JP4254498B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、吸気弁、排気弁の開閉タイミングを可変する可変動弁系システムを備えた内燃機関に適用して好適である。
従来から、内燃機関で発生するノッキングを抑制するため、ノッキング発生時に点火時期を制御する方法が知られている。例えば、特開2001−234801号公報には、ノッキング発生時に点火遅角制御を実施するとともに、吸気弁の開閉時期を遅角させる技術が開示されている。
特に、近時においては、機関効率の上昇、機関出力の増大のため、機関の圧縮比がより高くなり、また過給機が機関に組み合わされる場合が多いため、以前にも増してノッキングが起こり易い状況となっている。従って、点火遅角制御によるノッキング抑制の重要度がより高くなる傾向にある。
特開2001−234801号公報 特開平9−287423号公報 特開2001−289076号公報 特公平6−52051号公報 特開平11−13521号公報
ところで、上記のように点火遅角制御が実行された場合は、燃焼時期が遅角側へ変化するとともに燃焼速度が低下し、点火遅角制御が実行されない場合に比して排気弁開弁時の筒内圧力が増大する。筒内圧力は排気弁を閉弁させるように作用するため、上記のように筒内圧力が増大すると排気弁が開弁し難くなる。その結果、排気弁の開弁駆動に要する駆動力が増大し、燃費の悪化を招く場合がある。
この発明は、上記したような問題を解決するためになされたものであり、ノッキング抑制に伴う点火遅角制御が実行された場合に、排気弁の開弁駆動に要する駆動力を最小限に抑え、燃費の悪化を抑制することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ノッキングの発生を検出するノッキング検出手段と、ノッキングの発生時に点火時期を遅角側に制御する点火時期制御手段と、点火時期を遅角側に制御した場合に、排気弁の開弁時期を遅角側に制御する排気弁制御手段と、を備えたことを特徴とする。
第2の発明は、上記の目的を達成するため、気筒別にノッキングの発生を検出するノッキング検出手段と、気筒別に点火時期を制御する点火時期制御手段と、気筒別に排気弁の開弁時期を制御する排気弁制御手段と、を備え、ノッキングが発生した気筒の点火時期及び排気弁の開弁時期を遅角側に制御することを特徴とする。
第3の発明は、上記の目的を達成するため、気筒別にノッキングの発生を検出するノッキング検出手段と、気筒別に点火時期を制御する点火時期制御手段と、気筒別に排気弁の開弁時期を制御する排気弁制御手段と、各気筒で発生する出力を気筒別に制御する出力制御手段と、を備え、ノッキングが発生した場合は、ノッキングが発生した気筒の点火時期及び排気弁の開弁時期を遅角側に制御するとともに、ノッキングが発生していない気筒の出力を増加させることを特徴とする。
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、排気弁の開弁時期の上限値及び下限値を記憶する記憶手段を備え、前記排気弁制御手段は、前記上限値及び前記下限値の範囲内で前記排気弁の開弁時期を制御することを特徴とする。
第5の発明は、上記の目的を達成するため、筒内圧を検出する筒内圧検出手段と、排気弁の開弁時に前記筒内圧と所定のしきい値とを比較する比較手段と、前記筒内圧が前記所定のしきい値以下である場合に、排気弁を開弁する排気弁制御手段と、を備えたことを特徴とする。
第6の発明は、第5の発明において、前記筒内圧が前記所定のしきい値以下となったタイミングが、最大トルクを発生させる所定のクランク角よりも進角側であるときは、前記タイミングで排気弁を開弁することなく、前記所定のクランク角で排気弁を開弁することを特徴とする。
第1の発明によれば、点火時期を遅角側に制御した場合は、排気弁の開弁時期を遅角側に制御するため、筒内圧が高くなる時期と排気弁の開弁時期を相違させることが可能となる。従って、排気弁の開弁駆動に必要となる駆動力を低減することができる。
第2の発明によれば、ノッキングが発生した気筒の点火時期及び排気弁の開弁時期のみを遅角側に制御するため、点火時期及び開弁時期を遅角させたことによる燃焼効率の低下を最小限に抑えることが可能となる。
