のトイレットロール6を包装袋7に詰めた後、包装袋7の開口部を溶融接着して製品とし、ダンボール箱15に梱包して出荷する。
【0026】
ところで、本発明において、ログ製造工程12は、起毛処理工程16をそなえ、詳しくは、図3のようになっている。すなわち、起毛処理工程16は、原反2の流れ方向に直角に回転軸を有する、回転部材(摺擦部材)である外周径30cmの4つのローラ17,18,19,20をそなえる。これら4つのローラ17,18,19,20の長さは、原反2の幅以上の寸法となっている。ローラ17,18は、原反2の下側の表面S1に当接するように配置され、ローラ19,20は、原反2の上側の表面S2に当接するように配置される。
【0027】
そして、これら4つのローラ17,18,19,20の外周面(外面)17a,18a,19a,20aには、突起物である長さ3mmのステンレス製の針Nが直径方向に多数そなえられている。この例において、4つのローラ17,18,19,20の外周面における針Nの密度は、78本/cm2である。
【0028】
原反2は、搬送ローラ12a,12bによって矢印A方向に搬送されながら、この起毛処理工程16において、表面S1,S2を起毛する起毛処理が施される。つまり、ローラ17,20は反時計回りに回転し、ローラ18,19は時計回りに回転しながら、それぞれのローラにそなえられた針Nが、原反2の表面S1と表面S2を擦り、原反2の表面S1,S2に露出している繊維3を部分的に切断して剥離し、かつ、部分的には切断することなく剥離して繊維3を起毛させる。
【0029】
したがって、原反2の表面S1,S2に露出している複数の繊維3の一部は切断されて剥離し、かつ、残りの一部は切断されることなく剥離することによって、原反2の柔軟性が増すとともに、剥離した繊維3が起毛されることにより、ふんわり感が増す。
【0030】
このようにして製造されたトイレットペーパーの柔軟性とふんわり感を、柔軟性を示す「ソフトネス」とふんわり感を示す「なめらかさ」の測定を、起毛処理を施す前のトイレットペーパーと、起毛処理を施した後のトイレットペーパーを対象として行った。なお、ソフトネスについては、JIS L 1096 6.19.5 E法(ハンドルオメータ法)により測定し、なめらかさについては、JIS P 8147 水平方法により動摩擦係数を測定し、その結果をMMD(動摩擦係数の平均偏差)で示した。その結果を図4の実施例1に示す。
【0031】
図4の実施例1において明らかなように、起毛処理を施した後において、ソフトネスは、24.0%向上し、なめらかさは、1.8%向上した。
【0032】
また、図4の実施例2には、キッチンペーパーについての起毛処理を施す前と後の「ソフトネス」と「なめらかさ」を示した。実施例2においても、ソフトネスは、起毛処理を施した後において、21.4%向上し、なめらかさが48.9%向上した。
【0033】
なお、上述の例では、起毛処理工程16をログ製造工程12中に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、抄紙工程11とログ製造工程12の間に設けてもよい。
【0034】
また、上述の例では、1枚使いのトイレットペーパー1の原反2に対して表面S1,S2に起毛処理を施したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2枚使い(ダブル)のトイレットペーパーの原反に対して、起毛処理を施してもよい。すなわち、ログ製造工程において、別々の原反ロールから繰り出されたそれぞれの原反の片面あるいは両面に起毛処理を施し、2枚重ねのログを製造する。もちろん、この起毛処理の工程は、前段落で述べたように抄紙工程とログ製造工程の間に設けてもよい。
【0035】
さらに、この例においては、起毛処理工程16において、摺擦部材として回転部材であるローラ17,18,19,20を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、原反2を擦る面に針が設けられた固定部材である摺擦板をログ製造工程に固設して、走行するトイレットペーパーの原反の表面を擦ってもよい。
【0036】
また、原反2を擦る針Nはステンレス製に限定されず、他の金属でもよいし、または、硬質プラスチックなどであってもよい。さらに、原反2を擦る突起物は、針Nに限定されるものではなく、例えば、サンドペーパーの研磨剤を突起物としてもよい。
【0037】
この場合、サンドペーパーをローラの外周面に巻き付けて固定し、ローラを回転させて、原反の表面を擦ることによって、原反の表面の繊維を起毛させる。なお、サンドペーパーの代りに、エメリーペーパーを用いてもよい。同様に、摺擦板の原反を擦る面に、サンドぺーパーあるいはエメリーペーパーを付設してもよい。
【0038】
さらに、ローラの外周面に設けられた針Nの密度は、78本/cm2以上のとき好適であるが、これに限定されるものではない。
【0039】
また、この例においては、トイレットペーパー(衛生薄葉紙素材)1の表面の繊維3の一部を切断して剥離し、かつ、他の一部は切断することなく剥離して起毛したが、本発明はこれに限定されるものではなく、トイレットペーパー1の表面の繊維3の一部を切断し剥離して起毛するだけでもよいし、トイレットペーパー1の表面の繊維3の一部を切断することなく剥離して起毛するだけでもよい。
【0040】
本実施形態においては、トイレットペーパーを例として詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ティシューペーパー、キッチンペーパー、ちり紙、フェイシャルティシュー、ペーパーナプキン、ペーパータオルなど、柔軟性とふんわり感を必要とするあらゆる衛生薄葉紙に適用しうる。
【0041】
本実施形態の起毛処理は、衛生薄葉紙の柔軟性を向上させる他の方法と併用してもよく、この場合、衛生薄葉紙の柔軟性とふんわり感を一層増すことができる。
【0045】
【発明の効果】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、摺擦部材の外面にそなえる複数の突起物で、衛生薄葉紙素材の表面を擦ることによって、前記衛生薄葉紙素材の表面の繊維を起毛させるので、簡単な設備で、安価に衛生薄葉紙の柔軟性とふんわり感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明により製造した衛生薄葉紙の一例として示すトイレットペーパーの部分斜視図である。
【図2】その製造工程を示した図である。
【図3】その製造工程に設けられた起毛処理工程を示す側面図ある。
【図4】 この発明により製造した衛生薄葉紙の一例として示すトイレットペーパーおよびキッチンペーパーにおける起毛処理を施す前と、起毛処理を施した後の性能評価を示した図である。
【符号の説明】
1 トイレットペーパー(衛生薄葉紙)
2 原反(衛生薄葉紙素材)
3 繊維
4 原反ロール
17,18,19,20 回転部材であるローラ(摺擦部材)
17a,18a,19a,20a 外周面(外面)
N 針(突起物)
S1,S2 表面
Claims (3)
- 摺擦部材を回転部材として、衛生薄葉紙素材である原反の流れ方向に直角に回転軸を有する、外周径が30cmの4つのローラをそなえ、
これら4つのローラの外周面には、突起物である長さ3mmの針が、直径方向に多数そなえられて、密度が78本/cm2とされ、
原反が搬送ローラによって搬送され、
その搬送される原反の表面を前記4つのローラの針で擦ることによって、原反の表面に露出している繊維を部分的に切断して剥離し、かつ、部分的には切断することなく剥離して、前記衛生薄葉紙素材の表面の繊維を起毛させる、
ことを特徴とする、衛生薄葉紙の製造方法。 - 前記4つのローラのうちの2つは原反の下側の表面に当接するように配置され、残りの2つは原反の上側の表面に当接するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の衛生薄葉紙の製造方法。
- 原反の同じ側に配置される2つのローラは、互いに逆向きに回転していることを特徴とする、請求項2に記載の衛生薄葉紙の製造方法。
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