JP4254741B2 - 測位システム - Google Patents
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Description
このような測位方法においては、基地局から信号が送信される時間(送信タイミング)が正確である必要がある。しかし、基地局から信号が送信されるタイミングは、例えば、タイミング信号が生成されてから発信されるまでの間において基地局内部において、遅延が生じる。
これに対して、オフセット測定装置を設置し、複数の観測点において受信した信号に基づいて送信タイミングのオフセット推定値を求め、このオフセット推定値のうち最も小さいものを選択して無線基地局の送信タイミングのオフセット測定値とする技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
このため、オフセット測定装置によって生成されたオフセット測定値を使用して、一般の携帯端末が測位を行うと、測位演算の誤差が拡大する場合がある。
による測位計算の誤差を低減することができる通信基地局からの信号の送信タイミングの
補正値を提供することができる測位システムを提供することを目的とする。
通信基地局がタイミング信号及び通信信号を送信することは一般的であるから、前記通信基地局は、一般の通信基地局の大幅なシステム変更を必要としない。
また、前記総遅延は、前記基地局タイミング信号が、前記通信基地局から前記端末装置に到達するために必要な伝搬遅延時間を含む。
さらに、前記総遅延は、前記基地局タイミング信号が前記端末装置のアンテナに到達してから、ケーブル、フィルタ等を通過することによる前記端末装置内部の遅延を含む。
さらに、前記総遅延は、前記基準タイミング信号自体の遅延も含む。前記基準タイミング信号は、前記衛星時刻情報によって補正されているのであるが、前記衛星信号自体、前記端末装置の内部において遅延する。この結果、前記基準タイミング信号もまた、真の前記衛星時刻によるタイミングと比べると、遅延を生じている。
そして、前記情報提供装置は、前記距離情報生成手段によって、前記端末装置の現在位置と前記通信基地局の位置との間の距離を示す距離情報を生成することができる。
また、前記情報提供装置は、前記伝搬遅延情報生成手段によって、前記通信信号が前記距離を伝搬するために必要な時間を示す伝搬遅延情報を生成することができる。
そして、前記情報提供装置は、前記装置固有遅延情報生成手段によって、前記伝搬遅延時間以外の遅延を示す装置固有遅延情報を生成することができる。
上述の、前記装置固有遅延情報は、前記伝搬遅延時間以外の遅延であるから、前記通信基地局及び前記端末装置内部における遅延を示す情報である。上述のように、前記総遅延は、前記通信基地局及び前記端末装置の内部の個々の遅延計算誤差を排除して算出されている。そして、前記通信信号は光速で伝搬するから、前記情報提供装置は、前記伝搬遅延時間を正確に算出することができる。
そして、前記情報提供装置は、前記伝搬遅延時間を正確に算出することができるのであるから、前記総遅延から前記伝搬遅延時間を減じることによって、前記通信基地局内部及び前記端末装置内部における個別の原因による遅延計算の誤差の影響を排除して、前記装置固有遅延情報を生成することができる。
ここで、前記測位端末は、前記基地局タイミング信号及び前記通信信号の受信に関して前記端末装置と同じ構成を有するから、前記測位端末の内部における前記基地局タイミング信号の遅延は、前記端末装置と同一範囲の値である。一方、前記通信基地局内部における前記基地局タイミング信号の遅延は、前記測位端末と前記端末装置とで共通である。すなわち、前記装置固有遅延情報は、前記通信基地局内部及び前記測位端末内部における遅延を示す情報でもある。
このため、前記測位端末は、前記装置固有遅延情報を使用して、前記通信基地局からの前記通信信号に基づく測位を行う場合に、測位計算の誤差を低減することができる。
上述のように、第1の発明の構成によれば、通信基地局の大幅なシステム変更を必要とすることなく、測位端末による測位計算の誤差を低減することができる基地局からの信号の送信タイミングの補正値を提供することができる。
この点、前記情報提供装置は、前記基礎情報選択手段を有するから、前記受信状態情報に基づいて、複数の前記端末装置から受信した前記現在位置情報、前記総遅延情報の中から、前記距離情報、前記伝搬遅延情報及び前記装置固有遅延情報の生成に使用する前記現在位置情報及び前記総遅延情報を選択することができる。このため、前記情報提供装置は、良好な前記受信状態において生成された前記現在位置情報及び前記総遅延情報を選択することができる。