第3の発明によれば、ノッキングが発生していない気筒の出力を増加させることにより、ノッキングが発生した気筒で点火時期及び開弁時期を遅角させたことによる出力の低下を、ノッキングが発生していない気筒の出力で補償することが可能となる。したがって、点火時期及び開弁時期の遅角制御による機関出力低下を抑止することができる。
第4の発明によれば、排気弁の開弁時期の上限値及び下限値を予め記憶させておき、上限値及び下限値の範囲内で排気弁の開弁時期を変更することで、開弁時期が過度に進角側または遅角側に設定されることを回避でき、熱損失やポンプ損失の増加を抑制することが可能となる。
第5の発明によれば、排気弁の開弁時に筒内圧と所定のしきい値とを比較し、筒内圧が所定のしきい値以下である場合に排気弁を開弁するため、排気弁の開弁時に筒内圧による大きな荷重が排気弁に加わることを回避できる。従って、排気弁の開弁駆動に必要となる駆動力を低減することができる。
第6の発明によれば、筒内圧が所定のしきい値以下となったタイミングが、最大トルクを発生させるクランク角よりも進角側であるときは、そのタイミングで排気弁を開弁することなく、最大トルクを発生させるクランク角で排気弁を開弁するため、開弁時期が過度に進角側に設定されることを回避でき、機関出力の低下を抑制することができる。
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の各実施の形態にかかる内燃機関の制御装置及びその周辺の構造を説明するための図である。図1に示すように、内燃機関10には吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12は、上流側の端部にエアフィルタ16を備えている。エアフィルタ16を収納するエアフィルタボックスには、吸気温THA(すなわち外気温)を検出する吸気温センサ18が組みつけられている。また、排気通路14には排気浄化触媒32が配置されている。
エアフィルタ16の下流には、エアフロメータ20が配置されている。吸気温センサ18は、エアフロメータ20近傍の吸気通路12に設けても良い。エアフロメータ20の下流には、スロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ24と、アクセル開度全閉をトリガにしてオンとなるアイドルスイッチ26とが配置されている。
スロットルバルブ22の下流には、サージタンク28が設けられている。サージタンク28の近傍には、吸気通路12の圧力(吸気管圧力)を検出する吸気管圧センサ29が設けられている。また、サージタンク28の更に下流には、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁30が配置されている。
内燃機関10の各気筒はピストン34を備えている。ピストン34には、その往復運動によって回転駆動されるクランク軸36が連結されている。車両駆動系と補機類(エアコンのコンプレッサ、オルタネータ、パワーステアリングのポンプ等)は、このクランク軸36の回転トルクによって駆動される。クランク軸36の近傍には、クランク軸36の回転角を検出するためのクランク角センサ38が取り付けられている。
また、内燃機関の各気筒は、吸気弁46、および排気弁48を備えている。本実施形態において、吸気弁46、および排気弁48は電磁駆動弁(ECV)により構成されている。
内燃機関10のシリンダブロックには、ノッキングを検出するノッキングセンサ41が取り付けられている。ノッキングセンサ41は、振動ピックアップ、イオン電流プローブ等から構成され、内燃機関10の各気筒で発生したノッキングを検出する。また、内燃機関10のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ42が取り付けられている。
また、内燃機関10の所定の気筒には、筒内の圧力(筒内圧)を検出するための筒内圧センサ44が設けられている。なお、後述するように、実施の形態1では筒内圧センサ44を用いることなく制御が可能である。
図1に示すように、本実施形態の制御装置はECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した各種センサおよび燃料噴射弁30、吸気弁46、排気弁48などが接続されている。
