JP4255260B2 - 車両安定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、事故直前の走行異常状態に対処する車両安定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平10−329682号公報
【特許文献2】
特開平11−11130号公報
【特許文献3】
特開平11−34627号公報
【特許文献4】
特開平11−11272号公報
【特許文献5】
特開2001−55105号公報
【0003】
車両走行中に異常状態に陥り、事故の危険性に直面することがある。例えば、旋回走行時における横転、ドリフト、スピン等である。従来、これらの走行異常状態に陥る以前にその前兆挙動を検知して種々の車両運動制御を行い、正常な走行状態に復帰するための装置が多数提案されている。
【0004】
特許文献1は、旋回走行時に横転可能性を検知した場合にこれを回避すべく、車両の前輪に対して所定の制動力を付与するブレーキ制御手段を開示する。
特許文献2は、旋回時の極端なドリフト傾向やスピン傾向を回避すべく、車体と車輪の間に設けたアクチュエータ若しくはサスペンションの加速度若しくは伸縮力を制御することにより車輪の接地荷重を制御する装置を開示する。
特許文献3は、旋回時の回頭性と収束性を向上させるべく、特許文献2と同様の接地荷重の制御を行う装置を開示する。
特許文献4は、的確な横転予知を行う手段と、検出に応じてエアブレーキを作動させる装置を開示する。
特許文献5は、車両の横転等が発生した場合の乗員保護のためのシートベルト装置若しくはエアバッグ装置を開示する。
一般的に、旋回走行時の横転を回避する制御方法として、前輪の舵角を小さくし(すなわち戻し)たり、接地荷重を増大させたりすることにより、車両を横転させようとする横力を減少させる方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1〜4における車両の横転可能性等の検出に対処する車両運動の制御手段は、エア圧や油圧により作動されるブレーキ装置やアクチュエータ、サスペンション等を用いており、これらは、基本的には正常走行時と同一の機構若しくは近似する機構で作動する。言い換えるならば、これらの先行技術は、各種センサによる計測値が所定の正常範囲から逸脱しようとする時点若しくは僅かに逸脱した時点においてこれを正常範囲に復帰させるべく適用される制御技術であるといえる。
【0006】
従って、これらの先行技術は、車両走行が正常状態を大きく逸脱した段階に至り、まさに横転乃至衝突が目前に迫った時点において緊急避難的に発動される制御技術としては、適切ではない。斯かる非常事態においては、乗員の生命保護が最優先となるため、車両の走行機能を故意に破壊してでも即座に車両運動を減速乃至停止させたり、車両姿勢を修正したりすべき場合がある。また、特許文献1〜4に記載の技術は、正常走行時にも用いられるアクティブサスペンション等の油圧機構を用いているが、例えば、横転直前段階における車両姿勢維持のためには大きなエネルギーを必要とするため、油圧機構の容量が膨大となり、車両設計的にもコスト的にも不利である。加えて、非常時に発動される制御機構は、例えばエアバッグの如く瞬間的に起動するものでなければならない。
【0007】
また、特許文献5のように、横転等に至った場合の乗員保護装置は多数知られているが、これらは横転等そのものを防止するものではない。尚、横転時に車両外部に車両用エアバッグを瞬時に膨張させることも考えられるが、巨大なエアバッグが必要であり現実的でなく、二次災害も懸念される。
【0008】
このように、車両の走行異常状態の中でも、事故直前の非常事態において緊急避難的に発動され、事故を回避できる車両運動制御技術が要望されている。特に、我が国では、平均的に道路幅が狭い上、横転可能性が高いと云われる幅狭で車高の高い車両が多く、また高齢者ドライバーも増加していることからも、事故回避のための車両制御技術の必要性は高い。但し、非常事態の回避技術は確かに重要ではあるが、一般的には一生に一度あるかないかという頻度であり、正常走行時には全く不要のものである。従って、複雑な機構や大容量で嵩高な機構であっては、車両設計上もコスト上も好ましくない。
【0009】