これにより、前記情報提供装置は、精度が高い前記装置固有遅延情報を生成することができる。
ここで、例えば、前記情報提供装置のドリフトは温度によって変化し、気象状況や1日における気温の変化の影響も受ける。さらに、前記情報提供装置を構成するケーブルやフィルタ等の部品は経時劣化し、それらの部品による前記基地局タイミング信号の遅延は変化する。この状況は、前記端末装置においても同様である。
このため、前記装置固有遅延情報は更新することが望ましい。
この点、第4の発明の構成によれば、前記情報提供装置の前記現在位置情報受信手段、前記総遅延情報受信手段及び前記受信状態情報受信手段は、予め規定した規定時間間隔において、前記端末装置から、前記現在位置情報、前記総遅延情報及び前記受信状態情報を受信する構成となっているから、前記規定時間間隔において前記装置固有遅延情報を更新することができる。
これにより、通信基地局の大幅なシステム変更を必要とすることなく、測位端末による測位計算の誤差を低減することができる基地局からの信号の送信タイミングの補正値を生成するための基礎となる情報を提供することができる。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1に示すように、測位システム10は、基地局20を有する。この基地局20は、通信基地局の一例である。基地局20は、例えば、携帯電話網の通信基地局である。
基地局20は、通信信号CS1を送信する。通信信号CS1は、通信信号の一例である。
基地局20は複数存在する。例えば、基地局20A,20B及び20Cが互いに異なる位置に存在している。そして、基地局20A等は、それぞれ、通信信号CS1a,CS1b,CS1cを送信する。以後、基地局20と呼ぶときは、基地局20A等を総称するものとする。
端末40は複数存在する。例えば、端末40A,40B及び40Cが存在している。以後、端末40と呼ぶときは、端末40A等を総称するものとする。
なお、本実施の形態とは異なり、通信網は、インターネット網であってもよい。
図2は基地局20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図2に示すように、基地局20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)23、記憶装置24、外部記憶装置25等が接続されている。記憶装置24は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。外部記憶装置25は例えば、HD(Hard Disk)である。
また、バス22には、基地局通信装置28が接続されている。基地局通信装置28は、端末40と通信するための通信信号CS1を送信するための構成である。基地局20は、通信信号CS1とともに、基地局タイミング信号TS1(図8参照)を送信する。この基地局タイミング信号TS1は、基地局タイミング信号の一例である。
図3に示すように、基地局通信装置28は、基地局タイミング信号TS1を発生させるタイミング信号発生装置28a、フィルタ28b、増幅器28c等で構成されている。基地局通信装置28はまた、増幅器28cとアンテナ28eを接続するケーブル28dを有する。
タイミング信号発生装置28aは、基地局タイミング信号TS1の基礎となる信号を発生するための、例えば、水晶発振器を有している。この水晶発振器の基準周波数は、温度によって偏移する。以後、温度による水晶発振器の周波数のずれを、ドリフトと呼ぶ。基地局タイミング信号TS1の発信タイミングは、このドリフトによって変動(遅延)する。
また、タイミング信号発生装置28aで発生した基地局タイミング信号TS1には、フィルタ28b、増幅器28c及びケーブル28dにおいて、遅延が発生する。
図4は、端末40の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図4に示すように、端末40は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス42を有する。
後述のように、端末時計49は、GPS衛星12a等の時刻(以後、GPS時刻と呼ぶ)と差がない状態に維持することができる。