図2は、吸気弁46および排気弁48として使用される電磁駆動弁の構成を示す断面図である。吸気弁46および排気弁48は、バルブ50を備えている。バルブ50のバルブフェース50aが、内燃機関の吸気ポートまたは排気ポートに設けられたバルブシート52に着座し、またはバルブシート52から離座することにより、吸気弁46、排気弁48が開閉する。
バルブ50のバルブステム50bは、バルブガイド54により軸方向に摺動可能な状態で保持されている。バルブステム50bの上部には、アマーチャシャフト57が配置され、アマーチャシャフト57には、アマーチャ56が固定されている。アマーチャ56は、軟磁性材料で構成された円板状の部材である。アマーチャ56の上方には、所定距離だけ離間してアッパコア58が配置されている。また、アマーチャ56の下方には、所定距離だけ離間してロアコア60が配置されている。そして、アッパコア58にはアッパコイル62が設けられ、ロアコア60にはロアコイル64が設けられている。
バルブステム50bは、ロアスプリング68により図2中の上方に付勢されている。また、アマーチャシャフト57は、アッパスプリング66により図2中の下方に付勢されている。その結果、バルブステム50bの上端部にアマーチャシャフト57が当接している。そして、アッパコイル62、ロアコイル64に通電がなされない場合のアマーチャ56の位置がアッパコア58とロアコア60の中間位置となるように、アッパスプリング66とロアスプリング68の釣り合い状態が設定されている。
図2の構成において、アッパコア58の周囲には、アッパコア58とアマーチャ56とそれらの間に形成されるエアギャップとからなる磁気回路が形成される。従って、アッパコイル62に電流が流されると、磁気回路中を磁束が還流し、エアギャップを小さくする方向、すなわちアマーチャ56を上方へ変位させる方向の電磁力が発生する。一方、ロアコイル64の周囲には、ロアコア60とアマーチャ56とそれらの間に形成されるエアギャップとからなる磁気回路が形成される。従って、ロアコイル64に電流が流されると、同様の原理から、アマーチャ56を下方へ変位させる方向の電磁力が発生する。
従って、アッパコイル62とロアコイル64に交互に電流を流すことにより、アマーチャ56を上下に往復駆動することができ、バルブ50を開閉方向に交互に駆動することが可能となる。ECU40は、吸気弁46、排気弁48の開閉タイミングを決定し、電磁駆動弁制御回路(図1において不図示)を介してアッパコイル62およびロアコイル64への通電を制御することにより、吸気弁46および排気弁48を所望のタイミングで駆動する。
本実施形態の制御装置は、ノッキングコントロールシステム(KCS; Knock Control System)を備えており、ノッキングセンサ41によりノッキングが検出されると、点火時期を遅角側にシフトする制御を行う。また、ノッキングが検出されない場合は、点火時期を進角側にシフトする制御を行う。このように、ノッキングの発生を抑えた状態で点火時期をできるだけ進角側に設定することで、筒内の燃焼状態を最も良好な状態に保つことができる。
図3(A)は、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を可変した場合に、圧縮〜燃焼〜排気行程において筒内圧が変動する様子を示す特性図である。図3(A)において、横軸はクランク角θを、縦軸は筒内圧P(θ)を示している。図3(A)の横軸において、TDCは圧縮上死点(θ=0)を示しており、BDCは燃焼行程終了時の下死点を示している。
図3(A)中に点線で示す特性は、ノッキングが発生しない状態で点火時期を最も進角側に設定した場合の筒内圧を示している。この場合、筒内の燃焼状態は最も良好となり、クランク角θの位置で点火が行われた直後から筒内圧P(θ)は急激に上昇し、ピークに到達した後、速やかに減少する。
図3(A)中に実線で示す特性は、ノッキングセンサ41でノッキングが検出された場合に、点火時期をθよりも遅角側にシフトして、クランク角θの位置で点火を行った場合の筒内圧P(θ)の変動を示している。この場合、燃焼時期が遅角側へシフトし、且つ燃焼速度が低下するため、破線で示した特性に比べて筒内圧P(θ)の上昇及び低下が緩慢となり、その結果、膨張行程下死点近傍における筒内圧P(θ)も破線の特性に比して高くなる。
