JP4255238B2 - インク及びそれを用いた記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の水性インクはピエゾ方式、サーマル方式などのオンディマンド法や荷電制御方式などの連続噴射法などのインクジェット記録用に適した水性インク、特に所謂普通紙に対するカラーインクとして優れた特性を示す水性インク組成物であって、水性筆記用具、記録計、ペンプロッター用水性インクとしても用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は本体が小型で価格が安く、低ランニングコスト、低騒音といった利点から急速に普及しており、電子写真用転写紙、印刷用紙、タイプライター用紙、ワイヤードットプリンクー用紙、ワードプロセッサー用紙、レター用紙、レポート用紙等種々のノンコートな普通紙に印字可能なインクジェットプリンタも市場に投入されている。これらインクジェットプリンターにおいて、より高品位な画像が得られるようにインクの吸収性を改善した提案が種々されている。
しかしながら、画像の色再現性、耐水性、耐光性、画像の乾燥性と画像惨みと吐出の信頼性のすべてを満足することは難しい。特にカラープリンターの場合、イエロー、マゼンタ、シアンの単色印字部で画質劣化がなくとも、レッド、グリーン、ブルーの2色重ね部分で画質の劣化が発生しやすい。特に定着装置を用いないで乾燥を行なう場合、特開昭55−29546号公報に記載されるように浸透性を高めることにより乾燥性を向上しているが、界面活性剤の使用量が多いため、紙の種類により著しく惨んでしまう。
【0003】
また、特公昭60−23793号公報には界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸が乾燥性を向上させ、画像劣化が少ない旨の記載がされているが、紙による画素径が著しく異なり、画像濃度の低下も著しいといった問題や、アルカリ側では活性剤が分解し、保存時に活性効果がなくなるといった問題がある。また、特公昭58−6752号公報にはアセチレン結合を有するエチレンオキサイド付加体である界面活性剤を用いることにより浸透性を向上させ、惨みの少ない速乾性インクが記載されている。しかしながら、染料によって、例えばDBK168等の直接性染料を用いたインクでは、染料と疎水性相互作用を生じるため乾燥速度が向上しないといった問題がある。
【0004】
また、特開昭56−57862号公報等には強塩基性物質を添加するインクが記載されているが、ロジンサイズされた酸性紙では効果があるものの、アルキルケテンダイマーやアルケニルスルホコハク酸をサイズ剤とした紙には効果がない。また、酸性紙でも2色重ね部分では効果がない。また、特開平1−203483号公報には多価アルコール誘導体及びペクチンを含有することを特徴とした記録液が記載されているが、これは増粘剤としてぺクチンを添加し、滲みを防止するものであるが、ペクチンは水酸基を親水基とする非イオン性であるため印字休止後の吐出安定性に欠けるという問題があった。また、特開平2−36276号公報には周波数応答性及び定着性を改善する成分として、2−プロパノールが記載されているが、毒性及び燃焼性等安全性に問題がある。
【0005】
浸透性を高める目的で上記のような界面活性剤を使用した場合、インクの起泡性が大きくなるという問題点があることから、界面活性剤以外の材料で浸透性を高くする方法として、特開昭62−169875号公報ではC4〜C6のジオール誘導体が、特開平3−2286号公報では2−メチルペンタン−2,4−ジオールが、特表平6−508392号公報では、25℃の水への溶解度が4.5重量%で炭素数6〜8のジオール誘導体が、特開平9−268266号公報では、1、3−プロパンジオール誘導体等を使用したインクが記載されている。しかし、これらジオール誘導体は、水への溶解度が大きいため、浸透性の一つの目安であるインクの表面張力を低下させることができず、インクの乾燥性向上のための浸透性を確保することができていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高速印字が可能なインクジェットプリンターにおいて特別な乾燥装置を使用しなくても実用上充分な乾燥性を有し、画像の裏抜けあるいは滲み等の画像劣化のないインク及び記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の(1)「水に分散する着色剤、水、界面活性剤、インク全重量に対して5〜50重量%の湿潤剤を含有するとともに、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールを含有する水性インクであって、前記着色剤が、カルボキシル基が結合している分散剤により水中に分散されている顔料または表面にカルボキシル基が結合して改質され水中に分散されている顔料であることを特徴とする水性インク」、(2)「2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールをインク全重量に対して0.1〜3重量%含有することを特徴とする前記第(1)項に記載の水性インク」、(3)「前記界面活性剤をインク全重量に対して0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の水性インク」、(4)「前記湿潤剤がジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびグリセリンから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の水性インク」、(5)「ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の水性インク」、(6)「前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウムを含むことを特徴とする前記第(3)項に記載の水性インク」、(7)「2−ピロリドンを含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の水性インク」、(8)「前記着色剤が、平均粒径50nm〜200nm範囲の顔料であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の水性インク」、(9)「前記顔料がカーボンブラックであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の水性インク」によって解決される。
【0008】
また、上記課題は、本発明の(10)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の水性インクを微細な吐出口より液滴として吐出、飛翔させ記録媒体に画像を形成することを特徴とする記録方法」によって解決される。
【0009】