図5は、サーバ60の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、サーバ60は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス62を有する。
このバス62には、CPU63、記憶装置64、外部記憶装置65、入力装置66、サーバ通信装置67及び表示装置68が接続されている。
図6は、測位端末80の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、測位端末80の主なハードウエア構成は、上述の端末40の主なハードウエア構成と同様である。
この測位端末80は、基地局20からの基地局タイミング信号TS1(図8参照)及び通信信号CS1の受信に関して、端末20と同じ構成を有している。また、GPS衛星12a等からの信号S1の受信に関しても、端末20と同じ構成を有している。
図7は、基地局20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図7に示すように、基地局20は、各部を制御する基地局制御部100、図2の基地局GPS装置27に対応する基地局GPS部102、基地局通信装置28に対応する基地局通信部104等を有する。この基地局通信部104は、基地局タイミング信号TS1及び通信信号CS1を送信する信号送信手段の一例である。
基地局20は、また、図2の基地局時計30に対応する基地局計時部106、基地局第2通信装置31に対応する基地局第2通信部108等を有する。
基地局20は、さらに、各種プログラムを格納する基地局第1記憶部120、各種情報を格納する基地局第2記憶部150を有する。
基地局制御部100は、定期的に基地局GPS部102によってGPS衛星12a等からの信号S1等を受信し、信号S1等からアルマナック及びエフェメリスを抽出するようになっている。アルマナックは例えば7日ごとに、エフェメリスは例えば4時間ごとに更新されており、常に有効な状態に維持されている。
具体的には、基地局制御部100は、基地局GPS部102によって、4個以上のGPS衛星12a等から信号S1等を受信する。そして、基地局制御部100は、各信号S1等が発信された時刻と、各信号S1等を受信した時刻との差分を算出し、信号S1等の伝搬速度が光速であることに基づいて、各GPS衛星12a等と基地局20との距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。続いて、基地局制御部100は、衛星軌道情報152に含まれるエフェメリスによって、現在時刻における各GPS衛星12a等の衛星軌道上の位置を算出する。そして、基地局制御部100は、各GPS衛星12a等の擬似距離と衛星軌道上の位置に基づいて、基地局20の位置を例えば、緯度、経度及び高度によって示す基地局位置情報154を生成する。
基地局制御部100は、生成した基地局位置情報154を基地局第2記憶部150に格納する。
図8に示すように、送信フレームFRは例えば、サブフレームSF1乃至SF7から構成されており、各サブフレームSF1等には、各サブフレームSF1等の送信時刻t1乃至t7を示す情報がそれぞれ含まれている。送信時刻t1等は、基地局計時部106によって計測される。
基地局20は、基地局通信部104によって、通信信号CS1等とともに、基地局タイミング信号TS1を継続的に送信している。基地局タイミング信号TS1は、基地局タイミング信号n一例である。基地局タイミング信号TS1は、例えば、1秒間隔のパルス信号である。送信時刻t1等と基地局タイミング信号TS1はともに基地局計時部106から出力される情報であるから、送信時刻t1等のGPS時刻とのずれは、基地局タイミング信号TS1の送信タイミングのずれに等しい。ここで基地局タイミング信号TS1の送信タイミングのずれとは、基地局タイミング信号TS1が1秒間隔のパルス信号であるとすると、実際の基地局タイミング信号TS1のパルス間隔と、GPS時刻で計測した1秒間隔との時間差分である。なお、本明細書では、基地局タイミング信号TS1の送信タイミングのずれも遅延として扱う。
基地局20は、端末20から受信した基礎情報262を、基地局側基礎情報158の一部として基地局第2記憶部150に格納する。基地局側基礎情報158は、端末20から受信した基礎情報262に含まれる情報のほかに、基地局位置情報154を含む。
基地局制御部100は、サーバ60から受信した装置固有遅延情報372を、基地局側装置固有遅延情報提供プログラム130として基地局第2記憶部250に格納する。