以上の現状に鑑み、本発明は、横転、ドリフト、スピン等の車両走行異常状態、特に事故直前の非常事態において、瞬間的に発動して車両運動を制動したり、車両姿勢を修正したりできる車両安定装置を提供することを目的とする。「瞬間的に」とは、定量的には示さないがエアバッグの膨張速度、火薬爆発時のガス流速度等に相当する。さらに、斯かる車両安定装置であって、簡易な構造を具備しかつ低コストで実現できるものを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、本発明は以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり参考のために付する。
【0011】
(1)請求項1に係る車両安定装置は、車両走行中に、事故直前の走行異常状態を検知するセンサ手段と、前記センサ手段による前記事故直前の走行異常状態の検知に応答して車両を安定すべく、車体と1又は複数の車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段とを有し、前記瞬間制御手段は、前記車体(10)と前記車輪(20a)を接続するリーフサスペンション(70)と該車体との接続部を瞬間的に断絶し離間させるべく該リーフサスペンションと該車体との間に設けた瞬間伸長手段を具備し、前記瞬間伸長手段は、該リーフサスペンションの非固定端(72)と前記車体との間に設けた通常のサスペンションリンク(73)の両端間に別個に設けた折り畳まれたリンク構造(82,83)と、該折り畳まれたリンク構造を伸長させるべく該リンク構造内に設けたエアバッグ(84)とを備え、該エアバッグが膨張することにより該リンク構造は開かれて該通常のサスペンションリンクよりも長く直線状に伸長することにより該通常のサスペンションリンクは破壊されることを特徴とする。
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【0017】
(削除)
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【0022】
(削除)
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の関連形態及び本発明の実施例を示すことにより、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の関連形態は、車体と車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間する瞬間制御手段を有する点で本発明の実施形態と共通するので、この共通点の説明として記載する。
本発明の車両安定装置の関連形態は、車両走行中に、事故直前の走行異常状態を検知するセンサ手段と、前記センサ手段による前記事故直前の走行異常状態の検知に応答して車両を安定すべく、車体と1又は複数の車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段とを有し、前記瞬間制御手段は、前記車体と前記車輪を接続するサスペンションのダンパーシリンダの内圧を瞬間的に増圧することによりピストンを瞬間的に移動させる手段と、前記ピストンの移動を高速化すべく、一定以上の内圧負荷により前記ダンパーシリンダの壁を破壊して外部との連通孔を瞬間的に形成する手段とを具備する。
通常、車両は、車体10と車輪20a、20bを具備する(図1、図2参照)。車輪20a、20bは車軸(図示せず)に取り付けられ、車軸と車体10とは種々の形式のサスペンション(図示せず)により接続されている。サスペンションは、車体10と車軸すなわち車輪20a、20bを接続し、車体重量を支持すると共に、弾性的に伸縮することにより路面60の凹凸等による車体10の振動を緩和する。サスペンションはまた、車輪20a、20bによる路面60に対する適度な接地荷重を生じさせ、駆動力や制動力を伝える役割を果たしている。
【0024】
このサスペンションに代表されるように車両は、車体10と車輪20a、20bとの上下方向の間隔Dを調整する機構を有する。ここで「上下方向」とは、車両が水平な路面に接地しているときは鉛直方向となる。また「車体と車輪との間隔」とは、車体の一定の基準位置と車輪の一定の基準位置と間の距離をいい、相対的な間隔の変化を比較するために用いる量であるので、各々の基準位置は任意に設定してよい。
【0025】
車両には、走行異常状態を検知する各種センサ装置が装備されている。例えば、横転の場合は、ロール(転回)センサが転回の角速度、加速度等の異常を検知する。