図3(B)は、排気弁48のリフト量とクランク角θの関係を示す特性図である。図3(B)の横軸(クランク角θ)は、図3(A)の横軸と対応している。本実施形態では、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を可変した場合に、排気弁48を開くタイミングを可変する。すなわち、図3(B)に破線で示す排気弁48のリフトは、クランク角θで点火を行った図3(A)の破線の特性に対応している。また、図3(B)に実線で示す排気弁48のリフトは、クランク角θで点火を行った図3(B)の実線の特性に対応している。
クランク角θの位置で点火を行った場合、図3(B)に示すように、クランク角θの位置で排気弁48が開かれる。この場合、クランク角θの位置で既に筒内圧P(θ)が十分に低下しているため、排気弁48を開く際に、筒内圧P(θ)による大きな外力が排気弁48に加わることはない。
一方、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を遅角側にシフトした場合、図3(A)中に実線で示すように、クランク角θの位置では、筒内圧P(θ)が依然として高い状態にある。この状態で排気弁48を開くと、排気弁48に筒内圧P(θ)による過度な外力が加わり、排気弁48を駆動するために大きな力が必要となる。
吸気弁46、排気弁48を電磁駆動弁で構成した場合、各バルブ50のリフト量、リフト速度等に応じて、アッパコイル62、ロアコイル64への電流値が制御される。筒内圧により排気弁48に加わる荷重が増大している状態では、排気弁48が開きにくくなるため、バルブ50のリフト量、リフト速度がより小さくなる。従って、排気弁48に所望の動作をさせるためには、アッパコイル62、ロアコイル64に流す電流を増大する必要が生じる。
更に、筒内圧によるバルブ50への荷重が増大すると、排気弁48が完全に開くまでの時間が長くなり、アッパコイル62、ロアコイル64への通電時間も増大することになる。従って、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を遅角側にシフトした場合に、クランク角θの位置で排気弁48を開こうとすると、排気弁48を駆動するための消費電流が大幅に増大してしまう。
このため、本実施形態では、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を遅角側に可変した場合は、排気弁48を開くタイミングを遅角制御し、図3(B)のクランク角θの位置で排気弁48を開くようにしている。図3(A)中に実線で示す特性において、クランク角θの位置では筒内圧P(θ)は十分に低下している。従って、クランク角θの位置で排気弁48を開くことにより、排気弁48に筒内圧による大きな外力が加わることを抑止でき、排気弁48を駆動するための消費電流を最小限に抑えることが可能となる。また、筒内圧P(θ)が十分に低下した状態で排気弁48を開くことで、アッパコイル62、ロアコイル64への通電状態にバルブ50の動きを確実に追随させることができ、脱調現象が発生することを抑止できる。従って、排気弁48の開閉動作を正確かつ確実に行うことが可能となる。
次に、図4のフローチャートに基づいて、本実施形態の制御装置における処理の手順を説明する。図4は、内燃機関10の各気筒別に、各サイクル毎に行われる処理を示している。先ず、ステップS1では、ノッキングセンサ41により内燃機関10の運転中にノッキングが発生しているか否かを判定する。ノッキングが発生している場合はステップS2へ進む。
ステップS2では、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を遅角側へシフトする制御を行う。次のステップS3では、点火時期を遅角側にシフトしたサイクルと同一サイクルの排気弁48の開弁タイミングを遅角側にシフトして、排気弁48の開弁タイミングを所定のクランク角(=VTEXOP)に設定する。次のステップS4では、ステップS3で設定したVTEXOPの値が所定の上限値より大きいか否かを判定する。一例として、ここではVTEXOPが下死点(BDC)のクランク角より大きいか否か、すなわちVTEXOP>180°CAであるか否かを判定する。