このように、基地局20は、上述の基礎情報要求プログラム126等による情報の送受信を、基地局第2通信部108によって行うから、一般的な通信基地局の大幅なシステム変更を必要としない。
図9は、端末40の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図9に示すように、端末40は、各部を制御する端末制御部200、図4の端末GPS装置46に対応する端末GPS部202、端末通信装置47に対応する端末通信部204、端末時計49に対応する端末計時部206等を有する。
端末40は、さらに、各種プログラムを格納する端末第1記憶部210、各種情報を格納する端末第2記憶部250を有する。
現在位置情報254は、例えば、端末40の現在位置を、緯度、経度及び高度で示す情報である。
端末制御部200は、現在位置情報生成プログラム212に基づいて行う測位演算によって、例えば、緯度、経度及び高度を算出するが、このとき端末計時部206の時刻誤差も算出する。そして、端末制御部200は、端末計時部206によって計測した時刻と、測位によって取得して時刻誤差に基づいて、信号S1等の受信時のGPS時刻を算出するのである。
端末制御部200は、生成したGPS時刻情報256を端末第2記憶部250に格納する。
端末40A,40B及び40Cは、信号S1等の受信に関して同じ構成である。このため、端末40A,40B及び40CのGPS時刻差分は同一範囲内の値である。
受信状態情報258は、例えば、PDOP(Position Dilution Of Precision:位置精度劣化率)、信号S1等の信号強度、受信したGPS衛星の数等の全部又は一部を示す情報である。
端末制御部200は、生成した受信状態情報258を、端末第2記憶部250に格納する。
具体的には、端末制御部200は、図8(b)に示すように、例えば、基準タイミング信号TS2の立ち上がり時と、基地局タイミング信号TS1の立ち上がり時との差分を基地局計時部106によって計測し、総遅延dtを算出する。この総遅延dtは、基地局通信装置28(図3参照)におけるドリフトによる遅延dt1、基地局20、端末40それぞれのケーブル遅延とデバイス遅延dt2及び、基地局20から端末40へ基地局タイミング信号TS1が伝搬するための伝搬遅延dt3を含む。ここで、ドリフトによる遅延dt1、ケーブル遅延とデバイス遅延等の基地局20及び端末40内部の遅延dt2を合計した遅延を装置固有遅延dmtと呼ぶ。装置固有遅延dmtは、総遅延dtから伝搬遅延dt3を引いたものである。装置固有遅延dmtは、端末40A,40B及び40Cが、例えば、同じ基地局20Aから基地局タイミング信号TS1を受信する場合には、共通である。
ただし、端末20が算出するのは総遅延dtだけである。
端末制御部200は、生成した総遅延情報260を端末第2記憶部250に格納する。
そして、端末制御部200は、上述の現在位置情報254、受信状態情報258及び総遅延情報260を基礎情報262の構成要素として端末第2記憶部250に格納する。
端末40から基礎情報262を受信した基地局20は、上述のように、その基礎情報262を基地局側基礎情報158の一部とする。そして、基地局20は、サーバ60に対して、基地局側基礎情報158を送信することができる。すなわち、端末40は、基地局20を介してサーバ60に対して、基礎情報262を送信しているというこができる。すなわち、この基礎情報送信プログラム224と端末制御部200は、基礎情報送信手段の一例である。
図10は、サーバ60の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図10に示すように、サーバ60は、各部を制御するサーバ制御部300、図5のサーバ通信装置67に対応するサーバ通信部302等を有する。
サーバ60は、さらに、各種プログラムを格納するサーバ第1記憶部310、各種情報を格納するサーバ第2記憶部350を有する。
上述の基礎情報データベース352は、基地局位置情報格納手段の一例である。
また、上述のように、基地局20は、端末40から受信した基礎情報262を基地局側基礎情報158の構成要素として保持しているから、サーバ通信部302は、通信基地局20を介して、端末40から基礎情報262を受信していると言える。すなわち、サーバ通信部302は、基礎情報受信手段の一例である。