【0026】
本発明による車両安定装置は、「瞬間的」に作動することが重要であり、特徴でもある。前述の特許文献1〜4に記載のいずれの車両運動制御装置も「瞬間的」に作動するものではないため、図1(A)の如くまさに事故直前の非常事態における回避手段とはなり得ない。この点が、先行技術と本発明との大きな相違点である。
【0027】
尚、本発明においては、横転以外の別の走行異常を検知するセンサ手段と、車体と適宜の車輪との間隔を離間させる瞬間制御手段とを連動させた別の適用例も可能である。いずれの適用例においても、当該走行異常を回避するために最適な1又は複数の車輪が選択され、当該車輪と車体との間隔を瞬間的に離間させる。
【0028】
また、本発明における「センサ手段」及び「センサ手段による走行異常状態の検知に応答して」については、広い概念で捉えるものとする。例えば、ロールセンサ、車速センサ、加速度センサ、ヨーレイトセンサ等のように、センサ装置が検知信号を発生し、その検知信号を車両の電子制御装置等の信号制御装置が受信して所定の判断処理を実行し、その判断結果に基づいて瞬間制御手段を起動するための信号を発生することにより瞬間制御手段が起動する構成とすることも一例である。しかしながら、本発明における「センサ手段」には、瞬間制御手段の起動を単に機械的に抑止している手段も含まれ、「センサ手段による走行異常状態の検知に応答して」という構成には、その機械的抑止手段に一定以上の衝撃や圧力等が加わった場合に機械的抑止手段が解除されて瞬間制御手段が起動するような構成も含まれるものとする。例えば、公知のエアバッグの起動機構に類似するものや、スプリングを圧縮状態に保持する一定強度の金具等である。
【0029】
走行異常状態が旋回中の横転可能状態である場合、瞬間制御手段により車体から離間させられる車輪は、旋回外側車輪(前輪及び後輪のいずれか又は双方)とすることが好適である。「横転可能状態」とは、事故直前の状態をいい、例えば、ロールセンサの検出値でいえば、正常範囲の境界値近傍ではなく、正常範囲から大きく逸脱した状態である。
【0030】
図1は、本発明の関連形態による車両安定装置の動作状況を示すために走行中の車両を上から観た模式図である。本発明の関連形態は、図1(A)に示す通り、車両が旋回中に前輪にかかる横力F1が小さすぎるためにアンダーステア状態となった場合に適用される。矢印S2で示す通り、車両はコーナーを曲がりきれずにドリフトしようとしている。この場合、走行異常状態が旋回中のアンダーステア状態であり、瞬間制御手段により瞬間的に離間させられる車輪は前輪20a、20bのいずれか又は双方とする。アンダーステア状態を検知する走行異常センサとしては、例えば、車速センサ、横加速度センサ、ヨーレイトセンサ等があり、車両進行方向に対する車両の前後方向軸の傾きである車両スリップ角を計測する方法等がある。そして、前輪20a、20bが車体10から瞬間的に離間させられることにより、前輪が路面60に及ぼす接地荷重が増大して横力F1が大きくなり、容易に旋回できるようになる。これによりドリフトを回避できる。
【0031】
また、図1(B)に示す通り、車両が旋回中に前輪20a、20bに係る横力F1が大きすぎるためにオーバーステア状態となった場合にも適用される。矢印S3で示す通り、車両はコーナーで曲がりすぎてスピンしようとしている。この場合、走行異常状態が旋回中のオーバーステア状態であり、瞬間制御手段により瞬間的に離間させられる車輪は後輪20c、20dのいずれか又は双方とする。オーバーステア状態を検知する走行異常センサとしては、アンダーステア状態の検知と同様に例えば、車速センサ、横加速度センサ、ヨーレイトセンサ等があり、車両進行方向に対する車両の前後方向軸線の傾きである車両スリップ角を計測する方法等がある。そして、後輪20c、20dが車体から瞬間的に離間させられることにより、後輪が路面60に及ぼす接地荷重が増大して前輪にかかる横力F1が相対的に小さくなり、過剰な旋回運動が制止される。これによりスピンを回避できる。
【0032】
図2は、本発明の関連形態の別の動作状況を示す模式図である。この場合、走行異常状態が車両の過剰傾斜状態である。例えば、図2(A)に示すように路面60の異常な起伏部62に左右いずれかの車輪20bが乗り上げた状態である。極端な場合、車両は矢印S4で示すように横転しそうになる。この走行異常状態は、例えば前述の旋回中の横転可能状態と同様にロールセンサで検知することが可能である。図2(A)では、本発明の関連形態の車両安定装置の起動前における車体10と車輪20aとの間隔をDで表している。