すなわち、本発明者らは乾燥性を向上させるため、紙への浸透性を高める材料としていろいろなジオール誘導体を検討したところ、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが、インクへ微量添加することにより表面張力を35mJ/m2以下に低下させ、インクと紙表面との濡れ性を向上し、紙ヘの浸透速度を高めることが可能であるだけでなく、従来知られるような界面活性剤を中心として浸透性を高めた場合にくらべ、画像劣化がきわめて少ないことを見い出し、本発明に至った。
【0010】
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールは、水に対する溶解度は1重量%以下であるが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール誘導体を併用することにより、インク中へは3重量%まで溶解させることができる。逆に水に対する溶解度が小さいため、微量添加でも表面張力を低下させることができる。
下記の表は、特表平6−508392号公報に記載の具体例と、本発明の2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール各1gと蒸留水99gとを混合し、0.2μmのフィルターでろ過し、Kruss製表面張力計K101STで、そのろ液の表面張力を測定したものである(白金プレート法)。
【0011】
【表1】
( )内は、ジオール5gと蒸留水95gを混合したときの測定値
【0012】
上記表に示されるように、本発明の2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールは、従来公知のジオール誘導体に比較して、インクに使用した場合に紙への浸透効果を発揮できる表面張力値まで下げることができ、添加量も少ないので、粘度等インク物性への影響が少なくてすむ。
【0013】
前記2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールはインク全量量に対して好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1重量%〜2.5重量%である。0.1重量%未満では浸透性を高める効果が少なく、3重量%より多く添加するとインク中で安定に溶解せず、インクの保存安定性、インクジェットでの噴射安定性に問題が発生する。
【0014】
また、インクに熱エネルギーを付与して微細孔から液満としてインクを吐出させて記録を行なういわゆるバブルやサーマル方式等の記録方法において、吐出安定性を得るために従来では2−プロパノールを添加する方法があるが、代わりに2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジオールを添加することによって、熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性及び周波数安定性が得られ、2−プロパノールの使用に伴う安全性に関する問題も改善される。
【0015】
インクの乾燥による目詰まりの防止、及び溶解安定性を向上する目的で湿潤剤を5重量%〜50重量%含有することにより、本発明のインクはインクジェットヘッドの吐出口で、インク中の水分が蒸発した場合でも目詰まりを起しにくく正常な印字を行なうことができることを見出した。また、仮に目詰まりを起しても簡単なクリーニング操作で正常な印字状態に回復できることを見出した。
【0016】
また、これら湿潤剤、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールと界面活性剤を組み合わせて使用することにより、相乗効果を発揮し、従来の浸透性を高めた浸透タイプのインクでの課題であった画像濃度の低下、裏抜けを防止することを見出した。また、それぞれを単独で含有したインクに比べ少量の添加で高い浸透性を得ることができるため、従来の多価アルコールのエーテル類などを多量に加えて浸透性を上げたインクに比べ、溶剤臭が少ないなどの利点もある。
【0017】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥による目詰まりを防止するために、また、本発明のインクの溶解安定性を向上するため等の目的で湿潤剤として下記の水溶性有機溶媒を使用することができる。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ぺンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ぺトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノべンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、t−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは、複数混合して用いられる。
【0018】
インク組成物中でのこれら湿潤剤の添加量は上記のように5重量%〜50重量%であり、好ましくは10重量%〜40重量%である。5重量%未満では、インクの保存安定性やインクジェットでの噴射安定性が劣り、50重量%より多く添加すると粘度の上昇によるインクジェットでの噴射安定性が劣るといった問題がある。
【0019】
前記湿潤剤の中でも、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び/またはグリセリンを含むことがインクの乾燥による目詰まりすなわち水分蒸発による噴射特性不良の防止、及び本発明のインクの溶解安定性を向上する上で優れた効果が得られる。また、2−ピロリドンをインクに添加すると、インクの紙ヘの浸透性は損なわせずに、画像濃度の向上とともに裏抜けを防止する上で優れた効果が得られることを見出した。これは、2−ピロリドンを含有することで紙表面に対してインクが濡れ拡がりやすくなり、相対的に紙の厚み方向ヘの浸透が抑えられるため、紙表面近傍に着色剤をとどまりやすくなるためであると推測される。2−ピロリドンの添加量は、好ましくは0.1重量%〜10重量%、更に好ましくは0.5重量%〜5重量%である。
【0020】
本発明で使用する界面活性剤としては、例としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド添加物等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0021】
インク組成物中でのこれら界面活性剤の添加量は0.01重量%〜5.0重量%であり、好ましくは0.5重量%〜3重量%である。0.01重量%未満では添加した効果はなく、5.0重量%より多い添加では記録媒体ヘの浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けの発生といった問題がある。特にアニオン性界面活性剤の界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウムが更に好ましい。これを用いると画像の埋まりが良くなり、画像濃度を高くする上で優れた効果が得られる。
【0022】