具体的には、サーバ制御部300は、1分間の時間間隔において、基地局20に対して基地局側基礎情報158を要求する。サーバ60からの要求を受けた基地局20は、端末40に対して最新の基礎情報262(図9参照)を要求し、その基礎情報262を受信し、新たな基地局側基礎情報158(図7参照)とする。そして、基地局40は、その新たな基地局側基礎情報158をサーバ60に送信する。
このようにして、サーバ60は、1分間の時間間隔において更新された基地局側基礎情報158を受信することができる。
例えば、サーバ制御部300は、基地局20Aからの通信信号CS1aに乗せられている基地局20Aを識別するための情報に基づいて、端末40が通信中の基地局20Aを特定する。基地局20Aを識別するための情報は、例えば、基地局20Aの識別番号である。
サーバ60は、基礎情報データベース352に例えば、端末20A,20B及び20Cについての各サーバ側受信状態情報360a,360b及び360cを格納している。また、サーバ60は、基礎情報データベース352に、端末20A等の各サーバ側端末現在位置情報358a,358b及び358c、各総遅延情報362a,362b及び362cを格納している。
サーバ側状態情報360がPDOPを示すものとすれば、サーバ制御部300は、例えば、サーバ側受信状態情報360aが一番小さいPDOPを示す場合には、端末20Aのサーバ側現在位置情報358a及び総遅延情報362cを選択する。
具体的には、サーバ制御部300は、サーバ側基地局位置情報356に示される基地局20の座標と、サーバ側端末現在位置情報358aに示される端末40Aの座標との距離Lを算出することによって、距離情報364を生成する。
サーバ制御部300は、生成した距離情報364をサーバ第2記憶部350に格納する。
サーバ制御部300は、上述の基礎情報選択プログラム314によって、例えば、サーバ側受信状態情報360aが一番小さいPDOPを示す場合には、端末20Aのサーバ側現在位置情報358aを選択する。このため、サーバ側現在位置情報358aに示される端末20Aの測位誤差は、端末20B及び20Cの測位誤差よりも小さい。
このため、サーバ制御部300は、誤差が最も小さい距離情報364を生成することができる。
具体的には、通信信号CS1が伝搬する速度は光速であるから、サーバ制御部300は、距離Lを光速で除することによって、伝搬遅延時間dt3を算出する。
サーバ制御部300は、生成した伝搬遅延情報366を、サーバ第2記憶部350に格納する。
上述のように、サーバ制御部300は、誤差が最も小さい距離情報364を生成することができるから、伝搬遅延情報366の誤差も最も小さい。
具体的には、サーバ制御部300は、総遅延dt(図8(b)参照)から伝搬遅延時間dt3を減じることによって、装置固有遅延dmtを算出する。
サーバ制御部300は、生成した装置固有遅延情報372をサーバ第2記憶部350の装置固有遅延情報データベース370に格納する。
サーバ制御部300は、基地局20A,20B及び20Cについて、それぞれ装置固有遅延情報372a,372b及び372cを生成する。基地局20A,20B及び20Cの内部における基地局タイミング信号TS1の送信に関する構成は同一であるとは限らないから、基地局20A,20B及び20Cの内部における基地局タイミング信号TS1の遅延時間は等しいとは限らない。したがって、各基地局20A,20B及び20Cについての装置固有遅延情報372a,372b及び372cに示される装置固有遅延dmta,dmtb及びdmtcは等しいとは限らない。
これに対して、例えば、端末40A,40B及び40Cにおいては、基地局タイミング信号TS1の受信に関する構成は同一であるから、端末40A,40B及び40Cの内部における基地局タイミング信号TS1の遅延時間は等しい。そして、端末40A,40B及び40Cにおいて異なるのは、伝搬遅延時間dt3(図8(b)参照)だけである。このため、基地局20が共通で、例えば、基地局20Aであれば、総遅延dtから伝搬遅延時間dt3を減じて算出する装置固有遅延dmtは、端末40A,40B及び40Cについて等しい。
そして、測位端末80は、基地局20から基地局側装置固有遅延情報166を受信して、複数の基地局20A等からの通信信号CS1a等に基づく測位(以後、基地局測位と呼ぶ)を行うことができる。測位端末80は、例えば、基地局20Bとの通信が、基地局20Aとの通信に切り替わったと判断した場合(ハンドオーバーが発生したと判断した場合)又は起動するための電源が入れられた場合に、基地局20Aから基地局側装置固有遅延情報166(図7参照)を取得するようになっている。