【0033】
図2(B)は、図2(A)の状態において本発明による車両安定装置が起動した後の状態を示す。本発明による車両安定装置は、センサ手段が車両の過剰傾斜状態を検知したことに応答して即座に起動し、車体10と下側車輪20aとの間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段を有する。「下側車輪」とは、起伏部62に乗り上げていない方の車輪すなわち低い位置にある方の車輪を意味し、前輪若しくは後輪のみの場合も双方の場合もあり得る。図2(B)では、瞬間的に離間させられた後の車体10と車輪20aとの間隔をD+ΔDで示している。この結果、車輪20a側の車体10が起き上がることになり、車体10の過剰な傾斜が解消され、横転が回避できる。尚、図2では、路面上の起伏部62に乗り上げた例を示したが、別の例として、路面上の陥没部にいずれかの車輪が落ち込んで車両が過剰に傾斜した場合も、本発明を同様に適用することにより横転を避けることができる。
【0034】
図3は、本発明の関連形態を概略的かつ模式的に示す構成図である。本発明の関連形態における瞬間制御手段の具体例を示している。図3(A)は、車両の車体10の一部と、車輪20aと、これらを接続するサスペンションを含む断面構造を概略的に示す。図示のサスペンションは、車輪20aの車軸に取り付けられた下サスペンションアーム36と車体10の下端との間に設置されており、ダンパー30を具備する。ダンパー30の周囲に配置されるスプリングは図示を省略する。ダンパー30は、オイル若しくはガスの媒体で充填されたダンパーシリンダ31とピストン32とを具備する。ピストン32の基部は車体10の下端に取り付けられ、ピストンヘッド32aは、ダンパーシリンダ31内の空間を上室33と下室34に区分する隔壁を構成すると共に、上下動することにより車体10と車輪20aとの間隔Dを調整する。ピストンヘッド32aにはオリフィス35が設けられている。サスペンションの通常動作においては、オリフィス35を通して媒体が上質33と下室34の間を移動しつつピストンヘッド32aすなわちピストン32が上下動を行う。前述の先行技術を含む従来の車両運動制御手段のうち、斯かるダンパーにおいてピストン32を瞬間的に上下動させる制御を行うものは未だ提示されていない。
【0035】
図3(B)は、本発明の関連形態による車両安定装置が起動した後の状態を示す。矢印S5で示すように、ピストン32が瞬間的に上方移動したことにより、車体10と車輪20aとの間隔はD+ΔDに拡張している。この瞬間的な上方移動は、ダンパーシリンダ31の下室34内の圧力を瞬間的若しくは爆発的に増圧してピストンヘッド32aを一気に押し上げることにより実現される。この場合、ダンパーシリンダ31の上室33から下室34へオリフィス35を通る媒体移動は生じず、上室33内の媒体は瞬時に圧縮される。この結果、例えば、図3(A)において路面から離れていた車輪20aが、路面60に接して接地荷重F3を及ぼすことができる。ダンパー30の発生力は、ピストン32の移動速度に比例するので、このように瞬間的にピストン32が移動する場合には、極めて大きな荷重が得られる。ピストン32を瞬間的に上方移動させる瞬間制御手段としては、公知の種々の技術を利用できる。例えば、以下の図4〜図6を参照して説明する構成により実現される。
【0036】
図4は、瞬間制御手段における瞬間的な増圧機構の一例を模式的に示す構成図である。図3を参照して示した本発明の関連形態において、ダンパーシリンダ31の下室34内の圧力を瞬間的に増圧するための具体的手段の一例を含む。本例では、ダンパーシリンダ31の外部に下室34と連通する増圧室42を設置する。尚、瞬間制御手段が起動するまでは、下室34と増圧室42の連通路43は、閉止栓若しくは閉止弁44等により閉じておくことが好適である。ダンパー30の正常時の動作に影響を与えないためである。増圧室42には、その室内で爆発を起こす爆発手段41を設置する。爆発手段41は、例えば火薬を用い適宜の起爆装置を具備する。爆発手段41の起爆装置は、車両の走行異常状態を検知するセンサ装置52による検知信号を受信した起動制御装置50からの起動信号を受信することにより発動し、火薬を爆発させる。起動制御装置50は、車両の電子制御装置の一部として組み込んでもよい。増圧室42内で爆発が起きると、閉止栓若しくは閉止弁44は瞬時に開き(起動制御装置50からの起動信号により開くようにしてもよい)、矢印S6で示すように爆発で発生したガス流が下室34に一気に流入して下室34内の圧力が急激に高まる。これにより、ピストン32は、矢印S7で示すように上方へ瞬間的に移動することができる。