また、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール以外に表面張力を調整する等の目的で添加される浸透剤としては、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類が挙げられるが、特に好ましいのはジエチレングリコールモノブチルエーテル又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0023】
本発明に用いられる着色剤としては、顔料及び/又は染料のいずれでも良い。顔料は、特にその種類を限定することなく、無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。インク組成物中の着色剤としての顔料の添加量は、0.5〜25重量%程度が好ましく、より好ましくは2〜15重量%程度である。
【0024】
本発明において好ましく用いられる顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、150、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2〔パーマネントレッド 2B(Ca)〕、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
【0025】
その他顔料(例えばカーボン)の表面を樹脂等で処理し、水中に分散可能としたグラフト顔料や、顔料(例えばカーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした加工顔料等が使用できる。また、顔料をマイクロカプセルに包含させ、該顔料を水中に分散可能なのものとしたものであっても良い。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、前記インク中の顔料は平均粒径が50nm〜200nmの範囲であることが好ましい。ここでいう平均粒径とは、体積累積パーセント50%の値をさす。体積累積パーセント50%の値を測定するには、例えば、インク中のブラウン運動を行なっている粒子にレーザー光を照射し、粒子から戻ってくる光(後方散乱光)の振動数(光の周波数)の変化量から粒子径を求める動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)といわれる方法を用いることができる。着色剤を顔料とすると耐水性や耐光性が良好になり、更に記録媒体の層をインクが抜け、裏面までしみ出してまう裏抜け(以下単に裏抜けと記す)を防止できる。
【0027】
顔料はインク中に溶解せず分散しているために、インクジェットで印字された際、記録媒体中でインク中の水や湿潤剤より記録媒体の中に入りにくく、乾燥性はやや遅くなるが裏抜けを防止することができる。平均粒径が50nm以下であると裏抜けを防止する効果が少なく、200nm以上ではインクの分散安定性が悪く、保存時に凝集等で粒径が大きくなり吐出安定性が劣る。
【0028】
顔料は分散剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインクに添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、従来公知の顔料分散液を調整するのに用いられる公知の分散液を使用することができる。
分散剤として例えば以下のものが挙げられる。ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸−アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は重量平均分子量が3,000〜50,000であるのが好ましく、より好ましくは5,000〜30,000、さらに好ましくは7,000〜15,000である。
【0029】
分散剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を失わせない範囲で適宜添加されて良い。分散剤としては、顔料に対して1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、より好ましくは1:0.125〜1:3の範囲である。
【0030】
分散剤として、好ましくは上記インク中の分散剤はカルボキシル基が結合していることが好ましい。分散剤にカルボキシル基が結合していると、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。更に、上記の裏抜けを防止する効果が得られる。特に、カルボキシル基が結合している分散剤で分散した顔料と、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールとを併用した場合においては、普通紙などの比較的サイズ度の高い記録媒体に印字した場合においても、充分な乾燥速度が得られ、且つ、裏抜けが少ないという効果が得られる。これは、カルボン酸の解離定数が他の酸基に比較して小さいため、顔料が記録媒体に付着した後、インクのpH価の低下や、記録媒体表面近傍に存在するカルシウムなどの多価金属イオンとの相互作用などにより、分散剤自体の溶解度が低下し、分散剤自体や顔料が凝集するためと推定される。
【0031】
また、別の形態としては、インク中の顔料が表面改質されカルボキシル基が直接顔料に結合され水中に分散されている形態も好ましい。これも顔料が表面改質されカルボキシル基が結合しているために、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録媒体の耐水性がより向上する。またこの形態のインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドのノズル付近のインクの水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行なえるようになる。
これらに用いられるブラックインク用の顔料はカーボンブラックであることが好ましい。ブラックインクとしてカーボンブラックは色調に優れるとともに、耐水性、耐光性、分散安定性に優れ、且つ安価である。
【0032】
着色剤として用いられる水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料が用いられる。これら染料は複数の種類を混合して用いても良いし、或いは必要に応じて顔料等の他の色素と混合して用いても良い。
【0033】
これら染料を具体的に挙げれば、酸性染料及び食用染料としては以下のものが挙げられる。
C.I.アシッド・イエロー17,23,42,44,79,142、
C.I.アシッド・レッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289、
C.I.アシッド・ブルー9,29,45,92,249、
C.I.アシッド・ブラック1,2,7,24,26,94、
C.I.フード・イエロー2,3,4、
C.I.フード・レッド7,9,14、
C.I.フード・ブラック1,2。