ステップS4でVTEXOP>180°CAの場合、設定したVTEXOPの値が上限値を超えているため、ステップS5でVTEXOPをBDC(=180°CA)の位置に設定する。そして、次のステップS10では、BDCの位置で排気弁48を開く。一方、ステップS4でVTEXOP≦180°CAの場合は、ステップS4からステップS10へ進み、ステップS3で設定したVTEXOPのクランク角位置で排気弁48を開く。このように、排気弁48の開弁タイミングが、BDCの位置よりも遅角側に設定されないようにしておくことで、排気行程で排気が圧縮されることを抑止でき、出力ロスを最小限に抑えることができる。
ステップS1でノッキングが検出されない場合はステップS6へ進む。ステップS6では、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を進角側へシフトする制御を行う。次のステップS7では、点火時期を進角側にシフトしたサイクルと同一サイクルの排気弁48の開弁タイミングを進角側にシフトして、排気弁48の開弁タイミングを所定のクランク角(=VTEXOP)に設定する。
次のステップS8では、ステップS7で設定したVTEXOPの値が所定の下限値より小さいか否かを判定する。ここでは、最大トルクを発揮するクランク角(=VTマップ値)をVTEXOPの下限値とし、VTEXOP<VTマップ値であるか否かを判定する。
ステップS8でVTEXOP<VTマップ値の場合、設定したVTEXOPの値が下限値より小さいため、ステップS9でVTEXOPをVTマップ値に設定する。そして、次のステップS10では、クランク角VTマップ値の位置で排気弁48を開く。一方、ステップS8でVTEXOP≧VTマップ値の場合は、ステップS8からステップS10へ進み、ステップS7で設定したVTEXOPのクランク角位置で排気弁48を開く。
図4のステップS3、ステップS7でVTEXOPの値を設定する際には、前回のサイクルにおける排気弁48の開弁タイミングに対して、所定のクランク角(例えば2°)だけ開弁タイミングをシフトする。また、ステップS3,S7における開弁タイミングのシフト量と所定パラメータとの関係を規定したマップを作成しておき、マップからシフト量を取得しても良い。この場合、所定パラメータとして、エンジン回転数(Ne)、エンジン負荷(KL)、ステップS2、ステップS6における点火時期のシフト量、などを用いることが好適である。
図5は、エンジン回転数(Ne)とエンジン負荷(KL)との関係からVTマップ値を規定したマップを示す模式図である。なお、上述の説明では、VTマップ値、VTEXOPを、圧縮上死点(TDC)のクランク角を基準(θ=0)としたクランク角で表しているが、図5では、VTマップ値をBDCの位置からの進角量で表している。図5に示すように、排気弁48を開くタイミングは、エンジン回転数(Ne)毎、エンジン負荷(KL)毎に燃焼効率が最良となる所定の値に設定されている。図4のステップS8,S9によれば、排気弁48を開くタイミングがVTマップ値よりも進角側に設定されることがないため、燃焼効率が低下してしまうことを抑止できる。
図4の処理によれば、サイクル毎に排気弁48の開弁タイミングを変更できるため、ノッキングが発生したサイクルのみ排気弁48の開弁タイミングを遅角側に可変することができる。従って、ノッキングが発生していないサイクルでは、排気弁48の開弁タイミングを進角側の最適値に設定することができ、開弁タイミングの遅角制御による効率の悪化を最小限に抑えることができる。
なお、ノッキングが発生した気筒では、遅角制御により機関出力が若干低下するため、ノッキングが発生していない気筒の出力を増加させることが好適である。本実施形態では、吸気弁46を電磁駆動弁で構成しているため、気筒別に吸気弁46の開閉状態を制御することできる。従って、ノッキングが発生していない気筒の吸気弁46を適宜に制御して吸入空気量を増加させるとともに、ノッキングが発生していない気筒への燃料噴射量を増量して、ノッキングが発生した気筒の出力の低下を補償することが望ましい。
以上説明したように実施の形態1によれば、ノッキングコントロールシステムにより点火時期を可変した場合は、排気弁48を開くタイミングも可変するようにしたため、開弁時に排気弁48にかかる筒内圧を最小限に抑えることができる。従って、排気弁48の確実な動作が可能となり、排気弁48を駆動する際の消費電流を最小限に抑えることができる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図1に示すように内燃機関10に筒内圧センサ44を設けた場合、各行程における筒内圧P(θ)をモニタすることができる。実施の形態2では、筒内圧センサ44により筒内圧P(θ)をモニタし、筒内圧P(θ)に応じて排気弁48の開弁タイミングを定める。実施の形態2の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、実施の形態2は、ノッキングコントロールシステムを備えていない内燃機関10に適用することも可能であるため、図1のノッキングセンサ41は備えていなくても良い。