【0037】
図5は、瞬間制御手段における瞬間的な増圧機構の別の例を模式的に示す構成図である。図3を参照して示した本発明の関連形態において、ダンパーシリンダ31の下室34内の圧力を瞬間的に増圧するための具体的手段の、別の例を含む。本例では、ダンパーシリンダの下室34の底部に上下動可能な可動壁37を設置し、この可動壁37により仕切られた増圧室38を設ける。増圧室38には、その室内で爆発を起こす爆発手段41を設置する。爆発手段41は、上記図4に示したものと同様であり、センサ装置52による検知信号を受信した起動制御装置50からの起動信号により爆発する。増圧室38内で爆発が起きると、可動壁37が矢印S8で示すように瞬時に上方移動することにより下室34の媒体が圧縮され、圧力が急激に高まる。これにより、ピストン32は、矢印S9で示すように上方へ瞬間的に移動することができる。
【0038】
図6は、瞬間制御手段における瞬間的な増圧機構のさらに別の例を模式的に示す構成図である。図3を参照して示した請求項1に係る発明において、ダンパーシリンダ31の下室34内の圧力を瞬間的に増圧するための具体的手段の、さらに別の例を含む。本例では、ダンパーシリンダ31の外部に下室34と連通する増圧室42を設置する。増圧室42は、可動壁45により第1室46と第2室47に2分されている。可動壁45が動くことにより第1室46と第2室47の容積は相対的に増減することになる。第1室46は、下室34と連通路43を介して連通している。第2室47には、その室内で爆発を起こす爆発手段41を設置する。爆発手段41は、上記図4に示したものと同様であり、センサ装置52による検知信号を受信した起動制御装置50からの起動信号により爆発する。第2室47内で爆発が起きると、可動壁45が矢印S10で示すように瞬時に第1室46を圧縮するように移動することにより連通路43を介して下室34の圧力も急激に高まる。これにより、ピストン32は、矢印S11で示すように上方へ瞬間的に移動することができる。本例では、可動壁45の断面積をピストンヘッド32aの断面積より大きくすることにより、下室34の増圧効果をさらに高めることができる。
【0039】
図7は、本発明の関連形態の瞬間制御手段の好適例を模式的に示す構成図である。図3〜図6に示したように、サスペンションのダンパーピストンを瞬間的に上方移動させることにより車体と車輪の間隔を離間させる構成においては、ピストン32の瞬間的な上方移動が起きたときに、矢印S12で示すようにダンパーシリンダ31の上室33の天井壁31aが脱落するようにする。例えば、一定以上の内圧負荷により天井壁31aが抜けるようにダンパーシリンダ31を設計する。この天井壁31aの脱落により、ピストン32の上方移動が促進され、より高速な移動が実現される。前述のように、本発明の関連形態は事故直前の非常事態を前提とするものであるから、たとえダンパー30を破壊してでも事故回避及び乗員生命保護を優先する構成としてよい。尚、上室33の天井壁31aに限らず、上室33に外部との連通孔が瞬間的に形成されれば、同じ効果が得られる。
【0040】
図8は、瞬間制御手段の参考技術を示している。図8(A)は、車両の車体10の一部と、車輪20aと、これらを接続するサスペンションを含む断面構造を示す。図示のサスペンションは、車輪20aの車軸に取り付けられた下サスペンションアーム36と車体10の下端との間に設置されている。サスペンションは、ダンパー30と図示しないスプリングとを具備する。ここでは、車両安定装置の瞬間制御手段として、サスペンションと車体10が通常接続される部分において、これらの間に瞬間的に上下方向に伸長する瞬間伸長手段48を設置する。図8(A)では、通常走行状態における車体10と車輪20aの間隔をDで示している。通常走行状態では、瞬間伸長手段48は収縮状態にあり、間隔Dはサスペンションの機能により調整されている。
【0041】