直接性染料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ダイレクト・イエロー1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144、
C.I.ダイレクト・レッド1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227、
C.I.ダイレクト・オレンジ26,29,62,102、
C.I.ダイレクト・ブルー1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202、
C.I.ダイレクト・ブラック19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171。
塩基性染料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.べーシック・イエロー1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,465,67,70,73,77,87,91、
C.I.べーシック・レッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112、
C.I.べーシック・ブルー1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155、
C.I.べーシック・ブラック2,8。
反応性染料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.リアクティブ・ブラック3,4,7,11,12.17、
C.I.リアクテイブ・イエロー1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67、
C.I.リアクテイブ・レッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97、
C.I.リアクティブ・ブルー1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
【0034】
特に酸性染料及び直接性染料を好ましく用いることができ、本発明インクの溶解安定性の向上や、色調、耐水性、耐光性で優れた効果が得られる。インク組成物中の着色剤としての染料の添加量は、0.5〜25重量%程度が好ましく、より好ましくは2〜15重量%程度である。
【0035】
本発明のインクには上記着色剤、湿潤剤、界面活性剤の他に従来知られている添加剤を加えることができる。例えば、本発明の水性インクには樹脂エマルジョンが添加されていても良い。本発明に用いることのできる樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が次の様な樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。これらの樹脂エマルジョンは、樹脂粒子を、場合によって界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。
【0036】
市販の樹脂エマルジョンとしては、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
本発明に使用するインクは、樹脂エマルジョンを、その樹脂成分がインクの0.1〜40重量%となるように含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。樹脂エマルジョンは、増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録材上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦性をも向上させる効果を有する。
【0038】
インク組成物は糖を含有していても良い。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。前記の糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖{例えば、糖アルコール〔一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(こでn=2〜5の整数を表わす)で表わされる〕}、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。これら糖類の含有量は、インク組成物の0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
【0039】
その他アルギン酸ナトリウムを含有させても良い。アルギン酸ナトリウムは、褐藻類にのみ含まれる物質で、主に細胞膜或いは細胞間隙物質として存在する親水性高分子電解質である。化学的にはβ−1,4結合するD-Mannuronic acid〔M〕とα−1,4結合するL-Gu1uronic acid〔G〕の重合体である。増粘作用、安定化作用、分散作用、ゲル化作用、フイルム形成作用等の効果がある。インクジェットインクに添加すると、pHによる粘度変化、塩類による析出、多価陽イオンとのゲル化により、異なる色間の惨み(カラーブリード)が改善できる。
【0040】
防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ぺンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0041】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ぺンタエリスリトール、ジシクロへキシルアンモニウムニトライト等がある。その他その目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤を添加することもできる。インクの粘度は8mPa・s以下であることが好ましい。8mPa・sより大きいとインクジェットにて充分な吐出が行なえず、画像不良の問題が発生する。
【0042】
本発明のインクに適合する記録媒体はパルプ繊維を主成分としサイズ度10s以上、透気度5〜50sであることが好ましい。ここでいうサイズ度とは紙のステキヒト・サイズ度試験方法 JIS P8122−76、透気度とは紙及び板紙の透気度試験方法 JISP8117−80に従って行なう。サイズ度が10sより小さいとインクが裏面まで浸透してしまい裏抜けが発生する。透気度が5sより小さい場合もインクが裏面まで浸透してしまい裏抜けが発生し、50s以上の場合は印字品質や乾燥性に問題はないが、必要以上に填量を添加しているため、コストが高くなってしまう。また、この記録媒体を電子写真方式の複写機やプリンターに使用した場合、感光体や定着ローラー等に填量が転写し画像品質の低下や故障の原因になるため、結局はインクジェット専用の紙として使用しなくてはならず消費者に使い分けをさせなくてはならず負担となる。