図6(A)は、圧縮〜燃焼〜排気行程における筒内圧の変動と、排気弁48を開く際の筒内圧の上限値を示す特性図である。図6(A)中に実線で示す特性は、筒内圧センサ44で検出された筒内圧P(θ)を示している。クランク角θの位置で点火が行われると、筒内圧P(θ)は上昇し、ピークに到達した後、減少する。
図6(A)中に一点鎖線で示す特性は、排気弁48を開くクランク角位置における筒内圧P(θ)の上限値(=P設定値(θ))を示している。P設定値(θ)の傾き、絶対値は、エンジン回転数(Ne)、エンジン負荷(KL)毎に予め定められており、例えばECU40のメモリ等に記憶されている。
図6(B)は、排気弁48のリフト量とクランク角θの関係を示す特性図である。図6(B)の横軸(クランク角θ)は、図6(A)の横軸と対応している。
本実施形態では、図6(A)中に実線で示す筒内圧P(θ)をモニタし、燃焼行程の終了時に、筒内圧P(θ)がP設定値(θ)よりも小さくなったクランク角θの位置で排気弁48を開く。これにより、筒内圧P(θ)が十分に低下した後に排気弁48を開く制御が可能となり、排気弁48に筒内圧による大きな外力がかかることを抑止できる。従って、実施の形態1と同様に、排気弁48の確実な動作が可能となるとともに、排気弁48を駆動するための消費電流を最小限に抑えることが可能となる。
なお、点火時期が進角している場合等においては、筒内圧P(θ)がP設定値(θ)よりも小さくなるタイミングが過度に進角側となる場合がある。このような場合、排気弁48を早く開きすぎると効率が低下するため、開弁タイミングのクランク角に下限値を設定しておくことが望ましい。そして、筒内圧P(θ)がP設定値(θ)よりも小さくなるクランク角が下限値よりも小さいときは、下限値を限度として開弁タイミングを進角させないようにすることが好適である。
次に、図7のフローチャートに基づいて、本実施形態の制御装置における処理の手順を説明する。図7は、筒内圧センサ44が設けられた気筒別に、各サイクル毎に行われる処理を示している。先ず、ステップS11では、クランク角センサ38で検出したクランク角に基づいて、現在のクランク角θが燃焼または膨張行程にあるか否かを判定する。具体的には、圧縮行程終了時のTDCのクランク角位置をθ=0とし、60°<θ<180°であるか否かを判定する。ステップS1で60°<θ<180°の場合は、ステップS12へ進む。一方、60°<θ<180°でない場合は処理を終了し(END)、次サイクルで再びステップS11の判定を行う。
次のステップS12では、筒内圧センサ44により現在のクランク角θにおける筒内圧P(θ)を検出し、モニタする。次のステップS13では、現在のクランク角θに対応したP設定値(θ)をECU40のメモリ等から取得する。次のステップS14では、ステップS12で検出した筒内圧P(θ)とステップS13で取得したP設定値(θ)とを比較し、P(θ)<P設定値(θ)であるか否かを判定する。
ステップS14でP(θ)<P設定値(θ)の場合は、ステップS15へ進む。この場合、筒内圧P(θ)がP設定値(θ)よりも小さいため、排気弁48の開弁に適した圧力まで筒内圧P(θ)が低下していると判断できる。一方、ステップS14でP(θ)≧P設定値(θ)の場合は、現時点のクランク角θの位置では筒内圧P(θ)が高く、排気弁48の開弁に適していないため、ステップS12に戻る。
ステップS14でP(θ)<P設定値(θ)の場合、筒内圧P(θ)は排気弁48の開弁に適した圧力まで低下しているが、一方で、P(θ)<P設定値(θ)となった現在のクランク角θが所定の下限値(=VTマップ値)よりも小さい場合、排気弁48を早く開き過ぎると燃焼効率が低下することになる。従って、ステップS15では、P(θ)<P設定値(θ)となった現在のクランク角θが所定の下限値よりも遅角側にあるか否かを判定する。すなわち、ここではθ>VTマップ値であるか否かを判定する。なお、VTマップ値は図5で説明したものと同様である。