図11(a)は、各基地局20A等の位置を示す図である。基地局20A等の位置は、既知である。
図11(b)は、各基地局20A等からの通信信号CS1a等の伝搬時間tb01等を示す図である。伝搬時間tb01等は、未知数である。
図11(c)は、各通信信号CS1a等の送信時刻t1等を示す図である。送信時刻t1等は、既知である。ここで、t1、t2及びt3は、同時刻とは限らない。
図11(d)は、基地局20A等内部の遅延及び端末内部の遅延を合計した装置固有遅延dmta等を示す図である。装置固有遅延dmta等は、既知である。
図11(e)は通信信号CS1a等の伝搬速度を示す図である。通信信号CS1a等は電波に乗せられているから、その伝搬速度は光速Cである。
図11(f)は、通信信号CS1a等の送信時刻t1等と、測位端末80が通信信号CS1a等を受信した時刻との時間差td01等を示す図である。図11(g)に示すように、測位端末80が通信信号CS1a等を受信した時刻をt0とする。
図11(h)に示す測位端末80の位置(X,Y,Z)は、未知数である。
まず、各基地局20A等と測位端末80との距離は、通信信号CS1a等の伝搬時間と電波の速度(光速C)を乗算したものに等しいから、図11(i)の式(1)乃至式(3)が成り立つ。
次に、通信信号CS1a等の受信時刻は、送信時刻t1等から伝搬時間tb01等及び装置固有遅延dtma等が経過した時間であるから、図11(j)の式(4)乃至(6)が成り立つ。
さらに、図11(f)の時間差td01等については、図11(c)の送信時刻t1等、図11(b)の伝搬時間tb01及び図11(g)の時刻t0に基づいて、図11(k)の式(7)乃至式(9)が成り立つ。
ここで、未知数が測位端末80の位置を示す、X、Y、Z、伝搬時間tb01、tb02及びtb03の6個であるから、式(1)、(2)、(3)、(7)、(8)及び(9)を連立させて計算することによって、未知数をすべて算出することができる。
なお、上述の基地局測位は、測位端末80が基地局20A等と通信可能であることを前提とするから、基地局20A等の通信圏内に位置する。このため測位端末80の位置する領域の起伏が少なく、基地局20A等の位置の高度成分Z1等(図11(a)参照)がほぼ等しい場合には、例えば、高度成分Z1,Z2及びZ3の平均値を測位端末80の位置の高度成分Zとして、上述の基地局測位を行うことも可能である。
測位端末80は、図11を使用して説明した上述の基地局測位の計算方法において、1個又は2個の基地局20をGPS衛星12a等に代替してハイブリッド行う。
なお、一般的には、人工衛星による測位、移動体通信情報による測位、ジャイロなどによる加速度センサ、車速パルスなどのセンサ類を2つ以上組み合わせた測位方法をハイブリッド測位と呼ぶが、本実施の形態においては基地局20A等の情報とGPS衛星12a等の情報を組み合わせて行う測位をハイブリッド測位と呼ぶ。
この点、測位端末80は、GPS衛星12a等から信号S1等を受信することができるかぎり、信号S1等のみ、又は、信号S1等と通信信号CS1を使用して測位を行うことができる。
このため、測位端末80は、上空に位置し、観測可能なGPS衛星12a等の数に応じて、最も高い測位精度において測位をすることができる。
これに対し、例えば、屋内などGPS衛星12a等が3個以上観測できない環境においては、屋内でも受信可能な通信信号CS1を使用して、ハイブリッド測位又は基地局測位を行うことができる。
上述のように、基地局20は、基地局20が生成する基地局タイミング信号TS1及び通信信号CS1を送信することができる。
通信基地局がタイミング信号を含む通信信号を送信することは一般的であるから、通信基地局は、一般の通信基地局の大幅なシステム変更を必要としない。
また、総遅延dtは、基地局タイミング信号TS1が、基地局20から端末40に到達するために必要な伝搬遅延時間dt3を含む。
さらに、総遅延dtは、基地局タイミング信号TS1が端末20のアンテナに到達してから、ケーブル、フィルタ等を通過することによる端末20内部の遅延を含む。
さらに、総遅延dtは、基準タイミング信号TS2自体の遅延も含む。基準タイミング信号TS2は、GPS時刻によって補正されているのであるが、GPS衛星12a等からの信号S1等自体、端末20の内部において遅延する。この結果、基準タイミング信号TS2もまた、真のGPS時刻によるタイミングと比べると、遅延を生じている。