これにより電子写真用転写紙、印刷用紙、タイプライター用紙、ワイヤードットプリンター用紙、ワードプロセッサー用紙、レター用紙、レポート用紙等種々のノンコートの普通紙と同様に扱うことができ、それに伴い利用者が他の普通紙と分別する手間がなくなる。また、生産上も基本的に現有の抄紙機で生産可能であり、設備投資を最小限に押さえることができる。またこれら他の記録方式の用途にも共通に使用することができる。
【0043】
本発明に使用するパルプ繊維の材料としては、インクジェットプロセスに影響ないものであればパルプの種類、処理方法は問わず適宜に使用できる。また、非木材パルプ(ケナフ、亜麻、竹、海草等)や古紙パルプを用いても良いし、これを主体としても良い。好ましくはLBKPやNBKPに代表される化学パルプである。これらパルプの抄紙は一般の普通紙同様公知のサイズ剤、填料、その他抄紙助剤を必要に応じて用い、常法により抄紙される。
【0044】
サイズ剤としてはロジンサイズ、AKD、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スチレン−マレイン酸コポリマー、第4級アンモニウム塩、アルケニル無水コハク酸、石油樹脂系サイズ、エピクロルヒドリン、カチオン澱粉、アクリルアミド等がある。填料としてはクレー、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、合成シリカ等が挙げられる。さらに紙力増強剤、歩留まり向上剤、定着剤、染料、その他抄紙助剤が添加される。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に記載の各成分の量(%)は重量基準である。
参考例1
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濃過を行ないインク組成物を得た。
ダイレクトブラック168 4.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
イオン交換水 残量
【0046】
参考例2
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトイエロー142 2.5重量%
ジエチレングリコール 45.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 2.5重量%
イオン交換水 残量
【0047】
参考例3
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトブルー199 3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム 0.5重量%
イオン交換水 残量
【0048】
参考例4
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
アシッドレッド52 3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 2.0重量%
イオン交換水 残量
【0049】
参考例5
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濃過を行ないインク組成物を得た。
ダイレクトブラック168 4.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
2−ピロリドン 2.0重量%
イオン交換水 残量
【0050】
参考例6
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトイエロー142 2.5重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 23.0重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム 0.5重量%
イオン交換水 残量
【0051】
参考例7
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
カーボンブラック(平均粒径104nm) 5.0重量%
スチレン−アクリレート−メタクリル酸ジエタノールアミン塩共重合体
3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 18.0重量%
エチレングリコール 5.0重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
イオン交換水 残量
【0052】
実施例1
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
黒色顔料(カルボキシル基結合型カーボンブラック平均粒径108nm)
5.0重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 23.0重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム 0.5重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
2−ピロリドン 2重量%
イオン交換水 残量
【0053】
実施例2
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
カーボンブラック(平均粒径104nm) 5.0重量%
スチレン−アクリレート−メタクリル酸ジエタノールアミン塩共重合体
3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 23.0重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム 0.5重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.5重量%
イオン交換水 残量
【0054】
実施例3
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
カーボンブラック(平均粒径104nm) 5.0重量%
スチレン−アクリレート−メタクリル酸ジエタノールアミン塩共重合体
3.0重量%
ジエチレングリコール 20.0重量%
ポリエチレングリコール(分子量200) 5重量%
ポリオキシエチレン(7)2級アルキルエーテル;ノニオン界面活性剤
0.5重量%
2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 1.2重量%
イオン交換水 残量
【0055】
比較例1
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトブラック168 4.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
イオン交換水 残量
【0056】
比較例2
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトブラック168 4.0重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 23.0重量%