図8(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。矢印S13で示すように、瞬間伸長手段48が瞬間的に伸長したことにより、車体10と車輪20aとの間隔はD+ΔDに拡張している。この結果、例えば、図8(A)において路面から離れていた車輪20aが、路面60に接して接地荷重F3を及ぼすことができる。この場合、サスペンション自体には、通常走行状態と何ら変化がない。従って、図示の形式のサスペンションに限らず、任意の形式のサスペンションについても、その車体との接続部に瞬間伸長手段48を設置する。
【0042】
図8に示した瞬間伸長手段48としてはエアバッグを用いる。エアバッグは、従来、衝突時の乗員保護のために車両室内で瞬間的に膨張する構成が知られている。同様の膨張機構を本発明にも適用できる。
【0043】
図9は、別の参考技術を概略的かつ模式的に示す構成図である。車体とサスペンションとの接続部に瞬間伸長手段48を設置することにより、サスペンションの形式によらず実施できる。図9は、トラック等の大型車両に用いられるリーフサスペンション70に適用した例を示している。図9(A)に示すように、リーフサスペンション70の非固定端72に接続されたサスペンションリンク73の他端は、従来は車体10の下端に接続されるが、ここでは車体10との間に瞬間伸長手段84を介在させ設置している。車体10と車輪20aとの上下方向間隔は、車体10の下端と車輪20aの中心との間隔Dで示している。
【0044】
図9(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。矢印S14で示すように、瞬間伸長手段48が瞬間的に伸長したことにより、車体10と車輪20aとの間隔はD+ΔDに拡張している。瞬間伸長手段48の好適例としては、エアバッグがある。
【0045】
尚、図8及び図9に示した瞬間伸長手段48の例としては、エアバッグの他に、スプリングでも可能である。例えば、正常走行状態ではスプリングが金具等により圧縮状態に保持されており、一定以上の衝撃若しくは圧力が加わったときに金具等が破壊されて圧縮状態が解除され、スプリングが瞬間的に伸長する機構がある。
【0046】
図10は、本発明の実施形態を模式的に示す構成図である。リーフサスペンションにおける瞬間伸長手段の実施形態である。
本発明の車体安定装置の実施形態は、車両走行中に、事故直前の走行異常状態を検知するセンサ手段と、前記センサ手段による前記事故直前の走行異常状態の検知に応答して車両を安定すべく、車体と1又は複数の車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段とを有し、前記瞬間制御手段は、前記車体と前記車輪を接続するリーフサスペンションと該車体との接続部を瞬間的に断絶し離間させるべく該リーフサスペンションと該車体との間に設けた瞬間伸長手段を具備し、前記瞬間伸長手段は、該リーフサスペンションの非固定端と前記車体との間に設けた通常のサスペンションリンクの両端間に別個に設けた折り畳まれたリンク構造と、該折り畳まれたリンク構造を伸長させるべく該リンク構造内に設けたエアバッグとを備え、該エアバッグが膨張することにより該リンク構造は開かれて該通常のサスペンションリンクよりも長く直線状に伸長することにより該通常のサスペンションリンクは破壊される。
図10(A)に示すように、リーフサスペンション70の非固定端72と車体10との間に、通常のサスペンションリンク73に加えて、折り畳まれたリンク構造82、83が設けられる。そして折り畳まれたリンク構造82、83を伸長させるための瞬間伸長手段84が設置される。車体10と車輪20aとの上下方向間隔は、車体10の下端と車輪20aの中心との間隔Dで示している。
【0047】