そして、サーバ60は、距離情報364(図10参照)を生成することができる。
また、サーバ60は、伝搬遅延情報366を生成することができる。
さらに、サーバ60は装置固有遅延情報372を生成することができる。
上述の、装置固有遅延情報372は、伝搬遅延dt3以外の遅延であるから、基地局20及び端末40内部における遅延を示す情報である。上述のように、総遅延dtは、基地局20及び端末40の内部の個々の遅延計算誤差を排除して算出されている。そして、通信信号CS1は光速で伝搬するから、サーバ60は、伝搬遅延時間dt3を正確に算出することができる。
そして、サーバ60は、伝搬遅延時間dt3を正確に算出することができるのであるから、総遅延dtから伝搬遅延時間dt3を減じることによって、基地局20内部及び端末40内部における個別の原因による遅延計算の誤差の影響を排除して、装置固有遅延情報372を生成することができる。
ここで、測位端末80は、通信信号CS1の受信に関して、端末20と同じ構成を有するから、測位端末80の内部における基地局タイミング信号TS1の遅延は、端末20と同一範囲である。一方、基地局20内部における基地局タイミング信号TS1の遅延は、測位端末80と端末20とで共通である。すなわち、装置固有遅延情報372は、基地局20の内部及び測位端末80の内部における遅延を示す情報でもある。
このため、測位端末80は、装置固有遅延情報372を使用して、複数の基地局20A等からの通信信号CS1a等に基づく測位を行う場合に、測位計算の誤差を低減することができる。
上述のように、測位システム10によれば、通信基地局の大幅なシステム変更を必要とすることなく、測位端末による測位計算の誤差を低減することができる通信基地局からの信号の送信タイミングの補正値を提供することができる。
この点、サーバ60は、サーバ側受信状態情報360(図10参照)に基づいて、複数の端末40についてのサーバ側端末現在位置情報358、サーバ側総遅延情報362の中から、距離情報364、伝搬遅延情報366及び装置固有遅延情報372の生成に使用する情報を選択することができる。このため、サーバ60は、良好な受信状態において生成されたサーバ側端末現在位置情報358及びサーバ側総遅延情報362を選択することができる。
これにより、サーバ60は、精度が高い装置固有遅延情報372を生成することができる。この結果、測位端末80が、基地局側装置固有遅延情報166(図7参照)を使用して行う基地局測位及びハイブリッド測位の測位精度を高くすることができる。
ここで、例えば、サーバ60のドリフトは温度によって変化し、気象状況や1日における気温の変化の影響も受ける。さらに、サーバ60を構成するケーブルやフィルタ等の部品は経時劣化し、それらの部品による基地局タイミング信号TS1の遅延は変化する。この状況は、端末40においても同様である。
このため、装置固有遅延情報372は更新することが望ましい。
この点、サーバ60は、予め規定した時間間隔である例えば、1分間の時間間隔において、基地局20から更新された基地局側基礎情報158を受信する構成となっているから、予め規定した時間間隔において装置固有遅延情報372を更新することができる。
図12及び図13は本実施の形態に係る測位システム10の動作例を示す概略フローチャートである。
続いて、端末40が、GPS衛星12a等から信号S1等を受信し、現在位置情報254、GPS時刻情報256及び受信状態情報256を生成する(ステップST2)。
続いて、端末40が、基地局タイミング信号TS1と基準タイミング信号TS2のタイミング差分を示す総遅延情報260(図9参照)を生成する(ステップST5)。
続いて、基地局20が、サーバ60に対して、基地局側基礎情報158(図7参照)を送信する(ステップST8)。
そして、測位端末80は、非同期通信の基地局20から送られてきた通信信号C1に基づく測位を行う。この際に、サーバ60から取得した装置固有遅延情報372を使用する。これにより、測位端末80の測位計算の精度を向上することができる。
コンピュータに上述の動作例の現在位置情報受信ステップと、総遅延情報受信ステップと、距離情報生成ステップと、伝搬遅延情報生成ステップと、装置固有遅延情報生成ステップ等を実行させるための情報提供装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような情報提供装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