ステップS15でθ>VTマップ値の場合は、ステップS16へ進む。この場合、P(θ)<P設定値(θ)となった現在のクランク角θがVTマップ値よりも大きいため、現在のクランク角θがVTマップ値よりも進角側ではないと判断できる。従って、現在のクランク角θで排気弁48を開いても燃焼効率が大きく低下することがないため、ステップS16では排気弁48を開弁するクランク角(=VTEXOP)を現在のクランク角θに設定し、次のステップS18で排気弁48を開く。
一方、ステップS15でθ≦VTマップ値の場合は、ステップS17へ進む。この場合、P(θ)<P設定値(θ)となった現在のクランク角θがVTマップ値以下であるため、現在のクランク角θがVTマップ値よりも進角側であると判断できる。この場合、現在のクランク角θで排気弁48を開くと燃焼効率が低下するため、ステップS17では、排気弁48を開弁するクランク角VTEXOPをVTマップ値に設定する。そして、次のステップS18では、クランク角がVTマップ値となった時点で排気弁48を開く。
図7の処理によれば、P(θ)<P設定値(θ)となった時点で排気弁48を開くことができ、排気弁48に加わる筒内圧P(θ)が十分に低下した状態で排気弁48を開くことが可能となる。また、P(θ)<P設定値(θ)となったクランク角が所定の下限値よりも小さい(進角側)場合は、VTマップ値で排気弁48を開くことにより、排気弁48を開くタイミングが過度に進角側に設定されてしまうことを回避できる。
また、P(θ)<P設定値(θ)となったサイクルでは燃焼効率が低下していると考えられるが、図7の処理によれば、燃焼効率が低下しているサイクルのみ排気弁48の開弁タイミングを遅角側にシフトするため、他のサイクルでは、排気弁48の開弁タイミングを進角側の最適値に設定することができ、開弁タイミングの遅角制御による効率の悪化を最小限に抑えることができる。更に、燃焼状態が悪化していない気筒については、実施の形態1で説明したように出力を増加することが好適である。
以上説明したように実施の形態2によれば、筒内圧センサ44により筒内圧P(θ)をモニタし、筒内圧P(θ)が所定の圧力P設定値(θ)よりも低下した場合に排気弁48を開くようにしたため、排気弁48に筒内圧による外力が過度にかかることを抑止できる。従って、実施の形態1と同様に、排気弁48の確実な動作が可能となり、排気弁48を駆動する際の消費電流を最小限に抑えることができる。
なお、上述した各実施形態では、排気弁48を電磁駆動弁から構成した例を示したが、本発明は、油圧駆動弁、カムバイワイヤーなど、他の可変動弁系システムを備えた内燃機関に広く適用することができ、これらのシステムにおいて排気弁の駆動力を最小限に抑えることが可能である。
本発明の各実施の形態にかかる内燃機関の制御装置及びその周辺の構造を示す模式図である。 吸気弁および排気弁として使用される電磁駆動弁を示す断面図である。 筒内圧及び排気バルブのリフト量と、クランク角との関係を示す特性図である。 実施の形態1の制御装置における処理の手順を示すフローチャートである。 排気バルブの開弁タイミング(VTマップ値)を規定したマップを示す模式図である。 筒内圧及び排気バルブのリフト量と、クランク角との関係を示す特性図である。 実施の形態2の制御装置における処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
40 ECU
41 ノッキングセンサ
44 筒内圧センサ
48 排気バルブ

Claims (1)

  1. 筒内圧を検出する筒内圧検出手段と、
    燃焼または膨張行程中に、前記筒内圧と所定のしきい値とを比較する比較手段と、
    前記筒内圧が前記所定のしきい値以下である場合に、電磁駆動式の排気弁を開弁する排気弁制御手段と、を備え
    前記筒内圧が前記所定のしきい値以下となったタイミングが、最大トルクを発生させる所定のクランク角よりも進角側であるときは、前記タイミングで排気弁を開弁することなく、前記最大トルクを発生させる所定のクランク角で排気弁を開弁することを特徴とする内燃機関の制御装置。
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