図10(B)は、本発明による車両安定装置が起動した後の状態を示す。矢印S15で示すように、瞬間伸長手段84が瞬間的に伸長したことにより、折り畳まれていたリンク82、83が開かれて直線状に伸び、車体10と車輪20aとの間隔はD+ΔDに拡張している。瞬間伸長手段84の好適例としては、エアバッグがある。尚、リンク82、83の伸長により、通常のサスペンションリンク73は外れて(破壊されて)いる。前述のように、サスペンション機構の維持よりも事故回避及び乗員保護を優先させたものである。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の横転等が差し迫った事故直前の状態において、事故を回避すべく車両を安定させる車両安定装置が実現された。具体的には、各種センサ手段により走行異常状態が検知されたことに応答して、車体と適宜の車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段を具備する装置である。車体と適宜の車輪との間の上下方向間隔が離間することにより、路面から浮いた車輪が路面に到達することができ、あるいは、路面に対して有効な接地荷重を及ぼすことができ、あるいは、傾斜した車体姿勢を起こすことができる。
【0049】
本発明による車両安定装置は、瞬間的にすなわち爆発的に発動されることが特徴であり、これにより事故目前の非常事態を回避することができる。
【0050】
本発明による車両安定装置は、正常走行の範囲内における車両運動制御とは異なり、緊急避難的に機能すれば足りるため、可逆的機構とする必要がない。従って、可逆的機構とする場合に一般的に必要とされる複雑なメカニズム、制御システム及び膨大なエネルギー等は不要である。これにより、単純な構造とすることができ、低コストで実現される。
【0051】
今後、増大が予測される高齢者向けの軽車両は、特に横転等の危険度が高い傾向があるため、本発明は極めて有用であり、社会的意義を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の関連形態による車両安定装置の動作状況を示すために走行中の車両を上から観た模式図である。
【図2】本発明の関連形態の動作状況を示す模式図である。(A)は、路面の起伏部に乗り上げ車両が横転しそうになった状態を示し、(B)は、(A)の状態において車両安定装置が起動した後の状態を示す。
【図3】本発明の関連形態を概略的かつ模式的に示す構成図である。図4(A)は、車体の一部と、車輪と、これらを接続するサスペンションを含む断面構造を示し、(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。
【図4】本発明の関連形態の瞬間制御手段を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の関連形態の瞬間制御手段を模式的に示す構成図である。
【図6】本発明の関連形態の瞬間制御手段を模式的に示す構成図である。
【図7】本発明の関連形態の瞬間制御手段を模式的に示す構成図である。
【図8】本発明の関連形態の参考技術を概略的かつ模式的に示す構成図である。(A)は、車体と、車輪と、これらを接続するサスペンションを含む断面構造を示し、(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。
【図9】本発明の参考技術を概略的かつ模式的に示す構成図である。(A)は、リーフサスペンションへの適用例を示し、(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。
【図10】本発明を概略的かつ模式的に示す構成図である。(A)は、リーフサスペンションへの適用例を示し、(B)は、車両安定装置が起動した後の状態を示す。
Claims (1)
- 車両走行中に、事故直前の走行異常状態を検知するセンサ手段と、
前記センサ手段による前記事故直前の走行異常状態の検知に応答して車両を安定すべく、車体と1又は複数の車輪との間の上下方向間隔を瞬間的に離間させる瞬間制御手段とを有し、
前記瞬間制御手段は、前記車体(10)と前記車輪(20a)を接続するリーフサスペンション (70) と該車体との接続部を瞬間的に断絶し離間させるべく該リーフサスペンションと該車体との間に設けた瞬間伸長手段を具備し、
前記瞬間伸長手段は、該リーフサスペンションの非固定端 (72) と前記車体との間に設けた通常のサスペンションリンク (73) の両端間に別個に設けた折り畳まれたリンク構造 (82,83) と、該折り畳まれたリンク構造を伸長させるべく該リンク構造内に設けたエアバッグ (84) とを備え、該エアバッグが膨張することにより該リンク構造は開かれて該通常のサスペンションリンクよりも長く直線状に伸長することにより該通常のサスペンションリンクは破壊されることを特徴とする車両安定装置。
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