Claims (2)
- 複数の通信基地局と、前記通信基地局と通信可能であり測位機能を有する複数の携帯電
話機と、情報提供装置とを備えた測位システムであって、
前記複数の通信基地局それぞれは、
所定時間間隔でタイミング信号を発信するタイミング信号発信手段と、
前記複数の携帯電話機それぞれに要求信号を送信する要求信号送信手段と、
を有し、
前記複数の携帯電話機それぞれは、
前記複数の通信基地局のうちの通信可能圏内に位置する通信基地局から前記要求信号を
受信する要求信号受信手段と、
前記要求信号受信手段の受信に応じて、測位衛星からの信号である衛星信号を受信して
現在位置を測位する測位手段と、
前記測位時の前記測位衛星のPDOP(Position Dilution Of precision)値を判定す
るPDOP値判定手段と、
前記受信した要求信号を送信した通信基地局から送信される前記タイミング信号と、前
記衛星信号に基づいて前記所定時間間隔と同一の時間間隔で生成した基準タイミング信号
との差分に基づいて、当該通信基地局と通信を行う際に生じる当該通信基地局の内部遅延
時間及び自携帯電話機の内部遅延時間と、当該通信に係る電波伝搬遅延時間とを含む総遅
延時間を算出する総遅延時間算出手段と、
前記受信した要求信号を送信した通信基地局に対して、前記PDOP値と前記測位位置
と前記総遅延時間との情報を含む基礎情報を送信する送信手段と、
を有し、
前記複数の通信基地局それぞれは、
前記携帯電話機から受信した前記基礎情報に更に自通信基地局の基地局位置の情報を含
めて前記情報提供装置に送信する手段、
を更に有し、
前記情報提供装置は、
前記複数の通信基地局それぞれから、前記基礎情報を受信する受信手段と、
前記複数の通信基地局それぞれについて、当該通信基地局から受信した基礎情報のうち
、当該基礎情報に含まれるPDOP値が一番小さい基礎情報を選択する選択手段と、
前記複数の通信基地局それぞれについて、前記選択手段により選択された基礎情報に含
まれる当該通信基地局の基地局位置と前記測位位置とに基づいて、当該通信基地局と、当
該通信基地局から前記タイミング信号を受信して当該基礎情報に含まれる総遅延時間を算
出した携帯電話機との間の電波伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出手段と、
前記複数の通信基地局それぞれについて、前記選択手段により選択された基礎情報に含
まれる総遅延時間から、前記伝搬遅延時間算出手段により算出された電波伝搬遅延時間を
減算することにより、当該通信基地局と通信を行う際に生じる当該通信基地局の内部遅延
時間及び前記携帯電話機の内部遅延時間を合計した装置固有遅延時間を算出する装置固有
遅延時間算出手段と、
前記装置固有遅延時間算出手段により算出された装置固有遅延時間を、対応する通信基
地局に送信する装置固有遅延時間送信手段と、
を有し、
前記複数の通信基地局それぞれは、
前記情報提供装置から送信される自通信基地局に関する前記装置固有遅延時間を受信す
る装置固有遅延時間受信手段と、
通信信号の受信に関して前記携帯電話機と同じ構成を有する携帯電話機であり、自通信
基地局からの信号を受信する際に要した正味の伝搬時間を用いて測位を行う測位端末に対
して、前記正味の伝搬時間を算出させるために、前記装置固有遅延時間受信手段により受
信された前記装置固有遅延時間を送信する測位端末宛送信手段と、
を有する測位システム。 - 前記情報提供装置は、所定の基礎情報要求時間間隔で前記複数の通信基地局それぞれに
前記基礎情報を要求する信号を送信する手段を有し、
前記通信基地局の要求信号送信手段は、前記情報提供装置からの前記基礎情報の要求信
号の受信に応じて前記複数の携帯電話機それぞれに要求信号を送信し、
前記所定の基礎情報要求時間間隔での前記基礎情報の要求信号の送信に応じて前記情報
提供装置の前記受信手段が前記受信を行い、前記装置固有遅延時間送信手段が、前記装置
固有遅延時間算出手段により算出された最新の装置固有遅延時間を、対応する通信基地局
に送信し、
前記複数の通信基地局それぞれの前記測位端末宛送信手段が、前記情報提供装置から受
信した最新の装置固有遅延時間を前記測位端末に送信する、
請求項1に記載の測位システム。
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