2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール 2.0重量%
イオン交換水 残量
【0057】
比較例3
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
ダイレクトブラック168 4.0重量%
グリセリン 7.0重量%
ジエチレングリコール 23.0重量%
2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール 4.0重量%
イオン交換水 残量
【0058】
比較例4
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
アシッドレッド52 3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 2.0重量%
イオン交換水 残量
【0059】
比較例5
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
カーボンブラック(平均粒径104nm) 5.0重量%
スチレン−アクリレート−メタクリル酸ジエタノールアミン塩共重合体
3.0重量%
グリセリン 7.0重量%
トリエチレングリコール 23.0重量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0重量%
イオン交換水 残量
【0060】
比較例6
下記組成物を用いる以外は参考例1と同様にして、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整してインク組成物とした。
黒色顔料(スルホン基結合型カーボンブラック平均粒径103nm)
5重量%
グリセリン 7重量%
ジエチレングリコール 23重量%
アセチレングリコール誘導体
(日信化学製サーフィノール440) 0.5重量%
イオン交換水 残量
【0061】
つぎに、上記実施例、参考例及び比較例について下記の試験を行なった。その結果を表2に記す。
(1)インクの表面張力
KRUSS製自動表面張力計K10STを使用してインクの表面張力を測定した(25℃)。
(2)画像滲み
記録媒体としてNBSリコー社製;マイペーパー(サイズ度12s、透気度16s)を用い、ピエゾ方式のインクジェットプリンター((株)リコー製IPSIO JET 300)で印字を行ない、乾燥後漢字文字画像を拡大鏡で観察し、画像滲みが見られる場合を○と判定し、滲みが見られる場合を×と判定した。(3)画像の乾燥性
記録媒体にべタ画像印字後の画像に0.1kg/cm2の圧力で濾紙を押しつけインクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。3秒以内で転写が見られない場合、乾燥性を○と判定し、3秒超えても転写が見られる場合、乾燥性を×と判定した。
(4)裏抜け
記録媒体に反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)で測定した各インク色での濃度が1.0となる様にべタ画像を形成した。この画像を裏面から目視観察し、べタ画像と白地部分の境界が明らで両面印字に使用する場合支障がある場合は×、べタ画像と白地部分の境界がほとんど不明確で両面印字に使用しても支障のないレべルの場合は○、べタ画像と白地部分の境界が完全に不明確で両面印字に使用しても支障のない場合は◎として判定した。
(5)擦過性
記録媒体に各インクで形成された画像を、印字30秒後に指、布、消しゴム、マーキングぺンで擦過し、擦過後の様子を目視にて観察した。擦過による画像の変化が発生した場合は×とし、発生がなければ○とした。
(6)画像の埋まり
乾燥後、べタ画像を目視で観察し、インクで均一に記録媒体が着色している場合は○、地肌が見えるような不均一な着色の場合は×とした。
(7)保存性
インクをインクジェットプリンターにセットしたまま、60℃、7日間放置し、その後インクジェットプリンターのクリーニング操作で復帰可能ならば○、不可能ならば×とした。
【0062】
【表2】
【0063】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の浸透剤をインクに使用することにより、表面張力を低下させ、インクと紙表面との濡れ性を向上し、紙への浸透速度を高めることが可能であるだけでなく、従来から知られるような界面活性剤を中心として浸透性を高めた場合にくらべ、画像劣化がきわめて少なく、また、着色剤の種類の如何に関わらず浸透速度も、ほば同等となるという優れた効果を奏する。
Claims (10)
- 水に分散する着色剤、水、界面活性剤、インク全重量に対して5〜50重量%の湿潤剤を含有するとともに、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールを含有する水性インクであって、前記着色剤が、カルボキシル基が結合している分散剤により水中に分散されている顔料または表面にカルボキシル基が結合して改質され水中に分散されている顔料であることを特徴とする水性インク。
- 2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールをインク全重量に対して0.1〜3重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の水性インク。
- 前記界面活性剤をインク全重量に対して0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水性インク。
- 前記湿潤剤がジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびグリセリンから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水性インク。
- ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水性インク。
- 前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項3に記載の水性インク。
- 2−ピロリドンを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水性インク。
- 前記着色剤が、平均粒径50nm〜200nm範囲の顔料であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水性インク。
- 前記顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の水性インク。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載の水性インクを微細な吐出口より液滴として吐出、飛翔させ記録媒体に画像を形成することを特徴とする記録方法。
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